Cheat Breakers~欠陥チートを以てチートを制す~   作:九戸政景

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政実「どうも、仕事説明会に限らず、説明会関連では必ず緊張する、片倉政実です」
戒人「どうも、千歳戒人です。
まあ説明会って奴は、大抵のは自分のこれからに関わる事だからな」
政実「そうなんだよね。まあ、それだけ大切な物だから、しっかりと聞かないといけないけどね」
戒人「そうだな。
さてと……それじゃあそろそろ始めていくか」
政実「うん」
政実・戒人「それでは、第2話をどうぞ」


第2話 神のような悪魔のような仕事説明会

「……ん」

 窓から射し込んでくる穏やかな光を感じ、俺は声を上げながらゆっくりと目を開けた。

 あれ……え、ここは……?

 一瞬、自分がどこにいるのか分からなかったが、すぐに昨日の出来事が頭の中に瞬時に甦ってきた。

「……そうだった。俺は自殺をしようとして、学校の屋上で白羽と出会って、それで――」

 その時、部屋のドアをノックする音が聞こえ、俺はその思考を一時中断した。

 ノック……何となく白羽じゃなさそうだから、アイツかな……?

 ノックの主について大体の当たりを付けた後、俺は即座にベッドから起き上がり、そのままドアまで歩いていった。

「はいはい……」

 そう声を出しながらドアをゆっくりと開けると、そこにいたのは――。

「おはようございます、戒人様」

「おはよう! 戒人!」

 ここでお手伝いをしてくれているらしい少女――竹林月夜と俺をここへ連れて来た謎の存在――白羽の二人だった。

 ……半分当たり半分ハズレか。

 二人の事を見ながらそんな事を考えていると、白羽がニコニコと笑いながら話し掛けてきた。

「ふふっ、ここに来たのが月夜だけだったら、美少女が起こしに来てくれるっていう、世間の男子学生にとってスゴく望ましい展開になったのにね」

「……ならねぇよ。というか、そんな事は一度たりとも望んだ事ねぇよ」

「え……戒人って、まさかそっちの……」

 白羽が突然自分の体を隠すような動きを見せたため、俺はだいぶイラッとしながら強く否定した。

「そっちでもねぇよ! そもそも、何でそういう方に思考が飛ぶんだよ!?」

「えー……だって、月夜みたいな美少女が来てくれたら、基本的に嬉しいもんじゃない?」

「はあ……お前なぁ……」

 ……ダメだ、このボケ要素の塊のような謎の存在との漫才にこれ以上付き合ってたら、朝から脳の血管が切れてしまいそうだ……。

 俺はそう思いながら大きくため息をついた後、ジトッとした目をしながら白羽に話し掛けた。

「……それで? 何の用だ?」

「ふっふっふ~♪ よーくぞ訊いてくれたねぇ♪ 実は――」

「朝食の準備が出来ましたので、戒人様を食堂の方へお連れしようと思い、こうしてお部屋を訪ねさせて頂いた次第です」

「……うん、つまりはそういう事だよ……」

 どうやら、さっきのがせっかくの見せ場だったらしく、白羽はそれを結果として邪魔された事で、少しショボンとしながら言葉を続けた。

 ……朝食か。まあ、せっかく作ってもらったわけだし、食いに行くか。

 この空間の特異性――時(・)間(・)などの概念の消滅により、本来であれば行うべき食事などといった行動が、ここでは必要ないらしいのだが、これから行うことになる『仕事』先ではやはり必要らしいので、時計を置いていたり時間を決めたりなど時間という物を忘れない工夫を 行っているらしい。

 ……まあ、確かに頭が混乱しないように状況とかを揃えておくのは必要――。

 その時、俺はある違和感に気付いた。

 ん……? そういえば……

「なあ、白羽?」

「ん、何?」

「ここって、時間の概念が無いんだったよな?」

「うん、そだよ?」

「……って事は、時(・)計(・)を(・)置(・)い(・)て(・)て(・)も(・)動(・)か(・)な(・)い(・)んじゃないのか?」

 そう、時計もそうだけど、時間の概念が無いはずなのに、俺達って何で動けてるんだ?

 そう疑問に思っていると、白羽が小さく笑いながらそれに答えてくれた。

「それはねぇ……部分的に時間の概念を残してるからだよ」

「部分的……?」

「そ。昨日も言った通り、ここには時間の概念は無いよ。でもね、元々そんなのに縛られない僕は別として、君達やこの屋敷にある物、後は庭園なんかみたいな物全てには部分的に時間の概念を与えてるんだよ。もっとも、君達の場合だと、ここにいる間は老化のような身体の変化とか存在の消滅以外の死の概念とかは無いけど、食べ物を消化する機能とか疲労みたいなのはしっかりとあるんだけどね」

「……えーと、つまり……ここにいる間は、食事とか睡眠とかを必要としない不老不死みたいな存在になってるって事か?」

「まあ、そう考えてもらって構わないかな。本当はもっと色々と複雑だけど、説明してると本当に長くなるし、今回は割愛させてもらうけどね」

「……分かった」

 ……本当の事を言えば、その色々とが訊きたかったが、実際に訊くなれば本当に長くなる気がしたし、それにそれを理解したその時には、もう『自分』が『自分』じゃなくなりそうな気がしたから、俺は訊くことを止めた。今の俺もある意味もう『人間』ではないけど、それとはまた違う『人外』への扉を開く事になるのは、流石にまだ勘弁しておきたいからな。

 今の自分の気持ちを再確認していると、白羽がニコッと笑いながら俺達に話し掛けてきた。

「さーてとっ、それじゃあそろそろ朝ご飯を食べに行こうか。

 最近他のみんなと食べてなかった分、新しい仲間とのご飯は絶対に楽しいだろうしね♪」

「畏まりました」

「……了解」

 正直渋々ではあったが、気分的に腹が減ったような気がしたので、俺は白羽達と一緒に食堂へ向かって歩いていった。

 

 

 

 

「いっただきまーす!」

『いただきます』

 白羽の明るく大きな声に対し、俺と月夜は静かに食事の挨拶をした。

 そして、目の前に並んだ朝食を見た時、俺は少しだけ不思議な気分になった。

 ……あれ、思ったより献立は普通だな。

 目の前にあるのは、こんがりとしたキツネ色に焼かれた数枚のトースト、発色の良い黄色と白と赤色のトリオが目を楽しませるベーコンエッグ、そして瑞々しさが光るレタスとトマトのサラダなど、様々な品々が並んでいた。

 ……そういえば、こんなにまともな食事なんて、一体いつぶりだろう……?

 朝食を食べながら心の中で俺は小さく首を傾げた。まだ向こうにいた頃は、まず親が何も作らず無益な争いばかりをしていたため、自分自身で残り物なんかを駆使して、適当にその日の三食と弁当を作っていた。まあ、どっちにしろ途中で物が飛んできたり、泥とかを掛けられたりして食えなくなってたんだが。

 ……それに比べたら、今ってかなり平和だよな……。白羽はとても美味しそうな顔をしながらパクパクモグモグと食べ続けてるし、月夜はとても上品に食器を使い分けながら静かに食べてるし……。何というかあっちの方が夢だったんじゃないかって思うほど、今の食事風景は平和な気がする……。

 そんな妙な気分になりながら朝食を食べていたその時――。

「あっ、そうだ。せっかくだから、今の内に今日からの『仕事』について説明しちゃうね」

 突然白羽がそんな事を言い始めたため、俺は咀嚼していた物を静かに飲み込んでから、小さくため息をついた。

 ……このタイミングでかよ、白羽……。

 白羽のその言い出すタイミングに対して少々呆れながらも、俺は話を聞くために静かに白羽が話し始めるのを待った。すると、白羽が突然指をパチリと鳴らし、自分の横に小さなモニターのような物を出現させた。そして、白羽は子供のようにあどけない笑顔を浮かべた後、いつの間にか取りだしていた眼鏡を掛けながら話を始めた。

「さてと、それじゃあこれからこの白羽君プレゼンツのお仕事説明会を始めていくけど、戒人の方は大丈夫かな?」

「大丈夫は大丈夫だけど……その眼鏡とか態々(わざわざ)自分の名前に君付けたりとか、これに一体何の意味があるんだよ……?」

「ああ、それはただの雰囲気作りだよ。何か眼鏡掛けてたりとか何とかかんとかプレゼンツとか言うと、何かそれっぽく見えるでしょ?」

「……そうだな」

 得意気な顔で俺の事を見る白羽に対し、俺は少々諦め気味に返事をした。

 ……ここに老化とかは無いらしいけど、どうやら疲れとかはあるみたいだし、これ以上ツッコむのは止めとこう。

 そして、白羽の事をジトッとした目で見始めたものの、白羽本人はそれには構わず『仕事』の説明を始めた。

「さてと……それじゃあ早速始めてくけど。この『仕事』についての概要は昨日説明したよね?」

「ああ……たしか、昨日貰った欠陥チート能力を駆使して、色んな世界にいるチート能力者を狩れば良いんだっけ?」

「大体はそうだけど、正確には――」

 その瞬間、白羽は再び指をパチリと鳴らし、横にあるモニターに文字を映し出された事を確認すると、言葉を続けた。

「『天界にいる神々からの依頼に応え、様々な世界にいる世界を滅ぼす可能性、またはそれに準ずる力を有する邪なチート転生者やチート能力者及びそれと同等の力を有する転生者や能力者の抹殺、または弱体化を執行する』

 これがこれから戒人にやってもらう事になる仕事の正確な内容だよ」

「……天界にいる神々、世界を滅ぼす可能性、チート能力者などの抹殺または弱体化……」

 ……改めて聞くと、何だか本当に大きな話だよな……。天界にいる神々からの依頼とか世界を滅ぼす可能性とかそいつらの抹殺または弱体化とか……。

『仕事』の内容のあまりのスケールの大きさに少々戸惑っていると、白羽がニコッと笑いながら話し掛けてきた。

「まあ、難しく考える事は無いよ。簡単に言えば、悪事を働こうとする奴らを取り締まったり、力が強すぎる能力者達をちょこっと弱くしたりするだけだからさ」

「本当に簡単に言えば、だけどな。それにだいぶスケールが小さくなってるし……」

「あははっ、そうだね。そして、そのターゲット達には、それぞれコードネームが付いてるんだ。因みにそのコードネームは、ターゲット達の能力の内容に応じて付けられてるから、それを参考して相手をするのがオススメだよ」

「コードネーム? そいつらの名前自体は分からないのか?」

「いや……急を要するターゲットなら名前は分かるんだけど、他のターゲット達にはコードネームしか付けてないみたいでね」

「そうなのか……」

「うん、本当にゴメンね」

 白羽は申し訳なさそうに笑いながらそう言ったが、

「……ほんっとに使えない連中だよなぁ、アイツら……」

 一瞬だけ、そのほんの一瞬だけ白羽の顔が憎々しげな物へと変わった。

 ……え、何か雰囲気が変わったような……?

「……し、白羽?」

 恐る恐る俺が声を掛けると、白羽はすぐに元の表情や雰囲気へと戻った。

「……ああ、ゴメンね、戒人。それで説明の続きなんだけど、そのターゲット達に近付くためには、ターゲット達と同じ世界に行かなきゃないんだけど、その際に戒人にはそれに見合った姿になってもらうよ」

「なってもらうよって……別に変装とかは得意じゃないぞ?」

「いや、その必要は無いよ。向こうに行ったら、その瞬間に姿なんかは変わってるから、後はその姿とか自分の能力を利用してターゲットを特定して、ターゲットをどうにかして抹殺または弱体化させてくれれば良いから」

「……分かった。それで、抹殺か弱体化をさせた後はどうすれば良いんだ?」

「その後はね……これだよっ! ジャジャーン! 『吸力珠(パワーオーブ)』~♪」

 白羽はそう言うと、再びどこからか小さなオーブのような物を取り出した。

『吸力珠』……名前から察するに、これにそいつらの能力でも入れれば良いのか……?

「まあ、そんなところだね。依頼にも何通りかあってね、ターゲットを抹殺&能力を絶対に回収とかターゲット抹殺or弱体化&回収した能力はこっちの好きにして良いとかみたいに、その依頼によって条件はまちまちなんだよ」

「ふーん……けど、能力を回収する意味なんてあるのか? 神様なんだし、同じ能力なんて幾らでも量産できるんじゃないのか?」

「それはそうなんだけど、能力を態々作るよりも前に配ったのを回収して使い回す方が楽ちんだからね」

「そんなもんか……?」

「そんなもんだよ。後は……これも渡しておくよ」

 白羽は再びどこからか何かを取り出した。

 ……って、これってまさか……!

「俺の携帯……?」

 そう、白羽が取りだしたのは、昨日まで俺が使っていた少し暗めの緑色の携帯その物だった。

 白羽に渡した覚えが全くないのに、どうして……?

 俺がその事を不思議に思っていると、白羽は小さく笑いながらそれに答えた。

「あははっ、勝手に拝借しちゃってゴメンね。

 因みにこれはもうただの携帯じゃなくて、僕や他のみんなとの連絡用端末に変えさせてもらったよ」

「変えさせてもらったよって……まあ、良いか。

 あそこにはもう未練なんてないし、そもそも連絡先交換した奴なんて殆どいないし」

「あはは……それはそれで淋しいけどね。因みに、他のみんなの連絡先はまだ入ってないけど、僕と月夜のは入れてあるから、これを使えばどんな世界でもどんな場所でも僕達に繋がるから」

「……圏外でもか?」

「もちのろん♪」

「……分かった」

 白羽のわけの分からなさに少々呆れながらも、俺は『吸力珠』と連絡用端末を受け取った。

 すると、白羽は何かを思い出したように両手をポンッと叩きながら声を上げた。

「あっ、そうだ! 因みにターゲットを無事にどうにか出来た時には、忘れずに僕に連絡してね。連絡が来たらすぐにこっちに戻してあげるからさ。尚、ターゲットに負けた時も同様だよ。

 ……もっとも、こっちが強制で戻すパターンもあるけど、その時はその時だから」

「……分かった。他に説明する事項はあるか?」

「後は……多分無いかな? 大体のことは話したはずだし、いざとなればその時その時で戒人に連絡すれば良いし」

「それもそうだな」

「でしょ? さぁ~て、そろそろ朝ご飯を食べ終えちゃおっと!」

 そうまるで子供のような口調で言うと、白羽は再び朝食を食べ始めた。

 ……それじゃあ、俺も食べ終えとくか。

 そして、俺も再び目の前の朝食を食べ始めた。

 

 

 

 

 朝食後、俺と白羽は拠点内のエントランスにいた。

 これから件の『仕事』の始まりか……何か緊張するな……。

 俺が緊張をしながら右手を固く握っていると、白羽は楽しげに笑いながら話し掛けてきた。

「あはは、そんなに緊張しなくても良いよ、戒人。初仕事の戒人用に今回はかなり簡単な奴を選んであるからさ」

「……それでも、やった事ない事をやる時は緊張するだろ?」

「んー……まあ、それもそっか。さてさて~そんな緊張で心臓バックバクな戒人の初仕事のターゲットは~♪ ジャジャーン! 『怪力(パワード)』だよ!」

「怪力……何かそのまんまだな」

「まあね~♪ まあ、これくらいなら戒人の能力でも普通に何とかなるだろうし、大船どころか宝船に乗ったつもりでいてくれて良いよ」

「宝船って……まあ、それなら良いけどさ」

 やれやれといった調子でそう言うと、白羽はニコッと笑いながら指をパチリと鳴らした。すると、俺達の目の前に白い光を帯びた白い扉が現れた。

「これを潜れば、もうターゲットがいる世界だよ」

「分かった、それじゃあ――」

 俺は扉を潜りながら言葉を続けた。

「行ってきます」

 行ってらっしゃい、そう白羽が言っていた気がしたが、俺の意識はすぐに闇の中へと融(と)けていった。




政実「第2話、いかがでしたでしょうか」
戒人「今回は話の展開上、少し短めだったな」
政実「そうだね。因みに基本的には一章一章を三話構成で行こうかなと考えてるよ」
戒人「ん、了解。
さて、次回の投稿予定はいつ頃になりそうなんだ?」
政実「未定だけど出来る限り早めにだね」
戒人「分かった。
そして最後に、この作品についての感想や意見、評価などもお待ちしています」
政実「さてと、それじゃあそろそろ締めよっか」
戒人「だな」
政実・戒人「それでは、また次回」
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