唯我独尊自由人の友達   作:かわらまち

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久しぶりの投稿です。



対話

 

 僕たち三人は集合場所に合流し、池君達が見つけたというスポットに向けてクラスメイト全員で向かっていた。因みに全員と言ったが高円寺の姿はない。洋介の話では、海に泳ぎに行ったらしい。本当にあいつは自由人だな。

 

 池君達の案内で歩くこと数分、川辺に不自然な大岩がある場所にたどり着いた。裏をみてみると、洞窟でもあったスポットを占有するための機械が埋め込まれていた。川の水は素人目で見ても綺麗で、日陰もあり、テントを設置するのに最適な地面があることを考えると、拠点とするにはかなり優良な場所だ。問題があるとすれば端末の周りに遮蔽物がないことだ。これでは更新しようとした時にリーダーがばれてしまう危険性が高い。もっとも、それはいくらでも対処をしようがあるので大した問題ではないと言えるだろう。

 

 それからこの場所を占有するかどうかの話し合いになるが、それ以前に大きなカギとなるリーダーを誰にするかを決めなくてはならない。この試験ではリーダーの存在が明暗を分けると言っても過言ではないだろう。周りに聞こえないように円になって小声で話し合いを始めた結果、僕がリーダーを受け持つことになった。正直、もっと適任な人はいると思うが、指名されたからには頑張って役目を果たそう。

 

 茶柱先生に報告して僕の名前入りのカードを受け取った。このカードだけは見られるわけにはいかないから気をつけておこう。

 

 これで一つ問題は解決したかなと思ったのも束の間。みんなの元へ戻ってくると何やら言い争ってる模様。なんでうちのクラスはこう息をするように揉めるのだろうか。それもDクラスたる所以か。

 

「どうしたの?」

 

「実は川の水を飲むかどうかで意見が分かれてね」

 

 洋介に話を聞くと、飲料水の節約で川の水を飲んだほうがいいと主張する池君と、怖くて飲めないと主張する篠原さんの意見でぶつかってるらしい。また、この二人か。先程もトイレの件でぶつかっていた二人だ。次第にヒートアップする二人を見て、ため息をつきたくなりつつ、止めに入る。

 

「二人とも落ち着いて。今はお互いに冷静じゃないんだよ。ここは一旦解散してもう一度考え直さない?」

 

「倉持くんがそういうなら……」

 

「あ?なんで倉持の言うことは聞くんだよ」

 

「はぁ?そんなの当たり前でしょ?」

 

 止めに入ったというのに直ぐに喧嘩を始める二人。喧嘩するほど仲がいいとは言うが、この二人には当てはまらないのだろう。

 

「はい、ストップ。池くん、ちょっと聞きたいことがあるんだけどいいかな?」

 

「お、おう」

 

 そのまま池くんを連れてその場を少し離れた。物理的に距離を置くのが1番いいだろう。

 

「聞きたいことってなんだよ?」

 

「池くんって結構アウトドア的なことの知識あるよね?

何かやってたの?」

 

「ん?別に何かやってた訳では無いんだけどさ、俺、小さい頃家族でよくキャンプにいってたんだ」

 

「だから川の水を飲むのに抵抗がないんだね」

 

「ああ。水源を見ればその川が綺麗かどうか分かるしな」

 

「それをちゃんと伝えたら良かったんじゃない?」

 

「ただキャンプをやってただけなんだから信用されないだろ。これがボーイスカウトとかだったら話が変わるんだろうけどさ。それに俺のことなんて誰も信用しねぇよ」

 

 池くんが少し肩を落とす。女子達に散々非難されたのが堪えてるのだろう。やり方さえ違っていればもっといい方向に進めていたと思う。

 

「池くんはさ、初めてキャンプした時に川の水を飲むのに抵抗はなかった?」

 

「そりゃあったに決まってんじゃん。でも親父たちが大丈夫っていうから、あ……」

 

「そういうことだよ。その時の池くんと同じ不安を篠原さん達は持っていたんだと思う」

 

「そっか。そうだよな。誰だってキャンプの経験があるんだと思い込んでた。少し無理言ったかもな。……ちょっと川泳いで気分変えてくるわ」

 

 池くんはそのまま川の方へ走っていった。そのタイミングを見計らってか、堀北さんが声をかけてきた。

 

「彼の知識はこの試験においては武器になりそうね」

 

「うん。このクラスの中では1番経験があるんじゃないかな?……いや、もう一人いた」

 

「高円寺くんかしら?」

 

「あいつは野生児だからね。経験は問題ないんだけど、その他に問題だらけだからね」

 

 あいつは森に行って何日も帰って来ないことが何回かあった。聞いたらサバイバルをして美しさを磨いていたとかよく分からないことを言っていたのを覚えている。

 

「彼を頼るのは……無理でしょうね」

 

「理解が早くて助かるよ。特に高円寺はこの島に興味を失ってるだろうしね」

 

「興味を?」

 

「この島が無人島ではないことを知って落胆してると思うよ」

 

「どういうこと?」

 

「人が住んでいないという点では無人島なんだろうけど、この島は自然にできたものじゃなくて、人工的に造られた無人島だってこと」

 

 あれだけ森の中を歩いたのにも関わらず、野生の動物を1匹も見なかったし、スポットとなる場所は必ず地面が舗装されていた。この島は間違いなく学校側が試験の為に造った無人島だろう。

 

「この島ごと学校側が造ったと言うの?」

 

「もちろん試験の為じゃなくて違う目的で造られたのを試験に応用してる可能性もあるけどね」

 

「とんでもない学校ね」

 

「今に始まったことじゃないでしょ」

 

「それもそうね」

 

 この学校がとんでもない学校だなんて今更だ。だからこそ僕達は今、無人島なんかでサバイバルを行っているんだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ベースキャンプをこの場所に決めた僕達はテントの設営に取り掛かった。二つのテントが設営されるも、このテントは二つとも女子が使うことになっている。男性陣は野宿を強いられる形になってしまった。これもポイントの消費を控えるためとはいえ、1週間野宿は心身ともにキツイ。

 

 各々がベースキャンプの準備をする中、声をかけて来たのは綾小路くんだった。なんでも洋介に頼まれて、夜の焚き火用の枝を拾いに行くらしく、一緒に行かないかと誘われた。堀北さんや須藤くん、山内くんに協力を要請したが、見事に断られたらしい。僕がやることはだいたい終わったので綾小路くんと一緒に枝拾いへ行くことにした。

 

「付き合ってもらって悪いな」

 

「気にしないで。1人でみんなの分を集めるのは大変だよ」

 

「助かる」

 

 しばらく焚き火用の枝を2人で拾う。黙々と拾い続けているとベースキャンプからは少し遠ざかり、川の上流の方へ来ていた。あたりには人影はなく、川の水が流れる音が大きく響いている。他に聞かれたくない話をするには丁度いい。

 

「綾小路くん、少しいいかな」

 

「……なんだ?」

 

「さっきできなかった話をしたいなと思ってさ」

 

 枝拾いを中断して僕の方へ向く綾小路君は、いつも通り表情が読みにくい。やりにくいったらありゃしない。

 

「別に大した話じゃないんだ。せっかくの機会だから一度綾小路君とゆっくり話してみたくてね」

 

「俺と話しても面白くはないぞ」

 

「そんなとこはないよ。僕にとっては面白いから」

 

「なんだそれ」

 

 綾小路君は呆れたように肩を竦め、近くの岩に腰掛けた。僕もそれに続いて横に腰をかける。

 

「さて、何から話すかな」

 

「手短に頼むぞ」

 

「まぁまぁそう言わずに。そうだ、お互いに交互に質問をしていくのはどうかな?僕ばっかり質問するのもアレだし、その方がお互いのことがわかると思うんだ」

 

「好きにしてくれ」

 

 綾小路清隆が常人でないのは間違いない。ただ、彼が何者であるかを知る必要は無い。僕が知りたいのは、彼が僕の障害になるか、ひいては僕が彼の障害になるかどうかだ。僕はこの学校を出る訳にはいかない。もし、僕が彼の障害になってしまった場合、退学に追い込まれる可能性はある。もしそうなれば僕も全力で抗うが、彼の実力が未知数であるため、僕が生き残れるかどうか分からない。そうならない為にも彼と対話をする必要がある。

 

「じゃあ、まずは僕から。綾小路君はどうしてこの学校に?」

 

「そんなもの決まっているだろ。他の奴らと同じだ」

 

「この学校の恩恵を受けるため?」

 

「ああ。だが、現実は甘くなかったがな」

 

「その割には残念そうには見えないけどね」

 

「表情に出にくいだけで絶望したぞ。夜しか眠れなかったくらいだ」

 

「それ普通だよね」

 

 綾小路君は無表情の割に急にお茶目なボケをかましてくるから困る。意外と冗談とか好きなんだろうか。

 

「次は俺か。そうだな、同じ質問だ。どうしてこの学校に?」

 

「僕も綾小路君と同じ答えってことで」

 

「その言い方だと別の意味があるように聞こえるが」

 

「まぁ、あるにはあるかな。でも、恩恵が受けたかったっていうのも理由の一つだしね」

 

「そうか」

 

 少し釣り糸を垂らしてみたが、特に食いつくことはなかった。食いついてくれた方が主導権を握れてやりやすかったんだが。

 

「綾小路君は今のクラスのことどう思ってる?」

 

「不良品が集まったクラスとCクラスの奴が言っていたが、間違ってはいないだろうな。誰しも何かしらの欠陥を持っている気がする」

 

「それは君も?」

 

「質問は交互にだったはずだが?」

 

「質問の延長だからノーカンで」

 

「随分適当だな」

 

「実際ただの談笑だからそんなルールあってないようなもんだよ」

 

「提案した方がそれを言うか」

 

 また肩を竦めため息をつく。心做しか表情が柔らかくなった気がする。気のせいか?

 

「オレにも欠陥はある。人間誰しもそうだろ。完璧な人間なんて存在しないし、もし居たとしたら……そいつはつまらない人間だろうな」

 

「そうかもね」

 

「倉持は何故Dクラスに配属されたと思っているんだ?」

 

「それは僕の欠陥は何かを聞いているのかな?」

 

「お前の自己分析を聞きたいだけだ。堀北と一緒で頭がいい、高円寺と一緒で運動神経がいい、平田と一緒でコミュニケーション能力が高い。本来であればAクラスであるべきだと思わないか?」

 

「そんなに褒めても何も出ないよ。さっき拾った綺麗な石でもあげようか?」

 

「いらん」

 

「そりゃ残念。綾小路君は僕を過大評価しているだけだよ。僕はなるべくしてDクラスになった」

 

「それはなぜだ?」

 

「連続の質問はダメだよ」

 

「さっきの質問の延長だったらいいんだろ」

 

 確かにそう言ったのは僕だ。あまり適当なことは言うもんじゃない。別にどうということでは無いけど。

 

「理由があるとしたら、僕が不良品だからだろうね。生まれながらにして欠陥だらけの不良品。いくら取り繕っても根本は変わらない。学校側はそれを見抜いたんじゃないかな」

 

「自己評価が低いんだな」

 

「妥当な評価だよ」

 

「そんなことはないだろ。お前はクラスの奴らに信用されているし、今日だって皆をまとめている。それにあの高円寺を制御できるただ1人の人間だ」

 

「フォローありがとう。まぁ、冗談なんだけどね。実際のところ高円寺を制御できるってだけの理由で一緒のDクラスに入れられたんだと思うよ」

 

「おい、俺のフォローを返せ」

 

「何かの機会に返させてもらうよ」

 

「その時は倍で返せよ」

 

 フォローを倍で返すってどういうことなんだろうか。彼が堀北さんに余計なことを言った時にでも大袈裟にフォローすればいいのかな。それなら近いうちに返せそうだ。

 

「次の質問。綾小路君が今一番欲しいものは何?」

 

「急に話の方向が変わったな。それは物か?」

 

「なんでもいいよ。物でも概念でも妄想でも」

 

「そう言われると迷うな」

 

「例えば水とか」

 

「何で水なんだ?」

 

「僕が今飲みたいから」

 

「そこに沢山流れている。産地直送完全無料だ。よかったな」

 

「僕、ミネラルウォーターしか飲めないんだよね」

 

「どこの坊ちゃんだ」

 

 綾小路君はボケだけじゃなく突っ込みもできるらしい。思っていた以上にコミュニケーション能力高いな。友達が少ないっていつも言っているが、意図して作っていないんだろうな。

 

「じゃあ、『自由』とかどう?」

 

「また大きく出たな」

 

「欲しくない?」

 

「確かにな。だが、オレ達は今、『自由』を与えられているじゃないか」

 

 そう言って綾小路君は集めた焚き火用の枝を指差した。今回の試験のテーマは『自由』、そして僕達はその試験中であるからして『自由』を得ている。彼が言いたいのはそういうことだろう。

 

「誰かに与えられた『自由』って本当に『自由』なのかな?」

 

「……」

 

「僕はそうは思わない。『自由』というものは誰かに与えられるものじゃない」

 

「じゃあどうすれば『自由』を手に入れれるんだ?」

 

「そんなものは結局自分自身で考え、掴み取るしかないんだよ。そして、1度掴んだものは絶対に手放してはならない。一度『自由』を手にしてしまったらそれを失わないように必死でしがみつくしかないんだ」

 

 失う怖さというものは想像を絶するぐらいに辛く苦しいものだ。だから人はもがく。もがいてもがいて、時には他者を蹴落としてでもつかみ続けなくてはならない。

 

 少し熱くなってしまった。でもここまで話した以上、少し踏み込んでみよう。

 

「僕はこの学校で『自由』を手に入れた。きっと綾小路君もそうなんじゃないか?」

 

「なぜそう思う?」

 

「ただの勘だよ。君は否定するだろうけどね」

 

「……」

 

 綾小路君は間違いなくはぐらかすだろう。彼は自分の心を見せることはしない。ここまで接してきてそれはよく分かっている。別に今日はそれでいい。

 

 そう思っていた僕の考えを否定するかのように綾小路君は口を開いた。

 

「お前が言う『自由』が何なのかは分からんが、オレも『自由』

を手にしたという点については否定はしない」

 

 予想だにしない返答に驚き、声を失った。何より綾小路君の雰囲気がいつもとは違う異質なものになっていた。それにあてられ心の奥から何かが湧いてくる感覚にとらわれる。

 

「そして、俺の邪魔をするやつは排除する。倉持、お前でもだ」

 

 久しぶりに感じたその感覚に体が支配され、硬直する。

 

 彼が『怖い』と。

 

 




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