ロウきゅーぶ! ~もう一人のコーチ~   作:アレイスター

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バスケの小説を書くなら用語を覚えることは必須だな、なんて思っていた時期が私にもありました。
何分バスケ経験者でも何でもありませんから、説明見てもどんな動きなのかまったく理解できない!
無理やり詰め込んだ知識を武器に書いてみたいと思います。


第二Q 三沢真帆

春ならではのからっとした暑さで、寝苦しい夜を過ごすこともなくすっきりとした目覚めを迎えた日曜日。

今日この日は、俺こと一之瀬 真の人生初バイトの日であり、俺を雇った男の愛娘三沢 真帆との初顔合わせの日だった。

待ち合わせは例によってあの公園。

どうやら、彼の娘はかなりせっかちな性格らしく、設定時間は朝の8時。

だが、どういうわけだろうか。

目を逸らせるものならば逸らしたい現実が目の前に存在した。

何度見直しても、何度瞬きしても、俺の目の前に鎮座していらっしゃるデジタル時計さまはすでに8時15分を示していた。

要するに、完全に寝坊だった。

体からスーッと温度が抜けていくように感じた。

とりあえず、公園に向かわなければ……!

止まっていた思考回路が動き出した俺は、すぐにハンガーにかけておいたいつもバスケの練習をしているときに愛用している着なれたジャージをわずかに10秒ほどで装備し、床に転がっていたボールをわしづかみにして、大慌てで家を出た。

今までに出したことのないような本気の走りで公園に向かって走りながら俺は自分の失態を後悔していた。

クソッ、公園にはどれだけ急いでも最低5分はかかる。

とすると、20分の遅刻か……。

公園に行ってももう誰もいないんだろうなぁ。

あの人とは、単なる口約束しかしてないし、連絡先とかも今日教えてもらうはずだったからまだ知らない。

教えるためにはやっぱり基礎は知っておくべきだと思って夜遅くまで練習用動画を見てたのは間違いだった。

はぁ……

コーチ、ちょっとだけ楽しみにしてたんだけどなぁ。

 

                ☆

 

息も絶え絶えについたたどり着いた、無人のはずの公園にはすでに先客がいた。

全体的には真っ白で、腕や襟の部分に申し訳程度に入った赤色の半袖に、黒色のスパッツを履いているかなり小柄な女の子。

その特徴的な栗色のツインテールで誰だか一目でわかった。

真っ先に声をかけて謝ろうとしたが途中で考えを変え、そうはせず少し遠くの位置から彼女の練習をしばらくの間見守ることにした。

せっかくなのだ、彼女がどれくらいバスケができるのか一度見ておきたい。

いつもならもっと高い位置にあるはずのゴールがミニバスの高さになっているのはきっとあの子が調整したのだろう。

ダムダムとボールをついて真帆がドリブルを始める。

そして、走りこんでいってある一定の位置になったところで両足をそろえて止まり、ボールをスッと自分の顔の横まで持ち上げて、ゴールにめがけて放した。

ボールはリングめがけて向かっていったがそのまま勢いよくバックボードの当たって跳ね返り、リングの中には入らなかった。

この一連の流れで大体真帆がどれほどの技能があるのかはよく分かった。

率直な感想を言わせてもらえばへたくそ。

ボールをつく勢いがそれほど速いわけでもなければ、低姿勢でしているわけでもない。それにシュートを打つ時のフォームも右手がまっすぐゴールの方を向いていない。威力もまだまだ調整できていない。

要するに基礎がまったくできていない状態だった。

だが、動きはなめらかでスムーズだった。

きっと運動慣れしているんだろう。

大体教える内容の大枠が決定してきたところで、俺は彼女の下へ歩いて行った。

教えるも何もそもそも俺はしょっぱなから遅刻をしてしまったわけで、まずはそのことについて彼女に許してもらわなければ話が始まらない。

公園の土を踏んだ途端その音に敏感に反応して真帆はこちらの方を向いた。

そして俺の顔を見た途端むっと頬を膨らしてズンズンとこちらに歩いてきた。

 

「もう、おそいよー!!」

 

「本っ当にごめん!」

 

仏を拝むように俺は姿勢を低くして、頭を下げて手をこすり合わせた。

ほんの少しの間の後にふーんと鼻を鳴らし

 

「そのせいいにめんじて今日のところはゆるしてやる」

 

使い慣れない言葉なのかすごくひらがな読みでお許しが頂けた。

 

「ありがとう。俺は一之瀬 真。今日から君の専属コーチになる。よろしく」

 

「君じゃないよ、真帆だよ。あたしのことは真帆かマホマホって呼んでね、いっちー♪」

 

い、いっちー。。。

そんな呼ばれ方をしたのは初めてだ。

それにしても、改めて真帆と会話をして思うのは真帆が雰囲気通りの天真爛漫な子だなぁ、ということだ。

俺はこういう子が嫌いじゃない。

どこまでも素直でまっすぐだからだ。

思わず、自分が小学生のころはこんなにいい子だったのだろうか、と振り返るがバスケをしていた記憶しかない。

そういえば、テストでクラス初めて0点を取ったこととかあったような気もする。

 

「それでいっちー。今日は真帆にすごい技を見せてくれるんでしょ?見たい!早く

見せてよ!」

 

期待に胸をふくらまし、目をキラキラと輝かせて真帆はこちらを見ていた。

だが、俺の頭にそんなことを言った記憶は皆無。

頭にはてなマークを浮かべていると真帆が不安そうに

 

「違うの?」

 

と聞いてきた。

クッその上目使い反則だろ……。

純粋無垢な人の期待ほど裏切れないと思わせるものはない。

俺はとっさにもちろんあると答えてしまった。

まぁ技というからにはバスケの技でいいんだろう。

ならば、その迫力を一つ披露して見せよう。

 

「真帆、そこに立ってくれるか?」

 

ゴールの高さを普通用に直しながら俺はゴールの手前5歩ほどの位置を指差して彼女にそう言った。

 

「え?うん!いいよ!」

 

満面の笑みで真帆は俺の指示したところに向かってくれた。

 

「なんなら真帆なりにディフェンスしてくれてもいいよ」

 

手持無沙汰の時に癖でやるボール回しをしながらそう言った。

ちょうどディフェンスがどれくらいできるかも見ておきたかったところだ。

 

「じゃあ、ほんきでいくよー!」

 

八重歯を見せて敵意むき出しに手を大きく広げて、真帆は構えた。

どうやら、ディフェンスに関しては基礎を知っているようだ。

構え方はなかなか様になっている。

俺はゆっくりとボールをつき始めた。

俺と真帆の間にはいい意味で緊張感が走っていた。

それは、真帆が俺を本気で止めに来ている何よりの証拠に他ならない。

俺はゆっくりと真帆の方に進み出した。

普通に歩くようなスピードで。

真帆はグッと俺を待ち構える。

真帆まで残り二歩というところで俺は動いた。

瞬きをするまもなく俺は真帆まで一気に詰め寄り、アウトサイドフットを軸にして、真帆を中心に外側に胸を張るようにして大きく弧を描くように回転し反応する時間も与えないままに抜き去った。

俺はそのまま勢いを殺すことなく進み、そしてゴール目前で大きく跳躍。

そして右手に持ったボールをリングへ勢いよく叩きつけた。

そして、ゆっくりと俺は地面へと着地した。

 

 

 

 

 

 




書いてみると意外と知識を使いませんでしたw
後書きなので一応説明しておきますと、今回主人公が真帆を抜いたのはバスケ用語ではロールというやつです。
はい、どうでもいい知識ですね。

また、ぜひ感想などありましたらよろしくお願いします。
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