ロウきゅーぶ! ~もう一人のコーチ~   作:アレイスター

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第七Q 七芝高校

七芝高校のバスケットボール部と言えば、校内ではロリコン一味として有名である。

いつの間にかバスケ部のエースはロリコンのエース、なんて根も葉もないような噂も飛び交っている。

だが、もしかしたらそれもあながち間違いではないのかもしれない。

なぜなら、一年の中でもずば抜けた分析力と判断力を持ち未来のエース候補として期待の高かった選手である長谷川 昴は、現在、バスケ部の一年休部処分の間の時間を使って小学生の、さらに言えば女の子のバスケのコーチをやっているのだから……。

 

だが、その小学生たちの純粋なバスケへの想いにあてられて、自らも心のうちに眠っていたバスケへの情熱を取り戻し、ロリコン一味と騒がれながらも、見つかれば噂の的になることも覚悟で友人の発案のもと非公式なバスケ同好会を立ち上げたのだから、一概に昴の行っているコーチがロリコン趣味のいやらしい目的だけの行為でないことも確かだろう。

 

そして、今日。

本来ならば、その非公式のバスケ同好会の活動日なのだが、あいにくとして昴は、今日もそのコーチングのために放課後は彗心学園へと向かわなければならない。

ここ最近、よくこの二つの活動が重なることもあって、今日は昼休みだけでも練習しようと、教師からも白い眼で見られること覚悟で体育館を借りる申請をした。

すると、昴の借入申請を受理した教師は今年赴任してきたばかりの新人の教師だったのだが、その人は大のバスケのファンで、思いのほか、頑張ってね!と心強い声援で昴たちの背中を押してくれた。

来年はこの人が顧問になってくれたらいいな、と昴は心の底から思っていた。

 

 

                 ☆

 

ようやく、4時間という長い長い地獄の授業を終えて、昼休みとなった。

昼休みの前半は大体いつもと同じようなメンバーで机を寄せ合って飯を食うことになる。

俺も一応クラスでは、ある一定のメンバーと交流を深め、一緒に飯を食っている。

グループといっても、グループ内でも結構バラバラの会話をしているし、俺なんかはあまり会話にすら参加しない。

だが、今日に限っては違った。

 

「真、お前なんで部活やんねーの?」

 

メンバーの一人が俺にそう聞いた。

 

「え?」

 

いつもの調子でまったく何も考えずにパンを食っていたものだから、反射的に聞き返してしまった。

すると、ほかの話題で別の奴としゃべってたやつも突然こちらの話題に飛びついてきた。

 

「そうそう、俺も前から思ってた。真ガタイもいいし、まぁ運動神経は、普通くらいだけど、それでもこれから鍛えりゃそんなもん、何とかなるだろ。」

 

おそらくコイツは普段の俺の体育の成績から判断してこのように言ったのだろう。

まだ、それほど体育の授業があったわけではないが、大体1,2回見れば、誰がどれほどの運動神経を持っているかはわかる。

俺みたいに詐称していなければの話だが。

 

「お前はバカだなー。まんまと真の罠にはまってやがる。真、お前実は相当運動神経いいだろ?俺、こいつが体育の授業で息上がってたところ見たことないぜ?いくら手ぇ抜いてるっつったって、持久走の時とかふつうは息上がるだろ。でも、真にはそれがない。いつも底が見えない。」

 

これにはさすがに驚いた。

そんなところまで見られているとは。

さすがに天才ゲームメイカーと呼ばれるだけはあるのかもしれない。実力を見る目も伴っているみたいだ。

 

俺のことを丁寧に見抜いたのは、まだ入学してそれほど日が立っていないこの早い時期で学校中でも有名になりつつあるサッカー部の時期エース候補。

校内では天才ゲームメイカーとしてその名が知られており、この時期でレギュラーが確定の超天才。

本来ならばスポーツ推薦でこの学校に入る予定だったらしいのだが、試験を寝坊ですっぽかすという大物ぶりを発揮して、普通科として入ることになったらしい。

 

そして、今、そいつのせいで、この会話を聞いたであろうクラスメイトの数名がこちらに目を光らせているのが俺には、現在進行形でひしひしと伝わってくる。

入学当初に先輩方から向けられていた視線とまるで同じ。

ガタイがいいということだけで、いくつもの部活から勧誘を受けた。

だが、俺はどの部活もする気はないし、なんとかして全部断ったのだが。

おそらくこれは再び勧誘の嵐が来るかもしれない。

これが嫌だったから俺はわざわざ実力を中の中の位置にとどめていたというのに……!

 

「……俺ちょっとジュース買ってくるわ。」

 

「あっ!逃げるな、まことー!」

 

俺が教室を出ると同時に先ほど視線を向けていた連中も同じように教室から出ようとする。

 

「鬼ごっこ、頑張れよー」

 

コイツ、図りやがったな……!

ニコニコと手を振るメイカー様を見てそう確信した。

そういえば、この話題を最初にフったのもコイツだった……!

文句を言ってやりたいところだが、このまま、この場にいては不利だ。

そう確信した俺は、基本誰もが利用しない体育館横の自販機まで全力で向かっていった。

さすがに、俺の姿を追い続けられる奴はいなかったようで、ようやく静かなひと時を迎えることができた。

すると、体育館の方から聞きなれた音が漏れ出しているのに俺は気づいた。

 

 

―――ダムダム、ダムダム

 

バスケットボールが地面と接触しているときの音。

誰か、バスケをしているのか?

この学校でバスケをしようとは物好きな。

そう思いながら、俺は開け放たれたドアの一つから体育館の中をちらりとのぞいてみた。

男子が二人、女子が一人の計三名。

かしこそうなメガネ君にポニーテールちゃん、そして童顔のこの中では一番の長身くん。

動きから見ると、どうやら長身くんとポニーテールちゃんは経験者だろう。

経験者の二人はかなり真剣な目つきをしている。

だが、メガネ君も不慣れながらも必死に食らいついている。

全員とても真剣で楽しそうにバスケをしている。

俺はいつの間にか、靴と靴下を脱いで体育館へと入り込んでいた。

 

 

              ☆

 

 

昴のドリブルはほんの一瞬が命取りになる。

だから、葵も一成も昴のボールに視線を一点に集中させ、構えていた。

昴もどのタイミングで攻めようか、と葵たちに意識を集中させている。

だから、第三者が体育館へと侵入してきていることには誰も気づかなかった。

そして、昴がここ、と言ったタイミングで攻め始める。

葵は完璧にディフェンスの構えをしていたが、昴のフェイントによって重心を完全に崩して、逆サイドから抜き去られてしまう。

またやられた、と思いながら顔を上げるとそこで初めて葵は第三者の存在に気付いた。

向こうも葵が気づいたことに気付いたようで、黙ってて、と言わんばかりに口もとで人差し指を一本立てる。

次の瞬間、その第三者はものすごいスピードでこちらの方へと走りこんできた。

だが、驚くべきことに裸足だというのに足音はそれほど立っていない。

葵はそれに敏感に気づき、そして同時に第三者がとんでもない超人だということを悟った。

そんなことは全く知らず、昴は一成と1on1状態。

余裕の表情で、一成にふっと笑いかけて、まるでそこにはディフェンスはいなかったかのように昴はまっすぐに抜き去る。

そしてあとはレイアップシュートを残すのみ。

そう思って突き出そうとした右手にすでにボールは乗っていなかった。

 

 

――――!!

 

 

いつの間にか目の前に現れた第三者の男に昴は目を見張った。

だが、次の瞬間さらに大きく昴は目を見開くことになる。

男は、そのまま昴からボールを取ったそのモーションから一歩も振り向くことなく、ボールを後ろに向かって頬り投げて

有ろうことか、そのボールはボードにあたってネットを揺らした。

 

「ちょっ、今、後ろ向きで……」

 

「ゴール見てなかったぞ……」

 

ボールのバウンド音だけが、体育館を支配する。

とその時、タイミングがいいのか、悪いのか

校内にチャイムが響き渡った。

 

「あら?もう終わりか。」

 

体育館の時計を見て確認を取ると

 

「邪魔して悪かったな。」

 

ひらひらと手を振り、その男はその場から立ち去った。

昴たちにとってその男は例えるならば嵐。

突然のごとくあらわれ、圧倒的なまでのその強さを見せつけ、そしてあっけなく去っていく。

その男の登場によって昴たちの心には大きな疑問が宿っていた。




無茶なことをさせたという自覚はあります。後悔はしてません!(キリッ
正直、人が体育館に入ってきて気づかないわけないでしょ、とか言ったら負けですよ。
黒子君をみなさい、黒子君を。
人間、気配を消そうと努力すれば、なんとでもなるもんです。
と、言い訳はさておきまして
昴VS真の前哨戦です。
本格的な戦いは次回?それともさらに次?になるかどうかはわかりませんが、一応は闘わせるつもりで動いております。

また、感想などいただけるとありがたいです。
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