グレビッキーと家族になりました。   作:sinkeylow

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というわけで書きました。

感想がオラにモチベーションとやる気を与えてくれる。
もっと感想をくれぇぇぇぇぇぇ。



それではどうぞ。


記憶の痛み

 

 

 

 

 

 

 

 

 

分け皿に一部のお好み焼きを移し、箸でつかんで一口。

 

 

「う~ん♪自分で作るのもおいしいねぇ♪響ちゃんはどう?おばあちゃんが作ったの美味しい?」

 

「・・・うん。」

 

「あらぁ~♪フフフ、ありがとうね。そんなにおいしそうに食べてるのを見ると、作ったかいがあるってもんだね♪」

 

 

おばちゃん自信作のおすすめを食べている響はよほどおいしいのか、それともよほどお腹を空かせていたのか見た目が団栗をほおばったリスみたいにモグモグ食べている。

 

響は元々最初のおかゆの時も厳しい環境の中で生きていたからだろうか警戒心を研ぎ澄ませながら食事をしていた。多分無意識だ。だが食事を出し続けていると徐々にその警戒心を緩めるようになっていた。そして現在も警戒心を少しではあるが緩めている。どうやらおばちゃんも心を許せる人だと判断したようだ。それとも月華の知り合いだからか。それとも食欲を満たせているからだろうか。

 

 

「・・・ほしい?」

 

「・・・うん。」

 

「じゃあ交換しようか。」

 

 

お互いのお好み焼きを一切れにカットし交換。そして同時に一口。

 

 

「うん、流石お勧めだけのことはあるね。こっちよりおいしい。」

 

「・・・おいしい。」

 

「うん、ありがとう。」

 

 

最初のころに比べて口数が増えたことにうれしく思う。ちびちびと食べる微笑ましい光景を眺めながら麦茶を啜った。響はエンジンがかかったのか段々と食べる勢いを上げていく。こちらもまだ量があるし眺めていないで箸を動かし、食事を再開する。

 

 

「っ!!っ!!」

 

 

すると突然声にならない悲鳴を響は上げる。どうやら喉に詰まったのだろう。急いで麦茶に手を伸ばし喉に流し込む。

 

 

「はっ!はっ!」

 

「大丈夫?・・・ほら、口のソースついてるよ?」

 

 

紙ナプキンで響の気つの周りに付いたソースを軽くゴシゴシとふき取る。

 

 

「んん~っ、むぐっ。」

 

「よし、きれいになった。」

 

「・・・ありがと。」

 

 

少しバツが悪い様子に、いいよと少しの笑みがこぼれる。少しの間であるが、彼女と過ごしてわかったことがある。

 

 

それは、時々周りが見えなくなるということ。

 

長い間ずっと一人で生きてきたのだろう。食事から睡眠までもすべて命がけで。おそらくそれは無意識のうちに発せられる鋭い警戒心。これが深く関わっているだろう。周りから存在を否定され続けても、根強く生に固執し続けた結果が今の彼女なのだ。余程苦しい思いをしながら一人で生きてきたのだと改めて実感する。

 

人は誰かと関わりを持つことで生活をしている。たとえ一人ぼっちで友達がいない、あるいは家族がいないなどで自分は孤独だと思っていてもスーパーや家など誰かが生み出したものに関わっている時点でそれは本当の孤独とは言えない。

 

本当の孤独は自分自身の理性や自我、感覚を崩壊させただの野生動物へと回帰させる猛毒になる。

 

自分も家族を失い寂しいという思いをし孤独だと当時は結論付けていたが、ふらわーのおばちゃんやクラスメイトが支えてくれたから今の自分がある。案外自分は孤独ではなかった。でも世界がいつもより暗く寒いと思ったことはある。

 

彼女のポケットに財布が入っていたから真に孤独ではないだろうが、中はもうすっからかん。極めて近いともいえる。本当の孤独でなかったことが唯一の救いか。いや、もしかしたら出会っていた頃にはもうなっていたかもしれない。

 

拾った時にはまだ生きたいという光が見えた気がした。でもそれは淡く今にも消えそうなもの。もし出会っていなかったら彼女は崩れていたのだろう。もし自分もあの時に、すべてから存在そのものを否定されていたら彼女と同じかそれ以上の崩壊をすると思うと、思わず体が震えてしまう。そうさせる原因は彼女の状態を昔の自分に照らし合わせたからか。

 

そんなことを考えていると月華の耳に入る声が意識を戻す。

 

 

「・・・どうしたの?」

 

 

それは月華が初めて見た響の他人を心配する顔。心に余裕が生まれた今の響きだからこそ見せた顔。

 

 

(そうだ・・・、別に焦ることはない。)

 

 

その顔が月華の気持ちを落ち着かせた。小さくではあるが確実に前に進んでいるという事実が月華にとっていい薬だった。

 

彼女の口からその真実を聞き出す。それが彼女が自らの心を開いた瞬間の合図であり、月華が望む展開。確実にゴールに向かっているのだ。なんでもないよと返し、箸を動かす。

 

 

お好み焼きはまだ量がある。腹はまだ満たされていない。まだまだ昼食は続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、響にも今この時も少しづつ心に変化が訪れていた。

 

 

(・・・誰かと食べるのってこんなに楽しいんだ・・・。)

 

 

いままではただ生きていくためだけに最低限度やっていた冷たく心寂しいものであった食事。いままでの食事とは違い、その昼食は響にとっては腹を満たすだけでなく、どこか胸の奥も少しづつではあるが満たされるように感じた。響の頬を伝って落ちていく目を凝らさないと見えない小さな一粒の光がその証拠だろう。響は今までの嫌なことはすべて忘れて、ただ少し遅い昼食を楽しんでいた。

 

そして昔のことを思い出す。すべてが崩壊する前の記憶であり、大切な宝物。家族みんなでレストランに行った時の時間。その時の思い出が響の心にさらに温もりを与えた。

 

 

(・・・そういえば口のまわりを汚した時・・・、お母さんがよく拭いてもらったっけ・・・。)

 

 

外食自体久しぶりだったし、そんな些細なことをしてくれるのも久しぶりだった。母親だけじゃない、父親にも、祖母にもしてもらった。元々少し行儀が悪い響はホームレス時代では誰もその行為をしてくれる人がいなくなってしまったためよく汚していた。当時は本当に恵まれていたのだなと実感する。

 

最後に外食に行ったのは、中学1年の時の家族全員で旅行に行った時だったか。

 

 

(・・・また行きたかったな・・・。)

 

 

そんなもう叶わない願いを心の中で零していると―――――突然脳裏にノイズが走る。

 

 

 

 

―――――ほら、口のまわりが汚れているよ。

 

―――――んん~っ、むぐっ、ぷはっ。はは!!ありがと〇〇!!

 

―――――どういたしまして。もう少し落ち着いたら?響のご飯は逃げないから。

 

―――――だって、楽しんだもん!!

 

―――――楽しい?美味しいじゃなくて?

 

―――――そりゃあ美味しいけど、〇〇と一緒に食べるとそう思っちゃって。

 

―――――ふふ、そう?

 

―――――そうだよ!!やっぱり〇〇は私にとっての―――――

 

 

 

 

「っ!!」

 

 

カンッ!!とプラスチックのコップが床にたたきつけられた音が店内に響く。床に麦茶が広がる。その音を合図に月華は響を危惧する。厨房で洗い物をしていたおばちゃんも反射的に響の方に向いた。

 

 

「っ!!響ちゃん大丈夫!?」

 

「大丈夫かい!?」

 

 

かなり痛そうに頭を抱える。まるで頭に強い衝撃がやってきたかのように。しかしその痛みは思いの外、すぐに治まった。

 

 

「・・・大丈夫・・・だから。」

 

 

背中を擦りながら心配する月華とこぼれた床を雑巾で拭いているおばちゃんにそう答える。

 

 

(―――――今のは・・・なに?)

 

 

どこか懐かしい記憶。家族との思い出と同じぐらいかそれ以上の温かな愛情を感じがした。そんな思い出、今まであっただろうか?

 

その容姿はぼやけていたが、自分と同い年であろう少女だということは分かる。黒髪で白いリボンらしきもので髪を後ろに止めていた。従妹?でも自分に従妹はいない。となると友達だろうか。

 

だが、もし友達なら温かいはずがない。自分の関わりのある友人はすべて手のひら返しのように裏切るか見捨てたはず。そんな奴らからの温もりなんて反吐が出る。これはきっと何かの間違いだと響はそう自分自身に警告する。そう言い聞かせる。こんな記憶は今の響にとって邪魔なものだ。

 

 

(―――――そうだ、見捨てたやつらの記憶なんて・・・邪魔だっ!!)

 

 

こんな記憶、さっさと焼き払いたい。忘れてしまいたい。なのにそれができない。これだけは絶対に忘れてはならないような気がする。決して否定してはならないような気がする。

 

温かい一粒が響きの頬を撫でる。

 

 

「あ・・・。」

 

 

痛い。

 

どうしてこんなにも苦しいのか。どうしてこんなにもつらいのか。自分にとってこの記憶は一体何なのか。いやなモヤモヤが胸の奥で暴れだす。

 

 

「響ちゃん?」

 

 

はっと我に返り急いで涙をふき取る。変に心配されたくない。

 

 

「・・・ねぇ響ちゃん、体調が悪いのなら無理しないでいいんだよ?ボクが全部食べるし、それか持って帰るし。」

 

「そうよ?食べることも大事だけど具合が悪い時は無理しなくてもいいのよ?満腹より腹八分目がいいっていうし。」

 

 

心配する二人の声が響をはっと我を戻す。心配かけないように答える。

 

 

「・・・大丈夫。・・・まだお腹いっぱいじゃないし。」

 

「そう?・・・でも無理はしちゃダメだよ?」

 

「そうだよ?無理は体を壊すからね。」

 

 

不安ながらも本人が大丈夫と答えているので、おばちゃんは持ち場に戻り月華は響を心配しながら食事を再開する。でもそんなことを気にする暇は今の響にはない。

 

 

(・・・痛い・・・痛いよ・・・。)

 

 

本当に痛みを感じているかのように胸の奥が苦しむ。それを紛らすかのように自分のお好み焼きを響は平らげる。それでも変わらず痛みは収まらない。

 

 

(・・・どうして?・・・どうしてこんなに苦しいの?)

 

 

その記憶はとても温かかった。だからこそ、そのせいで余計に苦しい。眩しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

寂しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう~美味しかった。おばちゃん、ご馳走様です。」

 

 

食べ終えてゆっくりしているともう夕食時なのでお客が店内に入ってきた。このままいると営業の邪魔になるし、響が報道されているのでもめ事も避けたい。そろそろお暇することにする。響は変装をして先に外で待っておく。

 

 

「ええ、お粗末様♪ああ、お金は良いわよ?響ちゃんにそう言ったし。」

 

「そうですか。じゃあお言葉に甘えて。」

 

 

そう頷き、月華は勘定科目を持っておばちゃんにお金と一緒に渡した。え、というおばちゃんの呟きに月華は返す。

 

 

「これは、ボクが食べた分だけの代金ですよ。」

 

「でも、いいのよ?月華君にもいつもお世話になっているし。」

 

「それを言えば、僕だってあの時からお世話になっていますよ。」

 

 

そんなことを言いながらおばちゃんの好意を拒むのもまた失礼かと思い、あることを提案する。

 

 

「じゃあ、こうしましょう?これは前借ってことで、もしボクが困っていたらおばちゃんはボクを助けるってことで。」

 

「えと・・・つまり?」

 

「またおばちゃんに迷惑をかけるかもしれません。その時のための先払いってことですよ。」

 

 

迷惑。そのことに心当たりがあるとすれば今店の外で待っている響のことだろう。彼女にはつらい出来事があるということは分かっている。もし月華が困っていたら手伝ってくれるということだろう。わかった、と言いおばちゃんは承諾する。

 

 

「じゃあ、その時におばちゃん助けてあげる。でも最後まであきらめちゃ駄目よ?それが条件。」

 

「はい、お願いしますね。」

 

 

月華は遅い昼食を終えて店を後にする。まだ夏だからかもうすぐ夕方なのに青空が天を支配している。だが少しづつ茜色に染まりつつある。そんな光景を静かに響は眺めていた。

 

 

「おまたせ。」

 

「・・・・・うん。」

 

「・・・大丈夫?」

 

「大丈夫・・・。」

 

「そうか・・・無理しないでね。」

 

 

フラワーで食事をしているときと比べるとだいぶ良くはなっているがそれでも沈んだ顔をしている。お好み焼きでなにかつらいことでも思い出したのだろうか?それ以外だと心当たりがあるのは口のまわりのソースを"拭いたこと"やお好み焼きを"交換したこと"。それだけの情報じゃわからない。

 

だがなんにせよ何か辛い過去を思い出させてしまったのだろうということに申し訳なさそうな顔をする。だがこれも彼女が向き合うためにも必然なことだ。支えも必要だがずっとというわけにはいかない。

 

彼女が前に進むためにも仕方のないことだと辛くも割り切った。

 

 

「じゃあ、帰ろうか。」

 

 

2人は帰省する。響は落ち込みながらもちゃんと月華に背後からついていく。曲がり角を曲がった瞬間、目の前が突然真っ白になる。すぐにその白は去っていった。

 

その正体は夕日。さっきまではまだ青だったのにいつの間にか全体が茜色に染まっていた。よく見るとその光景がどこか幻想的でなぜか見惚れていた。

 

その光景が二人の心苦しさを取り払ってくれた。その光景にあることを月華は思いつく。

 

 

「ねえ今度さ、夕日や星がよくきれいに見えるところがあるから、夜は雨が降るから無理だけど・・・今度一緒に行こうよ?」

 

「・・・うん。」

 

「じゃあ、約束だね。」

 

 

その返答に月華は笑顔になる。彼女の過去はつらいものばかり。だがこれからもそうとは限らない。だからこそ彼女にとっていい思い出を作ろうと月華は彼女に約束をした。この約束が彼女の心を癒やすことを願って。

 

夕日を眺めながら歩いていると段々響が見知った所に着く。約束をした後の響の顔は少し明るみを取り戻している事実に月華も思わず微笑んだ。月華が住んでいることは人が少ない。ここまでくれば彼女がらみの面倒事は大丈夫だろう。だがすぐに彼の顔が少し変わる。

 

現在歩いているところは月華にとっては通学路でもある。一昨日、響はその帰宅途中に拾ったのだ。つまり―――――

 

 

「・・・。」

 

 

無意識に月華の視線が動く。視線に映るのは路地裏。月華にとって強い縁がある場所。光があまりない薄暗い空間。響と出会った運命の場所でもある。でもそれだけで歩むことはやめない。だが響は違った。

 

 

「っ・・・。」

 

 

その場所は響もよく覚えている。その場所を見るだけで当時のことを思い出す。この場所で本当は死ぬつもりだった。あの時雨水でできた水たまりには、生気がなく身も心も衰弱していて生きる気力をなくしている姿で虚ろで諦めた眼をしていた自分が映っていたことは頭だけでなく身体も覚えている。

 

思いだして身体が震える。

 

 

「・・・つらい?」

 

 

響がついて来ていないことに気づき、振り向く月華。

 

 

「・・・うん。」

 

「まあそうだよね。」

 

 

静寂が支配する。もともとこの辺りは静かなのだ。あのタイミングで自分が見つけたのが奇跡なのだろう。もし見つけてなかったらどうなていたか想像に難くない。

 

 

「でも・・・大丈夫・・・がんばる。」

 

「・・・そっか。」

 

 

もうわかっている。落ち込み続けても何も変わらない。進むしかないのだ。その眼には怯えつつも決意の証があった。

 

 

「じゃ、帰ろっか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――どうか彼女に幸福になりますように。




大体6000話ぐらい書いたあたりで切りがいいところで一話終了。





そろそろ月華の過去も明らかにしないとね。
あとタイトル回収も。



それでは次の機会に。


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