魔界戦記ディスガイア~魔界の王子とプリニー教育係~   作:あららどろ

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#7 イワシの日~流星襲来~

「覚悟しろ、エミーゼル! アクターレの熱き魂を受け継いだ俺たちが! 今、貴様を倒し、プリニーたちを開放して見せる!!」

「……プ、プリニー?」

 

 その言葉を聞いたエミーゼルが単語を復唱する。

 

「ま、まさかお前たち、プリニーなんかのために政腐に反逆を?」

 

 悪魔とは自分の為だけに行動し、他人を蹴落とすことを生き甲斐とする存在だ。自分の上司ならまだしも、自分の部下――それも最下級のプリニーなんかを助けようとする悪魔なんているはずがない。

 それがエミーゼルの考えだった。

 

「そうだ!!」

 

 ヴァルバトーゼは言う。

 エミーゼルにはそれがどうしても信じられなかった。

 

「バッカじゃねーの!? プリニーなんて悪人の魂じゃないか……! そんなクズのために命を賭けて戦うなんて……どうかしてる! あり得ない!!」

 

「……かわいそうな奴だな小僧」

 

「なにっ!?」

 

 ヴァルバトーゼが笑う。

 

「言葉で言ってもお前にはわかるまい! だから教えてやる! 誰になんと言われようと己を信じ、突き進む道があるということを!!」

 

 ヴァルバトーゼが両手を天に掲げて叫ぶ。まるで神に自らの行いを見せつけるかのように。

 

 

「俺は約束を決して破らん! 何があってもだ! だから俺は戦う! プリニーの為ではなく……俺が約束を果たすために! そう、これはイワシのための戦いだ!!」

 ヴァルバトーゼは高々と叫んだ。

 

「ば、馬鹿なことを……! お前たち、やってしまえ!!」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 エミーゼルの一言でアバドンの悪魔たちが一斉に襲い掛かってくる。

 

「イワシッ!!」

 叫び声と共にヴァルバトーゼが大量のコウモリへと変化する。コウモリの大群は悪魔たちに纏わりつくように飛び、彼らをかく乱する。

 

「お見事です。閣下」

 悪魔の一撃を易々と交わしたフェンリッヒはその悪魔の首に手刀を叩き込んだ。その一連の動きは常人の目では到底とらえられるものではない。悪魔たちにしてみればフェンリッヒが一瞬で背後に移動したかと思ったら仲間がいきなり倒れたように見えた。

 

「う、うわああああ!!」

 半錯乱状態になった悪魔たちがフェンリッヒへ武器を振るう。フェンリッヒは全ての攻撃を疾風の如き動きでかわし彼らの間をすり抜ける。

 

「追いつこうなどと思わぬことだ!」

 フェンリッヒの目が鈍く輝く。銀の風と化したフェンリッヒが悪魔たちの間をすり抜ける。風とすれ違った悪魔は血しぶきを上げて悲鳴すらなく崩れ落ちた。

 

「これがイワシの力だ! お前たちもイワシを食え!!」

 

 コウモリの大群が集まり、巨大な牙となって悪魔たちに噛みつく。牙は周囲の悪魔たちをひとしきり襲うとコウモリに戻り、そのコウモリは一点に集まってやがてヴァルバトーゼとなった。

 

 

「ば、馬鹿な……たかが2人相手に……!」

 

 1瞬だった。戦闘開始からまだ1分も経っていないというのに30体近くの悪魔がやられた。

 

「……お、おい! 何を見ている! 急げ!」

 

 だが、慌てることはない。

 アバドンの本隊はただ攻めるだけの悪魔で構成されているわけではないのだ。

 

「ヒール!」

 

 後方にいたヒーラー部隊の回復魔法が、傷ついた前衛を癒す。ヒールの魔法を受けて復活した悪魔たちが、落とした武器を持って立ちあがる。

 

「なるほど……少しはやるようだな」

「後ろのヒーラーを潰さなければキリがありませんね。閣下……ここはアクターレをおとりにして……ん?」

 

「お坊ちゃま~~!!」

 

 アクターレは混乱に応じてエミーゼルの元へ駆け寄っていた。意地でも権力の傘の下に入っていたいらしい。だが、勘違いは解けていなかった。

 

「う、うわあああああああ!!」

 

 自分を襲いに来たと勘違いしたエミーゼルはアクターレへ向けて武器を振るった。

 その武器はアクターレの股間に直撃し、アクターレは「うっ」という小さなうめき声と共に倒れた。

 

「ア、アクターーーレェェェェェーーーー!!!」

 

 ヴァルバトーゼの叫びが響く。

 アクターレは股間を抑えて動かない。エミーゼルからは辛うじてラマーズ法で呼吸するアクターレの哀れな呼吸音が聞こえていた。

 

 

 

 

 

 

「アクターレ獄長……! 貴様のその勇猛っぷりは後世まで語り継いでやろう!!」

「ご、ごめんなさい、つい……って、なんで仲間を勝手に殺してるんだよ! ええい! ふざけた奴らだ!」

 

 エミーゼルの合図で戦闘が再開し、ヴァルバトーゼたちに多数の魔法や武器、爪と牙が降り注ぐ。

 それを容易くいなし、反撃し、悪魔たちを打ち倒すがすぐに後方のヒーラー部隊によって悪魔たちは復活する。

 

「ふむ。あいつらを倒さないとキリがないな」

「閣下。私が今からこいつらを撹乱します。そのうちに後方部隊を……」

 

 フェンリッヒが指を鳴らして腰をおとす。

 

「……待て。何か来る」

 

 フェンリッヒが手に集めた魔力を放とうとした瞬間、ヴァルバトーゼがそれを止めさせた。

 

 遥か彼方より、何かが飛来してきた。

 

 

 それが近づくにつれて輪郭はハッキリとしてくる。

 

 

「あれは……プリニーか?」

 

 それはプリニーだった。頭に生えた触覚。首に巻いたマフラー。そして鋭く、赤い瞳。他のプリニーにはない特徴こそ備えているが、確かにそれは紛れもなくプリニーだった。

 

 そのプリニーは腕を組んで巨大なタライに乗っていた。その後ろには楽しそうにきょろきょろしている赤いリボンの少女と、赤い髪の露出度の高い服を着た少女。

 

 メテオインパクト(小)。メテオで食事ごと消し炭にしてしまってはいけないと考えたラハールが威力を抑えて放った低燃費メテオインパクトだ。

 別次元の魔界で、暁のパンツ大作戦を繰り広げるプリニーたちを苦しめたプリニーラハールのこの技は、見た目こそ情けないが十分すぎるほどの威力を持っている。

 

「ハァーハッハッハッハッハッ!!」

 

 高笑いと共に、巨大なタライがアバドンたちへと突っ込んだ。

 

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