魔界戦記ディスガイア~魔界の王子とプリニー教育係~   作:あららどろ

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#22 地獄の死神

「ああ、待ってくださいお姉さま~。デスコはラスボスだから、高速移動は苦手なのデス……」

 

 一行が情報局の中を進む中、やや遅れたデスコが泣きそうな顔で言う。やれやれと首を振ったフーカが、デスコの方へと駆け寄って手を差し伸べる。

 

「よくわかんない理屈ね。高速移動ってほどじゃないでしょ。ほら、おいで」

 

「いつの間にそんなに仲良くなったんですか?」

 その様子を見ていたフロンが、足を止めて振り返った。

 

「よくわかんないけど、この子あたしに従順なのよ。お姉さま、お姉さまって。それに、ラハっちの家来ならあたしの家来ってことになるし!」

「ふふふっ。本当の姉妹みたいですよ。おふたりとも」

「ほ、本当デスか!? デスコ、嬉しいデス!」

 

 その言葉を聞いたデスコは、にぱっと笑みを浮かべた。

 

 一方、先頭では案内役として連れてこられたエミーゼルが、首を傾げていた。

 

「おかしい……いくら最終兵器だからって、普通情報局のセキュリティをああも簡単に突破できるのか……?」

「どうしてそう思う?」

「ここのセキュリティは完璧なはずなんだ。力だけじゃ突破できないように魔力のプロテクトがいくつもかかっていて……それこそ、あのプリニー魔王ですら、正面から暴力だけでの突破は困難なはずなのに……」

 

 それを聞いたラハールが、眉間にしわを寄せた。それを見たエトナが慌ててラハールにちょっかいをかけてエミーゼルらの話からラハールの注意をそらした。

 あのままでは、自分の力を見くびるなとこの場で大暴れしていただろう。

 馬鹿な主を持つと家来は苦労するものだ。と、エトナは一人小さなため息をついた。

 

「フム。気になることは気になるが……セキュリティーが脆くなっているなら俺たちにとっては好都合だ。とにかく進むぞ」

 ヴァルバトーゼは、そういってマントを翻すと、正面の扉を蹴破った。ここまで警備らしい悪魔もいなければ、セキュリティシステムらしきものも見当たらなかった。

 

 ここらでそろそろ何かが来るだろうというヴァルバトーゼの感は、見事的中した。扉の向こうには、無数の銃口が並び、それら全てがヴァルバトーゼに向けられていた。

 

「ほう。待ち伏せか。いかにも悪魔らしい」

 

「ここまでだな。侵入者め」

 

 先頭の悪魔が銃のトリガーにかけた指に力を込める。だが、弾は発射されなかった。いや、できなかったのだ。あとほんの0.1ミリもトリガーを押し込めば弾は発射されるだろう。だが、同時に自分の首が切り離されるということをヴァルバトーゼの殺気が物語っていた。

 

 政腐に忠誠を誓ったとはいえ、所詮悪魔。上の為に命を捨てられるほどの忠誠心は持ち合わせていなかった。

 

 沈黙を破ったのは、エミーゼルだった。エミーゼルは、ヴァルバトーゼを押しのけるように前に出て、大きく手を振った。

「おい、このオレ様を見ろ! 死神エミーゼル様だぞ! ほら、この通り生きてるぞ!」

 

 

「それよりも誤字だ! 貴様らの記事に誤字があったぞ! だから、こうしてクレームを入れに来たというのだ!」

 

 エミーゼルの言葉を遮るように前に出たヴァルバトーゼ。それをさらに押しのけて、エミーゼルが前に出る。

 

「おい、お前たち、ただちに死神エミーゼル死去の記事を訂正するんだ! さもなくば父上に報告を……」

 

「エミーゼル様は死んだ!」

 駆け寄ろうとしたエミーゼルに、銃口が向けられる。

「え!?」

「エミーゼル様を騙る侵入者め。排除する。総員、戦闘配備につけ!」

 

 

 悪魔たちが陣形を展開していく。その攻撃目標には、当然のようにエミーゼルも含まれていた。

 

「エミーゼルさん、お父さんに見捨てられちゃったんですね……うう~、かわいそうです~」

「いや、違う! オレ様は捨てられてなんかない! もう一度よく見ろ! オレ様は偽物なんかじゃ……!」

 

 エミーゼルが前に出る。刹那、銃声が響いた。

 

「えっ――」

 

 流石は死神といったところか。エミーゼルは、自分に迫る弾丸をしっかりと目で捉えていた。だが、かわせるかどうかは別の話。

 死を覚悟したエミーゼルの前に、真紅のマフラーが飛び出してその弾丸を受け止めた。

 

 マフラーの主は、不遜な笑みを浮かべながらエミーゼルを睨んでいた。

 

「まだ気付かんのか、愚か者め。お前が本物だということくらい、奴らもとっくに気付いているはずだ」

「そーそー。あんた、大好きなパパに捨てられたのよ」

 

「ち、違う! 父上がボクを捨てるはずがないだろう!?」

 

 だが、そう叫んだエミーゼルの声はどこか弱々しかった。

 心のどこかでわかっていたのだ。彼らのあの行動が、どういう意味なのか。

 

 父親が自分の生存を知らぬはずがないということを。

 

 だが、それを認めてしまうと、自分の存在が消えてしまいそうで、エミーゼルは自分の父親を信じるしかなかった。

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