ポケットモンスター アナザーベストウイッシュ   作:ぐーたら提督

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ねずみ対ワニ対鳥

「ルーグ……!」

 

「キバ……!」

 

 広場で、二匹のポケモンが向き合う。片方は脱皮ポケモン、ズルッグ。もう片方は牙ポケモン、キバゴ。

 二匹が睨み合い、その気迫のせいかは定かではないが、野生のマメパトが飛び立つ。その瞬間、二匹のトレーナーが指示を出す。

 

「ズルッグ、ずつきだ!」

 

「キバゴ、ひっかく攻撃よ!」

 

「ルッグーーーッ!」

 

「キバーーーッ!」

 

「ルグ!」

 

 二匹は近寄ると、先にズルッグが攻撃。身体の力を溜めながら使い、今出来る全力のずつきを放つ。

 

「キバ! キババーーーッ!」

 

 ずつきは見事命中し、キバゴには痛いダメージを与える。しかし、キバゴも黙ってやられはしない。同じく身体の力を使って腕を振るい、爪で引っ掻く。

 

「ルッグ! ルグ……!」

 

 追加効果は出ず、またずつきの後の硬直もあり、ズルッグはキバゴのひっかくをまともに受ける。

 

「良い威力になって来たじゃないか!」

 

「そりゃあ、日々トレーニングしてるだから当然よ!」

 

 生まれて数日のズルッグが相手とはいえ、中々威力が込もったひっかくだった。日々のトレーニングの成果が出ている証だ。

 

「だな。――にらみつける!」

 

「ルググゥ!」

 

「キバ!?」

 

 ズルッグはギンと睨み、キバゴを怯ませながら防御を下げる。

 

「ずつき!」

 

「ズルッグーーーッ!」

 

「キバーーーッ!」

 

「キバゴ!」

 

 防御が下がった状態でずつきを受け、先程よりもダメージが増したキバゴ。

 

「やっぱり、やるわね……。だったら――りゅうのいかり!」

 

「キーバー……!」

 

「りゅうのいかり!? まだ未完成のはず……」

 

 完成度は今で六割程で、まだ百には到達していないはずだ。

 

「勿論、全力では撃たないわ。――今よ、発射!」

 

「キバーーーッ!」

 

「よしっ!」

 

 それはアイリスも承知している。だから、全力では撃たせない。溜めてる途中で放たせた。まだ細いが、蒼白い光がキバゴの口から問題なく発射された。

 

「やるなあ! だけど、残念! ズルッグ、皮で防御!」

 

「ルッグ!」

 

 未完成だが放たれたりゅうのいかりを、ズルッグは皮を伸ばしてガード。

 

「手足に力を込めろ! そして、跳ね返せ!」

 

「ルググ……ルッグーーーッ!」

 

「キバーーーッ!?」

 

 威力や勢いに耐えると、りゅうのいかりを跳ね返し、放ったキバゴに命中させる。

 

「そ、そんなぁ!」

 

「今だ、ずつき!」

 

「ルッグーーーッ!」

 

「キバーーーッ!」

 

 吹き飛ぶキバゴに、すかさずズルッグが叩き込む。それが決め手になり、キバゴは戦闘不能になった。

 

「そこまで。ズルッグの勝ちだね」

 

「良くやった、ズルッグ!」

 

「ルッグ」

 

 キバゴとの試合の初勝利に、ズルッグは誇らしげに胸を張る。

 

「キバ……」

 

「ごめんね、キバゴ。あたしがもっとしっかりしてれば……」

 

 一方、負けたアイリスはキバゴに謝っていた。ズルッグが皮での防御で攻撃を跳ね返したのは見たことがあったのだ。

 未完成とはいえ、りゅうのいかりを実戦で使えた事で完全に浮かれていた。また、跳ね返されたからと言って、動揺しなければ指示を出して避けれたはずだった。

 

「次は勝とうね、キバゴ!」

 

「キバ!」

 

 次はリベンジを果たそうと、アイリスもキバゴもやる気に満ちていた。

 

「皆、丁度食事が出来たよ」

 

「キバゴ、食べましょ」

 

「キバ!」

 

「よし、ズルッグ。ご飯食べようぜ」

 

「ルッグ」

 

「――ミジュ!」

 

「ピカ?」

 

 ズルッグを連れ、ご飯にしようとしたがミジュマルが出てきた。どうやら、料理の匂いに誘われたらしい。

 

「そうだ、他の皆も食事――うわぁああぁ!?」

 

「ピカーーーッ!?」

 

「ルッグ!?」

 

「ミジュ!?」

 

 皆と一緒に食べようと、サトシが残りのモンスターボールを取り出したその時だった。突如地面の足下が崩れ、ピカチュウと一緒に落ちていく。また、その際にモンスターボールを周りに落とした。

 

「サトシ!? ピカチュウ!?」

 

「なんだ、この穴……かなり深い。それに新しい……。一体、誰が――」

 

 ピシッと皹が走ると、地面の穴を覆う様に周りが崩れ、穴が塞がってしまう。

 

「ど、どうするの!?」

 

「穴を掘って追い掛けよう! ヤナップ!」

 

「ナップ!」

 

「それに、確か……これだ!」

 

「ポー! ……ポー?」

 

 サトシが落としたモンスターボールの一つのスイッチを押す。マメパトが出てきたが、自分のトレーナーのサトシがいない事に疑問符を浮かべてきょろきょろしていた。

 

「マメパト、サトシが穴に落ちてどこかに行ってしまったんだ! 空から探してほしい!」

 

「ポーーーッ!」

 

 マメパトは頷くと、上空からサトシを探しに行った。

 

「だったら、あたしも……!」

 

「そのモンスターボール……」

 

 アイリスが取り出したのは、ドリュウズが入ったモンスターボールだった。

 

「ロコ……!」

 

 同時に崖。この一ヶ所に突然横穴が現れた。そこには、サングラスを掛けたあのメグロコがいた。

 

「――うわぁ……!」

 

「――ピカ……!」

 

「ロッコ……!」

 

 サトシとピカチュウの声に、来たなと呟いたメグロコは穴から飛び降りる。

 その数秒後、途中から傾斜になっていたため、滑っていたサトシとピカチュウが穴から放り出され、地面に落下した。

 

「痛た……。大丈夫か、ピカチュウ?」

 

「ピカピ……」

 

「メーグ!」

 

「ん? この声……」

 

 聞き覚えのあるポケモンの声に、サトシとピカチュウが顔を動かすと、彼等はメグロコを認識する。

 

「ローー!」

 

「やっぱり、リゾートや幼稚園にいたメグロコ……。――あっ、まさか、あの穴……」

 

 そして、自分達が落ちたあの穴はメグロコが掘った物だともサトシは理解した。

 

「にしても、前も思ったけど、なんでここに……?」

 

 自分達とこのメグロコが出会ったのは、カラクサタウンの手前にあるリゾートだ。ここからはかなり離れている。

 

「ロッコ、ロッコォ!」

 

 メグロコは戦意に満ちた眼差しで、サトシとピカチュウを順に見る。

 

「まさか……俺達と戦うために?」

 

「ロッコ!」

 

 そうだとメグロコは頷いた。サトシとピカチュウに戦い、勝つために自分は群れから離れてここまで来たのだ。

 

「だったら、言ってくれれば付き合ったのに。まぁ良いや。受けるぜ、そのバトル。ピカチュウも良いか?」

 

「ピカ」

 

 相手がその気なら、受けるまで。サトシとピカチュウはメグロコの挑戦を受けた。

 

「出てきて、ドリュウズ!」

 

 広場。アイリスはドリュウズを出すも、やはりサツマイモみたいな状態だった。

 

「お願い、ドリュウズ。サトシとピカチュウを探してほしいの」

 

「……」

 

「冷ややかなテイストだね……」

 

 しかし、ドリュウズは全く反応しない。

 

「……ドリュウズ!」

 

「……!」

 

 いつになく、強い口調のアイリスに、ドリュウズは少し反応する。

 

「あたしの指示が聞けないのはまだ良いわ! だけど、困ってる人がいるのに、助けに行こうとしないのはおかしいでしょ!」

 

 アイリスが怒ってるのは、最近話し合っても進展がない不満もある。

 しかし、それ以上に自分の指示を聞かないのとサトシとピカチュウを助けないのは全く別の問題にもかかわらず、行こうとしない点だった。

 

「そんな薄情な性格になったのならもう良いわ! 二度と頼らない! 戻りなさい、ドリュ――」

 

「……リュズ」

 

 アイリスがモンスターボールに戻そうとしたその瞬間、ドリュウズが動いた。潜水状態を解き、きちんと地面に立つ。

 

「……リュズ?」

 

 目を反らしながらも聞いてきたドリュウズ。とりあえず、サトシとピカチュウを探しに行ってくれる様だ。

 

「あの穴から、サトシとピカチュウを探して欲しいの。前にペンドラーの時に見たでしょ?」

 

「……リュズ」

 

 少し時間は掛かったが、ペンドラーと聞いてサトシとピカチュウを思い出した様だ。

 

「あと、ヤナップも協力してくれるから」

 

「ナップ」

 

「……リュズ」

 

 よろしくと良いながら近付くヤナップに、ドリュウズはどうもととりあえず返事をする。

 

「じゃあヤナップ、ドリュウズ。君達で――」

 

「――アヒ」

 

「……ん?」

 

 探しに行こうとしたその時、鳴き声がした。デント達がそちらを向くと、水色の体毛の鳥ポケモンがクロッシュを頭に被ってどこかに行こうとしていたのだ。

 

「ど、泥棒!」

 

「アーーーッ!」

 

「ミジュ!」

 

「あちちちち! これ、ねっとう!」

 

 クロッシュを取り戻そうとしたデントとヤナップに向かって、そのポケモンは口から高熱の水を吐き出す。

 しかし外れ、ねっとうはミジュマルに当たろうとしたが、ミジュマルが咄嗟にガードしたため、弾かれてアイリスに命中していた。

 

「ミジュジューーーッ!」

 

 しかし、途中で熱湯を浴びてしまい、ミジュマルも熱がる。

 

「ミジュミジュ! ミジュマーーーッ!」

 

「アヒーーーッ!?」

 

 怒ったミジュマルはアクアジェットを発動。素早く接近し、突撃を叩き込む。

 

「アヒーーーッ!」

 

「またねっとう!」

 

 吹き飛ぶ鳥ポケモンだが、再度ねっとうを放つ。今度は誰にも当たらなかったが、避けた隙に離れていく。

 

「ミジュミジュ!」

 

「ルグルグ!」

 

「キババーーーッ!」

 

「待ちなさーい!」

 

 逃げる鳥ポケモンをミジュマル、ズルッグ、キバゴ、アイリスが追う。

 

「……ドリュ?」

 

 アイリスが離れてしまい、ドリュウズはデントにどうするんだと聞く。

 

「あっちはアイリス達に任せよう。ヤナップとドリュウズは地面からサトシを探してくれ」

 

「ナップ」

 

「……リュズ」

 

 デント達はクロッシュはアイリス達に任せ、自分達はサトシの捜索を優先した。

 

「じゃあ始めようか、メグロコ!」

 

「ピカ!」

 

「ロッコォ!」

 

 一方、メグロコにここに連れて来られたサトシとピカチュウは、メグロコとの勝負に望む。

 

「ピカチュウ、でんこうせっか!」

 

「ピー……カァ!」

 

「ロッコォ!」

 

 先手必勝と、でんこうせっかで先制のダメージを与えるサトシとピカチュウ。

 

「クロッコ!」

 

 やはりやるなと、メグロコは不敵に笑うと、足で地面を叩いて揺らす。

 

「じならし! ピカチュウ、ジャンプ!」

 

「ピッカ!」

 

「クロー……コッ!」

 

「ストーンエッジ! ピカチュウ、10まんボルトで打ち消せ!」

 

「ピーカ……チューーーッ!」

 

 揺れが迫り、ジャンプでかわすピカチュウだが、そこを狙ってメグロコがストーンエッジを放つ。しかし、素早く電撃を放って打ち消した。

 

「地面タイプのお前には電気技は効かなくても、技を打ち消すことは出来るぜ?」

 

「ピッカ!」

 

「ロッコ!」

 

 不敵な笑みのサトシとピカチュウに、メグロコはそう来ないとと笑みを返す。これでやられては、わざわざ群れを離れた価値がなくなるのだから。

 

「さぁ、次は――」

 

「――アヒ」

 

「ん?」

 

「ピカ?」

 

 次の攻防を始めようとしたサトシとピカチュウだが、メグロコとの間にデント達の所にいた鳥ポケモンが入って来た。

 

「このポケモン……」

 

『コアルヒー、水鳥ポケモン。潜水が得意で、好物の水苔を食べるために、水中を泳ぎ回る』

 

「アーーーッ!」

 

 自己紹介するように、コアルヒーは片翼を上げた。

 

「コアルヒーって言うのか」

 

「ピカ」

 

「だけど、バトル中だから退いてくれると助かるんだけどなー……」

 

「ロッコォ!」

 

 サトシとピカチュウは穏便にコアルヒーに離れてもらおうとしたが、邪魔をされたメグロコは怒って頭でコアルヒーを押し退ける。

 

「クローコ! クロコッコ!」

 

「アヒ?」

 

 勝負の邪魔だ、あっちに行けと口を開いて唸りながら告げるメグロコだが、コアルヒーがその口の中に頭を突っ込む。

 

「ロコ!? ロコロコロコーーーッ!?」

 

「アヒアヒアヒ」

 

「お、おい、大丈夫か?」

 

「ロココ……! クロコッコッコーーーッ!」

 

 コアルヒーが途中で頭を引っ込めたが、メグロコは少し噎せたらしい。そして、更に怒るとまた怒声を浴びせる。

 

「アヒ。アヒアヒ……」

 

「ロコ? ロコ……ロコ……ロッコォ!」

 

 しかし、コアルヒーは聞く耳持たずと言わんばかりに翼でメグロコの鼻穴を擽る。

 むずかゆさからハックションとくしゃみしたメグロコだが、その拍子にサングラスが飛んでコアルヒーの装着された。

 

「アヒ? ――アヒーーーッ!」

 

「……?」

 

 メグロコのサングラスが自分の元に来た瞬間、コアルヒーの雰囲気が変わった気がしたサトシとピカチュウ。

 

「ロコ……ロコォ……」

 

「アヒ、アヒヒ、アヒャーーーッ!」

 

「ロ、ロコ!」

 

「アヒ。――アヒャーーーッ!」

 

「ロコーーーッ!?」

 

「うわぁ!?」

 

「ピカ!」

 

 メグロコがサングラスを返して欲しいと言い、それが伝わったのか、コアルヒーはサングラスを外してメグロコに返す――と思いきや、みずてっぽうを放ってメグロコと後ろにいたサトシとピカチュウも吹き飛ばす。

 

「アヒヒヒヒ!」

 

 人を食ったように笑うと、コアルヒーはそのままどこかに飛んで行ってしまう。

 

「な、なんなんだ、あいつ……?」

 

「ピーカ?」

 

「ロコ……」

 

 その後、サトシとピカチュウはメグロコと一緒にさっきのコアルヒーを探していた。

 

「どこに行ったのかな、あのコアルヒー」

 

「ピカ……」

 

「ロコ……」

 

 サングラスが無くなったメグロコからは、先程の気迫が明らかに消えていた。今もサトシとピカチュウの後ろをとぼとぼと歩いているのがその証拠だ。

 

「心配すんなって。お前のサングラスは取り返してやるから」

 

「ロコ……!」

 

「――コロロ!」

 

「ロロ……ロッコォ!」

 

 サトシの言葉に嬉しくなったのか、メグロコはつぶらな瞳で見上げるも、直後にコロモリの群れを前に驚いたのか、サトシの肩に乗ってしまう。

 

「ただの野生のコロモリの群れだぞ?」

 

「ロコ……」

 

「お前、サングラスが無いと弱気になっちゃうんだな」

 

 メグロコの意外な一面を見て、サトシは笑っていた。今の態度だけを見ると、元群れのボスとは思えない。

 

「クロー……」

 

 その事を、サトシとピカチュウに知られ、メグロコは落ち込んでいた。

 

「しょんぼりすんなよ、メグロコ。俺とピカチュウが付いてるから」

 

「ピーカピカ」

 

「ロコ……」

 

 励ますサトシだが、直後に何かが通ると自分の帽子が無くなった。そちらを見ると。

 

「アヒ!」

 

 コアルヒーが翼を使い、自分の頭にサトシの帽子を被せていた。

 

「さっきのコアルヒー!? いや、サングラスがない……。別のコアルヒー?」

 

「ロコ!」

 

「お、おい!」

 

 弱気のままだからか、メグロコが怯えからサトシの足にしがみつく。すると、コアルヒーが離れようとする。

 

「ま、待て!」

 

「コーーーッ!」

 

「うわっ! これ、れいとうビームか!」

 

 呼び掛けるサトシだが、コアルヒーは圧縮した冷気の光線を放ち、咄嗟にかわす。

 

「アヒヒヒヒ!」

 

 驚くサトシに、コアルヒーはさっきのコアルヒーのような憎たらしい笑みを浮かべると、羽ばたいていく。

 

「あっ! 帽子返せ! 行くぞ、ピカチュウ!」

 

「ピカ!」

 

 取り返す物が一つ増えたサトシはメグロコを抱き抱えると、ピカチュウと共にコアルヒーを追い掛けていく。

 

「ん?」

 

 しばらく走ると、コアルヒーが別のコアルヒーの元に近付いていた。しかも、メグロコのサングラスがある。

 

「おい、コアルヒー!」

 

「アヒ?」

 

「帽子とサングラス返せ!」

 

「ピカ!」

 

「ロコ……」

 

「…………アヒーーーッ!」

 

 サトシ達を見て、二匹のコアルヒーは互いを見て頷くと、水流と冷気を放つ。

 

「問答無用かよ! そっちがその気なら……! ピカチュウ、でんきショック!」

 

「ピー……カッ!」

 

「アヒーーーッ!」

 

 電気を放ち、二匹のコアルヒーに命中させる。効果抜群の技を受け、コアルヒー達は少しの間動けなくなった。

 

「よし! 今の内にサングラスと帽子を――」

 

「コーーーッ!」

 

「うわぁ!?」

 

「ピカ!?」

 

「ロコ!?」

 

 取り戻そうとしたサトシ達だが、直後に攻撃されて吹き飛ぶ。

 

「な、なんだ?」

 

 サトシが見ると、そこにはクロッシュを乗せたアイリス達が追い掛けてるコアルヒーがいた。

 

「アヒーーーッ! アヒヒヒヒ!」

 

「三体目!? もう一体いたのか!?」

 

 どうやら、このコアルヒー達は三人組だった様だ。

 

「ピカー……!」

 

「アーーーッ!」

 

「危ない! うわわっ!」

 

 ピカチュウが電気を放とうとしたが、その前にコアルヒーがねっとうを放つ。サトシがメグロコを離すと同時にねっとうが顔に当たる。

 

「コーーーッ!」

 

「ピカ!?」

 

「ロコ!?」

 

「こ、今度は冷たい……」

 

 そこに今度はサトシの帽子を被ったコアルヒーがれいとうビームを放ち、サトシは氷付けになる。

 

「アーーー! アヒヒヒヒ!」

 

 サトシのその様に、三匹のコアルヒーはやはり憎たらしい笑みを溢す。

 

「ロコー……ロコ!」

 

「ありがとう、助かった。けど、寒い……」

 

 メグロコがサトシを氷から解放しようとかみつくを放ち、見事氷が砕けたサトシは自由を取り戻す。ただ、冷たさに凍えていた。

 

「ロコ!」

 

「ピカ!」

 

「アヒヒヒヒ!」

 

 良かったと喜ぶメグロコとピカチュウだが、コアルヒー達はまだ笑っている。

 

「ピカチュウ、もう一度でんきショック――」

 

「アヒッ!」

 

 再度電気技で動きを止め、サングラスや帽子を取り戻そうとしたサトシだが、コアルヒー達が飛んだ。

 

「逃がすか!」

 

「ピカ!」

 

 サトシはまたメグロコを抱え、ピカチュウと一緒にコアルヒー達を追う。

 すると、大きな木に辿り着き、コアルヒー達は木の穴の中に入って行った。

 

「アヒヒヒヒ! アヒ! アヒアヒ!」

 

「うわぁ!?」

 

 突如、穴から大量の道具が放り出される。サトシ達は咄嗟に下がって避ける。

 

「ピカチュウ、でんきショック!」

 

「ピーカ……!」

 

「アヒッ!」

 

「アヒヒ!」

 

 向かって来るコアルヒーに電気を放とうとしたが、その前に二匹のコアルヒーが投げた傘に覆われ、電気がその場に帯電してしまう。

 ついでに、サトシは残りのコアルヒーが投げたサッカーボールを食らっていた。

 

「ピカ……チューーーッ!?」

 

「ピカチュウ!? これを外して……ぐっ!」

 

「――ロコ!」

 

 でんきショックとはいえ、帯電しているために痺れてしまう。と、電気が効かないメグロコが傘を外した。

 

「ピカ……!」

 

 傘から解放されたピカチュウだが、電気が帯電している。抱えるとバチッと痺れるもサトシは無視した。

 

「アヒーーーッ!」

 

「ロコロコーーーッ!?」

 

 その隙に、コアルヒー達が水流を放つ。

 

「一旦下がるぞ、メグロコ!」

 

 状態が悪くなったピカチュウを見て、不利だと判断したサトシはメグロコに撤退を指示。一緒に下がる。

 

「アヒヒヒヒ! アーーー!」

 

 サトシ達を追い払い、コアルヒーは上機嫌に笑う。

 

「……ポー」

 

 そんな光景を、空からサトシのマメパトが不快そうに見ていた。少し考えた後、急いでデント達に報告しようと向かう。

 

「ミジュ?」

 

「ルグ?」

 

「キバ?」

 

「こらー! 待ちなさーい!」

 

 クロッシュを奪ったコアルヒーを追おうと、三匹が探していたが見失った様だ。直ぐにその隣にアイリスが立つ。

 

「勝手に行かない! 早くデントと合流してサトシとピカチュウを――」

 

「いや、その必要はないよ」

 

「ナップ!」

 

「……」

 

「デント?」

 

 すると、上からデントの声がした。見上げると穴から降りているデントとヤナップがいる。ドリュウズも地面に立っていた。

 

「あの穴から来たらここに着いたんだ」

 

「って事は、サトシ達がここに来たのは間違いわね」

 

「うん。問題はサトシ達がここからどこに行ったかだけど……」

 

「ポーーーッ!」

 

 ここからサトシ達をどう探すかに悩むアイリス達の耳に、鳴き声が聞こえた。マメパトだ。

 

「マメパト! サトシは見付かったかい?」

 

「ポーポー! ポポポーーーッ!」

 

「……何か怒ってない?」

 

「もしかしたら、サトシ達に何かあったのかも……!」

 

「急ぎましょう!」

 

 マメパトの態度に、サトシ達に何かあったとアイリス達は判断。マメパトの案内を元に走って向かう。

 

 

 

 

 

「アーーー!」

 

「アヒヒ!」

 

「アヒヒヒヒ!」

 

「色んな物があるな……」

 

 サトシ達。三匹のコアルヒーが色んな道具で遊んでいるのを見ていた。おそらく、サングラスや帽子と同様に盗んできたのだろう。

 

「ロコ……」

 

「メグロコ。帽子とサングラス。必ず取り戻そうな」

 

「ピカ! ……ピカ?」

 

 やる気に満ちたピカチュウだが、まだバチバチと帯電していた。

 

「ピカチュウ、大丈夫か?」

 

「ピカ」

 

 少し不安だが、モンスターボールはあの時に落としたしまった。ピカチュウとメグロコだけでやるしかない。

 

「行くぞ」

 

「ピカ」

 

 サトシ達はコアルヒー達にある程度まで近付くと、止まった。

 

「アーーー!」

 

「俺達は戦うつもりはないんだ。ただ、それを返して欲しいんだ」

 

「アヒッ?」

 

「ロッコロコ……」

 

「そのサングラスはメグロコにとっては凄く大事なものなんだ。分かってくれ」

 

 サトシはコアルヒーへそのサングラスがメグロコにとって、大切な物だと必死に訴える。すると、サングラスを付けたコアルヒーがメグロコに近付き、サングラスを外した。

 

「コアルヒー、分かってくれたんだな!」

 

「ロココ~……!」

 

 サトシは笑みを浮かべ、メグロコは感激する――が。

 

「アーーー!」

 

「ロコーーーッ!?」

 

「えぇええぇぇーーーっ!?」

 

 コアルヒーがねっとうを発射。メグロコに浴びせ、吹き飛ばす。

 

「アヒヒヒヒ!」

 

「返す振りをして、だましうちするなんて……もう許さないぞ!」

 

「ピカ!」

 

 完全に話が通じないと理解し、サトシは力強くで倒すことを決意する。

 

「ピカチュウ、でんきショック!」

 

「ピー……カッ! ……ピカ?」

 

「ピカチュウ?」

 

 電気を放とうとしたピカチュウだが、上手く発射されない。もう一度やるが結果は同じだった。

 

「まさか、さっきの……!?」

 

 傘に閉じ込められ、帯電した影響でまた体調がおかしくなったのかもしれない。

 

「くそ……!」

 

 折角、ここまで良くなったのに、またの悪化にサトシは苦い表情になる。

 

「……ロコ!」

 

「メグロコ?」

 

 ピカチュウの体調悪化を見て、メグロコが前に出た。

 

「やるのか? 相手は水と飛行タイプだぞ?」

 

 ストーンエッジは効果抜群だが、じならしは効かず、相手はねっとうやれいとうビームで効果抜群を狙える。かなり不利だ。

 

「ロコ!」

 

 サングラスがないので怖くはある。しかし、ここで引いたら取り返せないし、サトシとピカチュウと戦えない。やるしかないのだ。

 

「――ピカ!」

 

「ピカチュウ、戦うのか?」

 

「ピカピ!」

 

 しかし、流石に三対一は分が悪い。そう判断し、ピカチュウがメグロコの隣に立つ。

 体調は悪く電気技は使えないものの、でんこうせっかやアイアンテールは使える。問題はない。

 

「よし。行くぞ、ピカチュウ、メグロコ!」

 

「ピカ!」

 

「ロコ!」

 

 共通の相手を前に、二匹は協力して挑む。

 

「アヒ」

 

「アヒヒ」

 

「アヒヒヒ」

 

 ピカチュウとメグロコを見て、バトルになると判断したコアルヒー達は着けたり被っているサングラス、帽子、クロッシュを外して一ヶ所に重ねる。

 

「メグロコ、ストーンエッジを広くばら蒔け! ピカチュウはその後に一匹にでんこうせっか!」

 

「メグローーーッ!」

 

「ピー――カッ!」

 

「アヒッ!」

 

 ストーンエッジを三匹のコアルヒーを分断し、一番大きな隙があるコアルヒーにピカチュウのでんこうせっかが炸裂する。

 

「アーーー!」

 

「コーーーッ!」

 

「メグロコ、かわせ! ピカチュウ、れいとうビームをしてきた方にアイアンテール!」

 

「ロコッ!」

 

「ピーカァ!」

 

「――アヒーーーッ!」

 

「ピカチュウ、三匹目のコアルヒーが来る!」

 

「ピッ!? ――カァ!」

 

「アーーー!?」

 

 二匹のコアルヒーがメグロコを狙い、れいとうビームとねっとうを放つ。

 メグロコはサトシの指示通りに回避に集中し、ピカチュウは片方をアイアンテールで狙うも、そこに三匹目のコアルヒーがつばさでうつで迫る。

 ピカチュウは咄嗟に反応し、鋼の尾をれいとうビームを使ったコアルヒーではなく、つばさでうつを放ったコアルヒーにカウンターで叩き込む。

 

「よく反応した、ピカチュウ!」

 

「ピカピ!」

 

「ロコ……!」

 

 ピカチュウ、そしてサトシの実力の高さに、メグロコは改めて彼等と戦いたい。そして、勝ちたい。そう思った。

 

「ピカチュウ、メグロコ、確実に攻めて行くぞ!」

 

「ピカ!」

 

「ロコ!」

 

 一匹には大きなダメージがある。そこを利用すれば、コアルヒー達を倒せる筈だ。

 

「……コー」

 

「……アー」

 

「……ヒー」

 

「ん?」

 

「ピカ?」

 

「ロコ?」

 

 三匹のコアルヒー達が近寄り、何かを相談するように話し合うと、こっちに向かって来た。

 

「来たか! メグロコはもう一度ストーンエッジ! ピカチュウはでんこうせっか!」

 

「ロー……ッコォ!」

 

「ピカ!」

 

 もう一度二匹の連携で三匹を分断。そこから攻める作戦をサトシは取る。無数の岩が作戦通りに三匹を分断し、その一匹にピカチュウが狙いを定める。

 しかし、三匹はピカチュウを惹き付けるように後退。更に次の瞬間には一気に反転し、ピカチュウを無視してメグロコに向かう。

 

「アヒーーーッ!」

 

「ロコココーーーッ!」

 

「あいつら、メグロコに狙いを!」

 

 コアルヒー達もまたピカチュウとメグロコを分断し、倒しやすいと判断したメグロコから先に倒そうとしたのだ。三匹のつばさをうつが不意を突かれたメグロコに命中する。

 

「ピカチュウ、メグロコを守るんだ!」

 

「ピカ!」

 

「――アーーー!」

 

「なっ!?」

 

「ピカ!? ――ピカカーーーッ!」

 

 ピカチュウがメグロコを助けに動いた。それを狙い、コアルヒー達が三匹同時のみずてっぽうで吹き飛ばす。

 

「くそっ、両方共狙っていたのか!」

 

「アヒヒヒヒ!」

 

 その通りと言いたげに高笑いするコアルヒー達。そんな三匹に怒りを抱き、ピカチュウが電気を放とうとするが出ない。

 

「アヒヒヒヒ!」

 

 やるだけムダと、コアルヒー達はピカチュウに向かって笑う。三匹はさっきからの様子を見て、ピカチュウが電気を使えないと理解している。だから笑っていた。

 

「ピカピカピカ……!」

 

「ピカチュウ、無理に使おうとするな! 身体に負担が――」

 

 無理に電撃を使おうとするピカチュウを止めるサトシ。しかし、その直後にピカチュウの状態が変化する。帯電している電気が一ヶ所に集まり、球形になって行くのだ。

 

「これって……!」

 

「ピー……カァ!」

 

 前に見たことのある技に驚くサトシ。一方、感覚を掴んだピカチュウはその技――エレキボールをコアルヒー達に向けて発射する。

 

「アヒッ!? ――アヒーーーッ!」

 

 エレキボールを受け、コアルヒー達は吹き飛んだ。

 

「ピカチュウ、エレキボールを覚えたんだな!」

 

「ピカ!」

 

「ロコー……」

 

 イメージしていた事や、帯電状態によって逆にコツを掴んだのだろう。何にしても、ピカチュウは新技のエレキボールを習得した。

 

「サトシー!」

 

「この声……」

 

 声と共に音が近付いて来る。サトシ達が振り向くと、アイリス達がいた。

 

「こんな所にいたんだね。心配したよ」

 

「悪い。コアルヒー達に帽子やサングラスを盗られてさ」

 

「サトシも? それにサングラス?」

 

「こいつのだよ」

 

「ロコ……」

 

「このメグロコ……リゾートや幼稚園の?」

 

「そっ。俺達が落ちたのはこいつが穴を掘ったからで、バトルがしたかったんだってさ。で、バトルの最中でコアルヒーにやられて」

 

 なるほどと、デント達は一連の流れを理解する。

 

「……」

 

「ズルッグ?」

 

「ズー……」

 

「――ミジュ! ミジュミジュ」

 

 話を聞いたズルッグは、メグロコに対してずつきをしようとしたが、ミジュマルに止められて放された。

 

「……」

 

「あれ、ドリュウズ? アイリス、仲直り出来たのか!?」

 

「あ~、残念ながらそういう訳じゃなくて、サトシとピカチュウを捜すのを手伝ってもらっただけ」

 

 後ろにいる潜水状態じゃないドリュウズに、サトシは仲直りしたのかと思いきや、自分達を探すために動いただけの様だ。とはいえ、探しに協力しただけでも一歩前進だろう。

 

「そっか。ありがとな、ドリュウズ」

 

「ピカピ」

 

「……」

 

 お礼を言われるドリュウズだが、やることはやったと言わんばかりに潜水状態に戻った。

 

「戻ったね」

 

「……うん。けど、今はこれで良いわ」

 

 ちょっとだけでも、ドリュウズと距離が縮められた気がしたから。

 

「戻って、ドリュ――」

 

「アヒーーーッ!」

 

 アイリスがドリュウズを戻そうとしたその時、鳴き声が聞こえた。サトシ達が見上げると、さっき吹き飛ばしたコアルヒー達が戻って来たのだ。

 

「あいつらしつこい!」

 

「て言うか、三匹もいたの!?」

 

「アヒーーーッ!」

 

「みずてっぽうだ! 皆、避けるんだ!」

 

 連射のみずてっぽうを、サトシ達は必死にかわしていく。その最中、みずてっぽうの一つがドリュウズに命中。

 

「ドリューーウズッ!」

 

「あっ、怒った」

 

「まぁ、いきなり攻撃されたらね」

 

 ドリュウズはまた潜水状態を解いた。しかも、苦手な水タイプの技を受けてかなり苛立っている。

 

「アヒ?」

 

「――リュズ!」

 

「アヒーーーッ!?」

 

 ドリュウズは爪を鋼化させ、叩き付ける。メタルクローだ。

 鋼タイプの技なので、コアルヒーには本来今一つのはずなのだが、そんなのお構い無しと言わんばかりに大きなダメージを与える。

 

「ピカチュウ、エレキボール!」

 

「ピー……カァ!」

 

「メー……グロコッ!」

 

「ドリューー……ズッ!」

 

「アヒヒーーーッ!?」

 

 ピカチュウのエレキボール。メグロコのストーンエッジ。ドリュウズのメタルクロー。それらを受け、コアルヒー達は吹き飛んだ。

 

「アーーー」

 

「アーーー」

 

「アーーー」

 

「アヒーーーッ!」

 

 その際、コアルヒー達はまるで、ロケット団の様に叫びながら空の彼方へと消えていった。

 

「やっと倒した……」

 

「リュズ」

 

 コアルヒーを吹っ飛ばしてすっきりしたのか、ドリュウズは潜水状態になる。

 

「サトシ、ピカチュウはエレキボールを覚えたのかい?」

 

「あぁ、色々あってな」

 

「ピカ」

 

 そうと、ピカチュウは胸を笑顔を浮かべる。

 

「あっ、サングラスや帽子はっと……」

 

「ピカ。……ピカ?」

 

「ルッグ」

 

「おっ、ありがとな、ズルッグ」

 

 ピカチュウが帽子を渡そうとしたが、途中でズルッグが取るとサトシに渡した。

 

「僕のクロッシュっと……」

 

「メグロコ、ほら」

 

「ロコ」

 

 デントもクロッシュを回収し、サトシはサングラスをメグロコに渡す。

 

「ロッコッコッコ」

 

 サングラスと共に何時もの調子を取り戻し、メグロコは笑う。サトシも釣られて微笑んだ。

 

 

 

 

 

「はーい、お預かりしたポケモン達は元気になりましたよー」

 

「ピカ」

 

「ロコ」

 

「ありがとうございます」

 

 町に戻って、ポケモンセンター。預けたピカチュウやメグロコは見事に元気になっていた。

 また、その際にジョーイからコアルヒー達について話されており、あの三匹は色々と悪戯をしていた問題児とのこと。

 

「じゃあ、メグロコ。改めてバトルと行こうか」

 

「ロッコ!」

 

「ピカチュウも問題ないよな?」

 

「ピカ!」

 

 盗まれた物は取り戻し、コアルヒー達も撃退した。再度バトルの為、サトシ達とメグロコはズルッグとキバゴが試合した広場に向かう。

 

「再開しようぜ、メグロコ!」

 

「ピカピ!」

 

「ロッコ!」

 

「ピカチュウ対メグロコ。ピカチュウは電気タイプ。一方でメグロコは地面タイプ……」

 

「となると、戦術は自ずと決まるね」

 

 サトシは無効化される電気技を避け、でんこうせっかやアイアンテールを重点に、攻めようとするだろう。

 

「ピカチュウ、でんこうせっか!」

 

「ピッカァ!」

 

「――ロコ!」

 

「あなをほるだ!」

 

 先程と同じく、でんこうせっかで先手を狙うサトシとピカチュウだが、メグロコもバカではない。その前に穴を掘って地中に隠れた。

 

「ピカチュウ、走り回れ!」

 

「ピカ! ピカピカ……!」

 

「――ロコ! ロコ!?」

 

 ピカチュウは広場を走り回る。穴から出たメグロコだが、感触の無いことに驚く。

 

「直ぐに走って対処した!」

 

「あなをほるはどこから来るか分からないのが脅威だけど、逆に放つ側からも見えないからね。あんな風に撹乱するのは正しいよ」

 

「……ロコ!」

 

「またあなをほる!」

 

「ピカチュウ、また走り回れ!」

 

 また地中に潜ったメグロコに、またピカチュウは走り回る。しかし、その直後に広場が軽く揺れ、その揺れがピカチュウにダメージを与える。

 

「ピカ!?」

 

「なっ、これは……!」

 

「じならし! 地中から放ったのか!」

 

 地中から放つ事で、メグロコは出所を見えなくしたのだ。しかも、その直後にピカチュウの足下から出てきてダメージを与えた。

 

「ロッコォーーーッ!」

 

「ピカーーーッ!」

 

「ピカチュウ!」

 

「じならしからあなをほるの連続攻撃!」

 

「やるね……! 群れのボスだけある……!」

 

 技の連携で効果抜群のダメージを二度も与えただけでなく、じならしでピカチュウの持ち味であるスピードを下げたのも見事だ。

 

「やるな、メグロコ!」

 

「ピカ……!」

 

「ロッコ! ――ロコ!」

 

「またまたあなをほる!」

 

 ここから再度じならしのコンボに繋げるつもりだろう。もう一度食らえば、かなりのダメージでこちらが不利になる。

 

「なら、その前に対処するだけだ! ピカチュウ、アイアンテール! 地面に叩き付けろ!」

 

「ピカ! ピー……カッ!」

 

「クロッコーーーッ!?」

 

 鋼の尾が大地に叩き込まれる。強い衝撃が発生し、メグロコが地面から引きずり出された。

 

「アイアンテールで叩いて、メグロコを地面から出した!」

 

「流石だね、サトシ」

 

 地面に潜られたのなら、引きずり出せば良い。単純だが効果的だ。

 

「でんこうせっか!」

 

「ピッカ!」

 

「クロッ!」

 

 引きずり出したメグロコに、ピカチュウがでんこうせっかを当てる。

 

「アイアンテール!」

 

「ピッカ!」

 

「――ロコォ!」

 

「ピカ!?」

 

「かみつくで防いだ!」

 

「クロッコ!」

 

 ピカチュウは更にアイアンテールを振り下ろす。しかし、メグロコはかみつくで受け止め、地面に叩き付ける。

 

「ピカ!」

 

「ロコーーーッ!」

 

「またかみつくが来るわ!」

 

 叩き付けたピカチュウに、メグロコは口を開いて噛み付こうとする。

 

「アイアンテールを振り上げろ!」

 

「ピカァ!」

 

「ロッコ!」

 

 しかし、黙ってやられる彼らではない。ピカチュウはアイアンテールを振り上げ、カウンターでメグロコに顎からダメージを与える。

 

「振り下ろせ!」

 

「ピー……カッ!」

 

「ロッコーーーッ!」

 

 ピカチュウは更に振り上げた鋼の尾を振り下ろし、連続攻撃を叩き込む。

 

「アイアンテールでの連続攻撃!」

 

「これはメグロコもかなりのダメージを受けたね」

 

 しかも、防御力も下がっている。次のダメージが期待出来る。

 

「クロコ……!」

 

 追い詰められ出したメグロコだが、彼は笑っていた。サトシとピカチュウの強さに喜んでいたのだ。

 

「ロコ……! クロッコォーーーッ!!」

 

「なっ、あれは……!」

 

 昂る闘争心から、メグロコが叫ぶ。するとメグロコの身体が光りだし、大きくなっていく。

 

「――ワルビーーールッ!!」

 

 光が消える。そこには、四足歩行から二足で立ち上がり、一回りは大きくなりながらもメグロコの面影を感じさせるポケモンがいた。

 

「進化した!」

 

『ワルビル、砂漠鰐ポケモン。メグロコの進化系。目は特殊なカバーで覆われており、物体の熱を感知する為、周りが暗闇でも見える』

 

「ワルビル……!」

 

「ワルビーーール! ――ワルビルッ!」

 

「ストーンエッジ!」

 

 進化したワルビルが、ストーンエッジを展開して放つ。進化により、メグロコの時よりその数も力も増していた。

 

「ピカチュウ、こうそくいどう!」

 

「ピッカ!」

 

 無数の石を、ピカチュウはスピードを上げてかわしていく。

 

「ワルビルゥ!」

 

「じならしよ!」

 

 これまた進化で威力が増したじならしで、ワルビルは大地を揺らす。

 

「ジャンプだ、ピカチュウ!」

 

「ピカァ!」

 

「ワルーーー……!」

 

「またストーンエッジ!」

 

 しかも、今度は大量の礫ではなく、大きな一つにして放っていた。じならしでジャンプを誘導し、本命のストーンエッジを叩き込もうとしたのだ。

 

「エレキボール!」

 

「ピー……!」

 

「エレキボールって……ワルビルには効かないわよ!?」

 

 ここでワルビルに効かない電気技。アイリスは驚くも、デントは静かに見守っていた。

 

「ビルゥ!」

 

「カァ!」

 

 電気の球と巨大な尖石が空中で激突。二つの技は二三数える間押し合うと、エレキボールが破裂しながらもストーンエッジを押し返し、ワルビルに命中した。

 

「ワルビ!? ワルビーーール!」

 

「今だ、アイアンテール!」

 

「ピー……カァアアァ!!」

 

 自分が放ったストーンエッジを受けて怯んだ隙に、ピカチュウは素早く接近するとフルパワーでアイアンテールを放つ。

 

「ワルビーーーーールッ!!」

 

 アイアンテールを受け、ワルビルはまた来るからなー!と叫びながら空の彼方へと飛んでいった。

 

「ふぅ、勝った」

 

「ピカ……」

 

 電気が効かないとはいえ、手強い相手だった。

 

「エレキボールで技を跳ね返すなんて……」

 

「こういう柔軟な発想はサトシらしいよ」

 

 技が効かなくても上手く使って勝つ。そこはやはり、発想に囚われないサトシならではだろう。

 

「また会えそうだな、ピカチュウ」

 

「ピカ」

 

「その時は、ワルビルも強くなってるだろうね」

 

「新しいライバルって感じね」

 

 新しいライバルの誕生に、サトシとピカチュウは微笑む。

 

「じゃあ、勝負も終わったし、ヒウンシティに向かおうぜ」

 

「うん」

 

「あぁ」

 

 一準備を終えると、彼等はヒウンシティに向かっての旅を再開する。

 

 

 

 

 

「ワルビ~ル」

 

 一方、吹っ飛ばされた最中のワルビルは腕を組みながら負けたな~と悔しそうに呟いていた。

 再挑戦に向け、頑張らないとと考えつつ、ワルビルはこれから来る地面との激突に備えていた。

 控え目だと良いな~と思いながら落下していくと――激突間際で何かにキャッチされた。

 

「ワルビ?」

 

 その感触、しかも一度感じたことのあるそれにえっ?と溢し、そちらを向くと。

 

「……オノ」

 

「ワルビ」

 

 そこには、以前サトシとのバトルに望み、実質的に敗北させた、あの色違いの片刃の黒いオノノクスがいた。

 

「……オノ、ノノノクス」

 

 何か、前にもこんなことがあったなと呟くオノノクス。メグロコが保育園に訳あって襲撃した時の事だ。

 あの時も、オノノクスは今はワルビルになったメグロコをこんな風に掴んだのだ。

 

『いや~、悪いな旦那。また助けてもらって』

 

『……また? まさか、お前はあの時のメグロコか?』

 

『そうそう。さっき、サトシとピカチュウ――前言ってた奴らと戦って、吹っ飛ばされちゃってさ』

 

『……にしても、その割には機嫌が良さそうだな』

 

『あぁ、色々とあってさ。聞く?』

 

『……聞こうか』

 

 ただ、このままで話をするのも何なので、オノノクスはワルビルを下ろす。下ろされたワルビルは今日の件について話した。

 

『――と言うわけ』

 

『なるほどな。しかし、あの少年は強さも心もあるのだな』

 

 強く、敵であるワルビルだろうが、困っていれば助ける。強さと心を併せ持つサトシを、オノノクスを評価していた。

 

『いや~、にしてもここであんたとまた会うとはな。しかも、前とおんなじ風に』

 

『……まず無いがな』

 

 吹っ飛んで遭遇する出会いなど、まず無い。しかも、それが二回目。どんな確率だろうか。

 

『にしても、あんたは何してたんだ?』

 

『色々と人とポケモンを見てきた。つまらん相手ばかりだったがな』

 

 残念ながら、サトシの様にやり応えがあるか、Nの様に見込みのある相手はいなかった。妥協点のデントのラインにすら全く届かない連中ばかり。

 大半は見ると逃げるし、残りの色違いという珍しさから自分の力量を見抜けずに挑んできた愚か者ばかり。そんな連中は一人残らず返り討ちにしたが。

 

『じゃあ、またサトシやピカチュウと戦う?』

 

『いや。まだまだ先だ』

 

 彼等と戦えば燃える勝負は出来るだろうが、まだピカチュウは完治してないだろうし、手持ちもまだまだだろう。もっと時間が経ってから戦いたい。

 彼等は必ず強くなると、オノノクスは確信しているからだ。戦うなら、その時だ。

 

『負けるかもよ?』

 

『それならそれで楽しみだな』

 

 オノノクスは己がとこまで通用するかを知るためにここに来たが、負ける事を恥とは思わない。その事実を受け止めれない方が恥だ。何より、若き者が自分を超えた方がオノノクスには嬉しい。

 

『ふ~ん。達観してるね~。まぁ折角、こうして再会した訳だし、しばらく一緒にいないか? 出来ればその間、鍛えて貰えると有難いな』

 

 次のバトルまでに、強くなりたい。その師事をワルビルはオノノクスに頼んでいた。

 

『加減はせんぞ?』

 

『それぐらいじゃないと、あいつらには勝てねえよ』

 

 中途半端な覚悟で、ここまで来たわけでは無いのだから。

 

『良いだろう』

 

 強くなる為の意志を確かめたオノノクスは、ワルビルの提案を受け入れた。

 

『じゃあ、あいつらを追いかけながら特訓だな~。次が楽しみだぜ~』

 

『方向は分かるのか?』

 

『多分』

 

『確信を持たんか。全く』

 

 当てもなく行こうとするワルビルに、オノノクスは呆れる。

 

『まぁまぁ。とりあえず気長に行こうぜ、旦那~』

 

『……それもたまには良いか』

 

 気楽に進むワルビルに、オノノクスははぁと溜め息を吐くも、何処か楽し気であり、彼はゆっくりと後を追った。

 

 

 

 

 

「ここね」

 

「そろそろ、来る筈だ」

 

 ヒウンシティから離れた広野に、ロケット団とフリントがある人物を待っていた。

 

「来たにゃ」

 

 空からバリバリと音が響く。見上げると飛行艇が降りてきて着陸。扉が開き、ロケット団とフリントは中に入る。

 

「どうですか、ゼーゲル博士」

 

「順調じゃ。場所も大分特定出来ておる。後は直接調べに行き、回収」

 

「そして、テストの後に作戦を実行」

 

「ロケット団が本格的にイッシュ地方制圧の第一歩を歩み」

 

「ロケット団の名をイッシュ地方に轟かせる時でもあるにゃ」

 

「いよいよと言うわけだな」

 

 本格的な進行がもうすぐだと理解し、彼等は笑みを浮かべる。

 

「では、メテオナイトを回収しに行くぞ」

 

「了解」

 

 飛行艇は飛び立ち、リゾートデザートに向けて進んでいった。

 

 

 

 

 

 古代の城。その下層の教会の間の扉の前に、ロットとアスラが立つ。

 

「ここかな」

 

「はい。間違いありません」

 

「では行きましょう」

 

 扉が開き、二人が部屋に入る。中は他の団員達が砂を払っているので、ロケット団が来たときよりも見晴らしも足場も良い。

 

「おぉ、間違いない……!」

 

「ライトストーン……!」

 

 講壇にある白い球――ライトストーンを目の当たりにし、二人はゆっくりと近付くとロットが持つ。

 

「これが、イッシュの真実、レシラムに……!」

 

「しかし、情報で知っているとはいえ、本当になるのでしょうか」

 

 見た限りは、少し特徴的な模様があるだけの白い石。これがレシラムになることに、少しだけアスラは疑っていた。

 

「ですが、王はまだ行方知らずです……」

 

「ライトストーンを手にしても意味が……」

 

「何れ戻るかもしれない王の為にも、手にしておくのは大切な事」

 

「その通り。それにまたロケット団が来る可能性もありますぞ。その前に回収すべきですな」

 

 二人の言葉に、団員達は理解を示した。犯罪組織の手に渡るよりは自分達が回収すべきだと。

 一方、アスラとロットはそんな彼等を見て少し後ろめたさを感じた。自分達はそれについて知っているのだから。

 とはいえ、まだ言うべきではない。二人は互いを見合わせて頷く。

 

「では、回収もした」

 

「出ましょう」

 

 はいと頷いた団員達を連れ、二人は古代の城の出口へと向かう。

 

(さて、後はこのライトストーンをどうするか……)

 

 途中、ロットとアスラは目でやり取りしていた。ライトストーンを持ち出すのは避けられないが、このままは不味い。

 

(いや、丁度良いタイミングでもあります。問題ないのでは?)

 

(……ふむ、そうだな)

 

 今のタイミングなら、持って行っても問題は無さそうだ。ロットはアスラの案に乗る。

 

「……むっ?」

 

「どうしましたか?」

 

「連絡が入った。少し待って欲しい」

 

 ロットが機材から連絡を受け、話を聞く。すると、目を細くした。

 

「出るのは中止にせよ。ロケット団が近付いている可能性がある」

 

「タイミングが悪い。交戦も想定するべきですかな?」

 

「場合によっては」

 

 それを聞いて、アスラは勿論、団員達も目を鋭くしていた。

 

「だが、見付かるなと言われている」

 

 

「となると、下に向かうべきですな。折角です、調べますか?」

 

 それは古代の城の下の層の事だ。まだ全てを把握出来てはいない。この下には他にも何かある可能性があった。

 

「無理をしない程度にの」

 

「ではしましょう。無理はせずに」

 

 方針を決め、彼等は古代の城の下層へと向かって行った。

 

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