戦姫絶唱シンフォギアEX-AID 運命を変える戦士 作:狼牙竜
シンフォギアエグゼイド、ついに30話です!
今回は千翼がメインの話となります!
感想、評価が作者の力となります!
「千翼…今日を持って、貴様をこのシャトーから追放する」
キャロルの言葉に愕然とする千翼。
「追放…!?」
「当然だ。オレの計画を知ってもなお歯向かうのなら、最早貴様をこのシャトーには置いてはおけない」
キャロルはレイアに目を向けるとレイアは頷き、テレポートジェムを取り出す。
「本来なら殺す必要があるのだが…特別に追放で済ませてやる」
「そんな…キャロル!」
だが、キャロルはすでに出現していた転送の魔法陣に千翼を突き飛ばす。
その時、千翼はキャロルと目があった。
「…さらばだ、千翼」
――――――――――
ガリィを撃破し、響が実の父親、洸と再会を果たしてから数日。
未来は帰り道にパラドと会い、並んで帰っていた。
「…なあ、未来」
「なに…?」
パラドはあの夜の後に未来がとった行動に疑問を持っていた。
「何でお前は、響の親父さんに連絡先を教えたんだ?響の奴、親父さんからの連絡が続いててかなりイラついてるのに…」
あの後、未来はどういうわけか響の電話番号といった連絡先を洸に教えたのだ。
そのため、現在響の携帯には洸からの連絡がひっきりなしに続いている。
「…信じたいから、かな?」
一度洸が逃げたことで響の心が壊れそうになったのを未来はよく知っている。
だが、響と洸はどれほど離れていても親子であることは否定できない事実だ。
だから、少しでも可能性があるならばもう一度2人が分かり合えるようにしたい。
例え、今回の件が原因で響に嫌われようとも、未来は響のために動いた結果だったのだ。
「…そうか。なら、俺はとりあえず響達を見守ることに徹するよ」
「うん…」
そのまま、会話もなく歩くパラドと未来だったが…
パラドの耳に、何かが倒れる音が聞こえる。
「今のは…?」
パラドは気になって音がした方へと走り、未来も慌てて付いてくる。
2人がたどり着いたのは、あまり人が通らない路地裏。
「確かここら辺だったと思うんだが…」
「パラド!あそこに人が倒れてる!」
未来が指差した方向には、確かに誰かが倒れていた。
「おい!大丈夫か………!?」
パラドは倒れていた人物に声をかけると、未来共々愕然とする。
そこに倒れていたのは、傷だらけになった千翼だった。
――――――――――
「う………」
体に走る痛みに顔をしかめ、千翼は目を覚ます。
「ここは…どこだ?」
ゆっくりと起き上がると、自分がいる場所はどこなのか考え始める。
衣装箪笥や何らかのゲームのポスターがあり、目に付いたのは様々なゲーム機が入った棚と小型テレビ。
すると、ドアが開いて一人の少女が入ってくる。
「あ………目、覚めたんだね」
入ってきた少女…未来を見て千翼は驚いた。
「君は…誰だ?」
基本的に未来は現場に姿を見せることはほぼ無く、彼が復活してから未来が現場に姿を見せたのはモールの一件だけ。
その時の千翼は将也と相打ちになったことで姿を現すことはなく、未来は千翼を知っているが千翼はこれまで一度も未来と顔を合わせたことはなかった。
「ここはパラドの部屋。あなた、外で倒れてたんだよ?」
「パラド…って、まさか!?」
千翼は、ようやくこの場所がパラドの…自分達と敵対している相手の部屋だと知り逃げようとするが、体がまだ動かない。
「もう、動かないで!君、お腹すいてるんでしょ?」
図星だったため、顔を俯かせる千翼。
「安心して。あなたがここにいることは響達にも教えてないから」
未来の言葉が意外だったのか、ポカンとした千翼に未来が教える。
「あなたの身に何があったのかはわからない。でも、このことを伝えないって判断したのはパラドなの」
すると、ドアがノックされる。
「入っていいか?」
「パラド。いいよ」
ドアが開くと、そこには千翼のために作ったであろう食事を持ってきた家主…パラドが入ってきた。
――――――――――
差し出された食事を食べ終えた千翼だが、パラドと未来は特に何もしようとはしてこなかった。
「………どうして、俺を助けた?俺達は敵同士なのに…」
千翼の疑問に、パラドはため息をつく。
「そんなの、決まってんだろ」
「俺はただ、お前が死にそうな目をしてるから助けただけだ。それに………お前には、謝らなきゃいけないこともあったからな」
「謝らなければいけないって…?」
すると、パラドは千翼に対して頭を下げた。
「あの時は悪かった。お前の背負ってるものなんて知らずに、知ったようなことを叫んじまって」
九郎ヶ岳での戦いで、パラドは千翼がキャロルに従っていたことを批判した。
だが、最後にキャロルの死を嘆き叫ぶ千翼の姿を見てパラドの心は大きく揺れたのだ。
「…いや。あんたの言ってたことを俺は否定するつもりはないよ」
キャロルはずっと万象黙示録を作るために行動し、彼女も人知れず苦しんでいたのかもしれない。
なのに自分は、キャロルの『真の計画』を真っ向から否定して彼女から愛想を尽かされ、シャトーから追い出された。
すると突然、パラドのスマホに着信が入る。
「ん?…悪い、ちょっと出てくる」
「うん。わかった」
部屋から出たパラドに視線を送る千翼だが、未来は電話をかけてきた相手を何となく察していた。
「多分、映画の話ね」
「映画…誰かと観に行くのか?」
千翼の言葉に未来は首を振る。
「ううん。観るんじゃなくて撮影。パラドは今、知り合った人達と一緒に映画の撮影してるんだ」
「撮影!?」
映画の撮影がどれほど大変なのかは、千翼とてよく知っている。
「撮影してる人達のリーダーをしてる長瀬君って人がね、すごい真剣なんだ。だからパラドも、一緒に頑張ってるんだよ」
未来の何気ない言葉だが、そのたった一言が千翼の耳に残った。
「……長…瀬…?」
数分後、通話を終えたパラドが部屋に戻ってくる。
「やっぱり、長瀬君?」
「ああ。何とか撮影場所借りれたから、手伝って欲しいとさ」
「だったら、俺も連れて行ってくれないか?」
「「………え?」」
――――――――――
パラド、未来と共に撮影場所となっている町外れの広い公園まで歩く千翼。
突然着いて行きたいと言い出した千翼に驚いたパラド達だが、どちらにしろ彼から目を離すわけには行かず、やむを得ず連れて行くことに。
しばらく歩いた3人だが、やがて公園まで辿り着く。
「あ、来た来た!おーい!」
パラド達に気づいたのか、カメラを持っていた少年が手を振ってきた。
「健太!遅くなった!」
パラドが声をかけた相手の姿を見て、千翼は予想していたとはいえ、内心驚きを隠せなかった。
「随分遅かったじゃん。裕樹のやつ、心配してたぞ?」
「ああ、ちょっと用事があってさ…それより、今日は見学者を連れてきたんだけど」
カメラを持った少年は、千翼のほうを向く。
「え?見学者ってマジで!?ちょっと裕樹に伝えてくる!」
そう言い残し、少年は走っていった。
(…間違いない、あいつは…!)
見間違えるはずもなかった。
彼にとっては数年、数十年以上も前の記憶だが、『あのチーム』で出会い、知らぬ間に残酷な運命に巻き込まれたかつての仲間。
そんなことを考えていると、少年は現場を仕切っていた黒髪の少年を連れてくる。
「何なんだよ健太!いきなり引っ張ってきやがって!」
「いいから!パラドが見学者連れてきたんだよ!せっかく映画に興味持ってくれたんだから、監督やってる裕樹が直接出向いたほうがいいじゃん!」
健太の言葉を聞いて、裕樹と呼ばれた少年は驚く。
「え!?見学者ってマジかよ!」
少年は千翼の目を見て、笑顔で挨拶する。
「えっと、俺はこの映画の監督兼役者をしてる、長瀬裕樹!気軽に裕樹って呼んでくれ!」
――――――――――
「はいオッケー!」
少し離れたところから見学していた千翼は、撮影をしているメンバーをじっと眺めていた。
パラドと一緒に格闘の演技をしているのは、基本的に映像編集などを行う山下琢己。
カメラを回しているのは最初に接触した北村健太。
元気よく声をかけているのは長瀬裕樹。
3人とも、かつて元いた世界で千翼のアマゾン狩りを撮影してネットに投稿していた『チーム
(…でも、俺の知っている裕樹達じゃない)
琢己は自分の体をかつて構成していた『溶源性アマゾン細胞』が体内に入り込み、ヒヒアマゾンへと変貌。
健太の足を食い、自分達の拠点となっていたバーのオーナー『志藤真』によって射殺された。
その件がきっかけで裕樹はアマゾンの世界に深く入り込み、自分ともより深い関わりを持ったのだが…
(タクは人間のまま生きて、健太の足も無くなってない。なにより………裕樹があんな楽しそうに笑うの、初めて見た)
自分の知っている裕樹はいつもしかめっ面をしていて、時には激しく喧嘩をすることもあった。
「隣、いいかな?」
ふと、後ろから未来が声をかけてくる。
「えっと…」
「あ、そういえばまだ名前言ってなかったね。私は小日向未来。未来って呼んで?」
「あ、ああ…」
戸惑いがちな千翼だが、未来は千翼の横に座る。
「皆はね、この近くの施設に住む子供たちのために映画を撮影してるんだよ」
「施設…?」
未来は優しげな目でパラド達を見つめる。
「長瀬君、小さい頃はずっと施設で育ってたみたい」
幼い頃、裕樹は生みの親に捨てられ、施設で育てられた。
だが、そんな彼を引き取ってくれた家族がいた。
しばらくは義家族と馴染めなかった裕樹だったが、ある時義父が自分の仕事場に連れて行ってくれた。
義父の仕事は、とある有名な映画会社の監督だったのだ。
「お父さんに連れて行ってもらった先で、長瀬君は感動したんだって。映画作りに頑張る人たちの姿に」
それ以来長瀬は映画作りにハマっていき、高校生になってついに友人達と共に映画作りのサークルを立ち上げた。
「そっか…裕樹は、この世界で自分のやりたいことを見つけたんだな…」
生き生きとした笑顔で撮影に望む長瀬の姿を見て、千翼は少し羨ましくなった。
「あー!もう撮影始まってるの!?」
すると、突然自転車に乗って走ってきた少女が来た。
長い黒髪が特徴的な可愛らしい少女は、自転車のスタンドを起こすと走ってくる。
「おいイユ!遅刻しまくりじゃねえかよ!てかマモル達は?」
長瀬の言葉に少女は謝る。
「ごめん、ノート提出とかで遅れて…マモちゃんは衣装デザインとか練ってるから、今日は来れないって…」
「そっか…今日は悠先生も来れないって言ってたし、今日はとりあえず撮れるところまでやるか!」
そこまで言って長瀬は、千翼のことを思い出す。
「あ、そうだ!今日見学者が来たんだけどさ、ちょっと挨拶しておけよ!」
「え?ああ!」
ようやく気がついた少女は、千翼と向かい合う。
「えっと、初めまして!私、星埜イユって言います!」
すっと手を伸ばすイユに対し、千翼は若干躊躇いながらも握手を交わした。
「俺は………
泉 千翼です」
長い時を超え、絶望の中をまたしても彷徨うことになってしまった少年。
だが、彼に待ち受けていたのは全く異なる人生を歩んできたかつての友人、愛していた人との再会という数奇な運命だった。
この出会いがもたらすものは果たして希望か絶望か…
それは、これから明かされていくだろう…
薄暗い廊下を歩く、真っ白なスーツに帽子を被った男。
やがて彼が足を止めると、その目の前にはかつてキャロルが千翼の体を入れていたものより一回り大きな生体カプセルがあった。
その中に入っているのは、複数の腕を持つトカゲにもピラニアにも見える不気味な異形。
「…早く目覚めるといい。待っているよ、『彼』も君のことをきっと………」
男はテーブルの上に置いてあった物…所々の塗装などが剥げたベルト『アマゾンズドライバー』を手に取る。
「ねえ……『千翼』…?」
ドライバーを撫でた男…『アダム・ヴァイスハウプト』は不敵な笑みを浮かべた…
To Be Next GAME…?
次回、シンフォギアエグゼイドは!
「貴方が響を傷つけるのなら!僕はあなたを許さない…!」
将也の怒り、爆発!?
「ミカ。貴様に残された時間は少ないぞ」
キャロルは次なる刺客を送り込み…
「響さん!やめてください!」
「一旦落ち着くデスよ!」
「アアアアアアアア!!」
装者達のチームワーク、崩壊の危機!?
第31話 すれ違うTEAM WORK!
《Are You Ready!?》
「…ビルドアップ」