投稿するたびに、お気に入りが100以上増えていることには大変うれしく思います。豆腐メンタルである私の精神が復活した。
やっぱりタイトル詐欺っぽいのかなぁ。変えるべきかな?
まああと少ししたらタイトル回収する予定なんだけれどね。
またランキングにも乗るようになりました。
たくさんの評価、お気に入り登録ありがとうございます。
「はい、今日の献立てはうどんだよ。」
「・・・・・・またうどん・・・・・・?」
「うん、響ちゃんの体調を考慮してのうどん。顔色もだいぶ良くなってきたけど一応ね。」
今日の献立ては昨日の夕飯と同じうどん。
昨日は響は素うどんであったが、うどんのつゆに白い白濁液が浮いている。それはとろろ芋。つまるところは"とろろうどん"だ。
昨日はネギしか入っていない素うどんだった。さすがにまた素うどんだと飽きるので昨日スーパーで買ったとろろ芋で作った。昨日はとろろ芋で別の料理を作ろうかと思っていた。うどんの麺は病人に優しい消化のいいタイプを使っている。
肉うどんや天ぷらうどんというともあったが油と食べやすさを考慮してとろろうどんを選んだ。それに対して月華は朝から天ぷらうどんである。隣にある白ごはんはかなりの量でどうやら小さい見た目によらず大食いのようだ。
席に着き姿勢を正し、合掌。
「いただきます。」
「・・・いただきます。」
静寂だった空間にずずずと麺をすする音がBGMとなって辺りに響く。一方では
湧き出てしまったイライラを食欲にぶつけるかのようにがつがつという表現がぴったりな勢いで口にする。
「どう?美味しいかい?」
「・・・・・・うん。」
「食べやすいように作ったんだけど・・・・・・食べやすいかな?」
「・・・・・・うん。」
「そう、ならよかった。」
頬を少し赤くし、恥ずかしながらも零すようにそう呟く。少しではあるがイラつきは収まった。
どうやら味は好評の様子。響の体調のことを気遣って食べやすくしたのも満足の様子だ。シャリっと海老の天ぷらを食べる音が鳴る。天ぷら粉を水で溶くなり手間かかるし、油ではねて飛び散ったりするし、後片付けもめんどくさいのだが頑張って作ったかいがあったと、口に広がる美味がそう決定づけている。
そんなことを思っていると正面から視線を感じる。
「・・・・・・ん?どうかした?」
「・・・・・・朝から天ぷら食べてる。」
「うん。まあ天ぷら初挑戦しようかなって思って。食べる?」
「・・・・・・もらう。」
まだ口をつけていないほうの海老の天ぷらを箸で取り、食べる響。彼女の口からシャリシャリといい音が奏でる。一口で食べたため、口の中にほおばっており、見た目がリスみたいになっている。そして零すように呟く。
「・・・・・ぃしい。」
「そう、ありがとう。」
「っ!!」
「別に聞かれたからって恥ずかしがることないであろうに。」
"おいしい"という感想を聞かれ少し赤くしプイッと顔を逸らす。そのしぐさにちょっとかわいいなと月華を思いクスっと微笑む。ただ一緒に食事をしているだけのこの時間。
何故かこの時間が不思議と"楽しい"と思う様になっていた。
久しぶりだ。この幸福感。長いこと一人の時間が多かったのだ。それからは勉学以外も家事も買い出しもすべて自分でやっていた。当時覚えていることはただ生きているということ。何も感じていなかった。家族が亡くなってから悲しみのあまりごはんがのどを通らなかったことが何度もあった。
頃はいつも通りの風景がどこか暗く見えた。暖かい季節であることは覚えている。それなのにどこか少し寒く感じる。寝るときに体を丸めて自分の体を抱いてみるけど少しも温かくない。
子供であった頃の自分に家族の死を吹っ切れというのが難しい話だ。それでも今こうして生きているのは仲のいい近所の人やあの人たちのおかげなのだろう。
(そんな日が、この子にも訪れますように・・・。)
目の前の少女は過去の自分。彼女がどうすれば笑ってくれるかはわからない。けどとりあえずは、周りにされたことをする。きっとそうすることで活路が見えてくるだろう。
「・・・おかわり。」
「うんちょっと待ってね。・・・はい、お待ちどうさま。」
「・・・・・・がと・・。」
耳を覚ませば聞こえる程度の呟きだが、些細なことにお礼を言うあたり根はいい子なのだろう。それだけでなく、ほかにもどこか自分に似ている部分があると月華は感じた。
十分に茹でたうどん麺を笊に移し、響のドンブリに移す。麺が入ったのを確認すると箸で軽くとかし朝食を再開した。その光景を見て本当においしそうに食べるなぁと月華は思った。こちらもちょうどおかわりがしたかったのでもう一つの笊を自分のドンブリに移し月華も朝食を再開する。
「・・・・・・ねぇ。」
「うん?茹でが足りなかった?」
「いや・・・うどんのことじゃなくて・・・どうしてなにも聞かないんですか?・・・・・・なんであそこで・・・・・・路地裏で倒れていたとか・・・・・・私の身の上のこととか・・・・・・。」
出会って家にいさせてもらってから何も聞いてこなかった。何があったのかとか普通なら聞くはずだ。気を失っている間に着替えさせたということは身体中の傷を見たということ。尚の事、彼は疑問に思っているだろう。しかし月華は一切そういう事を訊いてこないし、訊いてこようともしない。
その問いに対して月華は不思議そうな顔で少し顔を傾げる。
「聞いてほしいの?」
「え?・・・・・・あ・・・その・・・。」
「あんまり聞いてほしくないんでしょ?まあ、つらい過去があることはだいたい予想がつくよ。あんな顔を見ていればさすがにね。どんなにつらいことなのかは知らないけどね。でも、その過去を・・・・・・あんまり言いたくないんだろう?言いたくなかったら言わなくてもいいもんだよ、何も無理をして話そうとするもんじゃない。話したくなったら話せばいいよ。」
月華は続けて紡ぐ。
「確かに君はあの日の夜、あの路地裏に倒れていたよ。だけど、どうして路時裏に倒れていたなんて私には分からないし、どうしてそんなにやつれているのかのもどうしたんだろうとは気になったりはするけれど、それがどうしても言えない事や辛くて言いづらいことなら無理に訊こうとは思わないね。年を重ねると誰しもが人には言えないような秘密の一つや二つ、少なからず出てくるもんさ、あなたから言おうとしない限りは私は別に構わないんだよ?時には流すことを覚えることも大事さ。」
月華はむやみにそのことを聞いては最悪、心の傷口を抉ってしまうだろうと思ったから響の方が動くまで踏み出すことを躊躇った。そのことを理解し、次の疑問を問う。
「・・・・・・そう言えばどうして救急車を呼んだりしなかったのですか?」
「・・・まあ、本当は呼ぼうとは思っていたんだけど、何となく、本当に何となくだけど私の家に寝かせて置いた方がいいんじゃないかって直感でそう思ったんだよね。あんなにゲッソリしていると多分だけど家の事とかでなにかあったのかなって思ってさ。」
まあ実際は、その日の昨日に海外の推理ドラマを見て似たようなシーンがあったのでとりあえずこうしたほうがいいだろうと思っただけである。
「ただ応急処置は済ませたとは言ってもね、もし明日になっても目を覚まさなかったらさすがに呼ぼうとは思ったけどね。」
本当に思いやりのある人だ。服まで貸してくれて休ませてくれて。だからこそ疑問に思う。
考えてみればそこまでする義理も義務も、ましては責任すらも彼には無いはず。そこまで優しくする理由が分からない。
「・・・・・・どうしてそこまでしてくれるの・・・?」
浮浪者のような生活が始まってから、ここまでしてくれるのは彼が初めてだ。だれも無慈悲なことばかり言うだけで同情はしてくれても助けることは決してしなかった。どこか見えない壁を作っているようし、とりあえずこうしておけば自分は周りとは違うだろうと自己解釈した人々。その人達と彼の違いはなんなのだろうか。
「怪我人を見捨てられるほどの性分は持ち合わせてなくてね、差し伸ばすことが出来る手があるならなるべく伸ばすようにはしているのさ。困ったときはお互いさま、って言葉もある訳だしね。」
「お互い・・・・・・に・・・・・・?」
「そうだよ。困っている側は助かるし、助けた側は良い気分になる。また自分が困っているときはもしかしたら助けた相手が助けてくれるかもしれない、そういう言葉さ。」
困っている人を助けること。
それはかつて、自分の信条として、己の正義として私の中に立っていたもの。しかし今の響にとってはとてもデリケートな問題で、答えの出せない迷宮の中でずっと彷徨っている。彼の言っていることは確かに正しいのかもしれない、前までの私だってそう思ってきた。
困った時はお互いさま。
だけどそれを、それで良いんだと、鵜呑みにして信じることもできなくなったことも事実だ。現に響は窮地に遭ったときにさらに追い込まれる状態にあったから。手のひら返し。それを身を持って受けていた。
―――――本当にそうなのか?
―――――それで本当に正しいのか?
―――――その恩を仇で返されたらどうするのか?
あの惨劇とその後の人間の醜さや愚かさ、暗黒面を色々と酷く見た所為か、疑惑の目を向けざるを得ない現状に、それを解消できないことがすごくもどかしい。
自分の心情をもとに助けたクラスメイトは最初こそは助けてくれたのに裏切られた。世間という波に飲まれ、手のひらを返すように罵倒した。そしてその人助けすらも否定され続けた。偽善だとか点数稼ぎだとか言われ続けた。
頭の中で紆余曲折しているが結局答えが見つからない。
そしてだがその一考を止めるような一言を月華はつぶやいた。
「それに、あの時と同じだしね・・・・・・。」
―――――・・・・・・え?
そう静かにぽつりとつぶやいた声を響は聞き逃さなかった。
月華は悲しそうに微笑んでいる。表情から察するに月華にとって話すことがつらいことなのだろう。
―――――あの時と同じ。もしかして過去に同じようなことがあった?
新しい疑問がグルグルと脳裏を動き回り続ける。考えているうちに月華は朝食を終えたようだ。
「ご馳走様。響ちゃん、悪いけど今日は図書館に本を返しに行かないといけないから家から離れるけどお留守番任せてもいい?」
「・・・・・・え?・・・・・・・あ・・・・・・うん。」
「まあもし出かけるのなら、予備のカギかもう一つあるからちゃんと戸締りしていってね。」
時計を見る。時刻は10時を過ぎていた。どうやらだいぶ話し込んでいたようだ。うどんもすっかり熱が冷めている。月華はどんぶりとコップを台所に持っていき洗い始める。蛇口から流れる流水をBGMに月華は語る。
「まあ、過去に辛いことがあるのは分かったけど、別に今ムリして解決しようとしなくていいさ。ゆっくりでいい。ゆっくり向き合えばいいと思うよ。」
「・・・・・・うん。・・・・・・がと。」
「うん。どういたしまして。」
響も食べ終え、ドンブリとコップを台所に持っていく。そして泡だらけの食器に流水で濯ぐ。何もしないというのはどこかもどかしいので響も手伝うことにした。
「ああ、ありがとう。」
すべての食器を洗い終え、乾燥機に入れて皿洗いが終了する。さてと、と月華が紡ぐ。
「響ちゃんはしっかり休むんだよ?まだ病み上がりだしね。栄養剤とか買ってきたからそれを飲んでおいてね。」
とりあえず心配なので栄養剤も買ってきておいたのでそれを飲むように言っておく。病み上がりが一番怖いのだ。
月華は着替えてリュックを背負って家を後にした。
◆
月華が家を出た後、響は部屋に戻り、ベッドに横になって休んでいた。今朝のことを考える。内容は自分の心の傷についてではなく、彼。川島月華のことについて。
あの言葉の真相について響は考えていた。
(・・・・・・なにがあったんだろう。)
彼の一瞬見せたあの悲しい笑顔。そしてあの眼。あれは見たことがある。今机に置いてある鏡に映る自分そっくりだ。何かに絶望し黒く濁ってしまった虚ろの瞳。過去に自分と同じぐらいの地獄を見なければあんな顔はしないはずだ。考える。彼について。どんな悲劇があったのか。すぐに思いつくことはやはりあの惨劇。
(・・・・・・ツヴァイウィングの惨劇にあった?)
もしそうだとしたら変だ。自分はあの惨劇を生き残ったから今の自分がいる。家にもと結構な被害があった。それなのにそんなことは起きていないようだ。家の壁にあの無慈悲な張り紙は張られていないし、窓ガラスも割れていない。そして彼自身そんなことを受けた様子がない。
さっき自分たちの境遇の特集が報道されたばかりだ。この可能性を即座に否定する。
(じゃあ家族が殺されたから事態が収まった?)
それもおかしい。なぜなら彼はノイズがらみで死んだと言っていたのだ。それは少し違うだろう。
まあ世間が家族が死んだからということで収まるとは思わない。
そもそも受けていたけど誰も知らないところに引っ越しという可能性もあるが。
聞けば分かるだろうが、他人の過去は正直聞きずらい。彼も響の過去は気になるけれど、つらいだろうから言いたい時に言えばいいし、無理をして言わなくてもいいと言っていたし。
(・・・・・・散歩でもしようかな・・・・・・。)
気分転換でもしようか。ちょうどお昼過ぎだし、彼はカギどころか変装用のグラサンや髪留め、着替えを置いて行ってくれた。ご丁寧にフードパーカーだ。髪はフード-パーカーを深くかぶれば問題ないだろう。少し怪しまれるだろうがほんの散歩程度だ。少しぐらいなら問題ないだろう。
まだ起きて1時間程度しか経っていないというのに、このごちゃごちゃした感情を忘れたかった。
とにかく消し去りたかった。
感想・誤字報告・評価はお待ちしております。
それでは次の機会に。