「え・・・協力ですか?」
「ああ、我々特異災害対策機動部二課は正式に君達に協力を要請したい。」
全体的に落ち着きを取り戻した雰囲気になり、二課にとっての第2の本題に入った。それは述べた通り
まず第一に使用者が女性でなければならない。第二にシンフォギアと使用者との適合率が高くなければならない。第三に使用中は歌い続けなければならない。つまり相当な体力及び肺活量が必須。
上記の条件を満たすために地上にリディアン音楽学院があるのだ。常日頃から何も知らない少女たちの歌を測定している。しかしそう簡単に3つの条件をクリアできるものではない。現に響という融合症例が現れる前は奏と翼の二人しかいないのが現状。去年までは母・ゆかなも戦っていた。
圧倒的な人手不足。それ故に響に協力要請をするのは当然だろう。
しかし気になることも言った。
「え・・・僕もですか?」
源十郎は
「ああ、月華君には
民間協力者。やることといえばボランティアのようなもの。ノイズ災害発生後災害にあった人達の避難誘導がメインとなるだろう。ちなみに響は二課に所属するため給料は出るが月華は出ない。
「いいですけど・・・どうして僕も?」
「身内が戦っているのに君がおとなしくしているようには思えないからな。」
「はは・・・まあそうですね。」
そこは響と関わって最近改めて自覚した。
「・・・響ちゃんどうする?」
「・・・やります。」
静かにそう告げた。響の目に宿るは決意。決して揺るがないもの。
「私は恩返しがしたいんです。」
「恩返し?」
「はい。」
響は月華のほうを向き言葉を紡ぐ。
「月華さんのおかげで私・・・もう一度頑張ろうって思ったんです。すごく辛くて、苦しくて・・・死にたいって思ってたんですけど月華さんが助けてくれたんです。」
取り戻したい。忘れてしまった自分自身を。
「月華さんがやってくれたように・・・
立花響の原点。困ったときはお互い様。それは、響を愛してくれた今は亡き家族たちの唯一のつながり。それだけは捨てるわけには行けない。それは家族との時間を否定することと同意義なのだから。
「響ちゃん・・・。」
「だから・・・やります。困っている人がいたら最短で最速で真っすぐに駆けつけてみます。」
「そう・・・わかったよ。源十郎さん、というわけですので二課の皆さんこれからもよろしくお願いします。」
「ああ、助かる。これからもよろしくお願いするよ。」
「へへよろしくな!!」
「よろしくね、二人とも。」
「よろしくねん♡二人とも♪」
響が自らの意思で選んだ道。それは今まで以上に過酷でつらいものだろう。それでも誰かに言われてではなく彼女頑な意志によってそうさせたのだ。
ならば自分にできることは一つ。見守ることだ。
「響ちゃん。」
「?」
「これから頑張ろうね。」
「はい!」
「ところで月華ちゃんは男の子なのよね?」
「ええ。わかりにくいですよね?」
「そうね~♪だからちょっと脱いでもらえる?本当についてるか確かめたいから♪」
「え?」
◆
特異災害対策機動部二課で必要書類にサインした後、響と月華は地上に上がりリディアンを後にした。自分がいわゆる男の娘であったために特に変装とか周りの目を気にすることなく出れた時には生き残ったという感想だけが胸に残る。
男の尊厳は守った。それだけは何としても死守した。その事実があればもう十分だった。
負傷をしていた月華のために外で止まっていたリムジンで送車。着いた頃にはもう昼を過ぎていた。空腹特有の違和感が腹を襲うものの何より疲労感が二人を襲う。昼寝をしていたら既に日は沈んでいた。
そして現在は入浴中。本来なら真夏日であるためシャワーですましたいところだが、明日も学校だ。湯船には湯気以外にも柚子が浮いている。疲れを全部落とすために考えた柚子風呂だ。柚子の香りが心地よい。
―――――立派ってもんじゃないさ。ゆかなさんがいたから私たちは・・・いやあの会場にいた多くの人々は、生き延びたんだ。
ふと、脳裏に奏の言葉が過ぎった。
「そういえば・・・母さんのこと聞いてなかったな。」
まるで英雄のような扱いだった。いったいいつから母は知らぬうちにヴァイオリニストから正義のヒーローに転職したのだろうか。確かに家にいることは少なかったが、そんな素振りは感じなかった。母は意外と隠し事が得意ほうだった?ここで考えても良知が明かないため後で聞くことにした。
◆
風呂に浸かってほくほくと頭から湯気が湧き出た月華がリビングに戻る。既に入浴を済ませた響は庭で天を見上げていた。真夏の夜風が体の熱を冷ませて心地が良い。
「・・・きれいだね。」
「うん。」
雨が降ったとは思えない星空が宝石にように輝いていた。静かに見惚れるのも納得がいく。月華は響の横に座った。二人は顔を合わせることなく夜空を見上げる。
「いろんなことがあった。」
「うん。」
それには二人が出会ってからではない。それはあの惨劇が始まってからだろう。ノイズから生き延びたと思ったら同じ人間からそんな仕打ちをされたなんて、やはりマスメディアというのは害悪だと実感する。
「辛かった・・・ってレベルじゃないよね。」
「うん。」
うまく言葉にできない。それほどまでに想像を絶することが起きたのだ。同情はできそうにない。その思いは受けた本人にしかわからない。
「でもいいんです。あの時言った通り・・・間が悪かったんだと思います。」
作戦指令室にいた時と変わらない真っすぐな目。その眼に歪みはない。彼女はその力で人類の脅威と戦い、人類のために戦うことを誓った。その道を選んだのだ。それはまるで英雄。
「強いね。」
「・・・そんなことないですよ。」
「ううん。強いよ。」
「・・・だったらそれはきっと月華さんのおかげだと思います。・・・ずっと寄り添ってくれたから、今の私があるんです。」
「そうかい。」
「だから・・・ありがとうございます。」
「うん・・・どういたしまして。」
――――――変わったな。響ちゃん。
響は自分の道を歩むことを決めた。出会った時とはもう見違えるほどに前に進んだ。きっと目の前に映る彼女こそが本来の立花響だろう。10秒あれば人は変わると過去に教師が言っていた気がするがおそらくそうなのだろう。あまりにも違いすぎる。
懸命に生きる人は本当にかっこいいと最近よく思うようになった。
「・・・ねぇ。」
そんな人はどうしてか応援したくなる。妹しかり母親しかり、みんな努力してなりたい自分になるべく懸命に生きている。自分の親しい周りはみんなそうだ。だからだろうか、自然とある提案を言葉にした。
「ここでいっしょに暮らさない?」
「え?」
優しいそよ風が二人の間を駆け巡った。
「一緒にですか?」
「うん。響ちゃんはもう帰る場所がないんでしょ?ならここで暮らすといい。」
どうかな?と響を優しく見つめる。それはすごく響にとってすごくありがたいことであった。
「迷惑じゃありませんか?」
「うんうん全然。むしろうれしい。」
「え?」
「前も言ったけど、一人は結構寂しいものなんだ。」
「・・・。」
ノイズによって家族を失った。もうお帰りといってくれる人はもういない。行ってらっしゃいと言ってくれる人はもういない。何かがあったときに支えてくれる人もいない。一緒に悩んでくれる人もいない。いつもそばにいてくれた人が突如消えた。
この家に残していった遺品を眺めても湧き出る感情は孤独と悲しみ。それに慣れてしまったらもう何も感じなくなる。
結果、この家に残ったものは虚空。
楽しいことが外であってもこの空間に入ると溶けてしまう。それほどまでに家族がいなくなるというのはつらい。それは響も感じていることだ。
「私も・・・一人は寂しいです。」
「っ!・・・それじゃあ。」
「はい・・・お願いします。」
「うん。よろしく。」
過程は違えど、家族を失った苦しみを長い間背負ったもの同士。一人は人間によってすべてを奪われた。もう一人はノイズによって奪われた。まるで運命であるかのように悲劇に会い、そして二人は出会った。
――――――辛い事や悲しい事があっても、決して一人じゃ無い。
――――――信じるために、お互いに歩み寄った。
――――――きっとそれは、新たなる夜明けなのだろう。
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