戦姫絶唱シンフォギアEX-AID 運命を変える戦士 作:狼牙竜
次回を待っている皆さん、もうしわけありません!
今回はクリス達の物語。
感想や評価が作者のパワーになります!
ある晴れた日の某空港。
「ふう…一週間ぶりの日本だけど、あいつら元気にしてんのかな?」
空港を出てきたのは美しい銀髪をウェーブヘアにした女性。
その横には大きなスーツケースがあることから、彼女が暫く帰る場所から離れていたことが容易に想像できた。
「確かこの辺りで待ってるとか言ってたけど…あ!」
女性の視線の先にいたのは同じ髪色の五歳にも満たない少女と、穏やかな顔をした男性。
「パパ!ママ帰ってきたよ!早く早く!」
少女に引っ張られながら男性…将也もついてくる。
「ただいま、彩歌…将也も」
「お帰り、クリス。バルベルデでの活動、お疲れ様」
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あの最後の戦いからおよそ9年。
リディアンを卒業したクリスは大学進学した後、S.O.N.Gの装者となりながらも両親の意思を継いで、無事に大学卒業を果たすと紛争地帯で自らの歌を届ける活動を積極的に行っていた。
その背後には未だに流通しているアルカ・ノイズを使うゲリラ達の制圧という目的もあるが、どちらにしてもクリスは自分の歌で人々の命と心を救うために日夜活動をしていた。
尤も、愛娘である彩歌も大切なのでクリスは定期的に日本に帰って家族の時間を大切にしているのだが。
「…ママ、つかれたの?」
「ああ…でも彩歌が一緒にいれば、疲れなんてすぐ吹き飛ぶって」
将也が運転する車の後ろでクリスは幼い娘の頭を撫でる。
「ここのところ平和にはなりつつあるって言われてたけど…その様子だとまだ課題も多いの?」
「うん…昔ほどじゃないから、アルカ・ノイズ程度なら一人でも事足りるけど…それでも、届かない命もある」
紛争地帯での活動だから、人の死が日常に存在してしまう。
確かに多くの命を救うことはできたが、それでもその手から零れてしまう命もあるのだ。
クリスにとって今回一番辛かったのは、彩歌とさほど変わらない年代の少年が目の前でアルカ・ノイズによって殺されたこと。
「彩歌を授かってよくわかったよ…アタシら大人のエゴで一番傷つけられるのは、いつだって弱い子供なんだってな」
いつの間にかクリスの膝で寝ていた彩歌を見て、将也は過去を思い出す。
一年ほど前に彩歌がクリスと離れるのが嫌で、泣きついたことがある。
クリスとしては自分の過去のこともあるのでバルベルデに彩歌を連れていくつもりはなかったのだが、彼女は一緒に行くといつになく駄々をこねて将也達を困らせたことがあった。
その時は彩歌の弟が彼女を引き留め、事なきを得た。
「あん時の香次には助けられたな…下手すりゃ母親よりしっかりしてんじゃねえの?」
「どうだろうね…でも、大切な人に手を伸ばすのはよく似てるよ」
彩歌には二人の姉と二人の妹、そして一人の弟がいる。
全員、母親は違うがクリス達にとっては6人ともかけがえのない子供達である。
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クリスの帰国は家族である響達にもすぐ伝えられ、ほぼ全員が集まった。
「お疲れ様、クリス。貴女が留守にしていた間、彩歌は我が儘言わなかったわよ」
深夜。将也とクリスは皆が寝静まっても二人で飲んでいたが、マリアが声をかける。
「アタシとしてはもうちょい我が儘言ってくれた方がありがたいんだけどな…アタシ自身、我が儘で彩歌をずっと置いてけぼりにしてるんだし」
「だったら、おもいっきり甘えさせればいいわ。貴女の行く先が危険だから連れていけないのは仕方ないけど、それ以外の時は目一杯家族の時間を作ればいい」
そう言うとマリアは自室に戻っていく。
流石は母親歴が一番長いだけあるな…と内心クリスは感心し、予定を考える。
「そうだな…だったら、明日は遊びにでも連れていくか。将也も一緒にな?」
「え?明日は…量産型ドライバーの開発作業が…」
「一 緒 に な ?」
「……わかったよ」
クリスも将也も、他の装者達も。シンフォギア装者やCRドクターという大勢の人間の命を預かる仕事に就いている。
だが、たまにはそれらの使命も忘れて大切な人達との幸せな日を過ごしてみたいと願わずにはいられなかった。
「さて…明日も早いからさっさと寝るぞ!」
「…二人で一緒に?」
将也の返しに一瞬で何かを察したのか、すぐに顔が真っ赤になるクリス。
「最近一緒に寝ることも少なかったし…ね?今夜は寝かしたくないけど」
「……このスケベ。新しい家族が来るのも近いってか?」
雪音クリス。既に結婚して娘が生まれてもなお、この手の話題は苦手だった…
これから数年後、クリスのシンフォギアは新しい装者に託されるが…それはまた別の話。