ポケットモンスター アナザーベストウイッシュ   作:ぐーたら提督

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 二週間ぶりですいません。この話はオリジナルですが、どうしても書きたい内容でもありました。


鳥同士の空戦

(――めんどくさい!)

 

 心の中でそう叫びながら、ガマガルは走っていた。正確には、ピカチュウ達と一緒に。

 ガマガルとマッギョがサトシ達一行に加わった先日から一日。

 ガマガルはサトシにトレーニングの参加を提案。参加しないと良い心境は持たれない、疑われる可能性がある為、渋々やることにしたが、結構ハードなので心の中で文句を溢していた。

 

「――マッギョ」

 

(こ、この野郎……!)

 

 遠くでは、徹底的に走ってその腐った性根を叩き直せと、ニヤニヤとしたマッギョに言われ、腹立つガマガルだが、その気持ちを全く出さずに走り出した。

 

「さぁ、皆も頑張ろうか」

 

「ゾロロ」

 

「カーブカブ!」

 

「ブイ!」

 

「ゴド」

 

 また、N達もトレーニングの一環で参加していたりする。

 

「――よし、皆戻ってこーい」

 

「キミ達も切り上げて」

 

 ある程度時間が立ち、サトシはピカチュウ達を、Nはゾロア達を呼び戻した。

 

「ご苦労様。どうだった、ガマガル?」

 

「ガ、ガマガ……」

 

 結構良い汗を掻きましたと、ガマガルは何とか笑みを見せる。

 

「次は技の練習だ。それとガマガル、お前の技はあの時見せたので全部か?」

 

「ガマガ」

 

 ハイドロポンプ、マッドショット、ヘドロウェーブ、ちょうおんぱ。これがガマガルの使える技のようだ。

 

「そっか。なら、その練習をしてくれ」

 

「ガマガマ。――!」

 

「……」

 

 直接見られる可能性が高い走り込みとは違い、技は知られてるので適当にやれるかと思ったガマガルだが、その彼の背後からヌッと出てきたマッギョにジーッと見つめられる。

 ちっと、ガマガルはまた舌打ちし、練習もしっかりとやることにした。

 

「さっ、ズルッグ、行くぞ。――とびひざげり!」

 

 

「ズル……グーーーッ!」

 

 高く跳躍し、そこから膝を構えながら落下していく――が、途中で体勢が崩れ、そこから落ちていく。

 

「――ズル!?」

 

「あっ、ズルッグ!」

 

 体勢を崩しながら落下するズルッグを、サトシは急いでかつ優しくキャッチして地面に降ろした。

 

「失敗かー……」

 

「ルグー……! ルグルグ!」

 

 とびひざげりの失敗に、ズルッグが悔しそうに地団駄を踏む。

 

「まぁ、仕方ないよ。とびひざげりは格闘タイプの技の中でも難度が高い。簡単には行かないだろうね」

 

「だよなー……」

 

 第一、とびひざげりもガマガルとの戦いで追い詰められた中、偶々成功しただけだ。

 あんな偶然が続く訳もなく、失敗するのが寧ろ当然なのである。子供である事を含めれば尚更だ。

 

「きあいだまの完成もまだだし、地道に練習していくしかないだろうね」

 

「もしくは、覚えているポケモンに教えてもらうのどちらかかな」

 

 独学か師事か。どちらかの方が身に付けやすいかと言えば、余程の才能が無い限りは後者。なので、教えてもらうのは良い選択ではあるのだが。

 

「けど、そんなに都合良くとびひざげりを覚えてるポケモンに会える?」

 

「それに、そのポケモンか連れてるトレーナーが教えてくれるとも限らないしね」

 

「そうなんだよなー」

 

 二つの問題があるため、どうにも難しい。

 

「ポケモンだけなら、ボクが説得してみるよ」

 

「ありがとうございます」

 

「ルッグ」

 

 Nがそう言ってくれるも、簡単に上手く行くわけがないのでしばらくは独学で練習しかない。

 

「ズルッグ、後何度かとびひざげり。それが終わったら、きあいだまな」

 

「ルッグ!」

 

「ブブブ~イ!」

 

 またとびひざげりをするズルッグに、イーブイが頑張れと応援。

 

「ブイブ~イ!」

 

「キババババ!」

 

 次にイーブイは反対側で練習するキバゴに応援。キバゴは声援を受けながら爪を振るう。

 

「ナップナップ」

 

「キババ!」

 

 相手はヤナップで、軽やかにかわされる。しかし、キバゴは諦めずにひっかくしていく。

 

「う~、やっぱり当たらないわね~」

 

「そう簡単にはね」

 

「ナップ!」

 

「なら――キバゴ、やるわよ!」

 

「キバ!」

 

 意を決したアイリスとキバゴ。デントとヤナップはあれが来ると確信する。

 

「あっ、ちなみに危なくなったら止めて」

 

「勿論」

 

「じゃあ、改めて。キバゴ――げきりん!」

 

「キ~……バ~~~~~ッ!」

 

 秘めたる竜の力。それを全開。キバゴの身体から竜のオーラが漂う。

 

「キバババババババッ!」

 

「全力で回避!」

 

「ヤナ!」

 

 子供とは思えない荒々しさで、キバゴは両手両足での猛攻を仕掛ける。尚もヤナップはかわしていくも、その顔には余裕は全くない。本気で回避に徹していた。

 

「――そろそろかな。ヤナップ、ガード」

 

「ナップ!」

 

「キ~バ~~~ッ!」

 

 猛攻の内の一撃を、ヤナップは敢えて腕でガード。痺れながらも受け止める。

 

「かわらわり。ソフトにね」

 

「ヤナ。――プッ」

 

「キバッ! ――キバ~……」

 

 ヤナップはキバゴの腕を弾き、頭に軽い手刀を叩き込む。するとキバゴは痛む頭を両手で抑えた。

 

「あ~、解けちゃった」

 

 痛みにより、正気に戻ったのだ。げきりんが未完成かつ、キバゴが未熟だからである。

 

「まだまだダメね~」

 

 ガマガル戦でバンギラスとの戦い以降、初めてげきりんを使ったぐらいでは、やはり完成には至らない様だ。

 

「でも、その方が良いよ。未完成から慣れれば、負担も少ないしね」

 

 未完成だからこそ、負担も少なくなり、制御も楽になる。寧ろ、未完成だったのは行幸だろう。

 

「そうね。ゆっくり頑張りましょ、キバゴ」

 

「キバッ!」

 

 りゅうのいかりも完成まで長かった。げきりんもそれぐらいの時間は必要だろう。焦らずにゆっくりと進めていこう。

 

「ブブイ!」

 

「イーブイもしたいかい?」

 

「ブイ!」

 

 そして、ズルッグ、キバゴと共にガマガルと必死に戦ったイーブイもまた二匹の頑張りを見て、やる気に満ちていた。

 

「分かった。ゾロア、ポカブ、付き合って」

 

「ゾロ」

 

「カブー!」

 

 二匹は自分達の妹分であるイーブイとの練習を始める。内容は主にスピードを鍛える練習だ。

 

「ブイブイブ~イ!」

 

「ゾロゾロロ」

 

「カーブカーブ!」

 

 二匹との追いかけっこ。それをイーブイは全力でこなす。

 

「……」

 

 そんな幼い三匹の頑張りぶりに、サトシのポケモン達は大小に拘わらず刺激を受けていた。彼等の成長に負けていられないと、練習に励んでいく。

 

「――ハトーーーッ!」

 

「おっ、良いつばめがえしだな。ハトーボー」

 

「ハトー」

 

 ハトーボーがキレのあるつばめがえしを放ち、サトシが褒める。ハトーボーは嬉しそうだ。

 

「――クルー!」

 

「――ポー!」

 

「……なんだ?」

 

 その直後、木々が揺れる音と共に、羽ばたきと多くの鳴き声が上がる。サトシ達が一斉に見上げると、沢山のマメパト達が飛んでいた。

 

「マメパト達?」

 

「でも、何か様子が……」

 

 荒れた声や動きの荒らさから、気のせいか彼等が焦った様にも見えた。

 

「――ドリルーーーッ!」

 

「……オニドリル!?」

 

 マメパト達とは違う一つの影。それはくちばしポケモン、オニドリルだった。

 

「ポーポー!」

 

「ポポー!」

 

「ドリーーーッ!」

 

「マメパト達を襲ってるの!?」

 

「ハトーーーッ!」

 

「ハトーボー!」

 

 オニドリルはマメパト達に攻撃を仕掛けていた。その状況を見て、進化系であるハトーボーが憤りを感じ、サトシの指示を聞く前に独断でオニドリルに向かう。

 

「ハトーーーッ!」

 

「ドリル!」

 

 つばめがえしを放つハトーボー。対して、オニドリルは回転しながら突撃、ドリルくちばしで迎え撃つ。

 

「ドリルルルッ……!」

 

 

「ハトト……! ――ハトーーーッ!」

 

「押し負けた!」

 

「パワーはオニドリルの方が上か!」

 

 二つの技の激突の結果、オニドリルが力の差でハトーボーを打ち負かした。力負けしたハトーボーは吹き飛ぶも、直ぐに姿勢を立て直す。

 

「――ハトッ!」

 

「ドリル!」

 

 姿勢を立て直したハトーボーは、パワーではなくスピード、でんこうせっかを使用。素早い一撃をオニドリルの腹に叩き込む。

 

「――ドリ! リルルーーーッ!」

 

「トライアタックだ!」

 

 しかし、速さを重視した軽い一撃だけではオニドリルは倒せない。

 オニドリルは身体を力を込めてバランスを整え、雷、氷、炎が三位一体となった技、トライアタックを発射する。

 

「ハト――ッ! ――ボッ!」

 

 三つの属性を込めた一撃に、真空の刃をぶつけたハトーボーだが、先程同様に力で負け、逆にダメージを受ける。

 

「ハトッ……!?」

 

「あの状態……!」

 

「氷状態! 不味い!」

 

 トライアタックの追加効果により、ハトーボーの身体がどんどん凍り付いていく。氷は眠りと同じくらい厄介な状態異常であり、動きを封じてしまう。

 

「ドリルーーーッ!」

 

「ハトッ!」

 

「ハトーボー!」

 

 氷状態で無防備に落ちていく所に、オニドリルは容赦なくドリルくちばしを命中。

 

「ドリーーーッ!」

 

「ボーーー!」

 

 オニドリルは更にトライアタックを発射。まだ氷状態のハトーボーに命中した。

 

「……ハ、ト」

 

「ハトーボー! しっかりしろ!」

 

 落下したハトーボーは、戦闘不能になっていた。

 

「……!」

 

 

 ハトーボーを倒したオニドリルは、サトシを視認すると少しの間見ていた。

 

「……サトシを見てる?」

 

「もしかして、あの時のサトシと戦ったオニドリル?」

 

「かもしれないね」

 

 サトシを見ている事から、彼がヒウンシティで戦ったのと同じ個体の様だ。

 

「……ドリ」

 

「あっ、待て!」

 

 もう数秒だけサトシを見るとオニドリルは北の方角へと、飛び去って行った。

 

「ハトーボーの手当もだけど、オニドリルの捜索もしないとならない。二手に別れよう」

 

「じゃあ、僕とNさんがオニドリルの捜索を。サトシとアイリスはハトーボーの手当を」

 

「分かったわ!」

 

「頼む」

 

 デントとNが捜索に行っている間、サトシとアイリスはピカチュウ達が始めようとする。

 

「ポー!」

 

「ポーポー!」

 

「お前達も手伝ってくれるのか?」

 

「クルー!」

 

「ポー!」

 

 自分達を助けようとしたハトーボーにお礼をしたいのか、マメパト達が手伝いを申し出た。

 

「……」

 

 ピカチュウ達は、マメパト達と必要な薬草や木の実を採りに行くが、ガマガルだけは少し何か考えてから走り出した。

 

「傷口に薬草で作った塗り薬を塗って……これでよし。次は、オレンの実を絞ったジュースを飲ませてと……」

 

「それは俺がやる。ゆっくり飲むんだぞ、ハトーボー」

 

「ハト……」

 

 ピカチュウ達や、マメパト達が採って来た薬草、木の実を使い、二人は手当を開始。

 アイリスが塗り薬を一通り塗ると、サトシがハトーボーを優しく抱え、吸い飲みを使ってゆっくりと飲ませる。ハトーボーは少しずつ飲み込み、体力を回復させていった。

 

「ハト……ハト……」

 

「うん、ゆっくり眠ってる。もう大丈夫だわ。後はしばらくすれば動けると思う」

 

「良かった……」

 

「ポー……」

 

「サトシー!」

 

 一安心したサトシに、捜索しに行ったNとデントが戻って来た。

 

「Nさん、デント。そっちはどうでした?」

 

「済まない。見失ってしまった」

 

「オニドリルは地形を上手く利用して、僕らを撒いたんだ」

 

「……って事は、あのオニドリルはこの辺りを把握してる? でも、それ変ですよね?」

 

 偶々逃げてきた他の地方のポケモンが、この辺りを把握してる。どう考えても妙だ。

 

「その理由なんだけど、この辺りの野生のポケモン達から聞いて分かった。あのオニドリルは少し前にここに来て、他の群れを襲ったり、抗争中に襲撃したりしてるらしい」

 

 少し前からここにいるのなら、地形をある程度把握していても不思議ではない。

 

「ポーポー」

 

「マメパト達も、自分達も襲われてるって言ってる」

 

「その理由って、やっぱり……」

 

「一つしかないね。縄張りを奪う為。ただ、オニドリルだけか、仲間の為もあるかは不明だけど――」

 

「さっきはオニドリルしかいなかった事を考えると……」

 

 仲間がいるとは、少し考えにくい。おそらく一匹だけのはずだ。

 

「放って置けば、その内とんでもない事態を招くかもしれない。今日また出てきた所か、明日に保護しよう」

 

「はい!」

 

「キミ達も協力してくれないかい?」

 

「ポー!」

 

「……ハト?」

 

 この辺りのポケモン、オニドリル達の為にも、サトシ達は保護することに。マメパト達の助力を得たのと同時に、ハトーボーが目覚めた。

 

「ハト……?」

 

「ハトーボー! 良かった……!」

 

 ハトーボーが起きた。しっかりとした手当のおかげもあり、万全な状態に回復していた。

 

「……! ハト……」

 

「どうした、ハトーボー?」

 

「……ハトハト」

 

「勝手に戦って負けたのを謝ってる」

 

 サトシの制止を振り切った挙句、オニドリルに敗北したことをハトーボーは謝っていた。

 

「そんなこと気にすんなよ」

 

 勝ち負けとは常にあるものだ。ハトーボーの気持ちも分かるし、サトシは責めたりしなかった。

 

「……ハト?」

 

「『今は?』と聞いてる」

 

 サトシはハトーボーに今まで得た情報からの推測、明日オニドリルの保護することを伝えた。

 

「だから、一緒に――」

 

「……ハト! ハトボー!」

 

「な、なんて?」

 

「ハトーボーは――」

 

「分かります。ハトーボーが何を言いたいのか。――オニドリルに勝ちたいんだよな?」

 

「ハト!」

 

 負かした相手にリベンジを果たしたい。Nから翻訳されなくても、サトシにはハトーボーのその気持ちが分かった。

 

「だけど、あのオニドリルは間違いなくハトーボーより強い。一対一は厳しいだろうね」

 

「なら、やることは一つ! 特訓だ!」

 

「だけど、一日で何とかなるの?」

 

 たった一日の特訓で、格上の相手に勝てるかどうか。

 

「何とかするんだよ。なっ?」

 

「ハトッ!」

 

 負けるつもりで挑んでも、尚更勝てる訳がない。何がなんでも勝つとサトシとハトーボーは意気込む。

 

「どんな特訓するの?」

 

「スピードや動きのキレを重点に鍛えようと思ってる」

 

「良い判断だと思うよ」

 

 鳥ポケモンの一番の特徴は空中を自由に動く機動力。鍛えるならこれだろう。

 

「どう鍛える?」

 

「一番は鳥ポケモンか、他の空中を自由に動けるポケモンに相手してもらうだけど――」

 

「だったら、エモンガにしてもらう?」

 

「だけど、エモンガには確か直接攻撃する技は無かったはずだよ」

 

「そう言えば……」

 

 今サトシ達のポケモンの中で、ハトーボー以外に空を飛べるのはエモンガだけ。

 しかし、エモンガには身体を使った直接攻撃する技がない。特訓相手としては少し物足りない。

 

「ポー」

 

「ポーポー」

 

「ポポポー」

 

「マメパト達?」

 

 悩むサトシ達に、マメパト達が話し掛ける。

 

「もしかして、お前達が特訓の相手をしてくれるのか?」

 

「ポー」

 

 サトシの問いに、マメパト達は頷いた。

 

「確かにマメパト達なら、ハトーボーの相手に最適だ。やってもらったらどうだい?」

 

「皆、付き合ってくれるか?」

 

「ポー!」

 

 賛同の意を示すように、マメパト達は片翼を上げる。

 

「じゃあ、早速特訓開始だ!」

 

「ハトー!」

 

「ポー!」

 

 特訓を始めるべく、ハトーボーとマメパト達が早速空に上がる。

 

「ハトーボー、マメパト達の攻撃をかわすんだ」

 

「ハト!」

 

「マメパト達、やってくれ!」

 

「ポー!」

 

 マメパト達はハトーボーに目掛け、でんこうせっかを放つ。

 

「ハトッ! ハトハトッ!」

 

 ハトーボーは空中を縦横無尽に移動し、マメパト達の攻撃をかわしていく。

 

「ポー!」

 

「ハト!」

 

 しかし、全てをかわしきれた訳ではなかった。マメパト達の内の一匹のでんこうせっかが擦り、そこから次々と接する数と面が増えていく。

 

「ハトーボー、立て直せ!」

 

「――ハトッ!」

 

 気を引き締め、集中力を高めて前後左右上下、身体を捻るなどあらゆる移動を駆使。

 ダメージを受けつつも、動きのキレを少しずつ上げながら、ハトーボーは攻撃の嵐を回避していく。

 

「良いぞ、ハトーボー!」

 

「ハト!」

 

 その後も、擦りながらハトーボーは攻撃をかわし続ける。打倒オニドリルの為に。

 

「ハト……ハト……!」

 

「そろそろ休憩しないか?」

 

「ハトト!」

 

 しばらく経ち、夕暮れ。ハトーボーはかなり疲労していた。しかし、休憩と言われてもまだ特訓を続けるつもりなのか、顔を左右に振る。

 

「……クルー」

 

「ポポー……」

 

「ボーーー!」

 

 マメパト達のあのオニドリルは強いし、不安だなとの言葉を聞いて、ハトーボーは奮起すると飛んで特訓を再開した。

 

「相当勝ちたいんだな……」

 

「オニドリルに負けた悔しさ、マメパト達が襲われた怒りからだろうね」

 

「……でも、やり過ぎたら疲れで負けちゃわない?」

 

「危なくなったら、無理にでも止めよう。し過ぎは逆効果だからね」

 

 ハトーボーの気持ちは優先したいが、やり過ぎれば負けてしまうのは目に見えている。適度な所で止めねばならない。

 

「ピカピ、カーチュ……」

 

「ミージュマ……」

 

「ポカポカ、カブ」

 

「……タジャ」

 

「ルッグ……」

 

「クルクルル……」

 

 心配なのはサトシ達だけでなく、ピカチュウ達もだ。彼等から見ても、今のハトーボーは不安な様だ。

 

「……」

 

 ガマガルもピカチュウ達と同じく空を向いていたが、見ている対象は違った。

 

「ハトッ! ハトト……!」

 

 サトシ達に見守られるハトーボーは、ひっきりなしに来るマメパト達の攻撃を避けようとするも、疲労と傷から徐々に命中の回数、面積は増える一方。

 

「ハトーーーッ!」

 

「ハトーボー!」

 

 それでも避けようとしたハトーボーだが、遂に直撃。それも複数に堪らず落下していった。

 

「――よっと! 大丈夫か?」

 

「ハ、ト……!」

 

 落下するハトーボーを、サトシはギリギリでキャッチ。激突から守った。

 

「休もう。な?」

 

「ハトハト! ハト!」

 

 今度こそ休憩を持ち掛けるも、ハトーボーはまた断って翔ぼうとする。

 

「もう夜だ。これ以上は明日の体調に影響してしまうよ」

 

「ここらで休みましょ」

 

「休憩も立派な練習だよ」

 

「――ハト!」

 

 デント、アイリス、Nから説得されてもハトーボーは聞く耳を持たない。

 

「ガマガ」

 

「ガマガル?」

 

 どうしたものかと悩むサトシ達。そこにガマガルがハトーボーに話し掛ける。

 

「ガマガマ、ガママー、ガマママ。ガマ?」

 

 ガマガルは先ずハトーボーにしっかり休んだ方が良いですと言い、次にピカチュウ達に同意を求めた。

 

「ピカ、ピッピカ」

 

「ミジュ、ミジュマ」

 

「カブカーブ、ポカ」

 

「……タジャジャ」

 

「ルーグ」

 

「クルル、クル」

 

 一瞬だけガマガルを見てからのツタージャも含め、ピカチュウ達もハトーボーにしっかりと休むように伝える。

 

「ハ、ハト……」

 

 次々と諭され、ハトーボーも幾分か頭が冷えたのか、少し迷い出す。

 

「――ガマガマ?」

 

「――ポー」

 

「――クル」

 

 ガマガルは次にマメパト達にも、同意を求めた。マメパト達もハトーボーに休憩すべきと語る。

 

「……ハト」

 

 次々に言われ、遂にハトーボーも休憩を受け入れた。

 

「急いで手当をしましょ」

 

「今からなら、しっかり休めば明日には体調は万全になると思う」

 

「オニドリルに勝つためにも、しっかりとね」

 

「ハトーボー。今日はちゃんと休んで、勝とうぜ。お前の為にも、マメパト達の為にも」

 

「ハト」

 

 その後、サトシ達はハトーボーの手当を済ませると、オニドリルが来たときに備えて代わり番こしながら、一夜を過ごした。

 

 

 

 

 

「……」

 

 深夜。オニドリルが森の中で休んでいた。明日もやらねばならないからだ。

 

「……ドリ?」

 

 気配を感じてそちらを睨むが、出てきたポケモン達を見て警戒を解いた。

 

「ドリリ?」

 

 オニドリルは尋ねる。どうすれば良いのかと。そのポケモン達は彼に明日の予定を伝えた。

 

「――ドリル」

 

 全て聞き終え、オニドリルは頷く。ポケモン達は予定を伝え、そこから去った。

 

「……」

 

 恩ある彼等の為にも、自分は戦わねばならない。月を見上げ、オニドリルはその意を固めた。

 

 

 

 

 

「どうだ、ハトーボー?」

 

「ハト!」

 

 翌日の早朝。手当の甲斐もあり、ハトーボーは全快していた。

 

「ハト、ハトト」

 

「ハトーボー?」

 

「今回は自分だけで戦わせてほしいって言ってる」

 

「お前だけで?」

 

「多分、サトシと自分に自身の強さを証明したいんじゃないかな?」

 

「ハト」

 

 独断で負けたからこそ、サトシの指示なしで勝利することで、己の実力を自分と特に彼に証明したいのだ。

 

「分かった。今回はお前の実力だけで勝つんだぞ」

 

「ハト!」

 

「じゃあ、オニドリルを探そうか」

 

「この辺りにいると良いけど……」

 

「マメパト達も協力してくれるし、早く見付かるさ」

 

「クルー!」

 

「ポー!」

 

 お任せと、マメパト達は一斉に翼を上げ、複数の組に別れて周りを捜索開始。

 

「クルークルー!」

 

「ポーポポー!」

 

 しばらくすると、組の一つが焦った様子で戻って来た。

 

「どうした?」

 

「ポ、ポー……」

 

「組の一つが戻って来ないって言ってる」

 

「オニドリルに襲われたのかしら?」

 

「どうだろう。他の野生のポケモン達と何かしらの騒動を起こしたとも考えられるし……」

 

 ここの辺りは当然、オニドリル以外の野生のポケモン達がいる。何か起きたからといって、オニドリルが原因とは言い切れない。

 

「ボクが見てくるよ。サトシくん達はここで待ってて。オニドリルが原因なら直ぐに伝えるから」

 

「分かりました」

 

 Nの実力はサトシ達全員知っている。オニドリルや野生のポケモン達に襲われても対応出来るだろうと反対しなかった。

 

「マメパト達。その方向に案内してほしい」

 

「ポー」

 

 案内に従い、Nは四匹の仲間と共に向かう。

 

「この辺りかい?」

 

「クルー」

 

「ポーポー」

 

 この辺りの筈だと、マメパト達は告げた。

 

「皆、何が来ても直ぐに対応出来る様、集中するんだ」

 

「ゾロ」

 

「カブカブ!」

 

「ブブイ!」

 

「ゴド」

 

 N達は歩きながらも四方を警戒。何時でも対応出来る状態になる。

 一分程経つと、イーブイ側の茂みが揺れた。来るとN達が一斉にそちらを向くも――何も来ない。

 

「風かな? ――なっ!?」

 

 気を緩めたその一瞬だった。N達は突然襲撃される。

 

「ま、まさか……!」

 

 四匹は声も出す間もなく意識を失い、Nもポケモン達の笑みの表情を最後に眠りに付いた。

 

「……Nさん、遅いな」

 

「何かあったのかしら……」

 

 N達が向かって三十分。戻る所か合図すら一刻になく、サトシ達は心配し出す。

 

「もう少しだけ――」

 

「ポ、ポー……」

 

「クル……」

 

 待とうとデントが言おうとしたが、そこに先程の様に何匹だけ傷付いたマメパト達が戻って来た。

 

「Nさん達は!?」

 

「ポー……」

 

 マメパト達から身振り手振りや、ピカチュウからの翻訳では、突然何者かに襲撃されて必死に逃げて来たとのこと。

 

「Nさんがやられたのか……?」

 

「ウソでしょ……」

 

 Nの実力はよく分かっている。幾ら突然襲撃されたからとは言え、オニドリル一匹だけに負けるとは思えない。

 

「……何か別の理由があるのかもしれない」

 

「例えば?」

 

「オニドリル以外にもロケット団のポケモンがいたか、それとも他の要因か……。アイリス、僕と一緒にNさんの捜索や、調査をしよう。サトシは念のためここで待っててくれ」

 

「分かった」

 

「えぇ」

 

 この事態に、アイリスとデントの二人で捜索、調査を行う事に。

 

「出てきて、ドリュウズ、エモンガ」

 

「君達も出てきてくれ、ヤナップ、イシズマイ、マッギョ」

 

「……リュズ」

 

「エモ」

 

「ヤーナップ」

 

「イママイ」

 

「マギョ」

 

 直ぐ対応するべく、二人は手持ち全てを出す。

 

「気を付けろよ、アイリス、デント!」

 

「勿論よ~!」

 

「出来るだけ早く戻ってくるよ」

 

 サトシの忠告を聞きながら、手持ちやマメパト達と共にN達が向かった場所に歩くアイリスとデント。

 

「にしても、Nさんがやられるなんて……。そんなに強いポケモンがいるのかしら」

 

「その事なんだけど……。少し違和感があるんだ」

 

「違和感?」

 

「うん。幾ら相手が強くても、全く戻ってこないのは少し不自然だ」

 

 Nの実力なら、せめてイーブイ辺りは報告に出せただろう。なのに、それすら出来ていない。

 

「もしかすると……Nさんは別の理由で倒された?」

 

「それって一体……?」

 

 デントがオニドリル以外の可能性を考えた直後、さっきのN達と同じくまた茂みが揺れた。そして、デント達がそちらを向いた瞬間だった。

 

「マッ、ギョ……!」

 

「マッギョ!?」

 

 マッギョが倒れた。デントとアイリス、残りのポケモン達が振り向くと、その光景に目を見張る。

 

「ウ、ウソ……。なんで……!?」

 

「そうか……! そういう――」

 

 全員が意識を失ったのは、その直ぐだった。

 

「……アイリスやデントも戻って来ない」

 

「ピカ……」

 

「ハト……」

 

 N達に続き、二人やマメパト達まで戻らず、サトシ達は何かあったと理解せざるを得なかった。

 

「皆、出てきてくれ!」

 

「ミジュ!」

 

「ポカ!」

 

「タジャ」

 

「ルッグ!」

 

「クルル!」

 

「ガマガ」

 

 サトシは、ピカチュウやハトーボー以外の六匹を出す。

 

「皆が戻って来ないんだ。だから、周りを警戒しながらあっちに――」

 

「ドリル!」

 

「オニドリル!?」

 

 急いでN達を探そうと、行こうとした方向に指差したその瞬間、オニドリルが出てきた。

 

「ハト!」

 

「ハトーボー!」

 

 オニドリルを見て、ハトーボーが直ぐ様飛び立つ。

 

「ハトッ!」

 

「ドリル!」

 

「――ボーーー!」

 

「ドリ!?」

 

 初撃にハトーボーはでんこうせっか。オニドリルははがねのつばさでの防御をしようとしたが、ハトーボーが当たる直前で軌道を変更。弧を描いて、防御がない横から攻撃する。

 

「ハトッ!」

 

「ドリ……!」

 

 先日よりも速く、動きも荒さが無い上にキレが増していた。今の一撃でオニドリルはそれを把握し、昨日と同じ様には行かないと理解する。

 

「オニー……ドリルッ!」

 

「ドリルくちばし!」

 

「ハト!」

 

 ドリルくちばしに、ハトーボーはでんこうせっかで回避する。

 昨日のバトルで真正面でぶつかり合っても、押し負けるのは分かりきっている。パワーではなく、機動力や技で戦うのだ。

 

「ハトーーーッ!」

 

「ドリル!」

 

 避けたハトーボーは両翼を強く振るい、風を起こしてぶつける。控え目ではあるがダメージは確かだ。

 

「ボーーーッ!」

 

「オニッ! ――ドリルッ!」

 

「ハトッ!? ――ボッ!」

 

 ハトーボーのでんこうせっかを、オニドリルは当たった瞬間にドリルくちばしの回転で弾き、そこから直撃を命中させた。

 

「やるな、あいつ……!」

 

「――ハトッ! ボーーーッ!」

 

「ドリルッ!」

 

 オニドリルがやられっぱなしではないように、ハトーボーもそのままではない。かまいたちを放ち、急所直撃の痛い反撃を喰らわせた。

 

「良いぞ、ハトーボー!」

 

「ハト!」

 

「ドリ……!」

 

 手強い。下手すれば負けるとオニドリルは悟った。

 

「――ドリ!」

 

「……なんだ?」

 

「クルー!」

 

「ポー!」

 

 オニドリルが片翼を上げ、大きく叫んだ。するとマメパト達が周りから出てきた。

 

「マメパト達? 協力してくれるのか?」

 

「ハト。ボーボー」

 

 気持ちは嬉しいけど、こいつは自分だけで倒すハトーボーは告げると、オニドリルに向き合う。

 

「――クル!」

 

「――ポー!」

 

「なっ!? ハトーボー、かわせ!」

 

「ハト!? ――ボー!」

 

 その直後、マメパト達がオニドリルではなく、どういう訳かハトーボーに向かってでんこうせっか。サトシに呼ばれたおかげもあり、ハトーボーは直撃を避けれた。

 

「ドリル!」

 

「ピカチュウ、10まんボルト!」

 

「ピーカ、チューーーッ!」

 

 咄嗟の事で姿勢が崩れたハトーボーに、オニドリルがドリルくちばしを叩き込もうとしたが、ピカチュウの10まんボルトで妨害される。

 

「なんでハトーボーに――」

 

「ガマガ!」

 

「クルッ!」

 

「ポーッ!」

 

「ガマガル!?」

 

 ガマガルの声にサトシ達が振り向いた。するとマメパト達が自分達を見下ろしていた。害意に満ちた視線で。

 

「クル!」

 

「ポー!」

 

「かぜおこし! ポカブ、ねっぷう! ツタージャ、たつまき!」

 

「ポー、カーーーッ!」

 

「ター、ジャ!」

 

 複数のマメパトによる風を、ポカブとツタージャの熱風と竜巻の連携技で打ち消す。

 

「どうなって……!?」

 

 今のと言いさっきのと言い、マメパト達は明らかに自分達を狙って攻撃していた。どう見ても意図的としか思えない。

 

「まさか……!? お前ら、オニドリルと仲間だったのか!?」

 

 サトシの問いに、マメパト達はニヤリと邪悪さを感じる笑みを浮かべた。そう、マメパト達とオニドリルはグルだったのだ。

 数日前にオニドリルが傷付いて倒れた所を助け、それ以降周りの縄張りを得るため、マメパト達は恩を返したいと言うオニドリルを他の野生のポケモン達に襲わせたのだ。

 先日襲われたのは、他の野生のポケモン達からの疑いを避けるための演技。

 ハトーボーの特訓に付き合ったのも、勿論彼女の為ではなく、疲れさせて敗北させるのが狙いだった。

 これはガマガルによって同意を持ち掛けられ、怪しまれるの避けるために失敗したが。

 

「……そうか、Nさん達やデント、アイリス達もお前らがやったんだな!」

 

 そして、マメパト達が敵ならば簡単に襲われたのも納得出来る。何しろ、自分達は情けない事に敵を信頼して連れていたのだから。怪我も自作自演だったのだろう。

 ただ、簡単に襲われたとしてもN達が容易くやられたのが引っ掛かる。さっきの一撃で、このマメパト達の単純な実力は高くないと把握出来るからだ。

 

「クルー!」

 

「ポー!」

 

「あれは……! 皆、避けろ!」

 

 マメパト達がある技を発射、サトシ達はかわす。

 

「今の、さいみんじゅつか!」

 

 目から催眠の波動をぶつけ、相手を眠らせる技だ。

 

「皆はこれで……!」

 

 一部の特性や技以外では、受ければ実力関係無しに眠ってしまう技だ。不意打ちで仕掛けられれば為す術も無かっただろう。

 

「皆、マメパト達も倒すぞ!」

 

 マメパト達が敵なのは最早疑う余地はない。サトシ達はマメパト達も倒すべく構える。

 

「ピカチュウ、10まんボルト! ミジュマル、みずてっぽう! ポカブ、ひのこ! ツタージャ、たつまき! ズルッグ、きあいだま! クルミル、はっぱカッター! ガマガル、ハイドロポンプ!」

 

「ピー、カチューーーッ!」

 

「ミジュ、マーーーッ!」

 

「ポーカ、ブーーーッ!」

 

「ター、ジャ!」

 

「ルー、グッ!」

 

「クルルルルーーーッ!」

 

「ガマガーーーッ!」

 

「クル!」

 

「ポッ!」

 

 一斉に遠距離攻撃を放つサトシ達だが、マメパト達は距離を活かして避けた。

 

「簡単には当たらないか……!」

 

「クル!」

 

「ポー!」

 

「ドリル!」

 

「ハトッ!」

 

「ハトーボー!」

 

 ハトーボーはオニドリルとマメパト達の連携で、回避するのがやっと。

 それに同類に裏切られたショックから精神的なダメージを受けていた。作意があるとは言え、一緒に訓練をしていたので尚更だ。

 

「クー!」

 

「ポポー!」

 

「ガマガ!」

 

 またマメパト達がさいみんじゅつを放つも、ガマガルのマッドショットで打ち消される。

 

「ありがとう、ガマガル!」

 

「ガマガマ!」

 

「このままじゃ不味い……! ピカチュウ、ポカブ、クルミル、ハトーボーの方にいるマメパト達に10まんボルト! ねっぷう! はっぱカッター!」

 

「ピカーーーッ!」

 

「ポー、カブーーーッ!」

 

「クルルルルーーーッ!」

 

 電撃、熱風、草刃により、マメパト達とオニドリルが引き離される。

 

「ハトーボー、マメパト達は俺達が何とかする! お前はオニドリルを倒すんだ!」

 

「ハ、ハト……」

 

 引き続き、オニドリルの撃破を指示されるも、ハトーボーはマメパト達の裏切りから戸惑いがあった。

 

「――ハトーボー!」

 

「ボ、ボー?」

 

「勝て! お前の為に!」

 

「ピカピ!」

 

「ミジュミジュ!」

 

「ポカカ!」

 

「タジャ」

 

「ルッグ!」

 

「クルル!」

 

「ガマガマ」

 

 サトシ達の声に、ハトーボーは気付いた。確かにマメパト達は同類。しかし、今の仲間は彼等ではなく、サトシ達だ。

 

「――ハト!」

 

 ならば、今の仲間達の為。そして、サトシの言うように、自分の為に戦おう。その決意を以て、ハトーボーはオニドリルと向き合う。

 

「……」

 

 ハトーボーから一切の負の感情が消えたのを、瞳からオニドリルは察した。

 

「ハト!」

 

「ドリ!」

 

 迫るハトーボーに、オニドリルは背を向ける。連携が出来ないならば、確実に倒す為に彼女を疲弊させる策に出たのだ。

 追うハトーボーと逃げるオニドリル。二匹鳥ポケモンによる追走劇がスタートした。

 

「皆! 俺達はハトーボーがオニドリルとの勝負に集中するためにも、マメパト達を倒すぞ!」

 

 サトシの言葉に、ピカチュウ達は声を上げる。彼等はマメパト達に何度も何度も攻撃を仕掛けるが。

 

「くそ……!」

 

「クルクルー」

 

「ポーポー」

 

 苦い表情のサトシ達。何故なら、マメパト達は全く接近してこずに、上空から安全にかぜおこしやさいみんじゅつを放つばかりなのだ。

 

「せめて……!」

 

 空を飛べるポケモンがいたら、攻めようがある。しかし、ハトーボーはオニドリルとの勝負に専念しているので出来ない。

 

「……」

 

 攻めれずに苦心するサトシ達だが、一匹だけ何かを考えていた。

 

「クルッ!」

 

「ポッ!」

 

「また離れた場所からのかぜおこしか! 皆、かわせ!」

 

 一斉にかわすピカチュウ達だが、そんな中一匹だけ違う行動を取る。

 

「――ガマガ!」

 

「ガマガル!?」

 

 ガマガルは突如走り出し、マメパト達の向こうへと去った。

 

「一体、どうし――」

 

「クルポッ!」

 

「わわっ!」

 

 ガマガルが去って驚く間を狙い、さいみんじゅつが放たれたが、サトシは急いでかわす。

 

「あぁもう……! とにかく、マメパト達を何とかするぞ!」

 

 戦力が一つ減ったが、それでもどうにするしかない。

 サトシ達は回避しつつ何度も攻撃するも、安全な場所から狙うマメパト達には当たらない。ハトーボーは動き回るオニドリルの追跡で精一杯。

 このまま攻めあぐね、疲労からマメパト達やオニドリルにやられるしかないのか。そう思ったその時だった。

 

「――ゾロア、ハイパーボイス。ポカブ、はじけるほのお。ボスゴドラ、ラスターカノン」

 

「キバゴ、りゅうのいかり! エモンガ、ほうでん!」

 

「ヤナップ、がんせきふうじ! マッギョ、でんげきは!」

 

「ゾローーーッ!」

 

「ポカー、ブーーーッ!」

 

「ゴドラーーーッ!」

 

「キ~バ~ゴ~~~!」

 

「エ~~~モ!」

 

「ヤナッ!」

 

「マッギョ!」

 

「ポッ!?」

 

 七つの攻撃が、マメパト達の背後から迫る。慌てて避け、そちらを見る。サトシ達もだ。すると複数の人とポケモンが見えた。

 

「皆!?」

 

「間に合った様だね」

 

「良かった~」

 

「サトシ、大丈夫かい!?」

 

 それはマメパト達によって眠らされた、N達だった。

 

「俺は大丈夫! でも、そっちはなんで――」

 

「ガマガルがあたし達を見付けて起こしてくれたの!」

 

「ガマガマ!」

 

「お前……皆を探すために向かったのか!?」

 

「ガマガ!」

 

 そう、ガマガルはN達を連れてくるために戦場を離れたのだ。

 場所も方角や距離、奇襲しやすい等の条件から特定するのは多少時間は要したが、差ほど難しくは無かった。

 

「にしても、よくもあたし達を騙してくれたわね~!」

 

「このお返しはしっかりとさせてもらおうか」

 

「反省してもらう」

 

「これでこっちが有利だ! オニドリル! ハトーボーとしっかり戦ってもらうぜ!」

 

「ハト!」

 

「ドリ……!」

 

 N達が戻って来た事で、こちらが不利になった。自分だけなら簡単に逃げ切れるが、オニドリルには恩があるマメパト達を見捨てる選択肢はない。ハトーボーを倒し、人質にして逃走しか無かった。

 

「ドリ!」

 

「ハトッ!」

 

 身を翻し、オニドリルははがねのつばさ。ハトーボーはでんこうせっかで避ける。

 

「ドリリ!」

 

「ハトトッ!」

 

 オニドリルは続けてはがねのつばさ。先程の追走でスピードが多少なりとも低下しての連続攻撃だ。

 

「ハト……!」

 

 オニドリルの戦法に、ハトーボーは焦りを感じる。相手はスピードや小回り以外は全て上回っており、その点も体力の低下のせいで縮まる一方だ。

 

「……」

 

「ドリ、ルーーーッ!」

 

 トライアタックを、オニドリルは射つ。それに対し、ハトーボーはトライアタックに向かってでんこうせっかを仕掛ける。

 

「ハト、ボーーーッ!」

 

「ドリルッ!?」

 

 パワーの差で吹き飛ぶハトーボーだが、その勢いを活かして加速。スピードと威力が増したでんこうせっかをオニドリルに叩き込む。

 

「ハト! ボッ……!?」

 

「麻痺か……!」

 

「でも、前は氷にならなかった!?」

 

「トライアタックは、三つの力を込めた技の為、三つの状態異常のどれかに掛かるんだ」

 

「確か、残るは火傷だったはずだよ」

 

 つまり、前は氷。今回は麻痺になってしまったと言う訳である。

 

「それにしても、麻痺か……!」

 

 氷状態程ではないが、よりによってハトーボーの長所である機動力を奪う状態異常だ。

 

「ドリル!」

 

「ハト……!」

 

 一気に追い込みを掛けようと、オニドリルはドリルくちばし。ハトーボーは避けるも、その身体からバチバチと微弱な電気が弾ける。

 

「……」

 

 このまま戦い続けても、麻痺がある以上は間違いなく負ける。ならば一か八か、次の一撃で決めるしかない。

 

「ハトー……!」

 

「ドリー……!」

 

 ハトーボーは翼を広げ、一気に加速。オニドリルは回転しながら突撃。つばめがえしとドリルくちばしがぶつかり合う。

 

「真正面からぶつかった!」

 

「だけど、パワーはオニドリルの方が上だ!」

 

 事実、ハトーボーは徐々にオニドリルに押されていた。

 

「ハトト……!」

 

「ドリルル……!」

 

「押し負ける……!」

 

 このまま吹き飛び、昨日の様にまた負けてしまうのか。ハトーボー自身もそう思ったその時、一つの大きな声が響き渡る。

 

「負けるな、ハトーボーーーーッ!」

 

「……!」

 

 サトシだった。指示は出せないが、せめて僅かでも力になればとありったけの声援をハトーボーに送る。

 

「ピカピカーーーッ!」

 

「ミジュ、ミジュジューーーッ!」

 

「ポカ、カーブーーーッ!」

 

「タージャ!」

 

「ルッグ、ルググーーーッ!」

 

「クルクルルーーーッ!」

 

「ガ、ガマガーーーッ!」

 

 そして、ピカチュウ達もまたハトーボーに声援を送っていた。頑張れ、負けるな、勝てと。

 

「――ハト!」

 

 仲間達の声に、ハトーボーは折られかけた心を奮起させる。

 彼等が応援してくれた。負けられない。負ける訳には行かない。ハトーボーは限界まで――いや、限界以上に心を昂らせ、力を振り絞る。

 

「――ハトーーーーーッ!!」

 

「ド、ドリ!?」

 

「な、なにあれ!?」

 

「金色の光!?」

 

 雄叫びと共に、ハトーボーに変化が起きた。身体の周りに金色のオーラが漂い、技の威力がぐんぐん上昇していく。

 

「あれは、もしかすると……」

 

「――ゴッドバード!」

 

 そう、ハトーボーのつばめがえしが変化――いや、進化していたのだ。飛行タイプ最強の技、ゴッドバードに。

 そして、技がゴッドバードに進化した事で、今度は逆にオニドリルを押し始めていた。

 

「ド、ドリルル……!」

 

「――クル!」

 

「――ポー!」

 

 逆に押され出されたオニドリル。不意に、その耳に恩人であるマメパト達の声が聞こえた。

 僅かでも力を貸してくれる。彼のそんな期待に――マメパト達は激突に注目している隙に高く飛び、背を向けて飛んだ。絶好の機会だと、彼等は逃げたのだ。

 

「ドリ、ル……!?」

 

「ハトー……ボーーーーーッ!!」

 

 

 マメパト達の裏切りにオニドリルがショックを受けたのと同時に、ハトーボーが残る全ての力を引き出す。

 ゴッドバードの光が更に輝き、ドリルくちばしを突破。大爆発を起こし、オニドリルが落下する。

 

「ド、ドリ、ル……」

 

「ハトーーーーーッ!!」

 

 落下したオニドリルは、戦闘不能になっていた。それを見て、爆発の煙が晴れた場所からハトーボーが翼を広げ、勝利の雄叫びを上げる。

 

「勝ったーーーっ! ハトーボーが勝ったぞーーーっ!」

 

「すごいすごい! 大逆転!」

 

「仲間の声を力に勝利。実にサトシ達らしい友情のテイストだよ」

 

「ふふふ、やっぱりキミ達は凄いな」

 

「ハトーボー!」

 

「ハト!」

 

 サトシとハトーボーは互いに近寄り、サトシがハトーボーを抱き締める。

 

「リベンジできたな! それにゴッドバードも!」

 

「ハトッ!」

 

 オニドリルへのリベンジだけでなく、おそらく一時的だろうが、ゴッドバードも発現させた。その結果に彼等は笑い合う。

 

「ピカピ!」

 

「ミジュミージュ」

 

「ポカポカ!」

 

「タジャ」

 

「ルーグ」

 

「クルクル!」

 

「ガマガー」

 

「ハト。ハトト」

 

 また、ピカチュウ達もハトーボーのリベンジに喜び、誉めていた。ハトーボーはそんな彼等にこちらこそありがとうと頭を下げる。皆の声があったからこそ、オニドリルに勝てたのだから。

 

「それとガマガル。お前もありがとな」

 

「ガママー」

 

「そうよね~。ガマガルがあたし達を連れて来なかったら……」

 

「下手すると、サトシ達までやられてた可能性もあるからね……」

 

「正に影の功労者だ」

 

 ハトーボーの勝利に目が行きがちだが、それにはガマガルの活躍があった。正しく影の功労者である。

 

「ハトト」

 

「ガマガマ。――!」

 

「タージャ」

 

「マッギョ」

 

 サトシ達に誉められ、ガマガルはいえいえ、そんなと謙虚にしつつ、これで良しと内心でほくそ笑む。信頼を得れたからだ。

 しかし、その直後に背後からツタージャとマッギョに調子には乗らない様にと小さい声で言われ、チッと心の中で舌打ちする。

 

「ハトッ……!」

 

「大丈夫か、ハトーボー?」

 

 バチッと、ハトーボーは電気を感じた。麻痺のせいだ。

 

「直ぐにハトーボーの手当をした方が良いわね」

 

「うん。この先にポケモンセンターはあるけど、結構離れてる。手当をしてからが良い」

 

「それに、彼も保護しないとね」

 

「ドリ……!」

 

 その彼とは勿論、オニドリルの事だった。意識は取り戻したが、ダメージのせいで動けない様だ。

 

「オニドリル、お前を保護させてもらうぜ」

 

「そうよ。あんな連中の為にこれ以上頑張る必要ないの」

 

「君にとっては仲間か、恩を返すべき相手だったんだろうけど、マメパト達にとっては使い捨ての駒に過ぎなかったんだよ」

 

「もうこれ以上戦う理由もない。だから、大人しく保護されてほしい」

 

「……ドリ」

 

 ハトーボーには敗北しただけなら未だしも、マメパト達から裏切られた。

 そのショックからもう足掻く気力すらなく、オニドリルは保護を受け入れ、サトシが取り出したモンスターボールに入った。

 

「オニドリル保護!」

 

「手当を済ませたら、ポケモンセンターを目指そうか」

 

「マメパト達にやり返せなかったのはくやしいですけど……」

 

「もう逃げられちゃったしね。諦めよう」

 

 サトシ達はハトーボーの手当を済ませると、ポケモンセンターに向かって歩き出した。

 

 

 

 

 

「はーい。お預かりしたポケモンは元気になりましたよー」

 

「タブンネ~」

 

「ハトー!」

 

「ありがとうございます」

 

 夜。ポケモンセンターに到着。預けて元気になったハトーボーが笑みを浮かべた。

 

「……」

 

 少し離れた場所では、同じく治療されたオニドリルもいた。

 

「それと、このオニドリルは責任を持ってお送りします」

 

「お願いします。――オニドリル」

 

「……ドリル?」

 

「元気でな」

 

「……ドリ」

 

 オニドリルは礼儀正しく頷くと、大人しくモンスターボールに戻る。この後は、転送システムで適切と判断されたジムがある街に送られるのだ。

 

「皆さん、今日はもう遅いですし、ここで泊まって行ってはどうですか?」

 

「そうさせてもらいます」

 

 ジョーイの厚意に甘え、サトシ達は今日はポケモンセンターで一晩を過ごすことに。

 

「にしても、今回も大変だったわね~」

 

「あはは、確かにね」

 

 オニドリルだけでなく、実は腹黒なマメパト達まで戦う羽目になったのだから。

 

「……前の件と言い、ポケモン達も色々な者がいるって改めて思い知らされたよ」

 

 今回の件で、改めてポケモンでも悪者がいることをNは理解。そんな彼にサトシ達は苦笑い。

 

「けど、オニドリルの保護は出来ましたし、ハトーボーもまた一段と強くなりました。なっ」

 

「ハト」

 

 片翼を上げ、今後も一緒にとハトーボーは微笑む。

 

「それだけじゃなく、ハトーボーとキミ達の絆も強くなったとボクは思うな」

 

「そうですね。今回の勝利は正に、仲間の絆が生んだテイスト」

 

「そういう点じゃ、あっちとは真逆よね」

 

 本当の繋がりのおかげで勝利したハトーボー。偽りの繋がりのせいで敗北したオニドリル。正に真逆である。

 

「送られた先で、今度は本当の仲間と会えると良いなー」

 

 敵とは言え、裏切られたオニドリルにはサトシ達も心配な様子だ。

 

「まぁ、そこら辺は大丈夫じゃないかな? ジムリーダーもしっかりやるだろうし」

 

 デントは今のジムリーダー全員と親密と言う訳では無いが、それなりの交遊はある。その中では、不真面目な人物はいなかった。

 

「それに――」

 

「それに?」

 

「いや、なんでもない」

 

「なんだよ、気になるなー」

 

「もしもの時の秘密さ」

 

「ちぇ」

 

 続きが気になるサトシだが、デントにそう返される。ちなみに、彼はこう言おうとしていた。

 もしかすると、またあのオニドリルと会うかもしれないと。

 ちょっと膨れっ面なサトシに、アイリスが子供ね~や、Nがまあまあと宥めたりと、和気藹々としながら彼等は寝室へと向かった。

 

 

 

 

 

「クルー……!」

 

「ポー……!」

 

 深夜。逃げ出したマメパト達が、夜の森の中で今後の予定について話し合っていた。

 オニドリルはいなくなり、今後はまた自分達だけでやるしかない。めんどくさいと彼等が溜め息を吐いたその直後だった。周りから次々と光る目が出てきたのだ。

 

「ポ、ポッ!?」

 

 それはマメパト達の策略で縄張りを奪われた、野生のポケモン達だった。

 実は彼等の一部が今日の一件を目撃しており、そこからここ最近のオニドリル襲撃がマメパト達の仕業だと気付いたのだ。

 

「ポ、ポー! ポポー!」

 

 落ち着いて、冷静になって話し合おうとマメパト達は言うも、襲撃された彼等の怒りは収まらない。

 

「ポ、ポーーーッ!」

 

 その後直ぐ、仕返しにマメパト達は野生のポケモン達に襲われ、奪った縄張りを全て取り戻されただけでなく、しばらくは彼等の子分としてこき使われる日々を送ったのであった。

 




 すいません。書ききれてなかったのでその部分を追加しました。
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