グレビッキーと家族になりました。   作:sinkeylow

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仕事が忙しすぎての久しぶりの投稿。

次もいつ投稿できるか未定です。


ノイズ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜。

 

昼過ぎにお好み焼きを食べたというのに、空型が過ぎるとすぐに腹が鳴った。シャワーを済ませた響は月華が響のために買いためておいた惣菜パンをいくつか食べながらバラエティー番組を見ていた。久しぶりに見るその番組は最後に見た頃の番組比べてずいぶんクオリティーが落ちたものだと軽く落胆する。

 

 

(これおいしい。)

 

 

そのバラエティー番組を見ながらむしゃむしゃといくつかあった惣菜パンをどんどん平らげる。これで15品目。今のところ好評価なのは、ロースカツ&コロッケサンドとチョコレートパンの二種。特にチョコレートパンはホームレス時代だった頃にお世話になったことのあるもの。ワンコインで5個入りセットをよく買っていた。でも中学生が持てる予算はかなり限られていたので、そのため味わうためでなく生きるためにちびちび少しずつ食べていた、いや摂取していた。ちゃんと食事できるとこんなにおいしいとは・・・そのことに少し驚愕していた。

 

 

『―――――それではまた次回にお会いしましょう。さようなら。』

 

 

番組が終わった。時計を見ると時間は23時を過ぎようとしているところ。夏とはいえど、この時間はさすがに天は黒で支配されており、眩い光を放つ満月になりかけの月が登っている。シャワーを浴びている月華もそろそろ上がるだろう。

 

 

「ふぅ~すっきりした、て・・・だいぶ食べたね。別にいいけど。」

 

 

少ししたら月華がバスタオルを頭に巻いた状態で戻ってきた。彼を認識して少し顔が沈む。どこからどう見ても女にしか見えないということじゃなければ、無断で一人で多く食べすぎた罪悪感ではない、まあ多少感じてはいるが。

 

月華は隣に座り、小腹を満たすために惣菜パンの袋を開ける。

 

 

「・・・あ。」

 

「?・・・もしかして食べたかった?」

 

「うん・・・でもいい。たくさん食べたから。」

 

「そう?じゃあ遠慮なく。」

 

「・・・。」

 

 

月華はどこか自分によく見ている。前々からもしかしたら初めて出会った時、あの部屋で出会った時からそう思っていた。

 

今の月華の顔は明るい。今朝見た仏壇とその時の彼の悲しげな表情。それは悲しい出来事だったと他人事で済ますにもすっきりしない。

 

響はあの魔女狩りのせいで誰も信じることはなくなった。どうせ傷つくのなら、どうせ一人になるのなら誰かと一緒にいるより一人でいた方がいいと、そう決めていたので本来ならこの家から出て行っているはずなのに、すぐに出て行かなかったのはもしかしらそれが理由なのかもしれない。

 

響は理解者が欲しかった。自分を理解してくれる、同情してくれる人が。願わくば自分と似たような境遇の人が。

 

 

「・・・ねえ、聞いていい?」

 

「うん?なにかな?」

 

「・・・・・・前に何かあった?」

 

 

今の天気は雨。夏なのに関わらずどこか温度が、湿度が下がった気がした。変わらず笑顔であるが、明るかった月華の顔は少し陰が濃くなったような気がした。

 

 

「・・・・・・それはどういう意味?」

 

「仏壇の人たちとか・・・。」

 

「あ~。」

 

 

まあ響ちゃんならいいか、とあっけらかんとした感じで言葉を紡ぐ。

 

 

「君は・・・ボクと似たような傷を負っているようだし。」

 

「ツヴァイウィングの惨劇・・・あなたもあったの?」

 

「まあ、それも関係ある~かないかといえばあるけど・・・それだけじゃないかな。」

 

「ほかにも・・・あるの?」

 

 

他にあるといえばもう一つしかない。その後の惨劇。魔女狩りの惨劇。

 

 

「ある。響ちゃんが倒れていたあの路地裏とかもそう。」

 

「っ!!」

 

 

そのことに思わず目を見開く。まさかあの路地裏に関係があるとは思わなかったのだ。家族が亡くなったのはまさかあそこで殺人事件が起きたから?もしそんなことなら申し訳ない気持ちになる。

 

 

「話そうか?ちょっと長くなるけど。」

 

 

気になって眠れないのだろう?と微笑みながらそう言った。その言葉に響はゆっくり顔を縦に振る。窓の外――夜のために見えにくいが、雨の降り始めた空を眺めつつ、言葉を紡ぐ。

 

 

「じゃあ、語ろう――――――ッ!!

 

 

その瞬間。一帯に不愉快な音が鳴り響く。災害が起きた時のサイレン音。だが日本のサイレンには二種類のタイプがある。一つは津波や、地震などの災害、そしてもう一つは―――――

 

 

「まさか・・・ノイズ!?」

 

 

人類の天敵『ノイズの出現』を知らせるものだ。

 

その瞬間、どこか遠くから爆発音が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「被害はどうなっているッ!?」

 

 

ここは特異災害対策機動部二課の司令室。

 

赤いワイシャツにピンクのネクタイをつけた司令・『風鳴弦十郎』は鳴り響く警報の原因であるノイズによる被害を最近入所してきた優秀な新人の『藤尭朔也』と同僚のオペレーターである『友里あおい』の二人に聞く。

 

 

「被害状況は都会のデパートなどが、火災や崩壊の被害にあっています!!」

 

 

目の前のスクリーンに映るのは、今被害にあっている地域のマップと、監視カメラからの映像だけだ。マップにはノイズの現在地を示す赤いマークがたくさんあり、数は五十ほどある。ここ最近の平均よりは数が少ないのと深夜の都会なので人が昼間より少ない、そして都会にしてはそれほど大きくないということが唯一の救いか。もし昼間だったらどれほどの被害が出ていたのであろうか、ツヴァイウィングの惨劇の比ではないかもしれない。

 

だがだからといって安心はできない。相手は古くからの人類の天敵、ノイズ専門組織が数が少ないからと言って気を抜いては、大きな被害を招く。迅速に部下に指示をだし、事態の休息に勤める。

 

 

「特異災害一課が現場に到着!!戦闘を開始しています!!」

 

「現在奏者が現場に向かっている!!現場につき次第、一課は人命救助に務めてくれと通達しろ!!」

 

「了解!!」

 

『司令!!シンフォギア奏者からの通信です!!』

 

「よし、つなげろ!!」

 

 

スクリーンに"sound-only"とか書かれた画面が二つ追加される。それは2人のシンフォギア奏者、『天羽奏』と『風鳴翼』との通信がつながったことを表す。

 

 

「奏!翼!聞こえるか!!」

 

『ああ、聞こえるぜ旦那。』

 

『司令。状況は今どうなっていますか!!』

 

「現在、一課が現場に到着して戦闘を開始している。現場は都会のど真ん中だ!!数はいつもより少ないからお前たちは到着しだい、ノイズの排除に勤めてくれ!!人命救助は一課に任せる。」

 

『ああ、まかせな!!』

 

『了解!!』

 

 

通信が切れる。被害現場が近くもあって、後4分ほどで二人は現場に到着する。被害を最小限に抑えるには選ばれた彼女達にしかできない。まだ少女である彼女たちにこんな危険を任せて申し訳ないと歯痒い気持ちにいつもなるのは仕方ないとはいえど慣れないものだ。

 

だからといって彼女達にまかせっきりというわけにはいかない。本来大人である自分達のやるべきことをまだ先の人生がある彼女達が嫌味や苦言を言うことなく率先してやってくれているのだ。こちらでできる限りのサポートをしなければならないのが大人の使命なのだろう。

 

彼女達がノイズと戦闘に入ってから数分後に更なる異常事態が起きる。

 

 

「・・・っ!?司令!!大変です!!」

 

「どうした!!」

 

 

藤尭が新たな状況を報告する。その報告に弦十郎は驚愕せざるを得なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

爆発音が辺りに広がり、遠くに瓦礫が崩壊する重い音が小さく聞こえる。時間は深夜に入っているというのに遠くの地域は黄金色に染まっているところもある。まだこの辺りにはノイズがいないことが幸いであろう。もしノイズがいたら、今走っている道路にいったいどれほどの量の灰が空中を舞うことになるのか想像したくない。

 

 

「確か、シェルターはこの先だったよな!!」

 

「おあばちゃん!!俺の背中に乗りな!!」

 

「ああ・・・ありがとねぇ・・。」

 

「ハァ、ハァ・・・響ちゃん、まだ頑張れる!?」

 

「ハァ・・・ハァ・・・うん。」

 

 

力のある男たちは年配の人や子供たちを背負った状態でシェルターに向かう。今、月華たちが向かっているその場所は海に近いため、津波などの災害を考慮してシェルターの場所が少し遠い。

 

 

(大丈夫だ・・・被害の場所とここの距離を考えても、間に合うはず・・・!!)

 

「・・・!!おい、あれ!!」

 

 

誰かが声を上げて指を指した天の先には、蝙蝠のような翼をもった飛行機のような何かが空を飛んでいた。

おかしい。深夜なのに、その物体はごちゃごちゃした色をしていた。確かに遠くの地域からの炎の色が夜空を照らしている部分があるが、まだこのあたりにはまだ光は届いておらず、先ほどまで雨だったため未だ曇っている。故に暗いのだ。

 

そしてその物体は急降下し、一家に衝突する、いや接触する。瞬間、その物体と接触した一家が灰となって、桜のように風に乗って宙を舞った。

 

辺りに静寂が支配する。

 

 

「あ・・・、あぁ・・・。」

 

「まさか・・・ノイズ・・・?」

 

 

触れた瞬間人とともに灰になるものなど一つしかない。その事実に気づいた瞬間、人々は悲鳴を上げ、沈黙を破壊する。

 

 

「うわぁーノイズだぁー!!」

 

「いやだ!!死にたくない!!」

 

「お母さん!!助けて!!」

 

 

飛行していたすべてのノイズが急降下をはじめ、月華と響たちに襲いかかる。次々と雨のように降る注ぐノイズは人間を捕え、ともに炭化分解する。逃げろという理性と本能のままにとにかく逃げるが、それを飛ぶことができるノイズにそれは無意味で、その行動を嘲笑うかのように、空中を漂い、狙いを定める。

 

 

(そんな・・・まさか!?)

 

 

月華は焦りつつも今までのケースにない最悪のことが起きたと実感した。

 

それは、ノイズが近くに二ヶ所で出現したという事。

 

今まではどれほど多くとも一点を中心にノイズが出現するのが政府からの公開情報だったが、今回は二ヶ所の点から現れたのだ。少なくとも戦後からそのようなことはなかったはず。運の悪いことにそんな最悪の事象が起きてしまった。

 

 

「っ!!」

 

 

急降下を行い襲いかかるノイズのターゲットには響も含まれている。重力と飛行速度を合わせた急降下に響が当たりそうになるが、紙一重で月華が助ける。しかし勢い余って2人ともコンクリートの坂を転がり落ちる。少し急な坂なので体を少し痛めつつも立ち上がる。痛がっている暇はない。急がないとノイズがこちらへ来る。

 

 

「だいじょう・・・・っ!!」

 

 

月華が響の無事を確認しようと響の方を向いたが、その光景に驚愕した。響の事ではない。響より後ろの、景色に対してだ。

 

 

「・・・?・・・っ!?」

 

 

月華の青ざめた恐怖の顔に疑問しながらその視線の先を見ると、そこにはもう人はいなかった。あるのはたくさんの舞う灰のみ。おかしい。先ほどまでは20人ほどいたはずだ。なのにさっきの一斉攻撃で響と月華以外のすべての人が、灰と化したのだ。

 

文字通り何もない。音さえも。月華の視界に映る景色はもうモノクロの世界にしか見えなくて、響にはあの時の惨劇が脳裏に現れた。

 

これこそが人類の天敵と古くから言われ続けてきた特異認定災害『ノイズ』の恐ろしさだということを改めて身をもって2人は知った。同時に再び思い知った。何もできない無力感と、抗うことのできない絶望感を。

 

だがじっとしていられない。こちらの事なんてお構いなしに向こうは襲い掛かる。生き残るために動かなくては。頭を回し、最善手を月華は思いつく。坂の下は幸いにも住宅街だった。

 

 

「響ちゃん、あそこに隠れよう。」

 

 

月華の小さい声で響を呼び、坂の上から見えないであろう一軒家へと隠れる。ここに現れたとなると、逃げるのはむしろ愚策だ。向こうが襲いかかるときの初速度は自動車などでは比較できないほどのものだ。ましてや向こうは飛行できる。となると最善策は建物内に入り、隠れることが有効策だろうと月華は思った。

 

これなら空からはこちらを発見できないし、おとなしく隠れておけば見つからない。向こうは障壁物なんて当たり前のようにする抜けてくるが、ばれなければ基本的にはやってこない。

 

しかしこっちにいるというのは向こうもわかっているので、必ず探しにくるはずだ。出現個数は思ったより少ない。それに皮肉ではあるが、さっきの一斉攻撃によりノイズの数はかなり減っている。ノイズは炭化分解する際に自身も分解してしまうという欠点を持つ。多くても10体ぐらいのはずだ。ただ運が良かっただけとなるとそれまでだが、なんにせよ生き残ればこちらの勝ち。

 

急いで窓を閉めて、カーテンを閉める。ノイズたちが自分たちはここから走り去っていると思って、ここから過ぎることを願いながら月華はカーテンを閉めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあぁぁぁ!!」

 

「でやあぁぁぁ!!」

 

 

赤の少女が持つ槍の攻撃と青の少女が持つ剣の攻撃がノイズたちを次々と倒していく。あたりに崩れているところがあれば、燃えているところもある。2人の表情に悲しみと怒りが込みあがってくるのは宙に舞う灰を見れば想像に難くない。そして最後のノイズを倒して状況は終了した。

 

 

「・・・これで全部片付いたな。」

 

「・・・うん。」

 

 

被害は当然あった。深夜でも都会を生き歩く人々はいる。小さい都会であるのとノイズの数が少なかったのだから50~100人程度か。ノイズに関する日本の被害はどちらかというと少ない方だ。世界という規模で考えれば1000を超えることもあった。もっとも戦後一番被害が大きかったのは彼女たちが関与しているツヴァイウィングの惨劇だが。

 

都会だからこその最小限の数字。亡くなった人達は運が悪かったといえばその通りなのだが、それでも死体になることなく死んでしまった人たちのことを想うと素直に喜べない。

 

その歯痒い気持ちを胸の奥に抑えて、司令部に連絡を取る。

 

 

「叔父様。殲滅完了しました。」

 

『大変だッ!!そこから13キロ北西と9キロ東にノイズが現れている!!』

 

「な、それは本当ですか!?叔父様!!」

 

「一度に三か所もか!?」

 

 

戦後前例のない複数箇所のノイズによる出現に驚きを隠すことなどできなかった。

 

 

「ぐずぐずしてらんねぇ、早くいかないと!!」

 

『LINKERのこともある!奏は近い東側に向かってくれ!!』

 

「分かった!!」

 

「じゃあ私は北西に。」

 

「気をつけろよ翼。」

 

「奏も。終わったらすぐ行くわね。」

 

「おう!!あとで・・・!!」

 

 

手分けをして各箇所の出現ポイントに向かおうとした時、東の方から大きな波動を感じた。それは目に見える物でもなければ音を聞けるものでもない。ただ感じた。その先にいるとても大きなエネルギーを。

 

 

「なんだ!?」

 

「この感じ・・・。旦那!!何があったんだ!?」

 

 

当然司令部でもその大きなエネルギーは感知していた。解析を急ぎ出た結果は本来はあり得ないであろう驚愕なものだった。

 

その報告にいてもたってもいられなくなった奏は空を駆ける。翼の呼ぶ声は奏の耳に入らない。

 

 

「うそだろ・・・。なんで・・・、なんでガングニールが・・・っ!」

 

 

胸の奥で何かが騒ぎ出す。その波動の正体をこの目で確認しなければ、それはきっと治まらない。

 

 

 

 

 




やはり仕事に楽しいは存在しない。

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