ポケットモンスター アナザーベストウイッシュ 作:ぐーたら提督
「では、責任を持って彼等をお預かりします」
「ありがとう。アスラ、ロット」
「何を仰いますか、N様。我々が協力するのは当然の事でございます」
小さな村に、Nとプラズマ団のアスラとロットがいた。
野生のポケモン達との度々の騒動を突破し、漸くN達はこの村に到着。ある件――保護したロケット団のポケモンについて話し、今片付いたのだ。
「にしても、貴方達がこの村にいてくれて助かったよ」
「それについては、この辺りが我々の担当であった為ですな」
「他は?」
「もう少し離れた場所や、シッポウシティ側で保護活動をしている頃かと」
ロケット団のポケモンは、四方八方に散らばっていた。なので、シッポウシティからも保護をする事になったのだ。
「保護は順調に進んでいるのかな?」
「はい。既に二百近いポケモンを保護している様です」
「全体で数えると少ないですが、まだ数日ですからな」
なので、これだけ保護したのは上出来と言えるが、保護しなければならないポケモン達はまだまだいる。これからも頑張らねばならない。
「あっちはどうだい?」
「順調だそうです。ただ――」
「裏では何かをしているかは分からない、か」
「えぇ。……最近では、アクロマ率いる科学班が何らかの動きを見せているとヴィオから報告が」
「それが何なのかまでは?」
「残念ながら……。裏のヴィオでも、簡単には知れない程の秘密裏の様で。しかし――」
「そうまで隠す以上、とんでもない事の可能性がある。だね?」
Nの推測に、二人は静かに頷く。彼等としては、そうではない方が有難い。同じ志の下、組織に集まった仲間なのだから。
しかし、もしとんでもない事を仕出かしていた場合――自分達は彼等を止めねばならない。
「あちらに関しては、ヴィオを頼るしかないか」
「ですな。我々は我々に出来る事をするしかありません」
情報が足りない現状、自分達がすべき事を全力でこなすしかなかった。
「さてと、この後ボクは――」
「N様、一日だけここに留まりませんか? 出来れば、この後少しでも構いませんので団員達と顔合わせし、やり取りしてもらいたいのです」
「分かった」
「ありがとうございます」
プラズマ団の王として、団員達と可能な限り交流すべきだろう。Nはその提案を受けた。
「しかし、張り切ってますな」
「まあね」
すべき話が一通り終わり、N達がそちらを向く。その先には、Nの仲間である四体のポケモンが特訓をしていた。
「ゾロ、ゾロロッ!」
「ガブガブ、カブーーーッ!」
「ブブイ、ブ~イ~!」
「……」
ゾロアとポカブ、イーブイと新たな仲間のポケモンの組み合わせの試合で行なっているが、前は攻撃と回避を重点に置き、片方はそのポケモンの防御力を活かし、イーブイの攻撃力を鍛えていた。
「にしても、ロケット団のポケモンを説得し、仲間になさるとは……お見事です」
「彼が善だからさ。ボクは真実や想いと向き合わせただけだよ」
「いえ、それだけでは無いかと。N様に惹かれたからこそ、彼は選んだ。我々はそう思います」
「ちょっと照れるよ」
二人に誉められ、Nは少し恥ずかしそうだ。
「ブブブ~イ! ブイッ!」
「……」
「確か、イーブイと呼ばれるあのポケモン。一際励んでおりますな」
「ちょっと、ね」
子供ながら、並々ならぬ気迫で励むイーブイだが、これには理由がある。
野生のポケモン達とのいざこざの中、子供故にイーブイは色々と足を引っ張ってしまい、自分の力不足を痛感してだった。
また、今はバンギラスの時の事も思い出し、尚更昂っていた。とにかく、自分には力が足りない。強くなるしかないと。
頑張るイーブイや仲間達に微笑むと、Nまた自分もすべき事をしなければと考える。
「二人共、彼等は今いるかい?」
「全員では。また一匹見たことないポケモンの報告があったので、その保護の為に」
「なら、ボクも行こう」
「N様も?」
「ボク達はトモダチ、ポケモンの為に集まった者達。彼等の為に活動するのは至極当然だろう?」
例え、自分の立場が王であっても、一人のプラズマ団として活動するのは当然だと、Nは断言した。
「正にその通りです。N様」
「では、我々も――」
「いや、行くのはボクだけだ。貴方達は保護している彼等の様子を見てほしい。万が一があってはならないからね」
Nの言葉に感嘆し、一緒に行こうとしたロットとアスラだが、彼からそう言われても冷静さを取り戻す。
保護しているポケモン達は精神的に不安定な点が多く、しっかりと見ておく必要があった。
「ゾロア、ポカブ」
「ゾロ」
「カーブ」
Nに名前を言われ、ゾロアとポカブは特訓を中止し、彼の元に駆け寄る。
「今から、また他の地方のトモダチを助けに行く。だから頼むよ」
「ゾーロ」
「カブ!」
「ありがとう」
二匹はしっかりと頷く。脅威が来れば、全て払うとやる気満々だ。そんな彼等にNは微笑む。
「イーブイ、キミは彼としっかり特訓するんだ」
「ブイッ!」
「――、付き合って上げてくれ」
「……」
Nの頼みである、イーブイがやる気に満ちてる点から、そのポケモンは快く引き受けた。
「それと」
「……?」
「帰ったら、彼等と話し合うのを手伝ってほしい」
もう一つのその頼みも、そのポケモンは断る理由がないと言いたげに了解と頷いた。
「さぁ、行こう」
「ゾロロ」
「カブッ!」
ゾロアとポカブを連れ、Nはまた一つ自分の道を進むべく、保護に向かい出した。
「ズルッグ、ずつき!」
「ズルッグーーーッ!」
「キバゴ、避けて!」
「キバッ!」
ズルッグの頭突きを、キバゴはギリギリで避ける。
「おっ、動きのキレが上がってる。りゅうのいかりの完成で自信が付いたからかな?」
キバゴの動きの良さを、デントはそう分析していた。
「キバゴ、ひっかく!」
「キバキバ~~~ッ!」
「ズルッグ、踏ん張れ!」
「ルッグ! ルググ……!」
かわせないとサトシは判断し、そう指示。ズルッグはひっかくを受けながらも、負けず嫌いな意志で踏ん張る。
「にらみつける!」
「ルッグゥ!」
「キバッ!」
「ずつき!」
「ルッグッ!」
「キバ~~~ッ!」
ひっかくの後を狙い、ズルッグは強く睨む。更にキバゴを怯んだ所に追撃のずつきを叩き込んだ。
「う~、やっぱり手強い……! けど! キバゴ、りゅうのいかり!」
「キ~バ~……!」
「ズルッグ、きあいだま!」
「ル~グ~……!」
ズルッグとキバゴが、闘気と龍の力を手や腹に溜め始める。
「――発射!」
「ゴ~~~ッ!」
「きあいだまで受け止めろ!」
「ルッグ!」
放たれた龍のエネルギーに、ズルッグは闘気の球を盾にする。二つの力が衝突し合い、爆発が発生。
ズルッグが大きなダメージを受けながら後ろに転がる。しかし、戦闘不能にはなっていない。
「突っ込め、ズルッグ!」
「――ルッグ!」
ダメージに耐えながらも、ズルッグは走ってキバゴとの距離を縮めた。
「キバゴ、ひっかく!」
「キバ――」
「ズルッグ、にらみつける!」
「ルグゥ!」
「キババ!?」
「ずつき!」
「ルッググ!」
「キ~バ~!」
ズルッグはひっかくをしようとしたキバゴをにらみつけるを怯ませ、防御を更に下げて再びずつきを命中させる。
「キ、バ……ッ!?」
「ズルッグ、きあいだま!」
「ズールー……!」
「今だ、叩き込め!」
「グーーーッ!」
「キバーーーッ!」
怯みの追加効果が発生し、怯んでいる間に闘気を出した両手の真ん中に集中。球がある程度の大きさになった所で直接ぶつけた。
「キバ~……」
「あぁ、キバゴ!」
「キバゴ、戦闘不能。ズルッグの勝ち」
「良くやった、ズルッグ!」
「ルッグ!」
ズルッグはえっへんと胸を張るも、直後にきあいだまの疲労でふらつき、背から倒れ込んだ。
「お疲れさま、ズルッグ」
「ピカピ」
「ルッグ……」
「うぅ~……。また負けた~……。りゅうのいかり、完全に出来るようになったのに~……」
「キ~バ~……」
勝って喜ぶサトシとズルッグと対照的に、アイリスとキバゴは落ち込んでいた。
折角、りゅうのいかりが完成したと言うのに、それでも負けてしまったのがショックだった。
「ズルッグだって、きあいだまをどんどん完成させてるんだ。簡単に負けるわけないだろ?」
「ルッグ!」
キバゴがりゅうのいかりを完成させたように、ズルッグもクリムガンとの試合、全員での特訓できあいだまの完成度を高めている。着実に強くなっているのだ。
「だね」
それに、サトシとアイリスではトレーナー能力に大きな差がある。ズルッグとキバゴには大した差がない以上、この結果は仕方ないだろう。
「う~、げきりん使えるようになったら勝てるかな……」
「キバ……」
バンギラスの時、ジュエルのブーストによって、ズルッグのきあいだまと同じく一時的に使えるようになった技、げきりん。あれが完全に使えるようになればとアイリスは思った。
「けど、げきりんは反動がある技。しばらくは控えて、しっかりと身体を作ってからだね」
「は~い。キバゴ、これからもがんばろ」
「キバ」
まだまだ練習は必要不可欠。アイリスとキバゴはそれをしっかりと再認識した。
「――うわっ」
突然、強い風が吹いた。直ぐに消えはしたが、その数秒後、風に誘われるように、後ろに緑色の星形の模様、綿に目や葉が付いたようなポケモンが倒れたズルッグの頭の近くに寄った。
「……ルッグ?」
「メーン」
「なんだ、このポケモン?」
「これはモンメンだよ」
「モンメン……」
『モンメン、綿玉ポケモン。敵に襲われた時に身体から綿を飛ばし、その隙に逃げる。風に吹かれて、気儘に移動する』
やはり、サトシにとって初めてのポケモンだった。
「ルッグ!」
「メーン?」
「ルッグー……!」
「メ、メーン?」
そんなモンメンに、ズルッグは疲れた身体を起こすと睨み付ける。モンメンはなんかしたかなと冷や汗を流し、綿を発射。ズルッグは綿を手で払う。
「にしても、この時期にモンメンが一匹だけというのは珍しいね」
「どういうことだ?」
「この時期、モンメンは集団でいることが多いんだ。そして、その中でカップルが誕生するのさ」
サトシの疑問に、デントが詳しく説明する。
「集団お見合いってこと?」
「うーん……まぁ、間違ってはいないね。とにかく、これで結ばれたカップル達は季節風に乗ってハネムーンへ……!」
「はむっ。ロマンチックね~」
「いや、食べながら言う台詞じゃないよ」
一件、恋に憧れる女の子の様子なのだが、果実をかじりながらでは台無しである。
「カップルって、気の合う友達のことだよな?」
「どんな間違いよ。子供ね~」
カップルを友達と間違うサトシにアイリスはやれやれと、デントも少し苦笑いだ。
「待てよ? そう言えば、確かこの先は……」
何かを思い出したデントは、タブレットで地形を調べる。
「やっぱりだ。この先は虹の谷がある」
「虹の谷?」
「虹の名所でね。そして、そこで吹く風をダイヤモンドブリーズと呼ばれるんだ」
「ダイヤモンドブリーズ……」
「うん。聞くところによると、風が光って見えるらしい。虹の谷はモンメン達が集まり、ダイヤモンドブリーズによって旅立っていく場所として有名なんだ」
「ますますロマンチックじゃない~」
虹の谷とダイヤモンドブリーズの説明にサトシは興味を抱き、アイリスは憧れを強めた様だ。
「きっとこのモンメンは、虹の谷に向かう途中なんじゃないかな?」
「なるほど」
「ルッグ! ルッグ!」
「なんだ?」
モンメンがいる理由に納得したサトシ達だが、ズルッグが急に叫んのでそちらを見る。
すると、別のモンメンがいた。鳴き声から性別は♀で、頭の綿先が少しカールしている。
「別のモンメンだ」
「メーン……」
そのモンメンを見て、サトシ達といるモンメンは照れ臭そうに顔を赤めた。
「お前、もしかしてあの子を追ってはぐれたのか?」
「メン……」
「やっぱり!」
デントの質問に、モンメンはコクンと頷いた。
「ってことは……!」
「イッツ……告白ターイム!」
テンションが上がるアイリスやデントだが、サトシは疑問符で一杯だ。
「自分の気持ちを素直に伝えるんだ!」
「恋って言うのはね、強気が一番良いの!」
「だから、食べ物をかじりながら言うことじゃないよ……」
「だって、お腹空いたんだもん。しょうがないでしょ?」
そう言って、アイリスはまた果物をかじった。
「恋……。あっ、そっか。お前、あいつと一緒になりたいのか」
恋の言葉にサトシはあることを思い出し、モンメンが何をしたいのかを理解した。
「だったら、ガツンと行くんだ! 逃げ腰じゃ、上手く行かないぞ」
「メーン……」
サトシ達に言われ、モンメンはもう一体のモンメンに近付いていく。
「さーて、この恋の行方は……!」
「どうなの? どうなの?」
こうして、モンメンは告白したのだが。
「――メーン……!」
「散々だったな……」
結果は失敗。モンメンは号泣していた。と言うのも、カップルになるにはある程度の実力が必要な様だが、モンメンは回避も下手、技を真っ直ぐ撃てないと、明らかに弱い。
おそらく、マトモな勝負をほとんどしてないからだろう。そんな有り様では経験のあるあのモンメンには全く敵わず、一方的に倒され、フラれてしまったのだ。
「これでよし、と」
きずぐすりを吹き掛け、特に傷があった額にガーゼを張り、手当が完了する。
「はむっ。とにかく、あんなにバトルが弱かったらムリだと思うわ~。恋ってのはね、スパーンと華麗に決めないと」
「だから、食べながら言われてもね……。ただ、間違ってはいないね。守れるだけの強さがないととても……」
強さだけが必要とは限らないが、必須の一つではあるだろう。野生で生きる以上、相手が頼もしいと安心出来る要素だ。
なので、惨敗した今のモンメンの実力ではあのモンメンを振り向かせるのは厳しい。
「だよな。だからさ、モンメン。強くなろうぜ。で、またあの子にガンガンアピールするんだ!」
「メーン……!」
「やけにやる気だね」
特訓には同意見だが、さっきまでは話について行けない様子だったのに急に積極的になり、デントは気になった様だ。
「前に一度あったから、ちょっと他人事には思えなくてさ」
「前?」
「俺、カントーで旅してた時にバタフリーってポケモンを手持ちにしてたんだけどさ。あっ、バタフリーってのはこれ」
『バタフリー、蝶々ポケモン。トランセルの進化系。羽が水を弾く鱗紛に覆われている為、雨の中でも大好物の蜜を探し、運んでいる』
「これがバタフリー」
「中々に愛嬌があるね」
カントーの知らないポケモンに、アイリスとデントは興味津々だ。
「で繁殖期、だっけ? その時にも今のモンメンみたいに相手を捜してんだ」
「ピカピカー……」
そんなこともあったなーと、ピカチュウはサトシと一緒に懐かしむ。
「なるほど、そんな経験が」
「ねぇ、最終的にはどうなったの!?」
「上手く行ったよ。ただ、俺達とは別れることにはなっちゃったけど、な」
その時に見せた、悲しそうなサトシの表情に、二人は何とも言えない様子だ。特にアイリスは恋話に少し浮かれていたので、申し訳なさそうだ。
「それは辛かっただろうね……」
「あぁ、キャタピーの頃からの付き合いでさ。ちなみに、キャタピーはこれ」
『キャタピー、芋虫ポケモン。赤い触角から強烈な臭いを出して外敵を追い払う。脱皮を繰り返し、成長すると蛹になる』
「最初にゲットしたポケモンでもあったし……やっぱり辛かったな」
最初の手持ちはピカチュウだが、オーキドから託されたポケモンであり、ゲットしたわけではない。
なので最初に、それも自力でゲットしたポケモンとしてかなり特別な思い入れがあった。
それでも、最終的にはバタフリーの気持ちを考え、別れを受け入れた。とはいえ、今でも思い出すと少し涙ぐみそうなので、それを隠すようにサトシは俯き、帽子を動かす。
「まぁ、そんなわけでさ。協力してやりたいんだよ」
お人好しな性格や、過去にそんな経験があれば、モンメンの力になりたいと尚更思うのもおかしくはないだろう。
「初めてゲットしたポケモンとの涙の別れ……! くっ、思わず泣いてしまいそうだ……! サトシ、君さえ良ければ、何時かもっと詳しく聞かせてくれないかな?」
「あたしも!」
「あぁ、その内な」
そのエピソードの詳細の約束をし、サトシ達は本題に戻る。
「さてと、強くなるには、やっぱり特訓しかないわけだけど、相手は誰が良いかな……」
「ルッグルッグ」
このモンメンの実力はかなり低い。となると、相手を選ぶ必要があるが、そこでズルッグがサトシのズボンを引っ張る。まるで、自分がやると言いたげだ。
「ズルッグ、お前がバトルの相手をしてくれるのか?」
「ルッグ」
「うん、良いと思う」
ズルッグの単純な実力は、サトシ達の中で一番下。モンメンの相手としては最適だろう。
という訳で、モンメンとズルッグの特訓が始まるも。
「モンメーン……」
「ルッグー……」
「メーン……」
にらみつけるで逃げてしまう、技をしっかりと見てかわすのを見すぎて諸に受けた。これにはサトシもズルッグも頭を手で抑えた。
とはいえ、悪いところばかりではなかった。途中で使ったコットンガードは中々使える。
しかし、それだけに頼るのも不味いので、先ずは回避の基礎を言葉だけでなく、行動も合わせて教えていく。
「良い感じだ」
一度覚えると、モンメンは回避をしっかりとこなしていく。筋も良く、飲み込みが早い。
能力はあったが、経験が無くて活かせなかっただけだったのだろう。このまま教えて行けば、それなりの実力を身に付けれるに違いない。
「キバキバ、キババ!」
「キバゴも手伝いたいの?」
「キバ!」
「そっか! サトシ、次はキバゴにさせてくれない?」
「良いぜ。ズルッグ、交代」
「ルッグ」
キバゴが代わり、ひっかくで攻撃していく。モンメンは爪の連撃をしっかりと回避する。
「エナジーボール!」
「メー……モッ!?」
タイミングを見計らい、先程放ったエナジーボールを発射するが、球はフラフラと移動して落ちた。
「あー、これも直さないとダメだな」
真っ直ぐに放てないのはバトルでは致命的だ。これを直さないと話にならない。
「モンメン、次は技をしっかり放つ練習だな。狙いは……あれが良いな」
近くに岩があるので、それを的にして練習を始める。
「モンメン、撃つ時は先ず狙いを定める。で、大切なのは技を出す時に動かないこと。しっかりと構えて撃つんだ。でないと、溜めた力が抜けたり、真っ直ぐ行かなくなるからな」
「メン。メー……モッ!」
サトシに支えてもらい、またエナジーボールを打つ。今度は真っ直ぐに飛び、威力もあった。
「あと数回練習だ。ズルッグ、お前もさっきモンメンに言ったやり方できあいだまを撃ってみろ」
「メー……モンッ!」
「ズールー……グッ!」
モンメンは自分でしっかり構え、エナジーボールを撃つ。ズルッグも溜めた後、強く踏ん張ってからきあいだまを投げる。
草の球は真っ直ぐに飛んで岩にぶつかるが、闘気の球は途中までは真っ直ぐだが、そこからフラフラして落ちてしまった。まだ甘かったらしい。
「ルッグー……!」
「もうちょっとだな。頑張ろうぜ、ズルッグ」
「メーン」
「ルッグ!」
サトシとモンメンに言われ、やる気を高めると、モンメンと一緒に発射の練習をこなしていった。
「よし、これぐらいだな。モンメンは次の試合。ズルッグはゆっくり休もうな」
「メーン」
「ルグ……」
ズルッグが疲れた所で、発射の練習を切り上げ、試合に戻る。多くのポケモン達と軽い試合をこなしていく。
「イェーイ!」
「メーン!」
「うん、一通りの技術は身に付いた。これなら十分戦えるよ」
指導により、技術を一つ一つ身に付けたモンメンはこの短期間でメキメキと実力を付けていった。
さっきまでとは、比べ物にならない実力になっている。これなら大丈夫だろう。
「良い? 一度フラれたぐらいで諦めちゃダメよ! 何度もアタックするの! その熱意が伝われば、きっと上手く行くわ! はむっ!」
「普通の乙女は、恋について考えると食べ物が咽を通らないはずなんだけど……」
「なんか、恋について考えると腹が減るのよね~」
どうやら、アイリスは中々に珍妙なお腹をしているようだ。
「モンメン、俺といたバタフリーも最初はフラれたんだ。だけど、一生懸命アピールする内に上手く行ったんだぜ。だから、お前一生懸命やれば必ず上手く行くさ!」
「メーン!」
サトシ達の言葉を聞き、モンメンはやる気を十分に漲らせた。
「さぁ、さっきのモンメンを捜しに行こうか」
「けど、どこにいるんだ? もしかしたら、虹の谷にいる可能性も……」
「いや、ここから虹の谷は少し離れてる。時間や距離を考えると、もう到着したとは考えにくい。それにダイヤモンドブリーズが吹くのは、満月の夜の明け方。だからまだ到着してないと思うよ」
「そうよね、昨日の月はちょっと欠けてたし」
つまり、まだ猶予はあるということである。
「だったら、直ぐにそこに向かおうぜ」
「ピカピカ」
「ルッググ!」
善は急げ。早く向かおうとサトシは提案し、二人も賛同する。
「じゃあ、ズルッグ。お前は戻って――」
「ルッグ! ルッググ!」
モンスターボールに戻そうとするも、ズルッグは拒んだ。
「モンメンの事が気になるのか?」
「ルッグ!」
特訓の間に仲間意識が芽生えたのか、ズルッグはモンメンの結果を見届けたい様だ。
「じゃあ、皆で行こうぜ!」
サトシ達はハトーボーと共に、先程のモンメンを捜すも発見は出来ず。
なので、モンメンが自力ではなく風で飛ぶ事から、地形や風の向きから集まる場所を推測。そちらに向かって行く。同じくそこを目指す一団と共に。
「――メンーーーッ!」
「モンメン?」
「もしかして、さっきのモンメン?」
「いや、違うね」
目的までもう少しの所で、一匹のモンメンがサトシ達の方に――つまり、モンメン達が集まると予想される場所とは逆方向から来ていた。
しかし、このモンメンは綿がカールしていない。さっき告白したモンメンではなかった。
「メーン!」
そのモンメンは何故か、泣きながらサトシ達とすれ違って行った。
「あっ、行っちゃった」
「あれ、間違ってた?」
「いや、そんな筈はないと思うけど……。とりあえず、向かって見よう」
タブレットで確認しつつ進むサトシ達だが、どういう訳かモンメンが次から次へと自分達に向かい、過ぎ去って行く。しかも全員、泣きながら。
「なぁ、なんかおかしくないか……?」
「うん、明らかに妙だ……」
「フラれた……。にしては、多すぎない?」
フラれ、傷心から。という可能性もあるが、だとしてもこんなに来るのは少しおかしい。サトシ達は違和感を感じていた。
「――メ~ン!」
「わっ! あっ、このモンメン……」
「メン!」
「さっきの子よ!」
また一匹のモンメンが向かって来ており、当たりそうになったのでサトシが思わず受け止める。そのモンメンは頭の綿がカールしている、先程のモンメンだった。
「メン? メン」
そのモンメンもさっきふったモンメンやサトシ達を思い出した様で、あっと呟いていた。
「なぁ、どうしたんだ?」
「メ~ン。メンメ~ン」
モンメンは訴えるも、サトシ達には分からない。ただ、彼女達が集まる場所で何かが起きたのは確かだ。それも深刻な。
「急いで行こう!」
「あぁ!」
二匹のモンメンを連れ、また何匹ものモンメンとすれ違いながら、急ぎ足でサトシ達はモンメン達が集まる広場に到着する。
「メーン!」
「メメーン!」
同時に、二匹のモンメンがサトシ達の近くに転がり、身体を起こすと今までのモンメン同様、泣きながら逃げていった。
「なんだ……!?」
「――タッコ!」
前を見るサトシ達。すると、その先には一匹のポケモンがいた。
藍色の身体、赤色の円らな瞳、頭や手に丸い綿があるモンメンとは違った愛嬌があるポケモンだ。
「あれはワタッコだ!」
「ワタッコ?」
『ワタッコ、綿草ポケモン。ポポッコの進化系。風に乗って飛び、綿毛を巧みに操り、世界の好きな場所に自由に行ける』
「ロケット団のポケモンか……!」
「モンメン達が逃げてるのは、このポケモンのせい? けど、なんでそんなことするの? それになんでここにいるの?」
このポケモンがロケット団のポケモンなのは火を見るより明らかだが、気になるのは何故ここにいて、モンメン達を追い払っているかだ。
「……! サトシ、さっきのワタッコの説明をもう一度聞かせてくれないか?」
「分かった」
再度、ワタッコの情報を出す。それを聞き、デントはやはりと呟く。
「デント、分かったの?」
「ワタッコは情報によると、モンメンと同じ様に風に乗って飛ぶポケモン。つまり、ここにいるのは地形から最適な虹の谷から飛び立つため」
風で飛ぶポケモンな以上、風を読む能力はあるはず。ダイヤモンドブリーズの風を利用し、ロケット団か元いた場所に帰るためにここに来たのだろう。
「だったら、モンメン達を追い払う必要なんて……」
しかし、だとしたらモンメン達を追い払う意味がない。風に乗って飛べば良いだけなのだから。
「忘れたかい? ロケット団のポケモン達は野生のポケモン達と少なからず戦い、追われているはず。そんな心境の中、多くのポケモン達が来たら……」
「敵が来たと思う!」
「うん。おそらく、ワタッコもそう考えたはず。だから、安全に飛ぶためにもモンメン達を追い払ったんだろうね」
「そう言うことか……! だったら、ワタッコを説得しよう!」
モンメン達に敵意がないことを話せば、ワタッコも警戒心を解くはず。そう判断し、サトシはワタッコに近付く。
「ワタッコ!」
「タッコ? ――!」
「モンメン達には敵意は無いんだ。だから――」
「ター……コッ!」
「ピー……カッ!」
サトシを視認するワタッコだが、その瞬間に敵意を剥き出しにし、タネばくだんを発射。ピカチュウはエレキボールで打ち消す。
「攻撃してきた!?」
「……多分、ゼクロムに倒された一匹なんじゃないかな?」
その推測は当たっており、ワタッコはサトシを敵だと完全に認識していた。
「じゃあ、説得はムリってこと~!?」
「倒すしかないね……!」
「メーン!」
「メメーン!」
「メメメーン!」
「モンメン達の悲鳴!?」
保護の為にも、モンスターボールを構えるデントだが、突然後ろからモンメン達の叫び声が上がる。
「アイリス、デント! 俺がこいつを見とく! そっちは頼む!」
「分かった!」
確認の為、デントとアイリスが急いで走る。すると、二人の人物とポケモンがいた。
「あんた達……!」
「ロケット団!」
それはロケット団だった。彼等の側には大きな袋があるのだが、モゴモゴと動いている。
「何をしてるの!」
「この時期に集まるモンメン達をゲットしてるのよ!」
ゼーゲルから、モンメンと虹の谷について聞き、広場に集まった大量のモンメンをゲットしようと来たのだ。
しかし、突然モンメン達が広場から逃げ出したため、予定を変更。逃げたモンメン達を待ち構え、麻袋に積めていた。
但し、そうなった原因のワタッコについては気付いていない。
「モンメン達の恋と旅立ちのこの神聖な時期を踏みにじるとは……許しがたいね!」
「だったら、どうする?」
「モンメン達を助けるに決まってるでしょ!」
「やれるのにゃら、やって見るにゃ! ――にゃ?」
「ソーナンス?」
アイリスとデント、ロケット団のバトルが始まる――と思いきや、モンメン達を入れた麻袋が急激に大きくなっていく。
「な、何これ!?」
「何で大きくなってるんだ!?」
「どうなってるのにゃ!?」
「ソ、ソーーナンス!?」
「――メーン!」
ロケット団、アイリスとデントも驚いていると、麻袋が膨張に耐えきれずに破裂。大量の綿と共にモンメン達が出てきた。
どうやら、わたほうしやコットンガードで大量の綿を出し、袋を膨らませて破裂させたようだ。
「不味……!」
「メー……!」
「メ~……!」
「モーーーッ!」
大量のモンメン達が、それぞれの技を発射。その一斉攻撃を受け、ロケット団は吹き飛んでいった。
「また失敗したわー。なんか、出オチねー。アタシ達」
「まさか、あんな方法で逃げるとはなー」
「予想外にも程があったのにゃ」
「――やなかんじー!」
「ソーナンス!」
夜空に吸い込まれ、ロケット団はキラーンと消えていった。
「後はワタッコだ!」
「戻りましょ!」
ロケット団は吹っ飛んでいった。残る解決するべき問題はワタッコだけだ。
「タッココココッ!」
「よっと!」
「メン!」
発射された無数の種を、サトシとモンメンは回避する。
「サトシ!」
「アイリス、デント! そっちはどうだった!?」
「あの叫びは、ロケット団が捕らえようとしたからだったよ!」
「けど、モンメン達の反撃に遭って吹っ飛んだわ! 後はそのワタッコだけ!」
「分かった。じゃあ、何とかして――」
「メーン!」
ワタッコを倒し、保護するだけ。サトシが本格的にバトルをしようとしたが、そこにモンメンが出る。
「モンメン?」
「メーン! メメーン!」
「お前が倒すのか?」
「メン!」
サトシの腕の中にいる、自分がモンメンにアピールしたいのもある。しかし、それと同じぐらいにワタッコを倒し、仲間の恋や旅立ちを守りたい気持ちもあった。だからこそ、戦うと決めたのだ。
「分かった。がんばれ、モンメン!」
「ルッグルグ!」
「メーン! メー……ンッ!」
「タッコ! ワタッ!」
「メーン!」
エナジーボールを放つモンメンだが、軽々とかわされたばかりか、ワタッコの反撃のタネばくだんを受けてしまう。
「ター……コーーーッ!」
「とびはねる! 草タイプのモンメンが受ければダメージは大きい!」
「モンメン!」
「メン!」
「タッコ!?」
「上手い! コットンガードで防いだ!」
跳躍してから踏みつける飛行タイプの技、とびはねるをモンメンはコットンガードで防ぎ、弾いた。
「メメメメメッ!」
「タッコココッ!」
そして、弾かれた所を狙い、はっぱカッター。全弾命中してダメージを与える。
「やった! 決まった!」
「メ~ン……」
先程とは全く違うモンメンの動きのキレに、カールの髪型のモンメンは釘付けになる。
「このまま行けば、倒せるかもね」
「そう上手く行くと良いけどな……」
「どういうこと?」
「ワタッコは草タイプだけじゃなく、飛行タイプもあるんだ」
「そうか。モンメンのはっぱカッターやエナジーボールでは、ダメージが低い……」
草タイプも飛行タイプも、草タイプの技を半減させてしまう。つまり、普段よりもとても効きづらい。
一方、ワタッコも草タイプの技はモンメンには効きづらいが、飛行タイプの技のとびはねるがある。圧倒的に有利だ。
「けど、効果が全くない訳じゃないでしょ? だったら、攻撃して行けば大丈夫よ」
確かにその通りだ。しかし、ワタッコはロケット団に所属していたポケモン。
こなしてきた訓練や勝負の数はモンメンの比ではないはず。おそらく、簡単には勝てないとサトシもデントも予想していた。
「ワタタタタッ!」
「メン! メン! メメン!」
種の乱射を、モンメンは三次元動作ですべてかわす。
「ワー……タッ!」
「わたほうしだ!」
「受ければ、素早さが下がってしまう!」
「メーン!」
ワタッコが放ったまとわりつく綿を、モンメンは綿の盾で受け止める。よしと安心するモンメンだが、それが隙だった。
「――タッコーーーッ!」
「メーーーンッ!?」
直後、モンメンの上からワタッコが降下。とびはねるを叩き込み、地面に落として大きなダメージを与えた。
「ルッグ!?」
「とびはねる!」
「わたほうしを防いだ隙を、上から突いたのか!」
わたほうしはコットンガードを誘い、狭くなった視界の外から攻撃するための陽動だったのだ。
「モンメン、大丈夫か!?」
「メ、メン……!」
身体を起こすが、ダメージが大きい。おそらく、後一回とびはねるを受ければ確実に倒れてしまうだろう。あれだけは食らってはいけない。
「メメメメモッ!」
「タッコ!」
「かわしながらのとびはねる!」
「これを受けたら決まるわ!」
はっぱカッターをとびはねるの跳躍や浮遊の変則的な動きで避けつつ、攻撃を仕掛ける。
「――メン!」
モンメンは綿の盾でとびはねるをガード。ワタッコはその弾力で弾かれた――と思いきや、それや頭や手の綿を駆使して更に跳躍。
「――ワタッ!」
「更に飛んだ!?」
「これは不味い!」
「ターッコーーーッ!」
ワタッコは綿の壁を飛び越え、モンメンに止めの一撃を叩き込もうとする。
「メ、ン……!」
やばい。そう思うものの、意表を突かれたせいで身体が動かない。止めを刺そうとするワタッコが迫るも、どうしたら良いか分からない。
「――モンメン、最後まで諦めるな! 特訓を思い出すんだ!」
「ルッググーーーッ!」
そんな彼に、サトシとズルッグの言葉が響いた。そして、彼等との特訓を思い出す。相手をしっかりと見て――かわす。
「――メン!」
「――タッコ!?」
必殺の一撃を避けられ、逆に驚くワタッコ。その隙を、モンメンは技の訓練での言葉、狙いを定め、身体をしっかりと固定する。それを思い出しつつ、エナジーボールを放つ。
「メー……モッ!」
「タッコッ!」
続けてはっぱカッター。効果は薄くとも確実にダメージを与える。
「タ、タッコ……!」
「あれ? なんか様子が……?」
距離を取るワタッコだが、その呼吸が乱れ出した。
「ダメージによるもの……と言うより、あれは疲れ?」
「疲れ? けど、モンメンと戦ってからそんなに時間は経ってないわよ?」
長期戦になっているのならともかく、まだそんなに経っていないのに疲れるとは考えにくい。
なるなら、能力に劣るモンメンの方が先だろう。なのに、何故ワタッコの方が疲れ出したのか。
「――いや、確かにこのバトルではそんなに経っていない。けど、ワタッコは既に数多くのモンメン達を追い払っていたはずだ」
「そっか! それで蓄積した疲れがこのバトルで出始めて!」
「って事は……これはチャンスだ! モンメン、一気に決めろ!」
蓄積した疲労により、ワタッコの動きはかなり鈍っている。実力差は縮まったはずだ。
「メン! メメメメメッ!」
「タッコ! ――タコッ!」
最初のはっぱカッターをなんとかかわすワタッコだが、続けてのはっぱカッターは疲労により、諸に受ける。
「メー……モッ!」
「タッコーーーッ!」
モンメンは追撃にエナジーボール。これもまた直撃し、先のエナジーボールで特殊防御が低下したため、先程よりもダメージを与える。
「タ、タッコ……! ワターーーッ!」
「とびはねる!」
「最後の勝負に出たか!」
ワタッコは残る全ての力を振り、大きく飛び跳ねた。そして、落下の勢いで加速しながらモンメンに迫る。
「――メン!」
「上手い! 惹き付けてからのコットンガード!」
先程受けた経験を活かし、モンメンは惹き付けてからコットンガードを展開していた。これなら防げる、サトシ達はそう確信したが。
「――タッコ!」
「動きが変わった!?」
ワタッコはまた綿を使い、軌道を真下に変更。更に手の綿の弾力を活かし、跳ねる様に横からモンメンに接近する。
「不味い、当たる!」
「モンメン!」
絶体絶命の危機。しかし、モンメンは諦めない。展開したコットンガードに突っ込み、その弾力で後ろに移動。紙一重でとびはねるを避ける。
「タッコ!?」
「上手い! コットンガードで避けた!」
「決めろ、モンメン!」
「メン! メー……モーーーーーッ!!」
「ワターーーッ!!」
モンメンはありったけの草の力を集約させ、打ち出す。渾身のエナジーボールは見事ワタッコに命中する。
「タ、タッコ……」
「メーン!」
「やった、モンメンが勝った!」
「ピカピカー!」
「ルッグルッグ!」
「本当によく頑張ったよ!」
「モンメン、エライ!」
敗北一歩手前までに追い込まれながらも、勝利を勝ち取ったモンメンにサトシ達は喜ぶ。
「メメ~ン……。メ~ン!」
「メーン……」
そして、その勝利にあのカールの髪型のモンメンも釘付け。呼び掛けると、何故かイケメンの顔付きや声のモンメンが振り返り、顔を赤くする。
「メ、メ~ン……」
どうやら、奮闘に惚れたらしく、モンメンがイケメンに見えるのも恋の補正が掛かったのだろう。
「メーン」
「メ、メ~ン……」
そして、そんな状態で求愛されては断る訳もなく、二匹はカップルとなった。
「恋が実った! 彼女はモンメンのヴィンテージになったんだ!」
「あぁ、上手く行って良かったよ」
「本当ね。あたしも頑張った甲斐があったわ。あむっ」
「こういう時ぐらいは食べるの止めなよ……」
折角、あのモンメンの恋が成就したのにまだ食べるアイリスにデントはまた苦笑いだ。
「けど、こんな状態で他のモンメン達の恋は上手く行くかしら?」
一方で、ワタッコの出現によって求愛を荒らされてしまった点は心配だった。
「まぁ、ワタッコは倒れたし、モンメン達も一年に一度のこの機会を逃したりはしないだろう。これ以上余計な事をするわけにも行かないし、モンメン達に任せようよ」
「だよな」
心配であるが、これ以上介入するわけには行かない。後はモンメン達の頑張り次第だ。
「さて、後は虹の谷から旅立つのを見送ろうだけだけど」
「その前にワタッコの保護だな」
「よね」
ここで逃がす訳には行かない。モンメンの求愛の為にも、保護はしっかりせねばならない。
「ワタッコ」
「タ、タッコ……」
「悪いけど、保護されてもらうよ」
「……」
デントの言葉に悔しそうに俯きながらも、ワタッコは抵抗せずに大人しく出されたモンスターボールに入り、保護された。
「保護完了。じゃあ、虹の谷に行こうか」
「あぁ、行こうぜ」
「ルッグルッグー!」
「ここが虹の谷だよ」
「こりゃ、すごいな!」
急いで虹の谷に向かい、到着したサトシ達。まだ少し暗いが、それでも見える谷は相当大きいのが分かる。
その数分後、夜明けの日差しが現れ、ここが虹の谷と呼ばれる由縁を見る。
「大きな虹~!」
「それに光ってる!」
「そう。この谷は鉱石で出来ているんだ。だから、光を反射して虹を作り出し、また輝かせるのさ」
それこそ、ここが虹の谷と呼ばれる由縁なのである。また、その鉱石の光がダイヤモンドブリーズを作り出す要因でもあった。
「風!」
「来たぞ!」
「ダイヤモンドブリーズだ!」
風と共に、向こうから沢山のカップルになったモンメン達がやって来た。どうやら、モンメン達は相当頑張った様である。
「ズルッグ、モンメンの旅立ちだ。しっかりと見送ろうぜ!」
「ルッグ!」
夜明けの光、モンメン達の喜びの声、その中で吹く輝く風。正に名所と呼ばれるに相応しい光景だ。
「ステキな光景~」
「とても美しい旅立ちの光景だ……」
「メーン」
「メ~ン」
「ルッグ!」
サトシ達が感動し、見とれていると、その中でズルッグがモンメンとカップルになったカールの髪型のモンメンを発見。
「モンメン!」
サトシ達も気付き、ズルッグと一緒に追い掛ける。
「ルッグルッグー!」
「元気でな!」
「仲良くするのよ~!」
「ベストウイッシュ! 良い旅を!」
「メーン!」
限界まで走り、サトシ達はモンメンを見送って行った。
「言ったな」
「ルッグ」
「あたし達も、モンメン達に負けないように頑張らないとね」
「ライモンシティに行こう」
「あぁ!」
モンメンの恋も成就させ、次の目的地に向かってサトシ達は旅を再開した。
足りないと思った部分をちょっと加えました。