ポケットモンスター アナザーベストウイッシュ   作:ぐーたら提督

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 どこまでかに悩んだ話です。完成した後も結構。
 後、実は次の話と同時に出したかったのですが、先週は出せなかったので、前から三週間後になるのを避けるために投稿します。


嵐を呼ぶモモンガ

「……」

 

 一体のポケモンが、森の中で荒い息を吐きながら傷付いた身体を休めていた。仲間は大丈夫だろうか。

 

「……」

 

 そのポケモンが、空を見上げる。自分の身体と同色でありながら、今の心境とは対極の清みきった青空。

 所々雲はあるが、それも自分の身体にあるためか、そのポケモンは悲しそうに見上げていた。但し、空の雲と違って自分のは汚れているが。

 ――どうしてこうなったのだろう。そのポケモンはそう思う。だが、突然の事ばかりで理由は全く不明。そんな戸惑いや一体になった孤独さ、戦いの披露やダメージから心身共に疲れきっていた。

 

「……!」

 

 憂鬱とした気持ちで空を見上げていると、その視界に無数のポケモン達が写る。

 しつこい。何度も何度も来る上に知らない為読めない、更に来る度に違うため、かなり手こずっていた。しかも一緒にいた仲間とはバラバラになってしまうし、休む間がほとんどない。

 だが、黙ってやられるつもりは微塵もない。心身共に疲れきっているが、渇を入れて傷付いた翼を羽ばたかせ、戦うべく飛び立つ。

 

 

 

 

 

「ふんふんふふ~ん♪」

 

「キ~バキバ~」

 

 林道を歩きながら、アイリスとキバゴが楽しそうに鼻歌をしていた。その理由は勿論、新しい仲間のエモンガだ。

 

「嬉しそうだな、アイリス」

 

「うん、キバゴも仲間が出来て良かったね~」

 

「キバキバ」

 

「ねぇねぇ、アイリスちゃん。わたしのチャオブーとエモンガでバトルしない?」

 

「バトル?」

 

「なら、俺としようぜ。相手はポカブでどうだ?」

 

「電気と炎。うん、刺激的かつ、燃え上がる様なバトルになりそうだね」

 

 ベルがバトルを提案するも、バトル好きのサトシもしたいと出る。デントはタイプから中々面白そうだと感じた。

 

「ちょっと、サトシくん! わたしが先に言い出したんだから、わたしが先よ! それにエモンガは元々、ゲットするはずだったんだから!」

 

「ゲットに失敗しただろ? でも、先に言ったのはベルだしな。良いよ、譲るよ」

 

 ゲットしたいかは関係ないが、先にバトルを提案したのはベルだ。早い者勝ちとも言うし、ここは譲った。

 

「話が分かる! じゃあアイリスちゃん。バトルよ!」

 

「えぇ、受けるわ!」

 

 サトシ達は手頃な広場に移動。アイリスとベルが向き合う。

 

「行くよ、エモンガ!」

 

「エ~モ!」

 

 出てきたエモンガは、ウインクしながらポーズを取る。

 

「きゃ~! やっぱり、可愛い~!」

 

 エモンガのキュートさに、ベルは早速メロメロになった。

 

「おーい、戦う相手だぞー」

 

「あっ、そうね。じゃあ、気を取り直して……チャオブー!」

 

「チャオブーーーッ!」

 

「可愛いエモンガちゃんに先手を譲るわ! どうぞ!」

 

「じゃあ! エモンガ、めざめるパワー!」

 

「エ~モッ!」

 

「チャオブー、かえんほうしゃ!」

 

「チャオーーーッ!」

 

 光球と炎がぶつかり合う。一旦は均衡するが、技の威力や出し続ける性質から炎が光球を打ち破り、エモンガにダメージを与えた。

 

「エモーーーッ!」

 

「あぁ、エモンガ!」

 

「追撃よ! チャオブー、ヒートスタンプ!」

 

「チャオチャオ……ブーーーッ!」

 

「エモンガ、かわしてほうでん!」

 

「エモ! ガ~~~ッ!」

 

「チャオーーーッ!」

 

「うわっ?」

 

 チャオブーが炎を纏って進み、高く跳躍。落下と体重で押し潰そうとする。

 エモンガはギリギリでかわすと片手に電気の球を作り上げ、技の直後で動けないチャオブーに叩き込むが、同時に後退。

 

「……リュズ?」

 

 直後、アイリスのモンスターボールからドリュウズが出てきたが、本人は?と疑問符を浮かべてキョロキョロする。

 

「ボルトチェンジだ」

 

「えっ、でもあたしはほうでんを指示したのに……」

 

「ね~、エモンガは~?」

 

「チャオ?」

 

「エモエモ。エモモ」

 

 どこに行ったのかを探すサトシ達だが、笑い声から直ぐに判明。アイリスの後ろにいた。

 

「ボルトチェンジは攻撃した後、トレーナーから代わりのポケモンを出して、自分はモンスターボールに引っ込む技なんだけど……」

 

「あれはちょっと違うみたいだな」

 

 エモンガがモンスターボールに戻っていない。少し変わった性質になっているらしい。

 

「うふふ、なんか面白~い」

 

「あはは、ほんと面白~い。けど、笑ってる場合じゃないわね……」

 

 ドリュウズをモンスターボールに戻し、エモンガに近寄る。

 

「エモエモ、エモエモモ」

 

「エモンガ、ボルトチェンジを使ったらバトルしてる意味ないでしょ? これは練習なんだから、あたしの指示に従って」

 

「……エモ~」

 

 アイリスの言葉を聞いた後、エモンガは背を向き、直ぐに振り向いた。涙目で。

 

「あー、泣かせちゃった」

 

「これじゃあ、バトルは無理かな……」

 

「ピカ」

 

「分かったわ。もう泣かないで」

 

「――エモ」

 

 背を向けて上手く行ったとほくそ笑むエモンガだが、直後に抱き抱えられた。

 

「エモ?」

 

「はい。泣くのはおしまい。涙くんはバイバ~イ。さっ、もう一度頑張ろう」

 

 抱き抱えたエモンガをベル達に向けて降ろし、もう一度とアイリスは告げる。

 

「エモ~?」

 

「大丈夫、あたしが付いてる!」

 

 え~と見上げるエモンガだが、アイリスの言葉に失敗かと溜め息を漏らした。

 

「じゃあ、再開。チャオブー、かえんほうしゃ!」

 

「チャオー……!」

 

「エモンガ、かわして!」

 

「エモ~? エモ!? ――ンガッ!」

 

 めんどくさいと不貞腐れるエモンガだが、チャオブーがかえんほうしゃを放とうとしているのを見て、ボルトチェンジを発射。

 また炎と電気がぶつかり合い、直後にエモンガは後退。更に今度はデントのモンスターボールからヤナップが出てきた。

 

「……ヤナ? ナプ!?」

 

 ぶつかり合いで大半は相殺したが、残りの炎が迫っていた。ヤナップは咄嗟にかわす。

 

「わっ、今度は僕のヤナップか」

 

「エモモ」

 

「こ~ら、勝手にボルトチェンジしたらダメって言ったでしょ」

 

「エモ~……」

 

「また泣く~……」

 

 ヤナップに頑張れと応援するエモンガだが、アイリスに注意されてまた涙目になる。

 

「やっぱり、エモンガはバトルが嫌いなのかな?」

 

「そうかもね。アイリスちゃんの指示に従わないし、なんか、自由気儘って感じ」

 

 気に入ってはいるが、言うことを聞くつもりはないようだ。

 

「でもさ、そう言うポケモンをちゃんと育てるのがトレーナー修行ってもんでしょ」

 

「まぁ、そうだよな」

 

 ポケモンと信頼し合える関係になり、しっかりと育てる。それがトレーナーの役目だ。

 

「エモンガ。バトルってさ、思い切ってやったら案外楽しいものなんだよ。頑張ってもう一度やって見よ。ねっ?」

 

「エモ~……」

 

 そうは言われるエモンガだが、不満満々な表情だ。

 

「やっぱり、イヤそうね」

 

「バトルがイヤなら……ポケモンコンテストの方が良いかもな」

 

「ポケモンコンテスト? 何それ?」

 

 サトシが言ったポケモンコンテストに、アイリスが質問する。ベルも気になる様だ。

 

「本で読んだ事がある。ポケモンの強さではなく、魅力さを競うイベントだよね? 人とポケモンの両方が華やかな衣装を纏い、アピールや特殊なルールのバトルを行なう。そして、それに参加する人々はコーディネーターと呼ばれる」

 

「流石デント。詳しいな」

 

 物知りなデントは、本で見たことがあるようだ。

 

「エモ~」

 

 サトシやデントの説明を聞き、少し興味を持ったエモンガは想像する。多くの観客がいる舞台で、華やか衣装を着て技を華麗に使う。

 

「エモエモ! エモモ!」

 

 興味を抱いたらしく、エモンガはやってみたいとはしゃぐ。

 

「エモンガ、やってみたいようだぜ?」

 

「分かる分かる! 面白そうだもん!」

 

 ベルもまた、ポケモンコンテストに興味を抱いていたので、エモンガに共感していた。

 

「けど、それはイッシュにはないんでしょ?」

 

「あぁ、イッシュにはないよ」

 

 と言うか、存在するなら今頃コンテストの名前やコーディネーターが広まっている。

 

「じゃあ、コンテストの練習したって意味ないじゃない。エモンガ、バトルに集中!」

 

「……エモ~」

 

 興味あるコンテストより、興味ないポケモンバトルを優先され、エモンガはつまらなさそうに頬を膨らませた。

 

「じゃあ、バトル再開」

 

「チャオブー、ニトロチャージ!」

 

「エモンガ、めざめるパワー!」

 

「チャオチャオチャオ……!」

 

「……エモ」

 

 足踏みし、炎の突撃の準備を始めるチャオブー。一方、まだ頬を膨らませているエモンガはめざめるパワーではなく、またボルトチェンジを使い、適当な誰かを出しつつ離れた。

 

「――タジャ」

 

「今度はツタージャが」

 

 今回はサトシのツタージャが出てきた。突然出された彼女だが、何時も通り腰に手を当てて堂々としている。

 

「ねぇ、サトシ! こうなったらツタージャ貸してくれない!?」

 

「それ面白そう!」

 

「ダメだよ。ツタージャは俺の手持ちだし」

 

「エモンガにバトルの楽しさを教えたいの!」

 

「イヤだ。第一、ツタージャが聞くか全く別だろ」

 

 仲間にだとしても、そう簡単に自分の手持ちを貸すつもりはない。更に言えば、ツタージャが聞くか分からないのでサトシは断った。

 

「だったら……! ツタージャ、少しだけあたしと――」

 

「タジャ」

 

 直接頼み込むアイリスだが、ツタージャは断ると言いたげに顔を反らす。

 自分が指示を聞くのは、自分が認めた人物であるサトシだけ。旅の仲間の頼みだろうが、聞くつもりはない。

 

「そ、そんな~……」

 

「あはは……。ツタージャはサトシを認めてゲットされた訳だしね……」

 

 なので、ツタージャが断るのは当然と言えた。

 

「ねぇねぇ、エモンガが見えないんだけど……」

 

「えっ?」

 

 サトシ達が見渡すも、確かにエモンガの姿が見当たらない。

 

「こら~! エモンガどこなの~!?」

 

「サトシくん、エモンガが戻るまでチャオブーとツタージャでバトルしない?」

 

「あぁ、良いぜ」

 

 時間が掛かると考えたのか、ベルはエモンガが見付かるまでチャオブーとツタージャでバトルを提案。

 バトル好き、またツタージャでのバトルがまだ少な目な事もあり、一体感を高めるためにもサトシは了承した。

 

「ツタージャ、行くぞー」

 

「タージャ」

 

 やれやれと思いながらもツタージャは頷き、自分のトレーナーであるサトシの元に駆け寄った。

 

「行くわよ! チャオブー、かえんほうしゃ!」

 

「チャオーーーッ!」

 

「ツタージャ、かわしながら懐に潜り込め!」

 

「――タジャ」

 

「しぼりとる!」

 

「チャオーーーッ!」

 

 ツタージャはかえんほうしゃをかわしながら接近。懐に入ると腕に身体を絡ませ、そこからチャオブーの力を奪っていく。

 また、体力はかなり残っているのでしぼりとるの威力は高くなっていた。

 

「だったら……! チャオブー、そのままヒートスタンプで押し潰しちゃえ!」

 

「離れろ!」

 

「チャオチャオチャオ……!」

 

「タジャ」

 

 しぼりとるを受けながらも、ジャンプから押し潰そうチャオブー。しかし、サトシとツタージャが向こうの狙いを受けるつもりは更々なく、直ぐに離れた。

 

「あ~、離れちゃった! でも、そのままフルパワーでヒートスタンプ!」

 

「チャオ、ブーーーッ!」

 

「ジャンプだ!」

 

「タージャ」

 

 炎の押し潰しが迫るも、ツタージャはジャンプで楽々かわす。

 

「そこ! チャオブー、かえんほうしゃ!」

 

「ツタージャ、たつまきで更に飛べ!」

 

「チャオーーーッ!」

 

「タジャ!」

 

 迫る炎を、真下に放ったたつまきで更に上に飛んでかわす。

 

「更に飛んだ!? うそ~!?」

 

「チャオー!?」

 

 鳥ポケモンでもないにもかかわらず、二段ジャンプした事にベルは驚いた。

 

「つるのムチ!」

 

「ター……タジャタジャ!」

 

「チャオ、チャオーーーッ!」

 

 その空中状態で、ツタージャが身体からムチを伸ばして叩く。驚いた隙もあり、チャオブーは直撃。但し、効果今一つなのでダメージは少ない。

 

「まだだ、ツタージャ! つるのムチをチャオブーに絡めろ!」

 

「ジャ」

 

「チャオオ!?」

 

「一気に近付け! そして――アクアテール!」

 

「タジャ。ター……ジャッ!」

 

「チャオブーーーッ!」

 

 ツタージャは蔓を使い、空中からチャオブーに着地ながら一気に接近。尾に水の力を集め、叩き付ける。

 

「チャオ~……」

 

 効果抜群の一撃を受け、チャオブーは倒れた。

 

「チャオブー、戦闘不能。ツタージャの勝ち」

 

「お疲れ様、ツタージャ」

 

「タジャ」

 

 サトシに労われるも、どうってことないとツタージャは堂々と返す。

 

「お疲れ様、チャオブー。また負けたな~」

 

 しかも、有利な草タイプに完敗した。結構ショックである。無傷ならと思ったベルだが、仮にそうだとしても大して差は無いだろうと何となく感じた。

 

「にしても、サトシくんのツタージャって、水タイプの技を覚えてるんだ」

 

 オノノクス戦では、アクアテールを使っていないので、このバトルでベルは初めて知った。

 

「あぁ、俺も最初見たときは驚いた」

 

「多分野生の時に炎タイプ対策に覚えたんじゃないかな?」

 

「……」

 

 デントはそう推測したが、ツタージャは無言。言う必要はないということだろう。

 

「うわ~、バトルが終わっちゃってる……。エモンガ、どこなの~?」

 

「エモ~……」

 

 辺りを探していると、エモンガの抜けた声が聞こえた。見上げると、近くの木の枝で寝ていた。

 

「エモンガ、降りて来なさ~い!」

 

「……エモ? ――エモ」

 

 アイリスに呼ばれるも、聞く耳持たずとまた寝出した。

 

「エモンガがボルトチェンジしたせいで、サトシやツタージャがバトルすることになったのよ~! おまけに、終わっちゃったし~! 練習にならないでしょ~!」

 

「――タジャ」

 

「エモ!?」

 

 エモンガはまだ無視していたが、ツタージャが蔓を伸ばして木からサトシ達の所に移動させる。

 

「お~、ボルトチェンジならぬ、つるのムチチェンジ、って所かな? 面白いテイスト」

 

 デントがそう言っていると、アイリスが駆け寄ってきた。

 

「エモンガ、今度こそちゃんとバトルするのよ!」

 

「エ~……。エモ~ン……」

 

「可愛い顔してもダメ!」

 

「エモ! エモ~……」

 

 また可愛さアピールして止めさせようと企むも、アイリスに却下された。イライラからほうでんを放とうとしたが。

 

「なぁ、やっぱりコンテストの練習させたらどうだ?」

 

「だから! イッシュにはないのにやったって――」

 

「だけど、コンテストの練習だってポケモンを育てることは出来るぜ。ポケモンの魅力を引き出すからこその強さってのもあるし。ポケモンバトルだけがポケモンを育てる手段とは限らないだろ?」

 

「確かにそれは言えてるね」

 

 人に色々あるように、ポケモンにも色々ある。なら、それに応じてやり方を変えるのが最善と言えよう。

 

「エモエモ! エモ~」

 

「ほら、エモンガもやりたがってる。しても良いんじゃないか?」

 

「けど、あたしポケモンコンテストについて全然知らないし……」

 

「僕も知ってるだけだからね……」

 

「エ~……」

 

「じゃあ、俺が教えるよ」

 

 やりたくても、教える人物がいない。アイリスとベルは今日まで知らず、デントも見たこともやったこともなく、知識で知っているだけ。やりようがないと思われたが、サトシが名乗り上げた。

 

「えっ、サトシくんってコーディネーターもやってたの!?」

 

「違うよ。やった事があるだけ。前の手持ちの中に、ポケモンコンテストに興味持ってたやつがいたから」

 

「ああ、なるほど。それで」

 

 それが理由で参加したと言うことだろう。三人は納得したようだ。

 

「だから、コーディネーターほどは出来ないけどな」

 

「いやいや、それでも十分だよ」

 

 コーディネーターではないが、ポケモンコンテストの経験者。この中では最適の人物だ。

 

「じゃあ、俺が出来る限りやって見るな。ピカチュウ」

 

「ピカピ」

 

 ピカチュウはコンテストにも参加していた。自分とやるには一番だ。

 

「ピカチュウ、エレキボール! 続けて、アイアンテール!」

 

「ピッカ! ピー……カァ! ピカピ♪」

 

「キレイ~!」

 

 ピカチュウが電撃の球を真上に放ち、落下した所を鋼の尾で空中で叩く。すると電撃が火花のように弾け、その中で片目をウインクしてアピールした。

 

「次は10まんボルト! 広く放て!」

 

「ピーカ……チューーーッ!」

 

 空中で10まんボルトを広く放つ。電撃は直ぐには消えずに暫く残留し、網のようになる。

 

「でんこうせっか! 上下左右に走り回れ!」

 

「ピッカァ! ピカ! ピカピカ!」

 

「お~、なるほどなるほど」

 

 次は着地と同時にでんこうせっか。網の電撃の中を、高速かつジグザグで走ったりジャンプしたりし、その素早さをアイリス達に見せ付ける。

 

「フィニッシュだ! 思いっきり跳んで――尻尾で着地!」

 

「ピカ! ――ピッピッカ!」

 

「すご……!」

 

「エモモ~……!」

 

 でんこうせっかの最後に跳躍。サトシの近くに戻りつつ、尻尾を地面に刺して着地。同時に10まんボルトが綺麗に弾け、その中で〆にVピースで笑顔を見せた。

 直後、ベルやデント、キバゴやエモンガから沢山の拍手が送られた。ツタージャもへぇと感心した様子だ。

 

「終わり。どうだ、皆?」

 

「すごいすごい! とにかく凄かったよ~!」

 

「上に放ち、落ちてくるエレキボールをアイアンテールで砕いて正確さと力強さを、次に広げた10まんボルトの中を素早くかつ、自在に動き回ることで速さと動きの制度の高さ、最後に尾での着地により、テクニックではなく、ピカチュウならではの魅力さまでも見せ付けた……。素晴らしいよ、サトシ! 僕が審判なら、100点満点だよ!」

 

 アピールだけにもかかわらず、デントやベルはもう魅力されていた。

 

「いやいやー。そう言われると照れるなー」

 

「ピカピカ」

 

「でも、やっぱり俺はコーディネーターじゃないしな」

 

「じゃあ、コーディネーターならこれよりもっと凄いってこと!?」

 

「あぁ」

 

 何も言わなかったアイリスだが、コンテストの凄さは自分なりに既に十分に理解している。

 サトシでこれほどなのに、まだ上がある。どれだけのものなのか想像も付かない。

 

「エモモ! エモ~!」

 

「凄くやってみたい様だよ」

 

 サトシとピカチュウのパフォーマンスに興味を極限まで刺激され、エモンガは今すぐにでもやりたいとアイリスに訴える。

 

「で、でも、一度見ただけであんな風になんて……」

 

「いや、流石にあれと同じでなくても良いよ。先ずは見様見真似でもやることからさ」

 

「それなら……。エモンガ、やろっか」

 

「エモ!」

 

 どれだけかではなく、先ずはやることが大切と言われ、アイリスはすることにした。

 

「ボルトチェンジはダメだし……。じゃあ、エモンガ。沢山、めざめるパワー!」

 

「エ~……モッ!」

 

 力を溜め、黄緑色の光球を十個放つ。

 

「ほうでん!」

 

「エモ~~~ッ!」

 

 大量の電撃を放ち、めざめるパワーにぶつける。二つの技がぶつかり合い、綺麗に弾ける。

 

「次はメロメロ!」

 

「エモ~!」

 

 ウインクし、ハートマークを出していく。

 

「もう一度!」

 

「エモエモ~~~」

 

 更にメロメロ。先に出したメロメロと合わさり、大量のハートマークが宙に舞う。

 

「最後! ほうでん!」

 

「エ~モ~~~ッ!」

 

 仕上げに、大量のハートマークをこれまた大量の電撃で弾けさせた。

 

「……ど、どう?」

 

「エモ?」

 

「……はっきり言って良いかな?」

 

「う、うん」

 

「じゃあ。正直……微妙」

 

「え、えぇ!?」

 

「エモモ!?」

 

 デントの評価に、アイリスとエモンガはショックを受ける。

 

「サトシとピカチュウのと比べると、技が派手なだけ。そう感じたよ」

 

「わたしも~。なんて言うか……技の凄さばかりでエモンガの魅力が全く伝わらないって感じ」

 

 サトシのは、能力を上手く活かしたアピールのため、ピカチュウの魅力さがしっかりと伝わっていた。

 しかし、アイリスのは技だけが凄い印象しか感じない。肝心のエモンガの魅力が全然伝わらないのだ。要するに、歴然たる差があった。

 

「うぅ……。ポケモンコンテストって難しいのね……」

 

「エモ~……」

 

 思った以上の難しさに、アイリスとエモンガは少し落ち込んでいた。

 

「けど、最初だと考えると悪くない方じゃないかな?」

 

「そうよね。わたしやデントさんがやっても多分、同じ様になるかも」

 

 初めてなのだ。それも経験者のサトシと比べれば、劣るのは寧ろ普通と言える。

 

「エモモ! エモ!」

 

「エモンガはリベンジしたいみたいだぜ。どうする?」

 

 今回は散々だったが、次こそは魅力したいと、エモンガは張り切っていた。

 

「まぁ、育てる事には代わりはないもんね。やろっか」

 

「エモ!」

 

 こんなに張り切るエモンガのやる気を削ぐのも勿体無いので、ポケモンコンテストの練習で育てることにした。直後、腹の虫の音が鳴る。

 

「腹減った」

 

 発生源はサトシからだ。その音に、アイリス達は軽くずっこける。

 

「あはは。まぁ、そろそろ昼だし、ランチタイムにしよっか」

 

「さんせ~い!」

 

 と言う訳で昼食になり、デントは料理を作る。

 

「さっ、出来たよ」

 

「皆、出てこ~い」

 

「わたしも! チャオブー、チラーミィ!」

 

「ドリュウズ、出てきて」

 

「ヤナップ、イシズマイ」

 

 料理が完成し、サトシ達は皆に食べてもらおうと、先に出ていたポケモン達以外の手持ちを全部繰り出す。

 

「はい、どうぞ。君達も食べて」

 

 ポケモン達は渡された木の実を食べ始める。特にエモンガは即座に平らげた。

 

「ボーボー?」

 

「……タジャ」

 

 ♂同士で食事しようとする中、エモンガ以外の♀であるハトーボーとツタージャ。

 ハトーボーが皆から離れていたツタージャに一緒に食べないかと聞くも、ツタージャはあたしはこれで良いわと返す。ハトーボーは残念そうだ。

 

「エモ~……。エ~モ」

 

 一つ食べたエモンガだが、それだけでは物足りなかったのか、ミジュマル、ポカブ、ズルッグ、クルミルのグループに向かってメロメロを放つ。

 そして、四匹に駆け寄るとぶりっこポーズを取った。

 

「う~ん、ふくよかな味わいにハーブの香りが程良く効いていて。やっぱり、デントさんの料理は五つ星!」

 

「ありがとう」

 

「どうだ、美味かったか?」

 

 ポケモン達は頷く中、ミジュマル、ポカブ、ズルッグ、クルミルの四匹がメロメロから解け、自分の分のご飯がないことに気付く。

 

「ミジュミジュ!」

 

「ポカポカ!」

 

「ルッグルッグ!」

 

「クルルル!」

 

 四匹は無くなった理由が相手にあると考えて問い詰めるも、身に覚えがないため、言い合いになる。最終的には四匹は喧嘩に発展した。

 

「エモ~……」

 

 その光景に、やり過ぎちゃったと舌を出すエモンガ。

 

「ピカピカ! ピカ! ピカピ! ピカカ!」

 

 ピカチュウが止めに入るも、四匹に攻撃され続け、最終的には10まんボルトで近付いたサトシ達諸とも攻撃した。

 

「なんで、こうなるの……?」

 

「あはは……」

 

「わ~、この髪型なんか良いかも~」

 

「はは……。ベルは前向きだね……」

 

 電撃で髪が無茶苦茶に跳ねてしまったが、ベルは少し気に入ったようだ。

 

「それより……なんでケンカになったんだ?」

 

 髪を整えたあと、サトシが理由を聞くも、四匹は騒ぐばかりで分からない。

 

「うーん、分からない……」

 

「もしかして、自分のご飯を誰かに食べられたかな?」

 

 そうそうと四匹は頷く。デントの推測は当たったようだ。

 

「でも、誰が食べたの?」

 

「じゃあ、ここはイッツシンキングタイム」

 

「うーん……」

 

「――タジャ」

 

 ポケモン達を観察すると、ツタージャが蔓でエモンガを捕まえ、サトシ達の前に出す。

 

「エモンガ?」

 

「あれ、そのお腹……」

 

「そうか。分かった」

 

「何が分かったんだ、デント?」

 

 エモンガの膨らんだお腹を見て、デントは気付いたようだ。

 

「うん。ご飯を食べられたのは皆♂のポケモン。そして、エモンガだけがお腹を膨らませていた。つまり、犯人はエモンガ」

 

「けど、どうやって食べたの?」

 

「メロメロだよ。♂のポケモン達をメロメロにしている間にエモンガが全部食べたんじゃないかな? そして、メロメロから解けた四匹は誰が犯人か分からずケンカをしてしまった」

 

「なるほど。あり得るわね」

 

「ボーボー」

 

「ハトーボー?」

 

 筋が通るデントの推理に納得すると、ハトーボーが前に出て翼でエモンガを指す。

 

「ハトー、ハトハト」

 

「えっ、皆がエモンガに木の実を渡した所を見た!?」

 

「ボー」

 

 コクコクとハトーボーが頭を縦に振る。あの時はエモンガにプレゼントしたと思っていたのだが、ケンカしたことから違うと判断したのだ。

 

「じゃあ、犯人はエモンガじゃないか!」

 

「エ、エモ……」

 

 しまったと、エモンガは不味い表情を浮かべる。見られていたのは完全に予想外だった。サトシ達を見ると、皆批判の眼差しを向けている。

 

「ち、ちょっと待ってよ! エモンガはそんなに悪い子じゃないわよ!」

 

「キバキバ!」

 

 そこに、アイリスとキバゴがエモンガを庇おうと前に出る。

 

「じゃあ、他にやったやつがいるのかよ? お腹も膨らんでて、それにハトーボーも見たって言ってるぞ? まさか、ハトーボーが嘘を付いたとか言うんじゃないだろうな?」

 

「そ、それは……勘違いしたんじゃないの?」

 

「誰と?」

 

「えと……あっ、ツタージャとよ! ツタージャだって♀でメロメロが使えるじゃない!」

 

「じゃあなんだよ!? ツタージャが犯人だって言う気か!?」

 

 ツタージャもメロメロが使える事から、アイリスは咄嗟にツタージャだと言うが、仲間を犯人にされてサトシは声を荒げる。

 

「あっ、いや、そう言う訳じゃ……!」

 

「うん、それは考えにくいよ。あのツタージャが仲間から横取りするとはとても……」

 

 今までいるが、ツタージャはそんなに食べるタイプではない上、冷静な性格。仮に欲しいのなら、わざわざ怒られるこんな方法より、自分達に言うだろう。

 

「アイリスちゃん。どこからどう見ても、エモンガが犯人よ。わたしだって分かるわ」

 

「う、うぅ……」

 

「エモンガを庇いたい気持ちは分かるけど、悪いことをした以上は謝らせるべきだ。じゃないと、トレーナー失格だよ」

 

「……エモンガ」

 

「エ、エモ……」

 

 こうなっては誤魔化すのは無理かと判断したのか、エモンガは諦めてアイリスと一緒に頭を下げて謝った。

 

「サトシとツタージャもごめん……」

 

「良いよ、謝ってくれたら」

 

「……タジャ」

 

 自分の仲間がそんなことをしたとは思いたくない気持ちは分かる。謝りもしたし、サトシは許した。

 そんなサトシを甘いと思いつつ、ツタージャもこれが彼だからまぁ良いかと心の中で呟く。

 

「うん。それで良し。あと、エモンガ。沢山食べたいのなら、僕達に言うべきだ。用意するから」

 

「……エモ」

 

 首を一度縦に振るエモンガだが、チラッとある方向を向く。視線の先にはツタージャがいた。

 こいつが余計な事さえしなければと、はっきり言うと逆恨みしていたのだ。

 

「――タジャ」

 

 そんなエモンガの敵意を、ツタージャは鼻で笑うと軽々と受け流した。

 

 

 

 

 

「さて、片付けも終わったし、出発するかい?」

 

「それも良いんだけど……なんか眠い」

 

「ピカチュ……」

 

「あたしも……」

 

「キババ……」

 

 一悶着の後、食事と片付けが済み、またライモンシティに向けて出発しようかとデントは聞くも、少し眠いのかサトシやアイリスがあくびする。

 

「なら、イッツお昼寝タイムにしない?」

 

「それも悪くないね。少し休んでから行こうか」

 

「さんせーい」

 

 と言う訳で、サトシ達は木の影で軽い昼寝を取ることにした。木の影で涼しみながら穏やかな一時が過ぎる。

 

「……エモ。エモエモ」

 

 少し経つと、エモンガが起き上がり、不満気な表情でどこかへ歩き出す。

 

「キバ。キバキバ」

 

「……ミジュ?」

 

 いち早くエモンガがどこかに向かったのに気付いたキバゴが追おうとする。その声に眠りが浅いミジュマルが目覚め、キバゴが一緒に探して欲しいと頼む。

 

「ミジュ~?」

 

 しかし、さっきご飯を食べられた件がある。最初は愛くるしいポケモンだと思っていたのに、予想を裏切られたミジュマルとしては少し乗り気ではない。

 

「キバキバ。キババ……」

 

「……ミージュ」

 

 乗り気ではないミジュマルに、キバゴはダメなのと落ち込む。そんな彼に、ミジュマルは少し迷ったあと一緒に探すことにした。子供のキバゴにこう頼まれてるのに断るのは後ろめたかったのだ。

 

「ミジュ?」

 

「キバキバ」

 

 ミジュマルはどっちに行ったのかを聞き、キバゴが指差す方向を一緒に走る。

 

「――タージャ」

 

 そんな彼等を見て、片目を上げたツタージャはやれやれと溜め息を溢した。

 

「エモエモ……!」

 

 怒られた件から、ムッス~と膨れっ面で歩くエモンガ。その最中、大量の木の実が成っている樹を発見。

 上機嫌になるも、そこには三匹のミルホッグ達がいた。どうやら、この樹はミルホッグ達の縄張りのようだ。

 

「キバキバ~?」

 

「ミジュミジュ~?」

 

 どうしたらと悩むエモンガに、探しに来たミジュマルとエモンガが近付いてきた。彼等を見て、エモンガはニヤリと黒い笑みを浮かべる。

 

「エ~モ~~~ン」

 

 エモンガはタイミングを見計らい、悲痛な声を上げながら倒れた。勿論、演技だ。

 

「キバキバ!?」

 

「ミジュジュ?」

 

「エモエモ。エモモ。エモモエモ~」

 

 駆け寄った二匹に、エモンガはミルホッグを指差しながら話す。木の実を見付け、食べようと採ろうとしたら、そこをミルホッグ達に攻撃されて出来なかったと。

 それを泣きながらかつ、体勢や悲しそうな声と合わせることでキバゴやミジュマルをけしかけようとした。

 

「キバキバ! キバキ!」

 

「……ミジュ~?」

 

 子供なのと、エモンガを大切に思うキバゴはすっかり騙されるも、さっきの件もあり、ミジュマルは胡散臭そうにエモンガを見ていた。

 

「エ、エモ! エモエモ!」

 

 ミジュマルの視線に危機感を募らせたエモンガはとにかく、必死に伝える。

 

「……ミジュ」

 

「エモ!」

 

 その甲斐もあってか、ミジュマルが納得したように呟く。エモンガは上手く行ったと心の中でほくそ笑む。

 

「ミジュ、ミジュジュ」

 

 しかし、エモンガの思惑に反し、ミジュマルはじゃあ、確認して来るとミルホッグ達に近付く。

 慌てて止めようとしたエモンガだが、その前にミジュマルがミルホッグ達に話し掛けた。

 

「ミジュ。ミジュマ?」

 

「ホッグ!?」

 

 ミジュマルはエモンガが嘘話を伝えるも、やってもいないミルホッグ達は、はぁ!?と驚くばかり。

 

「……ホッグ」

 

「……ホググ」

 

「……ホッググ」

 

 三匹のミルホッグ達が話し合う。何故、エモンガはそんな嘘を付いたのか。

 そして、その結論はエモンガが自分達を追い出し、生活圏の要であるこの縄張りを奪うため。そう判断したのだ。

 つまり――こいつらは、自分達を襲った『あいつら』の仲間。排除すべき敵だと。

 

「ホッグゥ……!」

 

「ミジュ!?」

 

「エモ!?」

 

「キバ!?」

 

 昨日のポケモン達同様、敵意を剥き出しにするミルホッグ達。

 

「ミル!」

 

「ホッ!」

 

「グゥ!」

 

 三匹のミルホッグ達は、それぞれ異なる属性を拳に込める。ほのおのパンチ、かみなりパンチ、れいとうパンチだ。そして、それを構えた状態でミジュマル達に迫る。

 

「ミジュ!」

 

「キバ!」

 

「エモ!」

 

 三匹は咄嗟にかわすも、その際拳がミジュマル達の後ろにある木に命中。軽く凍らし、焦がしながら揺らした。

 

「――バッキ!」

 

 木から何かが落ち、その何かの声と落下した音が同時に鳴る。

 

「バッキー……!」

 

 何かが身体を起こす。いくつもの火のような髪型や大きな炎のような尾。両肩には白いフサフサの毛がある、ジト目のポケモン。

 サトシがサンヨウジムで戦ったバオップの進化系、ひのこポケモン、バオッキーだ。

 

「バッキィ!?」

 

「ホッグホッグ!」

 

「ホググッ!」

 

「ミル、ミルル!」

 

 落下したバオッキーは、一番近くにいたミルホッグ達にお前らの仕業がと問い詰めた。

 ミルホッグ達はそもそも悪いのは嘘を付いたミジュマル達だと指差す。更に、こいつらは『前の連中』の仲間だとも。

 

「バッキィ……!」

 

「ホッグゥ……!」

 

 それを聞いたバオッキーはミジュマル達に敵意を向ける。しかも、ミルホッグ達も加わっていた。

 

「ミ、ミジュ……!?」

 

「キババ……!?」

 

「エモ……!」

 

 これは明らかにやばいと、三匹は焦った表情を浮かべる。

 

「――ピカピ! ピカピカ!」

 

「ううん……? ピカチュウ……? よく寝た……。で、どうした?」

 

 ピカチュウの呼ぶ声に先ずはサトシ、続けて皆も目覚めた。

 

「……あれ? キバゴとエモンガがいない!」

 

「ミジュマルとツタージャもだ!」

 

 いなくなった四匹を探すべく、アイリスは木の上から辺りを見渡す。

 

「あそこ! あの辺りが少し騒がしいわ!」

 

「行こう!」

 

 急いでサトシ達はその場所に向かう。同時に騒ぎを聞きつけ、彼等とは別の方向から一匹のポケモンがゆっくりと近付いていた。

 

 

 

 

 

「ミル!」

 

「ホッ!」

 

「グゥ!」

 

「バッキーーーッ!」

 

 ミルホッグ達はそれぞれめざめるパワー、シャドーボール、きあいだまを。バオッキーはかえんほうしゃを放つ。

 

「ミジュ! マーーーッ!」

 

「バッキッ!」

 

 説得は困難と判断したミジュマルは四つの技をかわすと、アクアジェットを発動。炎タイプの技を放ったバオッキーに向かって突撃。

 効果抜群のダメージを与えるが、それだけで倒れる程バオッキーは弱くない。

 

「エモエモ……」

 

「ホッグ!」

 

 バオッキーがミジュマルと戦い、注意を向かっている隙にエモンガは逃げようとしたが、そこにミルホッグ達が立ちはだかる。

 

「ミルミ!」

 

「ホッホ!」

 

「グッグ!」

 

「エモ! エモモ! エモーーーッ!」

 

 ミルホッグ達は三種類の属性の拳を放つ。エモンガはかわそうとするが、三体同時の攻撃はかわしきれず、効果抜群のれいとうパンチを受けた。

 

「キバキバ!」

 

「ミル? ホッグ!」

 

「――タジャ」

 

 エモンガを助けようとキバゴだが、ミルホッグの一匹が邪魔だと言わんばかりに殴り掛かろうとした。その瞬間、そのミルホッグの腕に蔓が絡まる。

 

「ホッグ!?」

 

「タージャ」

 

「ミジュ!?」

 

「キバキ!」

 

「エモ!?」

 

 その蔓は勿論、ツタージャのだ。

 

「ホッグ!」

 

「――ジャ」

 

 ミルホッグの片腕から放たれためざめるパワーをツタージャは軽やかにかわし、ミルホッグ達の前に着地。

 

『これで懲りた?』

 

『あんた……! ずっと見てたの!?』

 

『そうよ。少し痛い目に遭ってもらわないとダメと思ったから』

 

 自分の仲間のミジュマルや、まだ子供のキバゴをも巻き込んだので、尚更である。

 

『その間にキバゴやミジュマルがやられたらどうする気だったのよ!』

 

『アンタが巻き込んだんでしょうが。第一、ミジュマルはそんなに弱くないし、キバゴが狙いだったら即座に助けてたわよ』

 

 ただキバゴは子供なので、ミルホッグ達やバオッキーが狙いを付けるとしたら、ミジュマルかエモンガだろうとツタージャは予想していたが。

 

『ツタージャ、サトシは!?』

 

『まだ寝てるかもね。全く、こんな時にトラブルを起さないでほしいわ。はぁ』

 

 数は四対四で同じだが、子供のキバゴがいる分、こっちが不利。ここは自分とミジュマルで対応し、エモンガとキバゴを戻してサトシ達を呼ぶのが最善だろう。

 ツタージャがそう判断し、実行しようとしたその時だった。

 

「皆ー!」

 

「キバゴ! エモンガ!」

 

 声に反応する四匹。振り向くと、サトシ達が近付いて来ていた。

 

「あれはミルホッグと……」

 

『バオッキー、ひのこポケモン。バオップの進化系。甘いものが大好物で、体内の炎を燃やすエネルギーになる』

 

「バオップの進化系か!」

 

「バオーーーッ!」

 

「かえんほうしゃ! ミジュマル、シェルブレードで切り裂け!」

 

「ミジュマ!」

 

 炎を吐き出すバオッキー。その炎をミジュマルは水の刃で両断する。

 

「ミルル!」

 

「ホホッ!」

 

「グーッ!」

 

「ツタージャ、たつまき!」

 

「ター……ジャ!」

 

 三種類の拳を叩き込もうと迫るミルホッグ達に、ツタージャは竜の力が込められた細い竜巻を命中させる。

 

「にしても、ミルホッグ達とバオッキーに何で襲われてるんだ?」

 

「もしかして、またエモンガのせいで……?」

 

「そ、そんなことない……と思いたいなあ」

 

 さっきの件があるため、アイリスは断言出来なかった。

 

「やっぱり……」

 

「デント? どうした?」

 

「あのミルホッグ達やバオッキー。昨日のポケモン達と同じだ」

 

 ミルホッグ達とバオッキーも先日のポケモン達と同じく、敵意が剥き出しになっている。

 

「どうする? 糸は難しいぞ」

 

 糸で捕らえようにも、バオッキーの炎で燃やされる可能性があった。

 

「ならここは単純に、手持ち全て出して戦意を削ごう。ヤナップ、イシズマイ!」

 

「分かった! ピカチュウ、ハトーボー、ポカブ、ズルッグ、クルミル!」

 

「ドリュウズ!」

 

「チャオブー、チラーミィ!」

 

 十体のポケモンが加わり、不利を悟ったミルホッグ達とバオッキーは一歩下がる。

 

「ミルホッグ、バオッキー。俺達はお前達と戦う気はないんだ」

 

「ポケモン達を出したのは君達と話すためだ。攻撃の為じゃない」

 

「騒ぎを起こした事は謝るから。ごめんなさい!」

 

 頭を下げたアイリス達に、ミルホッグ達とバオッキーは互いを見合わせる。

 どうも、彼等は違う様だ。自分達を倒すつもりなら、一斉攻撃すればそれで済む。謝る必要などない。

 

「……ホッグ」

 

「……バッキ」

 

 デントの案で敵意を削られ、そのおかげで多少冷静になった事もあり、ミルホッグ達やバオッキーはここは退くことにした。

 

「ミジュマル、ツタージャ、キバゴ、大丈夫か?」

 

「ミジュジュ」

 

「タージャ」

 

「キバキ」

 

「無事で何よりだよ」

 

「もう、エモンガ! また騒ぎを起こして!」

 

「エ、エモ……」

 

「心配したんだから……」

 

「キバキバ……」

 

 また怒られると身構えるエモンガ。いや、実際にアイリスは怒っているが同時に心配しており、キバゴに至っては心配だけ。エモンガは少し戸惑う。

 

「……」

 

「ツタージャ?」

 

 そんなにエモンガに、ツタージャははぁと軽く溜め息してから近付く。

 

『まだ反省してないの、アンタ?』

 

『……うっさいわね。アンタに言われたくないわよ』

 

『あら、どういう意味?』

 

『アンタ、根本はわたしと同じでしょ。一匹狼』

 

『へぇ、それぐらいは分かるのね』

 

 他者を欺く、他者と関わらない。その差こそあれど、ゲットされるまで一匹だったエモンガとツタージャは同類と言っていい。

 

『でも残念。あたしはあたしなりに、サトシ達を仲間だと思ってるの』

 

 ぶつかり合ったからこそ、ツタージャはサトシ達を認め、仲間になったのだ。

 

『……それだけの価値があるってわけ?』

 

『そう』

 

 サトシ達は決して完璧ではない。だが、自分が認めれるだけのものを持っているからこそ、今も彼等といるのだ。

 

『それに、アンタもしてもらったでしょ?』

 

 これはポケモンコンテストの事だ。

 

『まぁ、それはどうでも良いわ。さて、アンタがアイリスとキバゴを気に入ったのは、面白さやご飯には困らさそう。危険からは避けれる。そんなところかしら?』

 

『……悪い?』

 

『別に? アンタがどう思おうが、そっちの勝手だもの。ただ、アイリスやキバゴはアンタを仲間と思って未熟ながら頑張ってるわ』

 

『……だから、我が儘するなってこと?』

 

『違うわよ』

 

 我が儘なのは、エモンガの個性。それを咎める権利はツタージャにはない。腹黒さや強かさは、野生で生き抜くには必要なものなのだから。

 第一、忠告するのは、トレーナーのアイリスの役目である。ツタージャが言いたいのはそういう事ではない。

 

『騒ぎや迷惑にならない程度でなら好きにしたら良いわ。但し、発展したら全力で対応して、終わったら謝りなさい。それだけよ』

 

 要するに、迷惑かけたら解決に尽力、最後はちゃんと反省して謝る。ツタージャが言いたいのはそれだけである。

 

『後さっきも言ったけど、アイリスとキバゴはアンタを仲間だと思ってる。二度も身勝手な騒ぎを起こしてもまだね。その想いに、どう向き合うかはアンタ次第。まぁ、あんな一生懸命な二人に向き合えないのなら、今後仲間なんて出来ないでしょうけど』

 

 それだけ言うと、ツタージャはエモンガから離れる。

 

『……』

 

「エモンガ……」

 

「キババ……」

 

 エモンガはアイリスとキバゴを見る。迷惑を掛けられても尚、彼女達は心配してくれた。いや、今もだ。

 

「……エモ」

 

 少しの時間の後――エモンガはごめんと、頭をしっかりと下げた。

 

「サトシ達にもね」

 

「……エモ。……エモモ」

 

 そして、サトシ達にも、ごめんなさいと頭を下げる。その後はツタージャに近付いた。

 

『言っておくけど、わたしはアンタがキライだから』

 

『構わないわよ』

 

 ツタージャは別に好かれたい訳でもない。自分が思うがままにいて、サトシ達といれればそれで良い。

 

『……ふん、本当に気に入らないわね。まぁでも、これからは協力することもあるだろうし……よろしく』

 

『えぇ、よろしく』

 

 手を出し、握り合うツタージャとエモンガ。仲直りの握手ではない。協力する関係だと示すためのだ。これからどんな仲になるかは、彼女達次第だろう。

 

「一件落着、か?」

 

「みたいだね」

 

 サトシ達にはエモンガとツタージャの声は分からない。だが、彼女達なりに納得したのは分かった。

 

「じゃあ、戻ろっか」

 

「そうね」

 

 これ以上面倒が起きないよう、サトシ達が広場に戻ろうとしたその時だった。

 木の影から、一匹のポケモンが顔を少し出す。さっきの騒ぎについて把握しに来たのだ。物音は消えたものの、念のために。

 

「――!?」

 

 そのポケモンの目が、ある人物に止まる。そして、消耗した精神も影響し、一気に怒りが込み上げた。

 

「――チルッ!」

 

「――えっ?」

 

 草木の揺れ音と、そのポケモンの声。咄嗟に反応して振り向こうとサトシ達に、青と白が迫る。

 

「うわっ!?」

 

「きゃあっ!?」

 

 狙いであるサトシはぎりぎりで避けるも、攻撃の余波でベル達共々転がる。

 

「な、なに、今の!?」

 

「分からない! 何が攻撃してきたのは確かだけど……!」

 

 サトシ達は身体を起こし、そのポケモンを確かめようとする。

 

「……いない!?」

 

 しかし、そのポケモンが動いた方向を見るも、一切姿がない。周りを確かめるが同様だ。

 

「ど、どこに……?」

 

「森に隠れた……? いや違う」

 

 物音が全くないのだ。つまり、森に身を隠した訳ではない。

 

「ってことは、空?」

 

「けど、見えないぜ?」

 

「……となると、視界から外れるぐらいの速さで移動した?」

 

「ど、どんなスピードよ、それ!」

 

 そうだとすれば、桁外れの速さだ。しかし、並みのポケモンでは不可能。それに、いきなり攻撃したのも気になる。

 

「……あれ?」

 

「どうした、ベル?」

 

「いや、なんだろ……。あの雲、変な気がする」

 

 ベルが注目したのは、雲だった。指でそこを指す。

 

「雲? そんなの気にする余裕なんて――」

 

「で、でも変だよ! 何か動いてる!」

 

 とりあえず、サトシ達はベルが指差す方向を見る。一見、漂う雲としか見えないが。

 

「……」

 

「――ポケモン!?」

 

 それは雲ではなかった。雲に見えたのは、白い雲のような羽で構成された翼。それは胴体まで覆い尽くしており、空のような青い身体に長い首、大きなアホ毛と尾羽がある、鳥にも思えるポケモン。

 

「あれは……!?」

 

 そのポケモンの名は、ハミングポケモン、チルタリスと言った。

 

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