魔法少女リリカルなのはStrikerS ~ Remember my heart ~   作:アルフォンス

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episode;02 アインハルト編

「そういえば……今日って確か縁日があったよな?」

 

 

自分の休みじゃなかったから、あんまり気にしてなかったけど、臨時で休みをもらったことだし、せっかくなので彼女を誘ってみるのも悪くないよな。

 

 

「通信しても良いけど、せっかくだから迎えに行ってみるか。そうと決まったら……」

 

 

俺は、早速ロードサンダーのエンジンをかけ、スロットルを全開にして彼女を迎えに行くことにした。

 

 

 

*    *    *

 

 

「はぁ……」

 

 

今日は、フィルさんの家の近くの公園で縁日がある日です。

ヴィヴィオさん達に一緒に行きませんかって誘われたのですが、申し訳ないと思いましたが、お断りしてしまいました。

 

本当なら、こういったときはその……恋人同士で行きたかったです。

 

フィルさんが仕事で忙しいのは分かるのですが、ほんの少しで良いですから一緒にいたいと思うのは私の我が儘でしょうか。

 

 

 

「……なんか……さみしいです」

 

 

 

私が落ち込んでいると、誰かからトントンと肩を叩かれました。

振り返ってみると……。

 

 

「よっ、アインハルト」

 

「フ、フィルさん!?」

 

 

黒髪短髪の男性、私の大切な人―――――。

 

 

フィル・グリードさんがそこにいました。

 

 

「ど、どうしたんですか!? 確か、今日もお仕事のはずでは?」

 

 

 

フィルさんの最近のスケジュールは、教えてもらったから全部知っている。

覚えてる限りじゃ、1月先まで休みはなかったはず―――――。

 

 

 

「その予定だったんだけど……。上司に大目玉を食らってな。3日間強制休暇だ」

 

「あ、あはは……」

 

 

 

それ、当たり前です。

正直言って、フィルさんの労働時間は異常です。

それでも、フィルさんは定期的に通信でだけど会話をしてくれていた。

 

そのことは嬉しかったけど、それ以上にフィルさんの身体のことが心配です。

 

 

 

「……ごめんな」

 

「えっ?」

 

 

突然フィルさんが謝ってきた。

一体どうしたんだろう?

 

 

「ここん所ずっと直接は会えてなかったし……。仕事ばかりで……ごめんな」

 

「い、いえ!! フィルさんが忙しいのは分かってますから……」

 

「それでもさ……。好きな女の子に『さみしい』なんて言わせてるんだから……」

 

「あっ……」

 

 

フィルさんは、さっきのひとりごとを聞いていたんだ。

本当にポソっといった言葉だったのに―――――。

 

 

「本当……人々を守るなんて言ってても、肝心の女の子の心……守ってなかった。傷つきやすい……優しい女の子のな……」

 

「フィルさん……。そんなこと無いです。あなたがいるからこそ、私は私でいられるんです……」

 

 

フィルさんがいてくれるから、私はアインハルト・ストラトスとしていられる。

覇王の生まれ変わりじゃなく、一人の女の子として――――。

 

 

「それは、俺も同じだから。こうして素直に話せるのは、お前くらいだから……」

 

「それは、ティアナさんよりもですか?」

 

 

私は、あえて少しだけ意地悪な質問をする。

ティアナさんとフィルさんの関係は特別なのは分かってるけど、それでも、やっぱり恋人としては気にしちゃうんです。

 

 

「だったら……証明してやろうか」

 

「……はい」

 

 

私は瞳を閉じて、フィルさんとキスをする体勢になる。

フィルさんの吐息を近くで感じる。

 

後数センチ―――――。

 

 

と思っていたら―――――。

 

 

「オホン!!」

 

「「!!」」

 

 

突然、大きな咳払いをされ、私達はびっくりして振り向いてみると―――――。

 

 

「「ヴィヴィオ (さん)!?」」

 

 

中等部の制服を着たヴィヴィオさんが仁王立ちをしていました。

 

 

「フィルさん、アインハルトさん、仲がよろしいのは良いんですけど、ここ校門前です!!」

 

「あっ……」

 

「そういえば……向かえに来てたんだ。学校前だってのすっかり忘れてた……」

 

 

すっかり忘れていましたが、まだ校門前にいて、そこでフィルさんに声をかけられたんだった。

周りを見ると、ヴィヴィオさんだけでなく、コロナさんやリオさんまで一緒にこっちを見ていました。

 

 

「……はぁ、昔のアインハルトさんは、こんな事、絶対に出来る人じゃなかったのに」

 

「ヴィヴィオ、それは野暮だよ。恋は人を変えるって言うじゃない」

 

「いいなぁ。あたしもフィルさんみたいな人が恋人だったらな……」

 

 

ヴィヴィオさん達からいろんな事言われてしまってますが、例えヴィヴィオさん達でも、フィルさんは……私の大好きな人は渡しませんから!!

 

 

「まったく……そのくらいで勘弁してくれよ。じゃ、アインハルト、家まで送るから」

 

「は、はい!!」

 

 

フィルさんも、これ以上ヴィヴィオさん達にからかわれたくないみたいですね。

その意見には賛成です。

 

私達は、急いでロードサンダーでその場を離れました。

 

 

家まで送ってもらい、フィルさんが帰る前に―――――。

 

 

『今日の縁日、良かったら一緒に行かないか?』

 

 

フィルさんが私を縁日に誘ってくれました。

私はすぐに了承しました。

 

だって、夢にまで見たことが現実になったんですから―――――。

 

 

 

*    *    *

 

 

「さて、ここで待ち合わせだったよな?」

 

 

夕方、俺は約束した待ち合わせ場所にやってきていた。

最初、家まで迎えに行こうかと言ったんだけど―――――。

 

 

『ちょっと……見せたい物がありますから。公園で待ち合わせにしませんか』

 

 

アインハルトから、そう言われてしまい、今回は公園で待ち合わせをすることになった。

 

 

「……縁日か。なんか、浴衣で来る人が多いな」

 

 

周りを見渡してみると、結構浴衣を着ているカップルが多かった。

俺も浴衣でも着てくれば良かったかな。

 

しばらく周りを見てると、アインハルトの声がして―――――。

 

 

「す、すみません!! 遅れました!!」

 

 

アインハルトの方を見ると―――――。

 

 

「いや、今来たばかりだか、ら……」

 

 

いつもとの高等部の服装とは違い、青地で桜柄の浴衣を着ていた。

 

 

「フィルさん……その……似合ってます……か?」

 

「あ、ああ……よく似合ってる。いつもとはまた違う……その上手くは言えないが、綺麗だ」

 

「あ、ありがとう……ございます」

 

 

アインハルトは、照れてしまい顔が真っ赤になってしまった。

こうしてみると、いつも可愛いんだけど、浴衣を着たアインハルトは、また違った色気がある。

 

 

「……あんまり見つめられると……恥ずかしいです」

 

「ご、ごめん……」

 

「でも……」

 

 

アインハルトは、俺の左腕に、顔を真っ赤にしながら、そっと自分の腕を絡ませてきて―――――。

 

 

「私だけを……見てくれるなら……いっぱい……いっぱい見てください」

 

「……ありがとな」

 

 

恥ずかしがり屋のアインハルトが、ここまで言ってくれるのに、ここで野暮なことは言ったら馬鹿だ。

 

ここはしっかりと彼女だけを見ていなくちゃな。

 

 

*    *    *

 

 

「……当たりませんでした」

 

「残念だったな、嬢ちゃん。もう一回やるかい」

 

 

縁日の出店を回ってた私達は、射撃屋のところである景品を見つけました。

それは、ティオそっくりのストラップ。

 

何とか手に入れたかったので、早速100円を払ってやってみたのですが―――――。

 

 

「……ちゃんと狙ったんですけど、当たりません」

 

 

すると、フィルさんが私が使っていた銃を見て―――――。

 

 

「うーん。重心も合ってるから、インチキじゃないな。と言うことは……ちょっと貸してみな。あのティオにそっくりなストラップが欲しいんだろ?」

 

「は、はい。でも、後一発しかないんです」

 

「一発あれば十分だ。さっきから見ていて、銃の癖は分かってるから」

 

 

私は、フィルさんに銃を渡し、フィルさんは受け取った銃を構えて―――――。

 

『パァン』と勢いよく放たれたコルク玉は―――――。

 

 

「ま、マジかよ……」

 

「す、凄いです……」

 

 

たった一発でストラップに当てて、景品を取ってしまいました。

 

 

「一応、俺は射撃型だからね。このくらいは出来るよ」

 

「フィルさん、本当に凄いです……」

 

 

フィルさんは何でもないように言うけど、慣れない銃で一発で当てるなんてすごいです。

 

 

「はい、アインハルト。これで良かったか?」

 

「ありがとうございます!! 本当に嬉しいです」

 

 

フィルさんからストラップを渡され、それを早速自分の携帯端末に付けました。

自分で取るより、こうしてフィルさんからプレゼントされる方が嬉しいです。

 

 

「良かったら、他の景品も根こそぎ取ってやろうか?」

 

「勘弁してくれ!! こっちの商売が上がったりになっちまう!!」

 

 

確かにフィルさんが本気になったら、ここの景品は全部取っちゃうとおもう。

さすがに涙目で訴えるおじさんを見て、フィルさんもそれは止めることにしました。

 

 

*    *    *

 

 

 

「んっ? 綿アメか……。縁日の定番と言ったら定番だな」

 

「ですね。実は私、綿アメが大好きなんです。あのふわふわした食感が美味しいんです」

 

「そっか。ちょっと待ってろ。今買ってきてやるからな」

 

 

そう言ってフィルさんは、綿アメを2つ買ってきてくれました。

それを受け取り、綿アメを一口食べると―――――。

 

 

「美味しいです。やっぱりこのふわふわ感いつ食べても美味しいです♪」

 

「確かに美味いな。あんまり一人じゃ食べないけどな」

 

「こうして、フィルさんと二人で食べると、いつもより美味しく感じます」

 

 

大好きな人と大好きなものを一緒に食べる。

これだけのことですけど、すごく幸せです―――――。

 

その後、色んな出店を回って、たこ焼きやリンゴ飴も一緒食べたりして、私は久し振りの縁日をいっぱい楽しみました。

 

そうこうしてるうちに、空も暗くなり―――――。

 

 

 

「さて、そろそろ花火が上がる時間だな」

 

「あっ、そうでしたね」

 

 

実は、縁日の最後は花火が上がる事になってます。

この事が分かってましたので、私達は縁日会場から少し離れた高台に来ていました。

 

ここですと、花火も綺麗に見える所なんです。

 

 

「おっ、上がったぞ」

 

「……きれい」

 

 

夜空に上げられた花火は、空一面に大輪の花を咲かせていました。

赤、黄色、青、それぞれ彩られた花火は本当に綺麗です―――――。

 

 

「フィルさん……。また一緒に縁日に来ましょうね」

 

「ああ、また来年も一緒に来ような」

 

「絶対ですよ。約束……しましたからね」

 

 

私とフィルさんは、指切りをして約束を交わす。

 

 

来年も―――――。

 

 

これから先もずっと―――――。

 

 

こうして、縁日に一緒に来ましょうね。

 

 

 

*    *    *

 

 

 

「すみません、お邪魔します」

 

「遠慮するなって。こんな時間まで付き合わせちゃって済まなかったな」

 

 

花火が終わるまでいた私達は、帰りの電車に間に合わなくなってしまい、公園の近くにあるフィルさんの家で一泊することになってしまいました。

 

なんかドキドキします―――――。

 

フィルさんの家に泊まるって事は……その……。

やっぱりしちゃうんですよね……。

 

 

「どうした?」

 

「い、いえ、何でもないです!!」

 

フィルさんはこっちの気持ちなんて気がついてないですよね。

さっきからドキドキしっぱなし何ですからね!!

 

 

*    *    *

 

 

少しリビングでゆっくりした後、私達は寝室に行き、ベッドサイドに座って話をしています。

 

 

「今日は、本当に楽しかったです。縁日なんて久し振りでしたから……」

 

「そうだな……。こうしてのんびりするのは久し振りだったからな……」

 

 

フィルさんは、明後日にはまたお仕事で忙しくなってしまいます。

こうしていられるのは、あと2日だけ―――――。

 

だから―――――。

 

 

「フィルさん……。我がままなのは分かってます。でも、フィルさんのことをいっぱい感じられるように……その……抱きしめて……ください」

 

「今日くらいは……紳士的に接したかったんだけどな。いつも、アインハルトのことを求めちゃってるし……」

 

「………いいですよ。こうして……私のことを見てくれるなら、いっぱいしてください」

 

「アインハルト……」

 

 

瞳を閉じ―――――。

 

私達はどちらからともなくキスをする。

さっきまで、縁日で綿アメを食べていましたから、互いの唾液はとても甘く感じます。

 

 

「なんか……甘いな」

 

「ですね。でも、こういったキスは……嫌いですか?」

 

「いや……好きだよ。もっとしたくなる」

 

「でしたら……もっとしましょうか」

 

 

さらに互いを貪るようにキスをしながら、フィルさんは私の浴衣を左肩だけずらし、そのまま私の胸を何度も触れてくる。

 

 

「あ……ん……んぁっ……」

 

「今日のアインハルト……可愛いって言うより……綺麗だ。すごく色気もある」

 

「良かった……。頑張って……浴衣をきたかい……ありました」

 

 

私は、こんなのを着ても似合わないと思ってましたけど、こうしてフィルさんに綺麗って言われるとそれだけで嬉しいです。

 

 

「今日は……浴衣姿を……堪能したいな」

 

 

それって、浴衣を着たまま、その……するって事ですよね―――――。

 

 

「それ……ちょっと、えっちです」

 

「こんな彼氏は……嫌いか?」

 

 

フィルさんは、本当に意地悪です。

本当にいやだったら、こんな格好なんてしませんよ―――――。

 

 

「……えっちな人は……きらいです。でも……ちゃんと私のことを見てくれるフィルさんは……大好きです」

 

「……ありがとうな。俺も……大好きだよ」

 

 

そして―――――。

 

 

私はフィルさんに全てをゆだね―――――。

 

 

肉体と精神の快楽に二人で溺れる。

 

 

 

*    *    *

 

 

 

「……結局、裸になっちゃいましたね」

 

「まぁ……その……すまん」

 

 

最初は、その……浴衣のままだったんですけど、幾度と求め合ううちに、二人とも生まれたままの姿になってしまい、普段よりもたくさんしてしまいました。

 

 

「ふふっ、良いですよ。こうしてフィルさんが、私のことを求めてくれるって事は、私に魅力を感じてくれてるって事ですから」

 

「……充分すぎるほどにな。マジで……やばいっての」

 

 

こういう時のフィルさんは、絶対に冗談は言わない。

そんなフィルさんだから、私は大好きなんです。

 

 

「フィルさん。私、もっと頑張って綺麗な女の子になりますから、浮気……しないでくださいね」

 

「それじゃ、俺も、もっとがんばらなきゃな。そんな素敵な女の子と一緒にいられるようにな」

 

「……それ、困ります。これ以上フィルさんに頑張られたら、絶対に倒れちゃいます。だから、フィルさんは頑張らないでください」

 

「そういう……ものなのか?」

 

「そういうものなんです!!」

 

 

まったく―――――。

 

 

この人は、今でも無茶しすぎなのに、これ以上されたら絶対に倒れます。

頑張るのも良いですけど、自分の彼女を心配させないでくださいね。

 

 

後日談になりますが、実は、縁日の日、ヴィヴィオさん達が私達のことを見ていて、そのことをいろいろ聞かれてしまい、あやうくフィルさんの家に泊まったことまで話してしまいそうになりました。

 

お泊まりがばれそうになったのは、フィルさんが私の首に付けたキスマーク。

 

もう!!

 

初めての時も、これで皆さんに色々言われたのに!!

 

 

フィルさんの……ばか。

 

 

でも―――――。

 

 

そんなあなたが大好きです♪

 

皆様、現在自サイトのみで公開しています『とある休日シリーズ』になりますが、こちらでも見てみたいという方がいらっしゃいましたら、アンケートにお答えいただけたらと思います。

  • 見てみたいので公開してほしい
  • まあまあ興味がある
  • どちらでもいい
  • 興味がないので公開はしなくて良い

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