ロウきゅーぶ! ~もう一人のコーチ~   作:アレイスター

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今回は本当にたくさんの感想ありがとうございました!

やはり最強というからには無敗で勝ちに貪欲であることが求められる、ということを思い知らされました。

もう少し、その辺りを今後真の試合を書くときは意識しなければなりませんね。



第十一Q 真実

昴をベットに寝かせた真は、用事も済んだことだし、一刻も早く汗を流したかったので、小学生の任せて、という言葉に甘えて帰宅途中だった。

さすがに、彗心学園に来た時のように家から走ってくるような元気はさすがに残っていなかったので、真は学園から出ているバスを利用することにした。

開いている椅子が多くあったので、その一席に腰を下ろして、窓際に肘をつく。

真の頭の中では、最後の昴のシュートがなんども再生されていた。

昴が徐々に真の動きに合わせてきていたことには気づいていた。

ボールがいつの間にか奪うのではなくはじき出すのが精いっぱいになっていた。

それが、真のスピードが単に落ちていただけのことに気付いたのはおそらくあの中では真本人ただ一人だっただろう。

きっとみんなは昴のスピードが上がって真の動きについていき出したと思ったに違いない。

実際、動きに慣れてきて、徐々にうまくなっているのもそう見せかける手助けをしていた。

だが、動きになれただけでは決定的なスピードの差はうまらない。埋まるわけがない。

だが、最後のシュート、あれに真はついていくことができずにシュートを打たせる結果になった。

息を抜いていたつもりはない。

あのタイミング、真自身反応はしていたのだから。

だが、真の体が真の脳から送られる今すぐ動け、という信号を拒否したのだ。

一人、公園で練習をしていた時にこんなことを感じたことはなかった。

当然と言えば、当然だろう。

一人で練習していればそれなりにセーブをかけられる。

だが、今回、真は昴の成長力を甘く見て最初から飛ばしまくって無駄な動きを散々して見せた。

そして、自分がどこで限界なのかに気付かされた。

それは本来の真の限界(・・・・・・・)とは異なるものだったからこそ気づけなかった限界だ。

ついに大事な場面で動けなくなってしまった真がそこにはいた。

(くっそぉお!それにしても悔しいな、最後の一点)

どれだけ自分に言い訳をしても最後決められた事実に変わりはない。

いずれ、もう一度、次は完璧な状態で完封する。

そう心に決めて、試合に関しての思考を打ち切ろうとした。

すると、突然声がかけられた。

 

「あの……!」

 

声の主は湊 智花だった。

体操服にスパッツと学校からそのままの姿でわざわざバスに乗り込んできているのだから無防備すぎると言わざるを得ない。

そう考えた瞬間、真はふと自分がバスに乗り込む前のことを思い出した。

そういえば、幻聴のような小さな声が一度聞こえたような気もする、と。

おそらく真にスルーされて追いかけてきたのだろう。

だが、人間一度無視されてしまうと、二度目は中々声をかけづらいものである。

おまけに今日あったばかりの俺なんかは、特にそうである。

だから、真に何か反応があるまで待っていたのだろう。

それで思考を打ち切ったときの反応を見て再び智花は真に声をかけたのだ。

それにしても、よく自分もこんな娘が近くにいて気づかなかったものだと、思う。

 

「どうしたんだ?」

 

わざわざここまで追いかけてきたと言うことは、よほどの理由があるのだろう。

そう、真は思っていた。

 

「さっきの試合、本当にすごかったです!私、感動しました!」

 

パッと花が開いたように笑顔で智花は答えた。

 

「……ありがとう。」

 

最後に醜態をさらしてしまった試合を感動したと言われても、という気持ちが真の言葉に間をおかせた。

 

「で?」

 

「ふぇっ?」

 

別に脅かしたつもりは真にはまったくなかったのだが、真の言葉に智花は驚いたように反応した。

 

「何か、ほかに言いたいことあるんだろ?」

 

まさか、それを言うためにわざわざバスの中まで追ってきたとは真には思えなかった。

 

「えぇと、その、最後。どうして、昴さんのボールに飛びつかなかったんですか?」

 

思わず真は目を丸くした。

なんて目ざとい娘なんだろうか、と。

最後にワンテンポおいた時、真はボールを奪うことはできずともファールをしてでも飛び上ってボールの軌道を逸らし、シュートを防ぐことは真のスピードならば容易にできたはずなのだ。

今回のルールであれば、ファールをしたとしてもフリースローになるわけではない。

9回もの間ずっと昴のオフェンスを完璧に真は防いできているのだ。

おそらく、それを防いでいたら次はもう、昴に点数を取るチャンスは昴の体力的にもなかっただろう。

だが、あえて真はそれをしなかったと、それはなぜだと、そう智花は言いたいのだろう。

なかなかどうして、小学生は侮れないものだ、と真は思った。

だが、それを見抜いたところで本当の理由を教えるわけにはいかなった

 

「成長点かな。」

 

最初から真にディフェンスで飛び上るという選択肢がなかったことを智花にも、誰にも教えるつもりはない。

昴が疲労しきっているあの場面なら特に真は飛び上ることは避けたかったのだ。

ゆえに、意表を突かれた時点で真は負けを認めるしかなかった。

負けた腹いせに智花には精いっぱいかっこつけた言動を取った。

おそらく、昴が速くなったと錯覚しているであろう、ということも予想して。

 

「成長点、ですか?」

 

「そう、最初からは思えないほどに彼は試合の中で成長して、俺の動きについてきた。だから、おまけみたいなもんだな。一点では俺に勝ったことにもならないからな。」

 

だが、真の想像を超えて智花は二人の試合をしっかりと見ていた。

 

「……嘘、ついてますよね?」

 

少し不安げに智花は言った。

自分の言っていることに自信が無いのだろう。

 

「嘘?どうしてそう思う?」

 

きっとなんとなく、といったあいまいな答えが返ってくるに違いない。

そうなればこっちのもんだ、そう思って真は聞いた。

だが……

 

「私、昴さんとは毎朝一緒に練習させていただいているんです。だからわかるんです。昴さんは今日も決して実力以上を出してないって。どれだけ、いつも以上のように見えても感じで分かるんです。むしろスピードが徐々に落ちて行ったのは真さんじゃありませんか?」

 

痛いところを突かれて真は繕うことも忘れて固まってしまった。

そして、少し遅れて

 

「それは、俺に体力がなかったからで……」

 

「試合中、昴さんの方が明らかに息が上がってましたよ?」

 

最初から真のことを疑ってかかって試合を見ていたように智花は真について的確に指摘した。

真はどうにか逃れられないかとバスの進み具合を見たが残念なことにまだ10分ほど目的地には時間がある。

 

とうとう、観念して真は両手に着けていたリストバンドのうちの一つを外した。

 

「持ってみるか?」

 

智花はそれでなんとなく想像がついてしまい、目を大きく見開いた。

真の太い腕に巻かれていて気付かなかったが、その中には鉛が仕込まれていた。

持った途端、とてもリストバンドとは思えないほどの重みが智花を襲った。

 

「それひとつで2キロだ。」

 

智花は恐る恐る口を開いた。

 

「まだ、他にも……?」

 

「まぁな。きっと智花の体重よりもちょっと軽いくらい」

 

靴、服、まださらにアンクルまでもつけており、真にかかる負荷は合計にして30㎏にも及んだ。

その重さを言われて、真が飛び上れなかった理由が智花にもわかった。

こんなもの背負った人間に上からのしかかられたら、ましてや体力のギリギリのあの状態ならば特に……

 

智花は驚きで声も出なかった。

あの動きをこれだけの重りをつけた状態で行っていただなんてとてもじゃないが信じられなかった。

ハンデマッチどころの話ではない。

しかも、真の試合内容はと言えば……

考えるだけでも、寒気が智花の体中に走った。

目の前にいる怪物に対して。

 

「智花はまだこういう練習はしちゃダメだぞ?体ができあがってないんだから。俺も始めたのは高校に入ってからだし」

 

厳密に言えば真がこれらをつけ始めたのは日本に戻ってきてからだった。

練習の時も、学校でさえもずっと身に着けている。(上靴は学校指定があるので校内では身に着けてはいないが)

ゆえに、この状態で全力を出したことのなかった真は気づくことができなかった。

自分のこの状態での限界に。

 

「そんなことしたら、体がこわれちゃいますよぅ……」

 

「そっか、そうだな」

 

ハハハッ真は深刻な空気を払い飛ばすように軽快に笑い飛ばした。

だが、次の瞬間再び真の目つきは真剣になる。

 

「このことを教えたのは智花の彗眼に免じて特別にだ。だから絶対に周りには言わないでくれ。特に真帆と昴君には。」

 

真帆との会話を思い出しながら真は心の中で真帆に謝罪していた。

(全力って言ってたけど、やっぱりこれだけは不安で外せなかったわ……悪い)

勿論、おもりをつけた状態とはいえ全力を尽くしていたことに変わりはないのだが。

昴に関して言えば、真が昴の心を気遣ってのことだということは当然智花もわかっていたし、勿論智花自身も言うつもりはなかっただろう。

それだけ智花自身が受けたショックも相当なものだったに違いない。

だから、真の言葉には素直にはい、と応じた。

 

「で、そろそろ俺はおりたいんだけど、智花ってどこまで行くの?」

 

「あ……」

 

今度は智花が大きく目を見開いて固まる番だった。

 

「……とりあえず、一緒のところで降りるか。」

 

恥ずかしそうに顔を真っ赤にしながらコクリとうなずく智花を面白半分で見ながら停車ボタンを押した。

そして、ポケットからちゃっちい財布を取り出して、小銭を智花に向けて差し出した。

この様子だと、何も考えずに乗ってきたことくらいは想像に難くなかった。

意地悪してやろう、という気も少しばかりあったが、あまりに恥ずかしそうにする智花に満足して、先に渡しておくことにした。

 

「はい、お金、持ってないだろ?」

 

「うぅ……すいません」

 

こうして智花と真は一度同じバス停で下車したのだった。




明日から田舎へ帰り、さらにそれから続けて高校の合宿へと赴かなければならないため、しばらく更新が途絶えますので、頑張って今日に投稿することにしました。

ぜひとも、感想お待ちしております!
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