ポケットモンスター アナザーベストウイッシュ   作:ぐーたら提督

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 かなり長くなったので、二つに分割しました。


ヒウンジム戦、前編

「無事で何よりだ、アイリス」

 

「シャガ、さん……」

 

「キバ?」

 

 セントラルエリア。もうしばらくの後にジム戦が始まるその場所では、再会を果たした数人が各々の時間を過ごしていた。

 例えば、アイリスとシャガ。この二人は知り合いではあるが、正直今のアイリスにとってシャガは会いたくない相手だった。

 

「その、あたし……」

 

「――良くやった」

 

 言葉に詰まるアイリスに、シャガは頭を手を乗せながら誉める。

 

「今回の件で頑張ったそうだな。アーティから話は聞いている」

 

「で、でも、あたしは……」

 

「それは今後だ。後、ドリュウズとはどうだ?」

 

 シャガは、アイリスとドリュウズの関係が上手く行っていない事を知っている。その気は無かったが、要因でもあるからだ。

 

「その、まだ……」

 

「そうか。だが、しっかりと向き合う事だ。そうすれば、必ず分かり合える」

 

「……はい」

 

「それと、そのキバゴが預かったポケモンか?」

 

「そうです。あたしが未熟なせいでまだまだですけど……」

 

「キバキバ!」

 

 そんなことないと、キバゴはアイリスを励ます。

 

「その子とも常に向き合い、しっかり育てるのだ」

 

「はい」

 

「ふっ、まだまだだが良い目にはなっている。彼やデントのおかげか?」

 

「……かもしれないです」

 

 少なくとも、自分一人ではあの時からほとんど変わっていないだろう。

 

「なら、彼等との旅で多くの体験で学ぶが良い。そして――今よりももっと成長してソウリュウシティに来い」

 

 そこでシャガと戦わなければならない。アイリスは直ぐに悟った。

 

「さて、私はもう少し話して置きたい事もある。ここらでな。――それと」

 

 そろそろ話を切り上げようとしたシャガだが、最後に一つだけ伝える。

 

「サトシ君の近くで、一人のトレーナーとして接してやれ」

 

「そうするつもりです」

 

 強い意思でそう告げるアイリスに、シャガは余計なお世話だったかと苦笑いを浮かべる。

 

「さらばだ」

 

「また」

 

 それだけを言うと、シャガはアイリスから離れていった。

 

「じゃあ、キバゴ。あたし達はサトシの所に戻ろっか」

 

「キババ」

 

 話も終わり、一人と一匹は自分達の仲間の元に向かう。

 

 

 

 

 

「ほー、これがお前の新しい手持ちのイシズマイかあ」

 

「うん、背負う殻のようにしっかりとした意思に、優しさも持つ良い子だよ」

 

「良い仲間をゲットしましたね、デント」

 

 別の場所で、サンヨウの三兄弟が話し合っていた。

 

「イママーイ」

 

「ナプナプ」

 

「バオ~」

 

「ヒ~ヤ」

 

 デントが旅でゲットしたイシズマイをヤナップと一緒に紹介しており、ポッドとバオップ、コーンとヒヤップが挨拶。二匹はイシズマイと直ぐに打ち解けていた。

 

「にしても、まさかこんな事態になるなんて思いもしなかったな」

 

「えぇ、本当に」

 

 荒れてしまったヒウンシティに、ポッドもコーンも辛そうな表情だ。

 

「それに俺達も忙しくなるしなあ」

 

「ヒウンシティ復興の手伝いは勿論、他地方のポケモンを見なければなりませんからね」

 

 どちらも今後のイッシュの為にも、絶対にしなければならない大仕事だ。忙しくなるのは火を見るより明らか。

 

「……ポッド、コーン」

 

「お前はそっちに集中しろっつの」

 

「一度決めたことをひっくり返すのは、男らしくありませんよ?」

 

 やはり、自分はジムリーダーに戻るべき。そう言おうとしたデントだが、兄弟に止められた。

 

「だけど……」

 

「分かってるぜ、お前が俺達を思ってそう言ってるのはよ。けど、俺達なら大丈夫だ。それに――お前はさ、あいつといた方が良いと思うんだよなあ」

 

「あいつって……サトシの事かい?」

 

「彼は今回の件で理想の英雄としてこのイッシュで広く認知される可能性が高い。それが良いことばかりとは限りませんからね」

 

 英雄とは凄いだけの存在ではない。出来れば流石、当然と言う勝手な期待、出来なければその程度かと勝手に落胆、失望、時には敵意も受ける存在でもある。

 勿論、そんな人ばかりではないとは思いたいが、そうではないのが世の中だ。

 

「デントはよ、サトシの事どう思ってるんだ? やっぱり、英雄だって考えてるのか?」

 

「――いや」

 

 ポッドの言葉を、デントは明確に拒否した。

 

「サトシはサトシだよ。真っ直ぐでポケモンが大好きな熱い少年で、僕の仲間。正直、英雄は重すぎると思う」

 

 まだそんなにいるわけではない。それでも、デントはサトシをそう思っていた。だからこそ、英雄の名は無い方が良いとも。

 

「ならデント、近くにいて上げてください。これから英雄に立ち向かわなければならない彼に、仲間として」

 

「――そうするよ。それと、ありがとう」

 

「どういたしまして」

 

 完全に迷いが無くなった訳ではない。しかし、これからのサトシのためにも、デントは彼と共に旅を続けようと決心した。

 

 

 

 

 

「ベルも大変だったね」

 

「うん。すっごく。けど、チェレンもこれから大変でしょ?」

 

「まあね……」

 

 他のジムリーダー達と同じ仕事をこなさねばならない。これから大変なのは確かだ。

 

「そうだ、ベル。お父さんに――」

 

「それは黙って! お願い!」

 

 幼なじみのその言葉を聞き、チェレンはもしやと感付く。

 

「……勝手に出たんだね」

 

「……うん。そうでもないと、出来なかったから」

 

「無茶をするね」

 

「……だって、チェレンに追い付きたかったから」

 

「ぼくに?」

 

「……わたしにとって、チェレンは憧れなんだもん」

 

 一足先に旅をし、その経験からもうすぐジムリーダーになる幼なじみに、ベルは憧れを抱いていた。自分が自由でない分、尚更。だからこそ、自分は今こうして旅をしているのだ。

 

「そっか。ただ、この事は話して置くべきだ。それが筋だよ」

 

「でも、そんなことしたら、わたしは……」

 

「なら、このまま逃げ続ける事が正しいのかい?」

 

「それは……」

 

 思わない。だが、話を聞いてくれるとは考えられなかった。

 

「……はぁ、仕方ない。この話は聞かなかった事にするよ」

 

「――ありがとう!」

 

 つまり、チェレンは見逃すと言ってくれたのだ。

 

「ただ、この一回だけだよ。次に何らかの事件に巻き込まれた場合は話すから」

 

「うん、分かってる」

 

 真面目なチェレンなら、二度目が有れば流石に報告するだろう。この一度があるだけでも有り難い。

 

「じゃあ、サトシくんとアーティさんのジム戦見ようよ」

 

「そうさせてもらおうかな」

 

 ベルにとってもチェレンにとっても、この後に始まるジム戦の観戦は意味がある。二人の幼なじみはジム戦を暫し待つことになった。

 

 

 

 

 先日の戦いの痕が残り、ジム戦の為にフシデ達には退いてもらったこのセントラルエリアで、サトシとアーティが向き合う。

 

「うわ、人が凄く多い……」

 

「まぁ、片方は事件解決に最も貢献した人物。もう片方はこの街のジムリーダー」

 

「これだけ集まっても、何らおかしくない、か」

 

 サトシとアーティの周囲には、シューティー達やヒウンシティの人々だけでなく、フシデ達やN達プラズマ団や、ジムリーダー達までいた。

 

「さーて、理想に見出だされたトレーナーの実力を拝見させてもらおうか」

 

「どんなバトルになるのかねぇ」

 

「今から楽しみと」

 

 ヤーコン、ホミカ、シズイの三人が理想――即ち、ゼクロムに認められたサトシについて口に出す。

 

「……」

 

 他のジムリーダー達も興味津々だ。中でも、カミツレがサトシに一番注目していた。

 

「ふふ、これだけの観客がジム戦も早々ないだろうね」

 

「俺もちょっと緊張してます」

 

「僕もさ。――さぁ、始めようか!」

 

 アーティが審判役のジムトレーナーに目配せする。

 

「これより、ジムリーダー、アーティとチャレンジャー、サトシのジム戦を始めます。使用ポケモンは三体。交代はチャレンジャーのみ可能。どちらかの手持ち全てが戦闘不能になった時点で試合終了です。――始め!」

 

「ハトーボー、君に決めた!」

 

「出てこい、イシズマイ!」

 

「ハトー!」

 

「ズマイ!」

 

 ハトーボーとイシズマイが、バトルフィールドに立つ。

 

「サトシはハトーボー!」

 

 前のジム戦で出れなかった分、ハトーボーは張り切っていた。

 

「アーティさんは――やっぱり、イシズマイ」

 

「やっぱり?」

 

「僕の時、僕はサトシと同じくハトーボーを繰り出したんですが――」

 

「その時も、イシズマイだったと」

 

 二人のバトルの詳細を記すため、手帳を手に持ちながら頭を縦に振るシューティーに、デントはなるほどと呟く。

 

「ハトーボーはノーマルと飛行。イシズマイは虫タイプではあるけど、同時に岩タイプもある。どちらかと言うと、サトシの方が不利ね」

 

「大丈夫かな……」

 

 ハトーボーの技はどちらも、岩で等倍にされてしまう。一方、イシズマイは岩で弱点が付ける。有利なのはアーティだ。

 

「ほー、マメパト進化したんだな」

 

「その様ですね」

 

 マメパトを見ていたポッド、コーンは進化したハトーボーがどの様に戦うかに注目していた。

 

「不利だろうが、ガンガン攻めるぜ! ハトーボー、でんこうせっか!」

 

「ハトー!」

 

「イシズマイ、からにこもる」

 

「ズマッ!」

 

「ハトッ!」

 

 先手を打つべく、効果今一つでも素早い一撃を放つハトーボー。しかし、それは籠ったイシズマイは殻に弾かれてしまう。

 

「残念だが、素直に食らう気はないよ。防御を高めさせてもらった」

 

「だったら……ハトーボー、空に!」

 

「ハト!」

 

「何をする気かな?」

 

 ならばと、サトシはハトーボーを上空に移動させる。

 

「急降下しながらつばめがえしだ!」

 

「ハトーーーッ!」

 

「なるほど、急降下で技の威力を引き上げて。ならこちらも。イシズマイ、殻に籠ったまま――回転!」

 

「ズママイ!」

 

「ハトッ!?」

 

 威力を高めたつばめがえし。しかし、それも回転に弾かれてしまう。

 

「今のは……!」

 

「イシズマイ、うちおとす」

 

「かわせ、ハトーボー!」

 

「ズマイッ!」

 

「ハトー――ボーーーッ!」

 

 弾かれた隙を狙い、止まって殻に出てきたイシズマイは石を打ち出す。ハトーボーは避けようとしたが、弾かれた直後もあり、直撃して吹き飛ばされてしまう。

 

「いきなり効果抜群の技を受けた!」

 

「これも僕の時と同じですね……」

 

 先制攻撃を対応されただけでなく、反撃に手痛い一撃を受けてしまった。これは厳しい。

 また、自分の時もそうなっていたため、シューティーは険しい表情を浮かべる。

 

「ただ、あの回転は……」

 

「ハイシールド……!」

 

 自分も受けたことのある戦術、ハイシールドにカベルネは目を見開く。アイリスも驚いているが、使ったデントはさほどではない。

 アーティもカウンターシールドは見ているし、同じイシズマイがいる。使えても何ら不思議ではない。

 

「大丈夫か、ハトーボー?」

 

「――ボー!」

 

 痛い一撃だが、まだやれるとハトーボーはサトシを見て頷く。

 

「まさか、ハイシールドを使うなんて予想外でした」

 

「おや? これは君用にと今まで使って無かったんだがね?」

 

「デントが使ってました。同じイシズマイを持ってるんです」

 

「あぁそれでか。うーん、ちょっと残念」

 

 考案の切欠であるサトシ用に取っておいたのだが、先に見ていたと聞いて残念がる。

 

「だけど、編み出したのはこれだけじゃない。楽しんでもらおうか」

 

「そうします。ハトーボー、エアカッターだ!」

 

「イシズマイ、かわすんだ」

 

「ハトー!」

 

「ズママイ!」

 

 空気の刃で遠距離から攻撃を仕掛けるも、イシズマイの思わぬ身軽さで楽々かわされてしまう。

 

「速い……!」

 

 流石にからをやぶるを使った後ほどではないが、通常時はデントのイシズマイよりも素早い。

 

「僕のイシズマイの殻は軽く丈夫な素材で出来ていてね。普通のイシズマイと同じ防御力を持ちながら速いのさ」

 

 それでかと、サトシはイシズマイの速さに納得する。しかし、速いだけでなく、堅いとは厄介だ。

 

「ふふ、攻めあぐねているね。――イシズマイ、がんせきほう!」

 

「がんせきほう!?」

 

 岩タイプ、最強の技。飛行タイプのハトーボーが食らえば、最悪一撃で倒されてしまう。うちおとすで少なくないダメージを受けている今なら尚更だ。

 

(でも、確かがんせきほうは……)

 

 その破壊力故に、余程鍛えてない限りは凄まじい反動が発生し、少しの間動けなくなる。ならば、これはチャンスだ。

 

「――発射!」

 

「ズマー……イーーーッ!」

 

「ハトーボー、かわせ!」

 

「ボー!」

 

 巨大な岩の形をしたエネルギー弾を発射。凄まじい音と共にハトーボーに迫るも、ハトーボーは身体を捻ってかわす。

 

「反撃だ! つばめがえし!」

 

「ボーーーッ! ――ハトッ!?」

 

 反撃のつばめがえしを放つハトーボー。しかし、同時にイシズマイは後退。更に石の殻の中に籠った。

 つばめがえしが命中するも、からにこもるで防御力が増した岩の殻に弾かれてしまう。

 

「今の……!」

 

 がんせきほうを打った後に下がって殻に入ったのではない。打った時の反動を利用して後退、更に無駄のない動作で殻に入って防御体制を取った。明らかに偶然ではなく、訓練されてる動きだ。

 

「がんせきほうは凄まじい威力の技だが、動けなくなる反動が最大の欠点。だから、それを克服するため、反動を利用する事を思い付いたのさ」

 

 まだイシズマイには反動を消せるほどの能力はない。なので、別方向からその反動に対応したのだ。

 

「だったら……! ハトーボー、連続でエアカッターだ!」

 

「ハトーーーッ!」

 

 ハトーボーがエアカッターを連続で放つ。数枚の空気の刃は動けないイシズマイに命中はするも、殻に当たっているだけ。中に籠った本体にはダメージが無い」

 

「シザークロス!」

 

「ズマイーーーッ!」

 

「ハトーーーッ!」

 

「ハトーボー!」

 

 そして、反動が消えた。イシズマイは素早く殻から出ると、両爪を交差させながら一気に加速。技を放った直後のハトーボーに効果今一つながらもダメージを与える。

 

「うわっ、強い!」

 

「イシズマイの防御力を見事に活かしてる。流石アーティさんか……」

 

 虫タイプのエキスパートだけあり、イシズマイの力を存分に活かしている。

 

「押されてるな……」

 

「なあに、これからだって」

 

「そうそう、英雄が簡単に負けるわけないじゃない」

 

 ヒウンシティの人々が、苦戦するサトシに色々言い合っていた。

 

「さぁ、サトシくん。どう来る?」

 

 悩むサトシ。このままははっきり言って分が悪い。

 

(ミジュマルを出すってのも一つの手だけど……)

 

 効果抜群の水タイプの技や、防御力を下げるシェルブレードが使えるミジュマルなら優位に立てる。

 だが、その場合予定が狂ってしまうし、次のポケモンの弱点が付けられない。

 何より、アーティのイシズマイもハイシールドが使える。簡単には突破出来ない。

 

(なら!)

 

 ここはハトーボーで押し切る。それが最善。問題は、どうやって速さと硬さを併せ持ち、ハイシールドが使えるイシズマイを攻略するか。これに限る。

 

(……待てよ?)

 

 様々な情報から一つ目の突破口を閃くサトシ。これなら行けるかもしれない。またその閃きが、攻略法をも思い付かせる。

 

「ハトーボー、俺を信じてくれるか?」

 

「――ハト」

 

 頷くハトーボー。それだけ、彼女はサトシを信頼しているのだ。

 

「ありがとう。――ハトーボー、でんこうせっか!」

 

「ハトーーーーッ!」

 

「速い一撃で体勢を崩す気かな? そうは行かないよ。イシズマイ、からにこもる!」

 

「ズマイ!」

 

 素早い一撃を放つハトーボーに、イシズマイは再度殻に籠る。

 

「これって、さっきの繰り返し……!」

 

「じゃあ、このままだとまた反撃にうちおとすを食らっちゃう!?」

 

「既にシザークロス、効果抜群のうちおとすを受けてるわ」

 

 ここで再度食らえば、戦闘不能か、そうでなくても止めを刺されて倒されるだろう。

 大半がどよめく中、シューティーやN、デントは静かにこの戦局を見つめていた。

 大勢が見る中、ハトーボーがイシズマイに迫る。もう一秒で激突するその時。

 

「ハイシールド!」

 

「ズママイッ!」

 

「――そこだ! 右側に触れるように!」

 

「トーーーッ!」

 

 イシズマイが回転すると同時に、ハトーボーが軌道を変え、イシズマイの右側に触れながら移動する。

 

「ズマイッ!?」

 

 直後、イシズマイの体勢が崩れて身体が殻から出た。

 

「今だ、つばめがえし!」

 

「ハトーーーッ!」

 

「ズマーーーッ!」

 

 ハトーボーは急転回。勢いよくイシズマイに突撃し、初のダメージを与えた。

 

「攻撃を当てた!」

 

「けど、何でイシズマイは体勢を崩したの?」

 

「でんこうせっかですね」

 

「あぁ、間違いない」

 

「どういう事?」

 

 シューティーとデントはいち早く理解したが、残りは分からず疑問符を浮かべる。

 

「サトシはでんこうせっかで回転を強引に加速させる事で制御できなくし、体勢を崩したんだ」

 

「それに、触れた時の回転による加速で技の威力を引き上げれる」

 

 デントはN戦でポカブのころがるを加速させた件、シューティーはかぜおこしの風で煽れて隙を突かれた時の経験から直ぐに気付いた。

 

「すごい!」

 

「そんな攻略法があったなんて……!」

 

 ベルは素直に誉め、ハイシールドが敗北の要因の一つであるカベルネは、正に驚愕した様子だ。

 

(……ただ、言うだけなら簡単だけどね)

 

 失敗すれば、その回転で弾かれ、今度こそ戦闘不能になっていた。回転、それも刹那のタイミングで見切る力があってこそ。

 正直、同じことをしろと言われても出来る自信はシューティーには無かった。だからこそ、彼はサトシに不敵な笑みを浮かべる。

 

「どうですか、アーティさん。ハイシールド、突破しましたよ」

 

「お見事。ただ、それなら使わなければ良い話さ。何より――ここで決めるだけさ。イシズマイ、がんせきほう!」

 

「ズマイッ!」

 

(来た!)

 

 サトシはがんせきほうを待っていた。その隙を突くために。

 

「発射! 但し――ハトーボーの下の地面に!」

 

「――えっ!?」

 

「イーーーッ!」

 

「ハトーーーッ!?」

 

 だが、サトシの狙いは外れた。がんせきほうはハトーボーではなく、その下の地面に向かって放たれ、技の威力で礫を跳ね上げ、ハトーボーに浴びせる。

 

「ハトーボー!」

 

「ハ……ト……!」

 

 今までのダメージもあり、ハトーボーは落下する。ただ、まだ戦闘不能にはなっていない。

 

(やられた……!)

 

 完全に裏を突かれた。しかも、今の行動は自分の策が封じられた。ただ、イシズマイは反動で追撃は出来ない幸いだ。

 

「ハトーボー……!」

 

「ハトッ!」

 

 自分の声に応えるように、ハトーボーは少しの間の後、羽ばたく。同時にイシズマイも反動が消えて自由に動けるようになった。

 

(どうする……!?)

 

 サトシは必死に頭を働かせる。さっきの攻撃は回避に専念すれば避けるのは簡単だが、今のハトーボーだと先に体力が尽きて倒れてしまう。

 

「イシズマイ、うちおとす!」

 

「ズマッ!」

 

「かわせ、ハトーボー!」

 

「ハトッ!」

 

「連続でうちおとす!」

 

「ひたすら避けろ!」

 

「ズママママイ!」

 

「ハトーーーッ!」

 

 次々と発射される岩の弾丸を、ハトーボーはかわしていく。しかし、動きは少しずつ荒くなっていた。

 このままではやられる。しかし、狙っていた作戦は――と、そこでサトシは気付く。そして、タイミングを見計う。

 

「突っ込め、ハトーボー!」

 

「ハト!」

 

「一か八かの賭けかな? イシズマイ、ギリギリまで引き付けて――発射!」

 

「ズマッ!」

 

「今だ、でんこうせっか! 急降下から地面ギリギリを飛べ!」

 

「ハトー! ボーーーッ!」

 

「つばめがえし!」

 

「ハトーーーッ!」

 

 当たる少し手前ででんこうせっかの速さと急降下でうちおとすを避け、更に地面すれすれの低空飛行からつばめがえし。加速を活かしたその一撃は、イシズマイに確かなダメージを与える。

 

「ギリギリで避けるとは!」

 

「まだです! ハトーボー、もう一度つばめがえし!」

 

「甘い! イシズマイ、からにこもる!」

 

「ハトーボー! 止まって全力でかぜおこし!」

 

「――なにっ!?」

 

「ハトーーーッ!」

 

「ズマ!? マイーーーッ!」

 

 ハトーボーは追撃に再度のつばめがえし。イシズマイは防ごうと殻に籠る。

 しかし、激突の手前でハトーボーは急停止すると全力で両翼を羽ばたかせ、強風を至近距離で浴びせた。

 すると、イシズマイは強風に煽られ、殻ごと転がると身体が殻から出てしまう。

 

「これで決めるぞ! エアカッター!」

 

「ハー……トーーーーーッ!!」

 

「ズマイーーーッ!」

 

 絶好の機会。見逃す訳もなく、ハトーボーは両翼を交差させ、風の刃を発射。エアカッターは見事、イシズマイの身体に命中し、吹き飛ばす。

 

「ズマ、イ……」

 

「イシズマイ、戦闘不能! ハトーボーの勝ち!」

 

「よし!」

 

「ハトー!」

 

 先ずは一勝し、サトシとハトーボーは喜びの声を上げる。

 

「先に一体倒した!」

 

「これで数の上ではサトシの方が有利ですが……」

 

 ハトーボーはかなり消耗している。差ほど有利とは言えない。

 

「あの状況からひっくり返した!」

 

「相性でも不利だったのにね」

 

「大したもんだぜ! やっぱり、英雄だけあるな!」

 

「……」

 

 相性差を覆したサトシに、人々は賞賛の声を掛けていたが、本人は何とも言えない様子だ。

 

「お~、彼やりますね~」

 

「それに、ハトーボーの迷いのない動きから信頼関係が伺える。良いトレーナーね、彼」

 

「私もそう思うわ」

 

 トレーナーは勝利の為の指示を、ポケモンは迷いのない動きを。

 言うだけなら易しだが、それをここまで実現するには高い実力だけでなく、強い信頼も要する。だからこそ、アララギやマコモ、ショウロの姉妹もサトシ達を誉めていた。

 ただ、少し離れていた事もあり、サトシには聞こえていない。

 

「ご苦労様、イシズマイ。やられたよ、サトシ君。うちおとすをあんな風にかわしただけでなく、かぜおこしの風で吹き飛ばすとはね」

 

「本当はがんせきほう対策だったんですよ」

 

「そうか、がんせきほうを避けて後退の隙を突こうとしたんだね? だけど、僕が地面に打った事からうちおとすに回した」

 

「その通りです。で、風で飛ばしたのは――アーティさんのイシズマイ、殻の石は軽いって言ってました。だったら強い風で吹き飛ばしてしまえば良いって思ったんです」

 

 サトシの言葉に、ほとんどがあっと呟く。確かにその通りだ。軽いと言う事は、その分吹き飛びやすい。

 

「だから、かぜおこしにした。なるほど、お見事です」

 

「はははっ、相変わらず相手のを利用するが上手いなあ」

 

「えぇ、コーン達とのバトルを思い出します」

 

 飛行タイプのエキスパートとして、ハトーボーの力を引き出した事にもフウロは評価。

 コーンとポッドは自分達とのバトルの時、サトシはこちらの技を見事に利用していた事を思い出す。

 

「ふふふ、やはり君は面白いよ。サトシ君。さて、僕の二番手と行こう。出てこい、ホイーガ!」

 

「――イーガ!」

 

「あのポケモン……」

 

『ホイーガ、繭百足ポケモン。フシデの進化系。硬い殻に守られている。タイヤの様に回転して敵に激しく体当たりする』

 

「フシデの進化系」

 

「その通りさ。さぁ、君はどうする?」

 

「――戻れ、ハトーボー」

 

 少し休ませるべきと考え、サトシはハトーボーを戻す。そして、次のモンスターボールを取り出す。

 

「ポカブ、君に決めた!」

 

「ポカー!」

 

「君の二体目は、ポカブか」

 

 相性で考えれば、当然の選択と言える。

 

「では、第二ラウンドと行こうか」

 

「えぇ。但し――今度も俺が勝つ!」

 

 最初の一戦は、サトシが勝利したもののジム戦はまだ序盤が終わったばかり。流れが変わるか、続くかが決まる中盤戦が始まる。

 

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