ドジっ娘、紅美鈴(東方 × オーバーロード) 作:るーしー
ある日の紅魔館、地下図書館での出来事。
動かない大図書館ことパチュリー・ノーレッジを中心に、幻想郷の主要メンツの多くが集まっていた。
紅魔のメンツは当然とし、博麗神社、迷いの森、妖怪山、地霊殿、ひまわり畑。
幻想郷のパワーバランスを担うであろう組織と個人たちが思い思いに雑談しながらこれから起こるであろうことをワクワクと楽しみにしている。
「…………」
「あの、これって本当に大丈夫なんですか?」
そんな中、集中するパチュリーの邪魔にならないように赤髪の中華衣装をまとう女性、紅美鈴は横の金髪の人形遣いに声をかける。
「さぁどうかしら」
「えぇー……」
答えはそっけないもので、紅美鈴は乗り気ではない気分がさらに急降下したように感じた。
そのあからさまに私不安ですオーラを纏う美鈴に、人形使い、アリス・マーガトロイドは苦笑しながら言葉を告げる。
「そんなに心配しなくとも大丈夫よ。もしもの時は私が補助に入るわ」
この場にいるメンツの中でもしもの時にパチェリーを補助することができるのはアリスだけだろう。
他にも何人か手助けはできるが、それはあくまで能力によるもので、魔法の技量でパチェリーを助けることができるわけではない。
もとより幻想郷に魔法使いは多くない。
その中でもこの場にいる正規の魔法使いは術者たるパチュリーとアリスだけ。
魔理沙も魔法使いではあるが、新米で技量は足らずに火力一辺倒へと集中している。
それが助かることもあるが、この繊細な作業の中では邪魔にしかならない。
もし出番があるとすればパチュリーが失敗した後の事後処理で全てを吹き飛ばす時くらいだろう。
「お願いしますよ。私、また紅魔館を建て直すとか嫌ですからね」
「いつも思うけど、あなたも大変ね」
少々不穏な会話であるが、周りの誰も気にはしない。
まるで立て直しなど日常茶飯事であるとばかりに。
そして。
「きたわ」
ついにパチュリーが声を上げる。
召喚のための魔法陣が輝き出し、彼女の膨大な魔力が燃料として注ぎ込まれて行く。
これだけの魔力、そして魔法陣の精密さ、おそらく並みのものを召喚するわけではないのだろう。
異界の神か悪魔か、はたまた異形の未知か。
周りの観客たちは今か今かと魔法陣の先を見つめた。
唐突に、空間が振動を始めて。
「あ、ミスった」
その一声を皮切りに、観客は各々の行動をとった。
まず逃げ足だけなら幻想郷最速の霧雨魔理沙が箒に立ち乗り、壁や天井など知らぬとばかりに破壊しながら外へ飛び出して行く。
次に文字通り幻想郷最速の記者、射命丸文が魔理沙とは対照的に風をきるかのように地上への穴へ飛び出す。
その二人の後を追うように、あらゆるステータスが抜群に飛び抜けている吸血鬼の姫たる紅魔の主人、レミリア・スカーレットが妹を片手に外へ走り出した。
吸血鬼の従者たる瀟洒なメイド十六夜咲夜は、主人が安全圏に向かったことを確認して時を止め歩き出す。
地霊殿の主人は心の声を聞いていて心構えができていたので、事前に準備していたとばかりにためらうことなく外へと向かう。
無意識に生きるさとり妖怪の妹は楽しそうな方へ走り出す。
博麗のメンツである巫女とスキマ組はいつもの逃走手段たるスキマへ飛び込みこと無きを得た。
小さな鬼はそんな風に慌てる周りを酒の肴にしながら霧となってこと然と消える。
そんな中、紅美鈴はパニックにパニックを重ねてあわあわする。
「や、や、ややややばいじゃないですか! みなさん逃げましたよ!」
残っているメンツはもうほとんどいない。
隣のアリスの腕に抱きつきながら、美鈴は魔力が暴走する魔法陣に目を向けた。
「やばいですってこれ。また立て直しですよ! これからしばらく休みなしじゃないですかぁ……!」
これから起こるであろう過酷な労働を思いながら、目の前のパチュリーとそれを補助しているアリスへ目を向ける。
「アーァァ、三食昼寝付きの生活がぁ……。また大工の真似事はいいやだぁ」
絶望の目をしながら抱きついているアリスに愚痴り、目の前の魔女二人をはらはらと見つめ。
「ん?」
違和感といえば違和感だろう。
パチュリーとアリスは必死で魔法陣への対処を行なっている。
二人とも頑張っているので、もしかしたら爆発オチは万に一つ回避されるかもしれない。
なるほど。
紅美鈴は納得する。
であるならば。
この抱きついている腕は一体誰のものなのだろうか。
「…………」
ギギギギギ、と壊れたブリキのように顔を横へ向ける。
そこには。
「何かしら?」
幻想郷最恐の妖怪、風見幽香その人が立っていた。
「ぎゃああああああああああああああああああああああ!!!!!」
その恐ろしさから驚いで彼女は跳びのき。
「え?」
「は?」
「ちょ」
魔法陣へと盛大に突っ込んでしまった。
20XX年、紅魔館は核の炎に包まれた。