魔界戦記ディスガイア~魔界の王子とプリニー教育係~   作:あららどろ

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#13 驚愕女の子

「……は? 夢? 何を言ってるんだお前は?」

「とぼけたって無駄よ! あたし、気付いちゃったんだからね! これがあたしの夢の中だって!」

「な、何を言っているんだ……こいつは……」

 

 ラハールが助けを求めるような視線をエトナに向ける。エトナは苦笑いをして首を振る。完全に呆れているという表情だ。

 

「あれですね、きっと。夢の中だからなんでもできると思い込むことで潜在能力の100パーセントを引き出しているとか……それなら、その子の強さも説明できなくは……ないんじゃないですかね、殿下?」

「どんな理屈だ……」

 

 軽く引きながらラハールが言う。当のフーカはそんなこと気にしてないとばかりに胸を張り、バットをぶんぶん振り回している。

 

「せっかくの夢なのにどーして来る日も来る日も掃除洗濯でこき使われなきゃならないのよ! あたしはね、もっとラブリーでキューティクルな夢を見たいの! 白馬の王子様が助けに来てくれるようなそれはもう胸がキュンキュンしちゃうような夢が!」

 

 フーカが拳を握りしめてラハールを睨みつける。

 

「なんでピッチピチの中学三年生のあたしがあんな超ブラック体制で労働しないといけないのよ! 信じられる!? 激務な上に1日12時間労働で日当はイワシなのよ!? あんたみたいな皮付きのプリニーにはわからないでしょうがね!!」

 フーカは自分の正当性の証明だと言わんばかりに大声で叫んだ。だが、残念ながらその感覚は人間のそれ。悪魔の常識と人間の常識はかけ離れているのだ。

 

「好待遇だな」

「トップクラスのホワイトじゃない」

「うむ。そんな好条件でプリニーを雇ってくれるところは少ない。小娘、悪いことは言わん。そこで働け」

 

 ラハール、エトナ、ヴァルバトーゼが口々に言う。フーカは信じられないと首を振る。

 

 

「しょ、正気!? 12時間労働よ!? しかも休憩なしで時給イワシ一切れよ!? これがどれだけ恐ろしいことかわかってる!? 労働基準法を違反してるどころじゃないのよ!!」

 

「おい、エトナ」

「はい」

 

 やる気ない声でラハールが言うと、エトナも同じくやる気のない声で返事をした。

 

「お前のとこのプリニーの労働環境を教えてやれ」

「わっかりました~!」

 

 エトナはラハールに向かって最高の笑顔を浮かべて大げさな敬礼をするとフーカに向き直った。

 

「私のところのプリニーは休みなしの22時間労働! 福利厚生は無しで日当はサンマよ!」

「なっ!?」

「……悪魔の中でもトップクラスにプリニーをこき使っていますね、閣下」

「日当がサンマだと!? イワシではないのか!」

「そこですか……」

 

「ひッ……!? に、22時間……!?」

 驚愕の事実にフーカがたじろぐ。

「あ、もちろん休憩時間は労働時間に含んでないわよ」

「あっ……ああ……そ、そんな……5時間に1回30分の休憩を取ることすら許されないなんて……!?」

 あまりの恐怖にフーカの脚がすくむ。

「あとあと~、日当のサンマはたま~に払い忘れちゃうかも」

 顎に人差し指を当ててかわいいポーズをとるエトナ。

「むしろ払われてる日のが少ないな」

 ラハールも若干引きながら頷く。

「でもでも~、給料の催促なんてしやがったらその場で消し炭にしちゃうぞっ」

 フーカはあまりの恐ろしさに立っていられずその場にへたり込んだ。

「ちなみに、業務内容には敵陣への単身特攻、プリニー爆弾の弾丸も含まれてまーす」

「あわ、あわわわわわわ……」

 恐怖で言葉を出すことすらできなくなったフーカに対し、エトナは拳を天に掲げて勝利の名乗りを上げた。

 

 

「出直してきなさい小娘。自分がどれほど恵まれた環境にいたかを噛みしめることね」

「そ、それじゃあ、プリニーを殲滅したところであたしたちの待遇は何1つ変わらないっていうの……?」

「むしろ悪化するな」

「う、ウソよ! 皮付きのプリニーの待遇は1日1時間労働の別荘付きの超特別待遇って聞いたのに!!」

「むしろよくそれを信じたな」

 呆れた顔で言うフェンリッヒ。

 

「そ、そんな、じゃああたしたちはなんでこんな目にあってるのよ……あたしたちが何をしたっていうの……?」

「何を言う。生前に何かしらの罪を犯したからそれを償う為にお前たちはプリニーになったんだろう」

 ヴァルバトーゼが言うと、フーカは首を振った。

 

「そ、そんな……罪なんて、あたし何も悪いことなんかしてないのに……」

「あー、それって犯罪者がよく言う奴よねー」

 ぷるぷると震えるフーカに、エトナが言う。フーカは目に涙を浮かべて叫ぶ。

 

「ち、違うもん! ほんとにあたし何もしてないもん!! そ、それに生前って……あたしは生きてるわよ!」

「今現在はどうかは知らんが、少なくとも人間界ではお前は死んだことになっているはずだ」

「うそよ、うそ、そんなのウソーっ!!」

 

 うわーーーっと、叫ぶと、フーカは背を向けて駆け出した。

 

「あほらしい。どうします、殿下?」

「当然! 放ってお……」

「追いかけましょう!!」

「うごっ!?」

 

 ラハールを突き飛ばし、フロンがフーカの後を追う。慣れないプリニーの身体でバランスを崩したラハールはうまく体勢を整えることができずにそのまま転倒し、ゴロゴロと転がった。

 

「閣下、いかがいたします?」

「皮が与えられていないとはいえ、プリニーはプリニー。プリニー教育係として見捨てるわけにもいくまい。行くぞ、フェンリッヒよ」

「やれやれ。やはりそうなりますか……全ては我が主の為に」

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