★ (一時間後)森の道
今も燦々と降り注ぐ陽射し。森の道を照らす。
その中を、神殿への帰宅の途についているデスとハイエロファント。
両手を後ろ手に組んで、嬉しそうな笑顔を浮かべて歩いているハイエロファント。
大鎌を左肩に掛け、安らいだ表情で歩くデス。
ハイエロファント「今日はお疲れ様。でも、いろんな話が出来て楽しかったね」
デス「まあ・・・悪くない時間だった」
ハイエロファント「(デスを見詰めて)ストレングスちゃんと、何話してたの?」
デス「(ハイエロファントを見詰め返して)・・・いろいろ、だな」
眼差しを絡め合ったまま、暫く歩を進めるふたり。
デス《ハイエロファントと家族になる・・・か・・・》
ハイエロファント《僕の希望・・・デスとなら・・・》
互いの瞳の奥に、目線を繋ぎ止めて並び歩くデスとハイエロファント。
★ (更に一時間後)神殿・ハイエロファントの居室
陽が傾き始め、窓から柔和な光の筋が射し込む居室内。
ハイエロファント、窓際に置いてある背凭れのある椅子を、移動して書斎机の近くに置く。
続いて、書斎机の自分の椅子を、先ほど動かした椅子と向かい合わせにする。
それを確認してから、窓を背にして座るデス。同時に自分の椅子に腰を下ろすハイエロファント。
膝頭同士が、拳3つ分くらいの距離。
デス「改まって、何だ? 話とは」
ハイエロファント「うん、ごめんね。実は・・・(少し口籠って)君に、聞きたいことがあるんだ、けど・・・」
デス「(僅かに首を傾げ、口端を緩ませ)いいから、言ってみろ」
すぅ、ふうう、と一度深呼吸をするハイエロファント。
ゴクリ、と一度唾を飲み込んで、真っ直ぐにデスに眼差しを注ぐ。
少しの、間。
更に、間。
ハイエロファント「(深遠の響きを持つ声で)・・・僕と、結婚してみる気は、ない?」
デス「・・・え?・・・」
デス、表情を普段の状態に戻す。
目線はハイエロファントに向けたまま、停止。
沈黙。
沈黙。
沈黙。
反応もなく、顔も凍ったように変わらず。
ハイエロファント、右手を、さっ、さっ、とデスの眼前で振る。
瞳が動く気配も、ない。
ハイエロファント《流石に、いきなり過ぎたかな?・・・びっくりするのも無理ない、よね・・・》
すっ、と身を乗り出し、顔を近付けていくハイエロファント。
そのまま瞼を閉じて、自分の唇をデスの唇に一瞬重ねて、ぱっ、と離す。
ピクッ!と、肩を小さく跳ねさせ、すぐ目の前のハイエロファントに視線の焦点を合わせるデス。
ハイエロファント「(目を開け、心配気に)デス・・・大丈夫?」
デス「(頬を染め)・・・あ・・・すまん、つい・・・だ、大丈夫だ」
安堵したように息を繋ぎ、身体を戻して椅子に座り直すハイエロファント。
冷静さを取り戻した顔で、ハイエロファントを見詰め直すデス。
デス「・・・今・・・結婚、と言ったのか?」
ハイエロファント「(頷いて)うん、言ったよ」
デス「もしかして・・・(自分とハイエロファントを交互に指差し)あたし、と、お前、で?」
ハイエロファント「(再度、大きく頷いて)そう。(自分とデスを交互に指差し)僕、と、君、とで」
揺るぎない眼差しを交わし合う、ふたり。
デス「本気で、言ってるんだな・・・」
ハイエロファント「もちろん、本気だよ。僕はデスと、結婚出来たら、と思ってる」
融和した微笑みを向けているハイエロファント。
ハイエロファント「このまま一緒に住むのに、不足がある訳じゃないんだ。でも、今日、ストレングスさんと話してて、家族っていいな、と思った。そしてね・・・(真摯な声で)デス、君と結婚して、夫婦になって、家族として生涯過ごせたらどんなに素晴らしいか、と考えたんだよ」
デス「(籠った声で)・・・何度も言うが・・・あたしは死神だぞ。死神と夫婦になる、と言うんだな?」
ハイエロファント「(深く頷き)うん。僕は、死神である君と、夫婦になりたい」
デス、僅かに俯き、ハイエロファントの胸元に目をやる。
デス「(遠い目をして)・・・結婚や、夫婦や、ましてや家族とは、縁がないと思ってた・・・死神がそれを考えること自体、嗤い話でしかない、とも思ってた・・・」
ハイエロファント、慈愛を込めた視線をデスに向ける。
デス「実は・・・昼間、ストレングスと話してて、家族の話になった。あいつは、あたしとお前で家族になったらいい、と言ってた・・・(顔を上げ、ハイエロファントを見詰め)お前には、正直に話す。その時、あたしも・・・ハイエロファントと家族になれるのなら、悪くない・・・いや、それが叶えばどれだけの至福か、とまで考えた」
途端。
ハイエロファント、ゆっくりと嬉しさを溢れさせ、艶やかな顔となる。
デス「(目を伏せて、沈んだ声で)だが・・・」
デスの口調に、ハッ、と我に返ったように表情を戻すハイエロファント。
デス「本当に、許されるのか? 死神が家族を持つ、だの・・・連れ合いを持つことが・・・それは、定めに背くことにならないのか? 死を与える存在が、世俗的な暮らしを送ることが、認められるものなのか?」
ハイエロファント「デス・・・」
デス「(顔を伏せて)すまん・・・水を差すようなことばかり言って・・・」
ハイエロファント「(首を左右に振り)ううん、僕の方こそ、悩ませるようなこと言っちゃって・・・」
デス「(バッ、と顔を上げ)いや! むしろ悩ませてくれ! お前とのことで悩むのなら、本望だ」
目を見開き、デスの眼差しを瞳の奥で受け止めるハイエロファント。
ハイエロファント「(優しい笑顔で)ありがとう、デス。そう言ってもらえて、本当に嬉しいよ」
頬に熱を帯びさせるデス。微笑みを返す。
それから両手を膝の上に置き、少し前屈みになり、ハイエロファントをしっかりと見詰める。
デス「申し訳ないが・・・返事は、少し待ってくれ」
ハイエロファント「いつでもいいよ。僕たちは、これからもずっと一緒に過ごすから、いつ返事してもらっても大丈夫だよ」
デス「(不安そうに)もしかしたら・・・承諾出来ない、かも知れん・・・」
ハイエロファント「それでも、僕は君と一緒に住み続けたい。結婚は、僕の願望だけど、我儘でもあるから・・・」
デス「他所の我儘に比べれば、我儘の裡にも入らない」
ハイエロファント「(笑みを浮かべて)そう言ってもらえると、気持ちが楽になるよ」
フッ、と静かに口角を緩めるデス。
デス「(真剣な声で)何度も聞いてすまないが・・・あたしと一緒に暮らす、のはいいんだな?」
ハイエロファント「(深く頷き)君でなくてはいけないんだ。結婚は、君と一緒に過ごす形のひとつ、だと思ってる。だから心配しないで。どちらの答えでも、僕がデスを離したくないのは、変わらないから」
デス、これ以上ないほど安心したように、ふぅぅ・・・と息を長めに漏らす。
そして、凛とした表情を、ハイエロファントに向ける。
デス「解った・・・いずれ、返答する」
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