ポケットモンスター アナザーベストウイッシュ 作:ぐーたら提督
「これは……!?」
「なんだ!?」
近くにあったポケモンセンターに前の件のワタッコを預けた日の夜。
満天の星が輝く夜空の下、寝袋で熟睡していたサトシ達の耳に、森が騒ぐ音が響く。
サトシとデントが身体を直ぐに起こし、辺りを窺うと空に目が眩む程の光が突然出現。しかも、その形は円盤状だった。
「まさか!?」
「UFOだ!」
「ウソ!?」
遅れてアイリスも二人に駆け寄るが、その前にUFOは高速でジグザグに岩山の方に動いて去っていった。
「UFOって言ったけど!?」
「あぁ、すごい光ってて、ビューンってあっちに消えていったんだ!」
とは言え、今はもう見えないが。
「ふっ……。ここからはイッツ――サイエンスタイム!」
不意に、デントが不適な笑みを浮かべるとそう告げる。
「UFOの目撃情報には、見間違いが多い。しかし、先程の飛行物体の動きは流れ星や観測衛星ではあり得ないし、光が点滅してない所から飛行機でもない」
「よく分かったな」
「あぁ、僕はポケモンソムリエであると同時に、サイエンスソムリエでもあるからね」
「サイエンスソムリエ?」
ソムリエと付いている事から、ポケモンソムリエ同様、何らかの職業だろうかとサトシは考える。
「UFOやオカルト等の超常現象を科学的に解明する。それがサイエンスソムリエさ」
「なんか、まためんどくさいことになりそうな気が……」
「キバ……」
直感的に、アイリスはそう感じた。キバゴもだった。
「アイリスは今のUFO見なかったのかい?」
「はっきりとは……」
「でも、あれは間違いなくUFOだ! 宇宙人がいるんだ!」
「ふふっ、芳醇でアンサイエンティフィックなテイストがしてきたよ」
未知への好奇心に、デントは不敵な笑みを浮かべた。
「――あれ? なにかしら?」
「どうした、アイリス?」
「いや、なんか今、光が変な動きをしたような……」
「キバキバ」
「変な動きの光?」
夜空の光の一つが、奇妙な軌道を描いたのだ。サトシとデントが振り向くも、その光はもうない。
「もしかして、UFOの仲間!?」
「かなぁ……」
「何れにせよ、調査だよ」
今日は夜も遅いので、サトシ達はしっかりと寝ることにした。
翌日、サトシ達は近くにあったカフェで昨日のUFOについて情報収集。
ここがUFOがよく目撃される事で有名なエリア28である事や、東にはイモリ博士と言われる人物がいること。
彼がいる研究所で、見たことない宇宙を見る変な事件が起きる事を知る。
「そんなことが……」
「あぁ、それと三日ぐらい前だったな。夜空にこんなものが出てきたんだ」
そう言って、カフェのマスターは一枚の写真を取り出す。その写真には、あるものが写っていた。
「これは……文字?」
「みたいだな。ただ、どんな文字なのか全く分からないんだ」
「確かに、見たことがありませんね……」
サトシとアイリスは勿論、ある程度物知りなデントすら、その文字は初見だった。
「だから、最近ではUFOに何らかの変化が起きたのではとか、宇宙人が何らかの合図をしているとか。様々な憶測が出てくるようになってな。村で何が起きてるのやら」
やれやれと、店のマスターはため息を付いた。
情報収集も終わり、カフェから出たサトシ達は歩きながら聞いた話を整理。
謎を知るにはイモリ博士に会った方が良いとデントは判断し、そうすることにした。
「あれがイモリ博士がいる研究所だね」
「早く行きましょ」
「――リグ」
研究所に続く吊り橋を渡るサトシ達だが、その途中で彼等の脳裏にサトシが崩れた足場から落ちるビジョンが見えた。
「今、サトシが落ちる様な……!?」
「俺も見た!」
「あたしも!」
試しにサトシが見た場所を何回か叩く。するとその足場に亀裂が走り、割れて落下した。
「あ、危な……!」
「にしても、こうして落ちる場所があったって事は……」
「誰かが見せて、知らせてくれたんだ」
「でも、誰が?」
辺りを見渡すが、それを行なったらしい者の影はない。
「気にはなるけど……。とにかく、イモリ博士に会おう」
吊り橋を渡り、デントが研究所の扉を叩く。
「あの、イモリ博士はいらっしゃいますかー?」
「――なんじゃ? 儂に用か?」
扉が開き、灰髪の少しダル目をした中年の男性が出てきた。
「イモリ先生! あの、僕デントと言います。昨日、こっちに向かう二つのUFOを見たんです! 何か知りませんか?」
デントの言葉に、イモリはまるで見られてたかと言わんばかりに小さく舌打ちする。但し、光でサトシ達には見えないが。
「……いや、残念だが知らんな。さぁさぁ返――」
「この声は……デントくんかな?」
「えっ、この声……」
イモリは知らないと答え、デント達を追い返そうとする。その時、ある人物の声が彼の背後からし、近付いて来る。
「Nさん!」
「やぁ、サトシくん。アイリスくん。デントくん。やっとまた会えたね」
イモリの後ろから顔を出したのは、Nだった。ゾロア、ポカブ、イーブイの三匹もいる。
「ヒウンシティ以来だね。元気そうで何よりだよ。ちなみに、ボクとは今まで通りに接して欲しい」
「分かりました」
プラズマ団の王ではなく、一人の人間として前までの様に。サトシ達はNの提案に頷く。
「なんじゃ、お前さんの知り合いか?」
「はい」
「……ふむ」
Nの知り合いと知り、イモリは少し考えている様子だ。
「……まぁ、折角来たんじゃ。扉前でぐちぐちするぐらいなら、中でお茶ぐらい飲むと良い」
つまり、入れと言う事だ。サトシ達は中に入り、Nと一緒にソファーに座る。
「ところでNさんはどうしてここに?」
「この辺りに有名な博士がいると聞いてね。ボクは少し知りたがりなんだ」
なので、Nはイモリに会ってUFOや宇宙に関する知識を深めようと会いに来たのだ。
「そうして博士から色々と話を聞かせてもらっている内に、キミ達と再会出来たと言う訳さ」
「そんなに有名ではないがのう」
「いえいえ、そんなことはありませんよ! 僕、先生の本に感銘を受けました! UFOが実際に飛ぶための科学的アプローチが、実にリアルなテイストで。何より、先生の本は難しい科学や宇宙の内容を分かりやすく解説してくれるので、スッキリ、爽やかなテイストでした」
「へー、俺も読んでみようかな?」
デントの説明に、サトシは好奇心をそそられたようだ。
「ムリムリ、お子ちゃまなサトシじゃムリよ~」
「なんだとー?」
「茶化すのは良くないよ、アイリスくん。知りたいと言う気持ちは素直に応援すべきだ。知識は、人に新たな可能性や選択を与える。良い経験になると思うよ」
「あっ、はい……」
「ありがとうございます。やってみます」
アイリスに茶化されるも、Nに言われ機会が有れば読もうとサトシは決めた。
「ところで先生。あれから数年も経っていますし、熟成されたその後の研究についてお聞かせください!」
「ダークマターを遮断出来れば、何時でも飛べると言う理論じゃな」
「ダークマター?」
聞き慣れない単語に、サトシは新しいポケモンか何かかなと考えていた。
「ダークマターと言うのは、重力を発生させる物質だよ」
「また、この世界の四分の一を満たす物質でもある」
「その、ダークマターってのを遮断出来たらどうなるの?」
「無重力になって、円盤は浮くと言う訳さ。先生はダークマター遮断の方法を……」
「あぁ、出来るさ。まぁ、それは何時になるかは分からんがな。どんな理論も科学的に立証するには、長い時間が必要になる」
「そして、革新的な理論は最初冷やかな目で見られる。でも、前に進む為には笑われようとも実験を続けるしかない。ですよね?」
「そう言うことじゃ。でなければ、発展には繋がらん」
嘲笑や失敗を恐れず、突き進む。その確固たる想いを持つ彼もまた、立派な博士と言えるだろう。
「話は変わりますが、博士は最近UFO番組には出なくなりましたよね?」
「あんな下らん企画はもううんざりじゃ。儂の専門はUFOと言うより、実際の――」
続きを言おうとしたイモリや、サトシ達にまたイメージが写る。何かが爆発する光景だった。
「今の――」
「いかん!」
イモリは何が起きるのかを一早く理解し、急いで地下に移動。サトシ達も続く。
「これは……」
「俺が昨日見たUFOに似てる!」
「じゃあ、サトシやデントが見たのって……」
サトシ達が到着した部屋には、明らかにUFOと思える形状をした物体があった。
「多分、これが……。いや、それよりも博士は!?」
左右を見る。博士は左側で強烈な電光を放つ、何かの装置をパネルで操作していた。
「さっきイメージで爆発した物だ!」
「お前さん達! さっさとここから逃げろ!」
「博士を置いて逃げる訳には行きませんよ!」
サトシ達に気付き、デントは脱出を呼び掛ける。しかし、サトシ達もイモリを放って置く事が出来る訳もない。
「えぇい……! だったら、円盤に繋がっているエネルギーコードを外してくれ!」
「分かりました!」
サトシ達は一斉にエネルギーコードを引っ張るも、何かに固定されている様に動かない。
「引っこ抜けない!」
「この様子……! ロックが掛かってる! 外さないとダメだ!」
「じゃあ、直ぐに――」
「リググ!」
何かの声と共にガチャンとロックが外れ、エネルギーコードが引っこ抜ける。同時に電気の暴走も止まって行く。
「よし、これでもう大丈夫だ」
装置の供給も安全に止め、暴走は停止する。
「さっきの声は……」
「リグ」
また聞こえた声にサトシ達が振り向く。そこには薄い青緑の身体、長めの模様がある頭に緑色の瞳。手に赤、黄、緑の丸い突起がある宇宙人に見えそうな存在がいた。
「宇宙人!?」
「いや、これはリグレーだよ」
「歴としたポケモンだ」
「リグレー」
『リグレー、ブレインポケモン。砂漠の彼方から突然やって来た。その時まで、誰も見たことがないポケモン』
「――リグ」
リグレーはサトシ達から隠れるように、イモリの足の影に隠れた。
「大丈夫。この人達は悪い人じゃない」
「リグ……?」
その言葉に安心したのか、リグレーはイモリの抱き抱えられる。
「あっ、もしかしてさっきの爆発のイメージを見せたのは……」
「あぁ、こいつのおかげで惨事が免れて良かったわい」
「じゃあ、さっきの橋でもイメージを送って助けたのも……」
「ほう、そんなこともしてたのか?」
「リグ……」
コクンとリグレーは照れ臭そうに頷き、サトシ達は笑みを浮かべる。
「博士、何時からUFOを作っていたんですか? それに、そもそもどうして作ろうと?」
その後、イモリは大型円盤の検査をしている中、デントが彼にこれを造っている時期や切欠を聞いた。
「あぁ、それは確か……八歳頃だったな。夜空に突然動く光を見たんだ。元々宇宙が大好きだった儂は、その出来事を切欠に勉学に励み、宇宙工学の教授になったんだが……元からあった円盤型の飛行機、UFOを飛ばすと言う夢も捨てきれんくてな。学校を辞め、その研究に没頭し、小型円盤の飛行に成功するまでに至ったんじゃ」
「すごいじゃないですか!」
「えぇ、本当に」
個人でそこまで到達したのだ。充分に凄いと言える。
「そう言われる程でもない。君が本で読んだ様に、UFOが光の速さを超えるにはダークマター、つまり重力を完全に制御して初めて可能になる。現在完成したこれは、あくまでプロペラで動く円盤の形をした飛行機に過ぎん」
つまり、飛行機から円盤に形が変わっただけ。それ以上でもそれ以下でもないのだ。
「今はこの試作品のテストを重ねながら、この大型を制作に取り掛かっていると言う訳じゃ。君達が見たのも、これじゃろう。ただ、このエリア28では、昔からUFOの目撃情報がある。儂がここに来る以前からもな」
「じゃあ、あたしが見たのは本物のUFO……?」
「……いや、実はそれもUFOではないんじゃ」
「えっ、どういう事ですか? 博士が操作してたのは一つだけですよね?」
「あぁ、一つだけじゃ」
なのに、イモリはそのUFOは違う断言している。つまり、知っていると言うことだ。
「それを話す前に、先ずはリグレーと出会いを語ろう。半年前、何時もの様に試験運行していると、一時期に操作不能になってな。こいつに当たってしまったんじゃ。幸い、軽傷だったんで研究所で急いで手当をし、直ぐに治ってくれた。ただ、こいつは人見知りで臆病でな」
リグレーは目覚めた直後、イモリを見るとテレポートで近くにだが隠れていたのだ。
「それでも一緒にいる内に徐々に慣れていってな。一緒に生活する事となった。そんなある日、見たことない宇宙を見たんじゃ」
イモリはリグレーが宇宙に祖先がいると言う説を思い出し、もしかしてリグレーは宇宙に帰りたいのではと聞いてみたが、声や掌にある突起のパターンからでは分からなかった。
「リグレーの光の点滅パターンは儂以外にも多くの学者が研究をしていたが、解読出来た者はおらんかった」
「じゃあ、Nさんなら分かるんじゃ?」
「ん? どういう事じゃ?」
「Nさんはポケモンの声が分かるんです」
「ほう。それは本当か?」
「えぇ」
「面白いのう。なら、翻訳してくれんか?」
「構いません」
リグレーの気持ちを知る絶好の機会だ。イモリは頼み、Nは受けた。
「初めまして、リグレー。ボクはN。良ければ、少し話しないかい?」
「……リグ」
Nは優しく話し掛けるも、リグレーはイモリの背に隠れてしまう。どうやら、少し照れ臭い様だ。
「リグレーは恥ずかしいみたいです」
相手が話そうとしなければ、翻訳もしようがない。
「そうか。なら仕方ない」
無理をしてまでリグレーの気持ちを知ろうとは思わないので、イモリは翻訳を諦めた。
「話を少し戻そう。儂はリグレーがテレキネシスで物を浮かせるのを見て、ダークマターと関係しているのではと研究を始めた。誰にも騒がれる事なく、ひっそりと、な」
その中のある日の夕暮れの事をイモリは思い出す。人見知りなリグレーが手を自分の手と重ねてくれたのだ。その時は嬉しくて微笑んだものである。
「だから、村の者が来た時はリグレーは儂を守ろうとしてイメージを見せたじゃろうな」
「そう言うことですか」
「宇宙が大好きなイモリ博士とリグレーの運命的な出会いって感じね~」
「とても素敵だと思います」
「リグレー、イモリ博士に出会えて良かったな」
イモリとリグレーの出会い、今の関係にサトシ達は感銘を受ける。宇宙に関する者同士、会ったのは必然なのかもしれない。
「――運命的な出会い、か。あいつともそうなるかの」
「あいつ?」
「まぁ、お前さん達なら大丈夫じゃろう。さっきの光がUFOではないと言う儂の言葉の意味も含めてだが――お前さん、出てこい」
「……タミ」
イモリの言葉に、恐る恐るながら一匹のポケモンが姿を表した。
「あっ!?」
「このポケモンは……!」
表れたのは、紫色の星が重なった様な身体をし、赤い宝石の様なコアを持つポケモン、スターミーだった。
スターミーはサトシ達を見て、おずおずと不安そうにしている。おそらく、ヒウンシティで戦ったのと同個体だろう。
『スターミー、謎のポケモン。ヒトデマンの進化系。中心のコアと呼ばれる部分は七色に輝くが、それは宇宙と通信しているからだと言われている』
「リグー」
「タミ、タミタミー」
出てきたスターミーに、リグレーは近付く。二匹は掌やコアの光で何らかのやり取りらしきことをすると、笑い合う。
「イモリ博士、このスターミー……」
「あれは三日前の夜だったわい。円盤の試験運行をしていると、文字が突然出てきたな。その後にスターミーが円盤に近付いて来たんじゃ。じゃが、ダメージがあったんでな。そこで倒れてリグレーの時と同じ様に研究所に連れ帰って手当したんじゃよ」
どうやら、噂の文字はスターミーが出した物だった様だ。
「その後は、助けてくれた事や同じ宇宙に関するポケモンだからか直ぐに儂やリグレーと仲良くなってな。コアの点滅パターンや、円盤の参考にと動作について調べておるんじゃ」
「じゃあ、昨日あたしが見たUFOは」
「スターミーじゃよ。こいつには、さっきも言ったが、円盤の参考の為に動いてもらったり、他にも万一円盤が落下した時の回収も頼んでいるからの」
「タミ」
すみませんと、スターミーは申し訳なさそうに身体を前に振った。
「あの、イモリ博士はスターミーの事を知っているんですか?」
さっきの口振りからすると、イモリはスターミーの存在を知っている風にしか見えない。
「宇宙について調べる中で、見たことがあっての。ただ、どうしてイッシュにいたかは分からん」
つまり、イモリはスターミーの存在は知っているが、何故このイッシュにいるかまでは不明と言う事だ。おそらく、偶々来たぐらいにしか考えていないのだろう。
「……イモリ博士、ロケット団って知ってますか?」
「……」
「リグ?」
サトシの質問に、スターミーは言葉が詰まるも、仕方ない言いたげに大人しくしていた。リグレーが心配そうにするも、大丈夫と振る舞う。
「ロケット団……。確か、指名手配されていて、最近ヒウンシティで大きな被害を出した。ぐらいしか知らんな」
イモリは現在、人付き合いを避けている。なので、スターミーがロケット団のポケモンとまでは知らなかった。
「その被害を出したロケット団のポケモンの一体なんです。スターミーは」
「……スターミー。それは本当か?」
「……タミ」
スターミーは否定せず、コクリと頷いた。
「……そうか。お前さんと会った時の怪我も、それが原因か……。となると、UFOに近付いたのはロケット団に関係あるかと思ったから。文字はロケット団との連絡をするためのか?」
「……タミー」
スターミーは身体を縦に動かす。イモリの推測通り、UFOに接近したのはロケット団との関連があると思ったからで、文字はロケット団とコンタクトをするためのだ。
「ふーむ……まぁ、それについては良いかの」
「良いんですか?」
「さっきも言ったが、儂はロケット団をほとんど知らん。正直、聞いてもピンと来んわい」
「ですけど、何もしないままだとスターミーの為にはなりません。恨みを買ってますし……。最悪、イモリ博士がロケット団扱いされる恐れも……」
なので、このままでは遭遇した場合、ほぼ問答無用で連れ去られてしまうし、スターミーといるイモリ博士もロケット団と認識される可能性があった。
「……それは困るのう。スターミー、お前さんはロケット団の元に帰りたいのか? 気持ちを知りたい」
「リググ?」
誤認や強制を避けるため、スターミーの今の気持ちを、イモリもリグレーも確かめる。
「……」
イモリとリグレー。サトシ達からにも見つめられるスターミーだが、本人は何も語らない。
表情も無いため、顔から推測は出来ないが、何らかの迷い、そして葛藤を僅かながら全員が感じた。
「――ごめんなさーい」
「イモリ博士はいらっしゃいますか? 我々は宇宙局から参りました」
保護の必要がある。サトシ達がその可能性を考えた直後、ピンポンとチャイムの音が鳴り響いた。
「……む? また客か?」
緊迫した最中だが、対応しない訳にも行かない。イモリはリグレーとスターミーを隠し、サトシ達と一緒に外に出ると、そこには二人組の男女がいた。
「なんじゃと!? ダークマターの遮断方法を確立したと言うのか!?」
二人組の話を聞くと、なんと自分の研究の成果が発見されたとのことだった。それが本当なら、UFOの完成は一気に進む。イモリは当然驚愕する。
「その通り。我々は遂にダークマターを遮断する事に成功したのです」
「その成果を、この研究の第一人者であるイモリ博士にご覧戴こうと思いまして」
「是非見たい!」
「では早速。この装置は姿を隠しているポケモンでも電磁ネットで保護します」
「そして、保護したポケモンの能力を封じ込める事が出来ます」
「はぁ……。何故、そんなものを?」
ダークマターについての話の筈が、ポケモンの保護についてになっている。
しかも話を聞く限り、まるで保護と言うよりは捕縛に近いようなとイモリは感じたが、関係があるかもしれないので最後まで聞くことにした。
「更に、この機械を動かすと――人間は動けなくなります」
「――なっ!?」
二人組が最初に置いた板状のとは違う、四角い機械を転がす。それは縦に別れると、伸びた四つの棒の先端から電気の網の様な物が発生。サトシ達の動きを封じてしまう。
「――リグ!」
「甘い!」
装置はサトシ達だけでなく、リグレーにも迫る。リグレーはテレポートで咄嗟にかわすが、移動した先で板状の機械が出した電磁気のネットに絡み取られ、捕らえられてしまう。
「リグレー!」
「リグ! リググ!」
「先程ご説明したよう通り、この中ではポケモンは能力を一切使えません」
「お、お前達、一体何者じゃ!」
「お前達一体何者じゃと言われたら!」
「答えてあげよう、明日のため!」
「以下省略にゃ!」
変装を解いた二人組、ムサシとコジロウ、更に川底から気球と共に出てきたニャースが姿を現す。
「ロケット団! やっぱり、お前達か!」
「ピカピカ!」
「ロケット団!? さっき言っていた悪の組織の連中か!」
「ビンゴ」
「じゃあ、リグレーと更にピカチュウも頂いて行くぜ!」
「ピカピ!」
「ピカチュウ!」
コジロウがもう一つ装置を取り出し、ピカチュウを捕縛。ムサシと一緒に気球に乗る。
「更に……。コロモリ!」
「モリリ!」
「エアスラッシュで吊り橋を落としなさい!」
「モリ!」
出てきたコロモリは空気の刃を吊り橋の両端に当て、近道のための吊り橋を落下させた。
「じゃあ、さらばだ!」
「リグレー!」
追跡も困難にさせ、ロケット団はそのまま徹底していく。
「あの装置を何とかしないと……!」
「……」
「スターミー!」
追うためにも、装置を破壊しようとするサトシ達だが、そこにスターミーが出てきた。
「スターミー、頼む! これを壊し、リグレーとピカチュウを助けてくれ!」
「……」
「ど、どうしてしないの!?」
「まさか……!」
イモリの頼みを聞かない事から、この機に乗じてロケット団に戻ろうとしているのでは。サトシ達は不安と共にそう思ってしまう。
実際、これはスターミーにとって絶好のチャンスだ。サトシ達は動けず、ロケット団に戻るのはとても容易い。
「スターミー!」
「……!」
「どうか頼む! リグレーを助けてくれ! あいつは……儂にとって、大切な存在なんじゃ! ――お前と同じ様に!」
「タミ……」
半年前から今まで共に過ごしてきたリグレーは勿論、まだ三日間とは言え、スターミーもイモリにとっては、どちらも失いたくないかけがえのない存在。だからこそ、イモリはありったけの想いを込めて声を届けた。
「――タミッ!」
数秒間。その場にいた彼等にとってはその何倍もの時間を感じた時の中、スターミーは逡巡すると――高速で回転しながらの体当り。こうそくスピンで装置にぶつかって破壊し、サトシ達を解放した。
「スターミー……!」
「タミー!」
スターミーが選んだ答は、ロケット団との決別だった。
当初スターミーはリグレーを見て、珍しいポケモンだと思い、文字で気付いた仲間と共に連れ去り、ロケット団に戻るつもりだった。
しかし、この三日間でその考えは変わっていた。イモリに手当してもらった翌日、お前さんは宇宙から来たと言われて、その質問にスターミーは左右に振って分からないと答えた事。
それを切欠に、イモリが宇宙に行くために彼やリグレーとUFOの研究をする中、楽しさや暖かさを感じた事。
また、自分が他のポケモンより少し違う身体をしているのは、イモリの言う通り、祖先が宇宙から来たからではないか。 そこから、スターミーは一気に宇宙への興味にを抱くようになり、行ってみたいと思うようになった。
これが帰巣本能なのか、純粋な興味なのか。その答えを、そして叶うならその先の未知の世界をイモリやリグレーと共に知りたいと。だからこそ、ロケット団から足を洗うことを選んだのだ。
「タミ!」
「スターミー!」
スターミーはサトシ達を自由にすると、リグレーを助けるべく、ロケット団の後を追い出した。
「博士、僕達も急いで追いましょう!」
「けど、橋は落とされてるわよ!?」
「回り道だと時間が掛かるね……」
スターミーだけでは、ロケット団には勝てない。自分達も行く必要があるが、その方法がサトシ達には無かった。
「となれば……試作段階の円盤を使うしかない!」
あの円盤なら、橋が無かろうが関係なしに行ける。問題は、試作段階故の不安定さだが、今はそんなことは後回しだ。
「博士! 僕達も一緒に行かせて下さい!」
「いや、しかし……!」
「俺達もリグレーやスターミーを助けたいんです! それに、ピカチュウも!」
一緒に行こうとするサトシ達に、不安定な円盤に乗せるのを躊躇うイモリだが、サトシもまたピカチュウを連れ去られている事を思い出す。
「そうじゃったな。では、一緒に行こう!」
「急ぎましょう。方角を考えると……多分、追い付けるはずです」
「どういう意味ですか?」
「それは後回し。今は彼等を助けるのが先決だろう?」
今のNの台詞が気になるものの、彼の言う通り、優先すべきはピカチュウ達だ。
サトシ達は急いで地下室に移動し、大型の試作円盤に乗り込む。
「しっかりと掴まれ! 発進!」
イモリが操作すると、円盤は四枚のプロペラを高速回転させて飛び立った。
「よし、ピカチュウもリグレーもゲット!」
「このまま逃げ切るわよー!」
目的通り、二匹を捕まえたロケット団。このまま逃げ切ろうとしたその時だ。
「にゃ? なんか光――」
木々の一ヶ所がキランと輝いた直後――光沢を圧縮した閃光が放たれた。それはロケット団の気球の一部を抉り取り、落下させていく。
「今の、ラスターカノン!?」
「誰が!?」
「落ちていくにゃー!」
「……」
落下していく気球を見て、その原因である一匹はその後ろの円盤に乗る人物達を見て、方角を確かめながらロケット団を追い掛けていく。
「あー、もう! 誰の仕業よ!」
「そんなの後回しだろ!」
「さっさと逃げ――にゃ!?」
「スター!」
十数秒後、落ちたロケット団は装置に捕らえられたままのピカチュウとリグレーを運ぼうとする。しかし、直後にスターミーのこうそくスピンが迫り、咄嗟にかわした。
「タミ!」
「リグ!」
来てくれたスターミーに、リグレーは反応する。
「スターミー!?」
「まさか、ロケット団の?」
「だったら、話は早いにゃ。おみゃー、にゃー達と――」
「ター……ミーーーッ!」
「うわぁああぁ!?」
着地したスターミーを見て、自分達の仲間だとロケット団は判断。助力を求めようとするも、スターミーは高圧の水、ハイドロポンプを発射。彼等は辛うじて避けた。
「ちょ、何で攻撃すんのよ!」
「タミー! タミミー!」
「な、何て言っているんだ?」
「『自分はもう、ロケット団と決別する。そして、そのリグレーは友達だから離せ!』と言ってるにゃ!」
「あー、もー! やるしかないわね! 行きなさい、メガヤンマ! コロモリ!」
「ヤンヤン!」
「モリリ!」
スターミーは敵だと分かり、ムサシはメガヤンマとコロモリを繰り出す。
「お前らもだ、マスキッパ! デスマス!」
「デスマース!」
「キッパ! ――キッパー!」
「だああぁー! 今はそれどころじゃなーい! あいつと勝負!」
「タミー……?」
コジロウはデスマスとマスキッパを繰り出すも、毎度の事ながらマスキッパに噛み付かれる。スターミーもえーと……と冷や汗を流す中、コジロウは急いで離した。
「容赦しないわよ! メガヤンマ、ぎんいろのかぜ! コロモリ、エアスラッシュ!」
「マスキッパ、タネマシンガン! デスマス、シャドーボール!」
「ヤンヤン! ヤヤヤン!」
「コロ、モリーーーッ!」
「キパパパパパッ!」
「デース、マッ!」
銀の風、空気の刃、無数の種、漆黒の球を避けていくスターミーだが、数が多すぎる。かわしきれず、一つを受けると次々と受けていく。効果抜群の技もあり、ダメージは大きい。
「タミー!」
「リグー!」
技を受け、スターミーは地面に落下して転がり、リグレーは悲鳴を上げた。
「――タミ! タミ……タミ……!」
スターミーは強く踏ん張り体勢を立て直すも、ダメージから息は荒い。
「四対一でよく耐えるわね」
「だが、これで終わりだ!」
「――にゃ!?」
ロケット団がスターミーに止めを叩き込もうとした瞬間、スターミーの背後から先程ロケット団の気球を墜落したのと同じ光――ラスターカノンが放たれた。ロケット団は攻撃を止め、回避する。
「さ、さっきのと同じラスターカノンだ!」
「ど、どこのどいつなのよ!?」
「タ、タミ……?」
「リグレー! スターミー!」
「ピカチュウー!」
ラスターカノンを放ったのが誰なのかを知ろうと、スターミーが振り向こうとしたその時、プロペラの四重音と共に声が響く。大型円盤に乗ったサトシ達が追い付いたのだ。
「ジャリボーイ達にゃ!」
「あー、もー! こんな時に!」
「だったら、少し離れてもらうぜ! マスキッパ、デスマス、あれを落とせ! タネマシンガン! シャドーボール!」
「キー……パパパッ!」
「デースマース!」
「ま、不味い!」
サトシ達が乗る円盤を落とそうと、二つの技が迫る。直後、また光沢の光が放たれ、タネマシンガンとシャドーボールを相殺した。
「またラスターカノンにゃ!」
「誰が……?」
この場にいる一同がラスターカノンに戸惑い、苦い表情をする中、違う反応する者達がいた。
「――皆、降りるよ。掴まって」
「ゾロ」
「カブ!」
「ブイッ!」
「Nさん!?」
それはN達だ。彼等は円盤から飛び降り、Nの見事な体捌きで難なく着地する。
「お、おみゃー、確か夢の跡地で見た……!」
ニャースがNを思い出した後、Nは背後を向く。
「――ありがとう」
彼の声に応える様に、背後の森から重さを感じる足音と共に一匹のポケモンが出てきた。
「あれは……!?」
「ボスゴドラ!?」
出てきたポケモンは、分厚い鋼の鎧に包まれ、二本の角が特徴的の鉄鎧ポケモン、ボスゴドラだ。
ボスゴドラはドスドスと音を鳴らしながら歩くと、N達の前に移動し、ロケット団を睨み付ける。
「ありがとうね、ボスゴドラ」
「ゴド」
再度の礼に、ボスゴドラは気にするなと返す。この身で彼等を守り抜く。それが自分の役目なのだから。
「あ、あんた、何者よ!」
自分の組織のポケモンと親しげなNに、ムサシは何者かと質問する。
「キミ達だけが知らないで、こっちが知っているのは不公平だね。――ボクはN。プラズマ団の王」
「……プラズマ団の王!?」
戸惑っていたロケット団だが、Nがプラズマ団のトップと知り、驚愕した後皆で話し合う。
「お、おい、本当にあいつがプラズマ団のボスなのか?」
「とてもそうは見えないにゃ。ウソついてるかもしれないにゃ」
「だとしても、プラズマ団の連中がいるのよ。アイツ等の事を知るチャンスじゃない。ピカチュウやリグレーと一緒に連れていくわよ!」
プラズマ団のトップなのかの真偽よりも、Nを捕らえる事が重要だとムサシは言い、コジロウとニャースも賛同する。
「……って言うか、ボスゴドラ、アンタなんでソイツといるのよ!?」
早速、Nを捕らえようとしたロケット団だが、そこでボスゴドラと彼が一緒にいることに改めて驚く。
自分達を貶めたプラズマ団といるなど、あり得ないはずだから。
「その理由は簡単。彼はボクの仲間になったからだ」
「ゴド。ゴドドーラ」
「な、なんて……?」
「『もう、ロケット団にいるつもりは全くない。自分は彼と共に歩む』って言ってるにゃ……!」
「け、けど、ソイツらは――」
「ムダだよ」
あることを言おうとしたコジロウに、Nが入り込む。
「何を言おうが、彼はボクと共に歩む。第一、キミ達、ロケット団は略奪、調教、洗脳をする確かな『悪』だろう? それをしっかりと把握した彼が戻ると思うかい?」
「うっ、そ、そう言われると……」
「否定出来ないのにゃ……」
確かに自分達はれっきとした悪だ。それを出されると何も返せない。おまけにボスゴドラは強い意志が込もった瞳で睨んでくる。ロケット団は何を言っても無理だと悟った。
「……キミ、一つ聞いても良いかい?」
「……にゃーのことにゃ?」
「そう、キミ。夢の跡地の時も思ってたけど、キミはどうしてポケモンの声ではなく、人の声を話しているんだ? キミには立派な自身の声があるのに」
夢の跡地の時は事態の解決を優先したため後回しにし、直ぐに去ったので聞けなかった。
今はピカチュウとリグレーが捕まってはいるが、仲間がいるので大丈夫と考えており、ここで訪ねたのだ。
「そ、そんなこと言う必要はないにゃ」
「……そうか。なら、聞かないで置くよ」
少し言い淀むニャースに、事情があるのだろうと推測したNは詮索を止めた。
「じゃあ、もう一つ聞こう。キミ達はこのままロケット団に所属したままなのかい? キミ達が罪を償う気があるなら、ボク達と共に来ないか?」
Nの言葉に、ロケット団は勿論、サトシ達も驚愕から呆然とする。
「……ふーん、面白い事言うじゃない。だけど、断るわ」
「俺達は泣く子も黙るロケット団!」
「ロケット団以外に行くつもりなんて、微塵も無いのにゃ!」
「……残念だ」
提案を断られ、Nは心底残念な表情を浮かべた。
「話も終わりよ! ハブネーク、アンタも出なさい!」
「マネネ、お前もだ!」
「ハーブ!」
「マネー!」
ロケット団は残りの二匹も繰り出し、持てる戦力全てを投入する。
「ハブネーク、かみつく! メガヤンマ、はがねのつばさ! コロモリ、エアスラッシュ!」
「マネネ、サイケこうせん! マスキッパ、つるのむち! デスマス、シャドーボール!」
「ハーーーブッ!」
「ヤーーーンッ!」
「モリリリッ!」
「マ~ネ~ネ~~~ッ!」
「キー、パッパッ!」
「デース、マッ!」
「ボスゴドラ、てっぺき」
「ゴドッ!」
ロケット団のポケモン達による、六つの攻撃。それらに対し、ボスゴドラは防御を高めつつ、受けの構えを取る。
「どうよ! この一斉攻撃!」
「受ければ、一堪りも――」
「……ゴド!」
「――って、全然効いてないのにゃーーーっ!?」
六つの攻撃を受けたボスゴドラだが、物ともしていない様子だ。
「ボスゴドラ、ラスターカノン」
「待ってください、Nさん! 迂闊な攻撃は――」
「ゴードー……ラーーーッ!」
「ソーナンス!」
「ソー……ナンスーーーゥ!」
「なっ……!」
「ゴド!?」
反撃にラスターカノンをボスゴドラ。瞬間、ソーナンスが前に出るとミラーコートを展開。二三数えた後、増幅しながら反射される。
「ゴドッ!」
倍返しのラスターカノンを、ボスゴドラはまた防御体勢で受けた。高い防御力を持つものの、流石に自分の攻撃を倍返しで食らえばダメージは免れなかった。
「大丈夫かい、ボスゴドラ?」
「ゴドゴド」
問題ない、それよりもそっちこそ受けてないかとボスゴドラは聞く。
「キミが守ってくれたから、ボク達には怪我一つないよ」
「ゾロ、ゾロロ」
「カブブー」
「ブイブイ!」
N達は大丈夫と知り、ボスゴドラは良かったと微笑む。
「にしても、さっきのはミラーコートか」
「そーよー。ちなみに、ソーナンスはカウンターも出来るわよー?」
「下手に攻撃すると、そっちが危ないぜ?」
「……」
ソーナンスが物理と特殊、その両方を反射可能と知り、Nは少し考える。普通の攻撃は逆効果なら、違う方法で攻めるべきだ。
「――スターミー、ボクの指示に従ってくれるかい? ピカチュウやリグレーを助けるために」
「……タミ!」
策を考えたNは、スターミーに協力を求める。反撃と同時に救出も行なうつもりだ。スターミーは友達のためならと頷く。
「ありがとう。ボスゴドラ、もう一度ラスターカノンだ」
「……ゴド!」
ソーナンスがいながら同じ攻撃。しかし、Nには考えがあるのだろうと分かり、ボスゴドラはその指示に従う。
「ゴドー……ラーーーッ!」
「性懲りもなく、また攻撃? ソーナンス、やっちゃいなさい!」
「ソーーー……ナンスゥーーー!」
五度目のラスターカノンを、ソーナンスは堪えながら反射。倍返しになった技がN達に迫る。
「今だ、ボスゴドラ。――メタルバースト」
「ボースー……ゴドラーーーーーッ!!」
「ソーナンスーーーッ!?」
倍返しのラスターカノン。ボスゴドラは受け止めると、身体から強烈な衝撃波が発生。ソーナンスに命中し、吹き飛んだ。
「今だ、スターミー。こうそくスピン。装置を狙うんだ」
「タミッ! タミミミーーーッ!」
ソーナンスが吹き飛び、ロケット団の注意がその瞬間、スターミーがこうそくスピンを発動。素早く捕縛装置目掛けてぶつかり、破壊。ピカチュウとリグレーを解放する。
「そ、装置が壊されたにゃ!」
「ピカチュウ!」
「リグレー!」
「ピカ!」
「リグ!」
解放された二匹は、スターミーと共に素早くロケット団から離れ、N達の近くに移動する。
「技を更に返されるのは、流石に慣れてないだろう?」
「くうー!」
そう、Nの策は倍返しの技を利用し、メタルバーストで更なる反撃する事だった。
「今だ、ピカチュウ! 10まんボルト!」
「ボスゴドラ、ラスターカノン」
「スターミー、ハイドロポンプじゃ!」
「ピーカー……チューーーッ!!」
「ゴードーラーーーッ!!」
「ター……ミーーーッ!!」
そして、ロケット団に電撃、光沢の光、水流を発射。体勢が崩れたままのロケット団に止めの一撃を与えた。
「あーもー! 今回は上手く行きそうだったのにー!」
「しかも、ロケット団のポケモンに邪魔されてかー。はー……」
「まぁ、仕方ないにゃ。あいつらの道はあいつらが決める事にゃ」
「せーのー……やなかんじーーーーーっ!!」
「ソーーナンスッ!」
「マネネ~~~」
仲間であった彼等によって失敗したことをため息を溢しつつ、自分で離脱を決めた彼等の意志を尊重しながらロケット団は彼方へと消えていった。
「――ピカチュウ!」
「ピカ!」
ロケット団を片付け、サトシはN同様に飛び降りる。ピカチュウはそれを見て彼同様に駆け寄り、一緒に抱き着いた。
「リグレー、無事で何よりじゃ。スターミー、ありがとの」
「リーグ」
「ターミ」
一件落着し、サトシ達は一安心する。
「Nさん、このボスゴドラ……」
「ロケット団にいたけど、話し合う中でボクの同志になってくれたんだ。ここにいるのは、重さから橋が落ちる可能性が高かったから、ここにいたんだよ。……モンスターボールは無いからね」
「ゴド」
「そうだったんですか」
Nとしては一緒に行きたかったのだが、ボスゴドラの体重は三百キロ以上。なので、彼は自分から森の中で待ったのだ。
そして、そうして待っていると、ロケット団の気球が見えたため、撃墜したと言う訳だ。
(……かなり強い)
ボスゴドラを見つめるサトシ。ヒウンシティで戦った、ゲンガーやプテラと同等の実力者と見ていい。
(……あれ、ボスゴドラ?)
ボスゴドラに関して、ある人物、ベルが言っていた事をサトシは思い出した。もしかすると、このボスゴドラはそれと同個体かもしれない。
「――むっ!?」
それを考えていると、突然破砕音が聞こえた。発生源は大型円盤で、プロペラが壊れて行く。
「アイリス、デント、イモリ博士!」
「な、なにこれ!?」
「博士、これは……!」
「くっ、やはりまだ完成してなかったか!」
どうやら、大型円盤が動作不良に陥った様だ。破損の衝撃で大型円盤が傾き、そのまま滑るように落ちていく。
「皆!」
「ダメだ、間に合わない……!」
落下方向は、自分達とは正反対。これでは対応が追い付かない。
「――リグ!」
「――タミ!」
落ちていく大型円盤が、突然緑色の光に包まれる。リグレーのテレキネシスだ。
大型円盤を念動力で持ち上げようとしているのだが、重量が有りすぎてテレキネシスだけでは止めきれない。
だが、落下スピードは低下した。出来た時間に、スターミーが大型円盤の落ちる方向に移動すると、全力でこうそくスピン。
渾身の回転による空気の渦が発生し、大型円盤の落下を大幅に下げた。
「ゴド、ラ」
二匹の力により、かなりゆっくり下がる大型円盤の真下にボスゴドラが移動し、かなり重量がある円盤をしっかりと受け止め、地面にゆっくり降ろした。
「た、助かった~」
「か、間一髪……」
「ありがとの。リグレー、スターミー。それにボスゴドラ、じゃったか? お前さんもな」
「リググ」
「ターミー」
「ゴド」
リグレーとスターミーは嬉しそうに応え、ボスゴドラは礼儀正しく頷いた。
リグレーとピカチュウは救出し、イモリ博士達も無事助かった。漸く一件落着だ。
「すまんのう、ここまで運んで貰って」
「いえいえ」
その後、サトシ達は遠回りでかなり時間を掛けつつも、研究所に帰還。
大型円盤もボスゴドラがリグレーのサポートを受けながら運んだが、さっきのでかなり破損したようだ。
「イモリ博士、円盤が……」
「まぁ、壊れてしまったもんは仕方ない。また造るさ。宇宙に行くためにもな」
かなりの時間と労力を費やし、開発した大型円盤が壊れたのを目の当たりにしても、イモリ博士は凹たれなかった。
「やはり、宇宙を目指して開発を……」
「あぁ、リグレーが宇宙から来たポケモンだというのも、リグレーが宇宙に帰りたいと思っているのも儂の思い込みなのかも知れん。だが、その答は宇宙に行けば分かることだ」
だから、イモリは開発を続けるのだ。その答を確かめるべく。
「そして、スターミーも宇宙に行きたがっておるしな」
「タミー……」
嬉しさからか、照れ臭そうにスターミーは頭を掻いた。
「スターミーについては、どうしますか?」
「……まぁ、言うしかないの。で、ロケット団から足を洗った事を行動で示すしかないじゃろうて」
「タミー……」
「気にするな」
迷惑かけてすみませんと、スターミーは頭を下げるも、イモリは気にするなと返す。これもスターミーの為。仕方ない。
「リグレー、これからは少し騒がしい日々になるかもしれんが、改めて――」
「……」
宜しくなと言おうしたイモリと、サトシ達にあるイメージが流れ込む。最初はイモリと二人きりの、後半からはスターミーを加えた日々のだ。
「今のは、イモリ博士達の……?」
「でも、リグレーはどうしてそれを見せたの?」
「もしかすると、リグレーはイモリ博士やスターミーと一緒にいる方が良いのかもしれません」
「そうなのか、リグレー?」
リグレーはその問いに、掌の三つの突起物を光らせる。しかし、やはり意味は分からない。
「ふむ……。まぁ、だとしても……宇宙には行くさ。答、未知の世界を知りたいからの。その後、リグレーとスターミーが一緒にいたいと思うのなら、儂はそうするだけだ」
何にせよ、宇宙には行くようだ。それは宇宙が彼等の次に繋がる目標だからだろう。サトシ達はそう理解した。
「じゃあ、僕達はこれで失礼します」
「そっちも元気でな」
「リグー」
「タミー」
イモリ博士達の見送りを受け、サトシ達は研究所を後にする。
「サトシくん」
「何ですか、Nさん?」
その中には、N達もいた。
「少しの間、キミ達と一緒にいても良いかい?」
「俺は良いですよ」
「あたしもです」
「僕も構いません。だけど、Nさんは――」
今のポケモンとトレーナーの関係を変えようとする、プラズマ団。しかも王――即ち、トップだ。それなのに、自分達といても良いのだろうか。
「うん、キミ達とは考えは違う。でも、だからと言って一緒にいては行けない理由は無いだろう?」
「そうだぜ、デント。別にNさんがいても良いじゃないか」
「そうそう」
「まあね」
確かに思想が違うからと言って、一緒にいては行けない理由はなかった。
「じゃあ、一緒に!」
「ありがとう。あっ、サトシくん。空のモンスターボールを貰っても良いかい?」
「構いませんよ。どうぞ」
ボスゴドラ用だろう。サトシは空のモンスターボールをNに渡す。
そして、Nはそのモンスターボールをボスゴドラに当て、ゲットを済ませると直ぐに出す。
「モンスターボールは……」
「ボクが持って置く。一緒にいる最中、アララギ博士に会えたら渡して置きたいからね」
前は日単位で一緒にいることは無いため、モンスターボールをサトシに渡していたが、Nとしては可能ならアララギに直接渡したい。
今回はサトシ達としばらくいるため、離れるまでは自分が持つことにしたのだ。
「じゃあ、行きましょう」
「うん、行こう」
Nを加え、賑やかになったサトシ達は目標に向けて歩き出した。