ポケットモンスター アナザーベストウイッシュ   作:ぐーたら提督

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 長くなったので、二話に分けます。


湖の戦い

「ズルッグ、きあいだま!」

 

「ルッ、グーーーッ!」

 

「ガマガーーーッ!」

 

 ズルッグが闘気の球を投げるも、ガマガルが発射した高圧の水流に簡単に突破。反対にズルッグにダメージを与える。

 

「ルッグ!」

 

「ズルッグ! 今のはハイドロポンプか……!」

 

 水タイプ、最高クラスの技だ。きあいだまもかなりの威力の技だが、基礎能力の差で突破されてしまった。

 

「ブイイ!」

 

「キババ!」

 

「ガマガ!」

 

 ズルッグが攻撃された怒りに、イーブイとキバゴがガマガルに迫る。しかし、ガマガルは舌を伸ばして泥弾を発射。二匹にカウンターで食らわせる。

 

「技の切り返しが速い! 強いな……!」

 

 オタマロ達、ヌオーのリーダーだけあり、このガマガルの実力は中々に高い。

 

「やられっぱなしじゃないぜ! ズルッグ、にらみつける!」

 

「――ルッグ!」

 

「ガマガ!?」

 

「イーブイ、たいあたり! キバゴ、ひっかく!」

 

「ブイブイッ!」

 

「キババババッ!」

 

「ガマガ!」

 

 ズルッグが接近してにらみつけるで防御を下げ、そこにイーブイとキバゴがたいあたりとひっかくでダメージを与える。

 

「ガマガーーーッ!」

 

「ルッグ!」

 

「ブイッ!」

 

「キバッ!」

 

「ヘドロウェーブ!」

 

 ガマガルは身体から毒々しい紫色の波が周囲に発射。ズルッグ、イーブイ、キバゴにダメージを与えて吹き飛ばす。

 

「周りに攻撃する技まであるのか……!」

 

 やはり、相当手強い。ズルッグ達では三体がかりでも勝てるかどうかのレベルだ。

 

「まだやれるか、皆?」

 

「ルッググ!」

 

「ブイブイ!」

 

「キババ!」

 

 強敵だが、負けるわけには行かない。サトシ達に次の攻防に入る。

 

「オタタ!」

 

「マロロ!」

 

「ワルビ!」

 

 オタマロ達の無数の水流に対し、ワルビルはストーンエッジで迎え撃つ。個人としてはワルビルの方が上。

 しかし、数で上回れれば、当然威力でも上回れてしまう。相殺仕切れない水流がワルビルを襲う。威力が減衰しても、効果抜群で小さくないダメージを受ける。

 

「ワルビ……!」

 

 相性は不利。数でも負けている。かなりのピンチだが、そこで師の言葉を思い出す。

 数で負けているなら、先ずは一匹ずつ確実に叩いて戦力を削ぐ。危機であろうと焦らず、冷静になって攻撃を的確に避けて、攻撃を当てる。

 その教えを実行する為の基礎は、まだ未完成かもしれないが日々の特訓で培って来た。やってやれないことはない筈だ。

 何より、この程度乗り越えない様なら、ピカチュウとサトシに勝つなど遠い。勝たねばならないのだ。

 

「ルビ!」

 

 ワルビルはあなをほるで穴を掘り、地中に潜る。

 

「ワル!」

 

「オタ!?」

 

「マロ!?」

 

 地中でワルビルは土を強く蹴る。じならしの振動が発生し、オタマロ達を襲う。

 

「ワルビ!」

 

「タマッ!」

 

 更にワルビルは地中から出ると、一匹のオタマロにかみつく。ダメージを与え、そのオタマロを放って別のオタマロにぶつける。

 

「ワール、ビーーーッ!」

 

 ワルビルはストーンエッジを展開。ダメージを与えたオタマロに全弾ぶつけ、戦闘不能にして戦力を一つ奪う。

 

「ワルビッ」

 

 次を倒すべく、ワルビルはオタマロ達に迫る。

 

「ヌーオーーーッ」

 

「マッギョ!」

 

 マッギョとヌオー。二匹は互いにどろばくだんを発射。二つの泥はぶつかり合い、消滅する。

 

「マッギョ、ねっとうとかで攻撃は出来る?」

 

「マッギョギョ」

 

「出来ないのかい?」

 

「ギョギョギョ」

 

 デントの言葉に、マッギョは左右に振る。

 

「出来るけど、使わない……。――いや、使えない?」

 

 とすると、その理由は自ずと限られる。水タイプの技はタイプで半減は可能だが、無効は出来ない。

 

「――『ちょすい』か『よびみず』」

 

 この二つは特性で、互いに水タイプを吸収して回復、力を高める効果がある。

 ヌオーがこの内のどちらかを持っているなら、確かに水タイプの攻撃は無意味だ。

 

「なら、電気技かな」

 

 マッギョは電気と地面の珍しい複合タイプ。ヌオーは外見から水タイプと推測出来る。電気技で攻めようとするが。

 

 

「マッギョ」

 

 それもダメだと、マッギョは身体を振る。

 

「電気が効かない……。地面タイプがあるのか」

 

 水だけでなく、電気も効果がない。マッギョには厳しい相手だ。

 

「ヌーーーッ」

 

「ねっとうだ! かわすんだ!」

 

「マッギョー!」

 

 ヌオーが放つねっとうを、マッギョは高く跳んでかわす。更にそのまま落下していく。とびはねるだ。

 

「ヌー」

 

「どろばくだんだ!」

 

 落ちてくるマッギョに、ヌオーは泥を発射する。空中でまともに動けないマッギョは当たる。と思われたが。

 

「――ギョギョ!」

 

「おぉ!」

 

「ヌッ!?」

 

 マッギョは身体を僅かに動かし、何と空中を滑る様にどろばくだんを避けていく。平たい身体による空気抵抗を活かした、見事な回避だ。

 

「ギョ!」

 

「ヌー!」

 

 そのまま、高速で動くマッギョはヌオーに激突して吹き飛ばした。

 

「ヌ、ヌー!」

 

「マッギョ!」

 

 ヌオーはかいりきで反撃しようとしたが、マッギョはまたとびはねるで回避しつつ反撃を狙う。

 

「ヌー」

 

 先程の動きから予想し、ヌオーは左右にどろばくだんをばらまく。

 

「――ギョ」

 

「ヌッ!?」

 

 しかし、マッギョは今度は平たい身体をそのままにし、最大にした空気抵抗でゆっくりと落下。動きを予想した放たれたどろばくだんは外れる。

 

「マッギョギョ!」

 

「ヌー。――オー」

 

 マッギョは素早く身体を傾け、滑るようにぶつかってヌオーにまたダメージを与える。

 しかし、ヌオーもやられっぱなしではなく、踏ん張るとかいりきをマッギョに叩き込む。

 

「ギョ!」

 

「マッギョ! 大丈夫かい?」

 

「マッギョ」

 

 中々の一撃を受けたマッギョだが、この程度ではやられない。ヌオーに鋭い眼差しを向けた。

 

「ズルッグ、ずつき! イーブイ、たいあたり! キバゴ、りゅうのいかり!」

 

「ルッグーーーッ!」

 

「ブイ~~~ッ!」

 

「ガマガマ!」

 

 先に放たれたりゅうのいかり、その後のずつきやたいあたりをガマガルは次々とかわす。

 

「ガマガ」

 

「来るぞ、キバゴ!」

 

 ガマガルはキバゴに接近し――途中で停止する。

 

「ガマガーーーッ!」

 

「ルッグ!」

 

「ブイ~!」

 

「キバッ!」

 

 そして、射程内に入れた事を確認し、ガマガルはヘドロウェーブを発射。三匹に纏めてダメージを与えた。

 

「近付くフリをして、皆に纏めて攻撃か……! だけど、やられっぱなしじゃないぜ! イーブイ、しっぽをふる! ズルッグ、ずつき! キバゴ、ひっかく!」

 

「ブイッ! ブブブブイッ!」

 

「ガマガマガマ!?」

 

 イーブイがいち早くガマガルに肉薄し、尻尾を何度も何度も叩き付けて防御力を下げる。

 

「ルッグーーーッ!」

 

「キババババ!」

 

 次にズルッグがずつきで怯ませ、その間にキバゴがひっかく。ガマガルに反撃のダメージを与える。

 

「ガマガ……!」

 

 思ったよりもやるなと、ガマガルは表情を歪ませる。

 

「皆、まだ行けるか?」

 

「ルッグ!」

 

「ブイッ!」

 

「キ~バ!」

 

 かなり追い詰められているも、三匹はまだガマガルと戦う意志を微塵も無くしていない。

 

「……ガマ」

 

 これ以上、厄介な事にしない為にも一気に決める必要がある。ガマガルはそう判断した。

 

「ガマガーーーッ!」

 

「ズルッグ、きあいだま! キバゴ、りゅうのいかり!」

 

「ズル、ッグーーーッ!」

 

「キ~バ~ゴ~~~!」

 

 ガマガルのハイドロポンプに、ズルッグのきあいだま、キバゴのりゅうのいかりが激突。三つの技は相殺され、煙が視界を遮る。

 

「イーブイ、ガマガルにしっぽをふる――」

 

「ガマガ!」

 

「なに!?」

 

「ブイッ!?」

 

 攻撃後を狙い、しっぽをふるを仕掛けようとしたが、その前にガマガルが接近してきた。

 

「ガマガーーーッ!」

 

「ちょうおんぱ!?」

 

 接近したガマガルは、口から不快な音波を放つ。

 

「ブイッ!」

 

「キバッ!」

 

「ルッグ!?」

 

 ちょうおんぱに、イーブイは咄嗟に逃げてと告げ、次にキバゴがズルッグを突き飛ばす。

 

「ブ、イ……?」

 

「キ、バ……?」

 

 イーブイとキバゴの動きでズルッグを守られたが、その代償に二匹は混乱してしまう。

 

「ズルッグ、ガマガルに攻撃させるな! ずつき!」

 

「ズル、ッグ!」

 

「ルッ!」

 

「なっ!」

 

「ルッグ!?」

 

「ガマー……!」

 

 二匹を守るべく、ズルッグがずつきを仕掛けるも、ガマガルはジャンプで避け、更に空中からのマッドショットで二匹を倒そうとする。

 

 

 

 

「ワルビィ!」

 

「オタッ!」

 

 攻撃の合間を狙い、ワルビルは一匹のオタマロにかみつく。その一撃でまた一匹を倒した。これで五体目だ。

 

「オターーーッ!」

 

「マローーーッ!」

 

 オタマロ達が頬を震わせ、一斉にりんしょうを発射。仲間と同時に放つことで、その威力は大幅に増していた。

 

「ワルッ!」

 

 音の波に、ワルビルはあなをほるで地中に潜って回避。じならしかこのまま攻撃しようかと考えたが。

 

「――オターーーッ!」

 

「マーローーーッ!」

 

「ルビッ!?」

 

 しかし、オタマロ達はりんしょうを地面に向けて発射。増幅された音は大地を強く震わせ、地中にいるワルビルにダメージを与え、地面に引きずり出した。

 

「ワルー……ビーーーッ!」

 

「タマーーーッ!」

 

 地面越しにダメージを受けたワルビルだが、直ぐに姿勢を整え、ストーンエッジ。オタマロ達に反撃の一撃を叩き込む。

 

「――ルビ」

 

 オタマロ達への警戒を続けながら、ワルビルははぁと溜め息。オノノクスから教わった中に、こんな言葉があった。

 同じ戦法は見抜かれて反撃される恐れがある。それを教わったのに、活かせなかった事に未熟さを感じたのだ。

 

(――思い出せ)

 

 だが、今は戦闘中。直ぐに払い、他の教えをワルビルは思い出す。

 

「ワルビ!」

 

 ストーンエッジをオタマロ達にではなく、地面に放つ。激突で煙が発生し、オタマロ達の視界を塞ぐ。

 

「オーーーッ!」

 

「ターーーッ!」

 

 煙で見えないが、オタマロ達は関係なくみずてっぽう。広範囲に放つが、ワルビルの声は聞こえない。当たっていない証拠だ。

 そして、今の一撃と風の流れで煙は晴れた。だが、ワルビルの姿はなく、代わりに穴があった。

 オタマロ達はまた地中に潜ったと理解し、ならばこちらも再度りんしょうを放つ。

 

「――ルビ!」

 

 その瞬間、ワルビルは穴から出て高く跳躍。りんしょうは地面を揺らしただけで、ダメージはない。

 

「ワル!」

 

「タマローーーッ!」

 

 ジャンプしたワルビルは、着地と同時にじならしを発動。落下の勢いで威力が増したじならしの揺れが、オタマロ達にダメージを与える。

 

「ワルビィ!」

 

「マロッ!」

 

 続けてワルビルはストーンエッジ。一匹に狙いを付けて集中攻撃し、また一匹倒す。

 

「ルビ」

 

 どうだとワルビルは不敵に笑う。裏を掛かれたからこそ、その裏を掛け。オノノクスのその教えを見事に実践したのだ。

 

「――ルビィ!」

 

 残りの数は一桁を切った。全て撃破するべく、ワルビルは駆け出す。

 

「ヌーーー」

 

「だくりゅう! マッギョ、とびはねる!」

 

「マッギョ!」

 

 ヌオーは泥を含んだ波を発射。とびはねるの回避と攻撃を狙う。

 

「オーーー」

 

「どろばくだん! マッギョ、回避に専念だ!」

 

「ギョ!」

 

 三度跳躍のマッギョに、ヌオーはどろばくだんを中心を含んだ広範囲に発射。これには攻撃する間がなく、回避に専念するしかなかった。

 

「ギョ。――ギョ!?」

 

「マッギョ?」

 

 驚きの声にデントが反応。見ると、着地したマッギョの身体に泥や濡れた土が付着していた。先程のだくりゅうが原因だ。

 

「さっきのだくりゅうはこれが狙いか!」

 

 攻撃その物もだろうが、だくりゅうの泥や濡れた土もヌオーは狙っていたのだ。

 

「ヌーーー」

 

「マッギョ、とびはねる!」

 

「マッギョ! ギョ!?」

 

 ジャンプとしたマッギョだが、濡れた土のせいであまり跳べず、おまけに身体に付いた泥や土が動きの制御を阻害する。

 

「オーーー」

 

「マッギョ!」

 

 空中で上手く動けず、落下したマッギョにヌオーのかいりきが命中。

 

「――マッギョ!」

 

「――ヌーーーッ!?」

 

 マッギョは無理矢理身体を動かすと、ヌオーに体当たり。かなりの衝撃がヌオーへ叩き込まれた。

 

「リベンジか!」

 

 攻撃を受けたのを利用し、高まった威力のリベンジで反撃したのだ。

 

「さっきの挙動と言い、出来るね、君」

 

「マッギョ」

 

 誉められるも、マッギョは前を見る。ヌオーはまだ倒れていないのだ。おまけにまた泥や土が身体について動きづらくなる。

 

「――ヌー……。オッ」

 

「かわすんだ、マッギョ!」

 

「ギョ!」

 

 ヌオーはどろばくだんを吐き出す。マッギョは足場のせいで上手く出来ない跳躍ではなく、身体を転がしてかわすも、また泥土が付着する。

 

「不味い……。このままじゃあ、マッギョは狙い撃ちになる」

 

 泥と土を落とす必要がある。例えば湖で。しかし、ヌオーがそんな余裕をくれるとは思えない。もっと別の方法で対応する必要がある。

 

(考えろ……。サトシならどうする?)

 

 サトシなら、常識に縛られない閃きや発想でこの事態を打開する筈。

 

(ねっとう……。いや、それだけじゃダメだ)

 

 サトシがコーンとのバトルで見せた、相手の水タイプの技を利用して泥を落とす。確かに効果はあるが、地面が泥土になっている以上は効果が薄い。

 もっと、いっそのこと――とそこでデントはその手があったと思い至った。

 

「マッギョ、全力で電気技! 辺り一帯に!」

 

「……マギョ! ――マッギョーーーッ!」

 

「ヌー?」

 

 大量の電気と、その余波の閃光が周囲一帯に放たれる。ヌオーにも届くが、地面タイプなので効果はない。何してるんだと首を傾げている余裕もあった。

 

「――マギョ!」

 

「……ヌッ!?」

 

 閃光が消えると、そこには泥や濡れた土が付いていないマッギョがいた。いや、それだけではない。周囲にも泥や濡れた土が消えていた。

 

「マッギョ、どろばくだん!」

 

「マッギッ!」

 

「ヌー!」

 

 驚いたその隙に、マッギョがどろばくだんを吐き出した。泥は見事にヌオーに当たる。

 

「ヌー……!」

 

「残念だけど、泥や濡れた土は電撃で吹き飛ばさせて貰ったよ」

 

 正確には、電撃の熱で水分を蒸発させ、地面に付着した泥土を只の土に戻しつつ、身体の泥土を威力でボロボロしながら落としたのだ。これでまともに戦える。

 

「ギョー……」

 

 効かない技を有効に使ったデントに、マッギョは感心した様だ。

 

「見事だろう? 友人の発想を借りたのさ。――さぁ、一気に決めるよ。マッギョ!」

 

「マッギョ!」

 

「ヌー……!」

 

 決着を決めるべく、デントとマッギョは次の攻撃を仕掛けた。

 

 

 

 

 

「ル、ッグ……!」

 

 攻撃を放とうとするガマガル。スローに見えるその景色にズルッグは悟ってしまう。このままでは、確実に自分かイーブイとキバゴのどちらかが倒されると。

 自分が二匹を守る――いや、ダメだ。戦える自分がいなくなれば、混乱状態の二匹はどの道やられる。

 ガマガルに攻撃し、奴の攻撃を中断させなければ。しかし、きあいだまは間に合わない。ずつきも届かない。にらみつけるもだろう。

 もっと別の、空中にいるガマガルを攻撃出来る技を。そう考えた瞬間、ズルッグは本能的に跳躍した。

 

「――ルッグ!」

 

「ズルッグ!?」

 

「ガマ!? ――ガマー……」

 

 サトシと同じく、跳躍したズルッグにガマガルは驚くも、冷静に対応して戦闘不能にしようとした。その時だ。

 

「――ルッグーーーッ!」

 

 

「ガマガーーーッ!?」

 

 ズルッグは片膝を出しながら、ガマガル目掛けて降下。そのままガマガルと一緒に地面に落下する。

 

「今のは……とびひざげりか!」

 

 高く跳躍し、落下の勢いをプラスした強烈な膝蹴りを叩き込む技だ。

 威力だけなら一級品だが、外すと大きなダメージを受けるハイリスクハイリターンな技。この土壇場で、ズルッグはこの技を発現させたのだ。

 

「ガ、ガマガ……!?」

 

「ズルッグ、ずつき!」

 

「ルッグーーーッ!」

 

「ガマッ!」

 

 思わぬ一撃を受け、戸惑うガマガルにズルッグは追撃のずつき。更に効果で怯む。

 

「キバゴ、イーブイ! 正気に戻るんだ!」

 

「――キバッ!」

 

「――ブイッ!」

 

 サトシは怯んでいる間にキバゴとイーブイに呼び掛ける。運が良かったのか、二匹共直ぐに正気に戻った。

 

「よし、戻っ――」

 

「ガマガーーーッ!」

 

「ルッグーーーッ!」

 

「ズルッグ!?」

 

 直後、ズルッグが水流と共に吹き飛んだ。ガマガルからハイドロポンプを受けたらしい。

 

「ル、ッグ……!」

 

「ブブイ!」

 

「キ~バ!」

 

 瀕死寸前のズルッグに駆け寄り、その後に二匹はガマガルを睨み付ける。

 

「ブイ~!」

 

「キバ~!」

 

「ガマー――ガッ……!?」

 

 怒りのまま突撃するイーブイとキバゴ。ガマガルはヘドロウェーブで止めを刺そうとしたが、今までのダメージで身体が痛み、攻撃が中断された。

 

「ブイッ!」

 

「ガマーーーッ!?」

 

 攻撃が中断したその隙を狙い、イーブイがきりふだを放つ。時間が掛かり、大幅に威力が増したその技がガマガルに叩き込まれた。

 

「キ~バ~……! キバキバキバキバ~~~ッ! ――キバッ!」

 

「ガママママッ!? ――ガマーーーッ!」

 

 続いて、キバゴのげきりん。ありったけの怒りを込め、ガマガルに猛攻を浴びせ、〆の一撃で吹き飛ばす。

 

「ズルッグ、止めだ! きあいだま!」

 

「ズールー、グッ――」

 

「ガマガ!」

 

 きりふだ、げきりんからの止めの一撃をズルッグが放とうとしたが止まった。妨害されたのではない。

 ガマガルが――突然頭を下げたのだ。参ったとでも言いたげに。サトシ達はその行動に驚いた為、攻撃が止まった。

 

「ガマガー」

 

 ガマガルは顔を上げると、笑いながらいやー、お強いと言いながらサトシ達に擦り寄る。

 

「え、えーと……? 俺達の勝ちで良いのか?」

 

「ガマガマ」

 

「そっか。じゃあ、俺達はシレット水草を採りに行くから――」

 

「ガマガ! ガマガマ」

 

 戦いも終わり、サトシは三匹とシレット水草を採りに行こうとしたが、彼の言葉を聞いてガマガルはお待ちをと言い、湖に入って行った。

 

「な、なんなんだ?」

 

「ルッグ……?」

 

「ブイブイ」

 

「キ~バ」

 

 態度が一変したガマガルに、サトシ達は困惑の一方だが、とりあえず待つことにした。そこにデントとマッギョが近付く。

 

「サトシ、大丈夫かい?」

 

「マッギョ」

 

「大丈夫だよ、デント。そっちはどうだ?」

 

「それが……済まない。ヌオーを保護し損ねた」

 

 詳しく聞くと、後一歩だったのだが、ガマガルがサトシ達に駆け寄るのと同時にヌオーは逃げ出したのだ。

 

「ワルビー……」

 

「ワルビル、お前も大丈夫か?」

 

「ルビ」

 

 かなりのダメージを受けながらも、ワルビルが悔しそうな表情でサトシ達に駆け寄る。

 悔しそうな顔の理由はダメージではなく、オタマロ達を倒しきれなかったからだ。

 こちらもガマガルが湖に入った事でリーダーが敗走したと思い込み、一斉に逃げ出したのだ。

 

「――ガマガー」

 

「あっ、出てきた。――って、シレット水草!」

 

 話していると、ガマガルが湖から出てきたが、短い腕にシレット水草を持っており、サトシに差し出す。

 

「採って来てくれたのか! ありがとう!」

 

「ガマガマ」

 

「よし、早く戻ろう」

 

 シレット水草を手に入れ、サトシ達は急いでピカチュウ達の元に戻る。

 

「ピカ~」

 

「リュズ……」

 

「ヤナー」

 

「ゾロー」

 

「これでもう大丈夫。毒や麻痺は消えたわ」

 

「良かったー」

 

 持って来たシレット水草から薬を作り、ピカチュウ達は毒や麻痺から回復する。

 

「ワルビ」

 

「ピカピー」

 

 回復したピカチュウ達は、三匹にありがとうとお礼を言う。

 またワルビルもピカチュウに元気になって良かったと声を掛けており、ピカチュウはワルビルにもお礼を言っていた。

 

「これで一件落着。にしても……」

 

「……」

 

「まさか、このオノノクスがここにいるなんて……」

 

 色違いのオノノクスがいたことに、サトシ達はやはり驚く。まさか、ここで再会するとは思わなかった。

 

「一応だけど、特になんか無かった?」

 

「全然。手伝いはしてくれるし、野生のポケモンは一切来ないし、助けてもらってばかりよ」

 

「そうか。ありがとう、オノノクス」

 

「……」

 

 礼を言われるも、オノノクスは無言で佇んでいた。

 

「――皆」

 

「あっ、Nさん」

 

「済まない。連れて来れなかったから、少し様子を見に来たけど――もう大丈夫そうだね」

 

 Nが戻り、皆が回復した様子から大丈夫そうだと安心する。

「はい。ズルッグ、キバゴ、イーブイ、ワルビルも頑張ってくれました」

 

「ルッグ!」

 

「キ~バ!」

 

「ブイ~!」

 

「ワルビ!」

 

「よく頑張ったわね、キバゴ」

 

「お疲れ様、イーブイ」

 

 サトシの所で頑張った二匹に、Nとアイリスが労う。

 

「所でサトシくん、デントくん。そのワルビルはともかく、後ろのガマガルとマッギョは?」

 

「ガマガルとマッギョって……。――うわっ!?」

 

「ガマガー」

 

「マッギョ」

 

「付いてきていたのか」

 

 サトシとデントが振り向くと、ガマガルとマッギョがいた。

 

「この二匹は?」

 

「ガマガルは俺達と戦って、マッギョは一緒に戦ってくれたんだ」

 

「なら、なんで?」

 

 共闘したマッギョはともかく、敵対したガマガルが付いてくるのは妙だ。

 

「ガガマ、ガママー」

 

「なんて?」

 

「簡単に言うと、ガマガルはサトシくんと一緒に行きたいって」

 

「俺と?」

 

「うん。サトシくんの強さに憧れた様だよ」

 

「ガマガマ?」

 

 ダメですか?と、ガマガルは不安の色が宿る瞳で見上げる。

 

「――!」

 

「……」

 

「ガマガル?」

 

 ゾクッと、悪寒が走る。背後にいるオノノクスが鋭い眼差しを向けていたのが原因だった。かなりの気迫だが、何とか耐えてサトシの頼みを続ける。

 

「んー。まぁ、俺は良いよ」

 

 相手が望むのなら、それを拒む理由は自分にはない。ガマガルの希望をサトシは聞き入れた。

 

「じゃあ、行こうぜ」

 

「ガマガ」

 

 サトシはモンスターボールを取り出し、ガマガルに当てる。ガマガルを中に入れたモンスターボールは何回か左右に軽く揺れ、パチンと閉じた。

 

「ガマガル……ゲットだぜ!」

 

「これで八体目だね」

 

 既に七体を超えているが、転送システムは使えないので持つしかない。

 

「――オノ」

 

「オノノクス?」

 

「ノノクス」

 

「気を付けろ。って」

 

「……気を付けろ? 何に?」

 

「……」

 

 サトシに対し、オノノクスが忠告。しかし、意味は不明で、オノノクスもそれ以上口は開かなかいので分からなかった。

 

「――マッギョ」

 

 疑問符を浮かべる一行にマッギョが話し掛け、注目がそちらに向かう。

 

「ん、なんだい?」

 

「『自分も連れていってほしい』だって。デントくんに」

 

「僕に?」

 

「マッギョギョ」

 

 Nの翻訳に、マッギョは頷いた。

 

「ふーむ。真意は読みにくいが、確かな正義感。バトルで見せた掴み所のない動作。僕で良ければ、構わないよ」

 

「マッギョ」

 

 デントもモンスターボールを取り出し、マッギョをゲットする。

 

「マッギョ、ゲットで――グッドテイスト!」

 

 こうして、マッギョもデントの手持ちとなったのだった。

 

「二匹も加わって、また賑やかになるわね~」

 

「それは良いんだけど……」

 

「何か問題が?」

 

「ロケット団のポケモンと思われる、ヌオーを保護し損ねたんです」

 

「それは不味いわね……。どうするの?」

 

「この湖を探すとなると、かなり手間が掛かる。それに既にここから逃げている可能性もある。ジュンサーさんに報告か、もしくはボクがプラズマ団で保護するように伝えるよ」

 

「ありがとうございます」

 

 自分達だけでは人手が足りない為、警察かプラズマ団が保護する事になった。

 

「――オノ」

 

「ワルビ」

 

 一段落した様子から、そろそろ行くぞとオノノクスが呼び掛ける。するとワルビルが駆け寄る。

 

「あれ? お前ら知り合いなのか?」

 

「ワル、ワルワールビ」

 

「自分の師匠だって」

 

「師匠!?」

 

「って事は、一緒に旅してるのか?」

 

「ワルビ」

 

「そっか」

 

 それなら、オノノクスがヒウンシティにいたことに納得出来る。偶々ではなかったのだ。

 

「……」

 

 オノノクスが先ずサトシ達を見渡す。ピカチュウはかなり良くなっており、最初に見た時にいた残りの四匹はあの時よりも確実に強くなっている。前はいなかった二匹も良い目をしていた。

 

「オノ、ノノクス」

 

「また戦うのを楽しみにしてる、かな?」

 

「オノ」

 

 あぁと微笑み、次はN達を見る。こちらも、前よりも強くなっている。イーブイも見所があった。そして、ボスゴドラも楽しみだ。

 

「オノノ、ノクス」

 

「うん」

 

 もっと強くなって挑んでこい。自分にもそう告げるオノノクスに、Nは笑みを浮かべた。

 

「オノ」

 

「ワルビ。――ワルワルビ!」

 

「あぁ、お前ともな」

 

「ピカピ!」

 

 ワルビルの自分との勝負を忘れるなよとの台詞に、サトシとピカチュウは肯定で返す。

 その答えにワルビルは笑みを浮かべると、師匠のオノノクスと共に森の中へ歩き出した。

 

「オノノ、ノクス?」

 

 森を歩く中、オノノクスがワルビルに尋ねる。今日の戦いはどうだったと。怪我の具合から戦闘があるのは明白だからだ。

 

「ワルビー……」

 

 ワルビルは不満そうに今一だったと溢す。もっと上手く立ち回れば、オタマロ達全員を撃破出来たのに失敗した。まだまだだと溜め息を漏らした。

 

「オノ、オノノ、ノクス」

 

「ルビ」

 

 なら、もっと強くなれ、でなければ彼等には勝てないぞとオノノクスは告げ、ワルビルはそのつもりだと返した。

 

「ノクス」

 

「ワルビー!」

 

 それで良いとオノノクスは無表情だが、少し満足気に。ワルビルはもっと強くなるぞー!と意気込みながら、彼等は旅を再開した。

 

「じゃあ、俺達は……」

 

「もう少しゆっくりしてからしよう。毒や麻痺から回復した直後だからね」

 

「あたしもその方が良いと思います!」

 

「なら、ついでに軽いおやつも作ってティータイムにもしましょう」

 

「おっ、さんせーい!」

 

 と言う訳で、サトシ達は休息を兼ねてティータイムをする事に。

 

「そうだ、お前も。ガマガル!」

 

「マッギョ、君もね」

 

「――ガマガ」

 

「――ギョ」

 

 折角なので、仲間になったばかりのガマガルとマッギョにも参加させる。

 

「ガ、ガマ……!?」

 

「……ギョ」

 

 マッギョを見て、まだいるのかと驚くガマガル。当たり前だ、監視しないとなとマッギョに言われ、ガマガルはちっと舌打ち。

 

「……ガマガマ、ガママ」

 

「マッギョギョ」

 

 群れを放って置く気かとガマガルは批判するも、お前が言うなと反論される。マッギョとの付き合いはまだ続くようだ。

 

「さっ、一緒にお菓子食べようぜ。ガマガル」

 

「君もね、マッギョ」

 

「ガマ」

 

「ギョ」

 

「ねぇ、ついでに自己紹介もしたら?」

 

「そうだね。その方が良いと思う」

 

 なので、お菓子を作っている今の内にする事に。

 

「皆、新しく仲間になったガマガルと――」

 

「マッギョだよ。仲良くしてほしい」

 

「ガマガー」

 

「マッギョ」

 

 笑顔で宜しくお願いしますと挨拶するガマガルと、あまり変化のない表情のマッギョに、ピカチュウ達は笑顔で返す。

 

「ルーグ……」

 

「……」

 

 そんな中、ズルッグは微妙そうに、ツタージャに至ってはガマガルに鋭い眼差しで睨んでいた。

 

「ガ、ガマガ?」

 

「ツタージャ?」

 

 ズルッグは湖で戦ったので分かるが、ツタージャとは何もない。何故、睨むのかサトシはさっぱりだ。

 

「……タジャ」

 

 ツンとしながら宜しくと、ツタージャは返す。そんな彼女にサトシは安心する一方。

 

「……」

 

 ガマガルは内心で、ツタージャに厄介だなと溢していた。彼女は確信はしていないが、自分の本性に感付いていると悟っていた。

 マッギョだけでも面倒なのに、もう一体加わられるとより面倒臭い。しかし、だからと言って露骨な態度を取れば、自分から気付けと言ってる様なもの。警戒を解くためにも、愛想良く接しよう。

 

「――よし、出来たよ」

 

「じゃあ、ガマガルとマッギョが仲間になったのを祝って……」

 

「お菓子タイ~ム!」

 

「ふふ、楽しそうだね」

 

 休息と加入を祝い、サトシ達はお菓子や紅茶を食べ出す。

 こうして、ちょっとした騒動の果てにガマガルとマッギョがサトシ達一行に加わったのであった。

 

「――ガマガマ」

 

「……ギョ」

 

 悪どさが込もった微かな声と、疲れた様な溜め息。その二つは誰にも届かないまま空気に溶けていった。

 

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