魔界戦記ディスガイア~魔界の王子とプリニー教育係~   作:あららどろ

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#26 地獄の天使

「さあ、徴収です……ッス!」

 

 プリニーが局長に詰め寄る。何が何だかわからない局長がラハールたちに助けを求めるような視線を送るが、ラハールたちも状況に理解が追い付いていない。

 

 ただ1人、ヴァルバトーゼだけが勝ち誇ったような笑みを浮かべていた。

 

「たった一つの真実が見えたぞ!」

 

 そう言って、ヴァルバトーゼがその謎のプリニーを指さした。

 

「お前、その取ってつけたような語尾の「ッス」。本物のプリニーではないな。プリニー教育係の俺の目はごまかせんぞ! 正体を現すがいい!」

 

 衝撃の事実に、一同は激しい衝撃を――受けなかった。

 

「いや、それ以前の問題でしょ。どう見たって着ぐるみだし」

「それ以前にここに「ッス」すらつけないプリニーがいるんだけど……」

「俺様はプリニーじゃない!」

「いやプリニーでしょ」

 

 

「フフフフッ……私の変装を見抜くとは。恐れ入りました」

 

 そう言って、謎のプリニーはその着ぐるみを脱ぎ捨てた。

 

 中から出てきたのは、白い衣装に身を包んだ桃色の髪をしたグラマラスな女性だった。その女性の背中にあるのは白い翼。それは、天使の証だった。

 

「コイツ……まさか魔界を騒がせている業欲の天使!?」

 

 そう叫んだのはエミーゼルだった。

 

 業欲の天使。最近、魔界で噂になっている盗賊――というより強盗だ。悪魔たちから徴収という名目で金品を奪っている。

 

 それを聞いた天使は、軽く肩をすくめた。

 

「失礼ですわね。それは、悪魔が勝手に名付けた名前です。わたくしのことはそうですわね……「ブルカノ」と、でも呼んでもらいましょうか」

 

 天使の女性――ブルカノが微笑みながら言うと、耳をつんざくような叫びが上がった。

 

「ええええええええええええええええええええええええええ!!?」

 

 フロンだ。

 

「ブ、ブルカノ!? えええええええええええええええ!!」

 

 壊れたように叫び続けるフロンに、これはたまらんとフーカが無理やり口を押えて黙らせる。

 

「もご、もごごご!!」

「あー、もう! どったの!?」

「ぷはっ……だだだだだってエトナさん! ブルカノって……!」

「そういえば聞いたことがあるな」

 

 誰だったか、と、ラハールが腕を組んで首をひねった。

 

「知ってるのか?」

「いや、聞いた気はするんだが……うーん……?」

 

 必死に頭をひねるが、どうやらラハールの記憶からはブルカノの記憶がすっぽりと抜け落ちているらしい。それでも何とか頭をひねらせて、ようやく思い出したとラハールは手を叩いた。

 

「わかったぞ! 魔界に攻めてきた人間どものボスだろう!」

「違いますよラハールさん! 天使長ブルカノ様です!」

「何? 違うのか。天使長……ああ、いたな。そんなヒゲの天使」

「まさか転生したんじゃ……ああんずるいですぅ! 私なんてまだ堕天使なのにぃ!」

 

 フロンがどこからか取り出したハンカチをガジガジとかじり恨めしそうにブルカノを睨む。

 一方のブルカノは、口を開けたままフロンを見つめて動かない。

 

「……あれ? どうしたんですか、ブルカノさん? 私の顔になんかついてますか?」

 

 フロンに言われて、はっとなったブルカノは口元を抑えてほほほと笑った。

 

「いえ。知り合いにとてもよく似ていたものですから。えっと、失礼ですが、天使ではなくて……?」

「はい。私、堕天使なんです。ちょっと前まで天使見習いだったんですけど」

「天使見習い……なら、わたくしの勘違いですわね。失礼しました」

「いえいえ。ご丁寧にすみません」

 

 大きくお辞儀した後、フロンは振り返って自信満々に言った。

 

「やっぱり、ブルカノ様じゃないですね」

「ま、それが普通よね。第一ここ、別次元だし」

 

 

「ねえ、それより、さっきからヴァルっちとフェンリっちが動かないんだけど」

 

 フーカが指さすと、2人は眼を見開いたまま固まっていた。

 

「どうしたんデスか? おなか痛いデスか?」

 

 デスコが触手を伸ばしてフェンリッヒの頭を撫でたが、フェンリッヒはピクリとも動かない。

 

 しばらくして、ヴァルバトーゼがやっとのことで言葉を絞り出した。

 

「ば、馬鹿な……何故だ。何故お前が……ここにいる……アルティナ!」

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