ポケットモンスター アナザーベストウイッシュ   作:ぐーたら提督

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 これは完全にオリジナルの話です。


傷付いたハミング

「チルーーーッ!」

 

「りゅうのいぶき!」

 

「避けるんだ!」

 

 突如して現れたポケモン、チルタリスが口から竜の力を込めた息吹を吐き出した。サトシ達は咄嗟に動いてかわす。

 

「あ、危なかった……!」

 

「大丈夫か?」

 

「う、うん。それにしても、あのポケモン一体……」

 

「あれは――」

 

「あれはチルタリスよ!」

 

「チルタリス……」

 

 アイリスが呼んだ名前から、ベルはポケモンの情報を検索する。

 

『チルタリス、ハミングポケモン。心が通じ合った人を美しく柔らかい羽で優しく包み込み、ハミングする』

 

「アイリス、君はあのポケモンを知っているのかい?」

 

「うん。ドラゴンタイプのポケモンだから」

 

「えっ、あのポケモン、ドラゴンタイプなの!?」

 

 外見からは、とてもだがドラゴンタイプには見えない。ベルもだがデントも驚いている。

 

「あたしも知った時は驚いたわ。それはともかく、チルタリスはイッシュに生息していないポケモンよ」

 

「あぁ、俺はホウエンで見た」

 

「って事は、あのチルタリスは……!」

 

「ロケット団の……!」

 

 あの騒動時に、ヒウンシティから逃走したロケット団のポケモン達の一体。そうとしか考えられなかった。

 

「チルルーーーッ!」

 

「また来るよ!」

 

「皆、かわせ!」

 

 雲のような翼が鋼の様に変化する。はがねのつばさだ。サトシに向かって来たその一撃を急いで動き、三度回避する。

 

「ねぇ、なんかサトシを狙ってない!?」

 

「で、でも、どうして!?」

 

 最初の一撃と言い今のと言い、どういう訳かチルタリスはサトシに狙いを定めていた。

 

「……ん? なんだ?」

 

 その理由について、デントはある程度予測していたが、直後に前後から何が来る音がした。

 

「ホッグ!」

 

「バッキィ!」

 

「ミルホッグ達とバオッキー!?」

 

 それは先程のミルホッグ達とバオッキーが近付く音だった。四体はチルタリスを見上げると、強烈な敵意をぶつける。

 

「バオーーーッ!」

 

「ミル!」

 

「ホッ!」

 

「グゥ!」

 

「チルッ! タ、リ……!」

 

 四匹の攻撃をチルタリスはかわすも、その息はとても荒い。

 

「あいつら、チルタリスを狙ってる?」

 

「な、なんで?」

 

「……そうか。そういう事か」

 

 今までの情報、現状からデントは理解した。

 

「どういうこと、デント?」

 

「うん。まず、この様子からミルホッグ達とバオッキーはチルタリスを狙っているのは確実だ。問題なのはその理由。おそらくそれは――ここで色々と騒ぎを起こしたからだ。それも、他のポケモン達と一緒に」

 

「他のポケモン達?」

 

「ヒウンシティから逃げたのは、チルタリスだけじゃない。多くのポケモン達がいる。きっと、あのチルタリスも他のポケモンと一緒に来たはず」

 

「でも、今はチルタリスしかいないわよ?」

 

 仲間と一緒に逃走したにしては、一匹だけと言うのはおかしい。

 

「問題はそこだ。ロケット団のポケモン達は突然沢山現れた。そんな状態で、この辺りの野生のポケモン達と何もなかった訳がない」

 

「もしかして、沢山のポケモン達と戦った?」

 

「あぁ、休めたりお腹を満たしたりするためにね。だけど、野生のポケモン達だって住処や縄張りがある」

 

「どっちも必死に戦うわね……」

 

 生きるために、ポケモン達は互いに必死に交戦しただろう。

 

「そうなったら、野生のポケモン達はどう思う?」

 

「それは……住処や縄張りを荒らされたらやっぱり、腹が立ったり、イライラしたり――って、まさか!」

 

「そう、当然怒ったり危機感を募らせる」

 

「じゃあ、昨日のココロモリ達、ペンドラーやデンチュラ、ミルホッグ達やバオッキーがあんなに怒ってたのは……!」

 

「ロケット団のポケモン達との戦いのせいか……!」

 

 懸念されていた、イッシュの自然への影響は思った以上の速さで出ていたのだ。

 

「そう考えるのが妥当だよ。でも、ここを住処にする野生のポケモン達と違って、ロケット団のポケモン達はどこにどう行けば良いかすら分からない。迫る野生のポケモン達に対応しながらひたすら逃げるしかない」

 

「もしかして、チルタリスはそうやってる内に自分だけになった?」

 

「……多分ね」

 

 チルタリスが自分を盾に仲間を逃がしたのか、それとも逃げる内に一体になったかは不明だ。だが、まともな休息をしてないのはボロボロの身体を見れば一目瞭然だ。

 

「け、けど、それってやっぱり、ロケット団が悪いよね? チルタリス達だってそうしたくてしたわけじゃ……」

 

「うん。原因はロケット団だ。だけど、この事態を起こしたのはチルタリス達なんだよ。……野生のポケモン達にとっては、彼等こそが敵であり、悪なんだ」

 

「そんな……」

 

 しかし、事実だった。切欠はロケット団でも、この事態を引き起こしたのはチルタリス達なのだ。

 

「――チル! タ……ッ!」

 

 一つの攻撃をかわすも、その際にポケモン達で戦いでのダメージで動きが鈍り、表情も歪む。

 

「バオー……キーーーッ!」

 

「ギガインパクト!」

 

 鈍ったその瞬間を狙い、バオッキーは全身の力を最大まで引き出した凄まじい一撃、ギガインパクトを放つ。

 

「チルーーーッ!」

 

 かわそうとしたチルタリスだが痛みと疲れで出来ず、直撃して地面に落下する。

 

「ミル!」

 

「ホッ!」

 

「グゥ!」

 

「チルルッ!」

 

 落下した所を狙い、ミルホッグ達が三つの属性の拳を放つ。タイミング的にもチルタリスはかわしきれず、更にダメージを受ける。

 

「チ、ル……ッ!」

 

「一体だけで、あんなに傷付いてるのになんでまだ攻撃されるの……!?」

 

「……容赦なんてしないよ。彼等からすれば、住処を荒らした敵は徹底的に潰す。そんなところだろうね」

 

 寧ろ、加減する方が不思議だ。

 

「そ、そんなの……ダメッ!」

 

「ベ、ベル!」

 

 一人で傷付くチルタリス。その現状を前にベルは居ても立っても居られなくなり、走り出す。

 

「バーオー……!」

 

「ミー……!」

 

「ホー……!」

 

「グー……!」

 

「チ、ル……」

 

 四匹による止めの一撃。避けようと必死に身体を動かそうとするチルタリスだが、ダメージが大きく、全く動かない。最早、これまでかとチルタリスが覚悟した。

 

「ダメーーーッ!!」

 

「バッキ!?」

 

「ホッグ!?」

 

「チ、ル……?」

 

 そんなチルタリスの前に、両手を開いてベルが立つ。

 

「仕返しならもう充分でしょ!? もう止めて! こんなのただの弱い者イジメだよ!」

 

「バ、バッキ……」

 

「ミ、ル……」

 

 ベルが突然前に立った事で敵意が若干削れ、そこに弱い者イジメの発言も出て、バオッキーとミルホッグ達は迷い出す。

 

「ミルホッグ、バオッキー。このポケモンは俺達に任せてくれないか?」

 

「住処を荒らされた君達の怒りは分かる。だけど、それを承知の上で頼む」

 

「どうか、お願い!」

 

「……」

 

 どうしたものかと迷うミルホッグ達とバオッキー。向こうの方が数はいるし、このままチルタリスを倒そうとしても、逆に自分達が倒される恐れがあった。

 

「……バッキ」

 

「……ホッグ」

 

 暫く悩み、四匹はチルタリスへの攻撃で多少鬱憤は晴れてるし、これぐらいで良いかとサトシ達から離れていった。

 

「チル……。タ……」

 

「チルタリス! 大丈夫!?」

 

 チルタリスはダメージから気絶。倒れてしまった。ベルが駆け寄り、状態を見るも微動だにしない。

 

「ひどいダメージだ……。直ぐに昼寝に使っていたあそこに戻って手当をしよう。ここじゃ、また襲われる可能性がある」

 

「あぁ!」

 

 サトシ達はチルタリスを担ぎ、昼寝をしていた広場に急いで戻って行く。

 

「……コア」

 

 その一連の流れを、とあるポケモンが見てるとは思わないまま。

 

 

 

 

 

「これで、手当は終わりっと……」

 

 広場に戻り、サトシ達は包帯や絆創膏、アイリスの薬草知識から作った塗り薬等を使い、チルタリスへの一通りの処置を施し終える。

 

「チル……チル……」

 

 その甲斐もあってか、チルタリスは穏やかに眠っていた。

 

「ゆっくり寝てる」

 

「あとは、起きた時にオレンの実などを食べさせよう」

 

 体力回復の為にも、オレンの実などを与えた方が良い。

 

「今は一安心ですよね?」

 

「あぁ、そう見て良い」

 

「本当に良かった~」

 

 心底安堵の笑みを浮かべるベルだが、サトシは少し気になる。

 

「なぁ、ベル」

 

「なに、サトシくん?」

 

「なんでそんなにチルタリスを心配してるんだ?」

 

「そう言えば、手当も自分から率先してやってたもんね」

 

「それは僕も気になったかな」

 

 包帯を巻いたり、絆創膏を貼ったり、薬を塗ったり。それらをベルは自分から率先してやっていた。

 勿論、自分達も傷付いたチルタリスは放って置けなかったが、それを考慮してもベルは献身的だったのだ。未知の、それも犯罪組織にいたポケモンが相手なのに。

 ちなみに、アイリスはドラゴンタイプが好きな為、率先してチルタリスを手当てしようとしたが、ベルのやる気や迫力に押され、彼女に任せることになったのは余談だ。

 

「あ~、うん。ちょっと、ね」

 

 言いづらそうなベルに、サトシ達は追求しない方が良さそうだと判断した。

 

「チル……?」

 

「あっ、チルタリスが目が覚ましたわよ!」

 

 声に反応したのか、チルタリスの目がゆっくりと開く。

 

「大丈夫、チルタリス?」

 

「チル……」

 

 目の前に駆け寄ったベルを見て、チルタリスは彼女が自分を四匹から庇った少女だと気付いた。

 

「……! チル……!」

 

「うわっ、また……!」

 

「チ、ル……!」

 

 その後、サトシの存在に気付き、また攻撃しようとしたチルタリスだが、痛みで止まる。

 

「もう! 怪我だらけなんだからゆっくりする!」

 

「チ、チル……」

 

 無茶しようとした事に怒り、叱るベルにチルタリスは少し詰まりながらもはいと思わず頷く。

 

「やっぱり、サトシを狙ってる……?」

 

「多分、倒されたからじゃないかな?」

 

「俺に? ――あっ」

 

 デントに言われ、思い出すサトシ。ゼクロムと一緒の時に倒したポケモン達の中にはチルタリスが何匹かいた。このチルタリスはその内の一体なのだろう。

 

「だから仕返しに?」

 

「身も心も疲れていたのもあるだろうね」

 

 それに、メテオナイトの暴走によるパニックも合わさって、サトシのせいだと思ったのかもしれない。サトシを狙ったのはそんなところだろう。

 

「デントさん。オレンの実!」

 

「分かってる。少し待ってほしい」

 

 デントはオレンの実を包丁で微塵切りにし、磨り潰して食べやすくする。

 

「はい、チルタリス。ゆっくりと食べてくれ」

 

「……」

 

 デント達はサトシといる。つまり、敵のはず。なのに施しをする彼等にチルタリスは戸惑い、中々食べない。

 

「とにかく食べて、チルタリス!」

 

「チ、チル」

 

 そんなチルタリスに、皿やスプーンをデントから取ったベルが急かす。ちょっとした迫力もあり、チルタリスは少しずつ食べていった。

 

「――チル」

 

「どう? 楽になった?」

 

「……チル」

 

「良かった~!」

 

 食べ終え、体力もある程度回復したチルタリスは、ベルの笑顔や台詞にやはり戸惑う。この少女は、どうして自分にここまでしてくれるのだろうか。

 いや、サトシ達もだ。敵である自分に手当をし、施しまでした。それがチルタリスには分からない。

 

「まだゆっくりしててね、チルタリス」

 

「……チルル」

 

 完全に回復した訳でもないので、チルタリスは素直に従った。頷いたチルタリスにベルは満足そうだ。

 

「さてと、これからチルタリスをどうする?」

 

「このまま放って置くのは――まぁ、一番ダメよね」

 

「うん。保護を兼ねた捕獲をするべきだ」

 

 一方、サトシ達はチルタリスをどうするかを話し合っていた。このまま新たな騒動やロケット団に戻るのを避けるためにも、やはり再ゲットするのが一番だろう。

 

「ベルー」

 

「なに~? ちょっと待ってて、チルタリス。あっ、勝手にどこかに行ったらダメだからね」

 

「……チル」

 

 念押しし、ベルはサトシ達に近付くとチルタリスの今後を説明された。

 

「え~と……ホウエンだったよね? そこに返す訳には……」

 

「それは最善だ。だけど、チルタリスがその後にロケット団の元に戻ろうとしない保証はない。……保護じゃないと行けないだろうね」

 

「うぅ……」

 

 ベルとしては、野生に返されるのが一番だと思っている。アイリスもだ。しかし、様々な状態を考えるとやはり保護しかない。

 

「あの、チルタリス……。聞いてくれる?」

 

「……チルル」

 

 ベルから、自分の扱いについて話される。チルタリスは落ち着きを取り戻したこともあり、妥当だろうと受け入れていた。

 ロケット団に戻ることに関しては、チルタリス本人はそこまで固執していない、現状に繋がる事態から迷いもある、彼等がみすみすそれを許すとは思えない、それらの点からほとんど考えていない。

 

「だから、大人しく保護されてほしいんだけど……ダメ?」

 

「……チル」

 

 ご自由にと、チルタリスは一切抵抗しない。サトシが空のモンスターボールを取り出し、保護をしようとしたその時。

 

「――コアーーーッ!」

 

「――スワ!」

 

 無数の声に反応し、サトシ達が見上げると、コアルヒー達とボスと思われるスワンナが迫っていた。

 

「コアルヒーとスワンナ!?」

 

「どうしてここに……!?」

 

「まさか、彼等も――」

 

 チルタリスを含めた、ロケット団のポケモン達に住処や縄張りを荒らされた野生のポケモン達なのでは。デントのその推理は見事に当たってしまう。

 

「コアアーーーッ!」

 

「スワー……ナーーーッ!」

 

「あわとバブルこうせん!」

 

 チルタリスとサトシ達目掛け、スワンナとコアルヒー達は無数の泡を発射。攻撃はサトシ達に直撃はしないが、余波を受けていた。

 

「待ってくれ、コアルヒー、スワンナ! 俺達はお前達と戦う気は――」

 

「スワーーーッ!」

 

「コアアーーーッ!」

 

「くそっ! ピカチュウ、10まんボルト!」

 

「ピーカ……チューーーッ!」

 

 また来る泡に電撃をぶつけるも、数が多すぎて相殺仕切れない。しかし、激突の際の爆発で起動が外れ、直撃は回避出来た。

 

「ダメだ! スワンナ達は僕達を完全にチルタリスの仲間だと、自分達の敵だと思ってる! このままじゃ、説得は困難だ!」

 

 チルタリスと一緒にいるこの光景を見れば、サトシ達が仲間だと考えても不自然ではない。

 

「だったら、昨日と同じ様に動きを止める! 先ずはツタージャ!」

 

「タージャ」

 

「ツタージャ、たつまき!」

 

「ター……ジャ!」

 

「スワ!」

 

「コアア!」

 

 たつまきで身動きを足止めし、そこからハトーボーとクルミルの糸で身動きを封じようとするも、スワンナの指示で放ったコアルヒー達からのかぜおこしに掻き消されてしまう。

 

「相殺された!」

 

「だったら、これ! チラーミィ!」

 

「チラ!」

 

「メロメロ!」

 

「チー……ラッ」

 

「ならツタージャ、お前もメロメロだ!」

 

「ター……ジャ」

 

 チラーミィとツタージャ。♂と♀の二匹による同時のメロメロで、コアルヒー達とスワンナの動きを封じようとする。

 

「スワワ!」

 

「コアーーーッ!」

 

「スワーーーッ!」

 

 しかし、メロメロもスワンナとコアルヒー達の泡で壊されてしまう。

 

「数が多すぎる! これではどんな策も対応されてしまう!」

 

 スワンナは怒りこそしているが、事態を冷静に把握している。このままではどんな策を練ろうが無理だ。

 

「それに、見渡しの良いここだと狙い打ちになる!」

 

「で、でも、周りの森に逃げても他の怒っている野生のポケモン達に会うかもしれないわよ!?」

 

「このままだと、騒ぎを聞き付けて他のポケモン達が来る可能性がある!。だったら、隠れれる場所のある森の方がまだ安全だ!」

 

 更に苦境に立たされるより、安全がある方に逃げるべき。デントの案にサトシ達が納得する。

 

「皆、森の中に逃げるぞ!」

 

「う、うん! チルタリス、こっちに!」

 

「チ、チル……」

 

 チルタリスを担ぎつつ、サトシ達は森の中へと逃げる。

 

「……スワ!」

 

「コア!」

 

「スワワ……!」

 

 スワンナはコアルヒー達に指示を出し、森の中に逃げたサトシ達への追跡させる。

 自分達の生活を脅かしたポケモン達をこのまま逃がすなど、更々ない。徹底的に叩くつもりだ。

 

「はぁ、はぁ……! 一旦休もう……」

 

「そうだね、それが良い……」

 

 しばらく森の中を走ったサトシ達は、小さな場所で一旦休憩を取る。

 

「あぁもう、なんでこんなことになるのよ~」

 

「元を辿ると……エモンガ?」

 

「……だな」

 

 エモンガが騒ぎを起こさなければ、こうはならなかっただろう。あぅとアイリスは小さくなる。

 

「だけど、その場合はチルタリスがどうなってたか分からない。最悪、命を落としていた事もあり得るよ」

 

「だよね」

 

「……」

 

 チルタリスを見るサトシ達。遭遇してなければ、チルタリスは怪我を負った状態のまま、命を落としていた可能性も充分あっただろう。なので、仕方ないと言える。

 

「これからどうするの?」

 

「この森をどう抜けるかを考えるべきだね」

 

 それも、野生のポケモン達を刺激しないようにだ。

 

「チルタリスをモンスターボールに入れよう。彼等が最優先で探してるのはチルタリスや他のロケット団のポケモン。僕達じゃない」

 

 チルタリスやロケット団のポケモンの姿が見えなければ、刺激しない限りは野生のポケモン達との戦いは回避出来る。それが最も安全だ。

 

「チルタリス、モンスターボールの中に――」

 

「コア!」

 

 今度こそチルタリスをモンスターボールに入れようとしたサトシだが、コアルヒーの声がした。サトシ達が振り向くと、一匹のコアルヒーがいた。

 

「コアアッ!」

 

「不味い! 仲間を呼んでる! 急いで離れるんだ!」

 

 がさがさと森から音が響く。コアルヒーの声に仲間が集まって来たのだ。サトシ達は仲間が集まる前に急いで逃げ出す。

 また森の中を走るサトシ達だが、周りからの音がどんどん大きくなって行く。コアルヒー達が集まっているのだ。

 

「くそっ、どんどん集まって来てる!」

 

「ここはコアルヒー達やスワンナの住処がある森だ! 地理は向こうの方が詳しい!」

 

 こちらは適当に逃げるしかないが、コアルヒー達は効率的に自分達を追い込める。有利なのは向こうだ。

 

「じゃあ、どうするのよ~!?」

 

「とにかく逃げるしかない!」

 

 下手に戦っても、そのせいで他のポケモン達を呼び寄せてしまう恐れがある。そうなったら泥沼だ。サトシ達には逃げるしか選択肢は無かった。

 

 

 

 

 

 再度逃げるサトシ達だが、気付けばバラバラになっていた。サトシとピカチュウが周りを見渡すも、誰もいない。

 

「くそっ、皆とはぐれたか……!」

 

「ピカピ……。――ピカ!」

 

 ピカチュウの声に、サトシとピカチュウは茂みに隠れる。直後に二匹のコアルヒーが通り過ぎた。気付かれなかったようだ。

 

「皆、無事かな……?」

 

「ピカ……」

 

 無事を祈るサトシとピカチュウだが、そうしても皆が無事になるわけでもない。自分達で発見し、合流しなければ。

 

「空から捜しに……はダメか」

 

 ハトーボーを出し、空から探そうとしたサトシだが、コアルヒー達やスワンナと接触する恐れがあった。

 

「となると……こいつらが良いか。ツタージャ、クルミル」

 

「タージャ」

 

「クルル」

 

「森に身を隠しながら、皆を探してくれ。あっ、逆にはぐれたりするなよ」

 

 分かってると、ツタージャとクルミルはコクンと頷く。この二匹は体色から草木に同化しやすく、見付かりにくい。

 

「俺達も俺達で捜そう」

 

「ピカピ」

 

 サトシ達は茂みや木に身を隠しながら、皆との合流を目指す。

 

「あ~、もう。みんなはどこに行ったのかしら……?」

 

「キバキ……」

 

 木の上で隠れつつ、葉っぱの隙間から外を確かめるアイリス。しかし、サトシ達の姿は見えない。次の場所に移ろうとしたその時、茂みの一ヶ所が揺れた。

 アイリスとキバゴがコアルヒーかと身構えると、イシズマイが出てくる。

 

「イシズマイ?」

 

「イママイ?」

 

 自分を呼ぶ声に、イシズマイがキョロキョロする。アイリスがこっちこっちと呼ぶと気付いた様だ。

 

「イママイ、イマイマ」

 

 アイリスを確認したイシズマイは、後ろに呼び掛ける。茂みからデントがゆっくりと出てきた。

 

「デント! 無事だった?」

 

「何とかね。それより、ここにいるのは君だけ?」

 

「うん。ここにはあたしだけ」

 

「サトシとベル、チルタリスははぐれたか……。この状態で孤立するのはリスクが高い。直ぐに合流しよう」

 

「だったら、あたしに任せて。気配を感じるのは得意だから」

 

「野性的な君ならではの方法だね。とにかく行こう」

 

 アイリスとデントは安全を確かめつつ、サトシとベル、チルタリスを捜す。

 

「う~、疲れた~」

 

 昨日よりも走り、疲れたベルは木に凭れて身体を休める。

 

「……」

 

 その近くには、チルタリスもいた。偶々一緒にいることになったのだ。

 

「チルタリス、大丈夫? 怪我はない?」

 

「……チル」

 

 問題ないと首を縦に振ったチルタリスに、ベルは安心する。

 

「はぁ~、皆無事かな~。早く合流出来ると良いな~」

 

 自分と傷付いたチルタリスだけでスワンナとコアルヒー達に対応するのは難しい。一刻も早くサトシ達と合流したいが、迂闊に動くのは危険だ。どうしようかと悩むベル。

 

「……チル。チルル?」

 

 そんな彼女に、チルタリスが話しかける。どうして自分を助けたのかを。

 

「お腹でも空いたの?」

 

 しかし、ベルから出たのは全く検討外れの言葉。チルタリスは冷や汗を流して軽くずっこけ、違う違うと雲のような翼の片方を左右振る。

 

「違うの? じゃあなに?」

 

「……チルル」

 

 包帯や絆創膏を指し、自分を助けた件について聞きたいとしっかりジェスチャーする。

 

「もしかして、どうして助けたかを聞きたいの?」

 

「……チル」

 

 それも、率先して。自分と彼女は初対面。おまけに自分は犯罪組織にいたポケモン。助ける理由は一切ないはずだ。

 

「う~ん、まっ良っか」

 

 ちょっと考えると、ベルは語り出す。チルタリスを助けた理由であり、同時に今の自分となった原点の思い出、自分とチェレンの出会いを。

 

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