ぼくは今、猛烈に悲しんでいる。なぜか?
そんなの当たり前じゃないか!
学校のコンビニにエロ本が置いていないんだ!
これはかなり忌忌しい事態だ。学校側に訴えよう。
もしこれでエロ本が追加されなかったらぼくは、
3年間もエロ本が読めないということだ。
つまり男のロマンが1個無くなる。許されない。
そんなことを思いながら立ち尽くしていると、
「・・・またしても嫌な偶然ね。」
どうやらコンビニの中に鈴音ちゃんがいたらしい。
「『やっほー鈴音ちゃん。もしかして
きみもエロ本を買いに来たの?
でも残念だね。この学校にはどうやら
エロ本を売っている店はないらしいよ。
本当に悲しいことにね。』」
「そんな物はいらないし、買いもしないわ。
生活に必要な物を買いに来たのよ。
あなたもそうでしょう?あと、あの時も
言おうとしたけど、
その鈴音ちゃんって気持ち悪いから
やめてもらえるかしら?不愉快だわ。」
「『えーどうして?可愛くていいじゃん。
鈴音ちゃん。鈴音ちゃーん。おーい。』」
「はぁ、もういいわ。貴方みたいな人が
隣なんて、これ以上不運が重ならないことを
祈るしかないわね。」
そう言って、鈴音ちゃんは手に取ったシャンプー
などの日用品をテキパキと籠の中へ運んでいく。
適当に選んでると思ったら、どうやら安い順に
買っていってるらしい。
「『ダメだぜ鈴音ちゃん。
シャンプーとか化粧品は女の子の
命だろ?適当に選んでちゃ
後悔するぜ?』」
「それは人によるでしょう?
お金はいつ必要になるか分からないもの。」
勝手に人の買うものを見ないでくれる?
そんな冷たい視線を感じる。辛辣だなぁ。
「それにしても、あなたが自己紹介の
場に残るのが、すごく以外だった。
あなたはクラスメイトの輪に参加する
ようなタイプには見えなかったから」
「『そんなにぼくの事を観察してたんだね。
照れるなー。あとぼくは可愛い子と
お友だちになりたかったからね。
おまけに自己紹介はぼくの得意分野
だしね。鈴音ちゃんはなんで自己紹介
しなかったの?自己紹介を通して
生徒と仲良くなれるかもしれないし、
不利益なことは一切ないと思うけど。』」
実際、あの場面でそのまま携帯の連絡先を交換する
生徒も少なくはなかった。鈴音ちゃんみたいな
美人だったら、たちまち人気者になれたと
いうのに、勿体ないことするなぁ。
「幾つも反論理由が浮かんだのだけれど、
説明した方がいいかしら?自己紹介を
したからといって、仲良くなれる保証が
あるわけじゃない。むしろ自己紹介に
よって何か確執が生じるかもしれない。
それなら最初から何もしなければ問題が
起きることはない。違う?」
ぼくの前半の台詞の部分は完全に無視されている。
「『まぁそうだね。それでも、確率的には
自己紹介した方が仲良くなれる可能性は
高いと思うぜ?』」
「その確率は一体どこから導きだされたのかしら?
とは言え、その部分を追求しても、水掛け論に
なるだけだから、あなたで例えましょう。
あなたは自己紹介をして結果、だれかと
仲良くなることはできたのかしら?」
見事な正論だ。反論すらできない。
事実ぼくは、自己紹介をしてなぜか知らないけど、
クラスの皆に遠ざけられて、嫌われている。
なぜかは知らないけど。鈴音ちゃんはぼくの顔を
みて
「やっぱり仲良く出来なかったのね。
つまり、自己紹介=友達を作りやすい。
という仮説は立証できていないのよ。」
更に鈴音ちゃんは続ける。
「そもそも、私は友人を作ろうと思って
いない。だから自己紹介をする必要も
なければ、その場の自己紹介も聞く必要は
ないということ。納得できたかしら?」
なるほどね。やっぱり君はめだかちゃんとは
違うね。似てるのは雰囲気だけだった。
エリート思考で弱者を見下す。ぼくの嫌いな
典型的なタイプ《プラス》の人間だ。
中身はまるで正反対。似ても似つかない。
やっぱりめだかちゃんは唯一無二の存在だ。
そんなことを思って鈴音ちゃんへの評価を
改めていると、やけに大きい声がコンビニ内に
鳴り響いた。
「っせえな、ちょっと待てよ!
今探してんだよ!」
「だったら早くしてくれよ。
後ろがつかえてんだから。」
「あ?なんか文句あんのかコラ!」
どうやら会計で揉め事らしい。顔を覗かせたら、
見覚えのある赤髪の不良君じゃないか。 手には
カップ麺が握られていた。
「『やっほー赤髪君。早速揉め事なんて、
さすが不良だね。』」
「あ?なんだお前」
ぼくなりに友好的に話し掛けたつもりだったん
だけど、不良君は敵が増えたと勘違いしたのか。
強気な態度で睨みを利かせてきた。
「『同じクラスの球磨川禊ですっ。
よろしく仲良くしてくださいっ!』」
そう言うと、少し納得がいったのか、不良君は
落ち着いた雰囲気に変わる。
「ああ、そういやなんとなく見覚えが
あるな。学生証を忘れたんだよ。
これからあれが金の代わりになるのを
忘れてたんだ。」
手ぶらのところを見ると、一度寮には戻ったんだね。
その時に忘れたんだろう。学生証が支払いの代わりに
必要だというイメージはぼくもまだ持てない。
「『良ければ立て替えるよー?取りに行くのも
面倒だろうしね。そっちが構わないなら
だけど。ぼくのことは気にしなくていい
からね。』」
「・・そうだな、ぶっちゃけ戻るのも
面倒だ。ムカついてたしよ」
寮までの距離は大したことない。だがこうして
いる間にも続々とレジには生徒が並び始めて
長蛇の列を形成し始めている。
「俺は須藤だ。ここはお前の
世話になることにするぜ。
よろしく頼む。」
そういい握手を求めてきたので、ぼくも返した。
その瞬間。
………ゾゾゾッッッッ!!!!
バッ!手を振り払われた。
「『?』」 「『…………』」
「『・・・どうかした?須藤くん。』」
「・・・い、いや、なんでもねえ。」
「『ならいいけど。
よろしくね須藤くん。』」
須藤くんはぼくにカップ麺を手渡すとお湯を
入れるよう指示して外に出ていった。
そんな一連のやり取りを見ていた鈴音ちゃんは
呆れたようにため息をついて
「初対面からコキを使われているわね。
これがあなたなりの友達の
作り方なのかしら?」
「『あっれー、鈴音ちゃんまだいたんだ。
てっきりもう帰ったのかと思ったよ。
それにぼくはパシらされているのには
慣れてるからね。むしろパシりに関して
ぼくの右に出るものはいないよ!』」
「・・・彼の風貌、外見に恐怖している、
という感じでもなさそうね。」
ぼくの言葉は完全に無視して自分の話を
進めようとしている。悲しい。
「『恐怖? おいおい、人を見た目で
判断しちゃいけないぜ鈴音ちゃん。』」
「普通の人なら、彼のようなタイプとは
距離を置きたがるものなのよ。』」
「『ぼくは須藤くんが悪い人には
見えないからね。ってゆーか、
鈴音ちゃんだってそこまで
怖がってないよね?』」
「あの手の人種を避ける人は、自分を守る術を
持たない人が殆どだから、仮に彼が暴力的な
行動に訴えても、私なら避けられる。
だから下がらないだけよ。」
鈴音ちゃんの言ってることはいちいち小難しい。
なんというか変わっている。でも一つだけ
気づいたことは恐らく彼女は完璧主義者なのだろう。
妥協や甘え、曲がったことを嫌っている。
彼女をなぜそこまでさせているのだろうか。
入学式の時に前に出て話をしていた生徒会長…
確か名前は堀北学。同じ名字だからもしかしたら
何か関係があるのかもね。兄妹かな?
まぁそれはまた今度探ることにしよう。
「買い物を済ませましょう。
他の人にも迷惑になるから」
鈴音ちゃんと共に買い物を済ませて、学生証の
提示を求められたので、レジの機械に通すと、
すぐに会計が済んだ。小銭の受け渡しもないので、
スムーズに買い物ができて作業は円滑だ。
「『本当にお金として使えるんだね。』」
レシートには各商品の値段と、残高ポイントが
印字されていた。支払いが何の滞りもなく済む。
さっき須藤くんに任せられているカップ麺に
お湯をいれる。カップ麺が出来上がる3分の間、
この学校について改めて考える。
本当にここの学校は不気味だ。生徒の個人個人、
お金をここまで配って、一体何のメリットが
あるんだろう。今年の入学生は160人だから、
単純計算480人前後の在校生がいると考えて、
月4800万、年間で5億6000万か。
幾ら国主導と言っても、やり過ぎとしか思えない。
本当に夢のような学校だね。思わず反吐が出そうだ。
「『鈴音ちゃんはどう思う?
これだけの大金をいきなり持たせて』」
「そうね…。敷地内にある設備だけでも
十分多くの生徒は集まるわけだし、
無理して学生にお金を持たせるなんて、
必要性があるとは思えない。学生本来の
目的である勉強を疎かにしてしまう
可能性だって、十分あるはずなのに。」
これがテストとかで頑張ったご褒美ってことなら
まだ分からないでもない。まぁもしそうだとしたら
ぼくは3年間一緒お金は貰えないだろうけど。
その点に関しては嬉しい。コンビニの袋に
入ってる週刊少年ジャンプをみながら、そう思う。
3分たって、カップ麺が出来上がった。
「指示できるようなことではないけれど、
極力無駄遣いは避けた方がいいわよ。
浪費癖がつくと後々大変だと思うから。」
「『うん、肝に命じておくよ』」
そう言って、鈴音ちゃんは何も言わず帰っていった。
「『鈴音ちゃーん。また明日ねー』」
うん、案の定無視だ。
コンビニの外でジャンプを読みながら須藤くんを
まっていると、手を振りながらこっちに来た。
「おーい球磨川。サンキューな。
今回は助かった。んじゃまたな。」
そう言ってカップ麺を取って、早々に帰っていった。
残念だなぁ。少し須藤くんとも話したかったのに。
そう思いながらぼくも寮に帰っていった。
今日から自分の家となる寮へと帰りつくと、
ベットにダイブして今日のことについて考える。
この学校には簡単に言うと将来を立つ人材、
エリート、エリート候補生が山ほどいる。
そのことを思うとニヤニヤしてくる。
ぼくの敵はエリートだけだからね。
だから感謝してるんだぜ?こんな敵《エリート》
だらけの学校にぼくを合格させてくれたことに。
世界は平等じゃないってこの物語の1話目で
言ったよね?それを解決する方法があるんだよ。
エリートを皆殺しにすればいい。そうすれば
世界は平等で平和になる。軍事兵器とか、
悪法とか、不公平なシステムとか、ああいうのって
基本はエリートが考えてエリートが作るんでしょ?
だからそいつらを全員消しちゃえばいいんです。
その後にできる馬鹿ばっかりの世界って、
きっと最高だと思うんだよね。なんせ馬鹿は
なーんにも考えないから。悩まないし困らない!
エリートがいなければ嫉妬にかられることもないし
ご飯食べて寝てればそれでみんな幸せだから。
えっ?そんなことできるわけないって?
できるよ、だってぼくは昔からそれだけを
生き甲斐にしてきた男ですから。
「『ま、みんな見ててよ。
国が集めたエリート共をぼくが
螺子伏せてあげるから。』」
そう決意し球磨川禊の1日目の学校生活が終わった。
学校2日目、ぼくは教室のドアを開けて皆に
「『みんなー、おっはよー!』」
しかし、なぜか皆は気まずそうにしている。
なんでだろうと思いながら、自分の机に向かうと
「本当に哀れね。」
「『おはよー鈴音ちゃん。
哀れってなんのこと?』」
「あなた皆から無視されてるじゃない。
昨日の自己紹介の時、何をやらかしたの?」
ぼくがもう何かをやらかしてる前提なんだね…。
「『別に何もしてないのになー。
まぁ無視されてるのにも
慣れてるからね。問題ないよ。』」
そんなことを話していると先生が教室に入ってきて
この学校で始めての授業が行われた。
まぁ初日だったということもあって、大半は
授業の勉強方針等の説明ばかりだった。
先生たちは進学校とは思えないほど明るくて
フレンドリーで、多くの生徒が拍子抜け
したのが正直な感想だろう。須藤くんに関しては
殆どの授業で眠りをこけていた。教師たちはそれに
気づいてたろうけど、注意する気配は全くない。
授業を聞くのも聞かないのも個人の自由だから
教師は関与しない。これが義務教育じゃなくなった
高校生たちへの対応ってことなんだろうか。
因みにぼくも授業中に堂々と週刊少年ジャンプを
読んでいたけど何も言われなかったよ。
授業中に漫画を読めるなんて、最高だねこの学校は。
そんなこんなで昼休みになり、顔見知りになった
人たちと食堂へと消えていく。ぼくはそれを
少し羨ましそうに見ながら、机の上に弁当を出した。
どうやら隣にいた鈴音ちゃんも食堂へと
行ったらしい。気がつくと教室にはほとんど
人がいなくなっていた。少し哀しく思って
弁当に口をつけようとしたそのとき、
「球磨川くん……だよね?」
突然美少女に声をかけられた。遂にぼくにも
モテ期が?! そう思っていると
「な、なんで泣いてるの?!」
おっと、あまりにも嬉しくて泣いてしまったようだ。
「『ごめんごめん。まさか話しかけられるとは
思わなくてね、たしか、
桔梗ちゃんだったよね?』」
「覚えてくれてたんだ、嬉しいなぁ。」
えへへ、と笑顔をこぼす彼女。可愛すぎる。
どうやら、かなり惚れっぽい男らしい。ぼくは。
「『そりゃ可愛い子の名前は覚えるように
してるからね。で、ぼくに
何か用かな?』」
「実は……少し聞きたいことがあって。」
まさかこれはぼくに彼女がいるかいないかを
聞きたがっているのか?! まさかこんなにも
早くぼくに好意を抱いてくれる女の子がいるなんて
またしても涙が出そうだ。
「その、ちょっとしたことなんだけど、
球磨川くんって堀北さんと仲いいの?」
ふっ、まあ気づいてはいたさ。こんな可愛い子が
ぼくに好意を抱くわけがないとね。ほんとだよ?
しかもぼくに用件というより、鈴音ちゃん目的
なのにも悲しさが生まれる。
「『ぼくと鈴音ちゃんが? おいおい、
冗談はやめてくれよ。ただ隣の席
ってだけだよ。因みに鈴音ちゃんに
何か用でもあるの?』」
「あ、うん。その、一日でも早く
クラスの子とは仲良くなりたいから、
だから一人一人に連絡先を聞いてたんだけど、
堀北さんには断られちゃって。」
そういうことか、鈴音ちゃんの性格上、まぁ
断るだろうね。こんな可愛い子の連絡先を
聞けるのに勿体無いことするなあ、鈴音ちゃんは。
「堀北さんってどういう性格の人なのかな?
友達の前だと色んなこと喋っちゃう人?」
「『人付き合いがかなり苦手のタイプだとは
思うよ。でもどうして
鈴音ちゃんの事を?』」
「ほら、自己紹介の時、堀北さん教室を
出ていっちゃったでしょ?まだ誰とも
お話してないみたいだし、心配で」
知らない人の心配をするなんて、なんていい子
なんだ。そういえば、自己紹介の時、クラスの皆と
仲良くしたいって言ってたっけ。
「『話は分かったよ。でもぼくも彼女と
話したのは昨日が始めてだからね。
残念だけど助けにはなれないよ。』」
「ふぅん……そうなんだ。ごめんね?
いきなり変なこと聞いちゃって。」
「『いや、問題ないよ。ぼくもこんな
可愛い子とお喋りできて嬉しかったしね』」
「あはは…。それと球磨川くん。昨日の
自己紹介のことなんだけど、球磨川くんの
自己紹介のとき、なにかしなかった?」
「『なにかって?別にぼくはなにも
してないよ?』」
「うーん、身体に何か螺子込まれたような、
そんな感じがしたんだけど。」
「『あはは、面白いな桔梗ちゃんは。
それは何かの気のせいだと思うよ』」
そっか。そんな事あるわけないもんね。
そう言ってぼくにバイバイと手を振って食堂へと
向かっていった。今日は可愛い女の子と話せて
いいことあったな。そんなことを思いながら弁当
へと手をつける球磨川であった。
chapter1
全然進まないし球磨川を表現するのがむずい。
きつくなってきたぜ。