ポケットモンスター アナザーベストウイッシュ 作:ぐーたら提督
またのろわれボディについては、少し変更してます。アニメのままだと、ちょっと強力過ぎますし……。
「よし、早速始めよっか!」
「う、うん!」
「キバ!」
朝、朝食の前の一行。ある木の広場では、キバゴの後ろにアイリスとサトシが立っていた。目の前には狙いの岩がある。
「アイリス、前にも言ったけど、今のキバゴじゃりゅうのいかりの力を制御出来ない。だから先ずは、威力をかなり落とした状態で使って見たら良いと思うんだ」
「な、なるほど……。キバゴ、今の聞いたよね? ちょっとだけで撃つのよ」
「キバ!」
「じゃあ、行くよ! りゅうのいかり!」
「キバ~……!」
「おっ、良い感じ良い感じ」
「ナプナプ」
キバゴの口に、青白い力がちょっとずつ溜まっていく。
その様子を、前と同じ様に爆発に巻き込まれないよう、離れた場所で料理を作っているデントとヤナップが良い感じと誉めている。
「発射!」
「キバーーーッ!」
「おっ!」
「おおっ!」
「ピカ!」
「ヤナ!」
そして、光は前と違って暴発することなく、放たれて前に進んでいく、が。
「……何か違う」
「……キババ」
へなへなと上下に揺れてる上に、そよ風一つで吹き飛びそうなほどに威力と勢いが全く無い。
それでも狙いの岩目掛けて進むも、ポンと当たっただけで消えてしまった。岩にはほんの小さな傷しかない。
「まあまあ、とりあえずは成功したんじゃないか」
「それはそうだけど……これじゃ、とてもりゅうのいかりなんて言えないわよ~!」
「キババ~!」
暴発はしなかったとは言え、威力が全くない。これでは、とても実戦では使えない。
「キバゴ! もう一回! さっきよりも威力を高めるわよ!」
「キバ!」
「お、おい! まだ一番低い力で成功しただけなのに、いきなり力を高めたら――」
「クシュン!」
爆発と音が発生したのは、その直後であった。
一分後、アイリスとキバゴは申し訳なさで一杯の表情で正座していた。目の前には煤で汚れたサトシとピカチュウがいる。
「……本当に、ごめんなさい」
「……キババ」
「まぁ良いよ」
「ピカ」
血気に逸って失敗する時期はサトシやピカチュウにもあった。アイリスも謝まっていることだし、彼等は特に怒ることなく許した。
「やっぱり、地道にやってくしかないのね……」
「まあね。だけど、頑張って行けば、何時かは必ず習得するさ」
「そうそう、俺の仲間達みたいにな」
「そっちはかなり進んでるんだっけ?」
「かなり」
「ポカブのニトロチャージは、二回に一度成功するまでに仕上げてるんだよね?」
「そっ」
ただ、失敗した場合もそれなりの威力は出る。追加効果の速度上昇は発生しないが。
「マメパトのつばめがえしも、かなり形になって来たんだけど……」
ニトロチャージの完成は近い。つばめがえしも順調。ここまでは問題はない。
「ミジュマルのアクアジェットが、変な方向に移動しちゃうのよね?」
「そこなんだよなー……」
今日である程度形にはなったものの、どういう訳か滅茶苦茶に動き回ってしまうのである。このままでは、完成しても使い物にならない。
「まぁ、気長にやろうよ。焦っても仕方ないからね」
「だな。じゃあ、次の町に向かおうぜ。バトルクラブが有るんだろ?」
「うん。次の町にはバトルクラブがある。寄るかい?」
手にある端末で、次の町にバトルクラブが有ることは調査済みである。
「勿論。シッポウジムに備えて、調整をしたいし!」
「相変わらずだね。だけど、今は食事の方が優先だよ」
「分かってるって」
キバゴとの特訓の間に、デントは朝食を手早く作っている。メニューは簡単なピザとコンソメスープである。
「いただきまーす! うん、今日も美味い!」
「ピカ!」
周りはパリッと内はサクサクとした違いのある食感と、チーズや辛味のある木の実が続きを促す。コンソメスープも、味が深い。
「それは何より。まぁ、ここは野外だから、どちらも本格的な味は出せないけど」
「充分美味いって!」
寧ろ、最低限の道具のみでこれほどの味を出せるのだ。改めて、デントの料理の腕の高さが伝わってくる。
「アイリスは?」
「サトシと同意見!」
「キババ!」
アイリスとキバゴも、文句は一つも無かった。
「――ごちそうさま!」
「ピカ~」
サトシとピカチュウは腹を満たし、満面の笑顔を浮かべる。
「ん? アイリスはまだか?」
「う、うん、ちょっとね」
しかし、一方でアイリスは食事の速さが控え目だった。キバゴは腹を満たし、ポンポンと叩いているのに。
「――キバゴ、ちょっと良いかな?」
そんな時、デントがキバゴを呼び出す。
「キバ?」
「……デント、キバゴに何のよう?」
「少し、手伝って欲しいことが有ってね。ダメかな?」
「……あたしは良いけど。キバゴは?」
「キバキバ」
自分で良ければ手伝いたいと、キバゴは笑顔で頷いていた。
「ありがとう。――サトシ」
デントはパチッと片目をウインクする。そっちもお願いと言いたげに。
「アイリス、ちょっと付き合ってくれよ」
「えっ、ち、ちょっと!?」
「ピカチュウ、キバゴを頼むな」
「ピカ」
相棒に頼むと、サトシはアイリスの手を引っ張り、適当に動いて小さな場所へと移動する。
「ここなら良いかな」
「な、何する気よ?」
「俺は何もしないよ。するのはアイリス」
「はぁ? あたしが何を――」
「ドリュウズ。ここでなら、二人きりで話し合えるだろ?」
息を飲むアイリス。同時に、デントがキバゴを遠ざけた意味も理解していた。
「……だけど、今のドリュウズは――」
「じゃあ、今のままで良いのか?」
「そんなわけないじゃない!」
ドリュウズと元の鞘に戻れるなら、そうしたい。それがアイリスの答えだ。
「だったら、話し掛けるしかないだろ。例え聞く気がなくても、無視されても、アイリスがドリュウズと話そうとしなきゃ、何も変わらないだろ? それか、何時かが来るまで待つか。どうする?」
「……」
ドリュウズの入ったモンスターボールを取り出し、見つめるアイリス。
「……一人にして」
「分かった。あっ、でも、何か有ったら直ぐに言えよ。あとこれ、デントがドリュウズ用に作ったポケモンフーズ。まだそんなに分かってないから、手頃な味のやつだってさ」
そうとアイリスが答え、そのポケモンフーズを受け取ると、サトシは離れていった。
「……出てきて、ドリュウズ」
モンスターボールのスイッチを押す。中からドリュウズが出てくるも、やはりあの状態のままだった。
「……ねぇ、ドリュウズ」
「……」
「そろそろさ、前みたいにまた話したりしない?」
「……」
呼び掛けるも、ドリュウズは全く答えない。
「じゃあさ、今サトシやデント、キバゴ達もいるでしょ? その顔合わせぐらい……」
「……」
自分とが嫌なら、仲間達と。アイリスはそう提案するも、やはりドリュウズは動こうとしない。
「……前みたいには戻れないの?」
「……」
想いを込め、そう伝えるも、ドリュウズはやはり動かない。
「……」
その後、色々と話し掛けたアイリスだが、ドリュウズから反応は無かった。
「……ドリュウズ。ここにデントのポケモンフーズがあるの。お腹減ってるだろうし、食べて。食べ終わるまではあたし、向こうに行っとくから」
アイリスはポケモンフーズを置くと、その場を少しだけ離れる。気配を感じなくなったのを悟ると、ドリュウズは潜行状態を止め、元の姿に戻る。
「……」
無言でポケモンフーズを手に取り、静かに味わう。好みの味ではないが、食べやすい。
「……」
ポケモンフーズを食べ終えると、近くの木を何度か叩く。同時にまた潜行状態へと戻った。その少し後、アイリスが戻って来る。
「食べ終わったんだ。美味しかった?」
「……」
「……戻って、ドリュウズ」
はぁと溜め息を溢した後、アイリスはドリュウズをモンスターボールに戻し、サトシ達の元へと戻る。
「アイリス。上手くは――」
「……行かなかったみたいだね」
「……うん」
表情の暗さから、話し合いが上手く行かなかったのは明白だ。
「……キバ? キバキバ?」
そんなアイリスを心配し、近寄るキバゴ。しかし、アイリスはキバゴを抱き抱えると笑顔を見せる。
「あたしは大丈夫。キバゴ、安心して」
「……キバ!」
アイリスの笑顔に釣られ、キバゴも笑顔になる。それが彼女の強がりだとは、キバゴは幼さ故に気付けなかったが、今はその方が良いだろう。
「大丈夫かな、アイリス?」
「こればかりは彼女次第。僕達に出来るのは、その手伝いと応援だけさ」
「……だな」
これは、アイリスが乗り越えねばならない問題なのだから。
「さっ、次の町に向かいましょ!」
「あぁ!」
「そうだね」
自分を奮い立たせるような彼女の言葉に、サトシとデントは頷く。その後、彼等は旅を再開した。
「えーと……あった、これだ!」
カレントタウンに着いたサトシは、待ちきれずに全力で走り、カラクサタウンにバトルクラブと類似した建物の前に着く。
見上げると、カラクサタウンで見たマークと同一のが建物にある。ここがこの町のバトルクラブと見て間違いないだろう。
「さーて、誰と戦おうかな?」
中に入り、掲示板を操作してどんなトレーナーを探す。
「やっと追い付いたよ……」
「ポケモンバトルは逃げたりしないのに、あんなに走るなんて……子供ね~」
「キバ~」
「あっ!」
「うわっ!?」
突然サトシが大声を上げ、デントとアイリスが驚く。
「な、なんなの!? いきなり叫んだりして――」
「シューティーだ!」
画面に出た人物は、アララギ研究所で会った新人トレーナー、シューティーだった。
「シューティーって……前に言ってた、ツタージャのトレーナーよね?」
「うん。彼もこの町に来てたんだね」
「――よし、決めた! シューティーとバトルしてみる」
「ピカ」
前は中途半端な結果で終わったことや、ここで会えたのも何かの縁だろうと考え、サトシはシューティーを相手に決めた。
「うむ、了解した」
その声に三人が振り向く。すると、カラクサタウンで出会ったドン・ジョージ、その人がいた。
「バトルの事なら何でもお任せ。バトルクラブへようこそ。シューティーくんとのバトルを希望だね? 君の名は?」
「サトシですけど……」
「ん? 何だね?」
「いや、カラクサタウンで会った様な……」
「カラクサタウン? そうか、従兄弟のクラブにも寄ったんだね」
「……従兄弟?」
まさかと思いつつ、サトシは目の前のジョージに瓜二つの人物の話を待つ。
「あれを見たまえ」
ジョージが指差すと、そこには前に見たジョーイやジュンサーと同様、沢山のジョージが写っている写真があった。正直、不気味である。
「これが君がカラクサタウンで会ったドン・ジョージ。そして、こっちが私だ」
「……やっぱり、同じなんですね」
ここまで来ると、サトシはあははと苦笑いするしかなかった。
「では、シューティー君を呼ぼう。ライブキャスターに連絡する」
「ライブキャスター? 何ですか、それ?」
「モニターを介して話せる道具でね。遠くにいても話せるという訳だ」
聞き覚えのない名前の代物に、サトシは質問。ジョージが答えながら掲示板を操作すると、シューティーに向けて連絡を送る。数秒後繋がり、シューティーの顔が写る。
「シューティー君、きみにバトルの申し込みが有るのだが……」
『誰ですか?』
「俺だよ、シューティー」
『サトシ!? 君も旅に出てたのかい? てっきり、カントーに戻ってたのかと……』
ピカチュウの事を考えれば、シューティーがそう考えても無理はない。
「翌日に旅に出たんだ。でー――うわっ!」
説明をしていると、アイリスとデントに押された。
「あたし、アイリス。よろしくね!」
「キバキバ!」
「やぁ、シューティー。元気そうだね」
『デントさん!? サンヨウジムの!』
「うん、色々あって、彼等と旅することになったんだ」
サトシにデント。この二人が一緒にいることにまたシューティーは驚くも、説明に納得する。
ちなみにアイリスもいたが、知らない人物なので一緒に旅をしているのだろうと思っている。
「なぁ、バトルの相手探しているんだろ? 勝負しないか?」
『君とかい? なら、喜んで受けるよ』
シューティーからすれば、サトシは豊富な経験を持ち、リーグ出場や優勝までした先輩。その彼から直接申し込まれたのだ。断る理由がない。
『バトルクラブだね? 近くだから直ぐに着くよ。少し待って欲しい』
「あぁ、待ってるぜ」
それから一分もしない内に、シューティーはバトルクラブに訪れた。
「アララギ研究所以来だな、シューティー!」
「あぁ。ところで、ピカチュウは大丈夫なのかい?」
「残念だけど、まだ……」
「そうか……」
完治してないと知り、シューティーは残念そうな表情だ。
「あれ? シューティーはピカチュウの体調の事を知ってるのかい?」
「あぁ、だってその場にいたし、ゼクロムにも一緒に遭遇したもんな」
「えぇ!? シューティーもゼクロムに会ってたの~!? 羨ましい!」
「キバキバ!」
サトシだけでなく、シューティーもゼクロムに会っていたと知り、アイリスは詰め寄る。
「ねぇねぇ、ゼクロムってどんな感じだった!?」
「とにかく、凄かった。僕にはそれしか言えないよ」
あの圧倒的な威圧感、重圧感。雷鳴を感じさせる鋭い眼差しに、分厚い黒雲を思わせる重厚な巨躯。今思い出しても、あの衝撃が鮮明に甦ってくる。それほどだった。
「サトシとシューティーは、ゼクロムに会った事があるのかい?」
「あぁ」
「えぇ」
「凄いね、君達……」
ゼクロムの事はイッシュのジムリーダーとして、デントも勿論知っている。
しかし、一度も会ったことはなく、雲の上の存在と思っていた。それだけに二人が会っていたことに驚きを隠せない。
「それはともかく。バトル受けてくれるんだよな?」
「勿論。だけど、ピカチュウは……」
バトルに異論はない。しかし、ピカチュウの体調が気掛かりだった。
「治ってはないけど、今日はかなり調子が良いんだ。なっ、ピカチュウ?」
「ピカ!」
流石に何度も乱発は出来ないが、このバトルぐらいなら問題はない。
「分かった。ところで、手持ちの数は?」
「ピカチュウを合わせて、五匹。まだ四匹しか捕まえてなくてさ」
五つの地方でリーグ優勝までしたサトシが、五匹しかいないことにシューティーは疑問を抱く。
「……今までのポケモンはいないのかい?」
「俺、違う地方で旅する時はピカチュウ以外は預けるって決めてるからいないよ」
「……君、わざわざ面倒な道を歩くタイプなんだね」
「その方が色々な出会いもあるし、初心も忘れなくて済むしな」
然り気無くそう言えるサトシに、シューティーは大きな差を感じる。やはり、自分よりも多くの経験を得た先輩なのだと再認識出来た。
「良いよ、バトルは五対五。これで行おう」
フルバトルでなくとも、サトシと戦えるのだ。この機を逃すわけもなく、シューティーは五対五のバトルを提案する。
「じゃあ、早速バトルだ!」
サトシも断る理由はなく、了承。二人はバトルフィールドに移動すると、向き合う。
「これより、シューティーくん対サトシくんのバトルを始めます! 使用ポケモンは五体。交代は自由。どちらかのポケモン全てが戦闘不能になった時点で試合終了とします。――始め!」
ドン・ジョージが試合の説明し、それが終わると直ぐに開始と告げる。
「マメパト、君に決めた!」
「さぁ行け、ハトーボー!」
「ポー!」
「ボー!」
サトシが繰り出したのは、マメパト。シューティーが出したのはハトーボーと呼ばれた鳥ポケモンだ。
「ハトーボー……?」
『ハトーボー、野鳩ポケモン。マメパトの進化系。ハトーボーが住む森の奥には争いの無い、平和の国があると信じられている』
「マメパトの進化系か!」
「あぁ、最初にゲットしたポケモンで、バトルや鍛錬の中で進化したんだ。君には君の考えが有るように、やはり僕は進化をポケモンが強くなるための、基本だと考えてるからね」
「そうか」
あの時の事をシューティーは覚えている。その上で、進化の選択肢を選んだ。それを批判する気はサトシにはない。
「ポー……!」
「ボー」
敵対心に満ちた視線を向けるマメパトだが、ハトーボーは堂々としている。
「進化前と進化系のバトルか。面白くなりそうだね」
「けど、流石にこれはマメパトの負けでしょ~」
「キバキバ」
マメパトの強さは知っているが、それでも進化系のハトーボーに敵わないだろうとアイリスは思っていた。キバゴもである。
「ハトーボー、つばめがえし!」
「マメパト、でんこうせっかで翻弄しろ!」
指示を受け、二匹は動き出す。ハトーボーは直線的に進むも、マメパトは前後左右上下に動くことで翻弄し、つばめがえしを回避。両者は場所を相手のトレーナーの方に移動する。
「かわされたか……!」
「簡単に当たらせるわけないだろ?」
「確かに」
進化前のポケモンとは言え、それを指示するサトシは相当な猛者だ。簡単に決まる訳がない。
「……ポー」
マメパトがまたハトーボーを睨む。自分がまだ完全に習得してないつばめがえしをハトーボーが使ったことに、腹を立てているようだ。
「落ち着け、マメパト。そして、勝とうぜ」
「ポー!」
息を吐き、怒りを外に出すと、マメパトは戦意に満ちた瞳をハトーボーに向ける。ハトーボーはまだまだ堂々としていた。
「マメパト、エアカッター!」
「ハトーボー、かげぶんしん!」
「ボー!」
マメパトが空気の刃を出すと同時に、ハトーボーの周囲に複数の分身が出現。空気の刃はその内の一つを消しただけだった。
「ハトーボー、ふるいたてる!」
「ボーーーッ!」
ハトーボーから、赤いオーラが漂う。
「ふるいたてる?」
「自分を高揚させて、力を高める技さ!」
「なるほどな!」
シューティーの説明になるほどとサトシは頷く。かげぶんしんで分身を作り、自分の力を高める時間を稼ぐ。合理的な戦術だ。
「なら、先ずは分身に消えてもらうぜ! マメパト、かぜおこし!」
「ポーーーッ!」
「ボー……!」
広範囲に風を発生させ、分身を瞬く間に霧散。本体を明確にする。
「直ぐに消されたか……流石。だけど、ハトーボーの力は高まってる! つばめがえし!」
「ボーーーッ!」
先程よりも、威力が増したつばめがえしが放たれる。
「威力に惑わされるな! 地面付近でぎりぎりまで引き付けて――かぜおこし! 地面に叩き付けろ!」
「何!?」
「ポーーーッ!」
「ボーッ!?」
風が発生し、土や砂を含んだ煙が巻き上がる。そこに向かってハトーボーがつばめがえしで突っ切る、手応えは全くなく、マメパトを探してキョロキョロとする。
「ハトーボー! そこから直ぐに離れろ!」
「遅い、でんこうせっか!」
「ポーーーッ!」
「ボーーーッ!?」
ハトーボーの背から、強烈な一撃が叩き込まれる。コーン、ヒヤップ戦でも使ったかぜおこしを活かした、でんこうせっかだ。
その衝撃により、ハトーボーは地面に落下。ごろごろと転がっていく。
「エアカッター!」
「ハトーボー! 早くその場から離れてかわすんだ!」
危険を感じ、直ぐにハトーボーを離脱を指示するシューティー。その甲斐も有り、かなりの近距離だが、空気の刃が少しかするだけに留めれた。
「でんこうせっか!」
「ボーッ!?」
「しまった!」
回避に専念する余り、無駄に動いてしまい、その動作の間に再びマメパトのでんこうせっかが腹に直撃する。
「軽くかぜおこし! 続けてエアカッター!」
「ポーーーッ!」
「ハトーボー、エアカッターで迎撃――」
「ボーーーッ!」
「ハトーボー!」
エアカッターで反撃を試みたハトーボーだが、マメパトの軽い故に素早く放たれたかぜおこしで姿勢が崩れ、そこに逆にエアカッターを受けて吹き飛ぶ。
「決めるぞ、マメパト。つばめがえし!」
「ハトーボー、こっちもつばめがえしだ!」
「クルー……」
「ボ、ボー……!」
早く技を仕掛けようにも、地上のままでは撃てない。飛び立ち、技を放つ。
「ポーーーーーッ!!」
「ボーーーッ!!」
しかし、同時に未完成ながらも、マメパトのつばめがえしがハトーボーに直撃。
技の激突により、二匹は互いに吹き飛ぶも、マメパトは空中で姿勢を立て直し、ハトーボーはごろんごろんと地面に転がり――目を回して倒れた。
「ボ、ボー……」
「ハトーボー!」
「ハトーボー、戦闘不能! マメパトの勝ち!」
「良くやった、マメパト!」
「ポーーーッ!」
バサッと両翼を広げ、マメパトは勝利の喜びを表現する。
「か、勝っちゃった……。進化系に……」
「キバ~……!」
「流石、サトシだね」
「……戻れ、ハトーボー」
シューティーはハトーボーにモンスターボールに戻すと、ふーと息を吐いてまた吸った。
(……やれやれ)
相手が歴戦のトレーナーでも、進化前だからこちらが有利、勝てる。そんな下らない思い込みが何処かに有ったようだ。相手はあのサトシだと言うのに。
パァンと乾いた音が響いた。シューティーが自分の頬を強く叩いたのだ。
「――よし」
頭がすっきりさせ、シューティーは再度確かめる。サトシは自分よりも遥かに多い経験値を持ち、ポケモンの力をフルに引き出している。
こちらも持てる力の全てをぶつけねば、最悪の場合は一体すら倒せない可能性も有り得るだろう。死に物狂いで挑まねばならない。
「――行け、プルリル!」
シューティーが二体目に出したポケモンは、赤い目に水色の体、薄い腕に足と言うより、鰭らしき物が三つある姿をしている。
「そのポケモンは……?」
『プルリル、浮遊ポケモン。薄いベールの様な腕で相手の身体を縛り付け、毒で痺れさせる。水深八千メートルの深海に住処が有ると言われるポケモン』
「水タイプのポケモンか?」
「正確には、水とゴーストタイプ。でんこうせっかは効かないよ」
「どうも」
情報からプルリルを水タイプと推測したサトシだったが、シューティーがゴーストタイプもあると付け加えた。
「まだ行けるな、マメパト?」
「ポー」
プルリルにはでんこうせっかは効かない。しかし、同様に向こうのゴーストタイプの技もマメパトには通じない。ここは勢いに乗るべきだ。
「マメパト、でんこうせっか!」
「ちょっと! ゴーストタイプのプルリルには、ノーマルタイプのでんこうせっかは通用しないわよ!?」
「あぁ、分かってるさ! だから――動き回れ!」
「ポーーーッ!」
攻撃するのではなく、プルリルの周囲を動き回り、翻弄していくマメパト。
「くっ、厄介な……!」
素早く動くと言う技の特性を活かし、撹乱に使う。この使い方にシューティーは戸惑うも、落ち着けと自分と叱咤する。
(確かに厄介だけど、攻撃は効かないんだ)
マメパトの残りの技の中でプルリルに通用するのは、かぜおこし、エアカッター、つばめがえしの三つ。
でんこうせっかには気を配りつつも、この三つの回避にすれば負けはしない。
また、プルリルにはサトシがおそらくまだ知らない力がある。それを使えばマメパトを倒せるはずだ。
「プルリル、みずのはどう!」
「リル!」
両手から圧縮した水の球体を出現させ、打ち出す。しかし、でんこうせっかを使っているマメパトには当たらない。
「連発だ!」
「プル!」
水の波動を連射するプルリル。しかし、全てマメパトには当たらず、回避されてしまう。
「サトシ、回避ばかりで勝てると思うかい?」
「まさか! 行くぞ、マメパト! エアカッターだ!」
「ポーーーッ!」
攻撃してこいと、シューティーが挑発しているのを承知の上で、サトシはマメパトに指示。風の刃が放たれるも、プルリルに回避される。
「ヘドロばくだん!」
「プルゥ!」
プルリルは手から毒の液体を塊化した物を展開。それを発射する。
「上昇! その後直ぐにかぜおこし!」
「ポー!」
「プル……!」
「エアカッター!」
「ポーーーッ!」
かぜおこしで一瞬だけ姿勢を崩し、その隙に風刃を射出。見事に命中し、プルリルに悲鳴を上げさせる。
「プルーーッ!」
「かなり効いてる!」
「マメパトの特性、きょううんとエアカッターの性質で急所に直撃したようだね。かなりのダメージだと思うよ」
「マメパト、このまま――」
「ポ!?」
「どうした、マメパト!?」
追撃を仕掛けようとしたが、マメパトの様子がおかしい。黒い靄みたい物が彼女の体に纏わり付いている。攻撃は受けてないはずなのに。
「――掛かったね」
ニヤリと、シューティーは口元を歪ませた。
「これは……?」
「特性、『のろわれボディ』よ! 攻撃した技を一匹のポケモンに付き、一つだけ封じるの! それぐらい知っておきなさい! ホント、子供ね!」
「そんな特性が……!」
「現在、プルリルとその進化系しか確認されてない特性。君の不意を突けると思ったよ」
幾ら彼でも、知らない物を初見で対処するのは不可能。そう考えたが、見事的中した様だ。
「やられたぜ」
この封印はしばらく続くだろう。エアカッターが使えなくなったのはこのバトルでは厳しい。
でんこうせっかは撹乱や回避にしか出来ず、残るかぜおこしと未完成のつばめがえしだけでは勝ち目が薄い。
「戻れ、マメパト!」
「戻した」
「良い判断だよ」
あのままでは、マメパトはやられてしまうだろう。違うポケモンで対処した方が良い。
「君の二匹目。何かな?」
「相性で考えると、ツタージャかピカチュウよね」
「うん、どちらでも良いだろうけど……」
共に戦った経験を考えればピカチュウ。もしくは、無いからこそツタージャ。
そう思いきや、サトシは少し何かを考えた後、一つのモンスターボールを取り出す。
「ポカブ、君に決めた!」
「――カブゥ!」
「えっ、ポカブ!? なんで!?」
相性有利なツタージャでも、ピカチュウでもなく、不利なポカブをサトシは繰り出した。
アイリスは勿論、シューティーも驚いている。ただ、デントだけは狙いの一つに気付けた様だ。
(何かある)
わざわざ、相性不利なポカブを出したのだ。間違いなく、何かがある。迂闊には動けない。
「こっちから行くぜ! ポカブ、たいあたり!」
「ポカ!」
「ち、ちょっと! たいあたりはノーマルタイプの技だから、プルリルには効かないわよ! 何考えてるの!?」
「……プルリル、かわせ!」
「プル!」
ポカブが突っ込む。シューティーは一度迷うも、危険を感じて回避を命じる。プルリルはゆらゆらと揺れながらも軽々かわす。
「連続でたいあたり!」
「だ、だから効かないんだってば! 何してるのよ!」
「……連続でかわせ!」
ポカブの攻撃と、プルリルの回避。それが五度程繰り返されると、ポカブに黒い靄が掛かる。
「のろわれボディ! あぁもう、たいあたりが封じ、られた……?」
「――あっ!」
「そうか。サトシはこれを狙って!」
確かにたいあたりは封じられた。しかし、それはプルリルには効果がない。つまり、封じられてもこのバトルには何の影響も無いのだ。
「さっき、思ったんだけどさ。のろわれボディって、攻撃に使った技を一匹のポケモンに付き、一つだけ封印するんだよな? だったら、こうやって効果のないたいあたりを態と封じさせれば――もう、他の技は封印出来ない。のろわれボディ、封じたぜ」
シューティーは呆気を取られる。まさか、こんな方法でのろわれボディを対処されるとは、予想外にも程があった。
「……見事だよ、サトシ。こんな攻略法が有るなんて、僕は思いもしなかった」
豊富な経験や、常識に縛られない柔軟な戦術を駆使するサトシだからこその、対処法。シューティーは勿論、デントも見事と言わざるを得なかった。
「だけど、相性では僕の方が有利だ! プルリル、みずのはどう!」
「ポカブ、かわしてかみつく!」
指示通り、水の塊を避けるとポカブは走る。
「不味い……!」
悪タイプの技。ゴーストタイプのプルリルが直撃すれば、大きなダメージは避けられない。
「プルリル、まもる!」
「リル!」
「カブ!?」
プルリルの手前に緑色の防壁が展開され、ポカブを弾き飛ばす。
「まもるか。だったらこれだ! ニトロチャージ!」
「カブカブカブ……! カブーーーッ!」
炎が身体から噴き出し、全身を包むとポカブは全力で走り出す。
「プルリル、かわしてたたりめ!」
「たたりめ?」
「相手が状態異常の時、ダメージが増える攻撃技さ!」
炎の突撃を上昇して回避し、霊の波動を放つプルリル。
「かわせ、ポカブ!」
「カブ!」
サトシにとって初見の技だが、素早く指示。動いてポカブは回避する。その速さは先程よりも一回り増していた。
「速い!」
「速くなってる!」
「今回は成功したみたいだね」
威力、追加効果の発生、今回のニトロチャージは成功したようだ。
「一気に行くぜ! かみつくだ!」
「プルリル、まもるだ!」
「ニトロチャージ!」
「かわせ!」
再びポカブのかみつく。それをプルリルが先程同様、しかしぎりぎりのタイミングで、まもるで防ぐもそこにニトロチャージが迫る。
またかわすプルリルだが、今回も技が成功しており、ポカブの速さが更に上昇した。
「ヘドロばくだん!」
「リル!」
「走ってかわせ!」
「カブ!」
無数の紫色の塊が発射されるも、速さが二段階も上がったポカブには擦りもせず、全て回避される。
「当たらな……!」
「かみつく!」
「プルリル、まも――」
「カブーーーッ!」
「リルーーーッ!」
三度、攻撃を防ごうとしたプルリルだが、ポカブのあまりの速度に技の発動が間に合わず、強く噛み付かれてダメージを受ける。
「ひのこ!」
ポカブは口を離すと、火の粉を近距離で命中させる。効果今一つとは言え、確かなダメージに仰け反るプルリル。
「ニトロチャージ!」
更に超高速の炎の突撃を受け、プルリルは地面に落ちて転がされる。
「追い込むぞ、かみつく!」
「プルリル、みずのはどう!」
「カブーーーッ!!」
「プルゥーーーッ!!」
水の塊で反撃しようを試みるシューティーだが、その前にプルリルはかみつかれ、怯んでしまう。
「放り投げろ、ポカブ!」
「カブ!」
「プルーーーッ!」
ぐるんぐるんとポカブは回り、遠心力を付けてプルリルを放り投げる。
「止めだ! ひのこ!」
「ポー……カー……ブーーーーーッ!!」
「リルーーーッ!!」
放り投げられ、隙だらけとなったプルリルにポカブは火の粉を放つ。直撃し、爆発を起こすと煙からプルリルが地面に落下した。
「プルリル!」
「リ……ル……」
ピクピクと、プルリルは揺れていた。戦闘不能になったのは火を見るより明らかだ。
「プルリル、戦闘不能! ポカブの勝ち!」
「よし、二体目!」
「カブカブゥ!」
「また勝っちゃった……」
しかも、体力の消費以外は無傷で相性不利なプルリルを倒している。
「これはサトシの戦術も有るけど、シューティーのミスもあるね」
「どういう事?」
「サトシはたいあたりを敢えて使うことで、有効打であるかみつくや、未完成だけど、二度に一度は速さが上がるニトロチャージを封じられるのを避けた」
デントはサトシは効果抜群のかみつくがあるから、ポカブを出したと考えていた。のろわれボディも含めてまでは流石に予想外だったが。
「そうよね。その内のどっちかが無かったら、プルリルには勝てなかったかも……」
効果抜群のかみつく。速度上昇のニトロチャージ。この内のどちらかが無ければ、攻めきれなかったかもしれない。
「そして、シューティーのミスは、まもるに頼りすぎていたことだ。まもるは強力な技だけど、連続では使えない、またその効果故に後手に回ってしまう恐れがある」
「言われて見れば、終始サトシとポカブのペースだったわね……」
ニトロチャージで加速したのを切欠に、ポカブは速さでプルリルを圧倒していた。
「あのプルリルはよく鍛えられていた。かみつくを受けてでも、肉を切らせて骨を断つようにみずのはどうを当ててれば、一気に勝機に持ち込めただろう」
「なるほどね~」
デントの言う通り、プルリルは二度のかみつくを受けながらも倒れなかった。喰らうのを承知の上で、みずのはどうをカウンターで当てることも可能だったろう。
「……すまない、プルリル」
自分の戦術ミスは、シューティーも理解しており、謝りながらプルリルをモンスターボールに仕舞う。
「これで五対三だな」
「あぁ」
ハトーボーもプルリルも、マメパトやポカブ達よりも能力は上だった。しかし、二匹共負けた。サトシのトレーナー能力の高さ、また自身の低さゆえに。
自分の未熟さに不甲斐なさを感じるも、自分には目指すべき目標がある。それに辿り着く為にも、ここで引くわけには行かない。
「僕の三匹目だ。行け、ヒトモシ!」
シューティーが出した三匹目は、火が付いた蝋燭の形をした少し愛嬌のあるポケモンだ。
『ヒトモシ。蝋燭ポケモン。ヒトモシの灯す明かりは、人やポケモンの生命力を吸いとって燃えているのだ』
さっきのプルリルもそうだが、このヒトモシも説明が怖いと、サトシは思わず感じてしまった。
「炎タイプか」
「それだけじゃない。プルリルと同じ様に、このポケモンもゴーストタイプを持ってる」
つまり、ゴーストと炎の複合タイプのポケモンという事だ。さっき同様、かみつくが有効だろう。
(ただ……)
その事はシューティーも理解しているはず。なのに、このヒトモシを出した。何かあるとサトシは推測する。
「ポカブ、先手必勝! かみつく!」
「ポカーーーッ!」
「ヒトモシ、くろいきり!」
「モシーーー!」
「カブ!?」
高速で迫るポカブだが、ヒトモシが灯火から黒色の霧を吐き出し、動きが鈍る。
「くろいきり! 確か、すべての能力の変化を元に戻す技!」
「そう、これでポカブの上がった速さは元に戻る! ヒトモシ、シャドーボール!」
「トモーーーッ!」
「ポカブ、かわせ!」
「カブーーーッ!」
ヒトモシが黒色の霊の力が込められた球を発射。かわそうとしたポカブだが、さっきまでの速さを失ったことによる動作の鈍りにより、直撃する。
「カブー……!」
「大丈夫か、ポカブ?」
「カブ!」
かなり痛いが、頭をぶんぶんと振って払うポカブ。まだまだ行けるようだ。
「よし、ひのこだ!」
「カブーーーッ!」
シャドーボール、くろいきり以外の技を見たい、また出方も見るため、様子見にひのこを指示。ポカブは火の粉を発射する。
「――何っ!?」
迫る火の粉にかわすか、技で迎撃するか。そのどちらかかと思いきや、ヒトモシは動かない。シューティーも指示を出さない。
そのまま、ひのこはヒトモシに直撃。爆発を起こし、効果は今一つでもダメージを与える、と思いきや。
「モシ~」
「無傷!?」
「いや、それだけじゃない。灯火が激しく燃えてる。これは……」
「『もらいび』か!」
炎タイプの技を吸収、更に自分の炎を高める特性だ。
「なるほどな、これを狙ってたんだな。シューティー」
大ダメージのリスクを背負ってまで、ヒトモシにしたのはこの特性の発動を狙っていたからだと理解した。
「これぐらいしないと、勝てないと思ったからね。ヒトモシ、ほのおのうず!」
「モシーーーッ!」
灯火から、自分の周りに広範囲に炎を撒き散らすヒトモシ。それを動いてかわすポカブだが、しかし、少し擦ってダメージを受ける。
「――戻れ、ポカブ!」
不利を悟り、サトシはポカブを戻す。炎技が通用せず、たいあたりもそもそも効きはしないが使えない。かみつくだけは不利過ぎる。
「三体目、それかマメパトかな?」
「いや、こいつだ! ミジュマル、君に決めた!」
「ミジュ!」
サトシの三番手として出したのは、水タイプのミジュマルだった。
「ミジュ?」
ミジュマルはシューティーを見ると、あれと首を傾げる。
「そのミジュマルは……アララギ研究所の?」
「正解! 色々あって、一緒にいるんだ」
「ミジュジュ!」
えっへんと、ミジュマルは腕を組んでドヤ顔を浮かべる。
「水タイプ。こっちの方が不利だけど……」
ヒトモシの炎は、もらいびでパワーアップしている。折角の力を戻すよりは、ここは力で押すべき。シューティーはそう判断し、ヒトモシでのバトルを続行した。
二人のバトル。サトシはまだ一匹も倒されておらず、五匹のまま。シューティーは二匹倒され、残り三匹。