ドジっ娘、紅美鈴(東方 × オーバーロード) 作:るーしー
ユニークアクセス300?
東方の人気にビビりました。
(あるいは美鈴の人気)
気がつくと、美鈴はどことも知らない草原に倒れていた。
紅魔館でも爆心地でもなく、草原である。
「え?」
ガバリと起き上がる。
夢でも幻でもなく、あたり一面、草原草原草原であった。
美鈴はただただ困惑するしかない。
なんだこれは、と。
「ようやく起きたかしら」
聞き慣れた声が後ろから一つ。
振り返ってみるとそこには見慣れた金色の人形使い、アリス・マーガトロイドがいた。
「おはようございます、アリスさん。それで、えーっと、ここどこですか?」
幻想郷にこんな草原などあっただろうか?
と言うか紅魔館は?
主人は何処に?
何が何やらな美鈴は混乱した頭でアリスに問いかける。
「わからないわ」
はぁ、とため息を一つ吐いて、普段ではあまり見せない困り顔を美鈴に見せた。
その対応に彼女は余計に自分の置かれている状況がわからなくなる。
アリス・マーガトロイドは聡明な魔法使いだ。
あからさまにため息をついて私困りましたなんてオーラを出すことは異変でもほとんどない。
普段であればなおさらだ。
と言うことは。
「い、異変ですか!?」
紅魔館はなくなり周りは草原、主人も同僚もいなく知り合いは一人だけ。
ドッキリの可能性もないわけじゃないが、アリスが本気で困っていると言うことはそう言うことなのだろう。
「れ、霊夢さんは? 知らせて早く解決してもらわないと!」
そんなあわて美鈴を見て、さらにアリスはため息をひとつ。
「無理よ」
そしてわずかに溜め。
「だってここ、幻想郷じゃないんだもの」
そんな驚愕の事実を美鈴に突きつけた。
「え、えええええええええええええええええええええええええええええええええ!」
* * *
「まとめると、ここは幻想郷でも地球でもない、全く別の世界ってことですか?」
アリスから聞いた話は驚愕的なものだった。
曰く、幻想郷ではない。
曰く、外の世界ではない。
曰く、地球ではない。
「そうよ」
召喚のための魔法陣が暴走して別の世界と繋がり、それが暴発して周りにいた人間全てを別の世界へ飛ばしてしまったらしい。
ここに紅美鈴とアリス・マーガトロイドしかいないのは、たまたまタイミングがあっただけと言うこと。
他の面子はこことは違う世界に飛ばされたであろうと言うこと。
「も、もちろん帰れますよね?」
そのシャレにならない事実を知り、不安げに美鈴はアリスに問いかける。
最初は敵対的だったが、今では幻想郷は好きだ。
そこでできた友達も好きだ。
主人と同僚はもっともっと好きだ。
だからこそ、戻れないと言うのは美鈴にとっては許容できないし、したくないものだった。
必死な目でこの状況を打破できるアリスに問いかけて、祈るように目を潤ませる。
「そんな顔しなくてもいいわ。帰るだけなら可能よ」
「よ、良かったー……」
美鈴は安堵のあまり地面へと背中から倒れ込んだ。
どうやら最悪の事態は免れたようで一気に力が抜ける。
ただ疑問が残るとすればアリスの顔が未だに優れないことだろう。
「それで、どうやって帰るんですか?」
しかし美鈴はそれを知らずに続けて問いを投げかけた。
「そうね。まずは拠点が必要ね」
「ふむふむ」
なるほど、と美鈴は首肯する。
確かに拠点は必要だ。
特に魔法使いはそれが顕著だ。
「次に幻想郷への座標が必要ね。もっともこれは人形を通してわかるから問題ないわ」
「ふむふむ」
なるほど、と美鈴は首肯する。
確かに帰るための場所を知っていることは必要だ。
しかしこの問題は解決しているようで良かったと安堵する。
「その次に、移動のための魔法が必要ね。さっきみたいな暴走じゃなくちゃんとしたものが」
「ふむふむ」
なるほど、と美鈴は首肯する。
確かに帰るための方法は必要だ。
このような事故ではなく正規ルートこそが正しい道なのだ。
「その次に魔力ね。世界と世界を移動するんだから多くの魔力が必要よ」
「ふむふむ」
なるほど、と美鈴は首肯する。
確かに帰るためのエネルギーは必要だ。
彼女もお使いに行って帰ってくるとお腹が空くのだ。
「ん?」
そこでふと疑問。
多くの魔力が必要だとアリスは言った。
多くとはどのくらいだろうか。
美鈴は魔法使いではない。
しかし魔法使いとして優秀なアリスが多くの、と言ったのだ。
嫌な予感を彼女は覚えた。
「ち、ちなみに多くの魔力というのは?」
「そうね……」
少しだけアリスは考える仕草をして。
「普通に溜めて一年と言ったところかしら」
「い、一年ですか!?」
一年、それは妖怪からすればなんて事のない数字であるが、まがりなりにも職についている美鈴からすれば致命的だった。
彼女の同僚は怖い。
怖いのである。
美鈴が居眠りしているとナイフで刺すし、泥棒に負けるとご飯抜きにもされるのだ。
幻想郷で一番誰が怖いかと言ったらひまわり畑の妖怪を思い浮かべるが、紅魔館に限定するならそれは十六夜咲夜であった。
「ああぁ、咲夜さんに怒られる……」
対してそういったしがらみのないアリスからしても、面倒この上ないタスクでもあった。
彼女は基本的に日々魔法の研究をしている。
それは人形のためであり、自己研鑽が理由でもあった。
それが丸々1年もできなくなる。
無視できない痛手であった。
「はぁ」
自業自得といえば自業自得だ。
もともと危険があることはわかっていた。
そのリスクを飲み込み、アリスはパチュリーに協力したのだ。
最終的に紅美鈴が魔法陣に突っ込んでこんなことになったのだが、その前段階からして失敗だとはわかっていたのだ。
すなわち、失敗したのはパチュリーであり、うまく助けることができなかったのはアリスであり、結果を確定させたのは美鈴なのだ。
そう言った意味で今の現状は良くはないが最低ではない。
あそこでいつかのように変な触手が大量に現れて紅魔館を飲み込むような惨事にはなっていない。
あの時はひどい目にあったとアリスは回顧する。
主にパチュリーが。
「ああ、そうだ!」
さてどうしようかとアリスが悩んでいると、復帰した美鈴がアリスへ顔を向けていた。
「アリスさん、さっきは邪魔してしまいすいませんでした!」
そしてそのまま深く頭を下げる。
魔法陣に飛び込んで暴走させたことを謝っているのだろう。
「別に気にしていないわ」
事実、本当にアリスは気にしていなかった。
厄介なことになったが、どうせあのままなら別の厄介なことになっていたのだ。
これからどうにかなるかわからないが、異界の怪物が溢れるよりまだまだマシだろう。
そう言った観点からすると、美鈴はくじ運がいいのかもしれないとアリスは思った。
「でも、思いっきり邪魔してしまいましたし……」
「どうせ、どれだけ頑張っても失敗してたわ。なら最悪じゃないだけ現状はマシよ」
そうだ。
ましであるのだ。
五体満足、からだに不調はなし、一人ぼっちではなく頼れる味方がそばにいる。
パーチィー構成も前衛と後衛で悪くない組み合わせ。
いかようにもできる。
「さて、それじゃまずは家でも探しましょうか」
クヨクヨするのは幻想郷の少女には似合わない。
ましてや人を笑顔にさせる人形遣いに、いつも快活な門番ならなおさらだろう。
「頼りにしてるわよ。美鈴」
「はい。任せてください!」
こうして二人のちょっとした冒険は幕を開けた。