ロウきゅーぶ! ~もう一人のコーチ~   作:アレイスター

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第九Q 燃え上がれ

どこかで見たことある顔だな。

それが、最初に男の姿を見た昴の感想だった。

だが、次の瞬間、昴は頭の中で何かがはじけるようにして男の姿を自分の記憶の新しい部分にある一人の人間の像と頭の中で一致させた。

(あの時の、後ろ向きシュートの人……!)

あの時とは服装も違うし、顔を見たのもそれほど長い時間じゃない。だがそれでもその印象は強烈で鮮明に昴の頭の中に残っていたのだ。

 

「なに?俺ってそんなに歓迎されてんの?」

 

男は誰にも聞こえない独り言を思わずと言ったようにつぶやいていた。

なんとなく周りの空気を察して、だがその空気があまりにも自分の予想していた展開と違っていたようで、男は疑問の顔を隠せない。

それに対して小学生たちは男が来たことに心底ほっとしたようでみんな胸をなでおろしている。

真帆は昴のところからすーっと男のもとへと走り寄っていった。

 

「もう!遅いよ!ずっと待ってたんだよ!?」

 

真帆の理不尽な怒りに対して苦笑顔で片手をあげて男は詫びる。

そして、何やら二人だけの密談が始まった。

男も真帆も見事に声を殺し、おそらく事情を知っている小学生たちでさえ、何も聞こえずドキドキしている、というように二人を見つめていた。

真帆の性格と言動を知っている彼女たちならば、例え聞こえていたとしても、どういう内容をこれから話すのかでドキドキしてなければならないのかもしれないが。

 

もちろん、昴にも男と真帆が何をしゃべっていたのかはなにも聞こえない。

だが、密談の最中に一度だけ男と昴の目があった。

謎の多すぎるその男に対して昴は相手の事情を探るようにキッと強い目で、男は興味深そうな目でお互いの視線を交わす。

だが、ほんの数秒で男は真帆に再び視線を戻す。

おそらく真帆の話の流れでこっちの方をみたのだろう。

どうやら、あの二人が話しているのが自分がらみのことだということは容易に想像がついた。

我慢が出来なくなってついに昴は真帆以外の小学生たちに対して口を開いた。

 

「なぁ、これがどういう事情なのか、説明してもらえないかな?」

 

すると、小学生たちがはっとなったように昴の方を向いた。

一番に話の口火を切ってくれたのは、この中ではおそらく一番昴と関係が親しい中にある智花だった。

 

「ご、ごめんなさい!何も言わなくて!えーっとですね……」

 

智花は真帆につい最近、専属コーチがついたこと。

そして、そのコーチが昴と同じ高校生で、どっちが強いという話になり、真帆の提案によってそのコーチがココに呼び出されていることを昴に説明した。

なお、自分が昴の見方をしたことはしっかりの包み隠していたのだが。

 

「それで、ともったら、昴さんの方が絶対強いって、意地はっちゃって」

 

見事に紗季によって暴かれてしまった。

 

「もう!うぅ、せっかく隠してたのに。」

 

顔を真っ赤にして智花は先に抗議する。

昴もそれに対しては苦笑を浮かべるほかなかった。

そして、同時に今日の練習のことの身の入り方についても少し得心がいった気がした。

 

それにしても、これはどんな偶然なのだろうか、と昴は思った。

真帆の専属コーチについたという高校生は自分と同じ高校に通っていて、つい今日の昼休みに一度顔合わせをしていたのだ、驚くのも無理はない。

 

「それで、昴さん。あの人と1on1をしてもらえませんか?」

 

昼休み以降、昴はあの男のことについてまず、わかる限りを調べようと思った。

制服を着ていたことからあの男はまず、七芝高校の生徒に間違いない。

それにあの実力ならきっと部活だってバスケに入っていたはずだ、と考えた。

昴は七芝高校には、スポーツ推薦で入学していたため、仮入部前からその部活動に参加することができた。

当然、昴は少しでも早く強くなるために練習にはすべて参加していた。

だが、どれだけ思い出しても、あんな男の影は見たこともなかったし、そんなプレイをしている姿も見たことがなかった。

結局高校の出来事から男の情報を得ることはできなかった。

 

そして、次に中学。

昴は中学時代、どうやったら相手チームに勝てるかを徹底的に研究していた過程でいくつもの全中の試合のビデオをその頭に突っ込んできた。

その中にあんな奴がいなかったか、というのを考えたのだ。

だが、結果は遺憾ながらまったく記憶になかった。

あんなプレイをする選手がいれば、頭に残っていないはずはないのだ。

 

つまり、彼はまったくバスケの表舞台に出ていない人間ということ。

たったそれしか昴にはわからなかった。

明らかに実力と成績が釣り合っていない。

そのことが、さらに昴を謎の迷宮へとさまよわせた。

実力と成績が釣り合わなければ、おかしいと考える辺りがどこまでもバスケのことだと理知的に考える癖のある昴らしいと言える。

 

だからこそ、昴は小学生たちに感謝した。

自分が対峙すれば、あるいは男のことが少しはわかるかもしれないと思ったからだ。

 

「わかったよ。その試合、受けさせてもらう」

 

昴のその言葉に一歩遅れて真帆の方もこちらにいる小学生たちに向かって両手で大きな丸印サインを出した。

おそらく向こうもオーケーを出したということだろう。

再び、二人の視線が交差した。

今度は男は昴のことを鼻で笑って、昴との視線を切った。

 

 

―――上等だ、やってやる!

 

 

男の態度が昴を余計に燃え上がらせていた。

 

 

               ☆

 

 

この体育館に入ってきて辺りを見回したときに、あの昼休みにバスケをやっていた長身君がココにいたことにはさすがに驚いた。

真帆に聞いてみると、彼――長谷川 昴君はかなり頭が切れるらしく、たった一週間で一人を除いて全員が素人であったチームを地区大会優勝である男子バスケ部との対決で見事勝利に導いたらしい。

予想に反してすごい実績を持っていたために俺は再び彼をもう一度じっくりとみておきたくて、視線を彼へとやった。

どうやら、向こうも俺には興味を持ってくれているらしい。

疑り深い性格なのだろうか、かなり視線は鋭かったが、おそらくそれは未知なものへの警戒心、と置き換えていいものだろう。

 

真帆がこちらに一人で寄ってきたのには理由があって、それは俺が昴君と1on1の勝負をすることをお願いするためだった。

別に試合をするのは一向に構わない。

だけど、彼の立場を失わせることへの懸念がないわけではない。

もちろん、体育館の時の実力が体育の時の俺のように周りに合わせて本当の実力でなかったのなら、まだわからないが、もしあれが全力ならば、

 

 

―――彼はあまりに遅すぎる。

 

 

だから、俺はその申し出を一度断った。

 

別に遅いことが問題ではない。

彼は頭が人一倍キレるのだから、それが立派な武器だ、才能だ。

人によって武器は様々だ。

だが、彼女たちはどう見るだろう。

彼の実力の方向性を見誤っていないだろうか。

それが不安だったのだ。

わざと負ける、というのも思い浮かんだが、そんなことをしても誰も、おそらく昴君はきっと納得しないだろう。

昼間にプレーを見せたのは失敗だったな。

そんなことを考えていた俺に真帆は言った。

 

「えー!?なんで!?別にいいじゃん!あたしたち別にどっちが勝っても気にしないよ?だって、あたしにしてみれば二人ともすごいのは当たり前だし!」

 

「じゃあ、どうして勝負なんてさせたがるんだよ?」

 

「どっちが強いのか気になるから!」

 

ものすごく支離滅裂なことをいっていることに気付いてくれ、真帆。

だが、真帆は俺の予想だにしない言葉を続けて言った。

 

「なにより二人の全力が見てみたいんだ!」

 

俺には、この言葉に対する反論は思い浮かばなかった。

人相手に全力をふるうのって何年振りだろう。

ふと、そんなことを考えた。

それからしばらく考えたが、

長い間人とバスケをしていなかったことに鬱憤のたまってた俺は、結局真帆たちの言葉を無根拠に信じることにして、全力を投じることに決めた。

 

「後悔するなよ、その言葉。お前が俺に火をつけたんだぜ?」

 

俺が口もとを釣り上げると、真帆も同じように口もとを釣り上げて

 

「すばるんも強いんだから、覚悟しとけよ!」

 

そう言われて、俺は再び昴君の方を見た。

だが、今回はあえて挑発して鼻で笑って返した。

 

さぁ、熱くなれ。

 

燃え上がれ。

 

実力以上のものを俺に見せてみろ。

 

でないと試合はあっという間にけりがついちまうぞ。

 

 

 




まさか、まさかのまだ試合が始まらないというwww
自分でもびっくりですね。

まぁ、でも安心してください?というのが正しいのかどうかはわかりませんが、私も主人公と同じく試合を描くことに燃え上がっていますので
今日中に試合の決着までを書き上げてもう一話UPしたいと思っています。
ので、今しばらくの間お待ちください。

あと、今回先の展開を急いで少し文がいつにもまして雑になっているかもしれませんので、全部上がった後に修正などしていこうと思いますが、もし読んでいて思うところがあれば、感想なんかに書いていただけると助かります。

普通の感想でももちろんかまいません。ぜひぜひ、書いてくださいませ。

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