ポケットモンスター アナザーベストウイッシュ   作:ぐーたら提督

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バトルクラブの騒動

「よっと、着いた。ここがサンヨウシティか?」

 

「違うわよ、ここはカラクサタウン」

 

 森を抜け、目の前に広がる町にサトシは目的地に着いたかと思ったが、どうやらここはサンヨウシティではないようだ。

 

「そんなことも知らないなんて、子供ね~」

 

 いや、俺数日前にイッシュに来たばかりだし。サトシはそう思うが、アララギに聞けば分かる事。聞かなかった自分が悪いと言えば悪い。

 

「サンヨウシティはこの次の町?」

 

「えっ? えぇ、そうだけど……」

 

「じゃあ、次の町に向かうとするか」

 

「ピカ」

 

 ジムが無いとすれば、この町に留まる理由もない。次の町にサトシは向かおうとし、ピカチュウも頷く。

 

「ま、待ちなさいよ! そう急ぐ必要も無いわよ!」

 

「何で?」

 

「ピカピカ?」

 

「まぁ良いから、あたしに任せて付いてきなさい」

 

「キバキバ」

 

 自分に任せろと言いたげに先を進むアイリスに、サトシはとりあえず付いていった。

 

 

 

 

 

「ここよ、ここ」

 

「ここは……?」

 

 目の前にあるのは、モンスターボールのマークがある大きな建物だ。

 

「そんなことも知らないの? ここはバトルクラブよ」

 

「バトルクラブ……」

 

 嘗て経験した、バトルフロンティア。それと同じくバトルの名が付く施設。当然サトシの興味を引いた。

 

「簡単に言うと、トレーナーと戦うための施設よ」

 

 アイリスは先に中に入り、機械に近付いて操作しながら説明をする。

 

「これが掲示板。ここに各トレーナーの自分のプロフィール、所持するポケモン、対戦したいポケモンの要望が記されてるの。で、お互いの要望が合えば呼び出して、バトルしてポケモンやトレーナーの経験を鍛えるって訳」

 

「なるほど……」

 

 つまり、効率よくバトルするの為の場所という事だ。これは参加する価値がある。

 

「バトルは何処で?」

 

「奥よ。着いてきなさい」

 

 アイリスの後を追い、一室に入る。広い場所で、バトルフィールドがあった。

 

「良いタイミング! 丁度バトルしてるわ!」

 

 バトルフィールドでは、二人のトレーナーが戦っていた。そのポケモン達を図鑑で調べる。

 

『ジャノビー。草蛇ポケモン。ツタージャの進化系。生い茂った木や草の影を踏み抜けて、攻撃を避ける。巧みな鞭捌きで反撃する』

 

「ツタージャの進化系か」

 

 そう言われると、確かにツタージャの面影がある。

 

「もう一体は――」

 

『フタチマル。しゅぎょうポケモン。ミジュマルの進化系。流れるような太刀捌きで二枚のホタチを扱う技は、厳しい修行によって身に付ける』

 

「こっちはミジュマルの進化系かあ」

 

 自分のミジュマルも何時かは進化して、この図鑑の様に流れるような太刀捌きを見せてくれるのだろうか。

 ちょっと気になるも、それを決めるのは本人――本ポケモン?――のミジュマルであって、自分ではない。

 そして、ミジュマルがどちらの道を選ぼうが、自分は見守る。それが彼のトレーナーである自分の務めなのだ。

 

「――ジャノー!」

 

 そんなことを考えていると、ジャノビーが土を捲りながらこちらに倒れてきた。その目は渦巻いており、戦闘不能であることを示していた。どうやら、フタチマルが相性を覆して勝った様だ。

 

「そこまで! ジャノビーを運んであげなさい」

 

「ジャノビー、行こう」

 

「ジャノー!」

 

 ジャノビーのトレーナーは治療をしようと、敗北の悔しみから叫ぶジャノビーを運んでいった。

 

「ポケモンバトルクラブへようこそ。儂はここのバトルマネージャー、ドン・ジョージという」

 

 鍛えられた体と、髭が特徴の男性、ドン・ジョージが二人に近付いて自己紹介する。

 

「あたしはアイリスです」

 

「俺はサトシです。ここではバトルが出来ると聞きました」

 

「勿論」

 

「ジム戦に備えて、バトルをしたいんです」

 

「ピカ!」

 

「むっ、ピカチュウ? 珍しい。この地方では見かけないポケモンだ」

 

 ドン・ジョージもピカチュウに驚く。とは言え、大人なだけあって取り乱す事はなく、笑顔でピカチュウを撫でる余裕さを見せていた。

 

「そのピカチュウ、君のポケモンかい?」

 

「君は……」

 

 サトシに近付いたのは、先程ジャノビーのトレーナーに勝利したフタチマルのトレーナーだった。ピカチュウが珍しくて来たのだろう。

 

「僕と勝負しないか?」

 

「えと、ごめん。今日はピカチュウは調子が悪いんだ」

 

「ピカ~……」

 

 バトルに異論は無いが、今日のピカチュウは体調がかなり悪く、バトルは避けたかった。

 

「だから、他のポケモンで良いかな?」

 

「構わないよ」

 

 お互い賛成し、二人はバトルフィールドに向かう。

 

「もう一つ良いかな?」

 

「なんだい?」

 

「もし良ければだけど、この勝負はダブルバトル形式で行わないか?」

 

 サトシがこう提案したのは、マメパトとミジュマルを一度に戦わせるのと、ダブルバトルで経験を得て貰うためだ。

 

「ほう、ダブルバトルか」

 

「確か、自分と相手の両方が二体のポケモンを同時に使うバトルだったわね」

 

 あまり、見たことはないバトルだ。

 

「面白そうだ。僕は受けるよ」

 

 相手トレーナーは初めてのバトルのため、経験を知ろうと受けた。

 

「では、ダブルバトルを始める。両者、同時に二体のポケモンを!」

 

「ミジュマル、マメパト、君に決めた!」

 

「行けっ、フタチマル! ミネズミ!」

 

「ミジュ~」

 

「ポー!」

 

「チマッ」

 

「ミネー!」

 

 バトルフィールドに四体のポケモンが並び、相手を見つめる。

 

「ミ、ミジュ……?」

 

 しかし、ミジュマルだけは自分の進化系であるフタチマルを前に、怯んでいた。不安そうにサトシを見る。

 

「ミジュマル。何事も経験だ! 頑張ろうぜ!」

 

「……ミジュ!」

 

 コロモリ戦での指示や、メグロコの一件もあり、ミジュマルはサトシを信頼して戦うことを決めた。マメパトは元より、やる気満々である。

 

「では、始め!」

 

「そちらからどうぞ!」

 

「なら! フタチマル、マメパトにみずてっぽう! ミネズミ、ミジュマルにたいあたりだ!」

 

「チマー!」

 

「ミネー!」

 

 水タイプに水タイプの攻撃は効果が薄い。なので、相手トレーナーはフタチマルをマメパトに、ミジュマルにミネズミをぶつけた。

 進化系だけあり、フタチマルの口からはミジュマルを上回る威力のみずてっぽうが発射。同時にミネズミもミジュマル目掛けて向かう。

 

「かわせ! ミジュマル、マメパト!」

 

「ミジュ!」

 

「ポー!」

 

 ミジュマルは走って、マメパトは飛翔でそれぞれ迫る攻撃を難なくかわした。

 

「マメパト、フタチマルに向けてかぜおこし! ミジュマル、その風に向かってみずてっぽう!」

 

「えっ!?」

 

 サトシの指示に、ピカチュウ以外全員が驚愕する。その中でも行動が早かったのは、マメパトとミジュマルだ。

 マメパトが風を起こし、ミジュマルが指示通りにその風にみずてっぽうを放つ。すると、風の勢いに水が加わり、威力、速度、範囲が増した。

 

「ふ、フタチマル! みずてっぽうだ!」

 

「フー……ター!」

 

 フタチマルがみずてっぽうを放った。しかし、水が加わった風の勢いには敵わず、大きく吹き飛ばされた。

 

「まさか、技を合わせるなんて……!」

 

「なるほど、これは実にお見事! ダブルバトルならではの技の使い方だ!」

 

 ドン・ジョージはサトシのダブルバトルならではの戦い方に、拍手を送る。

 

「ミジュマル、マメパト、ミネズミに向けてシェルブレードとエアカッター!」

 

「しまった! ミネズミ、かわすんだ! フタチマル、ミジュマルにみずてっぽう!」

 

 フタチマルが吹き飛ばされ、体当たりしたミネズミは二体の近くにいる。ほぼ二対一だ。先ずは二体からミネズミを離さねばならない。

 空気と水の刃が迫り、必死にかわそうとするミネズミだが、かわしきれずに空気の刃を一撃喰らう。

 

「ミジュマル、そのままシェルブレードでみずてっぽうを弾け!」

 

「ミジュ!」

 

 攻撃を与えたと同時に、サトシは素早く指示。ミジュマルは水の刃でみずてっぽうを弾いた。

 

「ミネズミ、こっちに!」

 

 その間に、相手トレーナーはミネズミを自分の近くに戻す。追撃も出来たが、無理に攻めて痛い目に遭うのをサトシは避けた。

 

「これがダブルバトルか……!」

 

 下手に動くと、ポケモンが片方だけとなって相手二体から攻められる。通常のバトル以上に、しっかりとした指示を出す必要があると相手トレーナーは理解した。

 向こうと同じこと、技の組み合わせは出来ないかと考えたが、残念ながら今の二匹にはそれが可能な技がなかった。

 

「なら! フタチマル、マメパトにシェルブレード! ミネズミはミジュマルにかみつく!」

 

 ならば、不利にならないように二対二を維持して戦う。相手トレーナーはそう判断した。

 

「ミジュマル、シェルブレードで応戦! マメパト、でんこうせっかでフタチマルを撹乱!」

 

 自分を噛み付こうとすりミネズミに、ミジュマルはシェルブレードを水を纏うホタチを振り回す。

 マメパトは二枚のホタチをでんこうせっかの速度を利用し、回避しながらフタチマルの周りを素早く動き回る。

 

「マメパト、高く飛べ! そこからエアカッター、二匹を狙え!」

 

「何!」

 

 マメパトは両翼を振るい、刃をフタチマルとミネズミに向けて一枚ずつ放つ。

 

「かわせ!」

 

「ミジュマル! フタチマルへのエアカッターに向けてみずてっぽう!」

 

 これまた意表を突く指示。だがミジュマルは回避しながら迷わずにみずてっぽうを発射。エアカッターの軌道を変化させ、フタチマルに直撃させる。

 

「チマー!」

 

「フタチマル!」

 

「ミジュマル! そのまま回転! みずてっぽうでミネズミを薙ぎ払え!」

 

 ミジュマルはその場で周り、薙ぎ払いのみずてっぽうでミネズミを当てて吹き飛ばす。

 

「マメパト、でんこうせっか! ミジュマル、シェルブレード!」

 

「クー、ル―……!」

 

「ミ~、ジュ~……!」

 

「フタチマル、ミネズミ! 早く立ってかわ――」

 

「ポーーッ!」

 

「マーーッ!」

 

 相手トレーナーは立て直しを指示したが、マメパトとミジュマルの方が速かった。でんこうせっかとシェルブレードが見事に決まる。

 

「フタ、チ~……」

 

「ミネー……」

 

 今の技が決めてとなり、二匹の戦闘不能となった。

 

「フタチマル、ミネズミ、戦闘不能! よって、サトシくんの勝利!」

 

「よっしゃあ!」

 

「ポー!」

 

「ミジュー!」

 

 勝ったと、サトシ達は満足げにはしゃぐ。

 

「完敗だよ。これがダブルバトル。良い経験をさせてくれて、ありがとう」

 

「こっちこそ」

 

 サトシと対戦相手のトレーナーは互いの健闘を祝い、握手する。

 

「とは言え、サトシは慣れてたみたいだし、勝てて当然の気もしなくもないけどね~」

 

「何だよ、その言い方」

 

「そうじゃないの?」

 

「まぁ、慣れてるけど」

 

「やっぱり」

 

 勝利にけちを付けられたようで、少し苛立つサトシだが、アイリスの言うことは間違っていないので反論しづらかった。

 

「僕はそう思わないな。確かに彼に有利な戦いだったかも知れないけど、ルール違反は一切してないし、こっちだって進化系のフタチマルがいたんだから」

 

 戦いにサトシの利が有るのなら、ポケモンにはこちらの方が利があったと対戦相手のトレーナーは答える。

 

「僕がもっと、フタチマルやミネズミの力を引き出して、冷静に判断していたら負けなかった。負けでも、ここまで一方的にはならなかった」

 

 練度の差が有るとは言え、自分はポケモン達の力を引き出せなかった。対して、サトシは力を見事に引き出した。

 

「何より、負けは負け。その事に異論は挟む気は無いし、これからのダブルバトルへの良い経験にはなったのは確かだよ」

 

「うむ、それにここは経験を得るために戦う場所、バトルクラブ。互いが了承した以上、その結果に対して何かを言うのは野暮だったりする」

 

 対戦相手の少年やドン・ジョージに言われ、アイリスは少し居心地が悪そうだ。

 

「またバトルをしてくれると嬉しい。その時は、ダブルバトルでも構わない。負けっぱなしなのも悔しいしね」

 

「あぁ!」

 

 サトシと少年は爽やかさを感じる握手を行なう。そのさまにドン・ジョージは正にこれこそがバトルクラブの意味だと、笑顔を浮かべていた。

 しかし、その時、彼等の気分を吹き飛ばすもの、アラートが鳴り響く。

 

「な、何だ!?」

 

「これは……!」

 

「マネージャー!」

 

 ジョージを除いた一同が困惑していると扉が開き、彼と同じ服装をしたバトルクラブの職員三人が部屋に入ってきた。

 

「また例の謎のポケモンです!」

 

「やはりか……」

 

「……謎のポケモン?」

 

「君達はここで待っていなさい。あと、君はポケモンの回復を」

 

 それだけを言うと、ドン・ジョージは職員と共に走る。

 

「ねぇ、謎のポケモンとか言ってたわよね!」

 

「うん……」

 

「面白そうだし、そのポケモン見付けてみない?」

 

「そうだな」

 

 困っているのなら、何か力になれるかもしれない。そう思い、サトシは先に走ったアイリスとドン・ジョージ達を追った。

 

 

 

 

 

 ドン・ジョージ達は、現場の倉庫で被害がほとんど無いことを確認すると、管制室でカメラの記録を見ていた。

 サトシとアイリスもいる。二人の意志を汲み取り、ジョージが許可したのだ。

 

「ジョージさん。カメラって何を?」

 

「近頃、倉庫に置いた食料が頻繁に荒らされ、見慣れないポケモンの目撃報告が多発している。だから、その正体を把握しようとカメラをセットし、その記録を見ようとしているんだ」

 

「見慣れないポケモンですか。新種でしょうか?」

 

 だったら、ゲットしてみたいと思うのはトレーナーの性だろうか。

 

「新種のポケモンがそう簡単に出るわけないでしょ」

 

「それもそうか……」

 

 アイリスの言う通り、そう簡単に新種のポケモンが出てくる訳がない。

 

「まぁ、ロマンはある」

 

 ただ、ジョージは否定しない。見掛けに寄らず、結構ロマンチストの様だ。

 

「準備完了しました」

 

「では、再生を」

 

「はい」

 

 職員が操作し、映像が映し出される。倉庫に黒い何かが高速で動いて画面の外に去り、次に怯んだ様子のロケット団が写る。

 彼等は資材の強奪に来たのだが、予想外の出来事が発生してカメラに気付かれ、逃げたのだった。

 

「今の……」

 

 ロケット団も気にはなった。しかし、その前の影がサトシにはより印象が残っていた。

 

「人間ですね。彼等は……」

 

「ロケット団です! 人のポケモンを盗ろうとする悪人です!」

 

 見知らぬ連中に職員が戸惑っていると、アイリスがロケット団について簡潔に話した。

 

「きっと、コイツらが今までの荒らしの犯人よ!」

 

「いや、違うと思う」

 

「ふむ、サトシくんも同意見か」

 

 アイリスの推測に、サトシが異を唱え、ジョージも賛同する。

 

「えっでも、ロケット団が倉庫に入ったのは明らかよ?」

 

「確かにそうだが……。最初まで巻き戻してくれ」

 

 わかりましたと、職員が事件発生直後の映像を出す。それをスローモーションで動かすと、細くて黒い影がはっきりと写る。しかし、正体までは分からない。

 

「やっぱり!」

 

「ふむ、先に出た事を考えると……この影が謎のポケモンの正体と見て、間違いないだろう」

 

「でも、こんなポケモン見たことが……」

 

「黒い色に、細い身体のポケモン……。これじゃないでしょうか?」

 

 サトシはとりあえず、推測したポケモンを図鑑に出す。

 

『ブラッキー。月光ポケモン。イーブイの進化系。月の波動を身体に浴びると、輪っか模様が仄かに輝き、不思議な力に目覚める』

 

「格好良い!」

 

 図鑑とは言え、初めて見るブラッキーにアイリスは興味津々だ。

 

「しかし、ブラッキーはイッシュ地方には存在しないはずだが……」

 

「俺も、そこが引っ掛かるんですけど……。俺みたいに他地方のポケモンと一緒に来たトレーナーと、何らかの理由ではぐれたとかではないでしょうか?」

 

「なるほど。有り得なくはないかもしれん」

 

 実際、今ピカチュウを連れたトレーナー、サトシがいる。決して、有り得ないとは言えない。

 

「だとすると、ポケモンセンターで何らかの届けが出されている可能性がある。おい、確認を」

 

「分かりました!」

 

「他は周囲を捜索してくれ」

 

 ジョージは職員の一人にポケモンセンターを。他に直接の捜索を出した。

 

「あたしも手伝いますね! サトシ、お先に~」

 

 次いでに、アイリスも捜索に行った。

 

「ブラッキーか。だが、やはり、一つ引っ掛かる」

 

「何がですか?」

 

「謎のポケモンの報告は最近とは言え、最初の日からそれなりに経っている。仮にはぐれたポケモンなら、もっと騒ぎになっても良いはずだが……」

 

「そういや、そうですね……」

 

 余程のトレーナー以外、はぐれたポケモンの捜索をしようとするだろう。少し不自然だ。

 

(……余程のトレーナー?)

 

 そこでサトシは、ある可能性に至る。もう一つかつ、残酷な可能性に。

 

「あの、ジョージさん。一つ聞きたい事が有るんですけど……」

 

 サトシは恐る恐る、その事を問い掛けた。

 

 

 

 

 

 大勢の職員達が辺りを捜索しており、それをロケット団達が建物の影から見ていた。

 

「しつこい連中ねぇ」

 

「さっさと離れてほしいもんだ」

 

「そちらにはいたか?」

 

「いない。何処にいるんだ、ブラッキーは?」

 

「ブラッキー?」

 

 自分達を捜していると思い込んでいたロケット団だが、職員達の言葉で違うと気付いた。

 

「あいつら、何でブラッキーを捜してるんだ? 確か、この地方には他の地方のポケモンはほとんどいないんだろ?」

 

「理由は分からないけど……。これはチャンスね。ブラッキーを使ってあいつらを誘導しましょう」

 

「ブラッキーに気を取られてる隙に、資材確保という訳にゃ」

 

「そういう事で。――ほい」

 

 ムサシが鞄を開け、中からペンキを取り出した。

 

「にゃ? それをどうする気にゃ?」

 

「決まってるだろ。お前がブラッキーになるんだよ」

 

「拒否は……」

 

「却下」

 

「トホホにゃ……」

 

 という訳で、早速インクで一部を金に、他を黒く染める。

 

「よし、行け」

 

 そして、ムサシとコジロウが草に隠れ、タイミングを見計らってニャースに合図を送る。

 受けたニャースは建物をコンコンと強く叩き、職員の注意を引くと同時に彼等の前に現れる。

 

「ブ、ブラッキー……」

 

「ブラッキーだ! 確保しろ!」

 

 職員達がブラッキーを扮したニャースを追う。

 

「よし、行こう」

 

「えぇ」

 

 彼等の姿が見えなくなるのを確認したムサシとコジロウが、倉庫へと向かう。

 

「――見付けたぞ! さっきの侵入者達だ!」

 

「な、何!?」

 

「嘘!?」

 

 しかし、道の曲がり角で複数の職員達と遭遇する。

 

「奴等は悪人だそうだ! 遠慮せずに捕まえろ!」

 

 雄叫びを上げながら迫る職員達に、二人は慌てて反転。しかし、反対側からも職員達が迫っていた。

 

「ちいっ!」

 

 コジロウが煙玉を投げ、職員達の視界を防ぐ。数秒して煙が晴れると、そこには二人の姿が無かった。

 

「失敗したか……!」

 

「まだ近くにいるかもしれない。警戒して当たれ!」

 

 職員達がバラバラに散っていく。それを近くの木の上から、ムサシとコジロウが見ていた。

 

「どういうことよ? あいつら、ブラッキーを捜してたんじゃなかったの?」

 

「分からん。というか、そもそも奴等はブラッキーなんて言ってるんだ?」

 

 予想外の失敗もそうだが、ブラッキーの件も不可解だ。

 

「ねぇ、そう言えば、あの倉庫でアタシ達何かと遭遇しなかった?」

 

「……確か、何かと出くわしたな」

 

 そのせいで、最初の強奪が失敗したのだ。忘れる訳がない。

 

「あれを、連中はブラッキーと認識してたんじゃない?」

 

「だから奴等はブラッキーを。だけど、そうなると今度はどうしてブラッキーが偽物かって分かった事が気になるな」

 

「きっと、本当の正体を誰かが見抜いたのよ。だから、ニャースが扮したブラッキーを偽物と分かっていた。付いていったのは、アタシ達を誘き出す為の罠ね」

 

「中々頭が回る奴がいるな。こうなると、強奪は無理か」

 

「いえ、もうちょっとだけ様子を見てみない?」

 

 厳重警備が敷かれている中で資材強奪するのは、流石に無理がある。諦めようとしたコジロウだが、ムサシが待ったを掛けた。

 

「何でだ?」

 

「どうも気になるのよね。そもそも、そのブラッキーに似たポケモンの正体もだけど、そもそもそいつが何で倉庫にいたのかが」

 

「なるほどな。ニャースを回収する必要もあるし……もう少しだけ待って見るか」

 

 それに、このまま裏を掛かれっぱなしというのも、気に食わない。ムサシの提案をコジロウは受けた。

 

 

 

 

 

「何してるんだ、アイリス?」

 

「サトシ。ジョージさんも」

 

 現場である倉庫で、サトシとジョージが何かをしていたアイリスと出会す。近くには、容器に入ったポケモンフーズが一定間隔で並べられている。

 

「ふむ。見たところ、例のポケモンを誘き寄せようとしているのかな?」

 

「はい! 倉庫を漁るぐらいですから、こうして並べれば寄って来るんじゃないかなと思って!」

 

「なるほど」

 

 手間が省けた。とサトシとジョージは心の中で呟く。

 

「サトシ、アタシは向こうを見てくるから。こっち宜しく。あと、ブラッキーはアタシがゲットするからね」

 

 サトシに釘を刺してから、アイリスは向こうを見張りに行った。

 

「……言う間が無かったりする」

 

「ですね」

 

 アイリスに事の事実を話そうとするも、その前に向こうに行ってしまった。

 

「ジョージさん。確か、例のポケモンは……」

 

「記録を見る限りは彼方に去っていった。となると……警戒から反対側から来る可能性が高い」

 

「ポーポー」

 

「マメパト」

 

 空から声。ターゲットの捜索に出していたマメパトが、サトシの元に戻ってきたのだ。

 

「どうだった?」

 

「ポー」

 

 片翼で方向を示す。それはジョージの予想通りの方向だった。

 

「もうすぐで来そうです」

 

「うむ。では、隠れよう」

 

 サトシ達が草に隠れる。すると、建物の影から一体のポケモンが出てきた。

 

「やはりか……」

 

「ポカブ……」

 

 そのポケモンは、全身が汚れ、痩せこけてはいるが、イッシュ地方で新人トレーナーに送られる最初のポケモンの一匹、炎タイプの火豚ポケモン、ポカブ。

 当たりたくなかったサトシの予想は、見事に的中していた。

 

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