成り代わりチチさんの離婚計画   作:ミカヅキ

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お待たせしました!第3話更新です。

今回は過去編です。成り代わりチチさんが成り代わったと自覚してからの数年間のお話です。次回も引き続き過去編となります。
今回から“成り代わり”要素が強くなりますので、苦手な方はご注意ください。

また、次回に向けての導入として成り代わりチチさんの能力について軽く触れております。微混合(念能力)タグがここから活用される事になりますので、こちらも苦手な方はご注意ください。


全ての想いの始まり

 ――――――――――――――チチが悟空に離婚を求めた瞬間から(さかのぼ)る事、およそ28年。

 その頃のチチは、いつの日か悟空が迎えに来てくれる事を夢見て、日々武術と花嫁修業に励んでいた。しかし、チチが13歳になって間も無く、運命の分かれ道が訪れる。

 父‐牛魔王との組手の最中に誤って頭部を強打し、意識を失ったのである。

 そして目覚めた時には、チチになる以前の()()1()()()()()としての記憶を取り戻していた。

「…世の中不思議な事が多いべ。」

 ベッドに横になったまま手鏡を覗き込み、そこに映った自分の姿をまじまじと見詰めながらチチが呟く。

 そこには、昨日までと全く同じ姿で、しかし()()とは全く違う姿の少女がいた。

「“孫悟空”と“ドラゴンボール”、“亀仙人”って言ったらアレだべなぁ……。」

 これまで生きてきた13年分の記憶と、()()()()の記憶。その2つを照らし合わせると、割ととんでもない事実に気が付いた。

 ()()の世界では時折新作アニメを観る程度だった為、細かいところまでは知らないが、2つの記憶を総合すれば自ずと答えは見えてくる。

 すなわち、自分が生まれ変わったこの世界は“ドラゴンボール”という架空だった(はず)の世界であると。

「……しかも、“チチ”ってアレだな、確か主人公の奥さん。」

 自身も既に癖になってしまっている、東北弁にも似た特徴的な喋り方には覚えがあった。

 ………意外と重要な役回りとして生まれた事にじっとりと汗が出て来る。

「………もしかして、“孫悟空”と結婚出来なかったらマズイんでねぇかな…。」

 確か、2人の間に生まれた子供たちも重要な人物だった(はず)。細かいところまでは知らないが、息子2人はメインストーリーにがっつりと絡んでいたキャラクターだった気がする。

「…責任重大だべなぁ…。」

 記憶を取り戻すまでは確かに自分は“孫悟空”に恋い焦がれていた(はず)だが、今となっては()()が本当の自分の気持ちなのか、あるいは()()という名の予定調和なのかは分からない。

 しかし、“チチ”が“孫悟空”と結婚しないと物語のキーパーソンともなり得る2人の息子が生まれて来ない事は分かっていた。やはりここは、“孫悟空”に“約束”を守ってもらうしか無いだろう。

 はぁ、と重い溜息を1つ()いて、チチはそれ以上考える事を一旦放棄し、一旦現実逃避をすべく寝直す事にした。

 

 ―――――――その後、およそ6年間、チチはそれまで以上の武術の修行に励み、並行して花嫁修業も行っていた。“原作”が未読である為に、“チチ”と“孫悟空”が結婚した時期が全く分からず、最近ではどうしたものかと悩みの種となっていたが、6年の間には大きな収穫もあった。

 チチが前世で最も好きだったマンガ、“ハンター×ハンター”の念能力の体得に成功したのである。

 きっかけは修行中の父‐牛魔王の1言。

 

「チチは筋が良いべ。おめぇならもしかして、“かめはめ波”を使えるようになるかもしれねぇだな。」

 “かめはめ波”。その言葉に、“チチ”としての記憶が刺激される。

 “フライパン山”と称される程に燃え盛っていた、城と山。その炎を見事に消し去った、亀仙人の最終奥義。確かに()()には憧れる。

「……お(とっう)、“かめはめ波”ってどうやったら使えるようになれるんだべ?」

 こう、自分なりの必殺技というのが欲しかった。

 生まれ変わってからの修行により、自分が一般人とは群を抜いて強くなっている事は分かる。しかし、せっかくそういう技が使える世界に転生したのだから、何か1つでも身に付けたかったのだ。

「何でも、武天老師(むてんろうし)さまが仰るには、体内の潜在エネルギーを一気に凝縮させて放出する、っつう事らしいが、おらには出来なくてなぁ……。」

 チチなら出来るかもしれねぇべ、と続けた牛魔王が使用人に呼ばれた事で、その日の修行はそこで終了となった。

「潜在エネルギー…。所謂(いわゆる)“オーラ”っちゅう奴だべか……?」

 “オーラ”、と言えば1つ試してみたい事があった。

「もしかしたら……。やってみる価値はあるべな…。」

 ―――――――――それから半年の間、チチは朝晩修行の後に瞑想(めいそう)の時間を2時間ずつ取り入れた。4ヵ月が過ぎる頃、チチは自らの“オーラ”の流れを感じ取る事が出来るようになり、更に2ヵ月過ぎる頃にはその流れを目視出来るようになった。

 “精孔(しょうこう)”を開く事に成功したのである。

 “精孔(しょうこう)”とは、生物に存在するオーラが溢れ出す穴を指す。“ハンター×ハンター”に登場する特殊能力“念能力”を体得するには、この“精孔(しょうこう)”を開く事が必要不可欠。

 本来、人間の“精孔(しょうこう)”は閉じており、微弱なオーラしか出ていない上に普通の人間ならばオーラが垂れ流しとなる。しかし、この“精孔(しょうこう)”を開く事でその垂れ流しとなっている“オーラ”を自在に操る事が可能となるのだ。

 世界は異なるが、“ドラゴンボール”と“ハンター×ハンター”は、活用方法や呼び名が異なるものの“オーラ”を使うという点では同じ。もしかしたら、使えるようになるのではないか、という仮説は当たった。

 そこから先の修行は、面白いように進んだ。

 基本中の基本である、“四大行(よんたいぎょう)”のうち3つを、その日のうちに体得する事が出来たのだ。

 すなわち、

 ・“オーラ”を体の周囲に留める“(てん)”。

 ・逆に“精孔(しょうこう)”を閉じる事で“オーラ”を完全に絶ち、気配を殺す“(ぜつ)”。

 ・“精孔(しょうこう)”を広げて通常以上の“オーラ”を放つ“(れん)”。

 の3つである。

 “四大行(よんたいぎょう)”の残りの1つ、“(はつ)”。それだけは基本の中でも別格と言えるので、チチは最初に己の“系統”を把握してから、ある程度の応用技を身に付けた。

 ・“(てん)”と“(れん)”の応用技、物質に“オーラ”を纏わせる事で武器の強化などが可能な“(しゅう)”。

 ・“(ぜつ)”の応用技、“オーラ”を見えにくくする事で気配を消し、不意打ちなどを成功させやすくする“(いん)”。

 ・“(れん)”の応用技、“オーラ”を体の1部に集中させ、防御など様々な用途に応用出来る“(ぎょう)”。

 ・“(てん)”と“(れん)”の応用技、“(れん)”の状態を長時間に渡って維持する事で、戦闘時などに強固な防御に使用出来る“(けん)”。

 ・“(てん)”と“(れん)”の応用技、“オーラ”を体の周囲から広範囲に広げる事で、その内部の人や物の位置や状態などを細かく知る事の出来る“(えん)”。

 ・“(てん)”、“(ぜつ)”、“(れん)”、“(はつ)”、そして“(ぎょう)”の応用技、“(れん)”で生み出した“オーラ”全てを体の1ヶ所に集め、その部分の攻防力が飛躍的に上がる代わりにその他の防御を完全に捨てる諸刃(もろは)(つるぎ)ともなる“(こう)”。

 ・“(ぎょう)”の応用技、“オーラ”の流れや密度を自在に振り分け、瞬時に攻防力を状況に応じて変化させる“(りゅう)”。

 これらの応用技を全て体得するのに更に半年。間違いなく“体得”した、と思える手応えを感じた後でいよいよ“念能力”の集大成にしてそれぞれの個人差が現れる“(はつ)”の修行へと入った。

 そして、構想から1年半を得て、(つい)にチチだけの“(はつ)”、すなわち“必殺技”が完成したのである。

 

 それからは、より強さと“念能力”に磨きをかけながら、今まで以上に花嫁修業に励んでいた。そしてその1年半後の5月9日、彼女にとって生涯記憶に刻み付けられる出来事が起こった。

 

 

 

 ―――――――――時間にしてわずか数秒、しかしその時確かにチチは、“孫悟空”に2度目の恋をした。

 

 

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