今回はシンフォギアという作品の説明がメイン。
私にとっては原作の復習みたいなもの。
特異災害対策機動部。
認定特異災害ノイズが出現した際に出動する政府機関である。
第二次世界大戦時に旧陸軍が組織した特務室『風鳴機関』を前身として一課が設立。そして世界に先駆けてノイズを駆逐する有効手段を研究することを目的とした今から8年前に設立された二課がある。この機関は一課と二課の二つの組織で構成されている。
一課は主に避難誘導やノイズの進路変更、さらには被害状況の処理といった任にあたっており、通常「特異災害対策機動部」と聞いた場合に、一般の人間が思い浮かべるのは報道媒体に取り上げられる一課のイメージとなっている。言うならば特異災害対策機動部の見た目担当である。
それに対して、二課は言うならば特異災害対策機動部の中身である機密情報の処理をメインに行っている。だが機密情報の処理ぐらいなら第2次世界大戦の頃から存在している一課でもいいのではないかと思うものもいるだろう。だが機密情報の取り扱いは二課の方がいろいろと手間が省けるのだ。
その理由は一課同様、ノイズ被害の対策を担っているのだが決定的に異なる点がひとつある。それこそが―――――
―――――ノイズに対抗できる唯一の力。『シンフォギアシステム』である。
対ノイズに対抗できる圧倒的な戦闘力を持つほか、それ以外でも戦況を左右するほどのものである。それ故シンフォギアシステムの保有は、現行の憲法では非常に危うい位置づけとなるため、周辺諸外国の目や日米安全保障条約を鑑みて、その存在を秘匿するとの政府判断が下されている。
◆
昨日のノイズ災害で響が纏ったバトルスーツの正体が日本政府が所有するシンフォギアの【ガングニール】。
【ガングニール】とは。
別名グングニルと呼ばれるその名は、神々が持つ武器のひとつで形状は槍に分類する。所有者は北欧神話の主神にして戦争と死の神オーディン。その名は古ノルド語で剣戟の響きの擬音を意味する。
ロキのいたずらから始まったロキとドヴェルグ(小人族)との腕自慢対決で作られたその槍は、神々に納められた後にオーディンのものとなった。
必殺必中の威力を持つ投槍で、その威力は伝説の剣「グラム」を一撃で粉々にするほど。
鋼の穂先にルーン文字を配することによりその魔力で貫けない鎧はなく、人の素たる「トネリコの木」で柄が造られているため、どんな武器もこの槍を破壊することはできない。
投げると何者も絶対に避ける事ができず、敵を貫いた後は自然に所有者の元に戻ってくるブーメランのような機能も持つ。
最終的にはラグナロクにおいて、オーディンと共にフェンリルに飲み込まれた。だが飲み込まれたとはいえ、一部分の欠片は残っていたらしい。
それこそが大昔から言い伝えられているもの。そして【ガングニール】とは所謂【聖遺物】という一つの括りに属しているのである。
大昔から存在するすべての【聖遺物】には現代の科学力では解明することができない【異端技術】が使われている。その【異端技術】こそが重要であり、ノイズに対抗できる力となるのだ。
だがそれらは古くから存在するもの。当たり前だが時間が経つにつれてその存在は劣化していく。あるものは災害などでバラバラに欠けていたり、或いは伝承で一部破損しているものもある。そんな状態では当然機能はしなかった。ガラクタも同然である。当然解析はどこの国も進めているが、現状この国日本を除いては、ノイズに対抗できるであろう技術を手に入れていない。
それらを一定期間の間だけでも構わないから力を引き出すための方法が必要だった。そのための理論を二課のとある天才が提唱。そしてその理論をもとに生み出されたもの。それこそが【シンフォギアシステム】である。
シンフォギアシステムが起動すると、響や天羽奏のようなバトルスーツへと変身しノイズと戦うことができる。逆に待機状態は赤い結晶のペンダントになる。だがここで一つの疑問が現れた。天羽奏と風鳴翼はそのペンダントを持っているのは当然だ。
しかし響は持っていなかったのだ。
昨日はここまで。既に日にちが変わってしまっているので続きは明日ということになった。幸い現在は日曜日。学校はとりあえず気にしなくてもいい。
そして今回はその続きを知るためにここ特異災害対策起動部2課本部にいる。響はシンフォギアシステムの生みの親である【櫻井了子】女史に検査を受けてもらっている。
◆
一方で月華は作戦司令室にて主要メンバーとともに結果報告を待っていた。その間、月華は軽く挨拶を行う。
「久しぶりだな。月華君。」
「はい、お久しぶりです。まさかまたお世話になるとは思いもしませんでした。」
月華に話しかけたのはいかにも屈強な体という単語が似合う男性の【風鳴弦十郎】。お堅いイメージとはまるでかけ離れたどちらかというと大らかな、器の広いようなものを感じ取れる。過去のノイズ災害の時にお世話になったことのある人だ。月華自身もよく知っている。
「私ははじめましてね。もう知っていると思うけど、私の名前は【風鳴翼】。よろしくね。」
「私は【天羽奏】。よろしくな。」
「はい。」
「なんか落ち着かないようだけどどうしたの?」
よくメディアで取り上げられている赤と青の2人の少女。ツヴァイウィングというアーティストだ。有名人を生で見るのは月華自身も初めてであるため少し舞い上がっていることを自覚している。
「いやぁ、有名人を生で見るのは母以外で初めてですので。」
その瞬間月華以外の人が俯いた。え?と戸惑っていると力弱く源十郎が口にする。
「ああ、ゆかな君か・・・。」
「え?・・・母を知ってるんですか?」
「ああ、じつは君の母・ゆかな君は君が川島家に拾われる前から我々特異災害2課のメンバーなんだ。」
「え?お母さんが・・・!?」
その事実に思わず目を見開く。まさか身内が国家機関の属しているとは思わなかった。母は世界的に有名なヴァイオリニストだということは知ったときはただすごいと驚愕していたが、こっちの事実のほうがもっと驚いている。
この組織にある職業なんて【オペレーター】かシンフォギア奏者のような【実働部隊】。あとは【研究職】ぐらいだろう。母は世界的なヴァイオリニストだ。すでに引退はしているものの移動範囲が広すぎる職業のため、【オペレーター】はまず能力云々以前に勤まらない。【研究職】ができるほど知識もないだろう。
となると、母・ゆかなの役職はもう一つしかない。
―――――
ここに来るまでの移動中、大雑把に説明されたシンフォギアの説明を受けていたら、そうとしか考えられない。
「・・・母は・・・あの惨劇の中戦っていたんですか?」
「・・・ああ。」
「・・・立派に戦っていましたか?」
「立派ってもんじゃないさ。ゆかなさんがいたから私たちは・・・いやあの会場にいた多くの人々は、生き延びたんだ。」
「え?母さんがみんなを救った?」
それほどまでにシンフォギアとは強力なものだろうか。どうやら響は想像以上のものを手にしてしまったようである。
「・・・ああ、川島。あなたの母君は―――――
「みんなお待たせ~~♪」
翼からその先を口にしようとしたときに、その場を壊すような陽気な雰囲気の方向を向くと櫻井女史と響が入ってきた。どうやら検査は終わったようだ。
「了子君。どうだった?」
「ええ、わかったわ。どうして響ちゃんがシンフォギアを持っていないのか。どうしてガングニールを扱えたのか。」
作戦司令室のスクリーンが変わった。映し出されたのはレントゲン画像と、シンフォギアを纏っている響の姿。こほんと咳払いをして言葉を紡ぐ。
「さて2人は、シンフォギアについてどこまで聞いてるかしら?」
「えっと、元々聖遺物だった欠片や一部を加工してできたもので、待機状態は赤いペンダント。展開するとバトルスーツを纏って戦えること。あとはそれ自体が現代兵器より強力なため、条約とか憲法とかがいろいろギリギリなこととか・・・大体そんなところです。」
「じゃあシンフォギアシステムの概要はまだってことね。それじゃあまず、【シンフォギアシステム】とは、この天才の私が提唱した「櫻井理論」に基づき、聖遺物から作られたFG式回天特機装束の名称のことよ。身に纏う者の戦意に共振・共鳴し、旋律を奏でる機構が内蔵されているのが最大の特徴でそれを引き出すためには歌が必要なの。」
「歌?ということは歌いながら戦うという事ですか?」
「そういうことよ。」
「歌いながら・・・そういえばあの時・・・。」
肺活量やばそうだなと思っていると、響がそう呟いたことを月華は聞き逃さなかった。聞きたいところだが今は後回しにする。
「その旋律に合わせて装者が歌唱することにより、シンフォギアはバトルポテンシャルを相乗発揮していくけれど逆に言うと歌うことができなければ、例えば交戦中にダメージを受けるなど何らかのカタチで歌唱が中断されると、バトルポテンシャルは一時的に減衰するの。」
「でも、響ちゃんは歌ってませんでしたよ?」
「あの姿になる時に歌っていたはずよ。」
確かに歌っていた。その歌を歌うことで変身できた。でも歌だろうか?
「そういえば・・・、でもあれ歌なんですか?どちらかというと呪文というか魔法を放つときの詠唱のような印象でしたけど。」
「そのとおりよ。シンフォギアのペンダントを通して胸の奥から【聖唱】が浮かび、それを歌うことで初めてシンフォギアを纏うことができるのよ。」
聖唱を歌えば【アウフヴァッヘン波形】という聖遺物あるいは聖遺物の欠片が、歌の力によって起動する際に発する、エネルギーの特殊な波形パターンが現れて聖遺物が起動しシンフォギアを纏うというのが変身するまでの過程だ。
「ちなみにシンフォギアによってパターンが異なるからこちらから照合することで特定可能よ。」
「なるほど・・・。少し話がそれますが、ノイズに触れるとどうして炭化分解するんですか?それとどうしてシンフォギアだとどうしてその人じゃなく、ノイズが炭化分解するんですか?」
シンフォギアの起動と特徴は理解できた。次は力だ。その疑問に櫻井女史は答える。
「いい質問ね。まず、ノイズに触れると炭化分解する事についてなんだけど、【位相差障壁】が要因なの。」
「位相差障壁?」
位相差障壁とは、ノイズの持つ特性のひとつで、存在を異なる世界にまたがらせることにより、通常物理法則下にあるエネルギーを減衰〜無効化させる能力である。
例えば、戦車が攻撃したとしてもその砲撃はすべてすり抜けるし逆に建造物などは破壊可能である。
これは存在比率をこちらの世界から殆ど切り離すことにより、相手からの物理的干渉を無効化つまり砲弾がすり抜け、自身の存在比率をよりこちらの世界に寄せることで、物理的に相手に干渉可能つまり建造物を破壊可能だということだ。
ダメージを500与える攻撃に対して、こちらの世界に100%存在するノイズは500のダメージを受けるが、半分の50%しか存在しないノイズは250のダメージしか受けず、存在比率を限りなく0に近づけたノイズにはほとんど効果がないことがうかがえる。
後者の質問については二課の保有するシンフォギアシステムだけが持つ力である。
シンフォギアシステムから繰り出される攻撃は、インパクトの瞬間、複数の世界にまたがるノイズの存在を「調律」し、こちらの世界(通常物理法則下)に無理矢理引きずり出すことで位相差障壁を無効化、ロス無くダメージを与える機能が備わっている。
「なるほど。ということはノイズは異世界の生物なんですか?」
「現段階だとそういうことね。」
異世界。最近ではWeb小説を中心によく聞く言葉。現実のいったいどんな世界だろうか。つい思考深く入りそうだったが今は止めておく。そんなことよりも聞きたいことがあるのだ。この場にいる全員が知りたいことが。
「それで・・・どうしてペンダントがないのに、響ちゃんがシンフォギアを使えるんですか・・・?」
「それはね、響ちゃんの心臓にガングニールの破片が見つかったの。」
「心臓に・・・っ!!」
スクリーンに映し出されたレントゲン画像に欠片のような点滅が出る。体中に血液を循環させるために必須となる心臓。その中に広範囲で散らばっていることを表していた。医者じゃなくても危険な状態だということはわかる。そんな状態で生きていたのは奇跡というべきだろう。
「だ・・・大丈夫なんですか?」
「今のところはね。これからどうなるかは・・・正直、過去のケースがないからわからないわ。」
「一体いつからなの・・・?」
「・・・っ!!まさかツヴァイウィングの惨劇の時の!?」
「どういうことだ?心当たりがあるのか奏?」
「・・・そうです。」
消えそうな小さな声。でもそれは確かに作戦司令室全体に響いた。声の主は言葉を紡ぐ。
「あの時、ツヴァイウィングの惨劇の時、奏さんの武器の破片が私の心臓を貫いた時だと思います。」
「っ!!」
その事実に思わず目を見開いた。すべての悪夢の始まりであったツヴァイウィングの惨劇。あれから立花響の運命は決まっていた。家族を失うことも、居場所を失うことも、そして新たに自分に寄り添ってくれる人に出会うことも決まっていたのかもしれない。
「思い出した。たしか報告にシンフォギアの破片が子供の心臓を貫いたとあったが、あれは君だったのか。」
「・・・。」
俯いたまま、奏はゆっくりと響のほうへ歩む。
「奏・・・?」
そして響を強く抱きしめた。
「ごめんな・・・。あたしのせいで・・・。」
「・・・。いいですよ。そのおかげで私たちはこうして生きている訳ですから・・・。」
「でも、あたしは・・・。」
「
「っ!!」
「そう言ってくれたのは奏さんです。」
破片が心臓を貫いたあの時。響は生死をさまよった。もしその一喝がなければそのまま精神は眠り、死んでいたのだろう。でも響は生きている。奏が呼び起こしてくれたのだ。
その言葉に奏は顔を上げる。そんな奏を響は辛そうに、それでいて優しそうに言葉を紡ぐ。
「その言葉があったから、私は今こうして生きているんです。あの惨劇は、間が悪かっただけなんですよ。仮にノイズが現れると分かっていたとしても、どうしようもなかったんです。きっとたくさんの人たちが死んでいた。多くの人が苦しむのはしょうがなかったんです。」
ノイズについては確かに仕方がない。ノイズは災害だ。機械的に人を襲い、殺す。でも奏は理解した。響が言っているのはそういう事じゃないと。
「しょうがなくなんかない・・・。」
「え・・・?」
「じゃあ、なんで響たちは、生き残った人たちはどうして責められなきゃならないんだ?どうして生存者たちは自分から消えていくんだ?」
ノイズが襲われた後の人間が自ら起こした悲劇。人間が人間を排除しようとするドス黒い悲劇。後悔の涙が頬を伝う。
「『生きることを諦めるな』なんて言ったのに、あたしは、いやあたしたちはノイズを撃退したことで勝手にみんなを救った気になっていた。」
ライブ会場での惨劇が終わった後、これまでどおり自分たちも助けた人々も過ごすことに疑問を持たなかった。それは大きな過ちにして力持つ者の傲慢だった。
亡くなって言った人たちが大勢いたことにどれだけ胸を痛めたか。どれだけ苦しんだか。。それを知ってどうにかしようと頑張ったけど、生き残った人たちはもうほとんど日常から消えて行った。数字で表すと全体の8割は超える。
それだけじゃないのだ。その惨劇以前に自分が救った民間人は苦しんでいた。ノイズ災害にあったものには規模次第では援助金が得られるのだ。それでいつも通りの日常に戻るはずだった。しかしその先にあるのはほかの人々からのひどい仕打ち。『税金泥棒』などと蔑まされ、子供はいじめにあう始末。親は職場でひどい扱いを受ける。
すべてを知った時にはもう遅かった。近年増えている自殺などは、それらによるもの。自分たちが助けた人々は地獄を味わい、そして破滅していく。いったい自分たちは何をやっているのだろうか。どうしてそこで救ったと胸を張れたのだろうか。
当時の自分を殴ってやりたい気分だ。それほどまでに今も苦しんでいる。奏だけでなく翼も、弦十郎も、2課も。
でもそれでも。
「わたしは・・・、ここにいます。生きてます。だから・・・顔を上げてください。まだ奏さんが自分が許せないのなら、今度こそその手で救ってあげてください。」
それでも2課達を決して責めないのはやはり彼女が【立花響】だからだろう。少し前の響なら叫んでいた。怒鳴っていた。怒っていた。でもそうしなかったのは、そうならなかったのは一人の支えてくれる少年がいたからだ。
どこまでに明るく優しい表情。そんな黄昏を感じさせる顔に奏の視界が歪んだ。
「ッ!?悪かった!!本当に!!本当に!!」
「もういいですよ。もう済んだことですから。」
そうすべては済んだこと。ならこれからやることは立花響として前に進む。自分は一人じゃないから。一人ぼっちじゃないから。
――――――私ニハ、