ポケットモンスター アナザーベストウイッシュ   作:ぐーたら提督

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 先週は投稿出来ず、申し訳ありませんでした。
 にしても、話を短く纏める能力が欲しいです……。本来は一話の筈がかなり延びてますし……。ちなみに、後半はまだです。お恥ずかしい……。
 あと、独自解釈があります。


それぞれの激闘、前編

「やはり、それなりには出来るか」

 

「ロケット団の尖兵だからな」

 

「どうする? 出すか?」

 

 発電所前。ロケット団と三人組のバトルは続いていた。戦況はコンビネーションが勝る三人組が優勢だった。

 ロケット団もコンビネーションはあるが、それはムサシとコジロウのみ。フリントは一緒には出来ないため、その差が徐々に影響していた。

 しかし、直ぐに決めれる程の影響は無い。ムサシとコジロウの粘り強さや、フリントの冷静な判断もあり、長期戦になっていた。

 

「ふむ、出来ればもっと時間を掛けたかったが……」

 

「だが、今の最優先事項は、任務の遂行。仕方あるまい」

 

「では、使うとするか」

 

 三人組が腰から何かを取り出す。それにロケット団は見覚えがあった。

 

「それ……進化の石じゃない!?」

 

 特定のポケモンを進化させる力を宿した石。それを三人組それぞれ異なる物を持っていた。

 

「一番右のは、確かリーフの石だ!」

 

「真ん中のは炎の石にゃ!」

 

「左の奴のは水の石……!」

 

 草の模様に薄緑色のリーフの石。炎の模様にオレンジ色の炎の石。水の模様に水色の水の石。それを三人は持っていた。

 三人組がフッと笑うと、その石を手持ちのポケモンに触れさせる。

 

「クサーー……!」

 

「コーン……!」

 

「シェルー……!」

 

 進化の石に触れた三匹の身体が光に包まれ、変化を起こしていく。

 

「――レシアーーーッ!!」

 

「――クォーーーンッ!!」

 

「――シェーーーンッ!!」

 

 光が晴れると、そこには新たな姿と力を得て、雄叫びを上げる三匹のポケモンがいた。

 大きな赤い花弁が特徴のフラワーポケモン、ラフレシア。

 薄黄金色の体毛に、九つの尾を優雅に動かす狐ポケモン、キュウコン。

 先程よりも遥かに大型かつ、鋭い棘も併せ持つ殻を手に入れた二枚貝ポケモン、パルシェン。

 三匹は、ロケット団を冷たい眼差しで見下ろしていた。

 

「ラフレシア、マジカルリーフ」

 

「キュウコン、はじけるほのお」

 

「パルシェン、しおみず」

 

「レシッ!」

 

「コンッ!」

 

「シェンッ!」

 

 先程よりも威力、速さが増した草、炎、水の技を放つ三匹。

 

「コロモリ、エアスラッシュ!」

 

「デスマス、シャドーボール!」

 

「ミネズミ、ハイパーボイス」

 

「コロッ!」

 

「デスッ!」

 

「ミネッ!」

 

 迎撃をするロケット団のポケモン達だが、破られ、三匹の攻撃が命中し、大きなダメージを食らう。

 

「シェルブレード」

 

「ニトロチャージ」

 

「ドレインパンチ」

 

「パルッ!」

 

「コン!」

 

「レア!」

 

 吹き飛んだ三匹に、進化した三匹の追撃の一撃。三匹はなす術なく食らい、転がっていく。

 

「くそっ! さっきとは比べ物にならない程の強さだ!」

 

「進化したのだ。当たり前だろう?」

 

 更に言えば、日頃から進化に備えての鍛錬もしてある。三匹のこの強さは当然の物だった。

 ただ、本音を言えばもっと時間を掛けたかったが、そこは仕方ない。

 

「こいつらの進化の門出の祝いになることを光栄に思い、散れ」

 

「ふざけんじゃないわよ! 誰がやられるもんですか!」

 

「威勢だけは立派だな。だが、戦況は我等の方が優勢。貴様等に勝ち目などない」

 

「くっ……!」

 

 必死に抵抗するロケット団だが、三人組の言う通り、あちらの方が優勢だ。勝機は非常に薄い。

 

「あぁ、喋るニャースを加えても良いぞ。どうせ、勝てぬからな」

 

「待て、そのニャースは確か捕らえろと報告されてる」

 

 一人目がニャースを入れても結果は変わらないと告げるが、二人目がニャースは捕獲対象だと話す。

 

「にゃーを捕らえるつもりなのかにゃ!?」

 

「そうだ。適度に痛め付け、確保するぞ」

 

 三人目の台詞が終わると、三人組はロケット団に更なる猛攻を仕掛けた。

 

 

 

 

 

 ヒウンシティ制圧に投入されたロケット団のポケモン達。その中には、優れた能力の五人の隊長が手持ちとしていたポケモンが全部で十体存在していた。

 今、サトシ達と対峙しているポケモン達は、正にその十体の内の七体。非常に高い実力を持つ強敵だった。

 

「ディーーーン!」

 

 シューティーとデントのペアに立ちはだかり、ドッコラーを瞬時に撃破したフーディン。闘気の力を圧縮し、球として発射する。

 

「きあいだま!」

 

「けど、なんですかこの数!?」

 

「フーーーッ!」

 

 フーディンが展開したきあいだまの数は十を超えていた。フーディンはそれを一度に発射する。

 

「ヤナップ、かわらわり!」

 

「ジャノビー、エナジーボール!」

 

 ヤナップとジャノビーが一ヶ所に集まって技を放ち、迫るきあいだまの一つを辛うじて相殺する。

 

「うわぁああ!」

 

「きゃああっ!」

 

 しかし、自分達に迫るきあいだまは相殺したが、残りのは他のトレーナーのポケモンに命中し、大ダメージを与えていた。

 

「何て威力だ……!」

 

「強い……!」

 

 フーディンの強さに、シューティーとデントは戦慄する。しかし、この強敵を倒さねば救助に行けない。やるしかなかった。

 

「フー……?」

 

 無数の敵を倒したフーディンだが、プルリルやヒトモシが倒れていない事に疑問を抱く。

 

「妙だと思ってる……?」

 

「……もしかして、プルリルやヒトモシがゴーストタイプがあると知らない?」

 

 そうかと呟くデント。フーディンはヒトモシやプルリルを見たことが無いはず。ならば、ゴーストタイプだと知らなくても不思議ではない。

 

「――なら! プルリル、たたりめ! ヒトモシ、シャドーボール! ジャノビーはもう一度エナジーボールだ!」

 

「ヤナップ、タネマシンガンだ!」

 

「プルーーーッ!」

 

「モシーーーッ!」

 

「ジャノーーーッ!」

 

「ナプププ!」

 

「――フーーーッ!」

 

 四つの技が迫る。これらを一度食らえば流石に無傷では済まない。しかし、それらは途中で止められる。

 

「止まった!?」

 

「まさか、サイコキネシス!?」

 

 そう、フーディンは念動力で四つの技を受け止めたのだ。しかも、それだけではない。

 

「フー……ディーーーン!」

 

「な、何っ!?」

 

「跳ね返した!?」

 

 フーディンはサイコキネシスで四つの技を操り、その全てをプルリルに命中させる。効果抜群の技を四つも食らい、プルリルは倒された。

 

「リ……ル……」

 

「プルリル、戻れ!」

 

 シューティーは急いで倒されたプルリルを戻す。

 

「相手の技を止めるだけでなく、操ってぶつけるなんて……!」

 

「それに、のろわれボディが発動していない……!」

 

 プルリルには攻撃した技を一体に付き、一つだけを封じる特性、のろわれボディがある。しかし、サイコキネシスでやられたにも拘わらず、封じられていない。

 

「偶々発動しなかった……。いや、違う。発動出来なかったんだ」

 

「……どういう事ですか?」

 

「プルリルを倒したのは、サイコキネシスじゃない。サイコキネシスで操ったヤナップ達の技だ」

 

 ハッとするシューティー。そう、サイコキネシスで操られたとはいえ、プルリルを倒したのはこちらの技だ。それ故にフーディンには発動しなかったのだ。

 

「と言うことは……!」

 

 シューティーが残った三匹を見る。すると、三匹には黒い靄が掛かっていた。最悪な事に、のろわれボディは三匹に発動していたのだ。

 

「くっ、技が……!」

 

 フーディンは知らないとはいえ、結果として特性を利用してこちらを不利に追い込んだ。

 

「シューティー、ヒトモシの残りの技の中にゴーストタイプの技は?」

 

「……ありません」

 

 ヒトモシが覚えているゴーストタイプの技は、シャドーボールだけだったのだ。もうヒトモシでは弱点を付けない。

 

「……なら、シューティー。僕と一緒に時間を稼げるかい?」

 

「……策があるんですか?」

 

「一つある」

 

「分かりました。それに乗ります。出てこい、バニプッチ!」

 

 プルリルは倒され、ヒトモシは封じられた。となると、策があるデントを重視するのは当然だ。同時にプルリルをやられた穴を埋めるべく、バニプッチを呼び出す。

 

「先ずはくろいきり!」

 

「ヒトモシ、くろいきりだ!」

 

「モシーーーッ!」

 

「ディン……!?」

 

 黒い霧を出し、フーディンの視界を奪う。

 

「よし、この間に――」

 

「フーーー!」

 

「なっ、後ろ!?」

 

 作戦を実行しようとしたデント。しかし、フーディンが自分のシューティーの背後に突然現れる。

 

「フーーーッ!」

 

「モシッ!」

 

「バニィ!」

 

「れいとうパンチ!」

 

 フーディンは冷気の拳を放ち、バニプッチとヒトモシにダメージを与える。効果今一つなので小さくはあるが、無視は出来ない。

 

「ヤナップ、かみつく!」

 

「ジャノビー、いあいぎり!」

 

「ヤーナー……!」

 

「ジャノー……!」

 

「――フー!」

 

 反撃をしようとしたヤナップとジャノビーだが、フーディンの姿が消えて空振りに終わる。

 

「これは……テレポートか!」

 

「背後に回ったのもこれで!」

 

 念動力で瞬間移動する技、テレポート。フーディンはこれで背後に回り、攻撃も避けたのだ。

 

「――ディン!」

 

「ヤナッ!?」

 

「モシ!?」

 

 フーディンの目が青く輝く。すると、ヤナップとヒトモシが宙に浮く。サイコキネシスだ。

 

「フーー……!」

 

「バニプッチ、れいとうビーム! ジャノビー、グラスミキサー!」

 

 サイコキネシスを止めようと、シューティーはジャノビーとバニプッチで攻撃する。

 

「――ディ!」

 

「ヤナーーーッ!」

 

「モシーーーッ!」

 

「しまった!」

 

 しかし、フーディンはサイコキネシスで二匹を盾にするように前に出し、二つの技は二匹に当たってしまう。

 

「――ディ!」

 

「モシシッ!」

 

「ナプッ!」

 

 フーディンは更に二匹を念動力をぶつけさせ、地面に叩き付ける。

 

「ディン!」

 

「トモーーーッ!」

 

「ヒトモシ!」

 

 連続のダメージに動きが鈍った所を、フーディンが冷気の拳を放つ。今一つだが、それが決め手になってヒトモシも倒された。

 

「戻れ、ヒトモシ! ジャノビー、もう一度グラスミキサー! バニプッチはこおりのつぶて!」

 

「ヤナップ、タネマシンガン!」

 

「フッ! フフー!」

 

 技を放った隙を狙い、一斉に攻撃するも、フーディンは軽やかにかわす。

 

「ディーーーン!」

 

 スプーンを交差させ、闘気を球にして練っていく。それを極限まで小さくし――高速で発射。バニプッチに直撃させ、効果抜群の一撃で倒した。

 

「戻れ、バニプッチ! くっ、何て強さだ……!」

 

 フーディンはまだ一撃も攻撃を受けていない。対して、こちらは四匹が続けざまに倒され、ヤナップもかなりのダメージを受けてる。

 二対一、ポケモンの数に至っては四倍の差があると言うのに、こちらが劣勢だった。フーディンの能力、技の威力は勿論、複数の敵との戦い方が巧みすぎるのだ。

 

「ハトーボー、頼む!」

 

「ボー!」

 

「これ以上は不味いね……! イシズマイ、君も出てきてくれ!」

 

「マーイ!」

 

 これ以上倒されては、勝ち目が無くなる。シューティーはジャノビーを除いた最後の一匹、ハトーボーを、デントはイシズマイを呼び出す。

 

「イシズマイ……! なるほど、虫タイプの技で一気に――」

 

「いや、それだけじゃ勝てない。第一、テレポートやサイコキネシスを使うフーディンにそもそも当たるかと言う問題もある」

 

 確かにその通りだ。効果抜群の技で攻めても、上手くやらねば簡単に対処されてしまう。

 

「シューティー、翻弄してくれ! ヤナップ、がんせきふうじで僕達の周りをガード!」

 

「はい! ジャノビー、プルパワーグラスミキサーを僕達の周りに! ハトーボー、かげぶんしん!」

 

「ヤナーーーッ!」

 

「ジャ、ノーーーッ!」

 

「ハトハトハト!」

 

 岩石や草渦で自分達の周りを覆い、分身でフーディンの周りを囲む。

 

「フーーーッ!」

 

 しかし、フーディンはサイコキネシスを使って岩を持ち上げ、先ずは分身を瞬時に消して本体のハトーボーにダメージを与える。次に渦に放り投げ、消滅させた。

 

「十数秒しか持たないのか……!」

 

「フー……ディン?」

 

 追撃しようとしたフーディンだが、イシズマイの姿が見えない事に疑問を抱く。

 

「ハトーボー、つばめがえし! ジャノビー、いあいぎり!」

 

「ヤナップ、かわらわりだ!」

 

「トーーーッ!」

 

「ビーーーッ!」

 

「ヤナーーーッ!」

 

 何処にと探そうとしたフーディンだが、そんな彼を邪魔するようにハトーボーとヤナップが迫る。

 

「フン!」

 

「ボッ!?」

 

「ジャノッ!」

 

「ナッ……!」

 

 しかし、三匹の攻撃はフーディンのサイコキネシスによって軽々と阻止。更には地面に叩き付けられ、逆にダメージを受ける有り様だった。

 

「フー……!」

 

 冷気の拳を構えるフーディン。れいとうパンチだ。これを受ければ、ハトーボーやジャノビーは大ダメージを受け、蓄積しているヤナップは戦闘不能に陥るだろう。

 そして、無情にも冷気の拳が振り下ろされる――その瞬間だった。

 

「今だ、イシズマイ! シザークロス!」

 

「――イマイーーーッ!!」

 

「フー!? ――ディーーーン!!」

 

 横から、身体が赤く輝くイシズマイが迫る。デント達が時間を稼いだ間に三度も発動したからをやぶるにより、極限の脆さを引き換えに極限の速さと攻撃力を得ていた。

 奇襲や予想以上のイシズマイのスピードにフーディンは対応仕切れず、超威力のシザークロスを受けて盛大に吹き飛び、壁に激突した。

 

「フ……ディ、ン……」

 

 流石のフーディンと言えど、威力が極限まで高まった効果抜群の技を受けては一堪りも無い。ドサッと前に倒れた。

 

「た、倒した……」

 

「何とかですけどね……」

 

 自分達だけでも四匹を倒され、重傷が一体。他のトレーナーを合わせれば被害はかなりの物だ。

 

「やった! あのポケモンを倒したぞ!」

 

「この調子で他の奴等も倒すんだ!」

 

「道具での回復もするわ!」

 

 それでもフーディンが倒れ、トレーナーの士気は回復していた。彼等は倒れた仲間や、シューティーとデントのポケモンの手当てを素早く行なう。

 

「にしても、こんなのが後どれだけいるんでしょうか……」

 

「そんなに多くないとは思いたいね……」

 

 一匹倒すのにこの様だ。これが百もいたら間違いなく勝てない。

 

「……とはいえ、あの実力を高さを考えると、多分部隊を率いる隊長のポケモンじゃないかな? だとしたら――」

 

「……多くても十とか二十ぐらいですか? ……十分キツイです」

 

「……確かに。まぁ、とにかく倒せたんだ。少し休んだら救助に向かうのを再開しよう」

 

「……さっさと出れば良かったですよ」

 

 激戦は終わったが、休む暇は無い。シューティーは思わず、さっさとヒウンシティを後にしたらと呟く。

 そうしたら、こんなに苦労せずに済んだのだから。辛さから溜め息が出る。

 

「なら、出るかい?」

 

「まさか」

 

 お人好しではないが、目の前の惨状を放って置くほど冷酷でもない。ここで逃げる気などさらさら無かった。

 

「じゃあ、頑張ろうか」

 

「えぇ」

 

 少し休み、二人は他のトレーナーや警官と共に歩き出した。

 

 

 

 

 

「……」

 

「リキ……!」

 

「ドラ……!」

 

 ポケモンセンターの前。そこで一匹と二匹のポケモンが向き合っていた。

 二匹は、その破壊力や防御力でベル、カベルネ、ジュンサーやトレーナー達を圧倒したカイリキーとボスコドラ。

 一匹は、かつてサトシと戦い、その桁外れの実力で実質的に勝利をした色違いの片刃のオノノクス。彼等は互いに睨み合い、出方を伺っていた。

 

「あ、あのオノノクス、間違いない……!」

 

「あ、あんた知ってるの?」

 

「知ってる……! 前にサトシ君に勝ったオノノクスだよ……!」

 

「あいつに勝った!?」

 

 カベルネなりに、サトシの実力の高さは知っている。目の前のオノノクスはその彼に勝利した。どれだけの強さなのか予想も出来ない。

 

「と、ともかく……! そんなのが何でここにいるのよ……!?」

 

「わ、分かんないけど……。何か、まるで……」

 

 二匹に対峙する様を見ると、自分達を助けに来たように思えるのだ。気のせいだろうか。

 

「リキーーーッ!」

 

「ドラーーーッ!」

 

「……」

 

 カイリキーとボスコドラの叫び。思わずベルとカベルネは身を竦ませるも、オノノクスは微動だにしない。冷静に二匹を分析していた。

 

(二匹共、実力はかなりのものか)

 

 自分よりは劣るが、気を抜けるレベルの相手ではない。それが二匹。

 

(そして、属性は鋼と、闘。となると、注意すべきは……)

 

 幾度もの戦いをこなしてきたオノノクスは、外見からある程度タイプを推測したり、注意すべき技を把握する能力を身に付けていた。

 鋼タイプならば、ダメージを増幅して返すメタルバースト。格闘タイプならば、高威力の上に食らえば混乱になるばくれつパンチ。と言った風に。

 

(ならば、先に倒すべきは……)

 

 ばくれつパンチを放つ可能性があるカイリキーからだ。その後にボスコドラを倒すのが最善。

 だが、向こうがこちらの思惑通りに動くとは思えない。実際、二匹はオノノクスを警戒し、ボスコドラを前に、カイリキーが後ろの陣形を取っていた。

 ボスコドラがオノノクスの攻撃を受け止め、隙を狙ってカイリキーがばくれつパンチを叩き込もうとしているのだろう。迂闊に動けなかった。

 

(……しかし、このままは不味いな)

 

 倒すべきはこの二匹だけではない。他の暴走しているポケモン達もだ。ただでさえ、ここはこの二匹によって防衛ラインが崩されている。

 向こうから少しずつ迫って来ているポケモン達を考えると、一刻も早く倒す必要がある。しかし、いわなだれでの牽制も、この二匹には薄いだろう。迂闊には動けない。

 

「……ねぇ、カベルネちゃん」

 

「何よ!?」

 

「加勢、しようよ。オノノクスに」

 

「……無理に決まってるでしょ! 私達じゃあ、あの二匹とまともに戦う事さえ不可能なのよ!? オノノクスに任せた方が良いわ!」

 

 自分達とカイリキー、ボスコドラとの実力差は歴然。文字通り、一蹴されてしまうだろう。

 現にさっき、二匹によって自分はメブキジカ、ダルマッカ、ヨーテリーが。ベルはチラーミィが瞬殺されている。

 

「けど、あのオノノクスでも混乱になったらただじゃ済まないよ……」

 

 桁外れの実力の持ち主だとしても、混乱になれば無傷ではいられないだろう。下手すれば倒されるかもしれない。

 

「私達が入っても足を引っ張るだけよ!」

 

「――ううん。力になれる方法があるよ」

 

「……聞かせなさいよ」

 

 断言したベルに、カベルネは聞くことにした。その方法を。

 

「……ノクス」

 

「リキ……!」

 

「ボス……!」

 

 その間にオノノクスが口に力を込める。すると、左牙に力が宿り出す。攻撃の準備であり、オノノクスは自分が大ダメージを受けるの承知の上で行おうとしていた。

 カイリキーとボスゴドラも、オノノクスが来ると理解し、身構える。

 

「……カベルネちゃん!」

 

「分かってるわよ!」

 

 オノノクスが信頼出来る相手とは限らないが、少なくとも敵ではない事は一緒に攻撃してこない所から分かる。ベルの作戦も聞き、カベルネは一緒に行なう。

 

「……オノ!」

 

 オノノクスが走る。みるみる二匹との距離を縮め、ボスゴドラは防御の体勢を、カイリキーはオノノクスの攻撃の後の反撃を狙う。

 

「今よ、チャオブー! ボスゴドラにヒートスタンプ!」

 

「フタチマル、カイリキーにシェルブレードよ!」

 

「チャオーーーッ!」

 

「フターーーッ!」

 

「オノ!?」

 

「カイ!?」

 

「ボス!?」

 

 もうすぐで攻防が始まる、その手前でチャオブーがボスゴドラにヒートスタンプ。フタチマルがカイリキーにシェルブレードを放つ。

 

「――ゴドォ!」

 

「――リキィ!」

 

 しかし、ボスゴドラとカイリキーは平然と耐え、掴んで対応する。そもそも、実力差が有るのだ。ベルやカベルネでは、不意を突く程度で倒せる相手ではなかった。

 

「カイ!」

 

「ゴド!」

 

「フターッ!」

 

「チャオーッ!」

 

 そして、ボスゴドラとカイリキーは邪魔だと言わんばかりに反撃のばくれつパンチやもろはのずつきを放つ。

 フタチマルとチャオブーはその技を諸に食らい、壁に激突して戦闘不能になる。

 

「今だよ!」

 

「決めなさい!」

 

「――オノ!」

 

 自分に掛けられたその言葉と視線に、オノノクスは全て理解した。不意を突いたのは彼女達がボスゴドラとカイリキーを倒す為ではなく、自分がこの二匹の隙を突くためのだと。

 

「ボス!? ゴドーーーッ!」

 

 力が込められた刃――一撃必殺の大技、ハサミギロチンをオノノクスはボスゴドラに叩き込む。

 高い防御力を持つボスゴドラも一撃必殺の大技をまともに食らい、戦闘不能に陥る。

 

「カ、カイーーーッ!」

 

「――オノ!」

 

 ボスゴドラが倒され、慌てるカイリキーだが、それでもほとんど無駄なくバレットパンチを放つ。オノノクスは身体を捻って避けつつ、尻尾をカイリキーに叩き付ける。

 

「カイ! リ、キ……!?」

 

 倒れたカイリキーは顔を上げるも、見えたのは黒竜が力を込めた斧のような牙をまるでギロチンの様に振り下ろす光景。

 そのまま避ける間もなく、ハサミギロチンを受け、カイリキーも戦闘不能となった。

 

「――ノクス」

 

 ふぅと、オノノクスは軽くため息を付く。戦いは瞬時に終わったが、それは結果論。

 ベルやカベルネがいなければ、苦戦は必須。相討ちや、下手したら敗北もあり得ただろう。

 

「あ、あの、オノノクス。頼みが――」

 

「……オノ」

 

「――うわっ?」

 

 ベルはオノノクスに頼もうと近付くと、その頭を撫でられた。

 

(やれやれ)

 

 前は自分に怯えていたこの少女に助けられた。それがこの状況は不謹慎だと思いながらも、オノノクスを微笑ませたのだ。

 

「――ノクス」

 

 数秒にも満たない間に終えると、オノノクスはクルッと背を向ける。

 

「任せても……良い?」

 

「オノ」

 

「……やけに人が良いわね。目的は何?」

 

 ベルの頼みをオノノクスは頷くが、カベルネは少し胡散臭い様子で見ていた。

 そもそも、何故このオノノクスはやられる危険を背負ってまで自分達を助けたのだろうか。それが分からない。

 

「……」

 

 カベルネの質問に、オノノクスは答えない。その必要はないと言いたげに。

 

「カベルネちゃん、ここはオノノクスに任せよう」

 

「……そうね。戦えなくなった私達じゃあ、文字通り足手まといでしかないし」

 

「皆さん、今の内にポケモンセンターで!」

 

「皆、手当てを!」

 

 ベルの言葉に、負傷したジュンサー達はポケモンセンターに向かう。ベルとカベルネはその後に入る。

 

「オノノクス、少しでも早く戻るから!」

 

「それまでは頑張んなさい!」

 

「……オノ」

 

 彼女達が全員ポケモンセンターに入り、オノノクスは到着したポケモン達に向かい合う。

 

(――ここは死守する)

 

 オノノクスにとって、ベルやカベルネ達は他人だ。しかし、だからと言って罪無き彼女達が傷付き、苦しむのを見過ごす訳には行かない。

 オノノクスは、持てる全ての力を振るい、戦うと決めた。その迫力に、ロケット団のポケモン達は怯むも、数秒後には襲いかかる。

 

「――オノォオオォオォォーーーーーッ!!」

 

 咆哮を上げながら、片刃の黒竜は無数のポケモン達へ向かった。

 

 

 

 

 

「な、何なのよ、この強さ……!」

 

「ド、リュ……!」

 

「ゼ……ル……!」

 

「バーーーーーン!」

 

 ヒウンジム前。果敢にもバンギラスと闘うアイリス達だが、その結果は一方的だった。アイリス達は既に満身創痍。バンギラスはほとんど消耗していない。

 ゴチルゼルはそもそも、相性が最悪。相性の良いドリュウズは砂嵐で特性、すなのちからが発動し、ドリルライナーやメタルクローの威力が上がっていたにもかかわらず、バンギラスには歯が立たなかった。基本の差が有りすぎたのだ。

 

「バン!」

 

「ゼル……!」

 

 バンギラスが地面を叩き、だいちのちからが迫る。狙いはドリュウズだ。ゴチルゼルは痛む身体を起こし、緑色のオーラ――まもるで防ぐ。

 

「――リュズ!」

 

 ゴチルゼルが技を受け止めたその隙に、ドリュウズが螺旋の突撃を仕掛ける。

 

「――バン!」

 

「リュズーーーッ!」

 

 特性、すなのちからで強化されたドリルライナーを、バンギラスは真正面から受け止め、力で強引に回転を停止させると、腕で薙ぎ払う。その力により、ドリュウズは建物の壁に叩き付けられる。

 

「リュ、ズ……!」

 

「ドリュウズ、立って!」

 

 バンギラスとの実力差から、ドリュウズはある一件を思い出して戦意をへし折られそうになるも、アイリスの必死の叫びが聞こえる。

 

「お願いよ! あたし達は負ける訳には行かないの! だから、立って!」

 

 ここで負けたら、ヒウンジムに避難している子供達や人々がどうなるか分からない。無茶だと分かっていても、勝つしかないのだ。だからアイリスは叫ぶ。

 

「ド、リュ……!」

 

「――ギラァ!」

 

「……! ゴチルゼル、逃げて!」

 

「ゼ……ル……」

 

 ドリュウズが何とか立とうとしたのと同時に、バンギラスは口に暗黒の力を溜める。悪タイプの技、あくのはどうだ。

 それをバンギラスはゴチルゼルに向けて放とうとする。まもるで自分の技を防ぐのを止めるためだ。

 悪タイプの技のため、エスパータイプのゴチルゼルはダメージの蓄積もあり、戦闘不能になるだろう。

 ゴチルゼルはまもるで対応しようとしたが、ダメージのせいで動きが鈍り――あくのはどうが発射される。

 

「――ゴチルゼル!」

 

 迫る悪の波動。もう少しでゴチルゼルに命中し、戦闘不能にするその技から――一人の人物が横から駆け込んで助ける。

 

「大丈夫、ゴチルゼル?」

 

「ゼ、ゼルル……!」

 

「サリィさん!」

 

 助けたのは、ゴチルゼルの相棒、サリィだった。駆け込んだ時、地面に身体を滑りながら打ち付けたため、服は破れて皮膚も少し擦りむいていたが、彼女はゴチルゼルの身を案じていた。

 

「ゼル……?」

 

「パートナーを助けない人がどこにいるの」

 

 どうしてとゴチルゼルは尋ねるが、サリィからすれば当然の理由だった。その言葉にゴチルゼルは微笑む。しかし、バンギラスは容赦しない。

 

「バー……!」

 

「サリィさん! またバンギラスが!」

 

「くっ、また……!」

 

「ギラ――スッ!?」

 

 悪の波動を放とうとしたバンギラスの口内に、茶色の物体が入り込む。突然の不意打ちと予期せぬダメージに、バンギラスは悶えた。

 

「今の……?」

 

「――ヤブッ!」

 

「ヤブクロン!?」

 

 その声に、その場にいる全員が注目する。その主は、子供達と一緒にいるヤブクロンだった。

 ヤブクロンがヘドロばくだんをバンギラスの中に打ち込み、あくのはどうを阻止したのだ。

 

「ヤ、ヤブクロン! 戻って!」

 

「ヤブヤブ!」

 

 声で外に出た事に気付いたのだろう。子供達が扉前で呼び掛けるも、ヤブクロンは頭を横に振る。

 ここでバンギラスを倒さねば、確実に子供達に被害が出る。自分を孤独から助けてくれた彼等を守るため、ヤブクロンは戦うことを決意したのだ。例え、どれだけ力の差が有ろうとも。

 

「バー……!」

 

「――リュズ!」

 

 あくのはどうを放ち、ヤブクロンを仕留めようとしたバンギラスだが、そこにドリュウズがメタルクローを放つ。

 

「ヤブヤブーーーッ!」

 

 ヤブクロンに気を取られ、メタルクローを諸に食らうバンギラス。ドリュウズに注意が向いたそのタイミングに、ヤブクロンはヘドロばくだんを連射。

 全て当てるも、ダメージはほぼ無いに等しい。しかし、注意はヤブクロンに向かう。

 

「ドリュ!」

 

 そこに再度ドリュウズのメタルクロー。効果抜群の一撃でダメージを与えていく。

 

「バン……! ――ギラァーーーッ!」

 

「皆、避けてーーーっ!」

 

 思わぬダメージを受けたバンギラス。しかし、痛みを打ち消すほどの怒りがその表情には浮かんでいた。

 拳で地面を叩き、周囲に大地の力を柱状に噴火させる。

 

「きゃああっ!」

 

「リュズーーーッ!」

 

「ゼルーーーッ!」

 

「ヤブーーーッ!」

 

 直撃こそはしなかったが、周囲にいる全員がだいちのちからの余波を食らう。

 

「ヤ、ヤブクロン!」

 

「キバキバーーーッ!」

 

「ルグルッグ!」

 

「ブイブイーーーッ!」

 

「い、行っちゃダメッ!」

 

 その光景に子供達は叫び、キバゴ、ズルッグ、イーブイの三匹は助けようと向かうも、サリィから言われて預かっている子供達に止められる。

 

「む、無理だ……! もう終わりだ……!」

 

「こ、ここから離れるの!」

 

「どこに!? 周りは暴れてるポケモン達だらけだぞ!?」

 

 全員が倒れ、その様を見ていた人々は恐怖からヒウンジムを離れようとする。しかし、周りにはまだ多くのポケモン達がいる。下手に動いても、危ないだけだ。

 

「ま、まだ……! まだ、よ……!」

 

「……ドリュ!」

 

「そう、ね……!」

 

「ゼ、ル……!」

 

「ヤブ……!」

 

 痛みに耐えながらアイリスが立つ。その様に、ドリュウズ、サリィ、ゴチルゼル、ヤブクロンも辛うじて立ち上がる。

 

「た、立ち上がったけど……!」

 

「差が有りすぎる……! 無理だ……!」

 

「そんなこと言うな!」

 

 しかし、その様は人々を勇気づけるにはあまりにも弱々しく、彼等は諦めの声を漏らすも、それを子供達が否定する。

 

「ヤブクロンもアイリス姉ちゃんもサリィ姉ちゃんも、ドリュウズもゴチルゼルも頑張ってるのに、そんなこと言うな!」

 

「そうだそうだ!」

 

 涙目の子供達の声に、人々はアイリス達を見る。彼女達はあんなにボロボロになってまで、戦えない自分達の代わりに戦っている。なのに、自分達は何も出来ないまま諦めるだけなのか。

 

「……道具は!? 何か、この状況を変えれる物は!?」

 

「いや、ポケモン達に傷薬を掛けるべきじゃ!?」

 

「ダメ! あのポケモンの強さを考えると、ただ回復しても焼け石に水よ!」

 

「しないよりはマシだろ!」

 

「……」

 

 良いわけがない。人々は奮起し、何か出来ないかと話し合う。そんな中、一人の男性が持って来ていた鞄を取ると開く。

 

「それ……ジュエル!?」

 

 鞄の中には、ポケモンの技の威力を底上げする道具――ジュエルが十七全てあった。

 

「……でも、大きくないか?」

 

「……これは原石だ。それも特大のな」

 

 ただ、男性が取り出したのは、店で出される製品版ではなく、加工される前の原石だった。

 男性はこれをある傳で手に入れ、商談をしようとしていた。

 

「……これを使えば、製品のよりも、技を遥かに強化出来る」

 

「じゃあ!?」

 

 この原石を使えば、バンギラスを倒せるのでは。一人がそう思ったが、男性は首を横に振る。

 

「ただその分、本来はない負担があるんだ……! それもかなり大きい……!」

 

 かつて、原石のままのジュエルで技を増幅した結果、そのポケモンが重度の怪我を負った事があった。

 加工はその負担と、再使用をスムーズにした安定品にする為の必須過程なのだ。

 もし、使うにしても、相当鍛えたポケモンが万全の体調でなければならない。つまり、消耗している今の彼等では負担が大きい。

 男性が今まで出さなかったのも、商談に影響が掛かるのもあったが、それ以上に負担の理由が大きかった。

 

「――ルッグ! ルグ!」

 

「あっ、ズルッグ!」

 

 ズルッグが子供達から離れ、ジュエルに近寄る。本能的にあるタイプのジュエルを手に取り、外に向かって走り出す。

 

「お、おい!?」

 

「――ブイ!」

 

「――キバッ!」

 

「イーブイ!」

 

「キバゴ!」

 

 続いて、イーブイやキバゴもタイプの違う二つのジュエルを加え、掴むとズルッグ同様に外に走り出す。

 

「や、止めろ! 小さなお前達がそれを使ったらどれだけの負担になるか、分からないんだぞ!?」

 

 必死に止める男だが、三匹は構わずにバンギラスに接近していく。

 

「バン……?」

 

「キ、キバゴ、ズルッグ、イーブイ……!?」

 

「ダメ……! あなた達が敵う相手じゃ――」

 

「ルッグーーーッ!」

 

 アイリスとサリィが止めに入るも、その前にズルッグがジュエルの力を引き出す。

 瞬間、膨大な力が身体中に入り込む。幼いズルッグにはキツすぎる程の量で、痛みに表情を歪める。

 

「ル、ッグ……! ルグーーーッ!」

 

 しかし、ズルッグはそんなこと関係あるかと言わんばかりに力を放出。球状に変化させていく。

 

「えっ、あれって――」

 

「きあいだま!?」

 

 それは、闘気を球にして放つ格闘タイプの技、きあいだま。しかも、ジュエルの力でかなり巨大化しており、バンギラスと同じサイズだった。

 その技に驚くアイリスとサリィだが、これは原石のジュエルのエネルギーにより、潜在能力を一時的に引き出されたために起きた現象だった。

 

「ルッグーーーッ!!」

 

「バンーーーッ!?」

 

 悪と岩、二重の効果抜群を食らい、バンギラスもそれなりのダメージを受ける。

 

「ブ、イ……! ブイーーーッ!!」

 

「ギラァーーーッ!?」

 

 そこに、次の攻撃――ノーマルジュエルで力をブーストしたイーブイが、ズルッグ同様の痛みを受けながらバンギラスに触れ、力を放つ。新しい技であるそれを。

 直後、閃光と共に凄まじい轟音が響きバンギラスが吹き飛ぶ。

 

「な、何、今の技!?」

 

「すてみタックル……? ギガインパクト……? いや、そう言う技じゃない……」

 

 サリィの読み通り、イーブイが放ったのは違う技。その名はきりふだ。はかいこうせんに迫る大技だが、時間が立たないと十全の威力は発揮しない制約がある。

 今のきりふだは、原石のノーマルジュエルで大幅にブーストされたため、本来の威力で発揮されたのだ。

 また、直前のきあいだまでバンギラスの特殊防御力は低下。その為、効果今一つのノーマルタイプのきりふだでもそれなりのダメージになっていた。

 

「ル、グ……!」

 

「ブ、イ……!」

 

「キバッ!」

 

 行け。大きすぎる反動で倒れたながらも自分に語りかけるズルッグとイーブイの声に、キバゴは頷くと原石のドラゴンジュエルを使用。

 

「キバ……! キーバーーーッ!」

 

 二匹と同じ反動が発生するも、凄まじい力を得る。そして、ズルッグ、イーブイに続き、新しい技であるその力を本能のままに解放する。

 

「キバキバキバキバキバーーーッ!!」

 

「バッ、バーン!?」

 

「あの技……!」

 

「げきりん……!」

 

 竜の怒りを表したかのような猛攻、げきりんをキバゴはアイリス達を傷付けたバンギラスにただひたすらにぶつける。

 小さな竜の物とは思えないその猛攻に、バンギラスは少しずつダメージを受ける。

 

「キー……バーーーーーッ!!」

 

「バーンッ!」

 

 怒涛の連撃、その〆となる一撃をキバゴはありったけの力を込めて叩き込む。バンギラスは軽く吹き飛び、キバゴは技と増幅の二重反動により倒れた。

 

「キ……バ……」

 

「キバゴ、ズルッグもイーブイも……!」

 

「無茶し過ぎよ……! けど、これで――」

 

「バーーーーーン!!」

 

「う、嘘!?」

 

 バンギラスは倒した。全員がそう思ったが、それを否定するかの如く、雄叫びが上がる。言うまでもなく、バンギラスの物だった。

 

「あれだけの攻撃を受けたのにどうして……!?」

 

 その理由は単純明快。威力不足だったのだ。確かに、三匹の新しい技は大幅に強化された。しかし、バンギラスを倒すには足りなかった。

 

「バーン……」

 

 更に不味い事に、バンギラスはそのダメージで頭が冷えたらしく、冷静さを取り戻していた。

 

「そのままに!」

 

「直ぐに回復させるわ!」

 

「……ドリュ?」

 

 今度こそ絶対絶命かと思われるその時、避難していた人々がドリュウズにきずぐすりやかいふくのくすり、きのみを与えて体力を回復させる。

 

「バー……! ――ンッ!?」

 

 させるかと、バンギラスは吹き飛ばす程度のあくのはどうを放とうとしたが、そこに茶色の物体と思念の光線が当たる。今一つと無効ではあるが、中断されるには充分だった。

 

「……ゼル」

 

「ヤブ!」

 

「ゴチルゼル、ヤブクロン!」

 

 それは、ヤブクロンのヘドロばくだんとゴチルゼルのサイケこうせんだった。その二匹の後ろにサリィが立つ。

 

「何か手があるのね?」

 

「あぁ!」

 

「なら、わたし達が時間を稼ぐわ。貴方達はその間にドリュウズの回復を! ゴチルゼル、ヤブクロン、行くわよ!」

 

「ゼル!」

 

「ヤブ!」

 

「バン!」

 

 残り僅かな力を振り絞り、立ちはだかる二匹と一人。バンギラスは受けて立つと進む。

 

「ゴチルゼル、かげぶんしん!」

 

「ゼルル!」

 

「バーン!」

 

 無数の分身が現れるも、バンギラスの砂嵐により一瞬で消される。

 

「簡単に対処されちゃうわね……! でも、それは想定内よ! ヤブクロン!」

 

「ヤブーーーッ!」

 

「ギラァ!」

 

 ヤブクロンが無数のヘドロばくだんを放つも、バンギラスは炎の拳で弾きながら拳が届く範囲まで迫り、ほのおのパンチを振り下ろす。

 

「ゴチルゼル、サイコキネシスでヤブクロンを動かして!」

 

「ゼーールッ!」

 

「ヤーブッ!」

 

「バンッ!?」

 

 直撃するはずのその一撃は、念動力によって回避させられた。

 

「バン!」

 

「ヤブクロン!」

 

「ヤブヤブーーーッ!」

 

 やはり、ゴチルゼルを先に倒すべきだ。そう判断したバンギラスはヘドロばくだんの小さなダメージを受けながらも、ゴチルゼルに迫ると再度ほのおのパンチを放つ。

 

「まもる!」

 

「ゼル!」

 

「バン……! バーーーン!」

 

 緑色のオーラで弾かれるも、バンギラスは足に力を込めて無理矢理踏ん張り、炎の拳を突き出す。

 

「かげぶんしん!」

 

「ゼルルッ!」

 

「バン……! ――バーーーーーン!」

 

「やっぱり、また砂で――」

 

「ギラァ!」

 

「ストーンエッジ!?」

 

 ゴチルゼルは分身でまた避ける。バンギラスはまたその砂で消す――が、今度はそれだけはなく、無数の尖った石を展開。そこから砂嵐を強く発生させ、ストーンエッジを渦の様に発射する。

 

「ゼルーーーッ!」

 

「ヤブーーーッ!」

 

「あぁっ!」

 

 周囲へのその攻撃を、ゴチルゼルとヤブクロンは諸に受け、サリィも巻き込まれる。

 

「バン!」

 

「ゼルーーーッ!」

 

「ヤブーーーッ!」

 

 ダメージに怯んだその隙を、バンギラスはすかさず突く。拳を地面に叩き付け、だいちのちからを発動。ゴチルゼルとヤブクロンを命中させる。

 

「ゼ、ル……」

 

「ヤ、ブ……」

 

 奮戦したゴチルゼルとヤブクロンだが、残り少ない体力を削られ、遂に倒れてしまった。

 

「……!」

 

「リュズ……!」

 

 強い視線を感じ、バンギラスはそちらを向く。視線の先には、サリィ達が稼いだ間に人々によって回復したドリュウズがいた。その手には、地面ジュエルの原石がある。

 

「ドリュウズ、絶対に決めるわよ!」

 

「リュズ!」

 

 皆が繋いだこの機会。絶対に逃す訳には行かない。ドリュウズは原石の地面ジュエルの力を発動し、大きな力を得る。

 

「バン!」

 

 来いと、バンギラスは待ち構える。真正面から受けて立つ様だ。

 

「ドリル……ライナーーーーッ!!」

 

「ドリュ……ウズーーーーーッ!!」

 

 螺旋の突撃。しかし、それは最早一つの大渦と言える程の勢いとうねりが持っており、轟音を上げながらバンギラスに迫る。

 

「バーーーーーンッ!!」

 

 バンギラスは全く恐れずに炎の拳をぶつけるも、今までを遥かに上回るその威力に拳を弾かれた。

 しかし、直ぐにドリルライナーを止めようと、全身に全ての力を込めて踏ん張る。

 

「バ、バンン……!」

 

 しかし、攻撃は全く止まらない。寧ろ、その威力にバンギラスが地面を削りながら押されていく。

 

「バ……バーーーーーン!」

 

 そして、数秒のぶつかりの後、両手は弾かれ、渾身のドリルライナーがバンギラスに直撃した。

 

「……リュズ! ド、リュ……!」

 

 ドリルライナーを命中させ、距離を取るドリュウズだが、体勢が崩れた。呼吸も荒い。原石のジュエルの反動が来たのだ。

 

「決まって……!」

 

 技の際に発生し、中にバンギラスがいる煙を見ながら、アイリスはすがるように呟く。ドリュウズはかなり消耗している。これで倒さねば、完全にこっちの敗けだ。

 

「バーン……!」

 

「そ、そんな……!」

 

 三匹の身体を張った一撃、更に渾身のドリルライナーを食らってもまだ倒れないのか。

 アイリス達がそう思った瞬間だった。バンギラスはフッと微笑み――ぐらっと傾くとそのまま地に伏せた。

 

「倒……れた? 勝った……! 勝ったんだ、あたし達!」

 

 その事実を理解するのに数秒有したが、バンギラスが戦闘不能になったのを確認し、アイリス達は喜びの声を上げた。

 

「うわ~ん! 勝ったよ、ドリュウズ~!」

 

「……リュズ」

 

 バンギラスを倒し、張り詰めた緊張が解けたせいか、アイリスは泣きながらペタンとその場に座り込む。ドリュウズは素っ気ないながらも、コクンと頷いた。

 

「あっ……キバゴ、ズルッグ、イーブイ……!」

 

 その後、アイリスは三匹の方を向く。三匹は反動で倒れたまま。アイリスが駆け寄ろうとしたが、腰の力が抜けたらしく、上手く動けなかった。

 

「この子達は、俺達に任せてくれ」

 

 そんな三匹を、人々が優しく担ぐと、速やかな手当てを始めようとヒウンジムに向かう。

 

「ふぅ……。何とか倒せたわね……」

 

「ゼル~……」

 

「ヤブ~……」

 

「サリィさん……」

 

 声に顔を動かすと、重い身体を互いに肩を合わせて歩くサリィとゴチルゼル、背中に担がれたヤブクロンが見えた。

 

「ヤブクロン~!」

 

「ヤ、ヤブ……!」

 

 子供達が近付くと、ヤブクロンは頑張ったよと誇らしげに微笑む。自分達を守る為に戦ったヤブクロンに、子供達は涙目でありがとうと告げ、抱き締めていた。

 

「皆さん、バンギラスを倒して嬉しいのは分かりますが、ポケモン達の手当を直ぐに」

 

 はいと、人々は頷く。バンギラス一匹により、ここの防衛は崩れてしまった。直ぐに回復し、立て直さなければならない。

 

「ポケモン達が回復するまでは、俺達が何とかします……!」

 

 持って来た物で、ちょっとした武装をした人々が、実力が低いポケモン達を出す。彼女達が必死に自分達を守ったのだ。今度は自分達の番だと意気込んでいた。

 

「無茶はしないで。アイリスちゃん、ドリュウズの手当を」

 

「……ドリュウズ、もうしばらくだけお願い」

 

「……ドリュ」

 

 強敵、バンギラスは倒したが、戦いはまだ終わっていない。この惨劇が終わるまで戦うべく、彼女達は奮闘する。

 

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