ポケットモンスター アナザーベストウイッシュ   作:ぐーたら提督

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 サトシとシューティーの四回目のバトルです。また、ある観点の話もあります。ちなみに、オリジナルの設定も存在します。


四度目のライバルバトル

「じゃあ、これよりサトシとシューティーのバトルを行なう。ルールは入れ替えなしの三対三のバトル。先に二勝した方が勝ち」

 

「ナックラー、これからの為にもしっかりと見ておくんだ」

 

「ナッ」

 

 ナックラーは参加しないし、どの様に育てるかは考えている最中だが、今後の為にも見せて置いて損は無いはず。

 シューティーに言われ、ナックラーはしっかりと見ることにする。

 

「――始め!」

 

「クルミル、君に決めた!」

 

「さぁ行け、バニプッチ!」

 

「クルル!」

 

「バニ!」

 

 一回戦、サトシはクルミル、シューティーはバニプッチを繰り出す。

 

「サトシはクルミル、シューティーはバニプッチ」

 

「タイプで考えると、サトシくんの方が不利」

 

 クルミルは草と虫。バニプッチは氷。相性ではサトシが不利だ。

 

「クルミルか……」

 

 カレントタウン、ヒウンシティでのバトルでは見掛けず、ヒウンシティのあの騒動や、アーティのジム戦で見たポケモン。技については一通り覚えている。

 

「バニプッチ、こおりのつぶて!」

 

「クルミル、はっぱカッター!」

 

「プッチーーーッ!」

 

「クルルーーーッ!」

 

 氷の礫、草の刃が放たれ、激突して消えていく。

 

「クルミル、いとをはく!」

 

「クルーーーッ!」

 

「かわせ、れいとうビームだ!」

 

「バーニーーーッ!」

 

「糸で防げ!」

 

「クルゥ!」

 

 発射された糸を、バニプッチはかわすと冷気の光線を発射。それをクルミルは糸でガード。糸はれいとうビームで氷結し、ボロボロに崩れた。

 

「クルミル、たいあたり!」

 

「クルー――」

 

「バニプッチ、おどろかすだ!」

 

「バニッ!」

 

「クルルッ!?」

 

 体当たりを仕掛けようとしたクルミルに、バニプッチは驚かす。

 

「れいとうビーム!」

 

「バーニーーーッ!」

 

「クルルッ!」

 

「クルミル!」

 

 驚かされたクルミルに、れいとうビームが直撃。効果抜群の大きなダメージを与えた。

 

「反撃だ、クルミル! いとをはく!」

 

「――クルルーーーッ!」

 

「バニッ!?」

 

 弱点の技を受けながらも、クルミルは即座に体勢を立て直し、糸を吐いてバニプッチに付ける。

 

「一気に移動! むしくい!」

 

「クルルルルッ!」

 

「バニニニニーーーッ!」

 

 糸を使って移動するとクルミルはむしくいを叩き込み、バニプッチは悶え苦しむ。

 

「離れろ、クルミル!」

 

「クル!」

 

 ある程度のむしくいを叩き込むと、バニプッチを蹴ってクルミルは距離を取る。

 

「バニプッチ、こおりのつぶて!」

 

「バニプーーーッ!」

 

「進め! クルミル!」

 

「クルッ!」

 

 弱点を突く無数の氷の礫。しかし、クルミルは全く怯まずにかわしながら進む。

 

「苦手な氷タイプの技なのに、躊躇なく向かって来た!?」

 

「たいあたり!」

 

「クルッ!」

 

「バニィ!」

 

 全て避けきり、クルミルは体当たり。バニプッチは受けて吹き飛ぶ。

 

「気が強いだろ? 俺のクルミル?」

 

「クルル」

 

「君と似てるね」

 

 不利であろうと、躊躇うことなく戦う気の強さ。サトシと似ているとシューティーは感じた。

 

「こおりのつぶて!」

 

「バーニ!」

 

「クルミル――バインドシールド!」

 

「――クルル!」

 

 迫る氷の礫に、一瞬の間を置いてからクルミルは地面に背を付けて回転しながらいとをはく。粘着性の糸が渦状に展開され、氷の礫をくっ付ける。

 

「まだだ、回転!」

 

「クルル!」

 

「プッチチ!」

 

 更に氷が付いた事で、ハンマー投げに近い状態になり、身体に負荷が掛かるものの、回転が早くなる。遠心力が加わり、付着した氷がバニプッチに直撃した。

 

「これは……!」

 

「アーティさんのバインドシールド!」

 

「サトシくんも使えたのか」

 

 今のはアーティのハハコモリが使用した、防御と拘束を同時に行なう戦術、バインドシールド。

 アーティが考案した戦術だが、その切欠はサトシのカウンターシールド。また、クルミルも使うための技がある。出来ても不思議ではない。

 

「普通に撃ってもダメか」

 

 糸に絡み取られてしまう。他の技にするか、工夫する必要がある。

 

「――バニプッチ、こおりのつぶて! 但し、撃つな!」

 

「バニ!」

 

 氷の礫を展開するも、その場で待機させていた。

 

「えっ、なんで発射しない――」

 

「エコーボイス! こおりのつぶてを打ち出せ!」

 

「バニプーーーッ!」

 

「ジャンプだ、クルミル!」

 

「クルッ!」

 

 歌で打ち出された氷の礫は高速で進む。クルミルはジャンプでかわす。

 

「れいとうビーム!」

 

「バニーーーッ!」

 

「いとをはく! 着地しろ!」

 

「クルッ!」

 

「たいあたり!」

 

 れいとうビームを糸による移動で避けると、素早く体当たりを仕掛ける。

 

「バニプッチ、おどろかす!」

 

「クルミル、強気でこらえろ!」

 

「プッチ!」

 

「クルル!」

 

「バ、バニッ!?」

 

「き、気迫で無理矢理抑えた!?」

 

 バニプッチはおどろかすを放つも、クルミルはなんと持ち前の気の強さで怯みを強引に抑えた。

 

「むしくい!」

 

「クルルルルルッ!」

 

「バニーーーーーッ!」

 

 数回噛み付くと、クルミルはちょっとだけ離れた。止めの一撃を放つために。

 

「バニプッチ――」

 

 近距離ならおどろかす。しかし、さっきの様に対処されてしまえば、ピンチを広げてしまう。

 ならば、残る技で対処するしかないが、何れも近距離では間に合わない。回避しかなかったが、それを考える僅な間が隙だった。

 

「フルパワーのはっぱカッター!」

 

「クルルルルルーーーーーッ!!」

 

「バニニニーーーッ!!」

 

 近距離での大量の葉の刃。それはバニプッチの全身に急所を突きつつ命中。大量のぱっぱカッターを受け、吹き飛んだバニプッチは地面に落下。

 

「バニー……」

 

「バニプッチ、戦闘不能」

 

「よし、一勝!」

 

「クルル!」

 

「くっ……!」

 

「ナ~……」

 

 サトシとクルミルは喜び、負けたことにシューティーとナックラーは苦い表情だ。

 

「ふー……」

 

 シューティーはバニプッチを戻し、軽く深呼吸。格上とは言え、敗けはやはり悔しいが、それを受け止めねば前には進めない。

 

「次だ。さぁ行け、ドッコラー!」

 

「ポカブ、君に決めた!」

 

「ドッコ!」

 

「ポカァ!」

 

「次はドッコラー対ポカブ」

 

「今度は相性に有利不利は無いね」

 

 ドッコラーは格闘。ポカブは炎。タイプ上は有利不利はない。

 

「――始め!」

 

「ドッコラー、こわいかお!」

 

「ポカブ、ニトロチャージ!」

 

「コラァ!」

 

「ポカポカ……カーブーーーッ!」

 

 厳つい表情に気迫で速さを下げるドッコラーだが、ポカブは炎を纏う突撃を放つ。

 

「木材で防げ!」

 

「ドコッ!」

 

 ドッコラーはニトロチャージを木材でガード。激突の反発でポカブは後退する。

 

「よくガードした」

 

「ドコ。……!」

 

「どうし――」

 

 たと言おうとしたシューティーに、一部が焦げた木材が映る。ニトロチャージで焼けたのだろう。

 

(……炎技は、ガードしない方が良いか)

 

 防ぎ続けた場合、木材が燃えてしまう可能性があった。そうなると思わぬダメージは受けるし、戦闘能力は半減。

 炎技には注意しながら、シューティーは次の指示を考える。

 

(普通か、単発か……)

 

 もう片方はまだ見せてないため、不意は突ける。しかし、この一度切りの手を直ぐに明かすのも勿体無い。先ずは普通からが基本だろう。

 

「がんせきふうじ!」

 

「ドー、コッ!」

 

「ポカブ、ねっぷうで逸らせ!」

 

「カー、ブーーーッ!」

 

 ドッコラーは弱点を突く複数の岩を発射。ポカブは高熱の風を放ち、岩の軌道をずらした。

 

「ねっぷうでガード――いや……!」

 

 防いだだけではない。ねっぷうの一部が流動する風の為にこちらに向かって来ていた。対応しようにも間に合わず、ドッコラーは熱風を受ける。

 

「ドッコ……!」

 

 ドッコラーは咄嗟に木材でガードはしたようだが、防御出来たのは木材で遮った部分だけ。残りは食らい、熱さとダメージで表情を歪める。

 

「大丈夫か?」

 

「ドコドコ!」

 

「よし」

 

 幸い、がんせきふうじとの激突でねっぷうの威力は下がっていた。ダメージは思ったより少ない。

 

「接近だ、ドッコラー! 木材を振り回しながらばくれつパンチ!」

 

「ドッコ!」

 

「ポカブ、かわせ!」

 

「ポカ! ポカポカ!」

 

 剛力で振り回される木材、時折来る高威力の拳をポカブはしっかりとかわしていく。

 

「――今だ、ローキック!」

 

「ドッコ!」

 

「カブ!」

 

「ポカブ!」

 

 数度の攻撃の後、ドッコラーは足を鋭く回し、下段蹴りをポカブを当てる。

 

「上手い。ばくれつパンチや木材で腕に注意を惹き付けた所で下からのローキック」

 

「良いコンビネーションです」

 

 技と戦法、その二つを上手く組み合わせた見事な一撃だ。

 

「追撃だ、ドッコラー! 今度はローキックから!」

 

 先のローキックでポカブの速さは下がっている。追撃にとドッコラーはローキックからのコンボを仕掛ける。

 

「――ポカブ、かみつく! 木材に向かって!」

 

「ポカ! ポカカ……!」

 

「な、なに!?」

 

「ドコッ!?」

 

 ローキックを避けた次の木材。それに向かってポカブは噛み付き、踏ん張って受け止める。

 

「放してたいあたり!」

 

「ポカ! ブーーーッ!」

 

「ドコォ!」

 

 ポカブは噛み付きを止め、素早い身のこなしで距離を詰めてたいあたり。ドッコラーを吹き飛ばす。

 

「ニトロチャージ!」

 

「かわせ!」

 

「カブカブーーーッ!」

 

「ドコ!」

 

 ポカブは更にニトロチャージを放つも、ドッコラーにかわされる。

 

「ニトロチャージを続けろ!」

 

「回避に専念!」

 

 連続で突撃するポカブと、回避するドッコラー。しかし、技の効果でポカブが下げたスピードを取り戻し、徐々に上げていく為、ドッコラーは次第に回避しづらくなる。

 

「がんせきふうじ! 回りに!」

 

「ドココ!」

 

 ドッコラーは技をギリギリで避けると、周囲に岩石を落とす。

 

「ポカブ、ねっぷう!」

 

「カー、ブッ!」

 

「ドッコラー、防御!」

 

「ドコ!」

 

 岩を前に技を切り替え、ポカブはねっぷうを吐き出す。その一撃を、ドッコラーは身体を力を込めて受け止める。

 

「ドコ……!」

 

「火傷になった!」

 

「普通は攻撃力が下がるけど、あのドッコラーの特性はこんじょう。寧ろ、攻撃力は増している」

 

 ねっぷうで火傷になったドッコラーだが、特性こんじょうにより、攻撃力は上がっていた。

 

「今だ! 岩を打ち出せ、ドッコラー!」

 

「ドッコ、ラァ!」

 

「ポカ!? カブゥ!」

 

 増した力で、ドッコラーは周りの岩を木材で打ち出す。高速で飛ばされた岩は意表を突いた事もあり、ポカブに命中する。

 

「ドッコラー、がんせきふうじ!」

 

「ドココ!」

 

「ポカブ、かわせ!」

 

「カブカブ!」

 

 更にがんせきふうじを放つ。ポカブは攻撃を受けた後ながらもしっかりとかわしていく。

 

「そこだ! もう一度打て!」

 

「ドッコ!」

 

「カブーーーッ!?」

 

「ポカブ!」

 

 がんせきふうじが落下する中、先程落とした岩を再度打つ。その岩は落ちていく岩にぶつかって軌道を変え、ポカブに効果抜群の大ダメージを与えた。

 

「こんじょうで高まった攻撃力で、効果抜群のがんせきふうじ」

 

「これ、かなりヤバいんじゃ……!」

 

「だけど――まだ諦めてないよ」

 

「カブゥ……!」

 

 かなりのピンチだが、ポカブはしっかりと立ち上がる。

 

「まだ倒れてないか……! だけど、このままこんじょうで高まった力で押し切る!」

 

「シューティー! ピンチでパワーアップするのは――こっちも同じだぜ!」

 

「ポカーーーッ!」

 

 傷付いたポカブの身体から、炎の様なオーラが漂い出す。それを見て、シューティーは気付いた。ドッコラー同様、あちらもパワーアップする特性があることに。

 

「もうか……!」

 

「ポカブ、ねっぷう!」

 

「ポーカーブーーーッ!」

 

「がんせきふうじ! 前に重ねるんだ!」

 

「ドココッ!」

 

 灼熱の風に、岩の壁が激突。岩を吹き飛ばし、熱風と共にドッコラーにダメージを与えた。

 

「ドコォ!」

 

「ニトロチャージ!」

 

「迎撃や回避は無理か……! ドッコラー、防御だ!」

 

「カブカブ……カブーーーッ!」

 

「ドコ! ドココ……!」

 

 ニトロチャージを、ドッコラーは木材で防御。しかし、強化された炎が木材の大半を焼失させてしまう。

 

「木材が……!」

 

「今だ、たいあたり!」

 

「ポカッ、ブーーーーーッ!!」

 

「ドッコォ!!」

 

 強く踏ん張り、渾身の力を込めて体当たり。鳩尾に食らい、吹き飛んだドッコラーはドサッと後ろに倒れた。

 

「ド、コ……」

 

「ドッコラー、戦闘不能。ポカブの勝ち!」

 

「二連勝!」

 

「カーブ!」

 

「連敗……!」

 

「ナナ~……」

 

 二戦目も負け、シューティーもだがナックラーも心底悔しそうだ。

 

「もう決まっちゃった」

 

「一戦目、二戦目共にサトシの勝ち。つまり、もうシューティーの敗けになった訳だけど……」

 

「――サトシ。既に決まった勝負だけど、三戦目も受けてくれないか?」

 

「あぁ、良いぜ」

 

 もう決まったが、まだ勝負するというシューティーの提案をサトシは受けた。

 

「まだやる気みたいだね」

 

 勝敗が決しながらも、まだ戦おうとするシューティーにNは少し苦い表情だが、これは二人のバトル。サトシも了承してるので、口出しはしない。

 

「……あと、もう一つ。君の次のポケモンを決めても良いか?」

 

「シューティーが?」

 

「――頼む」

 

 選択を決めるシューティーの頼みに、サトシは少し悩むが、向こうは頭を下げている。

 既に負けて悔しいだろうに、更に増す行動も取った。

 

「分かった。シューティーが選んでくれ」

 

「ありがとう」

 

 サトシは心境を汲み、提案を受け入れた。彼の言葉にシューティーはホッとする。

 

「何を出せば良いんだ?」

 

「ツタージャにしてほしい」

 

「OK! 行け、ツタージャ!」

 

「タジャ」

 

 シューティーが選択した三戦目のポケモンは、ツタージャだった。

 

「選んだのがツタージャって事は……ハトーボーやヒトモシかしら?」

 

「まぁ、相性を考えればその二体のどちらかだろうね」

 

 有利にするなら氷タイプのバニプッチもいるが、既に倒れている。となると、ハトーボーかヒトモシになるだろう。

 

「さぁ行け――プルリル!」

 

「プルル!」

 

「……えっ、プルリル!?」

 

 有利な二体のどちらかと思いきや、シューティーが繰り出したのは逆に不利な水タイプがあるプルリルだった。

 この選択には、アイリスやデントは勿論、サトシやNも驚いていた。

 

「な、なんで、プルリルを?」

 

「分からないけど……。何か狙いがあるのは確かだろうね」

 

 確かプルリルは草タイプの弱点を突ける技があったが、それだけとは考えにくい。他の何らかの思惑があるのだろう。

 

「えーと……間違ってないよな?」

 

「あぁ、僕の三体目はプルリルだ」

 

「分かった」

 

 選び間違いではないと分かり、サトシは受けて立つ。

 

「プルリル、ヘドロばくだん!」

 

「プル、リルーーーッ!」

 

「ツタージャ、かわしながら近付け!」

 

「――タジャ」

 

 プルリルは圧縮したヘドロを放つも、ツタージャは軽やかにかわしながら前に進む。

 

「リーフブレード!」

 

「プルリル、ガードだ!」

 

「ター、ジャ!」

 

「リル! プル……!」

 

 ツタージャの草の力の尾を、プルリルは両腕で防御。効果抜群でかなりのダメージを受け、顔を歪める。

 

「……タジャ?」

 

「のろわれボディ。仕方ないな」

 

 ツタージャの身体から、黒い靄が浮かぶ。プルリルの特性、のろわれボディが発動したのだ。

 とは言え、攻める以上は避けられないので仕方ないし、ツタージャなら他の技でも効果抜群を狙える。差ほど問題ない。

 

(――よし、上手く行った)

 

 上手くのろわれボディが発動し、リーフブレードを封じれた。ここから本命に繋げる。

 

「技を封じられても、ガンガン行くぜ! ツタージャ、つるのムチ!」

 

「ター、ジャッジャッ!」

 

「プルリル、再度ガード!」

 

「リル!」

 

 しなやかにしなる蔓。これもまた効果抜群の技に、プルリルは防御体勢を取る。

 

「そして――蔓を掴め!」

 

「リル!」

 

 蔓を受けた瞬間、プルリルは痛みに耐えながらその蔓を腕で掴む。

 

「引っ張れ!」

 

「リルル!」

 

「タジャ!?」

 

「ツタージャ!」

 

 プルリルは蔓を引っ張り、ツタージャを引き寄せた。

 

「今だ、からみつく!」

 

「リルリル!」

 

「タジャ……!」

 

 そして、引き寄せたツタージャの身体に腕で絡み付いてダメージを与える。

 

「プルリル、そのままたきのぼりだ!」

 

「リル! リールーーーッ!」

 

「タジャ!」

 

 プルリルはツタージャを捕らえた体勢のまま、水を纏うと一気に上昇。降下するとツタージャを地面に叩き付け、自分は距離を取った。

 

「まだだ、バブルこうせん!」

 

「リルルルッ!」

 

「ツタージャ、かわせ!」

 

「タジャ……、タジャジャ。――タジャッ!」

 

 更にプルリルは無数の泡を発射。ツタージャは咄嗟にかわそうとするも、たきのぼりの効果で怯んで受けてしまい、素早さが再度下がる。

 

「一気に追いつめる! ヘドロばくだん!」

 

「プルルルルッ!」

 

「つるのムチで叩き落とせ!」

 

「ター、ジャジャッ!」

 

 圧縮したヘドロを複数発射するも、ツタージャは蔓で全てを叩き落とした。

 

「くっ、決めきれなかったか……!」

 

「なるほど。敢えてつるのムチを受け止め、それを逆に利用してからみつく」

 

「そして、からみつくの効果で相手の素早さを下げつつ、たきのぼりに繋げる。そこに更にバブルこうせんで追撃し、素早さを更に低下。止めに動きが大きく鈍った所でヘドロばくだんか」

 

「その為に、リーフブレードをのろわれボディで封じたんでしょうね」

 

 先ずはリーフブレードを封じる事で、攻撃を制限させ、つるのムチを誘導させたのだろう。

 正に肉を切らせて骨を断つ戦法。しっかりと練りに練ったこの策に、デントもNもシューティーの頑張りを内心で誉めていた。

 

「――ただ、彼女が抑えてなければ失敗に終わってる所か、寧ろ有利になってるけどね」

 

「……? Nさん、今何か言いました?」

 

「いや?」

 

「……」

 

 Nが何か呟いた様な気がして、アイリスが尋ねたものの、本人はそう答えたので彼女は気にも止めなかった。

 その様子に、デントはNを見るものの、数秒するとサトシとシューティーのバトルに意識を戻す。

 

「やるな、シューティー」

 

「どういたしまして」

 

 サトシにそう言われたものの、当の本人は最後の一撃に失敗して相当悔しいが。

 

「――プルリル、バブルこうせん!」

 

「プルルルルッ!」

 

 仕上げは逃したが、ツタージャのダメージは少なくないはず。

 先ずは、動きが鈍ったツタージャにバブルこうせんで牽制する。

 

「ツタージャ、つるのムチでまた落とせ!」

 

「ター、ジャッ!」

 

「今だ、接近!」

 

 無数の泡に、ツタージャはまた蔓で対応。すると、プルリルが接近してきた。

 

「蔓を掴んで引っ張れ!」

 

「リル!」

 

 蔓を掴み、ツタージャを引っ張る。シューティーはバブルこうせんでつるのムチを誘発させ、再度からみつくのコンボを狙っていたのだ。

 

「プルリル、からみつく!」

 

「リル――」

 

「今だ、ツタージャ! 下に向かってたつまき!」

 

「タージャ!」

 

「リルル!?」

 

 プルリルが腕を絡めようとしたその一瞬。そのタイミングに、ツタージャが真下へたつまきを放つ。細長い竜巻は二匹を真上に押し飛ばす。

 また、その勢いでプルリルはツタージャを手放し、二匹は落下していく。

 

「ツタージャ、つるのムチ!」

 

「タージャジャッ!」

 

「リルッ!」

 

 ツタージャは空中でつるのムチをプルリルに食らわせる。プルリルはそれにより、倒れた体勢で落下。対してツタージャはしっかりと着地する。

 

「決めろ、ツタージャ! おいうち!」

 

「ター、ジャ!!」

 

「リルーーーッ!!」

 

 そして、倒れた体勢のプルリルに、ツタージャが追撃によって威力が増した蹴りを叩き込む。

 

「リ、ル……」

 

「プルリル!」

 

「プルリル、戦闘不能。ツタージャの勝ち」

 

 蹴りを受けたプルリルは吹き飛んだ後、目を回して地面に転がる。戦闘不能である。

 そもそも、先のリーフブレード、つるのムチで大きなダメージを受けていたのだ。限界が近かった。

 

「よし、全勝!」

 

「――タジャ」

 

 サトシは全勝に喜び、ツタージャはふぅと軽くため息を付いた。

 

「戻れ、プルリル。良くやってくれた」

 

 シューティーは苦手なタイプながらも善戦してくれたプルリルを戻し、労いの言葉を掛けた。

 

「バトルはここまで。結果は3対0でサトシの勝ち」

 

「……完敗か」

 

「ナ~……」

 

「……情けないところを見せて悪かったね」

 

「ナ~。ナ~ナ~!」

 

 謝るシューティーにナックラーはそんなことないと頭を振り、サトシを膨れっ面で睨む。

 

「あ、あれ? 睨まれてる?」

 

「……こら、サトシに怒るのは筋違いだ」

 

「ナ~……」

 

 シューティーに注意され、ナックラーは渋々怒りを収めた。

 

「……にしても、こんなんじゃあ、あの人まではまだまだ遠いか」

 

 一勝どころか、一つ引き分けにすることにすら出来なかった。距離を改めて実感させられる。

 

「あの人? 誰だ?」

 

 一方、サトシはシューティーが言ったあの人と呼ばれる人物が気になるらしく、尋ねていた。

 

「……まぁ、別に隠す理由もないか。――アデクさん。その人が僕の目標だ」

 

「アデクさん?」

 

 その名前に、カントーから来たサトシだけが疑問符を浮かべていた。

 

「アデクさんって……。もしかして、このイッシュ地方のチャンピオンの?」

 

「えぇ。僕は過去に一度、アデクさんに直接会っているんです」

 

「アデクさんと!?」

 

 チャンピオンと直接会った事に、アイリスを筆頭に残り三人も驚く。

 

「その時の出会いを切欠に、目標にした訳だね」

 

「そういう事です。……まぁ、こんな有り様ではまだまだですが」

 

「完敗だもんね~」

 

「結果だけを見ればそうなるね」

 

 しかし、カレントタウン、ヒウンシティと比べれば、間違いなく進歩している。

 何しろ、カレントでは五対五ながら三匹しか出させてない上、倒せたのは一匹のみ。ヒウンシティでは、押せたのは序盤だけ。

 この二つから考えれば、今回のバトルは何れもかなり戦えていた。彼やポケモン達の成長度合いが分かる。

 

「……」

 

 Nはシューティーの成長速度を評価していたが、その一方でデントはある懸念を抱いていた。速く進歩するが故の弊害、壁にぶち当たる事を。

 

「シューティー」

 

「……なんですか、デントさん?」

 

「一歩一歩、大事にね」

 

「……分かりました」

 

 よく分からないが、アドバイスなのだろうとシューティーは頷いた。

 

「――じゃあ、僕はここで失礼するよ」

 

「もう行くのか?」

 

「ナックラーの件も終わった。それにさっき言った様に、僕の最終目標はアデクさん。君に完敗した今のままじゃ、到底辿り着けやしない。もっともっと鍛えないとね」

 

「そっか」

 

「あぁ、それと――」

 

「それと?」

 

「必ず、君に勝つ」

 

「――楽しみにしてるぜ」

 

 シューティーとサトシ。二人は互いに不敵な笑みを浮かべる。

 

「さぁ、行くよ。ナックラー」

 

「ナ~ク」

 

「ナックラーは出したままにするのか?」

 

「生まれたばかりだしね。しばらくは色々と見せた方が良いと思う」

 

 赤子なので、色々と世界を見せようとシューティーは考えていた。

 

「確かにそうよね~。けど、大丈夫?」

 

「……何が?」

 

「だって、ナックラーはイッシュにいないポケモンでしょ? 連れてたら、ロケット団と勘違いされたりしない?」

 

「確かにその可能性はなくはないね……」

 

 ナックラーは育て屋から託されたとは言え、見たことないポケモンの存在は色々と誤解を招く可能性があった。

 

「なら、アララギ博士に助言を頂いたらどうだい?」

 

「まぁ、それが最善ですね。そうします」

 

 自分だけでは解決しない。次のポケモンセンターでアララギにどうするか助言してもらうしかないだろう。

 

「では、改めて。――また」

 

「あぁ、またな」

 

 サトシ達に挨拶を済ませ、シューティーはナックラーを連れて歩き出す。目標を果たすために。

 そして、サトシ達もまた次の街に向けて旅を再開した。

 

 

 

 

 

「では、今年のイッシュリーグの開催は延びる。と言うことで宜しいでしょうか」

 

「うむ。ジムの一つが実質的に暫し機能しないだけでなく、ヒウンシティの復興による様々な影響を考えると、今年のジムバッジの収集には時間が掛かるだろう」

 

「となると、今年のイッシュリーグの開催もそれに合わせ、ある程度延ばすのが最適と言えましょう」

 

「他のリーグと合わせれなくなりますが、今回の事態を考えると納得して頂けるだろう」

 

「特にカントーは、ですな」

 

 とある会議室。数人の人物とソウリュウシティのジムリーダー、シャガが今後のリーグについて話し合っている。

 シャガと話しているのは、ポケモンリーグやジムリーダーに関しての役員達であり、シャガから聞いたヒウンシティの件から延期の結論を出していた。

 

「では、この事を直ぐにマスコミに報告しましょう」

 

「うむ、リーグに関してはそれで良いだろう。ただ、他にも気にする事がある」

 

「一つは逃走したロケット団のポケモン達。もう一つは、プラズマ団と言われる団体。シャガよ、この連中について分かっていることは?」

 

「分かっているのは、彼等はポケモンと人々が平等になるために活動し始めた。トップがNと言う名の若い青年である。後は主なメンバーと思われる人物と名前。この三つです」

 

「ふむ、そして彼等にロケット団のポケモン達の保護を認めたとのことだが……。それは些か軽率なのではないか?」

「しかし、ロケット団のポケモン達の数は数千。とてもですが、我々だけで何とかなる数ではありません。他の地方でも預けれるなら話は別でしょうが……」

 

「それは難しいな……」

 

 犯罪組織のポケモンを預かるなど、早々出来ない。また、運んでいる最中に脱走の恐れもあるし、カントーならそのまま戻る可能性も高いなど、リスクが多い。

 

「シャガにより、プラズマ団に関しては、彼等は定期的な視察を行い、報告を受けると聞いてます。安心しては?」

 

「まぁ、シャガの言う通り、我々だけでは手に余るか……。では、この事に関してはしばらく様子見を。勿論、視察や報告の上ででだ」

 

 異論無しと、役員達は全員頷いた。

 

「では、解散」

 

 そのまま今回の会談も終了し、シャガは退室する。

 

「おぉ、シャガ。話は終わってたか?」

 

「終わった。遅いぞ、アデク」

 

 退室したシャガに、一人の男性が話し掛ける。橙色のライオンの鬣のような髪型に束ねた後ろ髪。

 無精髭や丈がボロボロになったズボンや、羽織ったマント。サンダルにも下駄にも見える靴、首と腰に数珠のようにぶら下げているモンスターボールと、仙人みたいにも見えそう格好。

 名は、アデク。シューティーが憧れるこのイッシュ地方のリーグチャンピオンである。

 

「いやいや、すまんのう。急用だというから急いで来たが、遅れてもうた」

 

「まぁ、いつも旅をしているお前の事だ。早く来れた方だろう」

 

 会議中には出来なかったが、今日中に事情や用件を話せるので良しとしよう。

 

「で、何があった?」

 

「うむ。それはな――」

 

 ヒウンシティの一件や、その影響で多数の他地方のポケモンがこのイッシュに散らばった事や、リーグが延期になった事を説明する。

 

「なるほどのう。随分と厄介な事になった訳か」

 

「そうだ。ちなみに、お前以外の四人――四天王には既に話してある」

 

 リーグにおいて、チャレンジャーを試す最高クラスの実力者である四人、四天王。

 その四人は会議の前にシャガから話を聞き、渡し物も受け取ると直ぐに出ていた。なので、今は既にここを立ち去った上、会議にも参加していない。

 そもそも会議には、ジムリーダーの一応の代表である自分だけで十分だからだ。

 

「そして――受け取れ」

 

「おっと」

 

 シャガからの、複数のモンスターボールをアデクは受け取る。

 

「これは?」

 

「此度の件で保護することになったポケモンの内の数体。ちなみに、一体は相当な実力の持ち主だ。タイプ的にはアーティでも良かったのだが、性格でお前が適任だと判断した」

 

「ふむ。預かって置けば良いのか?」

 

「あぁ。ただ、行く先では行事があれば参加させろ。足を洗った事を証明したい」

 

「分かった。そう言えば、シャガ。今年のソウリュウシティで行われる『英雄祭』はどうするのだ? 延期するのか?」

 

 英雄際。イッシュに昔からある、建国の英雄を祝う祭だ。

 今は大体、その年のポケモンリーグの前に開催され、力試しや景気付けに多くのトレーナーが参加する行事になっている。

 

「いや、祭は何時も通りに行なう。何でもかんでも延期となると、イッシュの人々に不安を与える恐れがある」

 

「それもそうじゃの」

 

 確かに全て延期にしても、イッシュの人々に不安がらせるだけだろう。こんな時だからこそ、何時も通りに行なっても事件があっても大丈夫だと言う姿勢を出来る限り見せるべきだ。

 

「それに不幸中の幸いだが、理想の英雄も現れてくれた。英雄祭に参加すれば、これ以上なく盛り上がるだろう」

 

「確か、サトシと言う名の少年だったな? どんな少年だ?」

 

「活発で、ピカチュウを肩に乗せた黒髪の帽子を被った少年だ。力量、心構えも良い」

 

 今後会う場合もあるだろう。その時に備え、アデクはサトシの情報を聞いておく。

 

「ところで、アデク。今年の英雄祭のゲストだが――」

 

「うむ。シンオウの彼女に決まっている。祭の一つ、『白竜祭』の事を考えると、彼女が適任と言えよう」

 

「その事だが、もう一人か二人ほど、特別なゲストを呼べぬか? それも、ジムリーダーや四天王ではない、高い実力を持つ一般トレーナーを」

 

「大きな刺激を与え、イッシュリーグに向けて活性化させるのが狙いか?」

 

「正解だ」

 

 また一般トレーナーなのは、ジムリーダーや四天王だと、そう簡単に遠く離れたイッシュには来れないと言う理由もある。

 

「やって見よう。ただ、そう簡単にそんな人材が見付かるかわからんが」

 

「その時は仕方あるまい。だが、やらないよりはマシだ」

 

「じゃの。では、早速聞くとするかのう。番号は……これじゃな」

 

 ポケモンギアを扱い、ある番号を押す。携帯電話の音がしばらく続く。どうやら、電波が少し届きにくい場所にいるようだが、それでも繋がった。

 

「もしもし、アデクじゃが――」

 

 

 

 

 

「ふむふむ。なるほど……」

 

「ガー?」

 

 イッシュではない、遠く離れたある地方のとある遺跡。

 非常に長く、左目を隠した金髪に、見える右目から銀色の瞳。黒を基調としたコート。耳の上には楕円の房の髪留めらしきものを付けた美女が、壁画を見ていた。

 隣には、ヒレと一体化した爪と、藍色の鮫と二足歩行の恐竜が合わさった様なポケモンが護衛の様に立っている。

 

「となると――あら?」

 

 壁画から内容を推測していた女性だが、ポケモンギアが鳴っている事に気付き、調査を一旦中断。

 

「この番号は……アデクさんね」

 

 誰かわかると女性は電波が良さそうな場所に移動し、電話に出る。

 

「もしもし、アデクさん? 何のようですか?」

 

『いやいや、済まんな。シロナさん』

 

 女性の名は、シロナ。サトシが前に旅をしたシンオウ地方のリーグチャンピオンだ。

 

『一つ頼みたい事があってこちらから電話させてもらった』

 

「頼みたい事とは?」

 

『うむ。その前にこちらの事情について話して置く必要がある。聞いてくれ』

 

 シロナはアデクから説明を受け、ヒウンシティの惨事について情報を得る。

 

『――と言うことじゃ。まぁ、わしも話に聞いただけだが』

 

「そんなことが……お悔やみ申し上げます」

 

『ありがとの』

 

「にしても――まさか、こんな時に聞けるなんてね」

 

 アデクの説明の中で聞いた、ある人物の名にシロナは微笑みを浮かべる。奇妙な縁があるものだ。

 

『ん? どういう意味かな?』

 

「いえいえ、こっちの話です」

 

『そうか。では、本題じゃが――』

 

 アデクは続けて、『英雄祭』に関して自分以外のゲストを呼んで欲しい事を話す。

 

『なので、貴女以外のゲスト、それも一般のトレーナーを呼べないかと考えてな』

 

「なるほど。そう言う理由なら受けます。ただ、こちらからも一つ提案が」

 

『何かな?』

 

「ポケモンコンテスト。これは前に話した事がありますね?」

 

『確か、ポケモンの強さではなく、魅力を引き出して競うイベントだったの。そして、それに参加する人々をコーディネーターと呼ぶとか』

 

 イッシュ地方には、ポケモンコンテストと言う文化が存在しないため、アデクはシロナとの話し合いで初めて知った。

 

「えぇ、それも祭の前イベントとして開催すると言うのはどうでしょう。面白くなると思います」

 

『確かに。良い刺激にはなりそうじゃ。しかし、貴女はコンテストには詳しいか?』

 

「残念ながら。ですので、コーディネーターを呼びたいと思います」

 

『つまり、トレーナーとコーディネーターを一人ずつ連れていきたいと』

 

「はい。それに、コーディネーターの魅力さを引き出す故の強さも見れます」

 

 コーディネーターはトレーナーと違い、ポケモンの魅力を引き出す者達。しかし、だからと言って彼等が弱いかと言われると答えは否。魅力を引き出す彼等ならではの強さがあるからだ。

 

『ふむふむ、それはとても面白そうじゃ。しかし、コーディネーターの方は当てはあるかのう』

 

「一人います」

 

『それは良かった。では、人材に関しては貴女に任せるとしよう』

 

「任せてください。では」

 

 予定も終わり、電話が切れる。

 

「さて、先ずはあの子ね」

 

 ただ、シロナはもう一人を含めて番号を知らないため、ある人物を経由することにする。

 その人物とは、ナナカマド博士。シンオウのポケモン博士であり、オーキドの師である人物だ。

 

「ナナカマド博士」

 

『む? シロナか? 何のようだ?』

 

「ちょっと話したい人物がいまして」

 

『誰だ?』

 

「二人いるのですが――」

 

 シロナはその二人の名前を出す。

 

『分かった。今は余裕がある。直ぐにやって見よう』

 

「助かります」

 

 一旦電話を切り、来るまで待つ。十数分後、ポケモンギアが鳴った。思いの外、早く分かった様だ。

 

『シロナ、番号が分かった。そちらに伝える』

 

 二つの番号を憶え、ナナカマドとの電話が終わる。そして、直ぐに次の、『彼女』に対しての電話を掛けた。

 

 

 

 

「その感じ、その感じ!」

 

「ポッチャ」

 

 黄色の髪留めがある、モンスターボールの模様の白いニット帽を被り、髪は紺色の後ろに結んだ一房だけ他より長く、黒いノースリーブにピンクのミニスカート。

 他には短い濃いピンク色のマフラーを巻いたり、左手首には赤いもの、ポケッチを填めた少女が、小さな嘴と丸い可愛らしい瞳の子供のペンギンの様な姿をしたポケモンに指示を出していた。

 そのポケモンの名前は、ペンギンポケモン、ポッチャマと言う。シンオウで新人トレーナーが託される三匹の内の一匹で、少女の最初の相棒だ。

 

「バブルこうせん! そこからつつく!」

 

「ポッチャチャ~! ――ポッチャ~~~!」

 

 自分で放った泡を、ポッチャマは嘴でつつく。泡はパァンと綺麗に弾ける。

 

「うんうん! 今日もバッチリ!」

 

「ポッチャ!」

 

 少女の名はヒカリ。シンオウでサトシが旅をしていた時、一緒にいた仲間の一人であり、コーディネーターである。

 

「じゃあ、少し休憩ね」

 

「チャマ」

 

 しばらく練習していたので、少し休憩。すると、一人の女性――ヒカリの母親、アヤコが話し掛ける。

 

「ヒカリ、電話よ」

 

「誰から?」

 

「凄い人から。とりあえず出て」

 

「は~い」

 

 練習を一旦切り上げ、電話に出る。

 

『はーい、ヒカリちゃん』

 

「この声……シロナさん!?」

 

『久しぶり』

 

 シロナとは何度か会った事はあるので知り合いとは言えるが、それでもリーグチャンピオンから直接電話され、ヒカリは驚く。

 

「あの、何のようで……?」

 

『ヒカリちゃん、あなたに頼みたい事が有るの。――イッシュ地方に行ってみない?』

 

 

 

 

 

「これでこっちは終わり。次は――『彼』ね」

 

 コーディネーターであるヒカリへの許可も貰った。次はトレーナー。シロナは微笑みながら、『彼』への電話を繋げる。

 

「――かみなりパンチ!」

 

「――アイアンヘッド!」

 

「エレキ、ブルーーーーーッ!!」

 

「レージスチルーーー」

 

 同時刻。周りの景色からは不自然なピラミッドの建物の中にあるバトルフィールド。

 雷の拳と鋼の頭突き。その二つの技がぶつかり合い、大爆発を起こす。煙が晴れると少し経ってからバトルフィールドに立つ二匹のポケモンの内の片方が倒れた。

 

「――良くやった」

 

「キブル!」

 

 トレーナーの言葉に、大きな黄色の体躯に二本の長い尻尾、丸い瞳。ある程度規則的な黒の模様が持つポケモンが、満身創痍ながらコクリと頷く。

 

「――見事。リベンジを果たしたな」

 

 相手トレーナーの勝ち、正確には再挑戦での勝利に、茶髪に探検家の格好の威厳を感じさせる男性がそう告げる。

 

「しっかりと鍛え直しました。自分を含めて」

 

 男性にそう返したのは、薄紫の男性に似た髪型をし、青と黒の服装の少年だ。

 

「自分の道をしかと確かめたが故の勝利と言う事か。――受け取れ」

 

 男性がBの刻印が刻まれたバッジの様な物を差し出し、少年はしっかりと掴む。

 

「この後はどうする?」

 

「次のリーグの旅に戻ります」

 

「あれとのリベンジは果たさんか?」

 

「どこにいるか分かりません。それに、あいつとは自分から会わずとも何れ相応しい時に戦います。果たすのはその時です」

 

「そうか。今後も精進するが良い」

 

「はい。戻れ」

 

「キブル」

 

 少年は男性に丁寧に頭を下げると、手持ちのポケモンを戻してから建物を後にする。その少し後、ポケモンギアが鳴り響く。

 

『ハロー』

 

「……シロナさん?」

 

 自分の兄かと思いながら出ると、ポケモンギアからシロナの声が出た事に少年が驚く。

 

『驚いたかしら?』

 

「……まぁ」

 

 いきなりリーグチャンピオンに電話を掛けられたのだ。驚かない方が変だ。

 

「それで何のようでしょうか?」

 

『あなたにちょっと話があるの。きっと良い経験になると思うわよ。――シンジ君』

 

 少年の名は、シンジ。サトシがシンオウで出会ったライバルである。

 

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