ポケットモンスター アナザーベストウイッシュ   作:ぐーたら提督

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 二週間振りですみません。ただ、時間が掛かってにしては微妙かもしれません……。


ドラゴンマスターへの道

「良い朝だ」

 

「ゾロロ、ゾロー」

 

「カブカブブー」

 

「ブ~ブブ~」

 

「……」

 

 朝、洞穴からNの三匹と一匹のポケモンが出てきた。昨日森で出会い、それから一夜共にしたポケモンだ。

 

「気分はどうだい?」

 

「……」

 

 悪くはないとそのポケモンは頷く。昨日、Nとお互いに色々話し合っていた。

 Nは三匹とどう出会い、どの様に一緒に過ごしてきたのかを。そのポケモンはロケット団でどんな日々を送っていたのかを。

 その時間はそのポケモンにとって、暖かさに満ちていた。自分だけではない、隣に誰かがいる、それがこんなにも嬉しくて、安心出来るのだと気付いた。

 それを、敵であるNが教えてくれた。その事にそのポケモンは苦笑いしつつ、彼を意識する結果にもなっていた。

 ロケット団としては、Nから情報を得れなかったが、残念だとも思えなかったのも暖かさ故だろう。

 

「さて、今日はどうしようか?」

 

「……」

 

 どうしようかと、そのポケモンは悩む。思えば、ロケット団に所属してから訓練ばかりで時々任務。その二つの繰り返しの日々だった。それ以外はしたことがない。

 

「うーん、もっと広い場所なら遊べるんだけどね」

 

 見たところ、この洞穴はそんなに広くない。無理をすると、崩れてしまう恐れがあった。

 

「……」

 

「『モンスターボールに入れて、自分達の場所に行けば良い』、か。一つの手では有るけど……まだ止めて置きたいね」

 

「……?」

 

「何故かって? 簡単だよ。ボクがいる組織は昨日言ったように色々とあるんだ。今連れていくと、不味い事が起きる可能性がある」

 

「……」

 

「そう、色々あるんだ。だから、キミを連れていくのなら、キミがボクの仲間にしてからが一番良いんだ。……済まないね、身勝手で」

 

 Nは頭を下げ、謝る。それが全て本心で真実で、彼が正面から語るからこそ、そのポケモンは不快に思うことは無かった。寧ろ、惹かれていく一方だ。

 

「まだ決めなくても良いんだよ?」

 

「……!」

 

 自分の心を、Nは的確に見透かしていた。そう、そのポケモンは今道を選ぼうとしていたのだ。

 今の自分に示された道は、Nと共に行く。彼の組織に保護される。彼を倒してロケット団に戻る。この地で生きていく。この四つだ。

 しかし、四つ目はそもそも厳しいので論外。三つ目は今はもう、ほとんど選択肢に入ってなかった。

 ロケット団の正義を果たす中の矛盾の過程を認識する中で、忠誠心はほぼ消えていたからだ。また、Nと戦うことが嫌なのもある。

 となると、残るは一つ目と二つ目。しかし、自分が惹かれたのはNであって、彼がいる組織ではない。

 ならば、残った道はただ一つ。Nの仲間になる。これだけだった。限られた選択の中だが、そのポケモンはこの答えを自分で決めようとしたが、それをNに止められたのだ。

 

「もっと考えてからでも、良いんじゃないかな? 正直――キミが他の選択肢を選びたいのなら、ボクは出来る限り協力したいと思ってる。例え、それがロケット団に戻りたい、でもね」

 

「……」

 

 そのポケモンはポカンと口を開き、それは良いのかと尋ねる。

 

「ボクはキミ達が全てを受け入れ、キチンと理解した上でその道を行きたいのなら、その意志を尊重したいんだ。まぁ、キミがもうロケット団に戻りたいとはボクは思ってないけどね」

 

「……?」

 

「何故かって? だって、そう言われてもキミは戸惑うだけだからさ」

 

 仮に戻りたいと思うのなら、自分を利用するための企みの気配が少しでも目に宿るはず。

 しかし、こう言われてもそのポケモンの目には何一つその気配が今も無い。あるのは困惑の色だけだ。

 この事から、戻るつもりがないのが分かる。なので、Nはちょっと安心していたりする。

 

「話は戻して――キミには選択肢がある。それはしっかりと考えて選ぶべきだ」

 

 自分にとって最善なのは、このポケモンが自分と共に歩むこと。しかし、自分の最善がこのポケモンの最善とは限らない。だからこそ、Nはゆっくりと考えるようにと言ったのだ。

 

「……」

 

 そのポケモンは少し考える。Nの協力が有れば、四つ以外の選択も出てくる。例えば、元いた地で野生に帰る。彼以外のトレーナーと共に進むなど。

 しかし、その二つや他にもあるだろう選択肢をじっくりと考えた上で、そのポケモンは選ばなかった。

 野生に帰る。即ち、故郷に戻る選択肢に関しては、じっくりと考えた事で出てきた懐かしさから他の何の魅力も感じなかった選択肢と違って唯一想いがあった。

 しかし、それ以上に――この青年と歩んでみたい。彼が果たそうとする道筋、果たされた後の先を見てみたい。そんな気持ちに満たされていた。

 だからこそ、考え抜いた上でそのポケモンは選んだ。Nと歩み、彼の理想の障害の矛から守る盾となる選択肢を。そして、それを彼に確かな意志で伝えた。

 

「本当に良いのかい?」

 

「……」

 

 しっかりと頷く。その瞳には、己で決めた強い意志の光以外、不純物は欠片も無かった。

 

「――分かった。よろしくね」

 

 Nは手を差し出し、そのポケモンは手を掴む。こうして、Nはロケット団のそのポケモンを四体目の仲間にしたのだ。

 新たな仲間に、Nはまた一つ自分の理想への道を歩めた様に感じていた。

 

「ゾロゾロ、ゾロロ」

 

「カブカブ、カーブブ」

 

「ブブイ、ブ~イ」

 

 ゾロア、ポカブ、イーブイもまた、新しく仲間になった彼に喜んでいた。

 

「そうそう。離れたかったら何時でもそうしてくれ。それも君の自由だからね」

 

 共にいる中で、衝突も有るだろう。その中で彼が自分と離れる選択肢を選んでも、Nは受け入れるつもりだ。

 

「……」

 

 大きいなと、そのポケモンは微笑む。全てを受け入れるかのような器と、その中でも己を貫く意志。言い過ぎかもしれないが、まるで英雄の様だ。

 

「……」

 

 だから、最初にそのポケモンはNにあることを頼む。自分以外のロケット団のポケモンの保護だ。

 一部は望んで来たかもしれないが、大半は無理矢理だろう。それらのポケモン達を助けて欲しかった。

 

「勿論。多くのポケモン達の為。それがボクの理想だからね」

 

 だから、仲間になってくれた彼の頼みは喜んで聞くつもりだ。

 

「さて、後は……」

 

「……?」

 

 これで自分は彼の仲間になった。なのに、まだ何か問題があるのだろうか。

 

「うん。キミを連れて行くに当たって、一つだけ問題があるんだ。キミはこの地方の野生のポケモンと衝突してないかい?」

 

「……」

 

 確かにとそのポケモンは頷く。仲間を守り、食料を得るために何度も野生のポケモンと戦っていた。

 

「だから、キミを出したままだと野生のポケモン達とぶつかってしまう可能性が高いんだ」

 

「……」

 

 そのポケモンはなるほどと納得したが、同時に疑問も抱く。自分が出ていると不味いのなら、モンスターボールから出さなければ良いだけのはず。それを聞くと。

 

「ボクは基本モンスターボールを使わないんだ。対等な関係でいたいからね」

 

「……」

 

 理由を聞き、そのポケモンは悩む。だとすれば、自分を出さないのはNにとって嫌だろう。

 

「――イヤ、これもまたボクに課せられた試練の一つか」

 

 ならば、乗り越えなければならない。英雄になるためにも。

 

「さぁ、行こう」

 

 大丈夫なのか、とポケモンは言わなかった。いや、その必要性を感じなかったのだ。

 それに何かあろうとも、自分が盾として全力で彼や仲間達を守る。そう決意したのだ。

 

「……」

 

 そのポケモンはコクンと頷く。ロケット団に所属していた彼は、真実と向き合う事で新たな仲間と共に新しい道を歩み出した。

 

 

 

 

 

「キバゴ、ひっかく攻撃!」

 

「ズルッグ、かわせ!」

 

「キバキバキバーーーッ!」

 

「ルッグルッグルッグ!」

 

 キバゴが爪の連撃を放つも、ズルッグは一つ一つ確実にかわしていく。

 

「にらみつける!」

 

「――ルッグ!」

 

「キバッ!」

 

 そして、サトシが見計らったタイミングに合わせて強く睨む。

 

「ずつき!」

 

「ルグ!」

 

「キバッ!」

 

 そこから更にずつき。防御が下がった状態で食らい、キバゴはそれなりのダメージを受ける。

 

「う~、相変わらず押されるわね~。だったら……りゅうのいかり!」

 

「なら、こっちはきあいだまだ!」

 

「キーバー……!」

 

「ズールー……!」

 

 キバゴは竜の力を腹に、ズルッグは闘気を両手の間に溜めていく。

 

「今よ、発射!」

 

「ゴーーーッ!」

 

「ズルッグ、きあいだまをりゅうのいかりの上から叩き付けろ!」

 

「ルッグ!」

 

 放れた竜の力に、ズルッグはまだ顔より一回り小さいサイズの闘気の球を、ありったけの力を込めて降り下ろしてぶつける。

 攻撃の軌道を変えようとしたサトシだが、まだきあいだまの威力が低いため、完成が近いりゅうのいかりには勝てなかった。

 結果、きあいだまは爆発し、ズルッグは激突で威力が低下したりゅうのいかりを食らって軽く吹き飛ぶ。

 

「大丈夫か、ズルッグ?」

 

「――ルッグ!」

 

 体勢を立て直し、サトシに問題ないとズルッグは向く。

 

「よし。さて、やっぱりきあいだまはまだ無理があるか……」

 

 格闘タイプの技の中でも、かなりの威力の技だ。生まれてからそんなに経っていないズルッグではまだ難しいだろう。

 

「なら、もう一度ずつき!」

 

「キバゴ、しっかりかわすのよ!」

 

「ルグ、ルッグ!」

 

「キバ! キバ!」

 

 再びのずつき。それをキバゴは先程のズルッグみたいに、とまでは行かないが、何とかかわしていく。

 

「――にらみつける!」

 

「ルッグゥ!」

 

「キババ!?」

 

「ずつき!」

 

「ルッグーーーッ!」

 

「キバーーーッ!」

 

「あぁ、キバゴ!」

 

 ずつきの合間ににらみつけるを組み込み、また防御を下げつつ動きを鈍らせ、そこでずつきを命中させた。

 

「うん、中々良い技のマリアージュだね。さて、アイリスはどうするかな?」

 

「キバゴ、立てる?」

 

「キバ!」

 

「よし! キバゴ偉い!」

 

 ダメージはかなりあるが、それでもキバゴは頑張って立つ。そんなキバゴを褒めるアイリスだが、心の中ではどう攻めれば良いか悩んでいた。

 

(げきりんはダメだし……)

 

 今使える技の中では最強の技だが、完全に習得した訳でもない上に混乱になる反動もある。とてもだが使えない。

 

「――グリム……!」

 

「なんだ?」

 

 アイリスがどう攻めるかを悩んでいると、呻き声と共に茂みが揺れた。次の瞬間、その茂みから炎が発射される。

 サトシ達が咄嗟にかわすと、茂みからあるポケモンが出てきた。赤く硬そうな頭、青い身体や翼、黄土色の腹、顔と同じ色の突起が幾つもあるポケモンだ。

 

「クリムガンだ~!」

 

「クリムガン……」

 

『クリムガン、洞穴ポケモン。日光を翼で受けて身体を温める。顔の皮膚は岩より硬い』

 

「タイプはドラゴン! 力強くてカッコよくて最高なのよね~!」

 

 ドラゴンタイプが好きなアイリスは、クリムガンを見れて嬉しそうだ。

 

「クリムーーーッ!」

 

「なんか、やけに興奮してないか?」

 

「あぁ、好戦的なのか、別の理由で気が荒くなっているのか……」

 

「ちょっと待って、って事は……」

 

 ロケット団のポケモンが関係しているのでは。サトシ達は真っ先にそう考えた。

 

「クリー……!」

 

「あれはきあいだま!」

 

「ルッグ!?」

 

 ズルッグと同じ、闘気を球にして発射する技を使うクリムガン。しかも、ズルッグよりも早く技を発動していた。完成版であるのが分かる。

 

「ピカチュウ、アイアンテールで弾け!」

 

「――リガ!」

 

「ピカ!」

 

 尾を鋼化させ、きあいだまを横から叩く。闘気の球は軌道をずらされ、地面に落下した。

 

「どうする?」

 

「とにかく、何とかして落ち着かせて――」

 

「クリムガン!」

 

 クリムガンを止めようとしたサトシ達だが、その前に茶色のショートの女性が出てきた。

 

「ここにいたのね。探してたのよ」

 

「クリ……リガ!」

 

「クリムガン!?」

 

 どうやら、女性はトレーナーのようだが、クリムガンは表情を歪めると何かに耐えかねないように走り出した。

 

「あれは……?」

 

 その際、クリムガンの左足に硬質の糸が巻き付いているのをアイリスは見た。

 

「クリムガン、どこに行くの!?」

 

「行きましょ!」

 

「あぁ!」

 

 女性がクリムガンを追い掛け、アイリス達も続く。しばらく走ると、最初にアイリス沢山の洞穴がある場所に到着。その一つに注目する。

 

「アイリス!」

 

「ピカピカ!」

 

「わたしのクリムガンはどこに!?」

 

「し~」

 

 女性を含めたサトシ達が到着するも、アイリスは大声を出さないようにし~と伝える。

 

「キバゴ、あそこ。呼んできて」

 

「キバ。キバキバ」

 

 キバゴは頷き、一番上にある洞穴に入り込む。

 

「キババ!」

 

「リガーーーッ!」

 

 キバゴが入った数秒後、先ずはキバゴ。その次にクリムガンが洞穴から大声で叫びながら出てきた。

 

「キバババ!」

 

「――リガ!」

 

 キバゴがアイリスの髪の中に入ると、洞穴から出てきたクリムガンが飛んでサトシ達の前に着地する。

 

「ガーーーッ!」

 

「クリムガン」

 

「アイリス、迂闊に前に出るのは危ない!」

 

「あたしに任せて。クリムガン――」

 

「リガーーーッ!」

 

 アイリスが話し掛けるも、クリムガンは大声でまた叫ぶ。

 

「アイリス――」

 

「大丈夫だってば。今楽にしてあげるね」

 

 アイリスは屈むと、クリムガンの左足に巻き付いている鉄線の縄を外す。

 

「先ずはこれを外して……。デント、きずぐすりくれる?」

 

「分かった」

 

 縄を外してもらい、次に巻き付いていた左足にきずぐすりを吹き掛けると、クリムガンは表情を緩めていく。

 

「クリムガンがあぁなった原因はこれみたい」

 

「ワイヤー? どうしてこんな物が……? それにいつ巻き付いたのかしら? この子が大好物のベリブを採りにいった時……? それか誰かが何らかの目的のために――あっ」

 

 蔓とかなら未しも、これは人工の物。落ちていたのが偶々巻き付いたのか、或いは人為的なのかと女性もアイリス達も考えるも、女性がアイリス達を見てハッと気付く。まだ自分は彼等に自己紹介も挨拶もしてないと。

 

「どうもありがとう。わたし、エミーって言います」

 

「どういたしまして! あたし、アイリス。こっちはキバゴ。よろしくね」

 

「キバキバ!」

 

「俺はサトシ。こっちは相棒のピカチュウ」

 

「ピカピカ」

 

「僕はデント。ポケモンソムリエです」

 

 女性、エミーから自己紹介され、アイリス達も自己紹介を済ませる。

 

「アイリスちゃんとサトシくんにデントくんね。……あれ?」

 

 その内の名前の一つに、エミーは反応する。

 

「サトシ……それにピカチュウ……。もしかして、ヒウンシティでゼクロムと共に活躍した理想の英雄!?」

 

「え、いや……」

 

 理想の英雄。ヒウンシティでそう呼ばれ、今ここでもエミーに呼ばれてサトシは何とも言えない様子になる。

 

「違うんですか?」

 

「その、違うと言われたらそうじゃないけど……」

 

「やっぱり本物! こんな所で会えるなんて! あの、わたしまだトレーナーになったばかりで出来ればコツを――」

 

「あ、あの!」

 

「は、はい?」

 

 新人のため、教えを請おうとしたエミーだが、サトシに強く話し掛けられて一旦止まる。

 

「そう言われたりはしましたけど、俺はあくまで、一人のトレーナーなんだ。だから、そう接してほしいんだ」

 

「サトシはあまり、そう言われるのが好きじゃなくてね。出来れば、彼の言う通りにしてほしい」

 

「お願いします」

 

「あっ、わかりました。いえ、わかったわ」

 

 三人にそう言われ、エミーは敬語や敬う態度を止める。

 

「それにしても、アイリスちゃんはよくクリムガンの居場所が分かったわね」

 

「クリムガンは太陽の光がないと身体が冷えて動けなくなるの。あの洞窟、太陽の光が射し込んでるから、隠れるならあそこと思ってたの」

 

 動けなくなるのを回避しつつ、身を隠すにはあそこしかないとアイリスは居場所が分かったのだ。

 

「よく知ってるなー」

 

 それに、クリムガンの名前を図鑑で出す前から言っていた。つまり、アイリスは事前に知っていた事になる。

 

「当然よ~。あたしは竜の里で育ったんだもん」

 

「それって、アイリスが前に言ってた場所だよな?」

 

「そう、あたしの古里」

 

 そう話し合う彼女達を、見下ろす影があった。

 

「特製のワイヤーが千切られたな。あれ貴重だったのに……」

 

 それはロケット団の三人組。ワイヤーは彼等の仕業だった。新しい拠点に移動する最中にクリムガンを見付け、捕らえようと仕掛けたのだ。結果は失敗だが。

 ちなみに、安定した資金がないのでコジロウは特製ワイヤーの破損に渋い顔だ。

 

「それだけのパワーの持ち主って事よ。尚更ゲットする価値が出てきたわー。サカキ様も喜ばれるわよ」

 

「そこにジャリボーイのピカチュウもゲットすれば……」

 

「良い感じー」

 

「ソーーナン、ス……!」

 

「アンタは目立つから出てくるんじゃないわよ」

 

 気分を上げる三人組だが、その際に出てきたソーナンスを押し込めた。

 

「にしてもさ、さっきジャリボーイ、理想の英雄とか言われてなかったか?」

 

「英雄ねー。まぁ、ちょっと似合わないわねー」

 

「確かににゃー」

 

 今までサトシを見てきたロケット団としては、理想の英雄と言われることに違和感を感じた様だ。

 これは実績からではなく、個人を見てである。三人組からすると、サトシはあくまでポケモン好きのトレーナーで自分達の宿敵。それ以上の認識を抱けないのだ。

 

「まっ、とにかくピカチュウやクリムガンゲットに向けて頑張るわよー」

 

「おー!」

 

「ソー……ナン、ス……」

 

「だから、黙ってなさい」

 

 意気込むロケット団だが、またソーナンスが出てきそうになったので押し込んだ。

 

 

 

 

 

「確か、竜の里ってドラゴンタイプが沢山いるのんびりした場所だったよな?」

 

 一方のサトシ達は、近くの場所で竜の里について話していた。

 

「うん。皆、ポケモンと仲が良くって……中でもスゴいのがドラゴンマスターなんだ~!」

 

「ドラゴンマスター?」

 

「確か、ドラゴンタイプと心を通わせ、その力を最大限に活かすトレーナーの事だよね?」

 

 ある程度は予想出来るが、やはりそう言う称号の様だ。

 

「へー、じゃあ、ワタルさんやイブキさん、ゲンジさんはドラゴンマスターなのかな?」

 

 ふとサトシは思った。三人はドラゴンタイプの専門家だ。全員、その称号を持っていてもおかしくなさそうだが。

 

「……なんか、今スゴい人の名前ばかり出てきた気がするんだけど。その三人って……」

 

「ワタルさんはカントーのチャンピオン。イブキさんはジョウトのジムリーダー。ゲンジさんはホウエンの四天王」

 

「……サトシ、その三人に会ったことがあるのかい?」

 

「あぁ」

 

 チャンピオン、ジムリーダー、四天王。何れも大物だ。しかもそれぞれ異なる地方なのだから、相当な旅をしてきたのがよく分かる。

 

「まぁ、戦った事があるのはイブキさんとゲンジさんで、勝ったのはイブキさんの方だけ。ゲンジさんには負けたけどな」

 

 ただ、イブキとのバトルもかなり苦戦した上での勝利だが。

 

「ス、スゴいわね……。は、話は戻して、その三人みたいなスゴいドラゴン使い、ドラゴンマスターがあたしの夢――いや、目標なんだ~」

 

 まぁ、ドリュウズとはまだ仲直り出来てないから遠いけど。と微かに呟き、サトシとデントは苦笑い。ちなみにエミーには聞こえていない。

 

「それでドラゴンタイプに詳しいんだ。……ねぇ、もし良かったらクリムガンについてもっと教えてくれないかな? さっきも言ったけど、わたしはトレーナーデビューしたばかりで新人なの……」

 

「新人? じゃあ、そのクリムガンは……?」

 

「パパに交換してもらったの。初めてでそれもドラゴンタイプだから、もう少し馴染めたら旅に出ようと思ってるんだけど……中々決心が着かなくて」

 

「そうだったのか……」

 

「分かった! あたしに出来る事なら何でもするわ!」

 

「本当!? ありがとう!」

 

 エミーの事情を知り、アイリスは彼女に協力する事にした。

 

「クリムガンと馴染むなら……そうね、先ずはバトルするのが良いと思うわ」

 

「バトル?」

 

「そう。やったことは?」

 

「ううん、クリムガンとはまだ一度も……」

 

「なら、理解を深める良い機会になるんじゃないかな? 後は相手だけど……」

 

「俺としないか?」

 

「サ、サトシくんと?」

 

 サトシとバトルと言われ、エミーは戸惑う。何せ、相手はゼクロムに選ばれたトレーナー。新人の自分では、勝負にもならないのではと考えても仕方ない。

 

「だったら、どっちかが勝つまでじゃなくて、ある程度やったら終わりにしないか?」

 

「うん。それぐらいで良いかもね」

 

「エミー、その形式ならどう?」

 

「それなら……」

 

「じゃあ、決まり!」

 

 こうして、エミーの練習が始まることになった。

 

「じゃあ、行くぞ。ズルッグ、君に決めた!」

 

「――ルッグ!」

 

「ズルッグ? 他のポケモンだと思ったんだけど……」

 

 アイリスはサトシがズルッグを出したことに予想外だと感じた様だが、デントはその意図に気付いた。

 

「ルッグー……!」

 

「リ、リガ?」

 

「あ、あれ? 何か、すごく睨まれてるような……」

 

 出てきたズルッグは、クリムガンに対抗心剥き出しの眼差しを向けていた。

 

「あぁ、クリムガンが完成してるきあいだまを使ったから、それでだと思う。ズルッグ、まだ完成してないからさ」

 

「もしかして、クリムガンがきあいだまを使えるからズルッグを出したの?」

 

「そっ」

 

 それに、キバゴ以外の多くのポケモンとのバトルを経験させたい。その二つの理由から、サトシはズルッグにしたのだ。

 

「さぁ、始めようぜ。そっちからどうぞ」

 

「じゃあ。クリムガン、きあいだま!」

 

「クリー……ガッ!」

 

「ズルッグ、進みながらかわせ!」

 

「ルッグ! ――ルグ!」

 

 クリムガンが放つ闘気の球を、ズルッグは前進しつつ回避する。

 

「にらみつける! からのずつき!」

 

「ルグ! ルッグーーーッ!」

 

「リム!? ガーーーッ!」

 

 懐に入り込み、鋭い眼差しで睨み上げて防御を下げ、怯ませるとズルッグは頭突きを腹に叩き込む。

 無防備かつ、防御が低下した状態なので、少なからずのクリムガンはダメージを受けた。

 

 

「クリムガン!」

 

「落ち着いて! クリムガンは硬いから簡単には倒れないわ。こっちも攻撃よ!」

 

「えぇ、クリムガン、ドラゴンクロー!」

 

「リガッ!」

 

「ズルッグ、回避に専念!」

 

「ルッグ! ルググ!」

 

 反撃にクリムガンは接近し、竜の力を込めた爪を振り回す。ズルッグはその一撃一撃を集中して避けていく。

 

「もう一度にらみつける!」

 

「ルッグ!」

 

「リガ……!」

 

「ずつき!」

 

「ガーーーッ!」

 

 再度、にらみつけるからのずつきのコンボをクリムガンに叩き込むズルッグ。

 

「ガッ……!?」

 

 それを受け、クリムガンは動きが止まる。怯みの追加効果が出たのだ。

 

「ズルッグ、きあいだま! しっかりと貯めるんだ!」

 

「ルググー……!」

 

 ズルッグは少し前に出した両手の間に、闘気を球の形にしていく。その速さはクリムガンよりは遅いが、朝の時よりも速い。

 

「――よし、直接叩き込め!」

 

「ルッグーーーッ!」

 

 そろそろ怯みがなくなる頃と判断したサトシは、まだ未完成のきあいだまを放つのではなく、直接当てるように指示。

 

「リガガーーーッ!」

 

 ズルッグはその通りにきあいだまをクリムガンに命中させ、少なからずのダメージを与えた。

 

「ルッグ、ルッグ……!」

 

「少し疲れてるな……。まだ行けるか?」

 

 負けず嫌いの気迫の影響からきあいだまが早くなったが、その判明、体力を少し多めに消耗した様だ。ズルッグの息が荒い。

 

「うぅ、押されてる……」

 

「エミー、凹まないでバトルに集中!」

 

「あ、うん! クリムガン、かえんほうしゃ!」

 

「リー……ガーーーッ!」

 

「ズルッグ、かわせ!」

 

「ルッグ……!」

 

 迫る炎を、ズルッグは少し重くなった身体を動かしてしっかりかわす。

 

「もう一度、きあいだま!」

 

「こっちもきあいだま!」

 

「ズルー……!」

 

「クリーム……ガーーーッ!」

 

「グーーーッ!」

 

 きあいだまをズルッグ、クリムガンが順に発動。そして、先に貯め終わったクリムガンが放ち、次にチャージが完了したズルッグも発射。

 二つの球がズルッグの近くで衝突し、結果はクリムガンのきあいだまが打ち勝ったが、その瞬間にズルッグが尻餅を着き、当たらなかった。

 

「ル、ルッグ……! ルッグ……!」

 

「ここまでで良いか?」

 

「うん、これぐらいで良いと思う。エミーもそれで良いかい?」

 

「えぇ」

 

「じゃあ、終わり」

 

 ズルッグの疲れ具合から、試合はここまでと切り上げる。

 

「ズルッグ、ご苦労さま。キツかったけど、良い経験にはなったろ?」

 

「ルッグ……」

 

 コクンとズルッグは頷く。凄く疲れはしたし、クリムガンは倒せなかったが、キバゴ以外のバトル経験を体験し、命中精度は甘いが、きあいだまの完成度が高まったのを実感していた。

 

「ゆっくり休んでくれ」

 

「ルグ……」

 

 サトシは笑うズルッグを労い、モンスターボールに戻してゆっくりと休めた。

 

「どうだった?」

 

「まだまだって感じ。けど、良い経験になったわ」

 

 エミーは少しだけだが、クリムガンの事が分かった気がした。

 

「後はバトルをして経験を重ねてね。ドラゴンタイプと呼吸を合わせるのは大変だけど、辛抱強くしっかりと信頼関係を結めば大丈夫」

 

 仲直り出来ていない自分が言える台詞ではないが、その気持ちを抑えてアイリスは助言する。

 

「アドバイス、ありがとう」

 

「このクリムガン、さっきの試合では三つしか技を使ってなかったけど、それで全部かい?」

 

「ううん、今は三つだけ」

 

「今は三つだけ……。でも何か後一つ技を覚えれば――」

 

「バトルの幅も広がるぜ」

 

 使える手が多ければ、その分様々な戦法が行える。勿論、技の精度も大切だが、ある方が良い。

 

「後何か一つか……。頑張って覚えて見よっか、クリムガン」

 

「クリム」

 

 アイリスやサトシから言われ、もう一つ何らかの技を覚えて見ようとエミーとクリムガンは考えてみた。

 

「――ホイッとな」

 

「ん? なんだ――」

 

 突如、四角形の機械的な何かが自分達の近くに放り投げれた。

 サトシ達がそれを怪訝な表情で見下ろすと、次の瞬間何かからエネルギー状のリングが出現。ピカチュウ、キバゴ、クリムガン以外を纏めて縛ってしまう。

 

「更にホイッと」

 

「ピカ!?」

 

「キバ!?」

 

「リガ!?」

 

 続けて同じ四角だが、細部が違う別の何かがサトシ達に近寄る三匹の付近に転がされ、今度はエネルギーが網状に放出。ピカチュウ達を包み込んだ。

 

「な、なにこれ!?」

 

 アイリスの言葉を一度繰り返しつつ男女が台詞を足し、次に長々しい口上を出す。

 

「ロ、ロケット団? それって確か、指名手配されてる……」

 

「そうよ! いきなり出てきて、人のポケモンを奪う悪党よ!」

 

「いきなりじゃないさ。俺達は今朝から狙っていたんだよ」

 

「今朝……? まさか、クリムガンに絡まっていたワイヤーは!」

 

 今の話から、デントはクリムガンの足に絡み付いてワイヤーはロケット団のだと推理する。

 

「大正解。アタシ達がやったのよ。まぁ、あの時は引き千切られて逃げられちゃったけど」

 

「だから、今度はクリムガン以外にもピカチュウも頂くという訳にゃ!」

 

「そんな勝手な事を!」

 

「好きに言ってなさい。行くわよ」

 

「おう!」

 

 ロケット団が後ろに飛ぶと、彼等が乗ったニャースの顔の形の気球が飛び立つ。

 そして、下からワイヤーが発射されるとピカチュウ達を捕らえる装置と連結。巻き上げて引き寄せた。

 

「さらば!」

 

 三匹を引き寄せると、ロケット団は気球のブースターで去り出した。

 

「皆を助けないと!」

 

「けど、これのせいで動けない……!」

 

「――ミジュマル!」

 

「ミジュマ!」

 

 サトシが呼び掛けると、モンスターボールからミジュマルが出てきた。

 

「シェルブレードでこれを切ってくれ!」

 

「ミジュ! ミジュー……マーーーッ!」

 

 ミジュマルはシェルブレードでリングを切る。しかし、水の刃は弾かれてしまった。

 

「ミジュ!?」

 

「堅い!」

 

「拘束具だけあって、強度は高いか……! だったら、リングを出している装置を直接切断するんだ!」

 

「ミジュマル、装置の方を狙え!」

 

「ミジュマーーーッ!」

 

 装置に切りかかるミジュマル。本体にもそれなりの強度があったが、数回切り付けると耐久力が限界を迎え、装置は破損。リングは消えてサトシ達は自由を取り戻す。

 

「ハトーボー!」

 

「ハトー!」

 

「ロケット団を追ってくれ!」

 

「ハト!」

 

「よし、僕達も行こう!」

 

「えぇ!」

 

 ハトーボーに追跡を頼むと仲間を取り戻すべく、サトシ達は走り出す。

 また彼等同様、ある一匹のポケモンがロケット団に接近していた。複数のポケモンに追われながら。

 

 

 

 

 

 

「上手く行ったわねー」

 

「後は、一旦手頃な場所に着陸して、夜になってから行こうか」

 

「にゃー達、目立つからにゃー」

 

 元々指名手配され、警察から追われていたが、この前のヒウンシティの一件で更に追跡や監視は厳しくなっていた。

 昼間から気球を長時間使うのは、見付けてくれと言っている様な物だ。

 

「ピー……!」

 

「おっと、下手に電撃は使わない様にな」

 

「電気対策はしてるし、耐久力もある。何より、キバゴやクリムガンに当たるわよー?」

 

「感電しちゃうにゃ」

 

「カ……!」

 

 やはり、電気対策はされているようだ。ピカチュウは苦い表情になる。

 

「キバー……」

 

「リガ……」

 

 キバゴとクリムガンも足掻こうとはしたが、不安定な姿勢な事や、巻き添えも考えて出来なかった。

 

「さて、もう少し進んで――」

 

「――フォン!」

 

「ん? 声?」

 

 何かの鳴き声がし、ロケット団が振り向く。すると、一匹のポケモンがそこにいた。

 

「モルフォンだにゃ」

 

「フォン!」

 

 それは薄みがかった紫色の蛾毒蛾ポケモン、モルフォンだった。

 

「他の地方のポケモンって事は……」

 

「アンタ、ロケット団のポケモン?」

 

「フォフォン!」

 

 ムサシの問いかけに、モルフォンは頷く。

 

「にしても、よく見付けれたな」

 

「フォン、フォフォン」

 

「『気球にロケット団のマークがあったから直ぐに分かった』って言ってるにゃ」

 

「あぁ、なるほどね」

 

 確かに気球にはロケット団のRマークがある。ロケット団ならこれを見れば、直ぐに自分達が同じ組織の一員だと分かるだろう。

 

「じゃあ、モルフォン。アンタはこれから――」

 

「フォン、フォンフォン!」

 

「『それより、直ぐにここから移動した方が良い』。どういう事にゃ?」

 

 モルフォンに自分達と行動を共にするようにと言おうとしたが、その前にモルフォンがここから去るべきと話す。

 モルフォンがその事を速やかに話そうとしたが――直後、気球が揺れた。

 

「な、何、今の!?」

 

「誰かに攻撃された!?」

 

「フォン……!」

 

 もう来たのかとモルフォンが呟き、そちらを向く。ロケット団やピカチュウ達もそちらを見ると、野生のハーデリアとヨーテリーが険しい表情で見上げていた。

 

「な、なんでいきなり攻撃してきたのにゃ!?」

 

「わ、分かんないわよ!」

 

「とりあえず、何とか――」

 

「ハーーーッ!」

 

「テリーーーッ!」

 

 ハーデリアとヨーテリー達が、めざめるパワーを発射。ロケット団は急いで対応しようとしたが、その前に光球が気球に直撃。

 

「うっそっだーーーっ!」

 

「ソーーーナンスッ!」

 

 予想外の一撃により、ロケット団は何故か出てきたソーナンスと共に叫びながら吹っ飛んで行った。

 

「ピカッ!」

 

「キバッ!」

 

「リガッ!」

 

 そして、ピカチュウ達も落下。その際の衝突で装置が破損、網が消えて三匹も自由を取り戻す。

 

「キバキバ、キバキ?」

 

「ピカカ、ピカピカ」

 

「クリム、リガリガ」

 

 キバゴがこれからどうするのかを聞き、ピカチュウがサトシ達と合流を提案。クリムガンを頷く。

 

「フォ、ン……!」

 

「……ピカ?」

 

 三匹はサトシ達の元に戻ろうとするが、その時ピカチュウにその声が聞こえた。そちらに向かうと、そこにはモルフォンが倒れていた。

 

「ピカ……!?」

 

「フォン……!?」

 

 ピカチュウはモルフォンに驚き、モルフォンもまたピカチュウに驚いていた。

 

「ピカ、ピカピ?」

 

「……!」

 

 ロケット団のポケモンかと言われ、モルフォンは身構え、ピカチュウは今の態度で確信した。

 

「フォ、ン……! ――フォンッ!」

 

 逃げようとしたモルフォンだが、めざめるパワーや今までのダメージでまともには動けずにいた。

 

「ピッカ、ピピカ」

 

「……リガ」

 

「フォン……!?」

 

 ピカチュウの頼みを聞き入れ、クリムガンはモルフォンを背中に乗せる。

 

「ピカ」

 

「キバ」

 

「リガ」

 

「……」

 

 さぁ、向かおうとモルフォンを含めて三匹はサトシ達の所に行こうとする。

 

「――ハーーーッ!」

 

「――ヨーーーッ!」

 

「ピカ!?」

 

「キバ!?」

 

「リガ!?」

 

「フォン……!」

 

 そこに大量の光球がピカチュウ達の周りの炸裂し、土煙が巻き起こる。

 

「ハー……!」

 

「ヨー……!」

 

「ピカ……!」

 

 周りを囲む敵意に満ちたハーデリアとヨーテリー達に、ピカチュウとキバゴは直ぐに理解した。

 このポケモン達も、ロケット団のポケモン達に脅かされたのだと。そして、狙いはモルフォン。

 

「ハー、デリリア」

 

 ハーデリアはピカチュウ達にこう告げる。自分達の狙いはその背中にいるモルフォン。お前達ではない。だから、モルフォンを差し出せと。

 モルフォンを追う最中、三匹が網で捕らえられた様を見ていたので、彼等は敵でないと判断したのだ。

 

「……」

 

「……フォン」

 

 見渡しながら警戒する三匹に、モルフォンはここで下ろせと言う。仲間ならともかく、無関係な相手を巻き込むのはよしとしない。

 

「ピカピー!」

 

「キバ!」

 

「リガ!」

 

「……ハー!」

 

「ヨヨーーーッ!」

 

 しかし、ピカチュウ達はモルフォンを担いだまま走り出す。

 そんな彼等に、疑問を抱きながらもピカチュウ達を敵と判断したハーデリアとヨーテリーの追撃のめざめるパワーが放たれるも、それを技で相殺、或いは回避しつつ逃げ出した。

 

「フォン! フォフォン!」

 

「ピカピカ、ピッカー!」

 

 何をしてる、下ろせと再度言うモルフォン。しかし、ピカチュウは傷付いているやつを見逃せないと却下。キバゴやクリムガンも似た気持ちの様だ。

 三匹はモルフォンを加え、ハーデリアとヨーテリー達からの逃走しつつ、サトシ達への合流を目指す。

 

「痛た……! 何なのよ、もう……!」

 

 ピカチュウ達から少し離れた場所では、同じく墜落したロケット団がいきなり攻撃された事に戸惑いつつ、痛む頭や背、尻などを抑えていた。

 

「ピカチュウ達はどこだ?」

 

「近くにはいないみたいにゃ」

 

「探すわよ! ジャリボーイ達と合流する前に捕まえるのよ!」

 

「おう!」

 

 サトシ達と合流すれば、それだけで厄介になる。その前に捕らえるべきだと、ロケット団はピカチュウ達を探す。

 

 

 

 

 

「ロケット団、何処に行った……?」

 

 ロケット団の気球を探すサトシ達だが、ハーデリアやヨーテリー達に撃墜された事を知らないため、見失っていた。

 

「見失ったって関係ないわ。クリムガンはわたしの大切な友達! 必ず助けるわ!」

 

「俺もだ!」

 

「あたしもよ!」

 

 走りながら、アイリスはキバゴを預かり、竜の里を旅立つ時に言っていたおばばの言葉を思い出す。

 キバゴと共に数多くのトレーナー、ポケモンに出会いが自分達の成長の糧となる。

 楽しく、悲しく、嬉しく、辛い。そんな様々な出来事がこの先に待っているが、それらをキバゴや仲間と共に乗り越えた時こそ、初めてドラゴンマスターへの道が開かれると。

 

(乗り越えるんだ……! 皆と一緒に!)

 

 キバゴだけでなく、今はまだ仲直りしていないドリュウズ、ゲットされたばかりのエモンガ。皆と共に乗り越える。そんな意志と共に、少女は走る。

 

「ヨーーーッ!」

 

「ヨヨーーーッ!」

 

「ヨヨヨーーーッ!」

 

「ピーカ……チューーーッ!」

 

「キ~……バ~~~ッ!」

 

「クー……リガーーーッ!」

 

 大量の光球を、ピカチュウとキバゴ、クリムガンの電気と竜の力、炎が打ち消す。

 

「ヨーーーッ!」

 

「ヨヨーーーッ!」

 

「ピカ……!」

 

「キバッ!」

 

「リガ……ッ!」

 

「フォン……!」

 

 しかし、次の光球が発射される。直撃はしないが、余波でピカチュウ達は怯む。

 

「ピカピ……!」

 

 不利過ぎる。数は向こうの方が多い上、こちらはキバゴやモルフォンを庇いながら対応しなければならない。

 そのせいで何とかサトシ達と合流しようにも、先回りされて行こうとした進路を変更されてしまい、逆に離れる始末だ。

 

「……フォン」

 

 モルフォンが再度、ピカチュウ達に自分を降ろせと告げる。自分が彼等の敵ではないと言えば、ハーデリアやヨーテリーも追わないはずだ。

 

「ピカピ!」

 

 しかし、ピカチュウは断った。ここで見捨てれば、その後モルフォンがどうなるかは簡単に想像が付く。相手が敵であろうが、そんなことは望まない。

 

「ピカ!」

 

「キババ!」

 

「リガ!」

 

 ピカチュウの指示を聞き、一瞬の間にアイアンテールで土煙を巻き上げ、ヨーテリー達の目を眩ませる。その隙に、ピカチュウ達はまた走り出す。サトシ達の元に戻るために。

 

 

 

 

 

「ハトー」

 

「ハトーボー、どうだった?」

 

「ボー……」

 

「見付からなかったようだね……」

 

「あぁ……」

 

 気球は無い上、三匹はヨーテリーやハーデリアの追跡により、場所はロケット団が進んだ方角から大きく外れていた。そのせいで発見出来なかったのだ。

 

「何処に行ったんだ……?」

 

「気球も見当たらないし……」

 

「バラバラになって捜すのは?」

 

「――待って。あたしに任せて」

 

 どうするかかを悩むサトシ達に、アイリスが自分に任せてほしいと言うと、近くの木に登ってから目を閉じる。

 

「……」

 

「アイリス? 何を?」

 

「何かに集中してるみたいだけど……?」

 

 集中していると分かり、サトシ達はしばらく静かになる。

 

「……」

 

 一方、アイリスは強く集中。全神経を尖らせて、その気配を手繰っていく。

 

「……感じた! あっち!」

 

 気配を感じ取り、アイリスは指でその方向を指すと降りて走り出す。

 

「えっ、あっち? でも、ロケット団が向かった方角とは違うような……」

 

「多分、アイリスは感じたんだ。キバゴやクリムガンの気配を。行ってみよう。ハトーボー、もう一度頼む!」

 

「ハトー!」

 

 サトシはハトーボーに再度捜索に出し、アイリスを追う。

 

「ど、どうするの?」

 

「手がかりはない。ここはアイリスを信じてこっちを行こう」

 

「じゃ、じゃあ」

 

 アイリスの直感を信じ、デントやエミーもそちらの方向を進む。

 

「ヨーーーッ!」

 

「ピッカーーーッ!」

 

「リーガーーーッ!」

 

 もう幾度にもなるめざめるパワーを、また電気や炎で相殺。しかし、ピカチュウやクリムガンは荒い呼吸で肩を上下していた。逃走や迎撃で疲労が蓄積していたのだ。

 

「ハー……」

 

 多数の影がピカチュウ達の周りを包囲する。ボスのハーデリアが手下と共に来たのだ。

 

「ハーーーッ!」

 

「ヨーーーッ!」

 

「――フォン!」

 

 全方向から、めざめるパワー。かわしきれないとピカチュウ達が思ったその時、クリムガンの背にいるモルフォンが羽を振るう。

 銀色に輝く風が周囲に放たれ、めざめるパワーの軌道をずらし、余波は受けるが直撃は阻止した。

 

「ピカ……」

 

「……フォン」

 

 守られるばかりは性根に合わない。ある程度回復もしたため、自分の尻拭いは自分でやるとモルフォンがクリムガンの背から離れる。

 しかし、モルフォンが加わっても数はハーデリア達の方が上。やはり分が悪い。ピカチュウがどうするかと悩むと、風がハーデリア達を襲う。

 

「ハー……!?」

 

 何だとハーデリアが周りを見ると、ハトーボーがいた。

 

「ハト!」

 

「ピカ!」

 

「ハトーハトー!」

 

 ハトーボーは風でハーデリア達の注意を自分に向けさせると、高く飛んでぐるぐる回りながら叫ぶ。

 

「――キバゴ!」

 

「キバキ!」

 

 ハーデリア達がハトーボーに気を取られている間に、アイリスが真っ先に到着。その次にサトシ、デントやエミーも来た。

 

「ピカチュウ、大丈夫か!?」

 

「クリムガン、怪我はない!?」

 

「ピカ!」

 

「リガ!」

 

 再会し、サトシ達は喜び合う。

 

「サトシ、このポケモン……」

 

「モルフォンだ……」

 

 モルフォンを見て、サトシ達は一瞬でロケット団のポケモンだと分かる。そして、モルフォンはエミー以外のサトシ達を複雑な表情で見ていた。

 

「僕達を見てる……。もしかして、アイリスに向かおうとしてたモルフォン?」

 

「……」

 

 コクリとモルフォンは頷く。このモルフォンはあの時、オニドリル、ストライク、レアコイル、スピアー、スターミーと共に出てきたのと同個体だった。

 

「まさか、ここでまた会うなんて……」

 

「驚きのテイストだけど……今はそれに浸る余裕は無さそうだ」

 

「だな……」

 

 敵意剥き出しのハーデリア、ヨーテリー達。先ずはこれを対処しなければならない。

 サトシ達は何時でも対応出来るよう身構え、ハーデリア達は何時攻撃するかを見計らっていた。

 そんな均衡がしばらく続くと――また網がサトシ達と、今度はハーデリア達にも迫る。

 

「また網!?」

 

「避けろ!」

 

「ハー!?」

 

「ヨー!?」

 

 再度の為、サトシ達は素早く反応して避けれたが、完全に不意を突かれたハーデリア達は掛かってしまう。またその際、モルフォンがサトシ達から離れていた。

 

「ちっ、避けられたわ」

 

「捕まえれたのは、ハーデリアとヨーテリーか」

 

「だったら、ピカチュウ達は力強くでにゃ!」

 

「ロケット団!」

 

 網を掛けたのはやはり、ロケット団だ。

 

「行きなさい、ハブネーク、メガヤンマ、コロモリ!」

 

「お前達もだ、マネネ、マスキッパ、デスマス!」

 

「ハーーーブッ!」

 

「ヤヤン!」

 

「モモリ!」

 

「マ~ネネ!」

 

「キッパ!」

 

「デスマース!」

 

 敵であるサトシ達を倒すべく、ムサシとコジロウが手持ちを繰り出す。

 

「キッパーーーッ!」

 

「どわぁああぁ! マスキッパ、あっちだー!」

 

 が、コジロウはまた出したマスキッパに噛み付かれており、その様にサトシ達やムサシやニャースも何とも言えない様子だった。

 

「――よっと! マスキッパ、タネマシンガン! マネネ、サイケこうせん! デスマス、シャドーボール!」

 

「ハブネーク、ヘドロばくだん! メガヤンマ、げんしのちから! コロモリ、エアスラッシュ!」

 

「キパパパッ!」

 

「マネ~~~ッ!」

 

「デースマッ!」

 

「ハーーーッ!」

 

「ヤン……ヤン!」

 

「モリモリ!」

 

 コジロウがマスキッパを離したのを切欠に、一斉攻撃が放たれる。

 

「ピカチュウ、エレキボール! ハトーボー、かまいたち!」

 

「クリムガン、きあいだま!」

 

「ピーカ……チューーーッ!」

 

「ハトーーーーッ!」

 

「リー……ガーーーッ!」

 

 電気の球、風の刃、闘気の球が放たれるも、六匹分の攻撃は止めきれず、サトシ達はかなりの余波を受ける。

 

「ドリュウズ、行って!」

 

「マイヴィンテージ、ヤナップ!」

 

「……リュズ」

 

「ナップ!」

 

 攻防で出来た一瞬の間を狙い、アイリスとデントもまたポケモンを出す。

 

「どろかけ!」

 

「タネマシンガン!」

 

「リュ、ズッ!」

 

「ナププププッ!」

 

「かわせ!」

 

 ドリュウズは泥、ヤナップは種を放つも、ロケット団のポケモン達はそれをかわす。

 

「モルフォン、アンタも参加しなさい」

 

「……フォン」

 

 本格的なバトルになり、ムサシは参戦を呼び掛けるも、モルフォンは頭を左右に振る。つまり、戦わないという事だ。

 

「お、おい、なんでだよ?」

 

「フォン。フォフォン」

 

「『こいつらは守ってもらった借りがある。だから、援護は出来ない』って言ってるにゃ」

 

 ピカチュウ達に助けられたモルフォンとしては、戦うことは出来なかった。

 

「義理堅いわねー。……アタシ達と戦う気はあんの?」

 

「フォン」

 

「ないそうだにゃ」

 

「援護はしないが、敵対もしないって事だな」

 

 どちらにも協力しないと知り、互いに少し安心した様だ。

 

 

「だったら! クリムガン、かえんほうしゃ!」

 

「クリムー……ガッ!」

 

「ソーナンス、やっちゃいなさい!」

 

「――ソーーーナンス!」

 

「ミラーコート!」

 

 モルフォンを度外視し、クリムガンがかえんほうしゃを放つ。その直後、ソーナンスが前に出て、様々な色の壁を展開。炎を反射した。

 

「きゃあっ!?」

 

「――リガッ!」

 

「クリムガン!」

 

 反射された炎がエミーに迫るも、クリムガンが庇う。

 

「クリムガン、わたしを庇って……。大丈夫?」

 

「リガ」

 

 何でもないと、クリムガンはエミーに笑いかける。

 

「あ~、もう! あのポケモン厄介ね~!」

 

「だけど、ミラーコートが反射出来るのは特殊技だけ! 技を選べば問題はない!」

 

 攻撃を反射するソーナンスにアイリスは苦い表情だが、デントは直ぐに対応策を出す。

 

「ヤナップ、がんせきふうじ!」

 

「待て、デント! ソーナンスは――」

 

「ナップーーーッ!」

 

「ソーナンス、もう一回やっちゃいなさい!」

 

「ソーーナンス!」

 

 対策に物理技で攻撃するデント。サトシが慌てて止めるも、間に合わない。岩石がソーナンスに命中するも、直後に岩石が跳ね返され、サトシ達に襲う。

 

「くっ!」

 

「きゃああっ!」

 

「物理技も跳ね返した!?」

 

「これはカウンター!?」

 

「デント、ソーナンスはカウンターもミラーコートも使えるんだ!」

 

「それで……!」

 

 ソーナンスが反射に特化したポケモンと教えてもらい、デントは己の失策を悟る。知らないポケモンだからと言って、迂回に攻撃するべきではなかった。

 

「そーよ、ソーナンスは何でも跳ね返しちゃうのよ」

 

「隙はないのさ!」

 

「そうとは限らないぜ! クルミル!」

 

「クルル!」

 

「いとをはく!」

 

「クルルーーーッ!」

 

「ソ、ソーーナンスゥ!?」

 

 サトシはクルミルを繰り出し、糸でソーナンスを拘束する。

 

「物理技でも特殊技でもない、いとをはくはカウンターでもミラーコートでも反射出来ないだろ!」

 

 二つの技は、あくまで攻撃技しか反射出来ない。つまり、いとをはくのような補助技に対しては無力なのだ。

 

「ちょっ、アンタ直ぐに対処するんじゃないわよ!」

 

「これで反射はもう出来ないぜ!」

 

「だったら、攻撃に集中するだけだ! マネネ、サイケこうせん! マスキッパ、つるのムチ! デスマス、おにび!」

 

「ハブネーク、ポイズンテール! メガヤンマ、つばさでうつ! コロモリ、めざめるパワー!」

 

 ロケット団は反射を捨て、攻撃に専念する。

 

「かわせ!」

 

「ドリュウズ、ポイズンテールを受け止めて!」

 

「はっ、簡単に受け止めれるわけ――」

 

「リュズ!」

 

「嘘ぉ!?」

 

 他のポケモン達がかわす中、ハブネークの毒の尾をドリュウズは受け止める。

 

「残念でした! ドリュウズは鋼タイプがあるのよ! 毒タイプの技は効かないわ!」

 

 先程アイリスとデントがソーナンスを知らないのでそうなったように、今度はドリュウズを知らないロケット団が意表を突かれた。

 

「ドリュウズ、そのままドリルライナー! キバゴ、ソーナンスにりゅうのいかり!」

 

「ドリュ……ウズーーーッ!」

 

「ピカチュウ、デスマスに10まんボルト! ハトーボー、マスキッパにつばめがえし! クルミル、マネネにはっぱカッター!」

 

「ヤナップ、がんせきふうじ! 狙いはあのメガヤンマと呼ばれたポケモンだ!」

 

「クリムガン、コロモリにかえんほうしゃ!」

 

 そして、その一瞬の隙をサトシ達は突く。

 

「ドリュ、ウズーーーッ!」

 

「キ~、バ~~~ッ!」

 

「ピーカ、チューーーッ!」

 

「ハトー……ボーーーーッ!」

 

「クルルルルーーーッ!」

 

「ヤー……ナップ!」

 

 七つの攻撃が放たれ、ロケット団のポケモン達にダメージを与える。

 

「ちょっ、これやば……!」

 

「リムー……!」

 

「クリムガン?」

 

 危機感を抱くロケット団。そこに、クリムガンが身体に力を溜め――それを一気に解放する。

 

「ガーーーーーッ!!」

 

「りゅうのはどう!」

 

「うわぁああぁーーーっ!?」

 

 放たれたのは、龍の形を模した巨大なエネルギー。それがまるで生きているかのようにロケット団を襲い、更なるダメージを与えた。

 

「クリムガン、りゅうのはどうを覚えたのか!」

 

 エミーへの想いが引金になったのか、クリムガンはりゅうのはどうを習得した。

 

「キバ!」

 

「キバゴ?」

 

「キバキバ、キバキ!」

 

 そんなクリムガンに刺激を受けたのか、キバゴがアイリスに訴えかける。

 

「分かったわ! キバゴ、りゅうのいかり!」

 

「キ~バ……ゴ~~~~~ッ!!」

 

 昂る気持ちを込めつつ、今までの練習の経験で以て、キバゴは力を溜めると先程のクリムガンのように一気に解放。

 

「う、うわぁ……!」

 

 今までと違う、強力な龍のエネルギーが発射され、ロケット団に止めの一撃を与えた。

 

「あー、途中までは上手く行ってたのにー!」

 

「やっぱ、簡単には上手く行かないって事かー」

 

「まぁ、失敗したもんは仕方ないにゃ。次、頑張るにゃ」

 

「って訳でー、せーの……やなかんじーーーっ!」

 

「ソーーナンス!」

 

「マ~ネネ~~~」

 

 前まで出していた何時もの台詞と共に、ロケット団は空の彼方へと消えていった。

 

「よし、ロケット団は倒した! 後は――」

 

「ハーデリア達とモルフォンだね。ハーデリア達の方から、網を外して説得しよう」

 

 サトシ達は網を出す装置を破壊し、ハーデリア達を自由にする。

 

「ハーデリア、ヨーテリー。モルフォンは俺達に任せてくれないか?」

 

「君達の怒りは分かるけど、どうか頼む」

 

「……ハー」

 

 ハーデリアは暫し逡巡した後、渋々ながらも頷いた。助けられた借りを無下にするほど、薄情ではないつもりだ。

 

「デリ」

 

「……ヨー」

 

 ボスのハーデリアが納得しては、自分達も引き下がるしかない。ハーデリアが去るぞと言うと、ヨーテリー達は彼と共にそこから走り去って行った。

 

「ハーデリア達はこれで大丈夫ね」

 

「残りはあのモルフォンってポケモンだけど……」

 

「……」

 

 ハーデリア達の件も片付き、残るはモルフォンだけだ。と言っても、どうするかは一つしかない。

 

「モルフォン、お前を保護するけど、良いか?」

 

「……フォン」

 

 どうぞと、モルフォンは受け入れた。去ろうとしても、地形もほとんど分からないので無意味だ。

 モルフォンの許可を貰い、サトシはモンスターボールを投げる。モルフォンは大人しくボールに入り、保護は完了した。

 

「これでこっちも良し」

 

 やっと、事態が完全に一段落し、サトシ達は一安心。

 

「にしても、やっと完全なりゅうのいかりが使えるようになったな」

 

「うん。やったね、キバゴ!」

 

「キバキバ~!」

 

 完全なりゅうのいかりに、アイリスとキバゴははしゃいでいた。

 

「今までの熟成により、パワフルでソウルフルなテイストが醸し出されたね。見事なりゅうのいかりだったよ」

 

 漸くの完成に、付き合ってきたデントもサトシも喜んでいた。

 

「クリムガンのりゅうのはどうも凄かったぜ」

 

「ありがとう。わたし、決めたわ! クリムガンと一緒に旅をする!」

 

「リガ!」

 

 今回の一件を切欠に、エミーは旅の決心を固めた様だ。クリムガンも嬉しそうに笑う。

 

「あたし達も頑張らなきゃ! ドラゴンマスターを目指して!」

 

「俺も、何時かはポケモンマスターになって見せる!」

 

 それぞれの決意を固めるサトシ達。そんな彼等の旅は続き、始まって行く。

 

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