ポケットモンスター アナザーベストウイッシュ   作:ぐーたら提督

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 この話も、ある技の設定を変えてます。


シッポウジム、サトシVSアロエ

「目が覚めた!」

 

「ピッカ!」

 

 シューティーのジム戦の翌日。バトルのせいか、早く起きたサトシはバックを持つと、中にあるタマゴの検査をしてもらおうとポケモンセンターのロビーに向かう。

 

「今日も早起きね」

 

「ジム戦だからかな」

 

 途中、アイリスとデントに会う。

 

「あぁ、今日は頑張るぜ!」

 

「頑張りなさいよ」

 

「応援してるよ」

 

「ありがと、二人とも」

 

 二人の応援に、サトシはやる気が出てきた。

 

「と、その前に検査と」

 

 だが、その前にタマゴの検査が優先せねばならない。三人で歩くサトシ達。

 

「お早う、サトシくん。アイリスくん。デントくん」

 

「お早うございます」

 

 サトシ達がロビーに到着するとそこには、先客がいた。Nだ。どうやら先に検査をしていたらしい。

 

「はい、Nさん。お預かりしたタマゴの診断終わりました。至って順調です」

 

「ありがとうございます」

 

 その報告を聞くと、Nはポケモンのタマゴを丁寧に抱える。

 

「次、お願いします」

 

「はい、任せてください」

 

 昨日と同じく、サトシはポケモンのタマゴをジョーイに預けた。ジョーイはタマゴを丁寧に運びながら、検査の為の機材がある部屋へと向かう。

 

「サトシくん、昨日はジム戦どうだった?」

 

 それまで他愛のない話でもしようかと、Nはサトシに結果を尋ねる。

 

「いえ、実は今日からなんです」

 

「昨日挑んでなかったのかい?」

 

 てっきり、昨日挑戦したのかと思っていたN。とはいえ、彼は博物館の騒動に関わってないため、無理もないが。

 

「はい、昨日はシューティーが」

 

「彼か。結果は?」

 

「それは――」

 

「負けました」

 

「シューティー?」

 

 自分の結果ではない上、負けを言って良いものかと悩むサトシだったが、そこにいつの間にかいたシューティーが敗けだと語る。

 

「僕の完敗でした」

 

「次、頑張って」

 

「そのつもりです」

 

 このままでいるつもりは全く無い。しっかりと鍛え、リベンジをすると心に誓っていた。

 

「ところで、Nさん。そのタマゴやゾロアを写真に撮っても良いですか?」

 

「――どうしてだい?」

 

 その提案を出した瞬間、Nからただならぬ雰囲気が漂い出したのを、シューティーだけでなく、サトシ達も感じ取っていた。

 

「あっ、いえ……。僕は旅の記録をカメラで撮影しているんです。ですから……」

 

「……あぁ、なるほどね」

 

 早とちりかと、Nは自分に呆れていた。

 

「構わないよ。ただ、ゾロアはどうだい?」

 

「ゾーロ」

 

「ごめん、嫌らしい」

 

「なら、タマゴだけでも」

 

「どうぞ」

 

 許可を貰ったので、シューティーは一旦深呼吸してからNが持ってるタマゴの写真を撮る。その後、礼を告げた。

 

「サトシ、今日は君の番だね」

 

「あぁ、勝ってバッジゲット――なんだけどなー」

 

「何かあるのかい?」

 

「今回もピカチュウの調子が悪くて……」

 

「ピカ一……」

 

「あ~、それはキツいわね……」

 

 今回もまた、ピカチュウの調子が悪いのだ。サンヨウジム戦よりは良いが、出したくはない。

 

「なら、他の子達になるね」

 

「えぇ」

 

 問題は誰にするかだ。モンスターボールのスイッチを押し、残りの四匹を出す。

 

「ミジュ!」

 

「ポー!」

 

「カブ!」

 

「タジャ」

 

 サトシは四匹を見ながら誰にするか考える。この中にノーマルタイプに有効な技を持っているポケモンはいない。となると、純粋な実力で考えるべきだ。

 

「先ずはツタージャかな」

 

「タジャ」

 

 何時でも構わないわと、ツタージャは静かに頷く。

 

「ミ、ミジュミジュ!」

 

「ポーポー!」

 

「カブカブ!」

 

 しかし、そこに三匹が自分達にして欲しいと強く訴える。前のオノノクス戦で戦えなかった分、ここで頑張ってサトシの勝利、バッジゲットに貢献したいのだ。

 

「好かれてるね」

 

「ま、まぁ……」

 

 こうも必死に訴えられると、サトシとしても悩む。ツタージャを見ると、あたしじゃなくても良いわよと呟いていた。

 

(どうするかなー)

 

 三匹の新技、アクアジェットやつばめがえし、ニトロチャージはほぼ完成。つまり、完全な完成では無いのだが、実戦レベルには達している。ここは大差はない。となると。

 

「……よし、今日はミジュマルとポカブにする!」

 

「ミジュ!」

 

「カブ!」

 

「ポー!?」

 

 やったとミジュマルとポカブが喜ぶが、マメパトは選ばれなくて落ち込んでいた。

 

「次には出すから。今日は我慢してくれ、なっ?」

 

「……ポー」

 

 コクンと頷くマメパト。選ばれるのは二匹までだし、仕方ないと受け入れたのだ。

 

「サトシ、どうしてこの二匹に?」

 

「ミジュマルはシェルブレードで相手の防御力を下げれる。ポカブはニトロチャージで自分の速度を上げれる。それに、二匹ともピンチには特性でパワーアップするからな」

 

「げきりゅうともうか」

 

「はい」

 

 マメパトもダメージを引き上げれるきょううんがあるが、あれは運の要素が少なからずある。

 それにマメパトには自分か相手の能力を変化させる技がない。と言う訳で、今回は外れてもらうことになったのだ。

 

「……ポーポー」

 

「ミージュ!」

 

「ポカ!」

 

 頑張ってと応援するマメパトに、ミジュマルとポカブは強く頷く。

 

「サトシさーん、タマゴの検査終わりましたよー」

 

 話しているとジョーイの声が響く。丁度検査が終わった様だ。

 

「昨日と同じく、順調ですよ」

 

「ありがとうございます。じゃあ、行こうぜ、皆」

 

「今日はボクも同行させてもらって良いかい?」

 

「構いませんよ」

 

 アロエは昨日、自分達の観戦を許可した。Nが入っても問題は無いだろう。

 昨日よりも一人増えた五人で、サトシ達はシッポウジムへ向かった。

 

 

 

 

 

「来たね、サトシ」

 

 シッポウジムがある博物館前。待っていたアロエがサトシを出迎える。

 

「はい、今日は挑戦しに来ました! バッジゲットのために!」

 

「良い気迫だよ。ところで、そこの坊やは昨日いなかったね?」

 

「えぇ、昨日はタマゴの検査があったので。今日は観戦させてもらいます」

 

「構わないよ。ただ、一つ質問には応えてもらおうよ」

 

「分かりました」

 

 その質問が何なのか、サトシ達には直ぐに分かった。

 

「じゃあ、入りな」

 

 アロエは昨日と同じく、博物館のジムに繋がる車庫に向かう

 

「あれ、アロエさん。何か騒がしくないですか?」

 

 昨日来たときよりも、館内が騒がしい。それも客が原因ではなく、警備員や職員が慌ただしく動いていた。

 

「あー、それかい。大きな声では言えないんだけど、実は昨日の夜、侵入者がいたのさ。それも、あのロケット団の仕業らしい」

 

「あいつらが!?」

 

「やっぱり知ってるかい」

 

「えぇ……」

 

 ただ、サトシの知ってるは最早知人レベルなのだが。

 

「で、盗まれた物が無いか調査中でね」

 

「あの、じゃあジム戦は明日に――」

 

 そんな大変な時にジムを挑むつもりはない。今日ではなく、明日にとサトシは提案しようとした。

 

「ここの職員は優秀だし、ジム戦の間にほとんど終わってるさ。だから、予定通りアンタとの試合は行うよ」

 

「ありがとうございます」

 

「じゃあ、行こうか」

 

 話も終わり、昨日と同じく書庫に到着したサトシ達。アロエはそこでNに質問をする。

 

「えーっと、アンタは……」

 

「Nです」

 

「変わった名前だねえ。まぁ、それはともかく。ポケモンバトルには知識が大切なのは分かるかい?」

 

「はい」

 

「この本はどうだい?」

 

 昨日同様、ジムへの道に続く為の本を叩くアロエ。この後どうするかで、Nを知ろうとしているのだ。

 

「では、その本を」

 

 Nは迷うことなくその本を取ろうとする。すると、本棚が動いてジムへの道が開いた。

 

「……こりゃ、驚いたね」

 

 それは本棚が動いたのを見たNや、シューティー達もである。

 

「まさか、そのまま取るとはね」

 

「この挑戦者は、純粋な様ですね」

 

「……どういう事だい?」

 

 事態が今一掴めないNは、サトシ達に説明を求めた。

 

「実は、この後の行動でNさんを見極めようとしたんです」

 

「なるほど……」

 

 その意図を聞いて、Nは納得したようだ。そして、それをこのタイミングにしたのは、観戦する以上はこのギミックを見るため、出来るのが今だけだからだろう。

 

「アロエさん、貴女の目から見たボクはどうですか?」

 

「純粋、ピュアだね。良くも悪くも、人の言動を素直に受け止めれる。それだけに、アンタとの試合は面白そうだ」

 

 おそらく、純粋故に、今までとは違うポケモンの力の引き出し方があるはず。それが楽しみだ。

 

「とはいえ、今日はサトシ。一直線なアンタがどんなバトルをするか、楽しみだよ」

 

「じっくり研究してください」

 

 サトシ達はバトルフィールドに移動。サトシとアロエはお互いの立ち位置に立つ。

 

「さて、今日のあたしの手持ちを見せておくよ。出てきな、ミルホッグ、ハーデリア!」

 

「ホッグ!」

 

「デリア!」

 

「あのポケモン……」

 

 片方は昨日と同じミルホッグ。もう片方は見た事がないポケモンだった。

 

『ハーデリア、忠犬ポケモン。ヨーテリーの進化系。マントの様に身体を覆う黒い体毛はとても堅く、受けたダメージを減らしてくれる』

 

「昨日とは違う……いや、昨日のヨーテリーが進化した?」

 

「正解。このハーデリアは昨日のヨーテリーが進化したのさ。ちなみに、先発はこの子だよ」

 

 シューティーの呟きに、アロエが正解と、また先発はこのハーデリアだと告げる。その証拠にアロエはミルホッグをボールに戻した。

 

「と言う事は、昨日よりも強いって事!?」

 

「みたいだね。ミルホッグもだけど、深さが増したハーデリアをどう攻略するか……それがこのバトルのポイントになる」

 

 このバトルも、厳しいものになりそうだとデントは理解していた。

 

「では、これよりジムリーダー、アロエとチャレンジャー、サトシのジム戦を始めます。使用ポケモンは二体。交代は自由。どちらかの手持ち全てが戦闘不能になった時点で試合終了です。――始め!」

 

「ポカブ、君に決めた!」

 

「行きな、ハーデリア!」

 

「カブ!」

 

「ハー!」

 

 二匹は互いを見ると、戦意が込もった強い眼差しで睨む。

 

「最初から飛ばすぞ! ポカブ、ニトロチャージ!」

 

「カブカブカブ……!」

 

「ほう、ニトロチャージ」

 

 ニトロチャージを見て、アロエが不敵な笑みを浮かべるのを、デント達は見ていた。

 

「カーブーーーーッ!」

 

「かわしな、ハーデリア」

 

「リアッ!」

 

「速い!」

 

 今のポカブの速さを上回っている。一度のニトロチャージでは追い付けないだろう。

 

「ハーデリア、めざめるパワー!」

 

「昨日と違う技!」

 

 ハーデリアは黄緑の球体を六つ展開し、ポカブに向けて放つ。

 

「ポカブ、かわせ!」

 

「カブ! カブカブ!」

 

「中々の身のこなしだね。なら、次はこれさ。かみくだく!」

 

「ハー!」

 

 ハーデリアは口を開きながら、ポカブへと迫る。

 

「ポカブ、ひのこ! 薙ぎ払え!」

 

「カブー!」

 

 右から左へと横薙ぎにひのこを放つポカブ。しかし、ハーデリアは素早い身のこなしでジャンプしてかわすと硬直後のポカブの腹に強く噛み付いた。

 

「デリア!」

 

「カブーッ!」

 

「耐えろ、ポカブ! ひのこだ!」

 

「ポカ! カブーーーッ!」

 

「リアッ!」

 

 噛み付いた状態故に、ポカブと密着していたハーデリアの身体にひのこが炸裂。かみくだくから解放されるが。

 

「ハーデ」

 

「あんまり効いてない……」

 

 ハーデリアは身体をぶんぶんと振った態度を見せる。しかし、大して効いた風には見えない。

 そう言えばと、サトシはさっきの図鑑の説明を思い出した。ハーデリアの黒い体毛は堅く、ダメージを減らせると。

 

(となると、狙うは身体以外か)

 

 それか、防御力を下げれるミジュマルに交代するか。しかし、ポカブはまだまだやる気十分。それにハーデリアはかなり速い。

 ミジュマルが追い付くには、常にアクアジェットを使わねば難しい。となると、もう少しダメージを与えて動きを鈍らせてからが良い。

 

「ポカブ! ニトロチャージ!」

 

 更にスピードを上げ、その速さを活かして少しずつハーデリアの体力を削る。それがサトシの選択だった。

 ポカブの身体から炎が噴き出し、身体を覆うとポカブの急加速。ハーデリア目掛けて突撃する。

 

「ハーデリア、避けな!」

 

「ハー!」

 

「ポカブ、更にニトロチャージ!」

 

「カブカブカブ……カーブーーーーッ!」

 

 また回避されるも、サトシもそれぐらい承知の上。三度目のニトロチャージを放ち、スピードをまた上昇させる。その速さはかなりのもので、ハーデリアも遂に直撃する。

 

「めざめるパワー!」

 

「避けろ! そして、かみつく!」

 

「カブーーーッ!」

 

「デリ……!」

 

 エネルギー弾をかわすと、素早くハーデリアに近付き噛み付く。

 

「更にひのこ!」

 

「ポカーーーッ!」

 

 そして、かみついた状態からひのこの連続攻撃。ダメージを少しずつ重ねていく。

 

「これは速いね! なら、一旦交代と行こうか! ミルホッグ!」

 

「ホッグ!」

 

 頃合いと判断したアロエは、ハーデリアからミルホッグに交代する。

 

「交代しても、この速さには追い付けませんよ! ニトロチャージ!」

 

「カブカブカブカブ……カーブーーーーッ!!」

 

「ミルホッグ――じこあんじ!」

 

「ホッグ!」

 

 ミルホッグの目が光る。すると、身体に光が溢れ、迫るポカブの炎の突撃を――高速でかわした。

 

「な、なにっ!?」

 

「何あの速さ! 無茶苦茶速い!」

 

 何度もスピードアップしたポカブと同等の速さだった。昨日はあれほどでは無かったはず。

 

(こわいかおを受けてたから、これが本来の速さ?)

 

 いや、それにしてもこれは速すぎる。まるで、こうそくいどうしたピカチュウの様だ。

 

「……だったら、更に速くするだけだ! ニトロチャージ!」

 

「カーブーーーーッ!」

 

 あのスピードは不可解だが、ニトロチャージで速度を上げれば良いだけ。サトシはそう考え、ニトロチャージを指示する。

 

「甘いよ! ミルホッグ、じこあんじ!」

 

「ホッグ!」

 

 更に速くなるポカブだが、ミルホッグもまた速くなった。

 

「くそっ、あのじこあんじって技、速くなる効果があるのか!?」

 

「違うよ、サトシ。じこあんじは速くなる技じゃない。相手の変化した能力を自分にも適用させる技さ」

 

「適用……?」

 

「サトシ! 簡単に言えば、相手のポケモンが速くなってる時に使えば自分もそれと同じだけ速くなる技なんだ!」

 

「な、なんだって!」

 

 アロエの説明だけではよく分からなかったが、デントの補足に驚愕する。つまり、ニトロチャージで速度を上げようが、じこあんじを使われればあっちも上がってしまう。

 

「じこあんじ……。まさか、あんな技まで使いこなすなんて……」

 

「見事だね……。相当な力量だ」

 

「えっ、どういう事? 聞いてる話の限りじゃあ、凄く便利な技のような……」

 

 アイリスが認識してるのは、上がった能力をコピーすると言う点。これだけを聞くと、五分の状態に持ち込む便利な技に見える。

 

「いや、じこあんじは相手の変化した能力をコピーする。つまり、相手の能力が下がった時に使うと、自分もその能力が低下してしまうんだ」

 

「使いどころを間違えると、不利になってしまう、かなり癖のある技なんだよ」

 

「な、何その使いづらい技……!」

 

「うん、だからこそアロエさんの力量の高さが窺えるんだ」

 

 癖のある技を、最適なタイミングで使用するその力量。やはり、彼女は相当強い。

 

「さぁ、どうする? またニトロチャージで速くなるかい? けど、そろそろ頭打ちだろう」

 

「くっ……!」

 

 アロエの読み通り、ニトロチャージによるスピードアップは後一度だけ。それ以上は不可能だ。

 

「ふふ、迷ってるね。だけど、こっちは更に手を打たせてもらうよ。ミルホッグ、バトンタッチ!」

 

「ホッグ!」

 

「えっ、戻った!?」

 

「いや、違う! これは……!」

 

 このタイミングでミルホッグが引っ込み、ハーデリアが出てくる。

 

「ハーデリア、かみくだく!」

 

「――リアッ!」

 

「カブーーーッ!」

 

「は、速い!」

 

 また出てきたハーデリアの速さは、先程のミルホッグと同等、いやそれ以上だった。

 

「な、なんでハーデリアまであんなに速いの!? 速くなったのはミルホッグでしょ!?」

 

「バトンタッチは、変化した能力を味方に引き継ぐ技なんだ。つまり……!」

 

「今のハーデリアは、高速状態なんだよ」

 

「そ、そんな!」

 

 唯一、勝っていたスピードすら上回れてしまったと言うことに他ならない。ハーデリアはそのスピードで素早く接近し、ポカブに噛み付いた。

 

「ポカブ、ひのこ!」

 

「口を開けて下がりな! そして、ふるいたてる!」

 

「ハー……!」

 

「ここでふるいたてる!?」

 

「能力を更に上げてる……!」

 

 スピードだけでなく、パワーすらもハーデリアは上昇してしまった。これは明らかに不味い。

 

「めざめるパワー!」

 

「ハー!」

 

「避けろ、ポカブ!」

 

「カブ!」

 

 先程よりも一回り大きくなったエネルギー弾を放つハーデリア。それを速くなったスピードでかわすポカブ。しかし、誘導されている。

 

(不味い、食らう!)

 

 ならば、少しでも相殺するしかない。

 

「ポカブ、たいあたり!」

 

「ハーデリア――とっておき!」

 

「ハー……デリーーーーーッ!!」

 

「カブーーーッ!!」

 

 少しでも軽減しようとしたポカブだが、ハーデリアの凄まじい技の威力に容易く吹き飛ばされ、そのままゴロンと転がる。

 

「ポカブ!」

 

「カ……ブ……」

 

 その状態は完全にひんしであり、ポカブが倒された事を意味していた。

 

「ポカブ、戦闘不能! ハーデリアの勝ち!」

 

「ポカブ……やられちゃった……」

 

「キバ……」

 

 ポカブの初敗北に、アイリスとキバゴは唖然とする。

 

「まさか、とっておきまであるなんて……!」

 

 他の三つの技を使用しなければ使えず、また使用の度にサイクルを必要とする技、とっておき。しかし、その分威力は絶大。あのギガインパクトに迫るほど。

 そんな技がふるいたてるでパワーアップした状態で使われたのだ。一堪りも無いだろう。

 

「ミルホッグがニトロチャージのスピードアップをコピーし、ハーデリアにバトンタッチ。更にふるいたてるで力が高まったところをとっておき……」

 

「これほどとは……」

 

 これほどの戦術を駆使するアロエに、シューティーは勿論、デントやNも少なからずの冷や汗を流していた。

 

「……ポカブ、お疲れさま。戻って休んでくれ」

 

 サトシはポカブをモンスターボールに戻す。

 

「さぁ、あと一体。何で来るんだい?」

 

「ミジュマル、君に決めた!」

 

「ミジュ!」

 

 サトシは選んだもう一体、ミジュマルを繰り出す。

 

「それがもう一体。けど、今のハーデリアに敵うかい?」

 

「……」

 

「無理よ……!」

 

 サトシは言葉に詰まり、アイリスは思わずそう言ってしまう。

 今のハーデリアは速さがとてつもなく上がり、更にパワーまで強化されてる。これではアイリスが勝ち目がないと思ってしまうのも無理はない。

 

「――行きます、アロエさん!」

 

「来な、サトシ! ハーデリア、めざめるパワー!」

 

「デリア!」

 

「ミジュマル、アクアジェット!」

 

「ミジュマーーーッ!」

 

 エネルギー弾をミジュマルはアクアジェットでかわしながら、迫る。

 

「かわしな、ハーデリア! ふるいたてる!」

 

「ハー……!」

 

「ミジュマル、みずてっぽう!」

 

「回避! そこからかみくだく!」

 

 ふるいたてるで己を高揚させる隙にミジュマルは水鉄砲を放つも、ハーデリアは超スピードで軽々かわし、反撃に転ずる。

 

「アクアジェット! 右から左!」

 

「避けな! そして――とっておき!」

 

 かみくだくをミジュマルはアクアジェットで回避しながら反撃。ハーデリアはそれを移動で避けると、ポカブを仕留めた大技、とっておきを放つ。

 

「ミジュマル――地面に向かってみずてっぽう!」

 

「ミジュ!」

 

「ッ! ハーデリア、止まりな!」

 

「ハー……! デリアッ!」

 

 みずてっぽうで水溜まりが出来たのを見て、急いで停止を指示したアロエだが、超高速故にブレーキが間に合わず、足が滑ってしまう。

 

「ミジュマル、シェルブレード!」

 

「ミジュー……マァアアァ!」

 

「デリッ!」

 

「更にアクアジェット!」

 

「ミジューーーッ!」

 

 シェルブレードで吹き飛び、更に防御が低下した所に追撃のアクアジェット。二連撃にハーデリアもかなりのダメージを受ける。

 

「やるね……! スピードをそんな風に対処するとは……!」

 

「うん、これでこそサトシだ!」

 

「えぇ、流石です」

 

 不利な事態にも拘わらず、ポケモンの力を引き出して戦える。この力量こそ、サトシが歴戦の強者足る証。

 

「だけど、同じ手は二度も食らわない。こっからはどうする気だい?」

 

「こうします! みずてっぽう、フィールドにばらまけ!」

 

「ミジュ! ミジューッ!」

 

 動きを封じるべく、サトシとミジュマルはフィールドを水で濡らしていく。

 

「フィールドを水浸しに……! ハーデリア、めざめるパワー!」

 

「デリッ!」

 

「やっぱり、そう来ましたか! アクアジェット!」

 

「ミジュマーーーッ!」

 

 読み通りの技に、こちらも素早くアクアジェットを指示。ミジュマルは水を纏い、高速で進む。

 

「濡れてない場所に逃げな!」

 

「ハー!」

 

「そこでふるいたてる!」

 

「右に動け!」

 

「ミジュマアッ!」

 

「デリア……!」

 

「耐えな、ハーデリア! かみくだく!」

 

 水がない場所でパワーアップ中のハーデリアに、ミジュマルはアクアジェットを叩き込む。

 ハーデリアは足に力を込めてグッと踏ん張ると、反撃に転じてかみくだくを放ち、突撃技ゆえに間近にいるミジュマルを捉え、噛み付く。

 

「デリィ!」

 

「ミジュッ!」

 

「ミジュマル!」

 

 ハーデリアは高まった力で強く噛み付きながら、ぶんぶんと振り回す。

 

「地面に叩き付けな! そして、とっておき!」

 

「ミジュマル、みずてっぽう! 顔を狙え!」

 

「ミジュ! マーーーッ!」

 

 無防備な所に切札であるとっておきが迫るも、ミジュマルはみずてっぽうを放つ。

 しかし、威力の低いみずてっぽうでは、顔を狙っても今のハーデリアは押し退けれない。と思いきや、次の瞬間、水の量と勢いが急激に増した。

 

「――げきりゅう!」

 

 ミジュマルの特性、げきりゅう。ふるいたてるで大幅に強化されたかみくだくにより、発動したのだ。

 

「押し切れ、ミジュマル!」

 

「ミジュー……マーーーッ!!」

 

 水の勢いと量が更に増した。その勢いに強化状態のハーデリアも流石に吹き飛ぶ。

 しかも、その際にハーデリアは激突時に飛び散った大量の水に足を取られ、体勢が崩れた。

 

「シェルブレード!」

 

「ミジュー……マアァアァァアッ!!」

 

 

 隙が出たその一瞬を狙い、圧縮された水刃が振るわれる。ザシュと、鈍い音がし――ハーデリアは倒れた。

 

「ハーデリア、戦闘不能! ミジュマルの勝ち!」

 

「あのハーデリアを倒した!」

 

「これで数の上では五分だけど……」

 

 ミジュマルは既にかなり消耗している。一方、ミルホッグはまだ無傷。サトシが圧倒的に不利だ。

 

「ごくろうさん、ハーデリア。大したもんだねえ、サトシ、ミジュマル。まさか、あの状態のハーデリアを倒すなんて」

 

 正直な話、アロエはバトンタッチでハーデリアを強化した時点で勝利を確信していた。それだけにハーデリアが倒されたのは意外だった。

 

「俺達は簡単に負けないという事です!」

 

「ミジュ!」

 

「良いねえ。ピンチながらまだ諦めないその気迫と粘り強さ。だけど、ミジュマルはかなり消耗してる。どこまで足掻けるかね? ――さぁ、ミルホッグ、再び行きな!」

 

「ホッグ!」

 

「後一体!」

 

「ミジュ!」

 

 身体は痛いし、重いがまだ動ける。ミジュマルはホタチを構え、ミルホッグを睨む。

 

「ミルホッグ、かみなりパンチ! 地面に打ちな!」

 

「ミル!」

 

 ミルホッグは雷撃の力を込めた拳を、地面に向けて放つ。

 

「えっ、地面に!? 何で!?」

 

「しまった! ミジュマル、ジャンプ――」

 

「遅い!」

 

 アイリスやデント達も、アロエの指示に戸惑う中、サトシはいち早く気付いた。しかし、手遅れ。

 ミルホッグの拳がフィールドに触れると、付加した雷撃が至るところにある水によって広がり、ミジュマルへと到達。軽くも、今の彼にはキツいダメージを与えた。

 

「ミジュマーーーッ!」

 

「ミジュマルが撒いた水を利用して、雷撃を……!」

 

「ミルホッグ、10まんボルト!」

 

「ミルホッグーーーッ!」

 

「ホタチで上に弾くんだ!」

 

「ミ……ジュ!」

 

 痛み、重い身体を動かし、ミジュマルは雷撃をホタチで辛うじて弾く。

 

「ほう、ホタチでガード。面白いね。なら、これさ。ミルホッグ、もう一度かみなりパンチを地面に!」

 

「ホッグゥ!」

 

「ミジュマル、アクアジェット! 上に飛べ!」

 

「ミジュ……マァ!」

 

 一瞬の間は有ったものの、今度は回避するミジュマル。

 

「そこさ! ミルホッグ、10まんボルト!」

 

「ホッグーーーッ!」

 

「ミジュマル、右に!」

 

「ミジュ――マッ!」

 

 しかし、それを狙い、ミルホッグの雷撃が発射される。咄嗟に回避の指示は出したサトシだが、間に合わず擦ってミジュマルは軽いダメージを受ける。

 しかも、その際にアクアジェットが解除されてしまい、落下してしまう。

 

「決めな、ミルホッグ! かみなりパンチ!」

 

「ミジュマル、アクア――」

 

「ミルホ……ッグーーーーーッ!!」

 

「ミジュマーーーッ!!」

 

「ミジュマル!」

 

 再びアクアジェットを使い、避けようとしたサトシとミジュマルだったが、ミルホッグの方が早かった。

 ミジュマルはミルホッグにかみなりパンチを叩き込まれ、地面に落下すると倒れてしまう。

 

「ミ、ジュ……マ……」

 

「ミジュマル、戦闘不能! ミルホッグの勝ち! そして、チャレンジャーの手持ち全てが戦闘不能になったため――勝者、ジムリーダー、アロエ!」

 

「サトシが……負け、た……?」

 

 その事実に、シューティーは呆然とする。アイリスやデント、Nも少なからずの衝撃を受けていた。

 

「戻りな、ミルホッグ。ごくろうさん」

 

「……戻れ、ミジュマル。……ごめんな」

 

 勝たせてやることが出来ず、サトシはミジュマルとポカブに謝る。

 

「楽しめたよ、サトシ」

 

「……アロエさん」

 

「アンタの能力は見事だった。文句の付けようがない。ただ、惜しむらくは――まぁ、これは言わなくても分かってるかね」

 

「……それでも、俺がこいつらの力を引き出せなかったからです」

 

 アロエが何を言おうとしたのかは、大体分かっている。しかし、それでもサトシは自分のせいだと告げた。

 

「間違っちゃあいないね。シューティーと同じく、再度の挑戦、楽しみにしてるよ」

 

「……ありがとうございました」

 

 サトシは二匹を回復させようと、ポケモンセンターに向かう。シューティーやN、アイリスやデントもサトシの後に続いた。

 

 

 

 

 

「はーい、お預かりのポケモン達は皆元気になりましたよー」

 

「ありがとうございます」

 

 昼、サトシはポケモンセンターでミジュマルとポカブを回復させてもらうと、ロビーの一ヶ所で二匹を出す。

 

「ミジュ……」

 

「カブ……」

 

「ごめんな、俺が不甲斐ないばかりに……」

 

 出てきた二匹は落ち込んでおり、サトシは再度自分のせいだと言う。

 

「いや、それは違う」

 

「シューティー……」

 

 そこに、シューティーが指摘する。

 

「今回のジム戦の結果、明らかにミジュマルとポカブの力不足が原因だ」

 

「ちょっと、何言ってんのよ!」

 

「シューティー、俺の仲間を悪く言うのは許さないぞ」

 

 サトシが強く睨む。一瞬圧されたシューティーだが、強い眼差しで返す。

 

「僕は事実を言ってるだけだ。それは、ミジュマルとポカブが一番理解出来ているんじゃないか?」

 

「……ミジュ」

 

「……カブ」

 

 二匹は頷く。今回の敗因は自分達だと理解していた。

 

「……そうだね。僕もシューティーに同意見だ」

 

「デント……」

 

 サトシには悪いが、デントもシューティーと同じ意見だった。

 マメパト、ミジュマル、ポカブはサトシの指示もあり、確かに勝ってきた。

 しかし、それは三匹の強さと言うよりも、サトシの強さ。その印象がどうにも強い。

 例えば、自分や兄弟が勤めるサンヨウジム戦でも、ミジュマルはげきりゅう、マメパトはきょううん、ポカブはもうかの力があって何とか勝てた。

 しかし、逆に言うとその特性が無ければ三匹は自分達に勝てなかった事に他ならない。純粋な実力、それそのものが三匹には足りていないのだ。

 勿論、サトシも特訓やバトルをするなどの手は尽くしており、最近やっと次の段階には行ける様になったなど、時間的に仕方ない面はある。

 しかし、現に今のミジュマルとポカブは負けた。厳しいことにそれが現状なのである。

 

「サトシ、君のミジュマルとポカブを思う気持ちは立派だ。だけど、それは今の彼等にとっては甘えになってしまうんじゃないか?」

 

「ミジュマル、ポカブ……」

 

「ミジュ!」

 

「カブ!」

 

 サトシは二匹を見る。その瞳には、強くなって今度こそ勝つと言う意志に満ち溢れていた。

 

「――分かった、強くなろうぜ!」

 

「ミジュジュ!」

 

「ポカポカ!」

 

 ミジュマルとポカブは、サトシの言葉に強く頷いた。

 

「それで……サトシくんはこれからどうするんだい?」

 

「特訓、あるのみです!」

 

 それ以外に、強くなる方法はない。

 

「ならサトシ、バトルクラブに行こう」

 

「バトルクラブ? バトルをして経験を積むのか?」

 

 シューティーの提案に、サトシは質問するも、シューティーは訝しんでいた。

 

「……君、知らないのかい?」

 

「何が?」

 

「あ~、そう言えばサトシはまだあれを体験して無かったっけ」

 

「まぁ、サトシはバトル好きだからね。カントーから来たわけでもあるし、あっちの方は知らなくても無理はないか」

「……だから、何の話だよ?」

 

「ボクも気になるかな」

 

 サトシだけでなく、Nもそれはやっていなかったため、疑問を抱いていた。

 

「行けば分かりますよ」

 

 とりあえず、サトシもNもシューティーのその言葉に従い、バトルクラブに向かう。

 

 

 

 

 

「ようこそ、バトルクラブへ」

 

 バトルクラブに到着したサトシ達を出迎えたのは、やはりドン・ジョージだった。

 

「で、今回は何用かな?」

 

「特訓の方を」

 

「なるほど、そっちだね。了解した」

 

「特訓の方? どういう意味ですか?」

 

 シューティーの台詞にジョージは納得した一方、サトシは疑問符を浮かべていた。

 

「君はまだ体験して無いのかね?」

 

「彼はカントーから来たのと、まだ試合の方しかしていないんです」

 

「それで。分かった、歩きながら説明しよう。付いて来たまえ」

 

 廊下を先を歩くジョージを、サトシ達が続く。その間、ジョージが説明を始める。

 

「ここ、バトルクラブはトレーナーとトレーナーが効率良く多くの経験を得るための試合をする施設。しかし、それだけでなく、特訓をするための場所もあるのだ」

 

「そんな場所も?」

 

「言われて見れば、バトルをするだけの施設にしては大きすぎますね……」

 

 バトルを効率良くするための場所なら、幾つかのバトルフィールドと機材が有れば十分。ここまで大きくある必要はないと、Nは納得していた。

 

「そう言う事だ。そして、丁度付いたな。ここから先が特訓ルームだ」

 

 ある扉の前に立つサトシ達。ジョージがロックを解除すると分厚い扉が開き――中から様々な道具や機材が見えた。

 

「ここが……」

 

「特訓ルーム……」

 

 初めて見る場所に、サトシとNは目を見開く。

 

「ちなみに、つかぬことを聞くが、シューティー君もだが、サトシ君もどうしてバトルクラブに?」

 

 バトルクラブは誰でも歓迎。なので、聞く理由は本来ないが、ジョージが少し気になったので尋ねたのだ。

 

「実はアロエさんに負けて……」

 

「僕もです」

 

「なるほど、そのリベンジにか。まぁ、アロエのおっ母は手強い。特訓は必須だろう」

 

 サトシとシューティー、二人ともアロエに負けたのを聞き、頷いたジョージだが、今の台詞の中のある部分にアイリスが質問する。

 

「アロエさんとは仲が良いんですか?」

 

「おっ母はこの街のジムリーダー。何度も会ったことがある。それよりも、彼女に勝つなら厳しいトレーニングは必須。行けるかね?」

 

「勿論です!」

 

 声の大きさの差はあれど、サトシとシューティーは同時に宣言した。

 

「では、始めたまえ!」

 

 こうして、サトシとシューティー。彼等のリベンジに向けての特訓が始まった。

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ……やっと撒けたぞ……」

 

「こんなに疲れたの、このイッシュ地方じゃ、あの連中に追いかけられて以来ね……」

 

「とりあえず、少し休んでから報告をするにゃ……」

 

 一方、ジュンサー達との激しい逃走劇の末に適当な洞穴に逃げ切ったロケット団は、疲れた身体を休めていた。

 彼等は十分程休むと、機材を使ってフリントにメテオナイトの強奪の件の報告を始める。

 

「こちら、コジロウ」

 

『……』

 

「ちょっと、フリント。何黙ってるのよ」

 

 画面にフリントの顔が写り、コジロウが話し掛けるも彼は黙り。思わずムサシがそう言うと。

 

『……昨日の件はどういう事だ?』

 

「げっ、ヤバ……」

 

 昨日の博物館の騒動に付いて尋ねられ、ロケット団は冷や汗を掻く。

 

「いや違うんだ、フリント。昨日、思わぬ邪魔が入ったせいでああなってしまったんだ」

 

「そうにゃ。それにメテオナイトはちゃんと確保のしたのにゃ」

 

 予期せぬデスマスの存在や、騒動は起こしたがメテオナイト自体は確保したことを出し、自分達に非はないと語るも。

 

『……ほう。では、これは何だ?』

 

 フリントはある音声データを出す。

 

『……アタシ達が誰ですって? 誰かと言われたら』

 

『答えてあげよう。明日のため』

 

『フューチャー。白い未来は悪の色!』

 

『ユニバース。黒い世界に正義の鉄槌!』

 

『我等この地にその名を記す』

 

『情熱の破壊者、ムサシ!』

 

『暗黒の純情、コジロウ!』

 

『無限の知性、ニャース!』

 

『さぁ集え! ロケット団の名の元に!』

 

 固まるロケット団。それは、昨日自分達がデスマスにやってしまい、警備員に見付かる羽目になった口上だった。

 

「け、消したはずなのに、なんで――」

 

「バ、バカッ!」

 

 思わずムサシが溢し、コジロウが止めようとするも手遅れ。次の瞬間、フリントが怒声が上がる。

 

『バカかお前達は!? 任務中に訳の分からん口上をするなど、言語道断だ!』

 

「バカとはなんにゃ! 悪の組織には口上は必要不可欠なのにゃ!」

 

「そうだ! これはロケット団に必須の悪のロマンだ!」

 

「それに、人が一生懸命考えた口上を訳の分からんってどういう事よ!」

 

『開き直るな、馬鹿者! 仮に百歩――いや、万歩譲ってロケット団に必要だとしても、任務中にやるな! 第一、そのせいで騒ぎになっているだろうが!』

 

 ロケット団とフリントは大声でしばらく言い合うも、その内疲れたのか止めた。

 

『はぁ……はぁ……。もう良い。とりあえず、メテオナイトは手に入れたな?』

 

 この件はもうどうでも良いと、フリントは割り切ると本来の話に戻る。

 

「あ、あぁ……」

 

『明日――いや、三日後の夜にこのポイントに来い。そこで合流する』

 

「今日中じゃないの?」

 

『……この状態で直ぐに行っても目立つだけだろうが』

 

「……分かったにゃ」

 

 まだ周囲に警察の目がある可能性は十分にある。先ずは今日を含めた三日間を使って完全に振り払い、三日後に合流すると言う予定をロケット団は了承した。

 

『また失態を犯すなよ。――以上』

 

 フリントはそれだけを言い残し、接続を切った。

 

「とりあえず、今日を含めた三日間は撒くことに専念するぞ」

 

「りょーかい。にしてもフリントの奴、悪の美学ってのを分かって無いわねー」

 

「全くにゃ。にゃー達はそこいらの悪党じゃにゃく、正義の大悪党、ロケット団にゃ。ロマンや美学は必須にゃ」

 

 彼等はしばらく、身体を休めながらフリントへの愚痴を溢していた。

 

「――ハックション!」

 

「ムッ、どうしたフリント?」

 

「いや、何故か鼻がむずいてな……」

 

 とある場所にある、飛行機。その中にいたフリントが突然嚔をする。それに隣にいるオールバックと口元の髭、モノクルを付けた老人が心配したのか尋ねる。

 彼はゼーゲル博士。ロケット団の中でも地位がある人物であり、博士の名が付くよう優れた研究者だ。

 

「例のあやつらが、お主の事を話したのかもしれんのう」

 

「……だとしたら、十中八九悪口だな」

 

 フリントのその読みは、見事的中していた。

 

「とにかく、ゼーゲル博士。あの連中が馬鹿やったせいで三日遅れますので、ゆっくりと」

 

「そうさせてもらおうかの。お主は?」

 

「こいつと連携を強化するため、鍛錬を。――出てこい、ミネズミ」

 

「――ミネ!」

 

 フリントは取り出した一つのモンスターボールから、あるポケモンを出す。見張りポケモン、ミネズミ。このイッシュ地方でゲットしたポケモンだ。

 

「あまり強そうには見えんのう」

 

 

「私は戦闘ではなく、潜入や調査が主な役目。目が良いコイツは適任と言える」

 

「ミネ」

 

 なるほどとゼーゲルは納得する。確かに、視力が良いミネズミはフリントにはピッタリのポケモンと言えるだろう。外見からは合わないが。

 

「三日時間がある。訓練に励むぞ」

 

「ミネ!」

 

 ミネズミはビシッと片腕で敬礼の構えを取ると、外へ向かうフリントに黙々と続いた。

 しかし、この時彼は何時もならしないあるミスを犯していた事にまだ気付いていない。

 ロケット団がアレだったので、一刻も早く忘れたいと言う理由がある――と言うより、それが主――が、これに関してフリントを責めるのは酷かもしれない。

 出来ると思っていた連中の正体が、超弩級の変人だったのだから。

 

「さて、儂は機材の調整でもするのう」

 

 ゼーゲルは三日後に使うだろう、メテオナイトの調査の為の機材の調整に取り掛かることにする。時間は有限。無駄に使うことはない。

 

「早く来て欲しいものじゃな、メテオナイトよ」

 

 目的の代物を心待ちにしながら、老人は調整を進めていった。

 

 

 

 

 

「方向はこちらで合っているか?」

 

「あぁ、別の者達からそう報告が来ている」

 

「だが、奴等とはまだ距離が離れている。急いで追い付き、監視を続行する」

 

「了解」

 

 またある場所、ロケット団の追跡をしていた三人組が、車を飛ばしていた。目的は勿論、ロケット団だ。

 昨日のロケット団が起こした珍妙な騒動で三人組は一時追跡を中断する事となり、今その際の遅れを取り戻している最中なのである。

 

「……しかし、我等はこのまま奴等の追跡を続けるべきだろうか?」

 

「……気持ちは分かる」

 

「……下手すると、巻き添えを受け兼ねんならな」

 

 昨日の一件以降、三人組はロケット団を敵として言うより、どうにも妙な変わり種の連中にしか見えなくなっていた。

 勿論、ロケット団全員がああなのではないとは理解している――というか、そう思いたい――が、それでも気が引けてしまう。何をするのか色んな意味で読めないからだ。

 

「……まぁ、あの変人共の動きを知ると言う意味でもすべきだろう」

 

「……あの方もそう言っていたな」

 

「……仕方無くの雰囲気が漂っていた様にも見えたが」

 

 メテオナイトを戻す任務を終えた後、三人組の主は彼等にそう告げたのだが、声には仕方ないの様子が十分過ぎる程に感じられた。

 

「……とりあえず、追うぞ」

 

「……了解」

 

 何とも言えない空気の中、三人組は追跡を続行した。

 

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