絶華   作:雨守学

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第21話

「私が第一駆逐艦寮に異動……ですか……」

 

本部での定例会を終えた後、寮の統括責任者に呼ばれた。

第一駆逐艦寮の寮長である――さんが体調不良により、寮を空けてしまうとのことであった。

 

「異動ではない。――さんの体調が回復次第、第二寮に戻ってもらう」

 

「では、第二寮は……」

 

「本部の島田が代わりに向かうそうだ」

 

「はぁ……分かりません。島田さんが第一駆逐寮に向か合えば良いのでは?」

 

「私もそう思ったのだがね……。君……第一駆逐艦寮の状況を知っているかね?」

 

「いえ……」

 

「まあ、そうだろうね。君は帰ってきて間も無いしな。まあ……そうだな……。一言で言うと……蠱惑的な寮なのだ」

 

「蠱惑的……?」

 

「第一駆逐艦寮は、第二寮や他の寮などとは違い……」

 

そこまで言うと、まるで言ってはいけない事を言うような感じで、小声になった。

 

「発育のいい駆逐艦が多いのだ……」

 

「発育のいい……。はぁ……」

 

「……あまり名前を出すのはいかがなものだとは思うので、第一駆逐艦寮の艦娘リストを用意した」

 

渡されたリストを見ると、そこには浜風や浦風、村雨などの名前が載っていた。

 

「察したかね。まあ、発育がいいのは良い事なのだがね、蠱惑的というだけあって、彼女たちのアプローチが凄いようなのだ。今の艦娘は、性的な部分には敏感だからね。駆逐艦も例外ではないよ」

 

なるほどな……。

 

「――さんは女性だ。だから問題は無かった。が、寮長で唯一の女性なのだ。寮長は独身であることが条件であるし、絶対に艦娘に手を出さないなどという者は、正直居ないと言ってもいい。この意味が分かるかね」

 

「理解できますが、納得は出来ませんね。それでなぜ私なのです? 飯田や、既にパートナーのいる山岡なんかは問題ないかと思いますが……」

 

「飯田君はとてもじゃないが、今の立場から寮長を兼任することは出来ない。今や彼女は、外と艦娘を繋ぐ架け橋と言っても過言ではない立場なのだ。山岡君にしても、夕張君という存在がある。彼らは貴重な存在だ。水を差すことは出来ない」

 

「……だとして、やはり私になるのは納得が……」

 

どんな根拠が飛び出すのかと、俺は身構えた。

が、答えはあっさりしたものであった。

 

「君には鹿島君がいる」

 

「え?」

 

「「適正パートナー」で無いし、鹿島君への気持ちはブレない。そうだろう?」

 

いや、そうではあるだろうが……。

 

「……だとしても、私だって男です。信頼が厚いのはありがたいことではありますが……」

 

「ブレると言うのかね。君が? 馬鹿言ってはいけないよ。同じセリフが、鹿島君の前で吐けるのかね?」

 

う……。

痛いところを突いてくるな……。

 

「まあ、君の気持ちは分かる。第二寮が心配なのだろう。だが、島田というのは真面目な奴であるし、艦娘からも人気が高い。鹿島君の事もよく知っているようだ」

 

別にそこは問題ないのだが……。

 

「とにかく、君しかいないのだ。もしこれを乗り切ることが出来れば、君の鹿島君への信頼にもポイントが付く。それに、島田は「適正パートナー」試験の審査員でもあるから、現場で鹿島君の君に対する態度を評価することにもつながるのではないかね?」

 

「…………」

 

「とりあえず一週間、やってみないか? そこで――さんの体調が戻れば良し。そうでなくても、なんとか対策を考える。君を一週間で帰すと約束しよう」

 

何処か必死なその目が、俺を捕えて放さなかった。

 

「……分かりました。一週間だけですよ」

 

「ありがとう。もう話は進めてあったから、助かったよ」

 

…………。

 

 

 

「一週間……ですか……。それも、第一駆逐艦寮……」

 

鹿島は怪訝な表情を見せた。

 

「提督さん、第一駆逐艦寮の事、ご存知ですか……?」

 

「あぁ、聞かされた」

 

「その上で受けたのですか?」

 

「強引にだけどな……」

 

ますます表情を曇らせる鹿島。

 

「心配か?」

 

「いえ……提督さんの事ですから……変な気を起こす事は無いでしょう……」

 

「なら、何が不満なんだ?」

 

「……一週間、提督さんと会えない事と……そんなことになっているのに、平生を保っていられる提督さんに不満を持っています……」

 

そう言うと、怒っているとでもいうように、頬を膨らませた。

 

「俺だって、お前と一週間会えないってのは……。抵抗はしたんだぜ。が、外堀をすべて埋められてな……」

 

「どうせ、「君にしかできない」とか言われたんですよね? 提督さんは優しすぎるから……その性格につけこむ人が後を絶たないんですよ……?」

 

「そうかもしれないが……。なあ、鹿島……。気持ちは分かるが、俺がお前を見捨てないことくらい分かっているだろ?」

 

「分かっています……。自分でもちゃんと答えは出ているんです……。でも、抑えきれないんです……」

 

こういう時、恋人であるのなら、それを証明する行動をとることが出来るのであろうが……。

鹿島もそれが分かっていて、こう言っているのだろう……。

 

「……今回の件については、俺の代わりに島田という「適正パートナー」試験の審査員をやっている奴が来るそうだ。そこでお前の俺に対する評価も見るよう手配してもらっている」

 

「島田さん……。知っています。何度かお話をしたことがあります」

 

「そうであったか。なら、尚更安心だ。それと、一週間を乗り切ることが無事に出来たら、俺がお前に対する評価も見てくれるそうだ。だから、結果的にはいい方向に持って行ける話なんだ。悪い事ばかりではない」

 

自分で言っていて、我ながら上手い事丸め込まれたなと思った。

鹿島も同じなのか、複雑な表情を見せていた。

 

「……分かりました。決まったことですし、言っていてもしょうがないですよね……」

 

「ごめんな……」

 

「いえ……。今日の夕方からですよね? でしたら、もう準備しないと……。寮の事は私がやっておきますから、提督さんは荷造りしててください」

 

「悪い。そうさせてもらう」

 

「では、取り掛かりますね」

 

鹿島は立ち上がる前に、そっと俺の手を握った。

 

「その前に、提督さんの温もりをチャージさせてください。一週間分です」

 

「なんだそりゃ」

 

「えへへ」

 

しばらく俺の手を撫でたり、頬ずりしたあと、満足したのか、鹿島は部屋を出て行った。

 

「フッ、全く」

 

荷造りをしていると、話を聞いたという霞がやって来た。

心配か、はたまた嫌味でも言いに来たのかと思ったが、どうやら違う様子であった。

 

「聞いたわ……。貴方の代わりに、島田がここへ来るって……本当なの……?」

 

「島田を知っているのか?」

 

「……まあね」

 

そういう霞の表情は、どこか不安そうであった。

 

「いい奴だと聞いている。艦娘からも人気があるのだろう?」

 

「そうね……。いい人だとは思うわ……」

 

「だったら問題ないじゃないか。それとも何か。お前も鹿島と同じで、俺が一週間も離れて寂しいとかいうんじゃないだろうな?」

 

「そんなの、三年間の事を考えれば屁でもないわ……。私が心配しているのは――」

 

その時、玄関で誰かが叫んでいるのが聞こえた。

 

「ん? 誰だ?」

 

「この声は……」

 

玄関へ出てみると、そこにはさわやかな男が立っていた。

俺よりも少し若い感じで、その表情は活気に満ち溢れていた。

こいつが島田であると、すぐに分かった。

 

「島田さんか」

 

「どうも。初めまして……でいいのかな……。貴方は僕をご存じないでしょうが、僕は貴方の事をよく知っています。いつも見ていました。本部昇進、おめでとうございます」

 

「そうであったか。ありがとう」

 

固い握手を交わす。

見た目からは想像の付かないほど、力強い手をしていた。

 

「随分早い到着であったのだな。こっちは今から準備をするというのに」

 

「少しでも早く、皆さんと仲良くしておきたいと思いまして。そちらは先ほど話を聞いたと伺っております。災難でしたね」

 

「いつもの事だ。……っと、玄関先ではなんだし、上がったらどうだ?」

 

「そうさせていただきます」

 

島田が靴を脱いでいると、何事かと皆が出て来た。

 

「あれ? 島田だー! みんなー、島田が来てるよー!」

 

「本当だぴょん! 島田ー久しぶりだぴょん!」

 

皆が島田を囲う。

この男、そんなに人気な奴だったのか。

一度だってそんなことは聞いたこと無いが……。

 

「っと、荷造りがまだなのですよね。後は任せてください」

 

「あ、あぁ……すまない。仕事の事は鹿島に聞いてくれ」

 

「分かりました」

 

「島田ー、また遊んでよー」

 

「うん。じゃあ行こうか」

 

そう言うと、島田は皆を連れて食堂の方へと向かっていった。

皆知っているようであるし、いい奴じゃないか。

安心し、部屋に戻ろうとした時、霞に袖を掴まれた。

 

「ん……どうした?」

 

霞は黙ったまま俯き、袖を放そうとしなかった。

 

「霞……?」

 

その時、遠くで島田の声が聞こえた。

 

「おーい、霞君も来なよー!」

 

その声を聞いて、霞はそっと袖を放し、どこか躊躇いの残る様子で、その場を後にした。

 

「…………」

 

ここ最近ではあまり見せなかった表情。

その表情に、俺は何か、得体のしれない不安を感じた。

 

 

 

荷造りも終え、寮を出た。

見送りでもあるかと思ったが、鹿島が名残惜しそうにしているだけで、後は島田に夢中になっているらしかった。

 

「なんか、とられた感じがして嫌だな……」

 

そんなことを一人呟き、車で第一駆逐艦寮を目指した。

敷地の一番端っこ。

まるで隔離されているかのような場所に、第一駆逐艦寮はある。

駅や「街」とは反対側にあるものだから、一度だって訪れたことは無いが、聞くところによると、他のどの寮よりも広く、旅館のような造りになっているらしい。

交通の不便さや、立地の関係からも、その辺りは優遇されているらしかった。

 

 

 

「…………」

 

到着して早々、唖然とした。

建物は完全に旅館の外見であったし、立ち上がる湯気の位置からして、露天風呂が付いているようであったのだ。

 

「凄いな……」

 

確かに、ここまで来るのに中々の時間を要したし、すぐ裏は山であるから、立地としては最悪ではあるのだろうが……ここまで優遇されているとはな……。

車から荷物を降ろしていると、寮から数名の駆逐艦たちが出て来た。

 

「提督」

 

「時雨。そうか。お前もここであったか」

 

「久しぶりだね。荷物、僕たちが運んであげるよ」

 

「あぁ、すまない」

 

その後ろに、浜風、浦風が立っていた。

皆、この三年間で成長したのか、前に見た子供っぽさは消えていた。

 

「久しぶりやねぇ。うちら、あれから色々と成長したけん。色っぽくなったじゃろ?」

 

そう言うと、浦風は浜風の胸を持ち上げた。

 

「ちょ……浦風……! 提督の前でこんな……」

 

「そんな事ゆうて……提督さんが来るのを一番楽しみにしてたのは浜風じゃけぇ。たくさんかわいがってもらい」

 

「そ、そんなこと……」

 

浜風がじっと俺を見つめる。

ほんのりと赤くなったその表情に、少しばかりドキッとしてしまう。

……いかんな。

こういうことか……。

 

「その辺にしたらどうかしら?」

 

聞き覚えのある声がした。

 

「天津風。なんじゃ、お前さんも提督さんが気になったのか? 意外やねぇ」

 

声の方を向くと、少し大人びた天津風が立っていた。

恰好はあまり変わっていないが、ムッとしたような表情は健在であった。

 

「そんなんじゃないってば! もぅ……」

 

天津風は俺の前に立つと、じっと目を見つめた。

そして、俺の反応が無いとみると、どこか不安そうな表情を見せた。

 

「あ……あれ……? あなた……もしかして……私の事……覚えてない……?」

 

「えーっと……そうだな……。すまない……」

 

目を逸らすと、天津風は俯き、小さく震えていた。

 

「そう……。そうよね……。私の事なんか……忘れちゃったわよね……」

 

今にも泣き出しそうな天津風。

時雨や浜風は事情を知っているようで、笑いをこらえていた。

浦風も状況を理解したのか、小さく「意地悪じゃねぇ」と呟いた。

 

「そうだな……。全然覚えていないよ……」

 

「…………」

 

「お前の猫みたいなツンツンしたところとか、猫みたいに急に甘えてくるところとか、猫みたいに可愛い所とか……全然覚えてないよ……」

 

「な……! あ、あなた……覚えてるじゃないの!」

 

そこまでいって、皆は吹き出した。

 

「あははは、ほうかほうか。天津風は猫なんやねぇ。道理で可愛いわけじゃ」

 

「て、提督……意地悪ですよ……ぶふっ……」

 

「相変わらずだね、提督」

 

「み、皆して……! もぅ……もぅ!」

 

「なんじゃ、今度は牛かぇ?」

 

「違うわよ!」

 

「ハハハ、相変わらずだな天津風。俺がお前を忘れるわけないだろ。久しぶりだな。また会えてうれしいよ」

 

「ふんっ……」

 

 

 

管理人室に通され、天津風から色々と説明を受けた。

そこで初めて知ったのだが、どうやらこの寮、元々は「街」と同じで、艦娘の娯楽施設として利用される予定だったらしい。

が、予算の関係で、寮として利用されたとのことであった。

 

「――以上よ。分からないことがあったら、この資料を見て……。それでも分からなかったら、私に聞いてね……」

 

「ありがとう。しかし、驚いたな。お前がパートナー艦であったとはな」

 

「なによ……悪い?」

 

「そうは言ってないだろ」

 

「私なりに頑張ったのよ……」

 

「そのようだな。けど、本当に久しぶりだな。さっきは悪かった。会えてうれしかったのは本当だ」

 

「……私だってそうよ」

 

そう言うと、天津風は体を預け、ぬくもりを感じるように目を瞑った。

 

「お前は何も変わっていないのだな」

 

「悪い……?」

 

「いや?」

 

頭を撫でてやると、昔の記憶が鮮明によみがえって来るようであった。

 

 

 

霞の次に手のかかる艦娘。

それが天津風であった。

いつもむすっとした表情を見せ、何をするにも文句をつけてくる。

真面目なのかお節介なのか、何をすれば喜んでくれるのか、何をすれば懐いてくれるのか、頭を悩ませたあの頃が懐かしい。

そんな天津風と仲良く(?)なったのは、ある事件がきっかけであった。

いつものように愛想よく振る舞っていると、天津風が俺に対し「その気持ち悪い笑顔を向けないでよね」と言ったのが引き金となって、日頃の事もあり、俺は思わず叱咤した。

そんな反応が予想外であったのか、天津風は驚き、ついには泣き出してしまった。

俺はその時初めて、天津風の弱さを知り、彼女に対しての態度を改めることにした。

天津風も同じ気持であった様で、その日以来、俺を理解しようと励むようになり、暇さえあれば一緒の時間を過ごした。

お互いに勘違いしていたこともたくさんあり、徐々に気を遣わずに話すことが出来るような仲になっていた。

 

「その頃からだよな。急に甘えてくるようになったのは」

 

「……私だって、我慢していることがたくさんあったのよ。貴方を認めたからこそ……こうしているの……」

 

「そりゃ光栄だ」

 

「ねぇ……一週間しかいないんでしょ……? だったら……」

 

その時、部屋に駆逐艦たちが押し入ってきて、天津風は俺を押し飛ばした。

 

「痛っ! 何すんだ!」

 

「提督、皆が提督に挨拶したいって。ん……? あれ、天津風と何かあったの?」

 

「な、なんでもないわ! じゃあ、私は部屋に戻るから! ふんっ……」

 

天津風はツンとした表情を見せたまま、部屋を出て行った。

甘えているところを他人に見られたくないって所は、本当に変わらないな。

ツンデレって奴の本当の意味は、あいつの為にあるようなもんだと思った。

 

 

 

夕食の時間になると、皆が「宴会場」と書かれた場所に集まりだした。

普段、各それぞれが自室で飯を食うらしいが、今日は俺の歓迎会ということもあり、集まったようであった。

 

「村雨も、貴方の事を提督って呼んでもいいですか?」

 

「あぁ、構わないよ」

 

「うふふ。じゃあ……提督、村雨がお酌、してあげますね」

 

何処にあったのか、村雨は日本酒を注いだ。

 

「あ、こら! 抜け駆けはあかんよ。提督さん、うちもお酌しちゃるけぇ。はよ空けて」

 

「あ、あぁ……」

 

飲み干すと、今度は浦風が注ぐ。

すると、それを見た浜風や時雨たちも空けるように言ってきて――、気が付くと俺はベロベロに酔っ払っていた。

 

「も、もう勘弁してくれ……」

 

「うふふ、酔っ払っちゃった? じゃあ……村雨が、ちょっといい膝枕、してあげますね」

 

「こら! 抜け駆けはあかんと言うとるが! 提督さんはうちに膝枕してほしいんよね~?」

 

「て、提督……! 浜風の……膝も……あ、空いてますからね!」

 

「皆、取り合っては提督が可哀想だ。ここは間を持って僕が――」

 

それから、やんややんやと騒ぎ始めた。

俺は酒や日頃の疲れもあって、床に放置されたまま眠ってしまった。

 

 

 

次に目を覚ました時には、周りはすっかり静かになっていて、体には毛布が一枚かけられていた。

 

「あら、お目覚め?」

 

「天津風……」

 

天津風はコップ一杯の水を手渡すと、膝を抱えて俺をじっと見つめた。

 

「すまない……」

 

「あれから大変だったのよ? 貴方の服を脱がそうって皆が言い出して……私が止めなければ、危うく丸裸よ……」

 

毛布を捲る。

なるほど。

その通りのようで、パンツ一丁で留まっていた。

 

「ずっと守っていてくれたのか。ありがとう。しかし、皆、好奇心旺盛なんだな……」

 

「男の寮長は初めてだから、皆はしゃいでいるのよ。ただでさえ男性との接点が少ないのに、貴方が来るものだから……」

 

「お前もその一人だろ?」

 

「そうかもね……」

 

そう言うと、天津風は先ほどと同じように、身を寄せた。

 

「二人っきりの時だけは素直だよな。そう言うの、なんて言うか知ってるか?」

 

「知ってるわ……。ツンデレって言うんでしょ……? 認めたくないけど……よく言われるし……そうなのかもしれないわ……」

 

本当、素直だ。

…………。

何と言うか、昔の霞を見ているようだ。

あいつにも、こんな時期があったな。

今は――。

 

「というか、貴方、もう平気なの?」

 

「酔ってはいるが、何とかな。皆は?」

 

「さぁ……。不気味なほど静かなのよね……。ここを覗きに来ることもしないし……」

 

「流石に飽きたのだろう。俺はそこまでいい男ではないしな」

 

「だと良いけど……」

 

部屋に戻るために廊下へ出ると、本当に静まっていて、旅館というよりも、ビジネスホテルに似た不気味さを感じた。

 

 

 

着替えを取りに行ったあと、露天風呂へと向かった。

第二寮とは違い、寮長と艦娘で時間が分かれていないから、天津風が確認してくれることになった。

 

「あ、大丈夫そうね」

 

天津風は露天風呂を確認するまでも無く、入り口から脱衣所を覗いただけで、そう言った。

 

「電気点いて無いし、着替えも籠にないわ」

 

壁の張り紙には『節電の為、不在の場合は消灯セヨ』と書かれていた。

 

「私は誰も入ってこない様に、ここで見張っておくから。貴方はゆっくり入ってきなさい」

 

「いいのか?」

 

「そうでもしないと、さっきよりも酷いことになるでしょ? 仕方のない事だわ」

 

「すまない……」

 

「いいのよ。待ってる時間も、好きだから……」

 

そう言うと、天津風は恥ずかしそうに俯いた。

昔、こいつと一緒に、宿舎へ帰っていたことを思い出す。

毎日、約束したわけでも無く、たまたま同じ場所、同じ時間に出会わせるものだから、一緒に帰っていた。

偶然にしては出来過ぎると思って、ある冬の帰り道、先回りしていつもの場所に行ってみると、そこには小さな手を寒そうに擦って待っている天津風がいた。

こいつは、俺を待ち伏せしていたのだ。

一緒に帰るために。

 

「そうか……。じゃあ、頼んだぜ。すぐに戻る」

 

「うん……。いってらっしゃい」

 

何処か嬉しそうな表情の天津風に見送られ、脱衣所へと向かった。

 

 

 

「おぉ……」

 

空には大きな月が出ていて、露天風呂に浸かっていた。

 

「っと……電気のスイッチは……」

 

月明りを頼りに、電気のスイッチを探す。

壁伝いに手探りしていると、何やら人肌のようなものに触れ、とっさに手を引いた。

 

「あんっ」

 

「だ、誰だ!?」

 

明かりが点く。

そこには――。

 

「う、浦風!?」

 

「提督さん、触り方がスケベじゃねぇ」

 

浦風に隠すものは何も無かった。

それはソフトな意味ではなく、ハードな意味で――とにかく、俺はとっさに目を伏せた。

 

「お、お前……何して……!?」

 

「何って……もちろん入浴に来とるんよ」

 

「だから何故!? というか……いつから……!?」

 

「最初からじゃ。のう、浜風?」

 

振り向くと、タオルで体を覆った浜風が、小さく震えていた。

壁のスイッチに手を添えて。

 

「そ、その……私は……やめようと言ったのですけど……浦風が……」

 

「なんじゃ。電気を消した方が良いと言ったのは浜風じゃろうに」

 

「ち、違っ……! 提督、私は……!」

 

その時、浜風のタオルが床に落ちた。

 

「ひゃ……!?」

 

とっさにしゃがみ、隠そうとする浜風。

が、何処を隠そうかとあたふたしている内に、浦風に捕まっていた。

 

「ここはお風呂、隠す必要はないんじゃ。タオルかて、マナー違反じゃ」

 

「うぅ……」

 

浜風は恥ずかしそうに立ち上がり、ありのままの姿を見せた。

 

「ま、まさかお前たちがいるとは思わなかった! すまない!」

 

落ちた浜風のタオルを拾い上げ、体を隠して出て行こうとした。

が、目の前に大きな乳房が立ちふさがって、俺を止めた。

 

「なんね。まだ入ったばかりじゃ。ゆっくりしていったらえぇのに」

 

「良い訳あるか! どいてくれ!」

 

浦風をどけようとした時だった。

背中に、柔らかい感触が――。

 

「浜風……」

 

「大丈夫です……。誰にも言いませんし……私は……むしろ……」

 

鼓動が伝わってくる。

それにシンクロするように、俺の鼓動も早くなってゆく。

 

「フフッ……提督さんも口ではそうゆうとるけど、こっちの方はどがいなんやろね~?」

 

タオルに手をかける浦風。

 

「や、やめろ!」

 

その時だった。

 

「な、何してるのよ!?」

 

天津風の声。

 

「それに皆も!」

 

皆?

目を開け、周りを見ると、先ほどの連中がぞろぞろと岩陰から出て来た。

 

「見つかっちゃった」

 

「貴女たち……静かだと思ったら……!」

 

なるほど、偶然ではなかったわけか……。

 

「そんなに怒ったらあかんよ。天津風かて、提督さんの裸、見たかったのと違う?」

 

「は、はぁ!? 何言ってんのよ!? そんな訳……」

 

「フフッ、まあえぇよ。時間はたっぷりあるけぇ。またゆっくり……ね? 提督さん?」

 

皆が出て行き、露天風呂には俺と天津風だけになった。

 

「全く……」

 

「悪い……助かった……」

 

「いいのよ……。けど、貴方もちゃんと拒絶しないと駄目よ。ただ言葉で言って聞く相手じゃないんだから……」

 

「拒絶……か……」

 

「それとも何? 満更でもなかったわけ?」

 

「いや、そう言う訳では……」

 

「ふんっ……いいからさっさと入ったら? 私、外で見張ってるから……」

 

「あ、あぁ……」

 

天津風は思いっきり強くドアを閉めると、ドスドスと足を鳴らしながら出て行った。

 

 

 

「はぁ……」

 

露天風呂に浸かると、幾分か気持ちが落ち着いた。

 

「蠱惑的……か……」

 

なるほど、確かに――さんなどの女性にしか、ここは務まらない。

いくら鹿島が居るとは言え、俺には刺激が強すぎる。

 

「クソっ……」

 

あの光景が目に焼き付いている。

吹雪の時は平気だったのに、あの二人となると、何故こうも――。

 

「……駄目だ。色々と治まらん……」

 

酔いのせいもあるが、気持ちも、体の反応も、治まりを知らなかった。

ここ最近は忙しかったせいもあって、何と言うか……色々と――疎かに――。

 

 

 

「遅かったわね」

 

「すまない……」

 

結局、小一時間ほど、風呂の中でじっと落ち着くのを待っていた。

 

「その様子だと、酔いも醒めたようね」

 

「あぁ……おかげさまでな……。その代り……とても眠いというか……疲れたと言うか……」

 

「色々あったものね……。貴方には刺激が強かったのかも……」

 

そう言うと、天津風は何かに気が付いて、赤面した。

 

「どうした?」

 

「その……貴方って……女性の裸とかに対して……耐性が無いのかしらと思って……」

 

それは、オブラートに包まれた質問であった。

が、俺が答えないでいると、天津風はその包みを容赦なく捨てた。

 

「童貞なの……?」

 

俺は答えなかった。

それが答えなのね、とでも言うように、天津風は頷いた。

 

「そう……。そうなんだ……」

 

沈黙が続く。

部屋までの距離が、行きと違い、とても遠く感じた。

 

「じゃあ……好きな人は……? 居るの……?」

 

「あぁ、居るよ」

 

「……それは即答なのね」

 

俺は思わず赤面した。

 

「でも……もしそうなら、その人に失礼だと思うわ」

 

「え?」

 

「あんなことで動揺して……。まあ、仕方のない事だとは思うけれど……。それにしたって、何もできないのはどうなのよ……?」

 

天津風の瞳は、あの日見た霞の物と似ていた。

 

「ちゃんと拒絶しないと駄目よ。今日はたまたま私が駆け付けたから良かったものの……もしそうじゃなかったら、どうなっていたのやら……」

 

「……すまない」

 

「謝るくらいなら、ちゃんとしなさい……。全く……。貴方に本当に好きな人がいるのなら……その人の事を想うなら、言葉だけじゃなくて、行動で拒絶すること。わかった?」

 

「肝に銘じる」

 

「宜しい」

 

言い終えると、天津風はムッとした表情を崩し、嬉しそうに笑った。

 

「ふふっ、たまには私がこういう立場なのも悪くないわね」

 

「こういう立場とは?」

 

「何と言うか……攻め……?」

 

「攻め……」

 

「とにかく、気分がいいわ。貴方の弱弱しい顔ったら……ふふっ」

 

…………。

 

「……そりゃ良かったな。というかお前、「たまにはこういう立場も悪くない」って、いつもからかわれるの、実は楽しんでいたのか?」

 

「え?」

 

「たまにはって言うくらいだし、いつもの立場も楽しんでいたりするのかと思ってな。案外、M気質なところがあるんじゃないのか?」

 

「は、はぁ!? そんなことあるわけないでしょ!? 全然楽しくないわよ! 全然!」

 

「そうか……。俺はこうやってお前と過ごしているの、楽しかったけどな……」

 

「ふぇ?」

 

「残念だ……」

 

沈黙が続く。

部屋に近づくにつれ、天津風はチラチラと俺の顔を伺っていた。

 

「ね、ねぇ……その……わ、私だって、本当に嫌だったわけじゃなくてね? 意地を張っただけというか……本当は、貴方との時間が好きだったりするわけで……」

 

「…………」

 

「ね、ねぇってば……。ねぇ……」

 

再び俺の顔を覗き込んだ天津風は、その表情に怒りを隠さずにはいられなかった様子で、平手で思いっきり背中を叩いた。

 

「痛っ!」

 

「もう……もうっ! 貴方ってどうしていつもそう……! むぅぅ……!」

 

「痛た……。お前こそ、俺がからかっているって、長い付き合いなんだから、気づいてもいいだろうに」

 

「そうかもしれないけど……むぅぅ……!」

 

頬を膨らませて怒る天津風。

その癖、全く変わっていないんだな。

 

「悪かった。ちょっと意地になった。だが、お前と一緒に居て楽しいのは、本当だ」

 

そう言ってやると、天津風はムッとした表情のまま、顔を赤面させた。

 

「……貴方、そう言うところも駄目だと思うわ」

 

「え?」

 

「馴れなれしくし過ぎって事! 気があるように思わせ過ぎというか……なんというか……その……」

 

天津風は何やらモゴモゴ言った後、突然俺に蹴りを入れた。

 

「痛っ!」

 

「とにかく! そういう態度が! さっきみたいな事を招く要因になっているということなの! 全く……もう……もうっ!」

 

そう言うと、天津風はぷんすか怒りながら、自室へと戻っていった。

 

 

 

管理人室に戻ると、既に布団が敷かれていた。

本当、旅館みたいだな……。

 

「…………」

 

布団が敷かれている。

布団が、敷かれている。

誰が……?

誰が敷いた?

天津風はずっと一緒に居たはずだし……。

 

「……っ!」

 

また誰かが潜んでいるのではないかと、部屋の中をくまなく探してみたが、誰もいなかった。

そうこうしている内に目はすっかり覚めてしまい、俺は妙な脱力感に襲われ、尻餅をつくようにして広縁の椅子に座り込んだ。

 

「はぁ……何やってんだ俺は……」

 

窓の外。

呑気に浮かぶ月が、遠くの第二寮を照らしていた。

 

「第二寮が可愛く見えてくるな……本当……」

 

ここに来て、たった数時間しか経っていない筈なのに、あまりにも濃厚な時間を過ごした気がする。

思い浮かぶのは、浦風と浜風の裸体。

 

「……いかんいかん。別の事もあったであろうが……」

 

天津風のツンデレ。

村雨のお酌。

浦風と浜風の裸体……。

 

「クソっ……! 煩悩よ、消え去れ!」

 

何処からか、天津風の言葉が聞こえてくる。

『ちゃんと拒絶しないと駄目よ』

『貴方に本当に好きな人がいるのなら……その人の事を想うなら、言葉だけじゃなくて、行動で拒絶すること』

 

「拒絶……」

 

重ねて、霞の言葉。

『全てを受け入れてしまう……。貴方の弱さ……心のぶれ……』

 

「…………」

 

霞はあの時、俺に拒絶しろと言っていたのかもしれない。

迫る霞を、俺は受け入れてしまった。

今日も同じだ。

浦風と浜風を前に、ただ言葉で追い払おうとするだけで、それ以上の事は何も出来なかった。

何故?

何故俺は、拒絶することが出来ないのだろうか。

 

「……決まっている」

 

霞や鹿島は、俺が優しいからと言っていた。

だが、そうではない。

俺は、今の関係が壊れることを恐れているのだ。

もっと言うのなら、嫌われることが怖いのだ。

傷つけることが怖いのだ。

拒絶すれば、俺を好きでいてくれる人は傷つくし、その姿に俺も傷つく。

 

「傷つき、傷つける勇気……か……」

 

それが正しい事なのかは分からない。

だが、俺に必要なものだと、霞も天津風も――或いは鹿島も気が付いていたのかもしれない。

 

「……やってみない事には分からないよな。よし……」

 

決意を持ち、明日に備え寝床に就く。

ふと、布団の中に何かあるのに気が付いた。

 

「なんだこ――……っ!」

 

写真。

そこには、浦風の裸体と共に「使って(ハート)」とマジックで書かれていた。

 

「ぐっ……! くそっ!」

 

目を瞑り、その写真を机の上に伏せておいた。

決意はしたにはしたが、やはり俺は男だ。

どうしようもなく、男だ。

 

 

 

翌朝。

目の下にデカい隈を作った俺を見て、天津風はギョッとした顔を見せた。

 

「だ、大丈夫……? なんだか凄くやつれている感じだけれど……」

 

「大丈夫だ……。なんというか……眠れなくてな……」

 

「そ、そう……。もし疲れているのなら、無理することはないわ。ゆっくり休んで、ね?」

 

「あ、あぁ……」

 

遠くの浦風と目が合う。

浦風は、周りに誰もいないのを確認すると、服をめくりあげて、乳房を露出させた。

ニンマリと笑ったその笑顔に、霞と違った不気味さを感じる。

 

「どうしたの?」

 

「い、いや……なんでも……。そうだ天津風、ここに電話はあるのか? 携帯だと、圏外になってしまうんだが……」

 

「あぁ、ここはどこに行っても圏外になるわ。固定電話なら、ロビーにあるピンク色の電話を使って。お金入れないと動かないけれど、隣に十円玉が積んであるから、それを使って。十円で一分だから、一分経つ前にもう十円を入れてね」

 

何というか、凝っているな。

今時ピンク電話なんて、喫茶店にもないけれど、雰囲気で置いたのだろうな……。

 

「分かった。ありがとう」

 

 

 

ピンク電話の脇に、異常な高さにまで十円が積まれていた。

普段電話をしないであろう艦娘が、退屈しのぎに積んだのであろう。

 

「っと……番号は……」

 

すぐさま鹿島にダイヤルする。

数コール鳴ったのち、鹿島が出た。

 

『もしもし?』

 

「鹿島。俺だ」

 

『提督さん! あ、ちょっと待っててください。誰もいないところに行きますので……』

 

電話の保留音が鳴る。

別に誰かが居ても構わないが……。

保留音が切れると、鹿島は開口一番に――

 

『寂しかったです……』

 

――と言った。

だから誰もいない場所に……。

 

「……まだ一日も経っていないであろう」

 

『朝を迎えたら一日です!』

 

謎理論。

 

『というよりも……酷いですよ……。何度も電話したのに……』

 

「携帯電話にか? それなら、こっちだと圏外になってしまってな……」

 

『本当ですか……? そっちに居るのが楽しすぎて、私を疎かにしたんじゃ……』

 

「そんな訳ないだろう……」

 

しばらく鹿島と一悶着やっていると、浦風と浜風がやって来た。

 

「だから……うぉ!?」

 

『提督さん? どうしたんですか?』

 

「い、いや……」

 

浦風はニンマリと笑いながら、電話口の向こうに聞こえるように甘い声を出した。

 

「提督さん、昨日はうちの体でどれくらい出したんじゃ? ん?」

 

『え?』

 

「お、おい浦風……」

 

「て、提督……! 部屋に行きましたが……その……致した形跡が無くて……。浦風で駄目なら……は、浜風のを……その……使いますか……?」

 

そう言うと、浜風は封筒を手渡した。

中身はおそらく――。

 

『……提督さん、どういうことです? そっちで何があったんですか……? 何を出すのです? 二人の体を使って……』

 

「いや、その……」

 

「なんじゃ。あれでは駄目やった? 提督さんも案外えっちなんやねぇ。仕方ない。もっと過激なの用意しちゃるけん。楽しみに待っとってね」

 

『提督さん……?』

 

鹿島の表情が読み取れるようであった。

ここで動揺しては駄目だ。

拒絶……拒絶しなければ……。

 

「……浦風、浜風。あっちへ行ってろ」

 

「えぇ~? なんじゃ。提督さんかて嫌じゃな――」

「――さっさと行け」

 

睨み付けてやると、二人は少し怯えるようにして、その場を後にした。

心が痛む。

 

「……すまない鹿島」

 

『い、いえ……。提督さんがそんな声を出すの……久しぶりに聞いた気がします……』

 

鹿島の声が、少しだけ震えていた。

 

「……怖がらせたか」

 

『ちょっとだけ……ですけど……』

 

「悪い……。色々あって、態度を変えているんだ……。その事も話したいし……どこかで会えないだろうか……?」

 

『……島田さんがいる手前、密会は難しいかと思います』

 

「島田……用心深い奴なのか?」

 

『試験の審査員だけあって、提督さんや私の事を調べているみたいです。昨日も遅くまで資料を見ていましたし、皆に提督さんの事を聞いていました』

 

なるほど……。

俺と鹿島の評価をしてくれるとあって、島田が来ることに賛成していたが、案外俺たちの粗を探しに来ている可能性もあるか……。

 

「……分かった。では、本部に来ることは可能か? こっちもお昼ごろに本部へ向かうことになっているのだが……」

 

『こっちもお昼に本部へ行く予定です。しかし、そこには島田さんも同行することになっていて……』

 

その時、電話口の向こうで雑音がした。

 

「鹿島?」

 

しばらく無音が続く。

 

「切れたか……?」

 

十円はちょくちょく入れていたはずだし、回線が悪いのかと思っていると、再び鹿島の声がした。

 

『もしもし、すみません……』

 

「大丈夫か?」

 

『えぇ……霞ちゃんが来たものですから……』

 

「霞か……。何か言われたか?」

 

『その……電話の内容を聞かれていたみたいで……』

 

霞に聞かれていた……か……。

不味いことは無いのだろうが、どことなく不安を感じる。

 

「大丈夫そうか……?」

 

『はい……。というよりも、むしろ協力してくれるみたいで……島田さんを寮に残して、霞ちゃんが代わりに私と本部に行ってくれるそうです』

 

「え?」

 

『どういうつもりなのかは分かりませんが、本部に着いたら私と提督さんの二人で話す場を作ってくれるとか……』

 

霞がそんなことを……。

この前の件と言い、一体どういうつもりなのだろうか……。

 

『どちらにせよ、あまり長い時間話したり、深い内容を話せませんね……。電話も、今みたいに聞かれてしまう可能性がありますし……』

 

「……もどかしいな」

 

沈黙が続く。

その間も十円は容赦なく吸い込まれて行く。

 

「……鹿島」

 

『はい……』

 

「愛している……」

 

鹿島の息遣いが、電話口にはっきりと聞こえていた。

 

『……私もです』

 

「では……お昼に……」

 

『はい……お昼――』

 

その時、ちょうど十円が切れたようで、プツンという音を立てて、鹿島の声は途切れた。

 

「…………」

 

俺はそっと、受話器を置いた。

すると、感傷に浸る暇も無く、再び浦風と浜風がやって来た。

 

「……終わった?」

 

「浦風……浜風……」

 

「その……先ほどはすみませんでした……」

 

そう言うと、二人は頭を下げた。

少し怯えたその表情に、再び心が痛む。

 

「いや……こちらこそ済まなかった……。少しきつかったな……。悪い……」

 

二人は俺の態度に安堵した様子で、力の抜けたように笑って見せた。

 

「良かった……。提督、あんなに怖い顔……出来るんですね」

 

「そんなに怖かったか?」

 

「うちは男らしいと思ったけん。その分じゃ夜の顔もきっと……。ねぇ、うちに見せちゃくれん? たっぷりサービスしちゃるけぇ」

 

「ぜ、是非見せて欲しいです! 浜風も頑張りますので!」

 

こいつらは……。

 

 

 

何とか二人をやり過ごし、昼飯を食ってから本部へと向かった。

同行に天津風が名乗りを挙げたが、何故か皆が反発したため、じゃんけんで決めることになり、その結果――。

 

「よろしくね、提督」

 

「おう」

 

時雨が同行することになった。

まあ、浦風や浜風よりは大人しいし、結果として良かったのかもしれない。

 

「提督の車、久しぶりだな」

 

「そうか。お前は乗ったことあるんだったな」

 

「うん。あの頃の僕は子供だったから、こうして男女二人っきりになるって、なんとも思わなかったな」

 

「今は思うところでもあるのか」

 

「大人だからね」

 

確かに、本当に大人っぽくなったよな、時雨の奴。

 

「提督、何処を見てるんだい?」

 

「え?」

 

「大人って聞いて、ここ、見てなかった?」

 

そう言うと、時雨は太ももを指した。

無意識に見ていたらしく、とっさに視線を戻す。

 

「ふふっ、見てもいいのに。ほら、見せてあげる」

 

布の擦れる音。

 

「……そう言うのは止した方が良いと思うぜ」

 

「そう言うのって、どういう事かな?」

 

「だから、そういうこ――」

 

視線を向けると、時雨は下着を脱いでいた。

 

「おまっ……何してんだ!?」

 

「提督、ちゃんと前見て。安全運転だよ」

 

「お前がそういうことするから、安全じゃなくなるんだ!」

 

「ふぅん。安全運転を疎かにするほど、僕のここに夢中なんだ」

 

そう言うと、時雨は俺の太ももに下着を置いた。

 

「お、おい!」

 

「ふふっ……僕は浜風や浦風と違って、胸はそんなに大きくないよ。でもね、彼女たちと違って、僕は知ってる」

 

時雨は耳元へ近づくと、ため息を吐くようにして、言った。

 

「色々勉強したんだ。男性の体についても、ここの決まりについてもね」

 

「決まり……?」

 

「うん。恋愛や本番を禁止することは書いてあってもね、ペッティングは禁止する条文は書いてないんだ」

 

車は信号待ちで止まっていた。

 

「分かるよね? そうさ。だから、僕達がこれからすることも、ちゃんと合法な事なんだ」

 

「時雨、お前いい加減に……」

 

「浜風や浦風に出来なかったこと、僕になら、なんでもしていいよ……」

 

時雨の吐息。

甘くなく、だからと言って鼻を突くようなにおいでもなく、ただただ、人らしい匂いというか、女らしい匂いというか……。

とにかく、女性に抱く幻想を遥かに超えてくるリアルなその吐息に、俺は眩暈を起こした。

 

「提督……」

 

時雨の手が俺に触れようとした時、携帯電話が鳴り、我に返った。

知らない電話番号。

出なくても、誰が相手なのか、すぐに分かった。

 

「霞……」

 

自転車に跨った霞が、車の前に居た。

携帯電話を耳に当てて。

 

 

 

「さっきはありがとう……」

 

本部に着き、遅れてくるという鹿島を待って、俺は霞と話していた。

 

「別に……」

 

霞は少し怒っているようであった。

 

「……この前、お前からいろいろ言われたけど、つまるところ、拒絶しろって事を言いたかったんだろ? それに昨日気が付いてさ、俺なりに拒絶しようと頑張ってみたのだが……」

 

「……出来なかったんでしょ。貴方は優しいし……ああいうのに弱い男だから……」

 

俺は思わず赤面した。

 

「ねぇ……このままでいいと思ってる訳? このままだと……」

 

「分かっている……。だが……やはり俺は男なんだと思ってな……」

 

「男って言うより、男の子って感じだけど……。貴方と同じ年くらいの男で、貴方のような反応をする人は、見たことないわ……」

 

「…………」

 

「でも……そうね……。拒絶しろっていうのはあってるわ……。貴方にはそれが必要だとも思う……」

 

「……お前、どうして俺にそんなことを言うんだ。鹿島と俺の関係を助けるようなこと……。お前にとって、俺と鹿島の関係は崩れて欲しいものなんだろ?」

 

その問いに、霞は閉口した。

 

「それにお前……今日の件だって……」

 

そこまで言ったところで、鹿島がやって来た。

 

「お待たせしまし……た……」

 

霞を見て、鹿島は後退りした。

それをみた霞は、席を立ち、バトンタッチでもするかのようにして、鹿島の背中を押し、去っていった。

 

「あの……」

 

「……よう。とりあえず、座ったらどうだ……?」

 

 

 

本部には休憩室がいくつかあるが、自販機も給水機も何もないこの場所には、誰も訪れることは無かった。

 

「寮の方はどうだ?」

 

「なんとか……。島田さんも良くしてくれていますし……」

 

「そうか」

 

沈黙が続く。

お互いに聞きたいことが多くあるのだろうが、何から話したらいいのか分からないといった感じであった。

 

「霞ちゃん……何か言っていましたか……? 島田さんの代わりに来てくれたこととか……」

 

「いや……。お前は何か聞いていないのか……?」

 

「いえ……。聞いてみる勇気も無くて……」

 

まあ、先ほどの怯えた様子を見ると、そうだろうな……。

 

「……提督さんの方はどうなんです? 第一駆逐艦寮……」

 

「あ、あぁ……。まあ……何と言うか……やんちゃな奴が多くてな……」

 

「やっぱり……積極的な子が多いですか……? 浦風さんや浜風さんのように……。あの電話でのように……」

 

俺が閉口しているのを見て、鹿島は何かを察したようであった。

 

「電話口で……浦風さんが言っていましたよね……。「うちの体でどれくらい出したのか」って……。それってつまり……見たんですよね……? 浦風さんの体……」

 

「……ご丁寧に写真まで用意してくれていた」

 

「写真……。それで……その……出したんですか……?」

 

「そうであったら、こんな話はしない……。今まであったこと、全部話してやろうか……? 俺は何も隠さない」

 

「お願いします……」

 

俺は昨日会ったすべての事を鹿島に話した。

時折、俺の感じたことも述べた。

その過激な内容に、鹿島も赤面し、顔をあげることの出来ないと言うように俯き、聞いていた。

 

「――以上だ」

 

「た、大変だったんですね……」

 

「あぁ……。本当は拒絶しなければならなかった。お前の為に……。だが……俺はどうも……」

 

項垂れる俺を見て、鹿島は目も合わせず、そっとUSBを俺に手渡した。

 

「これは……?」

 

「その……どうしても我慢できないときは……これを使ってください……」

 

「え? 使うってのは……?」

 

「絶対に一人の時に見てください……」

 

そう言うと、鹿島はより一層顔を赤くして、部屋を出て行った。

丁度、定例会が始まる頃だったらしく、時雨が俺を呼びに来ていた。

 

 

 

定例会も終わり寮に返ってくると、また寮の皆にあれやこれやとからかわれた。

ある者は体で誘惑し、ある者は言葉で誘惑し、ある者は力ずくで抑え込み――。

とにかく、昨日よりも過激になってゆくスキンシップに、俺はいよいよもって限界を迎えていた。

色んな意味で。

そう、いろんな意味で……な。

そんな俺を察したのか、天津風は何も言わず、小一時間ほど部屋に一人になるよう仕向けてくれた。

それが何を意味するのかは言うまでもない。

そう、言うまでも無いのだ。

だからこそ、それに甘んじるべきかどうか、俺は悩んでいた。

 

「…………」

 

部屋にはノートパソコンが一台と、ティッシュ箱が置かれている。

これで探せって事なのだろうが、支給されたパソコンでは、そう言ったサイトが見れない様にロックがかけられているはずであった。

 

「……って、バカか俺は。何を考えているんだ……。こんな……こんな恥ずかしい事に甘んじていい訳があるか……」

 

ふと、鹿島から貰ったUSBに目が行く。

そう言えば、まだ中身を見ていない。

気を紛らわせる意味でも、見ておくか。

USBを刺した時、俺はふと、鹿島の赤面を思い出していた。

『どうしても我慢できないときは……これを使ってください……』

『絶対に一人の時に見てください……』

 

「…………」

 

この状況で、俺は良からぬことを想像していた。

 

「まさかな……」

 

が、画面にそれが表示された時、俺は――。

 

 

 

「あら……もういいの?」

 

部屋を出た俺を、天津風は気を遣った笑顔で迎えてくれた。

 

「あぁ……まぁな……」

 

「その……意味分かったかしら……? 一人にした……」

 

「……あぁ」

 

「それで……その……。ちゃんと……出来たの……?」

 

そう問う天津風は、一瞬俺の表情を確認すると、まるで慰めるかのようにして、背中をさすった。

 

「情けない……」

 

「そんなことないわよ……。むしろ、気を遣えなくてごめんね……」

 

「やめろ……。ますます情けなくなってくる……。うぅ……」

 

そんな俺を、天津風はいつまでも慰めてくれた。

人生で初めて、この世から消え去りたいと思った。

 

 

 

それから一週間。

天津風や鹿島のフォローもあって、何とか乗り切ることが出来た。

とは言え、あまりにも俺が拒絶するものだから、第一駆逐艦寮では、俺がホモだとかインポだとかいろんな噂が流れたが……まあ、それはいいだろう……。

とにかく、乗り切った。

一歩成長したと言ってもいいよな?

……いいよな?

 

 

 

最後の夜。

皆が寝静まった後、天津風が温かいココアを持って部屋にやって来た。

 

「お疲れ様。まだ仕事していたのね」

 

「あぁ。一応引継ぎをと思ってな」

 

「そんな事、私がやっておくからいいわよ。それよりも、最後なんだし、少しお話ししましょう」

 

「そうか? じゃあ、お言葉に甘えて」

 

仕事の手を止め、天津風に向き合った。

ココアは物凄く熱く、長時間話したいという天津風の意思を感じた。

 

「明日ね……。貴方が帰ってしまうの……」

 

「寂しいか?」

 

「うん……寂しいわ……」

 

この一週間で、天津風はもうすっかり心を許してくれたようで、ツン要素はどこかに消え去っていた。

 

「ねぇ、もっといてよ……。私と貴方、凄くいいパートナーだと思うの……」

 

「かもな……。いろいろ助けられたし、お前は俺をよく知っている。思い出したくもない気づかいの事もあるしな……」

 

「ウフフ。でも、すっきりしたでしょ? 色んな意味で」

 

俺は答えなかった。

だが、天津風はそれを予想していたと言うように、微笑んで返した。

 

「ねぇ……真剣に答えて……。私とパートナーになること……。悪くないでしょ……?」

 

「悪くない……。悪くないが……俺には第二寮がある」

 

「そんな事分かってるわ。問題は、貴方が私とパートナーになることを望むかどうかよ。貴方が望めば、ここにいることは出来るのよ。私も……皆だって、それを望んでいるし、声をあげればそうすることも可能なのよ……?」

 

或いはそうかもしれない。

 

「貴方に好きな人がいることは知っている……。それが……鹿島さんだってことも……」

 

「!」

 

「一週間も一緒に居るのだもの……。流石に分かるわ……」

 

「…………」

 

「私は……別に愛されたいとか、そういうことはどうでもいいと思ってる……。ただ……貴方と居たいだけ……。貴方と仕事している時が……こうやって過ごしている時が、何よりも幸せなの……。私から……その幸せを奪うつもりなの……?」

 

天津風の潤んだ瞳が、俺を見つめる。

こいつは知っているんだ。

俺がこういう押しに弱いのを。

実際、俺の心は揺れ動いていたはずだ。

そう、一週間前までは……。

 

「……天津風」

 

「うん……?」

 

「悪いが、俺はお前が感じているほど、幸福には思っていない。お前が俺と居て幸せなのは結構だが……俺は……俺はやっぱり、鹿島と居たいんだ。あいつと……パートナーでありたいんだ……」

 

その言葉を聞いて、天津風は一瞬、泣き出しそうな表情を見せた。

が、すぐに顔をあげ、少し弱弱しい笑顔を俺に見せた。

 

「うん……うん……。そうよね……。そんなこと言えるなんて、本当に成長したのね、貴方……」

 

「お前……もしかしてわざと……」

 

「ううん……本気だったわ……。本気の本気。マジって奴よ」

 

そう言うと、天津風は俺の膝の上に座った。

 

「パートナーが駄目なら、せめて甘えさせてもらおうかしら?」

 

「ドアなんとかテクニックって奴か……。その手には乗らないぜ」

 

「……そこまでの拒絶は求めてなかったのだけれど」

 

「嘘だよ。お礼の意味も込めて、これくらいはさせてもらうよ」

 

昔のように撫でてやると、それを全身で感じるように、天津風は身を寄せた。

 

「パートナー……なりたかったなぁ……」

 

「そんなにか? ――さんでは駄目なのか?」

 

「駄目じゃないわ……。でも……」

 

そこまで言うと、天津風は閉口した。

 

「でも、なんだ?」

 

「……ううん。私も成長しないといけないわよね。私、――さんが帰ってきたら、貴方の事、もう忘れるわ」

 

「……そうか」

 

天津風は止まっている俺の手を取ると、小さく言った。

 

「――さんが帰ってくるまで、なんだからね……?」

 

「フッ……了解した」

 

 

 

翌日。

――さんと入れ違いで、俺は第二寮へと帰還した。

鹿島は島田を本部へ送っていったようで、それ以外の全員が俺を迎えてくれた。

 

「お前ら、島田に浮気しやがって……」

 

「違うんだ司令官! 僕たちはただ、司令官の大切さに気が付いて無かっただけで……」

 

「そうだぴょん! うーちゃんが司令官以外に心を許すと思う?」

 

「うーん、どうかな……?」

 

「し、信じてよぉ~……」

 

そんな事を話している俺たちを、吹雪と霞は遠くで見ていた。

吹雪は苦笑いしてみているが、霞はどこか深刻そうな表情だ。

 

「…………」

 

 

 

皆から解放され、自室に戻ると、霞がやって来た。

何となく来る気がしていたから、俺は先にあの缶コーヒーを二本用意していた。

 

「たまには俺からもと思ってな」

 

「……ありがとう」

 

霞はコーヒーに口をつけると、ため息を漏らす様に言った。

 

「乗り切ったのね……」

 

それが残念だと言うように、また一息。

これから起こることを、霞は知っているかのようであった。

 

「霞……」

 

「何……?」

 

「俺は……この一週間、お前に言われてきたことばかり考えて来た……」

 

「…………」

 

「だが、結局、お前が何故俺を……俺と鹿島を助けるようなことを言ったのかは、分からなかった……」

 

「うん……」

 

「ただ……もし……お前が本気で俺と鹿島の仲を助けようとしているのなら……お前の言っている拒絶が正しいなら……俺はお前に言わなければいけないことがある……」

 

「……うん」

 

「俺は鹿島しか愛せないし、鹿島しか俺のパートナーにはなれないと思っている。お前じゃ……無理だ……」

 

「……そんな事、分からないわ」

 

「分かる。断言してもいい。俺はもうブレない。あいつを悲しませるようなことはしない」

 

そう言った時、霞は俺を思いっきり押し倒した。

コーヒーの香り。

 

「キスするのか?」

 

「…………」

 

「やめておけ。もしするというのなら、俺は全力で抵抗するぜ。そして、お前をここから出て行かせる。第二寮の敷居を二度と跨げない様に手配してやる」

 

「……貴方にそんなことできない」

 

「出来るさ。俺は本気だぜ……」

 

霞の目が、俺を見つめる。

俺もまた、霞の目を見つめていた。

避けることはしない。

真っ向からぶつかってゆく。

 

「どけ、霞」

 

「…………」

 

「……どかすぜ」

 

霞を退かせ、起き上がる。

何とも軽い体に、俺は少しばかり驚いていた。

 

「…………」

 

沈黙が続く。

 

「霞……」

 

霞は、泣いていた。

だがそれは、悲しい涙ではなかった。

どこか、報われたとでもいうような、そんな涙であった。

 

「お前……」

 

それが何を意味しているのか、俺には分からなかった。

ただ、霞がこれまでにしてきたことに、何の意味も無い訳ではないと、それが証明していた。

 

「……聞かせてくれないか? その涙の意味を……」

 

霞はしばらく泣いた後、俺に涙の意味を教えてくれた。

それを聞き終えた頃、俺はこれまでのすべての真相を悟った。

全ては、ある一点に集約されていた。

今回の異動も、全て――。

 

「提督さん……」

 

いつの間にか帰って来ていたのか、鹿島はフラフラな足取りで、部屋に入って来た。

 

「鹿島……」

 

そして、鹿島の次の言葉で、その全てが繋がりを見せた。

 

「ここのパートナーを……解任されました……」

 

長い沈黙。

脱力し、座り込む鹿島。

霞が呟く。

繋がりを生んだ、その犯人の名を――。

 

「島田……」

 

――続く

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