魔界戦記ディスガイア~魔界の王子とプリニー教育係~ 作:あららどろ
「ハーッハッハッハッ!!」
赤いマフラーのプリニーが短い腕を組んで高笑いする。
「「ええええええええっ!?」」
エトナとフロンが目を見開いて叫ぶ。それもそのはず。その姿はかつての魔王城の主の特徴を色濃く残していたからだ。
「ラ、ラハールさん!?」
フロンが口元を抑えてその者の名を言う。
「いかにも! 俺様はラハール様だ!!」
そんなはずはない。だってラハールは死んだはずだ。
そう思うエトナだったが、この触覚と赤マフラーは間違いなくラハールのそれだ。
そうか。
エトナの頭の中で何かの歯車がかみ合う。
(殿下は悪魔と人間のハーフ。だから、人間の血が半分混ざっている。罪を背負った人間はプリニーになるから、殿下だって罪を償うためにプリニーに転生してもおかしくはないんだ!)
「ラ、ラハールさんんん~~~~!」
「う、うおっ!? ええい、くっつくな、気持ちが悪い!」
フロンが涙と鼻水で顔面をべちゃべちゃにしながらラハールに抱き着く。
「だって、だって~~~~」
「き、汚い! 俺様のマフラーに鼻水をつけるな!」
マフラーが生き物のように蠢いてフロンを縛り上げ、ラハールからフロンを引きはがす。
「殿下……」
エトナが小声で言うと、ラハールはエトナを見て不敵な笑みを浮かべた。
「……フン。相変わらずのようだな、お前たち」
「あーあー、せっかく邪魔な奴がいなくなってせいせいしたのになー」
エトナは頭の後ろで腕を組んで言った。
「そんなこと言って、笑ってますよ、エトナさん」
「なっ、えっ!?」
フロンに言われて、エトナは両手で口元を抑えた。
「かっ、勝手なことを言わないでよ! いくらフロンちゃんでも怒るよ!」
「ふふふ、恥ずかしがらなくなっていいんですよ。愛する人が戻ってきたら、うれしいのは当然なんですから」
「だ、誰が殿下なんか!」
「ええい! 愛愛言うな! 気分が悪くなる! おい、エトナ!」
震える肩を手で押さえながら、ラハールが言う。
「暗黒議会に行くぞ」
「え? なんでですか?」
「決まっているだろう。元の姿に転生するのだ」
「えー。無理だと思いますよ。殿下の罪なんて1億ヘルどころか1兆ヘルあっても償いきれませんよ」
「そこは力尽くで可決させればよかろう」
「うわ~、殿下悪魔~」
「当然だ! 俺様は悪魔の中の悪魔! 魔王ラハール様だからな!」
ラハールは腕を組んで高笑いをする。情けないペンギンの姿でそれをやっても、威厳もクソもないが、元々威厳なんてものはなかったと、エトナはスルーする。
(あーあー。今の魔王はあたしなんだけどなぁ。帰ってくるなり魔王の座を勝手に奪いやがって……)
だが、不思議と不満はない。やはり、悪魔たるもの他人に与えられた地位など嬉しくない。奪った地位についてこそ悪魔なのだ。
そう。他人に与えられた地位だからやる気がなくて書類も全部ほったらかしにしていたのだ。
(だからとりあえず、あたしが溜めた書類を殿下が全部処理してくれるまでは殿下に魔王の座を返してあげよっと)
エトナが尻尾を振りながら、ラハールの後ろにつく。
「でも、プリニーさんの姿から転生できるのって、普通の悪魔さんだけですよね?」
「……何?」
フロンがとぼけた顔で言う。
「ですからぁ、プリニーさんの姿から転生できる姿って決まっていましたよね?」
「……なに?」
ラハールが固まった。