ポケットモンスター アナザーベストウイッシュ   作:ぐーたら提督

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 この話は多少手を加えただけなので、変化は少ないです。


小悪魔なエモンガ

「さあ皆、やろうぜ!」

 

「ピカ!」

 

「ミジュ!」

 

「ハトー!」

 

「ポカ!」

 

「タジャ」

 

「ルッグ!」

 

「クルル!」

 

 ヒウンシティから旅立った翌日の朝。サトシは手持ちの七体と朝の特訓を始めようとしていた。

 

「何をするつもりなの?」

 

 その様子に、ベルが首を傾げる。

 

「特訓だよ。強くなるためにな」

 

「へ~、どんな特訓するつもりなの?」

 

「走り込みや、技の特訓だよ」

 

「なんか地味ね~」

 

 自分より強いサトシがする特訓なので、ベルはもっと凄いのと思っていた。

 

「地味って……こう言う基本の積み重ねが強くなるための道なんだよ」

 

「ふ~ん。じゃあ、わたしもやって見ようかな。チャオブー! チラーミィ!」

 

「チャオ!」

 

「チラ!」

 

 サトシと同じ事をしようかと、ベルも手持ちを出した。

 

「走り込みするわよ~! 行っけ~!」

 

「チャオチャオチャオーーーッ!」

 

「チララララーーーッ!」

 

「おー、すげえやる気……。俺達は何時ものペースでな。ズルッグは軽めに」

 

「……ルッグ」

 

 ジュエルの反動を考え、ズルッグには軽めにする。七匹はサトシの言葉にしばらく走り出す。

 

「ピカピカピカピカ……!」

 

「ミジュミジュミジュ……!」

 

「ハトハト」

 

「ポカポカ」

 

「……」

 

「ルッグルッグ……!」

 

「クルクルクル」

 

 先日のジム戦で出てバッジゲットに貢献した三匹は自信が増した表情で、出れなかった二匹は気迫を込もった表情で、ツタージャは何時も通りに、ズルッグはバンギラス戦を思い出してと、七匹は走っていく。

 

「ズルッグ、そこらで終わってくれ」

 

「……ルッグ」

 

 少しした後、ズルッグには早めに切り上げて次の練習に入る。

 

「よし、やるぞズルッグ」

 

「ルッグ!」

 

「今度は技の特訓だよね? 何の技?」

 

「きあいだまだよ。バンギラスって言う、強いポケモンと戦った時に使ったんだ」

 

 バンギラスの時に発現した、きあいだま。アイリスの話によると、あの時は原石のジュエルによる一時的なもの。

 なので、自分の力で自由に使えるよう、特訓しなければならない。

 

「強いポケモンか~。わたしもカベルネちゃんやジュンサーさん達と戦ったな~。ボスゴドラとカイリキーってポケモン。あの色違いのオノノクスがいなかったら絶対に勝てなかったけど……」

 

「あのオノノクスか」

 

 ベルと初めて会ったあの日に遭遇した、色違いかつ、片刃がない顎斧ポケモン、オノノクス。その実力は非常に高く、自分も実質的に負けていた。サトシもゼクロムの背中から二人の近くにいたのは見ていた。

 

「けど、なんでヒウンシティにいたんだろうな?」

 

「う~ん。分かんない」

 

 ワルビルは自分とピカチュウを追っている。なので、ヒウンシティにいてもおかしくないが、オノノクスは違うはず。

 

(色々歩く内に、偶々ヒウンシティに着いたか……)

 

 何か目的があってヒウンシティに来た。後は、他に理由があるか。しかし、考えても理由はわからないので切り上げた。

 

「ズルッグ、きあいだま!」

 

「ルグ~……!」

 

 ズルッグは一生懸命闘気を練り上げ、球にしていくが。

 

「ルググ~……!」

 

「ちっちゃ~い」

 

「それに全然大きくならないな……」

 

 球にはなったものの、サイズはBB弾ぐらいしかなく、大きさもゆっくりとしか増えない。

 

「ルググ……ルッグーーーッ!」

 

「あっ待て、ズルッグ!」

 

 ありったけの闘気を込めたズルッグだが、中々大きくならないイライラから闘気以外が混ざり、その結果球はパァンと弾け、ズルッグは軽く転がってしまった。

 

「大丈夫か、ズルッグ?」

 

「ルグルグルグーーーッ!」

 

 きあいだまの失敗に、ズルッグが地団駄を踏む。

 

「悔しそ~」

 

「落ち着けって、ズルッグ。悔しいのは分かるけど、技は簡単には習得出来ない。付きっきりで付き合うから、頑張ろうぜ!」

 

「……ルッグ!」

 

「じゃあ、もう一度きあいだま!」

 

「ルッグ~……!」

 

「頑張れ~!」

 

 サトシの言葉に苛立つを抑え、再度ズルッグはきあいだまの練習を行なう。

 

「ゆっくりと、焦らずに気を込めて行くんだ」

 

「ルッグ……!」

 

 心を落ち着かせながら、闘気を小さなきあいだまに込めていく。今度もゆっくりとだが何の問題なく大きさが増していき、実戦で使うサイズになった。

 

「出来たな、ズルッグ!」

 

「凄い凄い!」

 

「ルッグ!」

 

 ズルッグは普通サイズになったきあいだまを持ち、えっへんと胸を張る。

 

「じゃあ、次は投げる。狙いはあの岩だ」

 

「ルー……グーーーッ!」

 

 子供ながら、気迫を込めてきあいだまを投げた。

 

「……あれ?」

 

「……あれれ?」

 

「……ルグ?」

 

 しかし、きあいだまはフラフラとあっちこっちに揺れ、最終的には地面に落下して小さな爆発を起こした。

 

「うーん……。コントロールもまだまだかあ」

 

「これじゃ、バトルには使えないね」

 

「ルッグ~……!」

 

 これが自分の力だけで初めて発動したので、こうなっても仕方ないだろう。おまけにきあいだまは格闘タイプの技の中でも高威力の技。難易度も高い。

 

「ルッグルッグ!」

 

「もう一度やりたいのか?」

 

 コクコクと頷くズルッグ。子供ながらクルミル以上に気が強いだけあり、このままでは終われなかった。

 

「――えい」

 

「ルグ!? ルググ……! ――ルグ」

 

 サトシがズルッグの頭を軽く突く。すると、ズルッグはそれだけで体勢を崩し、そのままへたり込んでしまう。

 

「疲れてるな。今日はここまでだ」

 

「ル……ルッグ!」

 

「ダメだ」

 

 立ち上がり、まだやれると意気込むズルッグだが、さっき軽くつついただけで倒れた事からかなり消耗しているの明らかだ。サトシは却下する。

 

「ルグ……!」

 

「――ズルッグ」

 

 歯を食い縛るズルッグに、サトシは肩を掴むと優しく語り掛ける。

 

「お前の気持ちは分かるよ。だけどな、また無茶して倒れて欲しくないんだ。バンギラスの時のように」

 

「……ルグ」

 

 無茶し過ぎてる自分が言える台詞ではないだろうが、それでもサトシは伝えたかったのだ。

 優しくそう言われ、ズルッグも渋々だが頷いた。サトシを心配させたく無かったのだ。

 

「ありがとう。だけど、気にする事はないぜ。ゆっくりと特訓して行けば、絶対に習得出来る! 俺が保証する」

 

 実際、原石のジュエルの力があってとは言え、ズルッグはきあいだまを使って見せた。

 今回も時間は掛かったが出来た。一歩一歩進めば、必ず習得出来るとサトシは確信している。

 

「だから、今日はゆっくり休もうぜ」

 

「ルッグ」

 

 サトシにそう言われた事もあり、ズルッグは今日はここまでにした。

 

「さてと、あっちはどうかな?」

 

「ルッグ」

 

 サトシとズルッグ、ベルがそちらを向く。彼等の視線の先では、キバゴの特訓にアイリスとデントが試合していた。

 デントの手持ちはヤナップであり、デントも朝食を作りながら指示を出していた。

 

「キバゴ、ひっかく!」

 

「キバキバキバーーーッ!」

 

「ヤナップ、かわして」

 

「ナプナプ」

 

 一撃一撃がかなりしっかりとしてきたキバゴのひっかく。ヤナップは軽々とかわすも、最初の頃より余裕はない。それだけ、キバゴが成長している証だ。

 

「ここまで。サトシやズルッグの方も終わったみたいだし、切り上げようか」

 

「げきりんの練習は……ダメ?」

 

「キバゴはまだ子供だし、ジュエルの反動も考えると、しばらく止めておこう」

 

 きあいだまと違い、げきりんは凄まじい威力と引き替えに、混乱になるリスクがある。練習するなら、身体をもっと鍛えてからが良い。

 

「そうする。キバゴ、最後にりゅうのいかりね」

 

「キバ!」

 

「じゃあ、イシズマイ。出てきてくれ」

 

「イママイ」

 

 りゅうのいかりの訓練のため、イシズマイを出す。

 

「キバゴ、開始!」

 

「キバ~……」

 

 腹に蒼白い竜の力を貯めていく。初期の頃とは比べ物にならない力と安定さを保ち、かなりの量になる。

 

「発射!」

 

「――ゴーーーッ!」

 

「イシズマイ、防御」

 

「イマイ!」

 

 りゅうのいかりが発射。イシズマイに命中するも、防御体勢に入っているため、ダメージは無い。

 

「まだ突破できないか~」

 

「キババ~……」

 

「だけど、完成は近いよ。明日から攻撃で暴発しないよう、新しい訓練もした方が良いかな」

 

 前に溜めの最中に攻撃された時、衝撃で暴発した事があった。完成も近いので、発動の安定度を高める訓練もするべきだろう。

 

「キバゴ、明日からは新しい練習も頑張ろう。今日はこれで終わり」

 

「キババ」

 

「じゃあ、朝食にしようか」

 

 丁度、朝食も完成し、サトシ達はこの日最初のご飯を摂ることにした。

 

「ごちそうさまでした。お腹一杯!」

 

「最高に美味しかった~。評価は5つ星!」

 

「それは嬉しいね。料理人冥利に尽きるよ。皆もどうだい?」

 

 出ているサトシ達の手持ち達は、デントお手製のポケモンフーズを満足そうに食べ終えていた。

 

「どうだった、ドリュウズ?」

 

「……リュズ」

 

 その中には、ドリュウズもいる。まだ一歩置いた雰囲気はあるものの、彼は皆と一緒に食べていた。それぐらいはしてくれるようになったらしい。

 

「ねぇ、わたしあのドリュウズ、あの一件で見たんだけど、アイリスちゃんと何て言うか……良い感じには見えなかったよ」

 

「過去に何かあったらしくてね。そのせいで今一なんだ」

 

「けど、今は前よりもずっと良いぜ。前までは攻撃されなきゃ、動こうともしなかったし」

 

「そうなんだ……。早く仲直り出来たら良いのにね」

 

 アイリスとドリュウズの仲を聞き、ベルも彼女達の一日でも早く仲直りを思っていた。

 

「え~と……ドリュウズ、デザートだけど食べる?」

 

 アイリスが持っている皿には大量の木の実が乗っており、その内の一つをドリュウズに差し出す。ちなみに、ベルがデザートならケーキなどと思っていたのは余談だ。

 

「……」

 

 ドリュウズは無言で差し出された木の実を手に取ると、アイリスから顔を背けながらも黙々と食べた。

 

「……キバゴも食べる?」

 

「キバ!」

 

 微妙な空気を払うようなキバゴの元気な声に、アイリスは微笑むと木の実を軽く投げる。

 掴もうとしたキバゴだが、腕が短いことや子供のせいか、キャッチに失敗。しかも、木の実は坂を転がって行く。

 

「キババ~!」

 

「ご、ごめん、キバゴ~!」

 

「追い掛けよう!」

 

「ピカピカ!」

 

「ミジュミジュ!」

 

 サトシ達はピカチュウと、本人が先に行ったために入らなかったミジュマル以外のポケモン達をモンスターボールに戻すと、アイリスとキバゴを追い掛ける。

 

「――エモ」

 

 転がった木の実は坂の先の岩にぶつかって止まるも、その木の実に一体のポケモンが近寄り、拾った。

 そのポケモンは、丸い耳に黄色の頬、雷の形をした尾、前足と後足に繋がる前は黄色の被膜がある可愛らしいポケモンだ。

 

「キバ?」

 

「エモ?」

 

 そのポケモンと、木の実を取りに来たキバゴが鉢合わせになり、二匹は互いを見合わせる。

 

「キバゴ~」

 

「このポケモン……」

 

 そこに、アイリスとサトシが駆け寄り、サトシは初めて見るポケモンに図鑑を向けて情報を調べる。

 

『エモンガ、モモンガポケモン。森の木の上で暮らす。マントの様な膜を使い、空を飛ぶ』

 

「エモンガか」

 

「ピカ?」

 

「ミジュ~」

 

 初めてのエモンガを興味津々に見るピカチュウ。一方、ミジュマルは可愛らしさに釘付けになっていた。

 

「エモ? エモ――エモ?」

 

 自分を見るサトシ達を見渡すエモンガの目には、木の実の山が写る。それを見たエモンガは今持っている木の実に視線を移し、それから少し考えた。

 これ一つ食べるよりも、キバゴにこの木の実を渡せばお礼に木の実をもっと貰えるかもしれないと。どうやらこのエモンガ、結構黒い性格の様だ。

 

「エモ。エモエモ」

 

「キバキバ!」

 

 エモンガは更にキュートな表情でアピール。それからキバゴに木の実を渡す。

 キバゴははしゃぎ、エモンガもそれに合わせて喜ぶ演技を取る。

 

「良かったな、キバゴ」

 

「キバキバ!」

 

「はいこれ、お礼」

 

「エモ。エモモ」

 

 エモンガが善意ではなく、計算からしたとは思わないアイリスはお礼に木の実を差し出す。狙い通りに事が進み、エモンガは早速一つの木の実を頂こうとする。

 

「――きゃあ~! 可愛い~!」

 

 とそこに、エモンガの可愛さを気に入ったベルがエモンガに近寄ると抱き締め、頬擦りする。

 

「エ、エモモ……!」

 

「へ~、エモンガか」

 

 そこに、デントも合流してエモンガを見る。

 

「決めた! 今日からあなたはわたしのポケモンよ!」

 

「エモエモエモ!」

 

「嫌がってないか、そのエモンガ?」

 

 サトシの言う通り、エモンガはベルから離れようとじたばたともがいていた。

 

「それに、ゲットするなら基本的にはポケモンバトルしないと」

 

 サトシ達のポケモンは、大半がポケモンバトル以外でゲットされるが。

 

「それもそっか。じゃあ行くわよ、エモンガ! 行っけ~、チラーミィ!」

 

「――チラ!」

 

 ベルはエモンガを地面で離すと、チラーミィを繰り出す。

 

「チラーミィ、おうふくビンタ!」

 

「チラチララ!」

 

「エモ! エモエモ!」

 

 尻尾を振り回すチラーミィだが、エモンガはその身軽さで全てかわしていく。

 

「ハイパーボイス!」

 

「チラー……ミィーーーッ!」

 

 チラーミィは耳を畳み、口から大声を発射する。偶々軽く跳躍した直後のため、エモンガは受けた。

 

「良いわよ良いわよ! チラーミィ、くすぐる!」

 

「チラー……!」

 

「――エ~……モーーーッ!」

 

 続いてくすぐるを仕掛けようとしたベルとチラーミィだが、近付く途中でエモンガが電撃を放つ。

 

「痺れる~!」

 

「こ、これはほうでん!」

 

「ミジュ~」

 

 それはバトルの相手のチラーミィ、トレーナーのベルや後ろにいたサトシ達にも降り注ぎ、感電させる。ちなみに、ミジュマルは効果抜群にもかかわらず、何故か嬉しそうだ。

 

「チラチラ……ミィ!」

 

 電撃で荒れてしまった体毛を尻尾を整えると、チラーミィはエモンガに向き直す。

 

「手強いわね……! だったら、これ! チラーミィ、メロメロ!」

 

「チ~……ラッ!」

 

「エ~……モッ!」

 

 チラーミィが片目をウインクし、ハートマークを出す。直後、エモンガも同じ行動を取り、ハートマークを放つ。

 

「同じメロメロ!」

 

「エモンガも使えるのか!」

 

 二つのハートマークはぶつかり合い、打ち消していく。

 

「――エモッ!」

 

 エモンガは更にメロメロを発動。ハートマークを続けて放つ。

 

「またメロメロ!」

 

「このタイミングは食らうね」

 

 実際、不意を突かれたチラーミィは動けずにメロメロを食らいそうになる。

 

「――ミジュ! ミジュジュ~」

 

 しかし、メロメロが当たる寸前にミジュマルがチラーミィを飛ばした。当然、代わりに受けてメロメロ状態になるがそのままエモンガに近寄る。

 

「ミジュミジュ~」

 

「な、なにやってるんだ、ミジュマル。戻れ」

 

「エ……エモッ!」

 

 サトシがミジュマルを戻すと同時に、エモンガは跳躍。樹の枝に移動する。

 

「も~、逃げちゃダメ~!」

 

「エモッ!」

 

 追い掛けるベルから逃げるように、エモンガは滑空して離れていく。

 

「戻れ、チラーミィ! 待って~!」

 

「キバキバ~!」

 

 チラーミィを戻したベルは追い掛け、キバゴも木の実を持つと何故かエモンガに向かって森の中へと走り出した。

 

「キ、キバゴ、待って~!」

 

 走るキバゴとアイリスを追い掛け、サトシとピカチュウ、デントも走る。

 

「どうしたの、キバゴ?」

 

「キバキバ、キババ」

 

 追い付いたアイリスに、キバゴは二つの木の実を見せる。

 

「もしかして、プレゼントしたいの?」

 

「キバキバ!」

 

 コクコクと頷くキバゴ。返してくれたお礼がしたいのである。

 

「キバゴはエモンガにお礼がしたいんじゃないかな?」

 

「そう言えば、さっきはベルのせいで邪魔されたもんな」

 

「だったら、お腹一杯ご馳走してあげなきゃ! 待ってて、エモンガちゃ~ん!」

 

 マイペースなベルに、アイリスは冷や汗を流す。少しはマシにならないだろうかと。

 

「キバ! キバ!」

 

「分かったわ、キバゴ。一緒に探そ」

 

「キババ!」

 

「しっかりと掴まっててね。――よっと!」

 

 キバゴが木の実を持ったまま自分の髪の中に入ると、アイリスは木を走って登る。

 

「俺達も行こう」

 

「ピカピカ」

 

「そうだね」

 

 サトシとピカチュウ、デントもまた、アイリスとベルを再び追い掛ける。

 

「えっほ、えっほ……」

 

「――よっとっとっと!」

 

「な、なにそれ!? 待ちなさ~い!」

 

 必死に走るベルを、アイリスが素早い身のこなしで木を渡り、軽々と追い越していた。

 

「――エモ」

 

 一方、彼女達が捜すエモンガは適当な樹の枝に着地。後ろを見てベルがいないのを確認すると、ホッと一息付く。

 前に視線を戻すと成っていた木の実を見え、アイリスが持っていた木の実の山、次に自分と捕らえようとしてきた、ベルやチラーミィを悪人風に思い出す。

 イライラしたエモンガは木の実を取ると、ムシャクシャした気持ちを発散するようにかじりついた。

 

「ベル。大丈夫か? それとまだやるのか?」

 

「勿論! 絶対ゲットしてやるんだから~!」

 

 一度決めたからには必ずやりきる。そんな意思と共に、ベルは再び走り出した。

 

「諦めが悪いなあ」

 

「そう言うところはサトシに似てるかもね」

 

「ピカピ」

 

 二人の類似点に、ピカチュウは確かにと頷いた。

 

「エモンガは森で暮らしているポケモン……。そう離れてはいないと思うけど……」

 

「――キバ!」

 

「どうしたの、キバゴ?」

 

 サトシ達からかなり離れた場所で、アイリスとキバゴはエモンガを捜す。すると、落ちてきた何かがキバゴの顔に当たり、地面に落下した。

 

「これは……木の実?」

 

 それも、食べられたものだ。見上げながら辺りを見渡すと――エモンガを発見した。

 

「いた!」

 

「キバ!」

 

「エモ?」

 

 声に反応し、見下ろすとエモンガもアイリスとキバゴを発見する。

 

「キバキバ、キババ!」

 

 やっと見付けたエモンガに、キバゴが木の実を投げて渡す。

 

「エモ……?」

 

「プレゼント! あたしのキバゴがあなたをすっごく気に入ったんだって!」

 

 木の実を受け取ったエモンガは、アイリスから話を聞くと少し考える。自分がキバゴと仲良くすれば彼女から沢山の木の実を貰えるかもしれない。

 

「見つけた~~~っ!」

 

「エモ!?」

 

 エモンガがそう判断し、動こうとした直後だ。ベルが猛スピードが走って来た。

 

「今度こそ! チラーミィ、おうふくビンタ!」

 

「――チラ! ミィ!」

 

「エモ! エモッ!」

 

 ベルは再度チラーミィを繰り出す。チラーミィはおうふくビンタを放つ。

 木の実を持っていたことや樹の枝の上と言う動きづらい場所にいたこともあり、エモンガは食らってしまい、木の実も落とす。

 

「エー……モッ!」

 

「チラーーーッ!」

 

 だが、やられっぱなしでいるつもりはない。電撃の球を展開し、技を放った直後のチラーミィに命中させる。吹っ飛んだチラーミィはベルにキャッチされた。

 

「今のはボルトチェンジ……!」

 

 攻撃と同時に交代する少し特殊な技だ。ただ、一匹だけの場合は変化はない。

 

「エモ~」

 

「いたっ!」

 

 エモンガはベルの頭を蹴ってから滑空し、また離れていく。

 

「キバ!」

 

「キバゴ!」

 

 また離れていくエモンガを、キバゴとアイリスが追い掛けていく。

 

「う~……また失敗」

 

 再びゲットに失敗し、ベルは落ち込む。その近くにはサトシとデントが駆け寄っていた。

 

「キバキバ――キバッ!」

 

「エモッ!? エモエモ……!」

 

 追い掛けるキバゴがエモンガの下半身に掴まる。自分以外の体重が加わり、バランスも崩れた事でエモンガが少しずつ降下していく。

 

「――ああっ!?」

 

 長い草で見えなかった。この先は崖になっていた。急いでアイリスは坂を降りてキバゴとエモンガをキャッチし、出っ張りの部分に着地して一安心。

 

「着地! ふぅ。――うわぁああぁっ!?」

 

 と思いきや、着地の際の衝撃に耐えきれず、出っ張りが崩れて崖を滑っていく。最終的には、木にぶつかって止まりはしたが、かなり痛い。

 

「痛た……。大丈夫、キバゴ、エモンガ……?」

 

「キババ……」

 

「エモ……」

 

 何はともあれ、止まった。キバゴは髪に潜り、エモンガはアイリスの頭に乗った状態で彼女達は周りを確かめる。すると、周りから多数の視線や声が向けられた。

 

「な、なに……?」

 

 最初は暗さで見えなかったが、徐々に視認出来るようになる。

 

「――ココロモリ!?」

 

 周りからの声、視線の正体。それは白い体毛、ハート型の鼻や、空白がハートになっている尾、くっついて三角になっている耳が特徴の求愛ポケモン、ココロモリ。

 コロモリの進化系であり、逆さまにぶら下がっていた。

 

「あたし達、ココロモリの巣に入って……!」

 

「ココーーーッ!」

 

 自分達の巣に入った侵入者や、ある事へ関する怒りから、ココロモリは侵入者であるアイリス達に残響する音を放つ。

 

「ご、ごめんなさい! 謝るから止めて~!」

 

「――エモーーーッ!」

 

 残響の音に苦しむアイリス達だが、エモンガが反撃にほうでんを発射。ココロモリ達にダメージを与える。ついでに、アイリスやキバゴにも。

 

「エモ、エモエモ!」

 

「う、うん、分かってるわよ……」

 

 電撃に痺れながらも、アイリス達は急いでその場を後にした。

 

「はぁ、助かったけど、出来ればあたし達を巻き込まないでほしかったな~」

 

「エ~モ」

 

「キバキバ」

 

 仕方ないでしょと呆れるエモンガと、何かを見つけたキバゴ。アイリスとエモンガがそちらを向くと、湖が見えた。

 

「ちょっと休もっか」

 

 捜し続けたり、バトルで疲れていたため、アイリス達は湖で一旦休憩することにした。

 

「エ~モ」

 

「キバキバ」

 

 湖の水で喉を潤わせるエモンガだが、横から水が掛かる。キバゴが遊んでいるのだ。

 

「エモ~……エモッ!」

 

 エモンガは怒ろうとしたが、キバゴの無邪気な表情を見て大人気ないと我慢。気分転換に黄緑色のエネルギー弾を発射し、湖を軽く揺らした。

 

「キバ……キバキバキバ!」

 

「めざめるパワーで遊んでくれたの? 良かったね、キバゴ!」

 

「キバキバ、キババ!」

 

 パチパチと喜んだキバゴがエモンガの手を取り、上下に振って感謝を伝える。

 

「……エモッ!」

 

 再びめざめるパワー。今度は三つ放ち、さっきよりも湖を揺らす。

 

「キバキバ~!」

 

「エモエモ! エモッ!」

 

 すごいすごいと、褒めるキバゴに気を良くしたエモンガは先程よりも威力を込めためざめるパワーを放つ。湖の水が大きく波打ち、弾けた。

 

「ち、ちょっとやりすぎ!」

 

「――コロ」

 

 また森の中から、目の光が無数に輝く。

 

「ま、まさか……さっきのココロモリ?」

 

「――コロロ!」

 

 その予想は的中し、先程のココロモリの群れが現れた。

 

「エモエモ……エモンガーーーッ!」

 

 向こうが仕掛ける前にエモンガがほうでんを放ち、ココロモリ達に浴びせる。但し、無数にいるので一匹一匹へのダメージは効果抜群でも控え目だ。

 

「逃げるわよ!」

 

「エモ~」

 

「コロロ!」

 

 アイリス達は逃げ、ココロモリ達は追い掛ける。

 一方、アイリス達を追いに彼女達が落ちたあの場所から探しに来たサトシ達。途中、揺れる茂みを発見した。

 

「何かいるな」

 

「きっとエモンガよ!」

 

「いや、あの揺れは大型のポケモンのような……」

 

「そんなわけないわ! ――チャオブー!」

 

「――チャオ!」

 

「かえんほうしゃ!」

 

「チャオーーーッ!」

 

 繰り出されたチャオブーが新たな技、かえんほうしゃを放つ。その炎が茂みとその中にいるポケモンを燃やす。

 

「ドラーーーッ!」

 

「……えっ?」

 

「この声は……!」

 

 燃える茂みの中から現れたのは、ペンドラーだった。

 

「ペンドラーだ!」

 

 突然攻撃され、ペンドラーは怒り心頭だ。

 

「ドララーーーッ!」

 

「逃げるぞ!」

 

 三人は突進して来るペンドラーから逃走。適当な木の影に隠れ、静かにしてやり過ごすのを待つ。

 

「ドラ……! ドララァ……!」

 

「……?」

 

 仇を見るような気迫で見渡すペンドラーに、デントは少し違和感を感じたが、今は隠れたままにする。

 少しするとペンドラーは風で揺れた枝の音に反応し、そっちにいると判断して走り去って行った。

 

「もう大丈夫。ここから離れよう」

 

「おう」

 

「う、うん」

 

 安全のため、サトシ達はペンドラーが去ったのと逆の方向に移動して離れた。

 

「今度こそ、エモンガよ! 葉が揺れてるから間違いない!」

 

「本当かなあ?」

 

「ピーカ……」

 

「これもエモンガにしては大きいような……」

 

「そんなはずないわ! 見てて! ――チラーミィ!」

 

「チラ!」

 

 また揺れる光景。今度は木の葉が揺れてるため、木の上で暮らすエモンガだとベルは推測するが、さっきの件もあるのでサトシ達は懐疑的だ。

 

「ハイパーボイス!」

 

「チラーーーッ!」

 

「――チュラ!」

 

 木から追い出そうと音波を放つ。目論見通り、木からポケモンが出てくるがそれはエモンガではなく、デンチュラだった。

 

「今度はデンチュラ!?」

 

「何で~~~っ!?」

 

「チュラーーーッ!」

 

「逃げるんだ!」

 

 先のペンドラー同様、このデンチュラも怒り心頭状態であり、サトシ達に向かってほうでんを放つ。咄嗟に避けるも、デンチュラが追撃を仕掛ける。

 

「更に来る!」

 

「デデデデンーーーッ!」

 

「どくばりか!」

 

 デンチュラが口から毒を固めて作った針を無数に発射。サトシ達はこれも咄嗟に動き、デンチュラの様子を確かめる。

 

「チュララァ……!」

 

 デンチュラは唸り声を上げ、サトシ達を睨み付けていた。

 

「す、すっごく怒ってる……!」

 

「わ、悪かったよ、デンチュラ。謝るからここで――」

 

「チュラーーーッ!」

 

「ピカチュウ、10まんボルトで相殺!」

 

「ピーカ、チューーーッ!」

 

 電撃と電撃がぶつかり合い、互いを相殺する。

 

「チュラァ……! チュララァ!」

 

「な、なぁ……。なんか、おかしくないか?」

 

「あぁ、敵意が強過ぎる……」

 

 さっきのペンドラーもそうだが、このデンチュラの怒りようも少しおかしい。偶々怒りやすい性格なのか、或いは別の理由があるのか。

 

「まともに相手するのは避けよう。目眩ましして一気に逃げるべきだ」

 

「なら! ツタージャ!」

 

「――タジャ」

 

「たつまき!」

 

「ター……ジャ!」

 

「チュラ!」

 

「今だ!」

 

 小規模な竜巻を作り上げ、木の葉を巻き上げてデンチュラの視界を防ぐ。その間にサトシ達は一気に走り、デンチュラから離れることに成功した。

 

「しつこいわね~」

 

 その頃、アイリス達は少し前から偶々見付けた洞穴の岩に身を隠していたが、ココロモリ達は血眼でまだ探して続けていた。

 

「コロ、コロロ?」

 

「……コロ」

 

 辺りを探したが、全く見付からない。となると、何処かに隠れたと考えるべき。そして、近くには丁度姿を隠すには最適な洞穴がある。

 

「コロ」

 

「ココロ。――コローーーッ!」

 

 ボスと思われる一匹の掛け声により、群れのココロモリ達が洞穴に向かって一斉に反響する音波を放つ。

 

「~~~ッ! 止めて~!」

 

 音に耐えきれず、アイリス達は洞穴が出るも、そこを待っていたココロモリ達が立ちはだかる。

 

「コロ! コロロ!」

 

「サイケこうせん!」

 

 無数のココロモリ達による念の閃光が放たれたが、アイリス達は辛うじてかわす。

 

「コロォ……!」

 

「コロロォ……!」

 

「やるしかなさそうね……!」

 

 こうなってはとてもだが逃げきれない。戦うしかないだろう。

 

「エ~モンガッ!」

 

 黄緑色の光球を複数放ち、ココロモリを怯ませる。

 

「ドリュウズ、お願い!」

 

「――リュズ」

 

 その間に、アイリスはドリュウズを繰り出す。ドリュウズは周りを見て状況を理解し、とりあえず戦う事にした。

 

「ココロモリのタイプはエスパーと飛行……」

 

 地面タイプの技である、どろかけやドリルライナーは効かない。それ以外で攻撃する必要がある。

 

「ドリュウズ、メタルクロー!」

 

「……」

 

 爪を硬質化させ、無数のココロモリ達に攻撃していく。だが、ココロモリ達は数が多い上に一撃ではやられるほど脆くもない。

 

「エ~……モッ!」

 

「コロロ~」

 

 しかし、エモンガが次の技を発動する時間は稼げた。メロメロを使い、ココロモリ達をメロメロにしていく。

 

「コロロ……!」

 

「あ~、メロメロになったのは♀だけ……」

 

 メロメロの効果は、使用者と逆の性別しか発揮されない。エモンガは♀のため、♀のココロモリ達には通用しないのだ。

 

「だったら……! ドリュウズ、メロメロになっていないココロモリ達にみだれひっかきよ!」

 

「――ドリュ」

 

 ドリュウズはメロメロで動けない♂のココロモリ達を無視し、♀のココロモリ達に爪で引っかいていく。

 だが、やはり数が多い上に大技のドリルライナーは使えないため、中々倒れない。

 

「エモンガも手伝って!」

 

「エモ! エモーーーッ!」

 

 頷いたエモンガは追撃にほうでんを発射。ココロモリ達にダメージを与えて行くが、やはり数が多いせいで一匹へのダメージが小さい。

 

「コロロ!」

 

「コロロロ!」

 

「あ~、メロメロが解けた!」

 

 多数にメロメロを掛けたため、一匹への効果が低下しており、早く解けてしまったのだ。

 

「コロー……!」

 

「ピカチュウ、10まんボルト! 手前に!」

 

「チューーーッ!」

 

 三度、反響の歌を一斉に放とうとしたココロモリ達だが、自分達の前に落下した電撃に止まる。

 

「大丈夫か、アイリス、キバゴ?」

 

「ピカピ!」

 

「サトシ! 皆!」

 

 攻撃音やほうでんを目印に到着したサトシ達は、急いでアイリス達の側に移動する。

 

「エモンガ、ここにいたのね~。――あら?」

 

 やっと発見したエモンガに抱き着こうとしたベルだが、かわされてしまった。

 

「こいつらは……?」

 

『ココロモリ、求愛ポケモン。コロモリの進化系。色々な周波数の音波を、鼻の穴から発射する。岩も破壊する音波も出す』

 

「コロモリの進化系か。それにしてもアイリス、どうしてこいつらに?」

 

「落ちた拍子に巣に入っちゃったの。それで追い掛けられて……」

 

「にしても、しつこすぎない?」

 

「多分、攻撃したりしたからそのせいだと思う……」

 

(……本当にそれだけかな?)

 

 そうだとしても、敵意が強すぎる。デントはそう感じてしまう。攻撃されたからか、もしくは。

 

「なぁ、ココロモリ。俺達は戦う気はないんだ。巣に入ったり攻撃したのは謝るから――」

 

「コロローーーッ!」

 

「こ、これ……りんしょう!?」

 

「他のポケモンが先に使うと威力が増す技だ……!」

 

 それを群れで放っているのだ。かなりの威力になっていた。

 

「戦うしかないか……!」

 

「――ミジュ!」

 

 ココロモリ達は怒りで話を聞きそうにない。ある程度ダメージを与え、力の差を見せ付けた方が良い。

 早速ピカチュウで反撃しようとしたが、その前にミジュマルが出てきた。

 

「ミ~ジュ。ミジュミジュマ」

 

 ミジュマルがホタチを構え、エモンガに目配せ。どうやらアピールしている様だ。

 

「コローーーッ!」

 

「サイケこうせん! ミジュマル、シェルブレードで弾け!」

 

「ミジュ!? ――マッ!」

 

 サトシの言葉に素早く反応し、ミジュマルは迫っていた念の光線をギリギリで弾いた。

 

「アピールしたいのは分かるけど、今は敵に集中!」

 

「ミジュ」

 

 ごめんと頭を下げ、エモンガの近くでホタチを構えて守る姿勢を見せるミジュマル。

 

「サトシ、どうする?」

 

「俺達が一気に決める。ハトーボー、ツタージャ、クルミル!」

 

「ハト!」

 

「タジャ」

 

「クルル!」

 

 互いへのダメージを最低限に留めるべく、サトシは更にハトーボー、ツタージャ、クルミルの三体を繰り出した。

 

「ツタージャ、フルパワーで広くたつまき!」

 

「ター……ジャ!」

 

「コロロ……!」

 

 威力は控え目だが、範囲の広い竜巻がココロモリ達を足止めする。

 

「ハトーボー、クルミルを乗せてココロモリの周りを回れ! クルミル、ハトーボーに乗った状態でありったけのいとをはく!」

 

「ハト!」

 

「クルルルーーーッ!」

 

 ハトーボーはクルミルを乗せた状態でハハコモリ達の周囲をぐるぐる回り、クルミルはハトーボーの背から量の糸が放つ。

 

「ツタージャ、たつまきを止めろ!」

 

「――ジャ」

 

「コロローーーッ!?」

 

 同時にツタージャはたつまきを停止。直後にココロモリ達をクルミルの糸がグルグルと巻き付きながら一纏まりにし、瞬く間に動きを封じた。

 

「よし、全員捕まえた!」

 

「すっご~い!」

 

 これでゆっくりと話せる。サトシ達はココロモリ達に近寄り、話し掛ける。

 

「コロロォ……!」

 

 捕らえられたココロモリ達だが、まだサトシ達を睨んでいた。

 

「話を聞いてくれ、ココロモリ」

 

「巣に入った事や攻撃した事なら謝るから。本当にごめんなさい!」

 

「ごめんなさい!」

 

「……コロ?」

 

 一斉に謝るサトシ達に、ココロモリ達は疑問符を浮かべる。もしかして、彼等は違うのだろうか。だとすると、自分達は勘違いしていることになる。

 

「……コロ」

 

「分かってくれたのか?」

 

「コロロ」

 

 サトシの言葉に、ボスのココロモリがコクンと頷く。

 

「じゃあ、外すよ。ミジュマル、切ってくれ」

 

「ミジュジュ」

 

 ミジュマルがシェルブレードを使い、糸だけを斬ってココロモリ達を解放した。

 

「コロロ。コロ」

 

 ココロモリ達はサトシ達にじゃあと頭を下げ、離れていった。

 

「ごめんね、ココロモリ達~」

 

「キババ~」

 

「――エモ~」

 

 アイリスとキバゴがココロモリ達にもう一度謝った直後、エモンガはそこから飛んで森に向かって離れていった。

 

「あっ、エモンガ! 待って――」

 

「待つんだ、ベル」

 

 エモンガを追い掛けようとするベルだが、デントに止められる。

 

「な、なんですか、デントさん?」

 

「……どうにも、この辺りにいるのは危ない気がする。ポケモン達がやけに殺気だっているし……。ここから離れよう」

 

「で、でも……。いえ、分かりました」

 

 さっき、二度ポケモンを刺激して二人を巻き込んだ事もあり、ベルはデントの提案を受けた。

 そして、サトシ達は急いでその場所を後にした。

 

 

 

 

 

「あ~あ、エモンガゲットできなかったな~」

 

「仕方ないよ。あそこのポケモン達、なんかやけに荒々しかったし……」

 

「まぁ、そうよね……」

 

 夕暮れ。食事の場所に戻って来たサトシ達。ベルがエモンガゲットの失敗を残念そうに呟いていたが、あの状態を考えると仕方ない。

 

「決めた。わたし、諦めるわ」

 

 どこに行ったか不明、あの場所から離れている、危険性からベルはエモンガゲットをきっぱりと諦めた。

 

「皆、お腹空いただろう? 僕が直ぐに腕に縒りを掛けてご馳走を作るよ」

 

「やった~! またデントさんのご飯が食べれるのね~!」

 

 またデントお手製の料理を食べれる事にベルは喜ぶ。サトシとアイリスも早く食べたいらしく、空腹のお腹をさすっていた。

 

「――エモ~~~ッ!」

 

 その声と共に、一匹のポケモンがアイリスの胸元に笑顔で着地する。エモンガだ。

 

「エモンガ?」

 

「どうしてここに?」

 

「エモエモ♪」

 

「もしかして……アイリス達を気に入ったとか?」

 

「エモ」

 

 サトシの推測にエモンガがコクンと頷く。今回の一件でエモンガはアイリスやキバゴを気に入ったのだ。

 

「キバキバ」

 

「エモエモ」

 

 キバゴもエモンガが自分とアイリスを気に入ったと知り、上機嫌な様子だ。

 

「分かったわ。それじゃあ」

 

 アイリスは空のモンスターボールを取り出し、エモンガに当てる。

 

「えぇ!? バトルなしで!?」

 

 ベルが驚く中、エモンガに入れたモンスターボールは数度揺れると、パチンとなって止まった。

 

「エモンガゲットで、どどんどど~ん!」

 

「キバキバ~!」

 

 こうして、アイリスに新たな仲間、エモンガが加わったのであった。

 

「う~! うらやまし~い!」

 

「そう悔しがるなよ。ベルにも新しい仲間がきっと見付かるって」

 

「そうかな~。でももしあったら、その時はアイリスちゃんと同じように、バトルなしでゲットしてみたいな~」

 

「なんでだ?」

 

「なんか、心が繋がって仲間になったって感じがして、素敵だもん」

 

「確かにね。僕とイシズマイもそうだし」

 

「俺はこのイッシュだと、ミジュマルとポカブ、クルミルがそうなるな」

 

 ハトーボーやツタージャはバトルで。ズルッグは託されたタマゴから孵化してなので違う。

 

「う~、サトシくんもデントさんもそんなゲットしてるんだ~。益々した~い!」

 

「じゃあ、そのマイペース振りをなんとかすることね」

 

「これがわたしだも~ん!」

 

 両手を上げて叫ぶベルに、サトシ達は笑う。

 しかし、今の彼等は予想だにもしないだろう。彼女に、そんな出会いが待っているなどと。

 

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