デスとハイエロファントの物語:REBOOT   作:桁石スミオ

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しりぞけ、もの悲しき影 【第7話(本編最終話)】

★ (翌日)エンプレスの居城

 

【台詞なし・音楽のみ】

 

 晴れた空の元、正午近く。エンプレスの居城の中庭。

 真っ白なテーブルクロスを掛けた、何十人も囲める大きなテーブル。

 指示を出しているエンプレス。花を活けた花瓶を、テーブルに置いていくマジシャン。

 ワールド、中庭の垣根に、長い七色のリボンを結び、飾り付けをしている。

 ストレングスとジャスティス、料理が山盛りになった大皿を、両手に持ってテーブルに乗せていく。

 ハイプリエステス、銅製のタンブラーを積んだカートを押して中庭に出てくる。

 ストレングス(父)、食糧庫から、果実酒の樽を両腕に軽々と抱えてくる。

 時間が近くなり、中庭に次々と集まってくる出席者たち。

 フォーチュンとタワー、城の裏手から登場。片膝を着いて、庭の一角に陣取るタワー。

 デスとハイエロファント、中庭に到着。

 打ち鳴らされるクラッカー。紙吹雪を舞いさせる出席者たち。

 デスの左肩に手を回し、抱き寄せて満面の笑みを湛えているハイエロファント。

 照れた笑顔でハイエロファントに身体を寄せ、右頬を掻くデス。

 タンブラーを高々と挙げ、乾杯の発声をする出席者全員。

 デスとハイエロファントを上座に、全員がテーブルを囲んで飲食を始める。

 マジシャンとハイプリエステスの間に座り、照れ臭そうに頬を染めるフォーチュン。

 フォーチュンに満面の笑みを向けている、マジシャンとハイプリエステス。

 再度、大声で乾杯の声を挙げ、タンブラーを合わせるエンプレスとワールド。

 肉の塊に齧り付くストレングスとガオガオ。 

 いつの間にか、取り皿に盛り付ける競争をしている、ジャスティスとチャリオット。

 手持ちの杖で、チャリオットを叩いて諫めるハーミット。

 ハンカチを思い切り噛んで引っ張って、悔しそうな顔のエンペラー。

 既に酔っ払ったエンプレスとストレングス(父)、エンペラーの両脇に座って据えた目を彼に向ける。

 エンプレス、酒瓶を逆さまにしてエンペラーの口に突っ込む。身体を押さえ付けているストレングス(父)。

 エンペラー、酔って真っ赤になり、上機嫌で笑い、椅子の上に立ってタンブラーを掲げる。

 苦笑いを浮かべて見ているデス。隣で楽しそうに微笑んでいるハイエロファント。

 突然、スター、立ち上がって歌を唄おうとする。

 蒼褪める一同。大慌てで止めるフォーチュン。

 汗を垂らし、何かをスターに話し掛けているジャスティス。

 一瞬、眉を寄せて複雑な表情になるスター。

 すぐに明るい笑顔になり、また唄い出そうとする。

 途端、デスとハイエロファントの傍らに一瞬で移動し、一組ずつ耳栓を渡すワールド。

 流れるような動作で、即座にそれを装着するデスとハイエロファント。

 大声で、歌を唄い始めるスター。耳を塞いで歯を食い縛る出席者たち。

 デスとハイエロファント、困ったような笑顔を浮かべて、顔を見合わせる。

 傍らに近寄ってくるフール。何事かをデスに話し掛けている。

 顔を朱に染め、ハイエロファントと見詰め合い、頬を掻くデス。

 少し照れた様子で頷いて、デスを見詰め返すハイエロファント。

 笑顔を交わす、ふたり。

 

【台詞なし・音楽のみ 終了】

 

【一枚絵】デスとハイエロファントを中央にして、全員集合。

 

 

★ (数日後)神殿

 

 遥か上空に筋雲がたなびく、晴天の朝。

 神殿正面入り口の石段、最上段に立ち、前庭を眺めているデス。

 普段の服とマントを着用、大鎌を左肩に掛けている。

 柔らかく、穏やかな微笑み。目を細めている。

 後方の神殿入り口より、ゆっくりと歩み寄ってくるハイエロファント。

 普段の法衣とミトラ(司教冠)を着用、後ろ手に両手を組んでいる。

 デスの左側に並んで立ち、笑顔で眼差しを向ける。

 

ハイエロファント「いい天気だね」

デス「そうだな。空気も澄んでる」

 

 デス、前庭の先、神殿正門の石柱よりも彼方に視線を送り続ける。

 

デス「(しみじみと)まさかこうして、堂々とここに立てる日が来るとは、思わなかった・・・」

 

 ハイエロファント、デスの横顔に目線を繋ぎ止める。

 

デス「生まれてからずっと、陽の当たらない道を歩いてたような日々が、懐かしくさえ感じる・・・死神が、聖なる場所に近付くことですら、禁忌だと考えてた・・・(ハイエロファントを見詰め)だが、ハイエロファント、お前と夫婦になり、一気に全部乗り越えてしまった。もう壁も、段差ですらも感じない。あたしの存在意義が、お前の隣に出来たんだ」

ハイエロファント「(デスを見詰め返し)デス、君は最初から、この神殿に立っても良かったんだよ。聖なる場所は等しく、生ある者を受け入れるからね。だけど・・・(目を細めて)妻として僕の隣にいていいのは、君だけだから、ね」

 

 ふたり、自然な動作で向かい合う。

 互いの瞳の奥深くに、渾身から溢れさせる想いを注ぐ。

 

ハイエロファント「本当に、我儘で欲深な法王で、ごめんね」

デス「(艶やかな声で)あたしに対しては、それでいい・・・そうしてくれ、ハイエロファント。あたしみたいな死神でいいのなら・・・限りなく求めてくれ」

ハイエロファント「(艶やかな声で)そうさせてもらうよ、デス・・・全部、君でなくては、いけないんだ。僕が欲しいのは、君だけなんだ・・・」

デス「あたしも、だ・・・全部、何から何まで・・・欲しいのはお前だけだ・・・」

ハイエロファント「(微笑んで)じゃあ、お互い、手に入れたってことだね」

デス「(微笑んで)ああ・・・」

 

 ハイエロファントの右手が、デスの左頬に触れる。

 デスの右手が、ハイエロファントの左頬に触れる。

 ふたり、眼差しを一本として、結ぶ。

 

ハイエロファント「(至上の愛しさを込め)デス・・・」

デス「(至上の愛しさを込め)ハイエロファント・・・」

 

 緩やかに、双方の唇が、近付いていく。

 重なる。

 深く、強く、求めあうように絡む。

 いつまでも、いつまでも、唇を重ね続けるデスとハイエロファント。

 昇り始めた太陽、神殿全体を優しい光で覆い包む。

 虹色の彩り、デスとハイエロファントを、神々しい輝きで照らし出す。

 

 

 

【 しりぞけ、もの悲しき影 : 了 】

 

デスとハイエロファントの物語:REBOOT [ MAIN STORY ] THE END

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