ソードアート・オンライン ~幻想となった少年~   作:紅風車

3 / 10
竜使いの少女

第一層攻略から早数ヶ月が経った。

俺は目の前にいるオレンジプレイヤーに対して片手剣を向けていた。

 

「た、たすけてくれ!牢獄にも入るから!」

 

「・・・死ね」

 

命乞いをしようが俺は知らない。

俺はこの数ヶ月、オレンジ・レッドのプレイヤーを暗殺していた。

無差別に殺すわけでもなく、しっかりと裏付けによる暗殺だ。

嫌々でオレンジにさせられたプレイヤーは見逃している。

だが自分から好んで成っていくプレイヤーに慈悲なんて必要無いだろう。

 

「呆気ないな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は基本、表と裏を別けている。

表はいつものソロ活動。

裏はPKK(プレイヤーキラーキラー)として。

だが、PKKの噂がかなり広がっていた。

 

「聞いたか?最近オレンジ減ったらしいんだ」

 

「なんでもPKKする奴がいるんだろ?」

 

「ああ・・・いつ俺達にも牙が向くか分かったもんじゃねぇよ」

 

自己満足でやっているから文句はないが言いようが失礼なものだ。

ちなみに俺は35層の迷いの森にいる。

目的はクエストの素材集めなのだが。

 

「せぇやぁああ!」

 

俺のレベルは90でデスゲームとなったSAOでは階層+10が安全なレベルとされている。

つまりここはLv45ほどで問題なく攻略は可能なのだが。迷いの森に関してはそうもいかない。

ここ迷いの森はマップが常に変化しており、地図が無ければ脱出がとても難しい。

 

すると遠くで戦闘に入っているプレイヤーがいた。

プレイヤーは一人だがモンスターは5体。

どう足掻いてもジリ貧だと思いプレイヤーの元に急いだ。

 

「ピナ!ピナぁぁ・・・!」

 

ピナと言ったプレイヤーである少女は恐らくビーストテイマーなのだろう。

そしてこの戦闘で死んでしまったと見るべきだ。

 

「くそっ・・・」

 

猿型モンスターを一気に俺は切り捨てると少女の元に駆け寄る。

 

「・・・悪い、仲間を助けれなかった・・・」

 

「い、いえ・・・」

 

「君は・・・ビーストテイマーか」

 

「はい・・・」

 

「ならば・・・何かアイテム設定がされていないか?」

 

「ちょっと待ってくださいね・・・」

 

少女は淡い光を放つ羽を拾うと指で突いた。

ウィンドウが出てきてそこには『ピナの心』と表示される。

 

「ピナ・・・ピナぁ・・・」

 

「・・・まだ諦めんな、方法がある」

 

「方法・・・ですか?」

 

「ここから上の・・・47層の深部にビースト蘇生アイテムがある」

 

「47層・・・あとLv13も上げないとです・・・」

 

少女は表情を暗くする。

その表情がどこか妹に似て嫌な気持ちになったから俺は少女にトレードを送る。

 

「一応こんだけの装備があれば47層には太刀打ち出来る」

 

「あ、あの・・・なんでこんなことを・・・?」

 

「・・・さっきの表情。妹に似てて嫌だったんだ・・・それだけ」

 

「ぷっ・・・くすくす・・・」

 

素直に教えるとこの女の子笑いやがったよ・・・。

まぁ良いけどさ。

とりあえずパーティーを組んで、一度迷いの森を脱出することにした。

 

「私はシリカっていいます」

 

「俺はソウタ。よろしく、竜使いさん」

 

「へっ、知ってたんですか!?」

 

「中層プレイヤーには有名だからな。攻略組でもある程度知ってる人は居るとは思う」

 

「ソウタさんは・・・攻略組なんですか?」

 

「攻略組ではない。俺はソロ専だから」

 

少女・・・竜使いシリカを連れて俺は迷いの森を脱出する。

《ミーシェ》の宿屋をシリカが教えてくれたため、俺はそこで宿泊することにした。

だが宿屋に行く途中赤い髪をした女性プレイヤーがこちらにやってきた。

 

「あら、シリカじゃない」

 

「っ・・・ロザリアさん」

 

「何とかあの森を抜けれたのね・・・でもあのドラゴンがいないみたいだけど?」

 

「ピナは死にました!でも絶対に復活させます!」

 

「へー、てことは47層に行くんだ。だけどあんた一人で行けるのかしら?」

 

ロザリアはシリカよりレベルが高いのだろう。

だがあの蘇生アイテムは前線プレイヤーぐらいしか情報を知らないはずだ。

その道中が過酷で中層プレイヤーであるロザリアに知る術は無いはず。

 

「なんでその事を知ってるか気にはなるが、生憎俺も一緒に行くんだ。問題ない」

 

「見た感じ弱そうね・・・あんたもこの子にたらしこまれたのかしら?」

 

「勝手に言ってろ。シリカ行くぞ」

 

「へ、は、はい!」

 

あえて煽ってくるロザリアを相手するのが面倒になり、俺はシリカの手を引っ張って件の宿屋に向かう。

そこはチーズケーキが美味しい宿屋で中層プレイヤーにも人気があるようだ。

 

「なんであんなこと言うんでしょうか・・・」

 

「シリカはこの手のゲームは初か?」

 

「はい・・・」

 

「どんなゲームにもあんなのは居る。リアルとゲームで性格を変える奴は居るんだ・・・これからも相手には気をつけたのが良い。特に名のあるプレイヤー程狙われる」

 

「わ、分かりました」

 

そんなことを話しているとチーズケーキがやってきた。

見た目は普通のチーズケーキだが、ほんのりと甘い匂いがする。

 

「ほぅ・・・?」

 

「そ、ソウタさん?」

 

俺は一口、口の中に入れるとチーズケーキの味が広がっていった。

だがしつこくなく、程よい甘みが残る。

 

「・・・美味いな」

 

「ホントですか?」

 

「ああ、リアルでも甘いものには煩いと誇示するが・・・これは美味い」

 

「良かったです・・・」

 

「またここのチーズケーキを食べに来ても良いな」

 

それほどまでここのチーズケーキは美味しかった。

ちなみに追加で4つほど注文して全部食べた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

個室に入ると俺はとりあえず寛いだ。

フレンドリストには数名ほどしか居ないが俺の場所が探られないように探知機能は切っている。

 

あの後、アスナは最強ギルドと言われる『血盟騎士団』に加入、副団長となった。

また、細剣の攻撃がまったく見えないことから『閃光』と呼ばれる程までになっている。

 

ユウキは持ち前の戦闘能力を活かして無類の強さと挑んでくる決闘に勝利している姿から『絶剣』と言われている。

絶剣は『空前絶後の剣』や『絶対無敗の剣』という意味があるらしい。

 

キリトは先程の二人と違い時々俺と会ったりはする。

第一層の件から『ビーター』や『黒の剣士』とも言われる。

 

オレンジ・レッドプレイヤーを俺は殺しているがそれはそれをするに至る悪行をしているからだった。

いつPKで攻略が止まるか分からない。

ならば俺はそのPKをPKしていけば攻略は進むと考えた。

結果的にオレンジギルドはほとんど死滅しているが一部がまだ消えていない。

その一つが『タイタンズ・ハンド』というギルドだ。

ある程度のメンバーは分かっているがリーダーが如何せん不明で後回しにしている。

 

「あ、あの・・・」

 

考え事をしていると扉を叩く音がする。

先程の声的にシリカだろう。

俺は扉を開けるとシリカを入れる。

 

「どうしたんだ?」

 

「・・・そ、その・・・」

 

俺はある事を考え、シリカの耳元で言う。

 

【俺の行動に合わせてくれ】

 

【は、はい】

 

「明日行く47層の説明を少しだけやっとく」

 

「分かりました」

 

俺はストレージから『ミラージュ・スフィア』というアイテムを出すとテーブルに置いて起動させる。

 

「わぁぁ・・・綺麗ですね」

 

「ミラージュ・スフィアっていう3Dマップだ。データは自分で探索した所ならどこでも映せる」

 

「自分で・・・」

 

「ま、それは良いとして。ここが47層なんだが、この奥の道を進む。道中は渡した装備でも太刀打ち出来る。それで奥に進むと一定の場所から湧く速度が上がるからそれまたその時に言う」

 

「は、はい」

 

俺はシリカに説明をしていると扉の向こうから気配を感じた。

大方誰かが盗み聞きしてるのだろうがそれは明日にでも処刑すれば良い。

 

「これで説明は終わり・・・あと一人が嫌ならそこのベット使っとけ。俺はまだ寝る気はないし」

 

「ご、ごめんなさい・・・」

 

「構わん。眠そうにしてるなら寝とけ」

 

そういうとシリカはベットに入って寝てしまった。

俺はその間にある人物にメッセージを送る。

 

【明日、予定あるか】

 

【無いよ、でもどうして?】

 

【無いなら少し付き合ってくれ、アスナとキリトにも予定が無ければ頼む。場所はリズベッドの店で】

 

【分かったよ】

 

俺は人物にメッセージを送り終えると、ストレージから記録結晶を取り出した。

 

「~♪~♪」

 

「・・・はぁ」

 

「君が~♪未来の世界は~♪」

 

この記録結晶はミヤビが録音して俺に渡してきた物だ。

疲れたとき、これを聞いている。

 

「・・・いい声だな」

 

何度も聞く度に俺は涙を流す。

この歌を聞く度にあの時の自分の無力さを思い出す。

 

「・・・ごめん・・・ごめんな・・・」

 

この歌を唄うのはミヤビだ。

今ミヤビはレッドギルド『笑う棺桶』に所属している。

それも創設者『PoH』の右腕と言われる程に。

俺を助けるために、ミヤビは自分を犠牲にしてラフコフに入った。

あの時俺が強くあればミヤビが入らなくても良かった。

俺はその日から、PKを殺すプレイヤーに成り果てた。

いつかミヤビに会えると信じて。

 

 

俺が死ぬのは何時になるのだろう。

 

 

 




文面で歌っている曲はSAOのマザーズ・ロザリオ編の曲です。
そのまんま書いてしまうと引っ掛かるので一部分だけの描写にしています。

評価・意見よろしくです。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。