魔界戦記ディスガイア~魔界の王子とプリニー教育係~   作:あららどろ

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#9 イワシの日~魔王と暴君~

「プリニー教育係だと?」

 思いがけない言葉にラハールの動きが止まる。

「さあ俺に続いて復唱しろ!! 「語尾には必ず「ッス」をつけること」!!!」

「するか!!」

 

 ラハールが怒鳴ると、ヴァルバトーゼは首を振った。

 

「ここまで教育のなっていないプリニーは初めてだ。こんなプリニーを出荷したらプリニー教育係としての俺の立場がない。この俺の名にかけて、お前をどこに出しても恥ずかしくない立派なプリニーにしてやろう!」

「せんでいいわ!!」

 ラハールが触覚を立てて叫ぶ。

 それを見ていたエトナはけらけらと笑った。

 

「殿下~この際プリニーとして教育してもらったらどうです?」

「誰が教育されるものか!!」

「やだなあ、殿下。一人前のプリニーになったあかつきにはちゃんと良待遇で雇いますってば」

 

 ラハールをからかうエトナの背後にアバドンの影が迫る。先ほどの僧侶だ。致命傷を受けていたものの、その傷を自らのヒールで回復したのだ。

 その手に握った短剣を、エトナめがけて振り下ろす。

 

「まるわかりだっての」

 

 エトナは最小限の動きでそれをかわして僧侶の背後に回り込む。

 

「「後ろからグサッ」するときはちゃんと殺気を消さなきゃだめよ」

 手のひらに魔力を集め、僧侶にぶち込む。吹き飛ばされた僧侶はラハールとヴァルバトーゼの方へ飛んでいく。

 

「あ、殿下ごめん」

「何?」

 

 ラハールがエトナの声に顔を向けると、くるくると宙を舞う悪魔がラハールへ飛んでくる。

 

「フン」

 

 ラハールがそれを打ち落とそうと手に魔力を集めるとほぼ同時に、現れた1つの影がその悪魔を弾き飛ばした。

 

「……貴様、我が主に向けて悪魔を飛ばすとは」

 

 フェンリッヒだった。

 白銀の狼男はエトナへ鋭い視線を向けて言った。

 

「え~。わざとじゃないしぃ~」

 口笛を吹きながら、頭の後ろで腕を組んだエトナに、フェンリッヒの殺意が叩きつけられる。

「……生きて帰れると思うなよ!」

「えっ!?」

 

 フェンリッヒはエトナとの距離を一瞬でつめ、鋭い蹴りを繰り出した。体をエビぞりにして何とかそれをかわしたエトナが、後ろに跳んで距離を取る。

「ちょちょちょ、ちょっと! そんなに怒らなくてもいいじゃん! 大体、あんたらとやり合うつもりは……!」

「問答無用!!」

 

 フェンリッヒの連続攻撃がエトナを襲う。エトナがそれを槍で受け流す。まさか傷一つつけられないとは思っていなかったフェンリッヒが口元を歪ませる。

 

「ほう……ただの悪魔じゃなさそうだな」

「そっちこそあたしに喧嘩売って生きて帰れると思わないことね」

 

 フェンリッヒとエトナの視線がぶつかり合う。一瞬の沈黙の後、激しい音が響いてエトナの槍とフェンリッヒの脚が交差した。

 

「にゃろぉぉぉぉぉっ!!」

「うおおおおおおおっ!!」

 

 至近距離で互いの魔力が炸裂し、衝撃波が2人を吹き飛ばした。

 

「ちぃっ……こいつ、思ったより……!」

 

 空中で体を回転させ、着地したエトナだったがスピードを殺しきれず、そのまま地面を滑っていく。一瞬早く立て直したフェンリッヒがエトナに迫る。

「貰ったッ!!」

「舐めんなッ!」

 

 地面に膝をついた不利な姿勢のエトナの上を取ったフェンリッヒが、勝利を確信して蹴りを繰り出す。エトナは体をひねりながらその一撃を防ぐ。

 

「何っ!?」

「うらぁ!」

 

 再度お互いの一撃が交差する。互いに耐え切れず弾き飛ばされたが、今度はエトナが先に体勢を整えて追撃に移った。

 

「こいつで決まりよッ!!」

 

 エトナの周りに圧縮された無数の魔力の球体が浮かび上がる。魔力の球体は円状に並び、くるくるとエトナの周りを回転しながら発射の時を待つ。

 

「ホラ、食らいなさいなッ!」

 エトナが腕を振り上げ、フェンリッヒが身構えた時、2人の間に割って入る影があった。

 

 

「いけませーーーん!!!」

 

 フロンだ。

 

「いけませんよみなさん! 話し合えばわかるはずです! 愛! 愛! ああ、なんて素晴らしい響きなんでしょう!! さ、エミーゼルさんも話し合いましょう!」

「は、離せ! こいつ!」

 

 フロンはエミーゼルの襟をつかんでを引きずっていた。

 

「うわ、フロンちゃん、ドサクサに紛れて大将打ち取ってるよ……」

 エトナがあきれ顔で言う。

 それを見たヴァルバトーゼが剣を収める。

 

「……そこのプリニーよ。俺には貴様の再教育より先に果さねばならん約束がある。教育はお預けにしよう」

「俺様はプリニーじゃない!!」

「いや、どう見たってプリニーですってば、殿下」

 

 吠えるラハールを、エトナが笑い飛ばす。

 

「……命拾いしたな」

 戦いを続ける空気ではないと判断したフェンリッヒが、爪をしまって構えをといた。それを聞いたエトナが目を細くしてフェンリッヒをにらみつける。

 

「こっちのセリフよ」

 一瞬のにらみ合いの後、2人は背を向けてお互いの主の隣についた。

 

「殿下~、わがまま言わないで教育してもらえばよかったのに」

「誰がされるか!」

「……ていうか殿下、ここに来た目的覚えてます?」

「当然だ! 俺様の昼食を奪いに来たのだ!」

 自信満々に言うラハールをエトナは信じられないという表情で見た。

「こいつ本当に忘れちゃってるよ……」

 

 

「くっ、くそっ!! こいつらさえ来なければお前たち反逆者共を皆殺しにできたのに……!」

「小僧。プリニーを開放しろ」

 

 ヴァルバトーゼは言った。だが、エミーゼルは首を振った。

 

「できるわけないだろ! ここ数年でプリニーの数が劇的に増加して、雪だるま式に数が増えてるんだ! その所為で魔界は大変なことになってるんだぞ! このまま手を打たなければ数年でこの魔界は崩壊してしまうかもしれないんだぞ! だから、プリニーは処分しないといけないんだ!」

「なるほどー。だからラハールさんも狙われたんですね。よかったよかった」

「よくない!!」

 笑顔で言うフロンに怒鳴るラハール。フェンリッヒが閣下の話を遮るなと視線で警告したが、フロンは気付かない。

 

「……フェンリッヒよ」

「はっ」

 

 ヴァルバトーゼは丘の上の巨大な檻に目をやり、言った。フェンリッヒが礼をし、その檻を破壊する。檻が破壊されると、中から大量のプリニーがわらわらと出てきた。

 

「うわ、これは処分したくなるのもわかるわ……」

 

 それを見て、エトナが苦笑いをした。

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