デスとハイエロファントの物語:REBOOT   作:桁石スミオ

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目覚めよと、呼ぶ声が聞こえ 【第2話】

★ 森の道

 

 雲は覆い被さるように厚く垂れ込め、今にも降り出してくる気配。

 森の道を、肩を並べて疾走するデスとジャスティス。

 デスは、大鎌を右肩に掛け、タタタタタ・・・と、流れるような脚の運び。

 ジャスティスは、両腕を思い切り振りながら、ダッ、ダッ、ダッ、と跳ねるような走り。

 

ジャスティス「ねぇ、デス!」

デス「何だ!」

ジャスティス「ボクも闘うよ! 足は引っ張らないつもりだ!」

デス「お前が足を引っ張ることがあるのか?」

ジャスティス「キミの闘い方は解ってるつもりだよ! でも、キミはひとりでエロファントを救け出す気だろ!」

デス「言うまでもない!」

ジャスティス「だからさ、ボクがタワーの足を止める! その間にキミはエンペラーを叩き、エロファントを救出する・・・それでどうだい?」

 

 僅かに目線を落とし、考えている様子のデス。

 そして、並走するジャスティスを見詰める。

 

デス「(一度頷いてから)・・・お前は正面から当たれ。あたしは、その逆を突く」

ジャスティス「(ニコッ、と笑顔になって)オッケーッ!」

 

 直後。

 スーッ・・・と、空の彼方、上空から、何者かがその飛行能力で、宙に浮かびながら寄ってくる。

 綺麗な流線型の軌道を描き、ワールドが、ふたりに急接近してくる。

 あっという間に、ジャスティスの隣に並び、走るふたりと同じ速度で飛び始める。

 

ワールド「ジャスティス!」

ジャスティス「(横のワールドを見て)見付かった? タワーは何処だい?」

ワールド「森を抜けて、岩山沿いに進んでましたけど、今、荒野をジャングルの方向に進んでますワ。あの荒野は遮蔽物がありませんから、斜め方向に真っ直ぐに突っ切れば、ジャングルへの最短距離・・・ジャングルの端に廃城がありますワよね? エンペラーは最近、その辺りで目撃されてましたワ」

ジャスティス「ありがと! ワールド!」

 

 ふと、向こう隣を走っているデスに、眼差しを向けるワールド。

 それに気付いたデスが、暫く並走してから、眉を寄せて視線を返す。

 

デス「(怪訝そうに)何か言いたそうだな?」

ワールド「(微笑んで)そうですワね・・・あなたなら確実に、エロファントを救け出せます」

デス「・・・言われるまでもない」

ワールド「愛の力は、偉大ですワね」

デス「(ボッ、と赤くなって)な! 何をいきなり!」

ジャスティス「(笑顔で頷いて)ワールドに、激しく同意っ!」

デス「(更に赤面して)お前ら茶化すなっ! いい加減にしろっ!」

 

 デスとジャスティス、岩山が近くに見え始めた、上り坂を並んで駆け上がり始める。

 左手側、森の樹々が空いた間の向こう、彼方まで広がる荒野が視界に入る。

 ハッ、と同時に、急停止する3人。

 無人の荒野を、向こう側に離れていくタワーの姿を発見する。

 

ジャスティス「見えたっ! タワーだ!」

 

 森の道から外れ、荒野を見下ろせる崖の近くまで走り寄るデス、ジャスティス。

 その後を浮遊して近付くワールド。

 

ジャスティス「スピードは速くないな・・・まだ追い付けそうだね」

デス「(張り詰めた声で)先に行くぞ」

 

 マントの裾を軽やかに返し、崖に近寄るデス。

 

ジャスティス「あ! ちょっと! ここからじゃ・・・」

 

 直後。

 デス、崖の縁、角に両足をの土踏まず辺りを固定し、スーッ・・・と前のめりに身体を倒す。

 大鎌を両手でしっかり持ち、胸の前で構える。

 マントが風圧で、ブワッ、と膨らんだ、瞬間。

 ダンッ!と渾身の力で崖の法面に右足を踏み出すデス。

 次の、瞬間。

 ダダダダダダダダッッッッッ!!!と、凄まじい勢いで、法面に垂直の体勢を維持して駆け始める。

 身体を前傾姿勢に保ち、眼光鋭く、矢の如く、右斜め方向に崖を下っていく。

 

ジャスティス「(驚愕)うっそぉぉーっ! 崖を走ってるっ!」

 

 重力が作用するよりも速く、まるで平地を走るが如く進むデス。

 そして、崖下の荒れ地の僅かに上に到達する、寸前。

 ダーンッ!と、法面を思い切り蹴って、身体を宙に浮かす。

 デス、鮮やかな動作で、大鎌を、クル、と回して平衡を取りながら体勢を変える。

 走りの勢いを維持した状態で、荒野の地面を、タッ、と一度蹴る。

 再び大鎌を眼前に構え、ギンッ!と遠くのタワーを睨むデス。

 途端、ダダダダダダダダッッッッッ・・・と、猛烈な走駆を再開する。

 一気に姿が小さくなっていくデスを、驚いた顔で見詰めているジャスティスとワールド。

 

ジャスティス「(茫然として)速い・・・速過ぎだよ、デス」

ワールド「気が逸るのも解りますが、ね・・・ワタクシはフォーチュンの元に戻ります。フォーチュンの魔力が少しでも戻ったら、ワタクシたちも合流します。なるべく急ぎますが、それまで耐えて下さい。あと・・・デスを、お願いしますワ」

ジャスティス「(ドン、と自分の胸を叩き)任せてっ。何としてでも、無事にエロファントと帰らせてあげなきゃ」

ワールド「頼みましたワ」

 

 スーッ・・・と、上昇していくワールド。

 ある程度の高さまで浮かび上がり、その後、加速して空中を移動し、岩山の上を越えて見えなくなる。

 

ジャスティス「(ハッ、と気付いたように)あっと、早く追い付かなくちゃ」

 

 

★ 森の向こう・岩山の裾野に広がる荒野

 

 焦げ茶色の土と、様々な石や岩石の欠片が延々と広がる荒野。

 そこを一直線に、ドスン、ドスン、と走っていくタワー。

 左だけ見えている目に、赤黒い光を宿している。

 タワーの頭頂部に乗り、欄干に右手を置き、不敵な嗤いを浮かべているエンペラー。

 左腕で、しっかり抱えて持っている、鈍い光を放つ水晶玉。

 ふと、エンペラーの眼の端に、蒼い影が映る。

 

エンペラー「ん?・・・何かしら?」

 

 左後方を振り返るエンペラー。

 僅か、後。

 タワーの進行方向に、斜めに駆け寄ってくる、デスの姿。

 ダダダダダダダダッッッッッ!!!と、放たれた矢よりも速く、瞬く間に接近する。

 身体を地面擦れ擦れに傾け、空気抵抗を極限まで殺した、走法。

 残像すら残さぬ、とてつもない速度。

 見る見る血の気が引き、恐怖を顔にへばり付けるエンペラー。

 あっという間に、タワーと並走し、更に追い抜こうとするデス。

 途端。

 ダァンッ!と、大地を左足で蹴り飛ばし、斜め直線の軌道を成し、エンペラーに向かっていくデス。

 紅玉のような両目が、怒りで染まる。その光が、透過の筋を空間に描く。

 大鎌を後方に大きく振り翳し、宙を舞う。

 

エンペラー「(悲鳴)あーれぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 デス、渾身の力を込め、刃をエンペラーの首を目掛けて振り抜く。

 直後。

 カキュゥゥゥン!と、エンペラーの数十センチ手前で、弾き飛ばされる刃。

 ハッ、と驚くデス。

 

エンペラー「(ニヤァ、と嗤い)のわぁんちゃって」

 

 撥ねられた勢いで、空間を押し戻されるデスの身体。

 ぐるん、と脚を抱えるように後方に宙返りをし、そのまま地面に、ザッ、と着地する。

 

デス《この結界・・・『ペンタクル』か!》

エンペラー「(口を歪めて)無駄よ無駄ァ! あンたの攻撃じゃ破れないわよ!」

 

 タワーは走りを止めず、更に前に進んでいる。

 今度はその左前方、進行方向上に、ダッダッダッダッ・・・と駆け込んでくる姿。

 大剣を自分の後方、右斜め下に脇構えで、前傾姿勢で距離を詰めてくるジャスティス。

 走駆を保ちながら、大剣を大上段に振り上げて、ギンッ!とエンペラーを睨み付ける。

 そして、ダッ!と地面を蹴り、タワーの前面に飛び上がる。

 

ジャスティス「(気合を込めて)ジャスティス・ブレイク!」

 

 直後、振り下ろされる大剣。

 ドン! バチバチバチッ!と、強烈な光の柱と火花が垂直に発生する。

 ボゴオッ!と、抉られる地面。大きな窪みが出来る。

 急停止するタワー。ズアァッ!と、足が土を擦り、上半身が慣性で大きく前方に振られる。

 

エンペラー「(タワーの欄干にしがみ付いて)ぬおっと! あっぶないわね! 何するのよジャス子ッ!」

ジャスティス「何するのじゃない! エロファントを誘拐したんだろ! バレてないとでも思ってんのか!?」

エンペラー「ふぅん・・・(鼻で嗤い)バレちゃぁしょーがないわね。アタシはエロファントちゃんとスイートホームに帰るの。さっさとどきなさい! 踏み潰すわよ!」

 

 エンペラーの背後の空中に、瞬間移動のように、フッ、と現れるデスの姿。

 

デス「(殺気を込めて)・・・それ以上喋るな・・・」

 

 後方に翳した大鎌を、再度全力で振り抜くデス。

 しかし、ガキュゥッン!と、再び弾かれて、またも反動で身体を押し戻される。

 

エンペラー「(苛立った声で)はん! だから攻撃は効かないって言ってるじゃない! バッカじゃないの!」

 

 宙で、バサッ、とマントを翻し、ストッ、と地面に着地するデス。

 即座に、タッ、と距離を置き、タワーの正面に立つジャスティスに駆け寄る。

 そして、ジャスティスの横に並び、身体をタワーに正対させ、目線を飛ばす。

 

ジャスティス「(デスを見て)何で弾かれるの? あれも『小アルカナ』の力?」

デス「(エンペラーを睨んだまま)ああ・・・『ペンタクル』のカードだ。物理攻撃も魔法も弾く。カードの効果がある限り、こちらの攻撃は無効化される」

ジャスティス「そんな! じゃあどうする!?」

デス「『ペンタクル』の結界の有効範囲は、使用者のみだ。タワーには攻撃が通用する筈。(ジャスティスに目線を投げ)お前の剣技なら効果がある。タワーの足元を狙え。あたしはその隙に、タワーの腹部の扉を破る。恐らく・・・(キッ、とタワーを睨み)ハイエロファントはあの中だ」

ジャスティス「(頷いて)判った! 任せて!」

 

 大鎌を正面で両手で持ち、タンッ、と再び地面を蹴り、真正面からタワーに向かって走るデス。

 ジャキッ、と大剣を正眼に構え直すジャスティス。

 

エンペラー「(怒って)しつっっこいわね! タワー! やーっておしまい!」

タワー「(重厚な声で)・・・ター・・・ワー・・・」

 

 タワーが右腕を横に伸ばし、ブオン!と風を切って右掌を振り抜く。

 襲い掛かってくるタワーの右手を、ダッ!と飛び上がって躱すデス。

 そのまま、タン、とタワーの右下腕部に乗り、タタタタタッ、と上腕部に駆け上がっていく。

 タワー、左手でデスを掴もうとする。ブン!と襲い掛かってくる左掌。

 ひらり、と背面跳びで避け、一旦身体を宙に躍らせ、タワーの背中に周り込むデス。

 それを確認して、すかさず駆け寄るジャスティス。大剣を両手で持ち、顔の右横、八双の構え。

 デス、大鎌の刃先を、タワーの背中の煉瓦の隙間に、ガッ!と叩き込む。

 柄に、鉄棒のように瞬間ぶら下がり、身体に反動をつけて跳び、タワーの左肩に向かう。

 

ジャスティス「(腹の底からの声で)ジャスティス・クラッシュ!」

 

 一度腕を後ろに引き、渾身の力で斜掛けに大剣を、ブォン!と振り下ろすジャスティス。

 カアッッッ!!!と、凄まじい閃光が迸り、タワーの足の爪先の地面が、ボッコォォン!!!と穿たれる。

 足元に噴き上がる猛烈な爆発に、グラ・・・と重心を崩すタワー。

 デス、タワーの左肩を足場として、スタッ! ヒュン・・・と、下方に跳ねる。

 タワーの腹部、迫り出しているバルコニーに着地する。

 

エンペラー「ああもう! 何してんのよっ! タワー! 腹の奴もひっぺ剥がしちゃって!」

ジャスティス「タワー! キミの相手はボクだよ! 来いっ!」

タワー「ター・・・ワー・・・」

 

 タワー腹部の扉に飛び付くデス。

 すぐさま、ハンドルレバーを掴み、下げようとする。

 だが、ガチャ、ガチャ、と音がするだけで、動かない。

 一歩跳び下がり、大鎌を振り翳し、気迫を込めて刃を突き刺す。

 ガッ!と扉の板が、少しだけ削れる。しかし想像以上の硬度らしく、ひびも入らない。

 

デス《(奥歯を噛み)くっ・・・結界ではないが、そう簡単に破れん、か・・・》

 

 

★ タワーの内部

 

 腹部バルコニーから、扉を挟んだ内側。煉瓦が剥き出しのままの造りとなっている、小部屋。

 明かり取りの小窓以外は何もなく、室内は薄暗い。

 その床、中央付近に、右半身を下にして横たわっているハイエロファント。

 眉を寄せた苦し気な表情で、身動ぎもせず、固く両瞼を閉じている。

 意識がない様子。

 

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