デスゲームが始まって一ヶ月。
俺はとにかくレベルを上げまくった。
SAOのようなレベル制RPGはとにかくレベルが命だと分かっている。
レベルを上げればその分自分が強化される。
強化されたら自分は強くなり死ににくい。
「これで・・・100頭目っと・・・もう15か・・・」
一ヶ月、俺はレベルだけを上げていたためLvが15になっていた。
武器もこの層では最強クラスの片手剣『アニールブレード』にしてある。
だが、俺は時々思う。
ここまでして意味はあるのだろうか・・・と。
デスゲーム勧告でもう数百は死んだ。
自分はそんなことにならないように強くなったが意味はあるのだろうかと。
しかしそんなことを考えていると遠くに人が見える。
人数は二人で男女プレイヤーだった。
ちなみに俺は姿がばれないようにフードを被っている。
理由は昼があまり好きではないのと人に見られるのが苦手だからだ。
そして男女プレイヤーが俺に気付くと近寄ってきた。
だが俺はあまり人と関わりたくなかった。
だから選択肢は一つ。
「逃げよう」
自分の持つ敏感を全開にして男女プレイヤーから逃走した。
さすがに怪しまれていたが俺は関わるのが嫌いだ、怪しまれようとも知らん。
男女プレイヤーから逃走した俺は《トールバーナ》という街に来ていた。
ある意味ここに来るのは嬉しい誤算なので良かったが。
「さて・・・広場で待つか」
何故ここに意味があるかと言うと第一層攻略会議がここ《トールバーナ》で行われる。
俺も攻略には参加したかったため、情報を聞いたらすぐに何処かに行くつもりだ。
そしてしばらくすると一人のプレイヤーが前に出る。
「俺の名は『ディアベル』!職業は・・・気分的にナイトやってます」
ディアベルなるプレイヤーの言葉に参加していたプレイヤーの緊張が解けていたようだった。
こんなことを言うのもあれだが、あういうプレイヤーが居ると統率が取れる。
その分結束力も高まるし、攻略も安全に出来る可能性が出てくる。
「さて、今から第一層の攻略会議を始めたいと思う!みんなは《始まりの街》で無料配布されているガイドブックを持っているかな?」
ディアベルが手に持っているのは道具屋で無料配布されているガイドブックだった。
SAOでの最低知識や、軽いモンスター情報・・・色々なことが詳細に書かれている攻略本のようなものだ。
「つい先日、俺のパーティーがボスの部屋を見つけた!また、ガイドブックの新しい情報も出ている!ガイドブックによるとボスの名前は『イルファング・ザ・コボルド・ロード』。取り巻きが『ルイン・コボルド・センチネル』だ。そしてボスのHPが減ると武器の変更がされるとのことだ!」
ディアベルの続々の情報にプレイヤー達は驚くことばかりだ。
俺も実はボス部屋は知っているが時期が時期なだけに言いづらかった。
まず早くこの情報を出してしまうと推定レベル以下での攻略となる可能性が出る。
これは俺達が不利になるためレベルが全体的に上がる頃を見図っていた。
・・・まぁディアベルによって意味が無くなったが。
「じゃあみんな、パーティーを組んで1つのレイドを作ってくれ!」
ディアベルさん、それは無理です。
俺はお断りさせていただくぜ。
そう思い俺は会議から抜けようとすると一人のプレイヤーがディアベルに抗議する。
「ちょいと待ってんかい!」
「あなたは?」
「ワイの名は『キバオウ』ちゅーもんや!おい、お前ら!おるんやろ!この中に美味しい狩り場やクエストを知ってる奴が!」
「キバオウさん、それは元βテスターの人達の事かな?」
「そうや!β共はわいらビギナーを置いてどこかに行きよった!そんで効率の良い狩り場なんかの情報を独占しとるんや!」
キバオウの自分勝手な言動にいらっとした俺は帰る足を引き返してキバオウの元へと足を運ぶ。
「な、なんや自分」
「名前なんぞ言わなくて良いだろ、それよりお前さんはβテスターが美味しい狩り場を独占してると言ったな?」
「そ、そうや!」
「ならばそれは違うな。βテスターは確かに有利だが経験が物を言わせてる。初心者とは違ってその経験を活かしている。現にガイドブックも元βテスターが作った物だ」
「そ、それでも詫びってもんは必要やろ!」
「ならば俺が代表して謝ってやろうか?詫びの品を貰いたい等という考えは今の状態では攻略を落とすだけにしかならないと思うが」
俺がキバオウに対してどんどん言っていくと納得したのか不機嫌ながらもベンチに座る。
かくいう俺は会議から抜けようとしたのだが。
「おーい、君もあぶれ?」
「あぶれでは無いが」
「ならパーティー組んでくれないか?人数が足りないんだ」
「良いぞ」
パーティー申請が来たため承諾すると3人の名前が表示される。
『Kirito』『Asuna』『YuuKi』の3人だ。
「俺は『ソウタ』だ。よろしく」
「ああ、よろしく」
「・・・よろしく」
「じゃ俺は一度用事があるからここを離れるぞ」
「聞いていかないのか?」
「聞く内容は聞いたからな」
俺はそういうとキリト達から離れて用事の場所へと足を運ぶ。
その場所はある人物と会う為の待ち合わせ場所だ。
「来たぞ、ミヤビ」
「早いね」
「聞きたいことは聞いたしな・・・で、お前は行くのか?」
「ううん、行かない」
「ならボス攻略終わったら一緒に行動するか?」
「・・・うん」
俺はミヤビと話しているとサイン音がした。
それはメッセージ音でキリトからだった。
【宿屋で泊まることにした。ソウタの分もあるから《クルガヤの宿屋》に来てくれ】
「俺呼ばれたから行かないとだ」
「ん、わかった」
「また明日な」
「うん、明日」
俺はミヤビと別れたあと、キリト達と合流すべく《クルガヤの宿屋》へと向かった。
程なくして到着したそこは隠れ家みたいな感じで宿泊料も80コルでありながら風呂付きでミルク飲み放題だった。
「すごい安いな」
「だろ?」
「ああ、良い宿屋だ」
「それで・・・用事って何してたんだ?」
「人と会ってただけだ、明日の攻略に参加するらしいがな」
「そうなのか・・・なあ、ソウタ」
「ん、なんだ?」
「・・・なんでもない」
「そうか」
その後、風呂に入っていたのであろうアスナとユウキは運悪くキリトが扉を開けてしまい正義の右ストレートをお見舞いされていた。
俺は椅子に持たれながら窓を見ていたから飛んでこなかったがな。
「キリト、あれはお前が悪い」
「だから不可抗力だ!」
「キリトのが悪い!」
「キリト君のが悪いね」
「諦めろ、この世界でも女性はこういうことには強いんだ」
「くそぉ・・・」
キリトが半分拗ねながらなのは昨日の除き事件のせいだった。
まぁキリトが確認もせず入るから吹き飛ばされたんだろうが。
「まぁそれまでにしとけ、一応ボス攻略を確認するぞ」
「まず俺達F隊は取り巻きの『ルイン・コボルド・センチネル』を本隊に近づけさせない事だ。恐らく何度も戦うことになるからスイッチしてポットローテをしよう」
「スイッチ?」
「ポットローテ?」
ユウキとアスナがキリトの単語に首を傾げる。
マジか・・・それ知らないって中々辛いぞ。
「スイッチは二人一組以上でやる。一人の隙をもう一人がカバーするんだ。ポットローテはスイッチで下がった時に回復、それの繰り返し」
「そうなんだ~」
「キリト、教えとけよ」
「悪い、忘れてた」
キリトのうっかりは今に始まった事では無いだろうから追求はしない。
どうせどっかでまたやらかすだろうし。
そんなことで俺達はボス部屋の前まで到着する。
ここで最後の確認をしてから突撃となる。
「それじゃあみんな、準備は良いかな!」
「大丈夫そうだね・・・じゃあ俺から言うことは一つ!勝とうぜ!」
「「「おぉー!!」」」
ディアベルの纏める力はかなり強力だな。
統率もありながら士気も上げている。
そしてディアベルが扉に手をかけて開くと大きな部屋に入る。
すると上からボスがおりてくる。
第一層ボス『イルファング・ザ・コボルド・ロード』が登場し、回りには『ルイン・コボルド・センチネル』が湧いて来る。
「全員、突撃ー!」
ディアベルの指揮によって俺達は各々の役割に向かった。
戦闘を開始して10分程が経過している。
F隊は取り巻きを近づけさせないように攻撃し処理している。
「ソウタ、スイッチ!」
「あいよ!」
俺はキリトと交代すると片手剣スキル『ソニックリープ』でセンチネルに止めを刺した。
「よし、とりあえずは大丈夫だろ」
「強いな、ソウタは」
「そうでもしなきゃ生きれないからな」
「そうなのか・・・?」
キリトが俺の雰囲気が少し変わったのに気付いたのか怪しげに聞いてくる。
だが、俺は答える事はなかった。
本隊から唸り声が聞こえたから。
「グガァァァァアア!!」
「武器変更か!」
事前のガイドブックには体力が一定以下になると武器を投げ捨て『タルワール』に変えるとされている。
だがボスが取り出したのは曲刀『タルワール』ではなく刀カテゴリ『野太刀』だった。
「よし、俺が出る!」
「ディアベル、止まれぇぇぇぇぇ!!」
ディアベルが前に出ようとするが俺の咆哮によって動きを止める。
そしてボスは刀スキル『旋車』を構える。
あれは当たると確実に死ぬ攻撃だ。
攻撃によって飛ばれるとそのまま上段打ち下ろしを喰らう。
宙に飛ばされているから回避のしようもない。
「くそっ・・・!キリト、やるぞ!」
「・・・ああ!」
俺はキリトと一緒にボスを削っていく。
するとボスは『旋車』から『幻月』に切り替えた。
それに反応出来なかった俺達はそれを喰らい吹き飛ばされる。
「ぐおっ・・・」
「あぐっ・・・!」
そのままボスは俺達に『緋扇』を当てに来る。
だがそれは一人のプレイヤーによって攻撃はこなかった。
「ここは俺達が食い止める!いつまでもダメージディーラーに任せてたらタンクの名が泣くからな!」
「悪い!」
俺とキリトは防いでくれたプレイヤーに感謝しつつ、一度退いた。
防衛していてくれる間にポーションを飲んで体力を回復する。
「みんな、今のうちに攻撃だ!」
「よっしゃあ、やったるでー!」
「うおおー!」
タンクによって攻撃を防がれ隙が出来たため、ディアベルはチャンスと思い一斉攻撃をする。
俺達も回復仕切ると突撃する。
キリトは『バーチカル・アーク』で切り付ける。
俺は『ソニックリープ』で突進し、続けて『レイジスパイク』で突き刺す。
それが止めとなってボスの体がポリゴン状となって消え散る。
「よ、よっしゃぁぁああああ!!」
「やったぞ、クリアだー!」
画面にはCongratulationsと表示され、第一層が攻略された。
だが、一人だけ納得していないプレイヤーがいる。
「なんでや!」
「ど、どうしたんだい?キバオウさん」
「どうしたもこうしたもない!あんたらなんでボスの攻撃知っとったんや!」
「・・・ちっ」
「そのボスの攻撃をディアベルはんに教えとけば危険は無くなってたはずや!」
キバオウの反論に回りのプレイヤーが賛同し始める。
キリトは罰が悪そうな顔をする。
するとキリトは何かを思いついたのか俺に合図をする。
「ククク・・・あははは・・・あっはははは!」
「な、何がおかしいんや!」
「いや・・・可笑しすぎてね・・・ボスの攻撃?そんなもの俺が教えたからさ!俺はβテストの時、誰も到達出来なかった層にまで昇った!ボスの攻撃が分かってたのは上の層で散々刀を使うモンスターと戦ったからだ」
「な、なんやそれ・・・」
「他にも色々知ってるぜ?情報屋なんて目にならないくらいにな!」
「そ、そんなん・・・チートや!ただのチーターやろ!」
「こいつβテスターだ!だからビーターだ!」
「ビーター?良い呼び名だな。これからは元βテスター如きと一緒にしないでくれ」
キリトはこの場を収めるべく必要悪として打って出た。
「キリト、死ぬなよ」
「ああ、死なないさ」
俺とキリトはそれを交わすとキリトは第二層の扉を開けて先に進んだ。
俺はアスナとユウキに近付く。
「アスナさんにユウキさん・・・パーティーありがとう」
「ソウタ君!?」
「ソウタ!」
「・・・じゃあな」
俺はパーティーを抜けるとキリトの後を追うように先に進んだ。
そしてキリトを見つけるとあるものを渡す。
「キリト、これを」
「・・・これは?」
「さっきのボスのLAB。二つ出てな、好きな方を選んでくれ」
俺はキリトにLABを見せると二つのうち一つを渡す。
キリトが選んだのは『コート・オブ・ミッドナイト』。
「じゃあ・・・これを貰うよ」
「わかった。あとフレンド登録もしとこう。いつか役立つかも知れん」
「ああ」
キリトとフレンド登録し、二手に別れた。
俺はもう一つの装備である『スカイナイトクローク』を装備すると第二層の宿屋で宿泊した。
この日はいつもより疲れたな。
・・・あの二人には悪い事をしたが、大丈夫だろう。
ユウキは誰よりも速度がある。
アスナは細剣を活かした攻撃で目に見えないぐらい早い。
ソロ活動としても問題ないくらいの実力がある。
「・・・寝るか」