ポケットモンスター アナザーベストウイッシュ   作:ぐーたら提督

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 毎日投稿はここまでです。次からは週に一度か二度。土曜か日曜の投稿になります。


時計塔の達磨達

「よーし、今日も特訓頑張ろうぜ」

 

「ピカ」

 

「ミジュ!」

 

「ポー!」

 

「カブ!」

 

 今は早朝。デントが朝食を作っており、昨日に引き続き完成まで特訓をするという訳である。

 ちなみに、サトシはアイリスが用意した串に刺した木の実を食べようとしたが、デントは止められていたりする。

 

「ちなみに、ツタージャも参加するか? するかしないかはそれぞれに任せてるけど」

 

「タジャ」

 

 参加するわと、昨日加わった新しい仲間、ツタージャは縦に頷く。

 

「じゃあ、軽く走るぞ~。言っとくけど、昨日みたいに無茶するなよ。ミジュマル、マメパト、ポカブ」

 

 バテバテになってはいざというときに戦えなくなるので、渋々だが三匹は頷いた。

 

「スタート!」

 

 サトシと五匹のポケモン達は同時に走り出す。先頭はピカチュウと、横にツタージャだ。

 

「ピカピカピカピカ……!」

 

「……」

 

 二匹は普段のペースで軽やかにかつ、土煙を上げながら素早く走る。

 

「やっぱりやるわね、あのツタージャ」

 

「うん、ピカチュウの不調を考えても、あれほどの速さ。相当の能力だよ」

 

 残りの三匹は、二匹とどんどん距離が離されている。ポケモンによってそれぞれ得手不得手があるとは言え、実力差がよく伝わる光景だ。

 

「よーし、終わり!」

 

「ピーカ!」

 

「タジャ」

 

「ミジュ……ミジュ……」

 

「ポー……」

 

「カブ~……」

 

 ピカチュウとツタージャはまだまだ余力を感じさせるも、ミジュマル、マメパト、ポカブはそれなりに疲弊していた。

 

「ご苦労さん、皆。ところでツタージャ、お前って他にも技を持ってたりする?」

 

「タージャ」

 

 こくりとツタージャは頷く。野生として自然や様々なポケモン、トレーナーとのバトルを潜り抜けるため、彼女は四つ以外にも技を持っていた。一度のバトルで使うのは四つまでだが。

 

「じゃあ、どんな技があるのか見せてくれ」

 

「タジャ」

 

 わかったわと頷き、サトシに背を向ける。そして、一つ目の技を使う。

 

「ター……」

 

 その場でくるくると回り出す。すると高く細長い風が発生。しかし、リーフストームと違って木の葉はない。

 

「ジャ!」

 

 細長い風が十分な規模になると、ツタージャはその風を発射。風は土を巻き上げながらある程度まで進むと消えていった。

 

「タジャ」

 

 ツタージャはサトシの方を向き、どうと訪ねた。

 

「これ……たつまきじゃないか!」

 

「あのツタージャ、ドラゴンタイプの技が使えるの!?」

 

「キババ……!」

 

「これは驚きのテイストだね……」

 

 風を発生させて相手に叩き付けるかぜおこしと似てはいるが、竜の力が込められた縦に長い竜巻をぶつける技がたつまき。

 ちなみに、ツタージャはこの技を結構気に入っている。威力こそリーフストームに劣るが、怯ませる事が出来るし、力を使わない時には多用していた。

 この場にいる全員が驚愕する中、ツタージャは他にも複数の技を使っていき、その実力の高さを改めて知らしめた。

 

「凄いぜ、ツタージャ!」

 

「ピカピカ!」

 

「タージャ」

 

 サトシとピカチュウの賞賛に、このぐらい何でもないと言いたげにツタージャは振る舞う。

 

「ミ、ミジュジュ……!」

 

「ポ、ポー……」

 

「カブブ……!」

 

 一方、ミジュマル、マメパト、ポカブの三匹はツタージャの想像以上の実力の高さに、焦りを抱いていた。覚えている技がまだ少ないのも理由だろう。

 三匹は負けてたまるかと、今までの技や新技の練習に必死に励む。

 

「デント、まだ~?」

 

 途中、サトシがデントに料理の完成まで後どれだけ掛かるかと聞く。

 

「もう少しさ。その前に、ポケモン達の分のポケモンフーズをどうぞ。オレンの実の風味を活かしてポケモンフーズだよ」

 

 漂うオレンの実の風味が、食欲を適度に刺激する。ツタージャも美味しそうねと思っていた。

 

「――マッカ~」

 

「ん?」

 

「え?」

 

「おや?」

 

 とそこに、とあるポケモンが出てきた。赤い身体に達磨に手足があり、不思議な愛嬌さがあるポケモンだ。

 

「このポケモン……」

 

『ダルマッカ。ダルマポケモン。寝ているダルマッカは、押しても引いても決して倒れない』

 

「へー……面白いポケモンだな」

 

「マッカ!」

 

「可愛い~!」

 

 片手を上げ、愛嬌たっぷりの笑顔や動きを見せるダルマッカ。アイリスが身体中をまさぐるも、途中で限度が来て腹を立てたのかかえんほうしゃを放つ。

 

「あちゃちゃ!」

 

「やり過ぎだよ、アイリス」

 

「うー……」

 

 自分でも自覚はあるのか、アイリスはダルマッカを怒ることはしなかった。一方のダルマッカは手足を引っ込めて寝始めた。

 

「これが、図鑑にあったやつか?」

 

「そうなんじゃない? 確か、絶対に倒れないって言われたわよね? ちょっと押してみましょうよ。えい!」

 

 アイリスがダルマッカを押す。後ろに動き、元に戻った。次に引く。前に動くも、やはり元に戻った。

 

「へぇ、まろやかな風味に僅かな意外性もある、いい味わいのポケモンだね」

 

 デントはダルマッカをそう評価していた。

 

「ピカ~」

 

「キバキバ」

 

 そんなダルマッカを全員で見ていると、ピカチュウとキバゴの背後から微かな物音が鳴った。

 二匹が振り向くと、ピカチュウに用意されたポケモンフーズが消えていた。

 

「ピカ!? ピカ……?」

 

「キバ? キバキバ?」

 

「タジャ?」

 

 二匹が戸惑っていると、ツタージャがどうしたのと近寄る。ピカチュウはいつの間にかポケモンフーズが無くなったことを説明し、隣にいたキバゴに僅かな疑いを向けている様だ。

 

「……」

 

 ツタージャは少し考える。キバゴが食べたにしても、ポケモンフーズの器まで無くなっているのは不自然だ。

 

「タジャタジャ」

 

「ピカ?」

 

「キバ?」

 

 ツタージャは二匹にしばらくポケモンフーズに背を向けなさいと告げ、自分はあることをしてまた背を向ける。その数秒後。

 

「――マッカ!?」

 

「タジャ!」

 

「ピカ!?」

 

「キバ!?」

 

「な、何だ?」

 

 似た鳴き声が響く。サトシ達もそちらを振り向くと、もう一匹のダルマッカがキバゴのポケモンフーズを器ごと持って行こうとしていた。

 

「マ、マッカ……!」

 

「タージャ」

 

 しかし、キバゴのポケモンフーズの器にはツタージャの蔓が引っ掛かっていた。この為、ダルマッカは持って行けず、姿を見せることになったのだ。

 

「ダルマッカがもう一匹!?」

 

「タジャタジャ」

 

「キバキバ!」

 

「えぇ!? このダルマッカがピカチュウのポケモンフーズを盗んで、自分のも盗ろうとしたって!?」

 

「と言うことは、もしかしてこっちのダルマッカは……!」

 

「――マッカ!」

 

 自分達の注意を惹くための、つまり、こっちのダルマッカの仲間ではとデントが推測する。

 その推測は見事に的中。達磨になっていたダルマッカは手足を伸ばすと、素早く動いて串に刺した木の実の束を強奪する。

 

「あっ、待て!」

 

「マッカーーッ!」

 

「かえんほうしゃ!」

 

 片方のダルマッカに気を取られた隙を突こうと、もう片方のダルマッカがかえんほうしゃを放つ。

 このダルマッカ達、かなり息が合ったペアの様だ。

 

「やるな……。なら、ピカチュウ、でんこうせっかで二匹を追い回せ!」

 

「ピカ!」

 

「ヤナップ、君も手伝うんだ!」

 

「ヤプゥ!」

 

 ピカチュウとヤナップのペアが、見事な動きで二匹のダルマッカの動きを制限していく。

 

「マメパトとツタージャ、かぜおこしとたつまき! ミジュマルとポカブ、そのかぜおこしとたつまきにみずてっぽうとひのこを加えろ!」

 

「ポー!」

 

「タジャ!」

 

「ミジュ!」

 

「ポカ!」

 

「マッカーーッ!」

 

 二匹のダルマッカへ二つの風が発生し、更に水と炎が合わさってより大きなダメージを与える。

 

「あれ、ダブルバトルの時と同じ!」

 

「へぇ、技を組み合わせるなんて……面白いね!」

 

 二重の連携技に、アイリスは前のダブルバトルを思い出し、デントはお見事と讃えた。

 

「マ、マッカ……!」

 

「まだ手放さないの?」

 

「うーん、かなり強情みたいだね……」

 

 連携技を受けた二匹だが、ポケモンフーズと木の実を手放そうとしない。

 

「だけど、逃げられないぜ!」

 

 二匹のダルマッカの周囲を、六匹のポケモン達が完全に包囲している。逃げ場は存在しない。

 二匹のダルマッカは互いに見合わせて頷くと、同時にかえんほうしゃを地面から放つ。

 思わぬ行動にポケモン達が怯んだ隙に、ダルマッカ達は周囲にも放って焼いていく。

 

「ちょっ!? 何て事するのよ!?」

 

「ミジュマル、みずてっぽうで消化するんだ!」

 

「ヤナップ、君もがんせきふうじの岩で消すんだ!」

 

「ミジューーッ!」

 

「ナプーーッ!」

 

 このままでは、火が広がって大惨事になりかねない。サトシ達は火を鎮火するべく、適した技を指示する。

 

「あとはあっち――」

 

「タジャ」

 

 ほとんど鎮火させ、後は一ヶ所。素早くそこを消火しようとしたが、そこには火はなく、代わりにツタージャがいた。彼女が消したようだ。

 

「消してくれたんだ。ありがと」

 

「タジャ」

 

 当然の行動よと、ツタージャはまた堂々と振る舞う。しかし、今の間にダルマッカ達は逃げてしまっていた。

 

「にしても、あのダルマッカ達、とんでもないわね!」

 

「僕達が消火するだろうと考えた上での行動だろうけど……」

 

 しかし、一歩間違えれば大惨事になるところだった。

 

「けど、あのダルマッカ達、なんで盗んでいったんだろうな?」

 

「自分達が食べる為でしょ? それ以外に無いじゃない」

 

「にしては、何か凄く必死な気がしたんだよな……」

 

「それは僕も感じたよ」

 

「よほどお腹が空いてたんじゃない?」

 

 今一納得行かないサトシだが、ダルマッカ達はもういない。空腹な事もあり、皆でパエリアを食べ、その後次の町へと向かって歩き出した。

 

 

 

 

 

 その町の川沿い。カフェがあるその場所で、ロケット団の三人は店員を呼ぶ。

 

「注文は?」

 

「カプチーノ。ロケットの様に大至急お願い」

 

「――分かりました」

 

 それは合言葉だった。自分がロケット団であると。

 

「あぁ、そうだ。これを用意してくれ」

 

「お受け取りします」

 

 コジロウが紙切れを店員に手渡す。前に遭った一団についての情報が書いてあった。

 ボーイは自然な動作でポケットに仕舞い、店に戻ると直ぐにカプチーノを運び、クリームで次の指示を彼等に伝える。

 

「ごちそうさま。代金よ」

 

「またのご利用を」

 

 指示を受け、ロケット団は席を立った。

 

「――動いたぞ」

 

 その様子を見て、白い髪を肩で切り揃えた髪型をした、同じ顔の三人が呟く。

 

「分かった。私達に任せてくれ。お前はあの方々に報告を」

 

「あぁ。あと、王は?」

 

「分からん。何処にいるのかも不明だ」

 

 はぁと、その人物達は溜め息を吐く。彼に万が一が有るわけには行かない。早く戻って来て欲しかった。

 

「とりあえず、今は奴等の監視だ」

 

「気は抜くなよ。奴等の同行の把握はとても重要な任務なのだからな」

 

「勿論だ。何れ来る時の為にも、な」

 

 三人の人物は確認を終えると、二人はロケット団が去った方向へ、もう一人は正反対の方向へ歩き出した。

 

 

 

 

 

「へー、何か静かな感じがする町だな」

 

「うん。穏やかさを感じるテイストの町だね」

 

 サトシ達が着いたのは、派手さこそは無いものの、物静かで過ごしやすそうな街だった。

 

「ねぇ、あれ時計塔よね?」

 

「うわ、大きい……」

 

「相当な年代を感じさせるテイストが伝わってくるね。興味深い」

 

 アイリスが指を指す。そこには、周りの建物よりも一回りは優に大きい時計塔があった。

 

「とりあえず、どうする?」

 

「今日はポケモンセンターで少しゆっくりするのも有りかもね。食料の買い物もしたいし」

 

「そうだな。俺もポケモン達の疲れを取ってやりたいし」

 

「じゃあ、決まりね」

 

 と言う事で、三人はポケモンセンターに行くことにした。到着すると三人は一旦離ればなれになり、サトシはリビングルームで五匹のポケモンと休んでいた。

 

「よっと。皆、ゆっくり休んでくれよな」

 

「ピカ」

 

「ミジュ」

 

「ポー」

 

「ポカ」

 

「タジャ」

 

 五匹は明日にも備え、ゆっくりと身体を休める。ピカチュウとツタージャはまだまだ余力は有るも、体力の回復は大事である。

 

「にしても、今日のダルマッカ達はなんだっただろうな?」

 

 サトシのふと呟いたその疑問に、さぁと返したツタージャ以外が悩む。

 

「あらあなた、あのダルマッカ達と遭遇したの?」

 

 そこに偶々、道具を運んでいる最中だったジョーイが話しかけてきた。

 

「あのダルマッカ達の事、知ってるんですか?」

 

「えぇ、あの子達はヒヒダルマと一緒にこの町に暮らしてた子なの」

 

「ヒヒダルマ?」

 

『ヒヒダルマ。えんじょうポケモン。ダルマッカの進化系。体力が少なくなると、格闘モードから瞑想モードになる』

 

「ダルマッカの進化系……」

 

 となると、そのヒヒダルマとダルマッカは親しい仲なのだろうか。

 

「そう。彼等はこの町の人々と一緒に暮らしていて、何の問題も無かった。なのに、ある日からダルマッカ達が食べ物を盗む様になったの」

 

「ヒヒダルマは?」

 

「それが行方知らず。でも、気になる点が一つあるわ。ダルマッカ達が盗みを働き出した時期と、ヒヒダルマが姿を見せなくなった時期がほぼ一緒なの」

 

「ヒヒダルマがいなくなったと同時に、ダルマッカ達が盗みを始めた……」

 

 単なる偶然とは考えづらい。おそらく、ヒヒダルマが行方知らずになった理由が、ダルマッカ達が食べ物を盗む理由と考えるのが自然だ。問題は、その理由。

 

「うーん、分かんないな……」

 

「私達も全く。そろそろ、あの時計塔の解体も始まるし、それまでには分かると問題なく進むのだけれど」

 

「えっ、あの時計塔、無くなるんですか?」

 

「えぇ、老朽化であちこちに穴が空くようになって、鐘も鳴らなくなっちゃったの。もうしばらくしたら、取り壊される予定」

 

「そうなんですか……」

 

「昔からいる人達によると、あの時計塔は街の人々が誇りだったそうよ。その鐘の音が一日の様々な時を伝えていたんだって。子供達の遊び場にもなってたとか」

 

「なのに、壊すんですか……」

 

「時代の流れなのかもしれないわね……」

 

 昔は街の象徴だったにもかかわらず、今は不要となった。寂しさを感じさせる悲しい話だ。

 

 

「辛気臭い話にしてごめんなさい。あと少しで料理が出来るから、待っててね」

 

「はい」

 

 二時間後、夜になり、合流した三人は食堂で夕食を頂いていた。

 

「うま! これ美味い!」

 

「ほんと! 美味しいわね!」

 

 その内のコロッケ、しかも山もりになるほどあるそれを、サトシとアイリスがモリモリと平らげていた。

 

「この二人、案外似た者同士かも……」

 

「俺(あたし)達が似た者同士だって!?」

 

 互いに琴線に触れたのか、譲れない一線なのか、二人はデントの言葉を否定する。

 

「あはは、ごめんごめん。それよりサトシ、さっきの話だけれど……」

 

 サトシは食事前、合流したアイリスとデントにダルマッカとヒヒダルマの話をしていた。

 

「ジョーイさんの話によると、ダルマッカ達にはヒヒダルマがいた」

 

「そして、三匹は街の人達と仲良く暮らしていた。だけど、ある時から盗みをし始めた」

 

「同時に、ヒヒダルマは姿を消した……。うーん、ミステリーのフレイバーが漂っているね……」

 

「これって、偶然だと思うか?」

 

「ちょっと考えにくいわね……」

 

「うん。ヒヒダルマが消えた理由が間違いなく、ダルマッカ達が食べ物を盗む理由だと思うよ」

 

 問題はその理由。それさえ判明すれば、この謎が解決する筈だ。しかし、幾ら考えても全く分からない。

 

「――皆さ~ん。今日は満月ですから、特別にお月見団子を用意してますよ。良ければ、食べますか?」

 

 そこに、ジョーイが今日は特別に団子を用意してあると話す。満月なので作ったのだ。

 

「じゃあ俺、用意するの手伝います」

 

「なら、あたしも」

 

「僕も手伝います」

 

「皆ありがとう。団子はキッチンにあるわ。場所はあちら」

 

「分かりました」

 

 三人は直ぐ様団子を取りに向かい、キッチンの部屋前に立つ。

 

「よし、ここだな」

 

「直ぐに持って行きましょ」

 

「そうだね」

 

 サトシが取っ手に手を掛け、扉を開いた。

 

「――あっ!?」

 

「ピカ!?」

 

「マッカ!?」

 

「ダルマッカ!」

 

「こんなところにも!?」

 

 しかし、そこにはなんと、あのダルマッカ達がお月見団子を袋に積めて運ぼうとしていた。窓が開いている所から、あそこから侵入したようだ。

 

「マッカ!」

 

「マカ!」

 

 ダルマッカ達は互いを見合わせると、素早く動き、侵入した窓から外に逃走する。

 

「あっ、こら!」

 

「ねぇ、これってダルマッカ達の目的を知るチャンスじゃない!?」

 

「確かに! この機を逃すわけには行かない!」

 

 これ以上の盗むを止めさせる為にも、理由を知るためにも、ここでダルマッカ達を追うべきだ。

 

「マメパト! お前は先にダルマッカ達を追跡してくれ!」

 

「ポー!」

 

 マメパト、次にサトシ達が窓から外に出る。

 

「なぁ、ここは三手に別れてダルマッカ達を探した方が良くないか?」

 

「そうね。まとまってよりは、ばらばらの方が発見しやすいし、追い詰めれると思うわ」

 

「なら、僕はこっちに向かうよ」

 

「俺はあっち!」

 

「あたしはそっちから探すわ!」

 

 サトシ達は三手に別れ、ダルマッカ達を追う。しかし、町を知っているダルマッカ達の方が動きは無駄がなく、サトシ達は軽々と撒かれてしまった。

 

「アイリス、デント! ダルマッカ達は?」

 

「途中で見失ったわ……」

 

「ここは彼等が過ごしてきた町だからね……地の利は向こうにある。こうなっても仕方ない」

 

「けど、このままあのダルマッカ達を見逃す訳にも……」

 

 三人は途中で合流したが、ダルマッカ達を見失ってしまい、どうしたものかと悩む。

 

「ポー!」

 

「マメパト! ダルマッカ達を見付けたのか?」

 

 そこに、空からダルマッカ達を追跡していたマメパトがサトシ達に合流。問いに頷いた。

 

「ダルマッカ達はどこに?」

 

 マメパトは片翼でその場所を示す。その方角に先にあるのは――時計塔だった。

 

「時計塔? ダルマッカ達はそこに?」

 

「でも、何で時計塔に入ったの?」

 

「彼等はそこを根倉にしていたのかな?」

 

「けど、あそこは老朽化してるってジョーイさんが話してたぜ? そんなところを根倉にするか?」

 

「確かにね……。けど、とりあえず追い掛けるべきだと思うよ」

 

「それもそうね」

 

 ダルマッカ達がいる判明したのだ。そこを行けば理由も判明するかもしれない。サトシ達は古びた時計塔へと向かう。

 

 

 

 

 

「近くで見ると、でかいな……」

 

「遠くから見ても、あれほどだからね」

 

「ねぇ、あそこ! ダルマッカ達じゃない?」

 

 アイリスが指を指す。窓から二匹のダルマッカの姿が見えた。同時にダルマッカ達もサトシ達に気付いたらしく、急いで上へと進む。

 

「――うわ!」

 

 中に入り、上を目指そうとしたが、途中で足場が崩れた。

 

「ところどころボロボロね……」

 

「老朽化してるって話だから、当然と言えば当然だけど……。安全の為にも、ゆっくり進もう」

 

 足場を確認し、慎重に進んでいくサトシ達。途中の階段を上り切り、小さな一室に着く。

 

「――マッカ!」

 

「ダルマッカ!」

 

 声がし、サトシ達は咄嗟にその場を離れる。直後に二つの拳が空を通過した。

 

「マッカ~……!」

 

「今のは、きあいパンチだね……!」

 

「避けれて良かったわ……!」

 

 かなりの威力を誇る技だ。直撃すれば、大ダメージは免れなかっただろう。

 

「マ~……!」

 

「待ってくれ、ダルマッカ! お前達はなんで食料を盗むんだ? 俺達はその理由が知りたいんだ!」

 

「マカ?」

 

 てっきり、昼の時の様に自分達を蹴散らしに来たと思っていたダルマッカ達だが、どうやら違うと理解した様だ。

 

「――さっきから、騒がしいね」

 

「えっ、この声は……」

 

 聞き覚えのある声と共に、階段から誰かが降りてきた。その人物は。

 

「Nさん!」

 

「……サトシくん?」

 

 カラクサタウンやサンヨウシティで出会った謎の青年、Nだった。

 

「どうして、キミ達がここに?」

 

「実は――」

 

 ダルマッカ達との一件や、それが切欠で二匹を追跡し、ここに来た事を簡潔に伝えた。

 

「そうか、キミ達も盗まれたんだね」

 

「も? ってことは、Nさんも?」

 

「不覚にもね。ただ、その後は事情を聞いて手助けしようとしてたところ。丁度良い、キミ達も協力して欲しい」

 

「協力? 何の?」

 

 食料を盗む手伝いだった場合は、即座に断るつもりである。

 

「話は上に上がってから。――一刻を争う事態だからね」

 

 その言葉に、三人は危機感を抱き、ゆっくりと上の階へと上がる。

 そこには何故かサトシを見て驚くポカブと、Nといるゾロア、他に緑色の球体に目と口、旋毛みたいなのがあるポケモンがいた。

 新しいポケモンが気になるサトシだが、今は部屋の方を優先する。

 

「これは……!」

 

「ヒヒダルマ!」

 

 そして、行方不明のヒヒダルマもいた。しかもどういう訳か、ダルマモードになっている。

 

「Nさん、これは一体……!」

 

「あそこを見てごらん」

 

 Nが指差した方向を見る。そこには時計塔の大きな鐘があった。

 

「ねぇ、あれって……鐘が浮いてない!?」

 

 しかし、釣鐘はフックに掛かっておらず、宙を浮いた状態になっていた。

 

「そう、フックが変形してしまって、鐘が外れて落下しそうになっていたんだ」

 

 近くには、長年掛かった鐘の重さで変形してしまったフックが転がっている。

 

「この時計塔は老朽化でかなり脆くなっている……。そんな状態でこの大鐘が落下したら、その重みで時計塔が崩壊する可能性は十分ある……!」

 

「それに、この時計塔って周りの建物よりもかなり高かったわよね!? 下手したら……!」

 

 最悪、周りの建物や住民をも巻き込んだ、大惨事に発展しかねない。

 

「そうか、ヒヒダルマはそれを食い止めるために……!」

 

「うん。そして、ダルマッカ達の食料を奪ったのは、ヒヒダルマの体力回復の為」

 

 これで謎は解けた。となると次は勿論、この危機をどうやって食い止めるかだ。

 

「Nさん、どうしたら?」

 

「先ずは、フックを元に戻そう。ダルマッカ達とボクやキミといるポカブ。これらの炎で形を変えれるぐらいにまで熱する」

 

 フックの形を元に戻さない事には、鐘も戻せない。

 

「分かりました。ポカブ、君に決めた!」

 

「カブ!」

 

 サトシにポカブを見て、Nといるポカブがペコッと頭を下げた。

 

「ひのこ!」

 

「同じく、ひのこ」

 

「カブーーッ!」

 

「マッカーーッ!」

 

 四つの炎が、フックを赤く染めていく。上手く行った様だ。

 

「次は強く叩いて、形を戻さないと。ヤナップ!」

 

「ヤプ!」

 

「ピカチュウ、お前も手伝うんだ!」

 

「かわらわり!」

 

「アイアンテール!」

 

 手刀と鋼の尾がフックを強く叩く。その衝撃により、フックはS字型へと戻った。

 

「次はミジュマル!」

 

「――ミジュ! ……ミジュ?」

 

 ボールが出てきたミジュマルだが、Nといるポカブを見て、あれと疑問符を浮かべた。

 

「カブカブ、カブウ」

 

「……ミジュ」

 

 

 それは後回し、Nといるポカブの台詞に、ミジュマルは頷いた。ポカブの言う通り、今はこの危機の打開を優先すべきだ。

 

「みずてっぽう!」

 

「ミジューーッ!」

 

 水を掛けられ、フックは冷えて形が固定化される。後は、このフックを掛けて鐘を固定するだけ。しかし、一つ問題がある。

 

「Nさん、どうやって鐘を掛けるんですか?」

 

 そう、この大鐘をフックに掛ける事だ。この鐘はヒヒダルマでも浮かせるのが限界。これを持ち上げねばならない。

 

「大型か複数のポケモンで持とうにも、下手にしたら重量で穴が空いてそのまま崩壊しかねない。このまま持ち上げないと……」

 

「ツタージャやヤナップのつるのムチで持ち上げるのは?」

 

「重量が有りすぎるわよ。二匹の身体が持たないわ」

 

 この鐘は数トンは優にあるだろう。サイコキネシスに掛かった状態でも、ヤナップとツタージャの小さな二匹では無理がある。

 

「ユニランのサイコキネシスやゾロアのトリックを合わせても、まだ足りないね……」

 

 サトシは直感的に、その名前がこのポケモンのだと理解した。この子も近くでNと仲良くなり、少し間いることにしたのだろう。

 

「そのユニラン、サイコキネシスが使えるんですか?」

 

「うん、この部屋の足場を補強してるのに使ってる」

 

「……あの、だったら解除したら足場が崩れるんじゃ?」

 

 その場合、自分達が落下して怪我してしまう。

 

「大丈夫、補強している間に問題ない足場を見付けたから。ボク達が立っている所やその辺りは崩れないよ」

 

「トリックはどうして?」

 

「トリックの物を動かす性質を応用して、鐘を違う場所に送るか試したんだけど……重すぎて浮かぶのをサポートするのが限界なんだ」

 

「問題はやはり、鐘という事ですか……」

 

 ヒヒダルマとユニラン、ゾロアをサポートし、鐘を浮かせて持ち上げるだけだが、その方法が無かった。

 

「それなら、何とかなるかも。マメパト、ツタージャ!」

 

 サトシは二匹を出す。二匹はNを見て驚き、特にツタージャはNを見ると、視線を反らした。Nはそんな彼女に微笑む。

 

「えーと、マメパトとツタージャ、かぜおこしとたつまきで少しでも鐘を浮かせてくれ」

 

「ポー!」

 

「タジャ」

 

 二匹は鐘の下に移動すると風を起こす。二重のたつまきにより、鐘は少しずつ上に上昇する。

 

「これなら行けるかも……!」

 

「ヤナップ、あの部分からつるのムチで持ち上げるか試してくれ!」

 

「ナプ!」

 

 念動力と風。五匹の力が掛かっている状態なら、ヤナップでも持ち上げれるかもしれない。

 ヤナップは素早くフックを掛ける部分に移動し、つるのムチをフックに引っ掛ける。

 幸い、ギリギリで何とかなる様で鐘を更に少しずつ上げていく。

 

「ナ……プ……!」

 

 しかし、ヤナップの表情が歪む。かなり苦しそうだ。

 

「ヤナップ、大丈夫かい!?」

 

「サポートがあるとはいえ、実質彼だけで持ち上げてるからね……!」

 

 どうすればと、サトシ達は悩む。しかし、これ以上軽減しようにも、方法が無い。

 

「町の人達に協力を求めるべきじゃ?」

 

「うん。僕達だけじゃ、これ以上は無理だ」

 

「だったら、直ぐに――」

 

「……いや、駄目だ。時間が無い」

 

 町の人々に助力を求めようとサトシ達は考えるも、Nはそれでは間に合わないと語る。

 

「どういう事ですか!?」

 

「見てくれ」

 

 ヒヒダルマの周りが、高熱で揺らいでいる。

 

「念動力の使いすぎで、熱が発生してるんだ。このままだと、床が発火して火事が起きてしまう」

 

「そんな! どうしたら良いのよ!」

 

 残り少ない時間で、鐘を掛けなければ火事に。かといって、強力な念で鐘を浮かべているヒヒダルマが力を止めれば、この時計塔が崩壊してしまう。八方塞がりだった。

 

「――ピカピカ!」

 

「どうした、ピカチュウ?」

 

「それは……縄?」

 

「ここで用意された物かしら?」

 

「そうか。その縄で鐘を引っ張るんだね?」

 

「ピカチュ!」

 

 ヤナップだけでは無理なら、複数で持ち上げれば良いのだ。

 

「これだったら、行けるかも!」

 

「あとは僕達が鐘に引っ掛けて、持ち上げて軽減する」

 

「急ごう。もう一刻の猶予もない」

 

 縄を投げ、上に引っ掛けてから鐘の穴に掛ける。

 

「いっ、せい、のぉ!」

 

 息を合わせ、人とポケモンが一体となってここにいる全員で渾身の力で引っ張り、鐘を持ち上げていく。

 引く度に少しずつ少しずつ、鐘が上がり、掛ける場所にまで近付いた。

 

「よし、あとは掛けるだけだ! ピカチュウ、フックを持って、あの場所にまで行ってくれ! マメパト、ツタージャ、フルパワーでかぜおこしとたつまき!」

 

「ピカ!」

 

「ポーーーッ!」

 

「ター……ジャア!」

 

「ゾロア、ユニラン、全力でトリックとサイコキネシス!」

 

「ゾローーーッ!」

 

「ユニーーーッ!」

 

「ダーー……ルーー……ッ!」

 

 五匹は限界まで力を振り絞り、掛ける場所を全力で維持。その間に縄を外し、ピカチュウがフックを柱に、次に五匹の力で鐘をフックに掛ける。

 

「最後はゆっくり力を弱めるんだ。一気に力を解除すると、フックや柱に強い負荷が掛かってまた異常が起きるかもしれない」

 

「はい! もう一頑張りだ!」

 

 五匹は力をゆっくり落としていく。一分ほど掛けて全ての力を消す。しばらく見るも、柱もフックも問題ない。

 

「終わった、ね」

 

「やったーーーっ!」

 

「ふー、スッゴくドキドキしたわ……」

 

「これは僕達全員で解決した、正に友情のテイストだね」

 

 問題が解決し、全員が一安心する。ポケモン達も互いにお疲れ様と労っていた。

 

「ダルダル」

 

「ヒヒダルマ!」

 

 そこにダルマモードから普通の状態に戻った、ヒヒダルマが笑顔でサトシに近付く。自分達に力を貸してくれたことに感謝しているようだ。

 

「マッカマッカ!」

 

「マカ~!」

 

 ダルマッカ達も、サトシ達やNに感謝しており、先のご飯を盗んだ件について頭を下げていた。

 

「もう盗んだりするんじゃないぞ」

 

「そうだよ。盗みは悪いことだからね」

 

「マッカ」

 

 はいと、二匹のダルマッカは深々と頭を下げる。

 

「あと、ヒヒダルマありがとな! この町を守ってくれて」

 

「ダール」

 

 ここは自分やダルマッカ達が過ごしてきた町。それを守るのは当然の事である。

 

「さて、町の人にこの事を報告しよう。危機は去ったとは言え、きちんと対応してもらうには越したことはないからね」

 

「ですね」

 

 サトシ達は時計塔から出ると、ポケモンセンターでジョーイに事情を説明したのであった。

 

 

 

 

 

「Nさーん!」

 

 翌日。時計塔の前でサトシ達とNが再会する。Nの側には、ポカブとゾロアがいた。

 

「やぁ。今日も元気そうだね」

 

「はい。……ピカチュウはまだまだですけど」

 

「早く治ると良いね」

 

「ピカピ」

 

 ありがとと、ピカチュウはNにお礼を告げる。

 

「ところで、ユニランは?」

 

「あの子なら、キミ達が来る前に帰ったよ。あと、キミ達に頑張れだって」

 

「そうします」

 

 ユニランは名残惜しかったが、Nと離れていた。その際、サトシ達に応援の言葉を掛けていた。

 

「あなたがNさん?」

 

「はい。……あれ、サンヨウで会いましたか?」

 

 そこに、この町のジョーイが駆け寄る。しかし、ほぼ同一と言っていい顔に、同じ人物かとNが勘違いする。

 

「サンヨウはわたしの親戚の子なの。わたしの方が一つ上」

 

「似てますけど、違う人達なんです」

 

「……そ、そうですか」

 

 流石のNも、これには苦笑いするしかなかった。

 

「それよりもNさん。彼等と一緒に町を守って頂き、ありがとうございます」

 

「いえ、ボクは彼等の協力をしただけです。礼はヒヒダルマやダルマッカ達に言ってください」

 

「分かりました」

 

「あと、この時計塔はどうなりますか?」

 

「ヒヒダルマやダルマッカ達が頑張った事や、その話を聞いて昔から暮らす人達が残して欲しいと必死に訴えて、残す事に」

 

 昨日の一件を切欠に、やはり残して欲しいとこの町の多くの人々が告げ、あの時計塔は存続することとなった。

 

「安全の為にも、今度はしっかりと見てください」

 

「勿論です。今日の昼から早速点検が行われます。ヒヒダルマやダルマッカ達も協力してるんですって」

 

 色々あったが、どうやら良い方向で纏まった様である。

 

「私、仕事がありますから、これで失礼しますね」

 

 話を終えると、ジョーイはサトシ達から離れていった。

 

「何はともあれ、纏まりましたね」

 

「うん。だけど――そもそも、ここの人達の落ち度ではある」

 

 空気が悪くなるのを承知の上で、Nはその事を伝えた。

 

「Nさん……」

 

 しかし、間違ってはいない。老朽化したからとは言え、ここの点検を町の人が怠ったのが原因なのだから。

 

「ですが、Nさん。彼等は今回の一件で間違いを知りました。きっと、同じ過ちは二度と犯さないと思います」

 

 今回の件があるからこそ、この町の人々はそれを糧により良い道へと歩む。デントはそう語る。

 

「だと良いね。――ごめんね、キミ達にこんな話をして」

 

 Nはサトシ達に謝ると帽子を被り直し、町を出ようとするも、そこにミジュマルが出てきた。

 

「ミジュー」

 

「カブ」

 

「ミジュミジュ、ミジュマ?」

 

「カブカブ、カブー」

 

「……ミジュマル、そのポカブと知り合いなのか?」

 

「ミジュミジュ!」

 

 二匹はしばらく話し合う。その様子にサトシが尋ねると、ミジュマルが手振りや身振りで伝える。

 

「もしかして……アララギ博士のとこにいた、ポカブ?」

 

「カブ」

 

 シューティーに用意された、新人用のポケモンの一体のポカブ。このポカブはその時と同じ個体だったのだ。

 

「Nさん、アララギ博士から……?」

 

「うん、色々と話してね。それ以降、一緒にいるんだ。そのミジュマルもアララギ博士の所にいたのかい?」

 

「はい。俺達を追って、来ちゃったんです」

 

「サトシって、好かれるんだね」

 

 デントの言葉にNも同意だった。また、自分がアララギ研究所を訪れた時、少し騒がしかった理由も納得していた。

 

「ちなみに、この子達と一緒にいたツタージャは誰が?」

 

「シューティーっていう、トレーナーの元に」

 

 その名前に、デントが反応する。

 

「シューティー? 彼の事かな?」

 

「知ってるの、デント?」

 

「うん。サトシが来る前日にサンヨウジムに訪れたトレーナーだよ。結果は彼の勝利」

 

「誰と戦ったんだ?」

 

「コーンだよ。苦戦しながらもギリギリでね」

 

「やるなあ、シューティーも」

 

 相性で有利ながらも、あの強敵、コーンとヒヤップに勝てた様だ。大したものである。

 

 

「ボクはポッドって人と戦ったよ。彼も強かった」

 

「そうですか。――って、え? Nさん、ポッドと戦ったんですか?」

 

「うん。結果はボクとポカブの勝ち。その証拠に――」

 

 Nはポケットからケースを取り出して開く。そこには、サンヨウジムに勝った証、トライバッジがあった。

 

「Nさんもジムを……」

 

「デントくんには前にああ言ったけど、それには彼等を知った上で決めたい。だから、ボクもジムを巡っているんだ」

 

 批判するにしても、よく知ってからするべき。また、ジムリーダーのポケモンとの付き合い方もNは知りたかった。だからこそ、ジムを目指しているのだ。全部は無理だとしても。

 

「あの、ツタージャで思い出したんですけど……Nさんって、ツタージャとどういう関係なんですか?」

 

「秘密。彼女から聞くか、その時になるまではね」

 

 ツタージャとの関係を尋ねるサトシだが、Nは彼女が言うか、その時までその事を話すつもりはない。

 その返答にサトシも二人も残念そうだが、無理に聞く気も無いので諦めた。

 

「じゃあ、ボクは次の町を目指したいから、そろそろ失礼するよ。ゾロア、ポカブ、行こうか」

 

「ゾロ」

 

「カブ」

 

「サトシくん、デントくん、また会おう」

 

「はい」

 

「えぇ」

 

 挨拶も済ませ、一足先に町を出ようとしたNだが、視線をアイリスに向ける。

 

「あ、あの、何ですか?」

 

「――『仲直り』、出来ると良いね」

 

 その発言に、思わず息を飲むアイリス。しかし、Nはそれ以上は語らず、二匹と共に歩いて行った。

 

「……どういう意味だろう?」

 

「アイリス、何か心当たりはあるかい?」

 

「あ、あるわけ無いじゃない! あたしとキバゴは仲がスッゴく良いし! ねっ、キバゴ!」

 

「キバキバ!」

 

「それもそうだよね……」

 

 動揺しているのが気になるも、アイリスの言う通り、キバゴとの関係は良好だ。さっきの発言とは辻褄が合わない。

 

「じゃあ、Nさんはなんであんな事を……?」

 

「そんなことどうでも良いじゃない! 早く次の町に行きましょ!」

 

「あっ、おい。待てよ、アイリス!」

 

「うーん、気になるテイストだね」

 

 一つの引っ掛かりを残しつつも、彼等はこの街を後にしたのであった。

 

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