ポケットモンスター アナザーベストウイッシュ   作:ぐーたら提督

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ミジュマルの大ピンチ

「……ふぅ、疲れたね」

 

「ゾロ……」

 

「カブブ……」

 

「ブ~イ~……」

 

 手頃な樹に凭れ、N達が疲れた身体を休めていた。一人と四匹になったN一行だが、新たな仲間であるそのポケモン。

 そのポケモンの頼みを聞き、助けた他のポケモン達を狙い、さっきまで次々と襲撃。その説得や逃走で色々と疲れたのである。

 

「……」

 

「謝らなくていいよ。これはボクが選んだ道。寧ろ、ボクの方が謝るべきだ。――済まない」

 

 自分の存在がN達に迷惑を掛けてしまったとそのポケモンは謝るも、Nは自分こそ謝るべきと仲間に告げる。

 確かに切欠は彼だが、自分がモンスターボールに入れないで出したままの選択をし、また多くのポケモン達を保護したからこそ、こうして野生のポケモン達に襲われる結果になったのだ。非は自分にある。

 

「……楽観的だったね」

 

 誠心誠意謝り、説得すれば大丈夫だとは思っていた。いや、実際に説得は成功はしているが、その代償に少なからずのダメージを自分もゾロア達も受けてしまっていた。

 

「声が聞けても、聞く気が無ければ意味がない、だったね」

 

 デントと会った日、彼との会話でそう言っていた事をNは思い出す。今までの説得は余地があった為に成功はしたが、上手く行かなければ正にそうなっていた。

 

「……自惚れていた、かな」

 

 声が聞ければ、問題は直ぐに解決出来る。説得も簡単に進む。そんな傲りが心のどこかにあったのかも知れない。

 ポケモン達の声を聞けようとも、意志疎通は上手く行きやすくなる。たったそれだけだというのに。自分の浅はかさにNは溜め息を吐く。

 言葉だけでなく、行動でも示し、相手にしっかりと伝える。それこそが最も大切なのだと、昨日から今日まででNは理解させられた。

 ただ同時に、説得や解り合う事の困難さや大切さも知って良い経験になり、保護も出来たのでNは少し複雑な心境だったりする。

 

「彼等はゆっくりしてるかい?」

 

「……」

 

 Nの問いかけにそのポケモンは頷く。保護した彼等は全員ダメージを受けていたが、手当や木の実である程度回復していた。

 

「それは良かった」

 

 体調に問題なさそうでNは微笑むも、次に表情を引き締める。

 

(これからどうするかを考えないとね)

 

 保護したポケモン達は決まっている。自分の組織、それも自分が信頼出来る彼等に預ける。

 彼が保護してほしいと頼んだ以上、自分の場所で預かるのが筋。それは曲げてはならない。

 

(……ただ、それまでどうするかだね)

 

 このまま、彼や保護したポケモン達をモンスターボールに入れないまま連れて行くか否か。

 安全を考えれば、モンスターボールに入れるべきだ。野生のポケモン達との余計な衝突を避けれる。

 しかしその場合、彼に窮屈な想いをさせるし、自分の信条を変えねばならない。

 何より、プラズマ団の王の立場を考えると出来ないのが一番厄介だ。

 それにそもそも、モンスターボールを持っていない自分ではこれを選ぶ事が出来ないのだが。

 

「……はぁ」

 

「ゾロ?」

 

 自分の信条、選択、立場が仲間を騒動に巻き込む。それが辛く、また溜め息が溢れた。そんなNに一番長く一緒にいるゾロアが大丈夫?と語り掛ける。

 

「大丈夫。心配しないで」

 

 Nはゾロアに優しく微笑み、撫でる。そんな彼にゾロアはムッとすると無言で肩に乗り、前足をポンと額に当てる。

 

「ゾロゾロ、ゾローロ」

 

 ゾロアはNに告げる。一人で抱え込むな。自分達がいる。仲間がいる。だから、皆で乗り越えようと。

 

「ゾロア……」

 

「ポカカ」

 

「ブ~イ!」

 

「ポカブ、イーブイ……」

 

 ポカブとイーブイもまた、そうだ、うんと頷く。自分達は仲間だ。辛い時に助け合うのは当然だ。

 

「……」

 

 そのポケモンも無言で頷く。自分が現状の原因であることもあり、彼等を必ず守るという強い意志を抱いていた。

 

「ありがとう、皆。じゃあ、皆でこの壁を乗り越えよう」

 

 一人ではなく、皆で。Nのその言葉に、ゾロア達は笑顔を向ける。

 

「さぁ、行こうか」

 

 今の話し合いで、体はある程度休まった。N達は身体を起こし、保護したポケモンを連れて次の街に向かって歩き出す。

 また一歩、自分の理想へと進むため、多くの真実を知るため、ポケモン達のため、青年は仲間達と共に。

 

 

 

 

 

「はい。お預かりしたポケモン達は皆元気になりましたよー」

 

「ありがとうございます!」

 

 早朝。近くにあるポケモンセンターに到着したため、手持ちの回復をしてもらったサトシ達。

 

「それと、このポケモン、モルフォンを預かってもらえますか?」

 

「――フォン」

 

 サトシはモンスターボールからモルフォンを出し、ジョーイに見せる。

 

「見たことないポケモン。もしかして、ロケット団の?」

 

「はい」

 

「分かりました。責任持ってお送りします」

 

 ジョーイはモルフォンが入ったモンスターボールを預かった。この後、一日決まった時間で使うサブサーバーを経由し、担当する街に送るのだ。

 

「モルフォン、元気でな」

 

「ピカピ」

 

「ボランティアはちゃんと頑張るのよ~」

 

「キバキバ~」

 

「ジムリーダーとはしっかりと向き合ってね」

 

「フォン」

 

 三人と二匹の言葉に、しっかりとモルフォンは頷く。

 

「じゃあ、ベストウイッシュ。良き旅を」

 

「フォフォン」

 

 ジョーイとモルフォンからお別れの言葉を聞き、サトシ達はポケモンセンターを後にした。

 

「ねぇ、あのモルフォンは誰の所で預かる事になるの?」

 

「モルフォンのタイプは、確か虫と毒だよね?」

「あぁ、そうだよ」

 

「となると、虫タイプの専門家のアーティさんか――彼女のどちらかかな」

 

「彼女?」

 

 つまり、その人物は女性。会った事があるイッシュのジムリーダーで該当するのは、アロエとカミツレ、フウロとホミカの四人。

 しかし、アロエはノーマルタイプの専門家。つまり、彼女以外の三人になる。

 

「聞くかい?」

 

「いや、楽しみにしておくよ」

 

 気になる点ではあるが、デントの言う彼女がどんな人物なのかはその時までの楽しみにする事にした。

 

「分かった。じゃあ、行こうか」

 

「おう!」

 

「えぇ!」

 

 やることも終え、サトシ達は旅を再開した。

 

 

 

 

 

「俺はケニヤン! 今年旅を始めたばかりの新人トレーナーだけど、やる気は満々! なぁ、俺とバトルしないか? 使う数はお互いに二体だ」

 

「もちろん受けるぜ、ケニヤン!」

 

 ポケモンセンターから出て二時間程歩くと、そこでサトシは赤みがかった茶髪のトレーナー、ケニヤンからバトルを申し込まれる。

 バトル好きなサトシがその提案を拒否するわけもなく、二人のバトルが始まろうとしていた。

 

「ん? アクセントが違うけど……まぁ、良いか。よーし、シママ、出てこいやあ!」

 

「シママー!」

 

 サトシが自分の名前を呼ぶ時のアクセントが違うものの、本人は特に気にすることなくポケモンを繰り出す。

 四足歩行のポケモンで、薄い黒い身体に白色の鬣や模様が特徴だ。

 

「あれは……」

 

『シママ、帯電ポケモン。鬣で雷をキャッチして、電気を貯める。放電すると、鬣が光る』

 

 説明から、サトシはシママが電気タイプだと知る。

 

「電気タイプのシママが相手なら、草タイプがあるツタージャかクルミルが相性的に良いわね」

 

「でも、電気タイプだからと言って、電気技ばかり使うとは限らない。油断は禁物だね」

 

「さてと、今回は誰に――」

 

「ミジュー」

 

「ミジュマル?」

 

 誰を出そうかと悩むと、ミジュマルが出てきた。

 

「ミジュミジュ。ミジュマ」

 

「お前が戦いたいのか?」

 

「ミージュ」

 

 胸を張ってポンポンと叩く様子から、戦いたいのかと聞くとミジュマルは頷く。

 

「もしかして、ヒウンジム戦で出れなかった分、頑張りたいとか?」

 

「ミジュジュ!」

 

 その通りと、ミジュマルは頷く。近い時期で仲間になり、実力も近いハトーボーやポカブが活躍した分、ここで頑張りたいのだ。

 

「わかったわかった。じゃあ、今回はミジュマル、君に決めた」

 

「ミジュマ!」

 

 サトシに許可を出され、よーしとミジュマルは張り切る。

 

「電気タイプのシママに、水タイプのミジュマル……。俺達のこと、甘く見てるのか?」

 

「シマー……」

 

「いや、ミジュマルが戦いたいって言ったから決めたんだ。それと、バトルはタイプだけで決まるもんじゃないぜ?」

 

「ミジュ!」

 

 相性不利だろうが、確かな自信を見せるサトシとミジュマルに、ケニヤンとシママは自分達を軽く見ている訳ではないと理解する。

 

「なら、行くぜ! シママ、でんげきは!」

 

「シマー……マーーーッ!」

 

「ミジュマル、ホタチでガード!」

 

「ミジュ! マッ!」

 

 鬣から放たれた電撃を、ミジュマルはホタチで防ぐ。

 

「ホタチで防いだ!?」

 

「シマ!?」

 

 効果抜群の技を弾かれ、ケニヤンとシママは呆気を取られる。

 

「ホタチでしっかりとガードしてる」

 

「これは彼も意表を突かれただろうね」

 

「どうだ、ケニヤン?」

 

「だから、ちょっとアクセントが……。まぁ、良いや。それはともかく……なるほどな。これが自信の秘密って訳か」

 

 あんな防御があるなら、タイプが有利でも簡単には勝てない。それをケニヤンもシママも悟る。

 

「自信はこれだけじゃないぜ?」

 

「面白え! だったらこれだ! ニトロチャージ!」

 

「シマシマシマ……シマーーーッ!」

 

「真正面から受けて立つ! アクアジェット!」

 

「ミジュー……マーーーッ!」

 

 水と炎の突撃がぶつかり合う。結果、タイプの相性アクアジェットがニトロチャージを打ち破り、シママにダメージを与える。

 

「シマーーーッ!」

 

「くっ、真正面から不利か……! だけど、速さは上がっているぜ! とっしん!」

 

「シマッ! シママーーーッ!」

 

「かわせ、ミジュマル!」

 

「ミジュマッ!」

 

 上がった速さを活かし、シママは突進を開始。ミジュマルはその突進を軽やかにかわす。

 

「シママ、もう一度とっしん!」

 

「ミジュマル、シェルブレード! 惹き付けてから――回転!」

 

「シママ――」

 

「ミジュ、マッ!」

 

「シマッ!」

 

 ミジュマルは再度のとっしんをある程度惹き付け、回転しながら水の刃で擦れ違いざまに切り付ける。

 その一撃にシママは体勢を足が崩れ、とっしんの勢いもあって滑った。

 

「まだ行けるか、シママ?」

 

「――シマ!」

 

「よし! にしても、あのホタチ厄介だなー……そうだ!」

 

 攻防一体のホタチ。あれをどうにかしないと負けると理解したケニヤンはあることを閃いた。

 

「シママ、でんげきはだ!」

 

「シマー……マーーーッ!」

 

「ミジュマル、またホタチでガード!」

 

「ミジュ!」

 

 再度のでんげきはを、ミジュマルはまたホタチでガードする。

 

「今だ、近付いてにどげり! ホタチを狙え!」

 

「シマ! シママッ!」

 

「ミジュマル、全力でガード!」

 

「ミジュ!」

 

 ホタチを狙って放たれた後ろ蹴りを、ミジュマルは全力で防御。

 

「ミジュ!?」

 

「ああっ!?」

 

 全力と全力がぶつかった結果、その力の衝突の勢いにより、すっぽ抜けたホタチは何と遥か彼方へと飛んで行ってしまう。

 

「ミジューーーッ!?」

 

「あっ、ミジュマル!」

 

 自分の大切なホタチが飛んでいき、ミジュマルはバトルを放って探しに行ってしまう。

 

「わ、悪ぃ、そこまで飛ばすつもりは無かったんだ」

 

「シマ……」

 

 少しの間、ミジュマルの手元から落とそうとしたのだが、あんなに飛ぶのはケニヤンも想定外だった。シママも申し訳なさそうだ。

 

「えーと……ごめん、このバトルは預けて良いか?」

 

「あー、良いぜ。明日改めてな」

 

「ありがとう! ミジュマルー!」

 

「僕達も探しに行くから、失礼するよ」

 

「じゃあね」

 

 バトルは明日に回すことになり、サトシ達はホタチを探しにミジュマルを追う。

 

「――せっかく、お前との初バトルが出来ると思ったのになぁ」

 

 サトシ達を見送った後、ケニヤンは一つのモンスターボールを取り出し、そう呟く。

 この中には、サトシとのバトルで出る二体目のあるポケモンが入っていた。

 

「まぁ良いや。明日のバトルに向けて特訓するか。どこか良い場所があると助かるんだけど」

 

 明日に向けて、ケニヤンは特訓をすることにした。

 

 

 

 

 

「ミジュミジュ、ミジュジュ。――ミジュ?」

 

 一方、ホタチを無くしてしまったミジュマル。長草を掻き分けて探すも中々見つからず、何か光る物があったので手に取るも、瓶の蓋だった。それをポイと捨てる。

 

「ミジュー……」

 

「おーい、ミジュマルー。どうだ? 見付かったか?」

 

「ミジュジュ……」

 

 落ち込むミジュマルにサトシが合流。ホタチは見付かったか聞かれるも、ミジュマルはぶんぶんと顔を振る。

 

「そっか。じゃあ、一緒に探そうぜ。皆とな。――出てこい!」

 

「ボー!」

 

「ポカ!」

 

「タジャ」

 

「ルッグ!」

 

「クルル!」

 

「皆、ミジュマルのホタチが無くなってしまったんだ。一緒に探してくれないか?」

 

 サトシに言われ、五匹はミジュマルを見る。確かに何時はあるホタチが無い。

 

「ミジュジュ……」

 

「ボーボー」

 

「ポカカ」

 

「タージャ」

 

「ルググ」

 

「クルクル」

 

 

「ミジュ!」

 

 ミジュマルからも頼まれ、五匹とサトシとピカチュウは仲間の為にホタチを探す。そんな彼等に、ミジュマルは笑顔を浮かべた。

 

「俺とミジュマル、ピカチュウ、ズルッグはこの辺りを探すから、残りの皆は周りを頼むな」

 

 と言うわけで、サトシ達全員でホタチを捜索開始。

 

「うーん、中々見付からないな……」

 

「ピカピカ……」

 

「ミジュジュ……」

 

「ルッグルッグ……」

 

「おーい、ハトーボー、ポカブ、ツタージャ、クルミル。そっちはどうだ?」

 

 周りの四匹にも聞くが、見付かっていない様だ。

 

「あっ、ホタチか?」

 

「ピカ?」

 

「ルッグ?」

 

「ミジュ!」

 

 今度こそホタチと、光るそれをお腹に付けるミジュマル。

 

「ミジュミジュー」

 

「バチュバチュ……!」

 

「……ミジュ?」

 

 しかし、それから鳴き声がした。ミジュマルがん?と見下ろすと、付けたのはホタチではなかった。

 黄色のかなり小さい身体の四足のポケモンが静電気を発生させながら、睨んだ表情で見上げている。

 

「バチューーーッ!」

 

「ミジューーーッ!」

 

「な、なんだ? いや、とにかくピカチュウ、外すんだ! 軽めのアイアンテール!」

 

「ピー……カッ!」

 

 黄色いポケモンは電気を発生させ、ミジュマルは効果抜群のダメージに悶えながら走る。

 とにかく、ミジュマルから離さなければならない。ピカチュウに頼んで、ミジュマルとそのポケモンを離す。

 

「あのポケモンは……」

 

『バチュル、くっつきポケモン。身体の大きなポケモンに取り付いて静電気を吸い取り、蓄電袋に貯める』

 

「バチュルっていうのか。あっ」

 

 図鑑で調べた直後、バチュルはサトシ達に背を向けて去って行った。

 

「ボー?」

 

「ポーカ?」

 

「タジャジャ?」

 

「クルル?」

 

 その直後、先程のミジュマルの悲鳴を聞き付け、四匹が近付いて来た。サトシが説明すると、なるほどと納得する。

 

「ミジュー……」

 

「元気出せよ、ミジュマル。さっ、また皆でホタチ探そうぜ」

 

 ピカチュウ達もそれぞれの態度でそうそうと頷き、ミジュマルは嬉しさからまた笑顔になる。

 

「おーい、サトシー。ホタチは見付かったかーい?」

 

 そこにデント達も合流。ホタチが見付かったを聞くも、サトシはまだと返した。

 

「見付からないとなると、ミジュマルはホタチが無いまま戦うことになるね……」

 

「ミジュ……」

 

 自分の最大の武器であるホタチがないまま戦うことに、ミジュマルはかなり不安の様だ。

 

「だったら、あたしに任せなさい! ちょっと待っててね!」

 

「ミジュ……?」

 

 とりあえず待つと、アイリスがあるものを持って来た。

 

「これならどう? このイアの実を使って見て! きっと上手く行くわ!」

 

「確かに逆に持つとホタチっぽいね……」

 

 アイリスが用意したのは、イアの実だった。少し大きく、薄い黄色と赤色の酸味が特徴の木の実だ。

 

「ミジュ! ミジュ!」

 

 ミジュマルが試しに持って振るうも、今一分からない。

 

「ミジュマル、ピカチュウの技で使い勝手を試して見るか?」

 

「ミジュ」

 

 と言うわけで、早速テストを開始した。

 

「ピカチュウ、先ずはでんきショックだ!」

 

「ピー……カッ!」

 

「ミジュ!」

 

 大技の10まんボルトではなく、小技のでんきショックで耐久力と使い勝手をテスト。

 電気が放たれ、ミジュマルはイアの実で受け止める。すると、でんきショックが弾かれた。

 

 

「おっ、意外と何とか――」

 

「ミジュ!?」

 

 なりそうと思いきや、直後に電気で焼けたイアの実に亀裂が走り、割れてしまった。

 

「ダメか……」

 

「良いアイデアだと思ったんだけど……」

 

「イアの実じゃ、強度が足りなかったか……」

 

 次いでに、焼けたイアの実をかじると酸味がまろやかになっており、美味だったとのこと。

 

「次はなににする?」

 

「僕のクロッシュはどうだい? 毎日丁寧に磨いているから、一級品だよ」

 

「……いや、それ電気通さないか?」

 

「金属だしね」

 

「……だよね」

 

 次はデントのクロッシュを手渡されるも、金属製なので電気が通るのは目に見えている。即座に却下になった。

 

「となると……よし。イシズマイ、出てきてくれ」

 

「イマイ!」

 

「何をするんだ?」

 

「簡単さ。イシズマイ、岩からホタチを作ってくれ」

 

「イママイ!」

 

 イシズマイは家を作る時の作業を応用し、近くにある岩を削って岩のホタチを作っていく。

 

「これならどうだい? 材質は岩だから電気は通さないし、強度もある」

 

「ただ、でかいな……」

 

 本来のホタチはミジュマルの耳程度のサイズなのだが、イシズマイが作った岩のホタチは縦の長さだけでもミジュマルと同じ。横幅に至っては完全に上回っていた。

 

「小さいとどうしても強度がね……。まぁ、とりあえず試して見ないかい?」

 

「そうするよ。ミジュマル、これでやって見ようぜ」

 

「ミジュ!」

 

 と言うわけで、岩のホタチで再度挑戦。

 

「ピカチュウ、でんきショック!」

 

「ピー……カッ!」

 

「ミジュ……! マッ!」

 

 かなり重い岩のホタチを、ミジュマルは全身の力で持ち上げてガード。岩のホタチはでんきショックを見事に弾く。

 

「おっ、強度は全く――」

 

「ミジュ……マッ!」

 

 強度は問題無しだが、大きさのせいで重量が有りすぎてしまい、ミジュマルは岩のホタチに押し潰されてしまった。

 

「ダメか……」

 

「ミジュー……」

 

 一旦休憩にし、サトシはミジュマルを樹の影で休ませる。

 

「うーん、やっぱり自分のホタチじゃないとダメか……」

 

「て言うか、ホタチに頼っているからダメなんじゃないの?」

 

「ホタチに頼ってるって……ミジュマル自身だって、十分強いぞ」

 

「確かにね」

 

 たいあたり、アクアジェット、みずてっぽう、しおみず。ホタチ無しでもミジュマルは十分に戦えるだけの技や能力がある。

 

「よし。ミジュマル」

 

「ミジュ?」

 

「特訓だ。今回はお前自身の強さを磨こうぜ」

 

 今までの勝利はホタチが無くては有り得なかったとは言わないが、重要な要素だったのは確か。その為に純粋な強さが足りなかった事も考えられる。

 今回はそのホタチが無いため、ピンチではあるが、足りなかった自身の強さを磨くチャンスでもある。

 

「ミジュ……」

 

 自分にとって、ホタチは常に共にあった最大の武器。それが無い。ミジュマルが出来るだろうかと悩んでも仕方ない。

 

「ミジュマル」

 

「ミ、ミジュ?」

 

「お前なら出来るって俺は信じてる」

 

 それは何の根拠のない発言ではない。今まで共に戦って来て、勝利も敗北も経験したからこそ、サトシはそう断言したのだ。

 

「ピカピカ、ピカピ」

 

「ボーボー、ハトトー」

 

「ポカカ、カブ」

 

「タージャジャ」

 

「……ルッグ」

 

「クルル、クルクル」

 

 そして、ピカチュウ達もミジュマルを大丈夫、行けると応援していた。今まで一緒に頑張って来た仲間なのだから。

 

「ほら、皆もそう思ってる。だから、頑張ろうぜ」

 

「――ミジュ!」

 

 サトシと仲間達に応援され、ミジュマルはやる気を見せた。

 

「じゃあ、早速特訓――の前に。デント、岩のホタチを後六つ用意してくれないか? 一つは小さ目に」

 

「――あぁなるほど。分かった、直ぐに用意するよ。イシズマイ、頼むよ」

 

「イママイ!」

 

 サトシが何の目的で用意してほしいのかを理解し、デントはイシズマイに頼む。

 イシズマイは急いで岩のホタチを六つ用意。全て作った頃には、結構疲れた様だ。

 

「イママイ……」

 

「ありがとな、イシズマイ。皆、頑張ろうな!」

 

「ピカピ!」

 

「ボー!」

 

「ポカ!

 

「タージャ」

 

「ルッグ!」

 

「クルル!」

 

 サトシはミジュマルだけでなく、ピカチュウ達とも特訓する気だった。だから、岩のホタチを六つも用意してもらったのだ。

 

「皆で特訓する気なんだ」

 

「全員で特訓するのは連帯感を養えるし、競争心を刺激出来る。悪くない判断だよ」

 

「さぁ、始めようぜ!」

 

 サトシ達は特訓を開始。ポケモンは岩のホタチを、サトシは適当な岩石を担ぎて歩いたり、スクワットや腕立てをこなしていく。

 ちなみに、腕がないハトーボーは引っ張って飛んだりしており、子供のズルッグは軽めの岩のホタチで行なっている。

 

「しおみず!」

 

「ミジュー……マーーーッ!」

 

 基礎訓練だけでなく、まだ未完成の技の練習も行なう。ミジュマルはしおみず。

 

「ポカブ、ねっぷう! ハトーボー、かまいたち! ズルッグ、きあいだま!」

 

 ポカブはねっぷう。ハトーボーはかまいたち。ズルッグはきあいだまを放つ。

 

「ポカー……ブーーーッ!」

 

「ハトー……ボーーーーッ!」

 

「ズー……ルー……グーーーッ!」

 

 ポカブとハトーボーは少し時間を掛けて熱風と風刃を、ズルッグは十数秒後に闘気の球を放つ。

 

「ピカー……チュ!」

 

「ター……ジャ!」

 

「クルルーーーッ!」

 

 ピカチュウ、ツタージャ、クルミルも技の精度を高めるべく、練習を行なっていく。

 

「ポカブ、たいあたり!」

 

「ポカ!」

 

「ミジュマル、たいあたり!」

 

「ミジュ!」

 

 次は実戦に近い形式での特訓。先ずはポカブが相手になり、たいあたりを放つ。

 ポカブのたいあたりをかわした直後に、ミジュマルもたいあたり。しかし、それもかわされた。

 

「ミジュマル、もっとしっかりと見てから狙うんだ!」

 

「ミジュジュ!」

 

 ポカブのたいあたりをかわしながら、反撃のたいあたりを仕掛けていくミジュマル。

 

「ミジュ!」

 

「ポカ!」

 

 中々当たらないものの、続けていく内に一瞬を見切って命中させる。

 

「交代! ハトーボー、頼む」

 

「ハトッ」

 

 ある程度を行なうと、ハトーボーに代わる。

 

「ハトーボー、でんこうせっか!」

 

「ボーーーッ!」

 

「ミジュマル、アクアジェット!」

 

「ミジュマーーーッ!」

 

 空中で動き回るハトーボーを、ミジュマルが追い掛ける。しかし、空中での動きのキレは鳥ポケモンのハトーボーの方が一枚も二枚も上手。突撃しても、次々とかわされてしまう。

 

「ミジュマル、さっきも言ったけど、しっかりと見てやるんだ!」

 

「ミジュ!」

 

 常に動いている突撃中の為、難易度はさっきよりも高いが、そんな中でもミジュマルはハトーボーの動きを見て、軌道を変えて攻撃していく。

 

「ミジュマッ!」

 

「ハトッ!」

 

 そして数十秒後、直撃こそはしなかったが、漸く命中。少ないが確かなダメージを与えた。

 

「次はツタージャ!」

 

「タジャ」

 

 

 また交代し、次はツタージャが出てくる。

 

「つるのムチ!」

 

「ター……ジャッジャッ!」

 

「ミジュマル、かわしながらみずてっぽう!」

 

「ミジュ! ミジュ! ミジューーーッ!」

 

「――タジャ」

 

 ツタージャはつるのムチの複雑な軌道の技での特。読みにくく、避けにくい攻撃だが、ミジュマルは集中してしっかりとかわして反撃のみずてっぽう。しかし、ツタージャは軽々と避ける。

 

「タジャジャ。――ジャッ!」

 

 ツタージャはその程度では当たらないと挑発し、またつるのムチ。ミジュマルはなんとかかわしながらタイミングを狙ってみずてっぽうを放つが、やはりツタージャに軽々避けられた。

 

「タジャ、タジャジャ?」

 

「――ミジュ!」

 

 どうしたの、その程度?と焚き付けられ、ミジュマルはより集中して回避と攻撃、両方のタイミングを確かめていく。

 

「――ミジュ、マーーーッ!」

 

「タジャ……」

 

 蔓を回避しつつ、一瞬のタイミングを見抜き、ミジュマルはみずてっぽうを発射。水は見事にツタージャに直撃した。但し、効果今一つなのでダメージは小さい。

 

「ミジュ!」

 

「タジャージャ」

 

 どうだと胸を張るミジュマルに、ツタージャはやるじゃないとクールに返す。

 

「次はクルミル!」

 

「クルル!」

 

「はっぱカッター!」

 

「クルルルルーーーッ!」

 

「ミジュミジュミジュ!」

 

 次々と放たれる無数の草のカッターを、ミジュマルはかわしていく。今度は連続の攻撃の回避を練習である。

 

「――いとをはくに切り替えろ!」

 

「クルーーーッ!」

 

「ミジュ!? ――マッ!」

 

 攻撃が糸に切り替わり、驚くミジュマルだが、跳躍でなんとか避ける。

 

「糸を振り上げろ!」

 

「クルッ!」

 

「ミジュ!」

 

 しかし、そこに振り上げられた糸までは避けきれず、食らってしまう。

 

「ミジュー……」

 

「対応仕切れなかったな、ミジュマル」

 

 粘着性の糸により、ミジュマルは地面にくっついていた。

 

「クルミル、はっぱカッターで糸だけを切ってくれ」

 

「クル」

 

 はっぱカッターを二枚発射し、糸を切断。ミジュマルは自由になるが、表情は苦い。

 

「今度はもっと上手く反応しようぜ、ミジュマル」

 

「ミジュ」

 

 今度は上手く対応しようとミジュマルは強く頷き、次を行なう。

 

「クルルーッ! クルッ! クルクル、クルルルルーーーッ!」

 

 はっぱカッターといとをはく、更にはたいあたりやむしくいも合わさり、ミジュマルは何度も受けてしまうが、その度に反応を鋭くしていく。

 

「次はズルッグ!」

 

「ルッグ!」

 

「にらみつける!」

 

「ルッグーーーッ!」

 

「ミジュ!?」

 

 次に出てきたズルッグがにらみつける。その気迫にミジュマルがビクッと怯み、防御力が下がった。

 

「ミジュマル、そんなんじゃダメだ。にらみつけるで怯まないほどの気迫を身に付けないと」

 

「ミ、ミジュ」

 

 ホタチがないからこそ気迫を鍛え、無くても大丈夫だという自信を完全とまでは行かなくても、ある程度は付けさせたいのだ。

 

「もう一度、にらみつける!」

 

「ズルッグーーーッ!」

 

「ミジュマーーーッ!」

 

 鋭く睨むズルッグに、ミジュマルも睨み返す。すると、負けじとズルッグは更に気迫を込めて睨み、ミジュマルも一瞬怯むも直ぐにギンと睨み返した。

 

「ミ、ミジュ、ミジュ……」

 

「ルッグ、ルッグ……」

 

 睨み合いの末、精神的に疲れ、ミジュマルもズルッグはうつ伏せてぐったりしていた。

 

「おいおい、まだするべき特訓はあるぞー」

 

「ミ、ミジュマ……」

 

 ご、ごめんとミジュマルは謝る。仕方ないので一旦サトシは休憩を挟み、回復してから特訓に戻る。

 

「ミジュマル、上! 下! 全身に力を込めてやるんだ!」

 

「ミ、ジュー……マッ! ミ、ジュー……マッ!」

 

 次は重いホタチでの筋トレだ。身体に力を込めて上げ下げ、左右や斜め、上から前から、下から前へと振る。ホタチが戻って来た時、振る動作の早さを上げるためだ。

 

「軽く休憩してから次な」

 

「ミジュ……!」

 

 また休憩し、それから次の特訓に入る。

 

「ピカチュウ、でんきショック! ミジュマル、ガードだ!」

 

「ピーカ、チュ!」

 

「ミ、ジュ、マッ!」

 

 軽い電撃を、石のホタチで防ぐ。特訓でコツを多少掴んだのか、動かす早さが上がっていた。

 

「良いぞ、良いぞ。扱えて来てる!」

 

「ミジュマ!」

 

 最初は重さに振り回されていたが、今ではある程度扱えるようになっている。

 

「これなら、行けるんじゃない?」

 

「うん、技術もだけど、自信もある程度付いてる」

 

 サトシのトレーナー能力もある。ホタチ無しでも十分に戦えるだろうとアイリスもデントも感じていた。

 

「あっ、そうだ。アイリス、エモンガと交代させてくれないか?」

 

「どうして?」

 

「ピカチュウの代わりに電撃を防ぐ特訓をしてもらいたいんだよ。ピカチュウにも特訓はあるしさ。それに、出来れば電撃は控えたいし……」

 

「もしかして、また負担が出たの?」

 

「昨日の騒動かい?」

 

 昨日、ピカチュウはモルフォンの一件でかなり電気技を使っていた。少なからずの負担はあっただろう。

 

「そこまでじゃないけど、念のためにさ。良いか?」

 

「分かったわ」

 

「そうだね。その方が良いと思う」

 

 もうすぐで完治するのだ。少しでも電気技を使った負担を減らした方が最善だろう。

 

「エモンガ!」

 

「エモッ!」

 

「ミジュマルの特訓に付き合ってあげて」

 

「……エモ」

 

 面倒くさいとは思ったエモンガだが、ミジュマルには前に迷惑が掛けたことがあるので、渋々ながらやることにした。

 

「さぁ、続けるぞ!」

 

「ミジュー!」

 

 仲間達と共に、ミジュマルの特訓は進んでいった。

 

 

 

 

 

「ミジュー……」

 

 夜、ミジュマルは湖で溜め息を吐いていた。サトシに大丈夫と言われても、やはり心の何処かでホタチが無くなった不安は拭いきれなかったのだ。

 明日の試合、シママからのでんげきはを食らい、大ダメージを受けて負ける。そんな不吉なイメージまで浮かべてしまう。

 

「ミジュ! ジュジュ!」

 

 ダメだダメだと、頭を振るミジュマル。こんなことでは本当に負けてしまう。

 

「ミジュ!? ……マ」

 

 しかし、湖に写る満月に近い月をホタチと勘違いしてまたミジュマルは溜め息。不安は相当大きい様だ。

 そんなミジュマルに、サトシと仲間達の言葉が響く。お前なら出来る、大丈夫、行ける。

 

「――ミジュ!」

 

 サトシが、仲間が応援してくれる。その期待に応えたい。ミジュマルはその強い意志を瞳に宿す。

 

「ミジュマルー、どこだー?」

 

「ピカピカー?」

 

 その頃、サトシとピカチュウはミジュマルを捜していた。

 

「どこに行ったんだろうな、あいつ……。ご飯も食べないで……」

 

「ピカ……」

 

 ミジュマルは夕食に全く手を付けてなく、少し目を離した間にどこかに行ってしまったのだ。

 

「やっぱり、ホタチが無くて相当不安だったんだな……。トレーナー、失格だな……」

 

 初めてホタチを無くしたミジュマルの不安の大きさを見抜ず、払いきる事が出来なかった。トレーナーとして、サトシは情けないと溜め息を吐く。

 

「ピカピカ、ピカチュ!」

 

 落ち込むサトシに、ピカチュウはそんなこと言う間があったらミジュマルを捜すと伝える。今はミジュマルの方が先だと。

 

「ピカチュウ……。そうだよな。お前の言う通りだ」

 

 今はミジュマルの方が大事なのだ。自分の心情など、後回しである。サトシはパァンと頬を叩いて気を引き締め、ミジュマルを捜す。

 

「ミ、ジュ……! ミジュ、マッ……!」

 

「ミジュマル?」

 

 声が聞こえ、急いで向かうサトシとピカチュウ。着いた場所はちょっとした広場で、そこでミジュマルが石のホタチを背負った状態で腕立て伏せをしていた。

 

「ミジュマル……」

 

 練習を励むその姿に、サトシは微笑む。自分が思ってた以上にミジュマルは強かったのだ。

 

「ピカチュウ、あれ取りに行こうぜ」

 

「ピカ」

 

 サトシはピカチュウと全速力で走り、急いであるものを取りに行った後、ミジュマルに話し掛ける。

 

「ミジュマル!」

 

「ミジュ? ――マッ!?」

 

 呼ばれてサトシに気付いたミジュマルだが、意識が向いて力が抜けた事で、石のホタチの重さに倒れてしまった。

 

「あぁ、ごめん!」

 

「ピカピ!」

 

 石のホタチを持ち上げ、ミジュマルを出す。

 

「ミジュマル、特訓に付き合うぜ」

 

「ピカピー」

 

「ミジュ……!」

 

 サトシが来てくれ、ミジュマルは嬉しそうだ。

 

「の前に、ほら」

 

「ミジュ?」

 

「ご飯。食べてなかっただろ? 腹が減っては特訓は出来ぬだ」

 

「ミジュマ! ――ミジュ!」

 

 サトシは腰のポケットからデントからもらった果実を取り出し、ミジュマルに渡す。ミジュマルはしっかりと噛んで味わい、特訓に備えての栄養を蓄えていった。

 

「さぁ、特訓再開だ!」

 

「ミージュ!」

 

「皆も出てきてくれ!」

 

「ハト」

 

「ポカ」

 

「タジャ」

 

「ルッグ」

 

「クルル」

 

 サトシは残りの手持ちである、五匹全てを出す。

 

「ハト。ハトボー?」

 

「ポカカ、カーブ?」

 

「タージャジャ、タジャ」

 

「ルッグ、ルッググ」

 

「クルル。クルクル」

 

 出てきた五匹はミジュマルに近付き、大丈夫?、心配掛けるな、頑張ろう等と言って来る。彼等もミジュマルを心配していたのだ。

 

「ミジュ……!」

 

 皆からの言葉に、ミジュマルは嬉しくなる。喜びで胸が暖まっていく。

 

「さぁ、特訓再開だ!」

 

 七匹は頷き、サトシと一緒に昼と同じく石のホタチを使っての特訓をサトシと共に進めていく。

 

「心配いらなさそうだね」

 

「うん。……うらやましいなぁ」

 

 彼等の光景を少し遠くから見つめる二人の少年少女。デントは暖かく、アイリスは羨ましく見ていた。

 

「アイリス、君だってドリュウズと少しずつ距離を縮めてる。そう遠くない内に仲直り出来るさ」

 

「うん、そうね」

 

 サトシ達を見た後、ドリュウズが入ったモンスターボールを少女はしっかりと見つめ、握り締めた。

 

 

 

 

 

「さぁ再戦だ、ミジュマル!」

 

「ミジュ!」

 

 翌日の早朝。ケニヤンとの再戦を行うべく、サトシとミジュマルは昨日の場所に来たが。

 

「まだ来てないな」

 

「ミジュ」

 

 しかし、ケニヤンはまだ来ていなかった。

 

「アイリス、デント。ケニヤンは?」

 

「確か、この近くでキャンプするって言ってたけど……」

 

「直接会った方が早そうだね」

 

「そうするか」

 

 サトシ達は少し進む。すると、大声が聞こえた。

 

「うおぉおおぉおぉぉ!」

 

「な、なんだ?」

 

 声がする場所に着くと、ケニヤンは自転車を漕ぎ、繋いでいる機材から電気が発生。

 

「シママーーーッ!」

 

 電気が十分集まるとシママに向かって放たれ、シママはその電気を吸収した。

 

「おっ、サトシ。来たか」

 

「あぁ、ケニヤン。何してるんだ、これ?」

 

「アクセントが違うんだけど……まぁ良いや。これは俺が作った自家製の発電機だよ。これで電気を発生させて、シママのエネルギーを溜めたんだ」

 

「シママ」

 

「今日のバトルを備えてって訳だね。準備万端だ」

 

「昔、似たような事俺もやったなー」

 

 その光景に、サトシは昔を思い出した。

 

「サトシもやった事があるのか?」

 

「あぁ、最初のジム戦で負けちゃってさ。だから、ピカチュウのパワーアップに同じ様な事をしたんだ」

 

「ピカピカー」

 

「なるほどなー」

 

 最初の旅。カントー地方での旅の初めの頃、ニビジムでの一連の件をサトシは思い出す。

 

「タケシ、元気かなー?」

 

「タケシ? 誰それ?」

 

「俺の旅の仲間。で、そのジムのジムリーダーだったけど、バトルを切欠に夢を目指そうと一緒に旅することになってさ」

 

「僕と似たような経緯だね」

 

 デントもサトシとのバトルを切欠に、旅をする事になったので、親近感を抱いていた。ケニヤンもジムリーダーと聞いて気になる様だ。

 

「どんな人なんだ?」

 

「デントみたいに色々知ってて、家事とか食事が上手くて、面倒見もよくて、頼りになるって感じだな。ただ、綺麗な女の人を見掛ける度に何か誘ってたりしてたけど」

 

「女好きなのね……」

 

「あはは、中々ユニークな人だね。会ってみたいものだよ」

 

「俺も気になるなー」

 

 頼れるがユニークな人物に、アイリスは微妙そうな顔を浮かべており、デントは苦笑いだが興味があるようだ。ケニヤンは純粋に会ってみたい様だ。

 

「あっ、話が逸れたな。じゃあ、昨日のバトルの再開しようぜ」

 

「おう。ルールは昨日と同じ、二対二だ!」

 

「ミジュー……!」

 

「シママ……!」

 

 自分達だけで決着が付くわけではないが、中断になった事もあり、ミジュマルとシママは対抗心をぶつけていた。

 

「では、僕が心配を。ルールは二対二。手持ち全て倒れた方が負け。――初め!」

 

「シママ、でんげきは!」

 

「ミジュマル、防げ!」

 

「ミジュ、マッ!」

 

 石のホタチでだが、電撃を昨日と同じく防ぐ。

 

「うおっ、防がれた!」

 

「シマ……!」

 

「どうだ!」

 

「ミジュ!」

 

「だったら、フルパワーでだ! シママ、でんげきは!」

 

「シマー……マーーーッ!」

 

 先程以上の電撃が、シママの角から放たれる。

 

「ミジュマル、かわせ!」

 

「――ミジュ!」

 

 強烈な電撃を、ミジュマルは素早い身のこなしで前進しつつ回避する。

 

「シマ!?」

 

「は、速え!」

 

「特訓の成果ね!」

 

「うん、昨日よりも速い」

 

 重い石のホタチによる特訓で、ミジュマルはまた強くなった様だ。

 

「たいあたり!」

 

「ミジュ、マッ!」

 

「シマーーーッ!」

 

 ミジュマルは素早く距離を縮め、力を込めて体当たり。シママは吹き飛ぶ。

 

「だったら、速さを上げるだけだ! シママ、ニトロチャージ!」

 

「ミジュマル、アクアジェット!」

 

「シマシマシマ……シマーーーッ!」

 

「ミジュー……マーーーッ!」

 

 水と炎の突撃が同時に行われ、二つの技は真正面からぶつかり合う。結果は、水と炎の相性からアクアジェットがニトロチャージを撃ち破り、シママにダメージを与えた。

 

「ミジューーーッ!」

 

「シママッ!」

 

「踏ん張れ! とっしんだ!」

 

「――シマッ! シーマーーーッ!」

 

「かわせ、ミジュマル!」

 

「ミジュウ!」

 

 シママは踏ん張ると吹き飛ぶ力を反発に使い、一気に加速して突撃。ミジュマルは辛うじて避ける。

 

「ミジュマル、たいあたりだ!」

 

「ミジュ!」

 

 危うく当たり掛けたが、避ければチャンスになる。シママの突進した後の背後を狙い、ミジュマルがたいあたりを仕掛ける。

 

「シママ、にどげり!」

 

「シマシマ!」

 

「そう来ると思ったぜ! ジャンプだ、ミジュマル!」

 

「ミジュッ!」

 

 背後からを狙うミジュマルにシママのカウンターのにどげり。しかし、サトシはそれを予想して更なる指示。ミジュマルはジャンプで避けた。

 

「しおみず!」

 

「ミジューーーッ!」

 

「シマーーーッ!」

 

 ミジュマルは空中から塩を含んだ水を浴びせる。たいあたりやアクアジェットでの傷にしおみずが作用し、増加ダメージを与えた。

 

「くっ、やるな……!」

 

「シマ……!」

 

「どうだ!」

 

「ミジュ!」

 

 追い込むサトシとミジュマルに、ケニヤンとシママは苦い表情だ。

 

 

「だったら、速さで押してやるぜ! ニトロチャージ!」

 

「シママーーーッ!」

 

「アクアジェット!」

 

「ミジュマーーーッ!」

 

 二匹は再度、水と炎の突撃を放つ。

 

「シママ、避けろ!」

 

「追い掛けろ、ミジュマル!」

 

 ミジュマルは高速で追い掛けるも、シママは徐々に速くなっていく。

 

「徐々に追い越されてる。ダメだな」

 

 シママにはニトロチャージがある。速さでの勝負は不利だ。

 

「ミジュマル、止まれ!」

 

「ミジュ!」

 

 速さで対抗するのを止め、ミジュマルは距離を取る。

 

「行け、シママ! ニトロチャージ!」

 

「シマママーーーッ!」

 

「ミジュマル、みずてっぽう!」

 

「ミジュー、マーーーッ!」

 

「避けろ、シママ!」

 

「シマッ!」

 

 炎の突撃に水鉄砲で対抗。しかし、シママは横に動いてかわし、そこからミジュマルに突撃しようとする。

 

「回転!」

 

「ミジュゥ!」

 

「シマァ!?」

 

「な、なに!?」

 

 横に移動するシママだが、横回転で薙ぎ払いの水流を食らい、吹き飛んだ。

 

「止めだ、たいあたり!」

 

「負けるな、とっしん!」

 

「ミジュマーーーッ!!」

 

「シママーーーッ!!」

 

 渾身の力で体当たりと突進を放つミジュマルとシママ。全力の激突がぶつかり合い、二匹は吹き飛んだ。

 

「――ミジュマ!」

 

「シマッ! マ、マー……」

 

 吹き飛んだ二匹の内、ミジュマルは踏ん張りきったが、シママは限界が来たのか倒れ込んだ。

 

「シママ!」

 

「シママ、戦闘不能。ミジュマルの勝ち」

 

「よくやった、ミジュマル!」

 

「ミジューーーッ!」

 

 ホタチ無しの初めての勝負に勝ち、ミジュマルは叫ぶ。

 

「なっ、言ったろ? お前はホタチが無くても十分に強い。いや、強くなったんだ」

 

「ミジュ!」

 

 笑顔で頷くミジュマル。サトシや皆と一緒に鍛えて身に付いたこの強さが、嬉しかった。

 

「ご苦労さん、シママ。休んでくれ」

 

 ケニヤンはシママを労い、モンスターボールに戻す。

 

「かー、完敗だぜ。ホタチが無くなったのに、昨日より強くなってないか?」

 

「無くなったからこそ、基礎をしっかりと鍛えたんだ」

 

「なるほどなー。だが、まだ一体倒されただけだぜ。次も――」

 

「ナップー」

 

「……」

 

「エモモ~」

 

「イママーイ」

 

「皆の声」

 

「って事は……」

 

 同じ様には行かないと言おうとしたケニヤンだが、そこに四匹の声が割り込む。

 全員が振り向くと、ヤナップが無くなったホタチを持っていた。

 

「見付けたんだな!」

 

 四匹は頷く。彼等は朝からホタチを捜索しており、さっき発見したのだ。四匹がミジュマルに近付き、ヤナップが代表してホタチを返す。

 

「ミジュジュ、ミジュマ!」

 

 ありがとうと返し、ホタチをお腹に付ける。昨日振りの感触にミジュマルは笑顔だ。

 

「ホタチも戻って良かったな。じゃあ、次のバトルだ!」

 

「来い、ケニヤン!」

 

「だから、アクセントが……。まっ良っか」

 

 またアクセントがずれてるも、気にしないでもう一体がいるモンスターボールを取り出す。

 

「俺のもう一体だ! 出てこいやぁ! ――ゴルバット!」

 

「――バットーーーッ!」

 

 ケニヤンが出したモンスターボールから、薄い青色の身体と大きく開いた口、蝙蝠みたいな翼、全体に比べて小さい牙や足があるポケモン――蝙蝠ポケモン、ゴルバットが繰り出される。

 

「あぁああぁーーーっ!?」

 

「バ、バットーーーッ!?」

 

「う、うおっ!? なんだーーーっ!?」

 

 数瞬の後、思わぬ存在に先ずはサトシ達とゴルバットの、次に釣られてケニヤンの叫び声が上がった。

 

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