仮面ライダーディケイド エグゼイド編   作:藤川莉桜

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前編『エグゼイドのNEWWORLD』Cパート

 エムは公園のベンチに座って暗く項垂れていた。その手には、学校で配られた保護者向けに授業参観の告知チラシが握られている。

 

「父さん……」

 

 沈んでいた顔をゆっくりと上げていく。昼間の公園らしく、目の前には多数の家族連れが遊具で一家団欒を満喫していた。その中には、もちろんエムとほぼ同い年であろう少年少女もいる。彼らは父親と一緒にキャッチボールやシーソーで同じ時間を過ごしていた。

 休日ならごく当たり前の光景であるが、特殊な家庭環境に身を置くエムにとっては欲しくても得られないものである。

 チラシをランドセルにねじ込んだエムは、彼らに背を向けるようにしてその場を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 幻夢コーポレーション。

 この世界のゲーム産業において世界でも有数のシェア率を誇るゲームメーカーである。ゲーマーを名乗る人間の中で、この企業が製作したゲームをプレイした経験の無い者など存在しないと言っても過言ではないだろう。

 生み出された作品のジャンルは幅広く、アクション、RPG、シューティングにレースにリズムゲームや恋愛シミュレーションと幅広く、そのいずれもが歴史的大ヒットを記録している。ここまで来れば、もはやゲームという現代娯楽の金字塔と呼んでも差し支えないかもしれない。

 そんな偉業を成し遂げてきた彼らもさらなる名作を誕生させるべく、この巨大なオフィスビルにて今日もアイデアの創造に励んでいた。

 

「以上が調査報告だ。続いて次のページを開きたまえ」

 

 ビルの最上階に位置する社長室にて、資料を手にした社員達が多数集まったホワイトボードの前を陣取った青年が指示を下す。彼よりも歳上の社員はたくさんいるというのに、黒のスーツを見事に着こなすビジュアルも相待ってその存在感は圧倒的であった。

 

「仮面ライダークロニクルの売り上げは諸君の不断の努力もあって先月比から約20パーセントも上昇した。確かにこれだけ見ても充分過ぎる成果だが、ここで満足していてはやがて行き詰まりを見せてしまうだろう。今後も上を目指し、努力と研磨を欠かさずにいるべきだ。諸君にはそのための新たなプランを私から用意した」

 

 男は身振り手振りを加えながら、これまでの成果が書かれているホワイトボードに今後の展望とスケジュールを継ぎ足した。キュッキュッとマジックが擦れる音が社長室に鳴り響く。完全に集中しきっている社員達は、誰もが一切の余所見をすることなく、男の言葉に耳を傾けながら一心不乱にメモを書き留めていった。

 

「やがては多人数参加型クエストの実装、そしてエグゼイドに続くブレイブ、スナイプ、レーザーといった新種のライダー追加などでより魅力的な商品へと発展させ、ゆくゆくは海外展開も進めていきたいと考えている。仮面ライダークロニクル、ひいてはこの幻夢コーポレーションをより成長させていくためにも、君達の力を貸してもらえないだろうか!」

 

 拳を振り上げて熱弁を振るう青年に向けて、社員達から羨望の眼差しが一点に集中する。幻夢コーポレーションの社長を務めるこの男の、社員達からの信頼は見ての通り絶大であった。まだ若いながらも一代で中小企業でしかなかった幻夢コーポレーションを世界に名だたる大企業に築き上げたという偉大な経営者に心酔しきっている社員達は、惜しみない拍手を彼に送ろうとする。

 だが、彼らが手を叩こうとするその前に、パチパチと乾いた音が鳴り響く。社員達が振り向いた先には、気怠げに拍手する白衣の青年の姿があった。

 

「さすがは業界最大手の幻夢コーポレーションの社長さんだ。なかなか熱の入ったプレゼンテーションだな」

 

 社員でもないのに、何故か当然のように社長室へと入り込んできた士だ。

 

「なんだね君は!いったいどこから入ってきた!?」

 

 怒り心頭で侵入者である士に詰め寄ろうとする社員達だったが、その前に例の男が遮ったために怒りの矛を仕方なく収める。

 

「本日は以上だ。各持ち場に戻りたまえ」

 

 士に不信感を露わにした視線を送りつつも、渋々と引き下がって続々と社長室から去っていく社員達。秘書らしき僅かな人数を除いて退去させた男は、社長用デスクに備えられた回転式のソファーにゆっくりと腰掛ける。

 

「お前がエムの父親だそうだな」

 

 大企業のトップを前にしているというのに物怖じしないどころか相変わらず傲岸不遜な態度を貫く士。しかし、男はそんな士の無礼にも憤慨することなく、にこやかに営業スマイルを向けた。

 

「はい、エムの父、芸間クロトと申します。貴方は?」

 

「俺はエムの主治医、門矢士だ。あいつは少し変わった病気に罹ってるらしくてな。今日から俺が治療してやることになった」

 

「これはこれは門矢先生。息子がお世話になっております。それで、今日はどういったご用件で?まさかエムの身に何か?」

 

「いや、エムは関係ない。仮面ライダークロニクルについてだ」

 

 ほんの一瞬だが、士の傲岸不遜な態度にも動じずににこやかな微笑みを浮かべていたはずのクロトに陰りが突然射したように見えた。

 

「単刀直入に聞かせてもらおうか。あのゲームはいったいなんだ?ただのゲームじゃないんだろ?」

 

 しばし沈黙が2人の間を支配する。やがて、決して目を逸らそうとしない士に根負けしたクロトは、軽くため息を吐き漏らして俯いた。しかし、すぐに再び営業スマイルを作り直してゆっくり口を開く。

 

「なんと、我が社の商品にご興味がおありでしたか。至極光栄でございます。なにせ仮面ライダークロニクルは我が幻夢コーポレーションの総力を結集して開発した究極の現実空間拡張型エンターテイメントです。その骨幹には人間の脳に作用する電気信号の解析技術の最先端が導入されており、視覚野に低負担の刺激を与えることでさながら知覚情報がまるで本物であるかのような……」

 

「そういう表向きのコマーシャルを聞いているつもりはない」

 

「お、おいおいおいおい士!いくらなんでもいきなり失礼だろ!すいません!こいつちょっと思い込みが激しいとこがあって!いやー、悪い奴じゃないんすけどね!」

 

 士の後を追ってようやく到着したユウスケの制止を振り払い、士はなおもクロトに詰め寄っていく。そして、社長用のデスクの上にどんと居座り、厳しい視線をクロトに浴びせた。

 

「さっきはあのゲームの敵キャラが急に人を襲いだした。あれが仮想(バーチャル)?馬鹿を言うな。あれは間違いなく現実(リアル)だった。あのバグスターが与えた痛みも!恐怖も!紛れもなく本物だ!幻夢コーポレーションは……いや、お前は何を企んでいる?仮面ライダーライダークロニクルは何の目的のために作った?」

 

 最初は士を止めようとしていたユウスケも今では固唾を飲んで見守っている。彼もバグスター達が突然暴れていたあの現場に居合わせていたのだ。それだけに人の平穏が侵される可能性を看過出来ないのだろう。

 異世界からの来訪者達から責め立てられているクロトは苦笑いを浮かべながら、ゆっくりと口を開いた。

 

「困りましたね。例の騒動については、ギャラリー達の熱があまりにも高まりすぎたゆえの集団幻覚ということで既に決着がついています。メディアでも専門家の方々が口を揃えてそう仰っている。確かに、心理的ショックを与えたこと関しては深くお詫びしたい限りですが、それだけ我が社の製品がリアル過ぎたということなのでしょう。反省して今後は改善を進めて行く所存ですし、私共に何のやましい考えはございません」

 

 黙って聞いていた士は眉をひそめた。カイデンとアランブラとの戦いが体に染み付いている彼に、そんな弁明が通用するはずがなかった。

 

「集団幻覚だと?まだそんな寝言を口に……」

 

「話はそれだけですか?」

 

 なお抗議を続ける士を遮ったクロトは深いため息を漏らすと、回転椅子をぐるりと回して士達に背を向ける。

 

「申し訳ありませんが、私も多忙の身です。これ以上の無意味な問答はおそらくお互いのためにならないでしょう。他に用事が無いのならば速やかに立ち去って頂きたく存じます」

 

 士達からは今のクロトの表情は伺えない。だが、表向きは敬意を失っていない語り口ながらも、その声音からは隠しきれない程の怒気を滲ませていた。

 

「今回の件は息子の主治医である貴方の顔を立てて不問とさせていただきます。今後は余計な詮索はご遠慮願いたい。そこの君、この方々を会社の入り口までご案内して差し上げなさい」

 

「いや、結構だ。帰り道くらいなら覚えている」

 

 もはや、交渉の余地なし。これ以上語る口など無い。その意思表示に、待機していた社員に有無を言わせず指示を与えるクロト。おそらくこれ以上粘ったところで力づくで排除されるだけだろう。流石の士も諦めて社長用のデスクに背を向けた。

 

「あの……父さん!」

 

 全員の視線が声のした方へと集中する。そこには一枚の紙を抱えたエムが立っていた。新たな闖入者の登場に、クロトは珍しくあからさまに不機嫌な顔になった。

 

「すいません、皆さん。申し訳ありませんが、息子と2人きりにさせていただけないでしょうか?君達もだ」

 

 士とユウスケ、そして控えさせていた部下達の全てが退室したと同時に、クロトは椅子の背もたれに寄りかかった。

 

「まったく、今日はずいぶんと騒がしいな」

 

 その底知れぬ暗闇にような眼差しは実の息子をまっすぐ捉えていた。

 

「……エム。いくら私の息子とはいえ、職場まで勝手に入ってくるなと言っていたはずだが?」

 

 さっきまでとは打って変わって、穏やかさを前面に押し出した社長としての姿ではなく、厳格な父親としての顔を露わにしている。まだ幼いエムはその鋭い眼力に身を拗らせる。

 

「ご、ごめん!でも!どうしてもお話をしてもらいたかったんです!」

 

 エムは厳格なオーラをにじませる父に若干の畏怖を抱きながらも、勇気を振り絞って恐る恐る一枚の紙を開いてクロトのデスクに広げる。

 

「父さん!次の授業参観に……」

 

「それはもうメイド達に伝えたはずだろう。私はその日忙しいから無理だとな」

 

 クロトは呆れた様子できっぱりと切り捨てた。彼は知る由もないが、彼に言伝を受けたメイドは今日という日まで黙秘していたのだ。それを知らない彼の中ではもう既に『終わった話』として決着がついていることになっているのだろう。

 しかし、剣呑な父親の態度に恐れを抱く今のエムにそれを伝える勇気は持ちえていない。そもそもメイドが罰せられる可能性があるため、告げ口する気も無いのだが。

 

「けど……」

 

「二度も言わせるな。私は忙しいんだ。そうおいそれとこの会社を空けるわけにはいかない」

 

 静かに、それでいて強く突き放す口調に、もはやエムは何も言えなくなった。

 

「お前はまだ幼いが同世代の子ども達よりも聡明だ。分別が付かないワガママな子ではないだろう?」

 

「はい、父さん……」

 

 深くうな垂れるエム。さすがに見ていられなくなったのか、立ち上がってエムの側まで近づいて、そっと小さな頭を撫でた。

 

「わかってくれ、エム。これはお前のためでもある」

 

 その顔はさっきまでの厳格なものではなく、慈愛に満ちていた。

 

「もう少し我慢してくれ。もうすぐ……もうすぐなんだ……」

 

 トボトボとした足取りで社長室から出て行く息子を見送ったクロトは、溜め込んでいた書類に目を通そうとデスクに戻っていく。世界有数のゲームメーカーのトップゆえに日々の業務は山積み。予想外の客人に奪われた時間はしっかり取り返さなければならないだろう。

 しかし、そんな彼の元にまた新たに社長室へと飛び込んでくる者がいた。車内でも有数の権限を有した男だ。

 

「しゃ、社長!一大事です!」

 

「どうした?多少のトラブルなら君の現場判断に任せると私は言っていたはずだが?」

 

 度重なる仕事の妨害に、さしものクロトもポーカーフェイスが崩れているようだ。不快感をにじませながら目の前の社員を睨みつける。

 もし平時であれば、この社員は蛇に睨まれたカエルのように竦んでいただろうが、それどころでないのか息を切らしてクロトの元まで大急ぎで駆け寄った。まるでこの世の終わりの到来かのように尋常でないまでに大量の汗を垂らしている。

 その姿を見てクロトもよほどの事態が起きたのだと確信する。

 

「た、大変です!何者かがラボに侵入し、厳重に保管していたはずのプロトガシャットを全て奪われてしまいました!」

 

「何っ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 人通りの少ない港をエムは重い足取りでブラブラと歩き回っていた。目的地など無い。何処に向かうというわけでもなく、ただ気持ちを落ち着かせるために彷徨っているに過ぎない。

 そんな無気力に満ちた少年に声をかける1人の男がいた。

 

「ずいぶんと薄情な父親だな」

 

 自称エムの主治医にして、異世界からの訪問者である門矢士であった。

 

「さっきの聞いてたんだ」

 

 親子水入らずの会話を盗み聞きとは、年端のいかぬ子どもでもあまり褒められたマネではないとは思うのだが、今のエムにとってはどうでもいいことだ。

 

「いつも会えないのなら授業参観くらい出てやればいいだろ。気取ってる割には案外狭量な男だ」

 

「うるさい!」

 

 エムはらしくないほどに声を荒げる。士は眉1つ動かさず黙ってエムを眺めているだけだ。

 

「士先生は父さんのことを何も知らないくせに!わかった口聞かないでよ!」

 

「まあまあ、落ち着けって!士、お前もちょっと一言多すぎだぞ。誰だって家族の悪口を言われて嬉しいわけないだろ」

 

 喧嘩を始めた士とエムの間に入って仲裁を始めるユウスケ。

 その性格のせいで各世界のライダー達とは互いに第一印象が最悪になりやすい士との間を取り持つのも、彼の理解者であるユウスケの役目である。人、それを貧乏くじやら苦労人と呼ぶが。

 

「父さんは……父さんは本当は世界で一番優しい人なんだ!」

 

 エムは懐から1つのガシャットを取り出す。ユウスケはその特異な形状を目にして首を傾げる。

 

「そのガシャットは?」

 

 この世界に来てから見たガシャットとはまるで違う構造をしていた。本来1つしかないはずの、ゲーム機やゲーマドライバーに差し込む端子部分が何故かこのガシャットの場合は2つも存在していたのだ。

 そのためにグリップ部分もかなり大型化しており、どう見ても普通のゲームソフトとは思えない。

 

《マイティブラザーズXX!》

 

「母さんが事故で死んだ後、父さんが俺のために作ってくれた特別製のガシャットだよ。失敗作だからゲームはプレイ出来ないけど、御守り代わりにずっと持ってなさいって」

 

 その言葉通りを忠実に守って常に持ち歩いている辺り、彼にとっては御守りとしての役目以上に父親との繋がりを象徴するガシャットとして大事にしているのが窺える。

 

「父さんは薄情な人なんかじゃない!だから……だから俺は……」

 

 そこでエムは全く口を開かなくなった。士も何を考えているのかわからないが、海を見つめたまま一切エムと目を合わせようとしない。明らかにまずいほどに険悪な雰囲気が作り出されていた。

 

「あっ、そうだ!帰ったらまたゲームやろうぜ!なっ!」

 

 ユウスケは思い出したように手を叩き、ニッコリと満面の笑みを浮かべた。

 

「いやー、さっきはエムに教えてもらいながらじゃないと全然クリア出来なかったからさ!もう一回リベンジしたいっていうか!……さあ……」

 

 明るく振る舞うユウスケだが、エムの表情はなかなか晴れない。さすがの気まずさに、徐々にトーンダウンして、やがて口を開かなくなった。3人の間を沈黙が支配する。カモメの鳴き声と、周囲の海を行き交う船舶の汽笛が、余計に冷めた心にしみていく。

 だが、永遠に続くと思われたそんな暗く沈んだ空気は突然現れた1人の男に吹き飛ばされることとなる。

 

「やあ、天才ゲーマー君。ずいぶん面白そうなガシャット持ってるじゃないか。是非とも僕にくれないかな?」

 

 士やユウスケと同世代と思わしき青年だ。

 

「海東!」

 

「海東さん!」

 

 海東と呼ばれたその青年は女性であれば容易く引き寄せられそうな爽やかな笑みを浮かべている。おそらく大抵の人間は第一印象で好感を覚えるに違いない。

 だが、その笑顔の裏に秘められた何処か底知れぬ危険な香りを感じ取ったエムは、マイティブラザーズXXのガシャットを握りしめて直感的に後ずさっていく。

 

「またお前か。ふんっ、突然俺達の前から消えたと思ったら、今度はまた盗賊ごっことはな」

 

 愛想笑いを浮かべる海東とは正反対に、士は不機嫌さ全開で海東を睨んでいる。おまけに、さりげなくエムを海東から庇うように前に出る。海東の柔らかい物腰に反して、士達との間に流れる空気は非常に剣呑であった。

 

「ずいぶん酷い言い草だね、士。これでも一応以前よりかは穏便に済ませようと心得てるんだけどな。怪盗らしく、美学を持ってスマートに盗んでる」

 

「俺にとっては大差無い」

 

 ニヒルな笑みを浮かべた海東は大げさに肩を竦める。長身と端正な顔立ちもあって、海外の俳優顔負けにオーバーな一連のリアクションが妙に似合っている。

 

「やれやれ。相変わらず邪険に扱ってくれるね。いずれにせよ、僕にはやっぱりこっちの方が性に合ってるってことさ。そんなことより、その子のガシャットを僕に譲ってくれるよう説得してくれないか?僕と君の仲だからね。さすがにあまり手荒な真似はしたくないんだ」

 

「よく言うぜ。今までにもさんざん搔き乱しといてくれて」

 

「誰?」

 

 海東のことを何も知らないエムの疑問に、士は精一杯顔をしかめて答える。

 

「すっごく悪ーいお兄さんだ」

 

 あからさまに嫌そうな顔を続ける士の素っ気なさに業を煮やしたのか、海東も呆れた様子で深いため息を漏らした。代わりに、マイティブラザーズXXガシャットを抱きしめるエムに視線を変えた。

 

「なあ、どうしてもダメかい?マイティアクションXやその他のガシャットと一緒に全部僕に渡してくれたたまえ!僕はどうしてもそれが欲しい!」

 

 笑みを崩さないながらも、徐々に興奮気味で語気が荒くなっていく海東。貴重なライダーガシャットを前にテンションが上がってしまっているらしい。しかし、黙って見ていられなくなったユウスケが怯えるエムに代わって海東に食ってかかっていく。

 

「ダメに決まってるでしょ!だってこのガシャットは……」

 

「当たり前だ。こいつの持っているガシャットは、いずれもこいつの親父との絆の象徴だからな。そんな大切な物をお前みたいなコソ泥なんぞにくれてやる理由は万が一にも無い」

 

「士……」

 

 先に同じことを士に言われてしまったユウスケは一瞬面食らったものの、すぐに微笑んだ。口は悪いがなんだかんだ言って、この男は他人のことをよく見ているのだ。それでいて、本当は正義感が強く優しい。それが小野寺ユウスケの知る門矢士という人間である。

 一方、面と向かって拒まれ続けている海東は表向き顔には出さずとも、明らかに業を煮やし始めているのが見て取れた。

 

「士、僕は君に聞いてるわけじゃない。そこの天才ゲーマー君に尋ねてるんだ」

 

「あいにく俺はエムの主治医だからな。こいつの為にならないことはノーセンキューだ」

 

「はあ……仕方ないな。その強情さ、実に君らしいよ」

 

 もちろん、あの海東がお宝をすぐ目の前にしてそう簡単に引き下がるわけがない。その手には拳銃型の変身用ガジェット、ディエンドライバーが握りしめられており、既に変身に使用するカードも装填済みだ。明確な敵意を向けてきた海東からエムを庇うように、士とユウスケは前のめりになった。

 

「海東!お前!」

 

「変身!」

 

 海東がディエンドライバーを上空に向けて、掛け声と共にトリガーを引いた。

 

《カメンライド・ディエンド!》

 

 音声と同時にディエンドライバーから放たれたシアン色のエネルギー弾と、海東の周囲を取り回っていたオーロラが海東の全身を包み込んでいく。オーロラは黒を基調としたアンダースーツへ。シアン色のエネルギーの塊は同じ色の装甲へと変化する。やがて、朧げだった海東の姿は鋭角な鎧を纏った仮面戦士へと明確に変貌を遂げていった。

 ディケイドとは別のもう1人の世界を渡り歩く仮面ライダー、ディエンドがその姿を現した。

 

「ちっ!何処が穏便に済ませてるんだ!怪盗どころか、ただの強盗だろ!」

 

 海東の本気を痛感した士は、対抗してディケイドライバーを腰に巻きつける。

 

「変身!」

 

《カメンライド・ディケイド!》

 

 仮面ライダーディケイドに変身した士がライドブッカーをソードモードに変形させて、その鋭い刃を振りかざし斬りかかる。ディエンドも銃口をディケイドに向けてトリガーを引いた。直撃すれば生身の人間なら一撃で粉々に砕ける破壊力を秘めたエネルギー弾がディケイドの頬を掠めていく。

 一見すると互いに知り合いでありながらあまりにも躊躇が無い命のやりとりだが、この2人の場合はこれくらい本気で攻めなければ有効打にならないと互いに踏んだ上での戦いぶりである。

 実際、ディエンドは遠慮なくディエンドライバーを撃ち込み続けているが、その殺意だけは充分な銃弾の数々はいずれも命中せずに、ディケイド周辺のコンクリートを破壊するだけに終わっていた。

 

「はっ!」

 

 銃弾をギリギリで躱し続けるディケイドは足元で次々と立ち昇る硝煙にも構うことなく、一気にディエンドの懐まで入り込み、彼に一太刀浴びせようと袈裟斬りを放つ。

 まさに、白兵戦用も武器を持たない相手に対し、間合いを詰めて渾身の一撃を与えるセオリー。だが、そんな常套手段が容易に通用する程、仮面ライダーディエンドは甘い相手ではなかった。

 

「ふっ!」

 

 近距離戦を仕掛けてきたディケイドに対して、ディエンドも拳銃のノズル部分を十手代わりにしてライドブッカー・ソードモードの刃を受け止める。ディケイドはライドブッカーのグリップを両手で握りしめて力を込めているが、それでも刃はディエンドの手を震わせるだけで一向に均衡を崩せない。

 ディエンドは銃撃戦を主眼としているものの、変身者である海東は決してディエンドライバー頼りの射撃技一辺倒な人間ではない。むしろ、海東本人の高い身体能力もあって、軽やかな肉弾戦も余裕でこなす。

 おかげでディエンドは距離を選ばない万能な戦闘スタイルを有した強力なライダーとして活躍していた。もっとも、それは敵に回れば単に厄介なだけということも意味しているが。

 

「はっ!」

 

 一瞬だが、均衡が崩れる。袈裟斬りの反動で隙が生まれたところをすかさずディエンドが狙う。ディケイドの胴体目掛けて放たれた銃弾は、ディエンドの企み通りに命中することはなかった。

 寸でのところで身を逸らされたために明後日の方向に飛んでいき、遥か後方に駐車してあった乗用車をその驚異的な破壊力で撃ち砕いてしまう。

 何処の誰とも知れぬ車の持ち主の降って湧いた悲劇に同情する暇もなく、再び2人のライダーは剣と銃をぶつけ合った。

 

「くっ!」

 

 またしてもライドブッカーの刃はディエンドの眼前で停止した。ディケイドとディエンドの性能、そして変身者である2人の技量も互角。簡単に決着がつかないのは当然である。

 

「相変わらずやるね、士」

 

「お前のように面倒な奴らを大勢相手にしてきたからな!」

 

 幾度も鍔迫り合いを繰り広げる士は予想通りな戦いの泥沼化に舌打ちしつつも、仮面ライダーの力で強化された視力で背後を確認する。何が起きているのか理解出来ていない様子のエムは不安げに戦いを眺めていた。

 

「ユウスケ!お前はエムを連れて離れてろ!こいつのしつこさは尋常じゃないからな!」

 

 士の指示に頷いたユウスケはエムの手を握り締めて走り出す。

 

「おっと逃がさないよ」

 

 回し蹴りを放ってディケイドと距離を置いたディエンドが新たに2枚のカードを取り出した。そこには異世界の戦士達が描かれている。

 

「目には目を。ゲーマーにはゲーマーだ」

 

《カメンライド・ガイ!》

 

《カメンライド・デルタ!》

 

 ディケイドの隙をついて装填後にユウスケとエムに目掛けてトリガーを引いた。だが、飛び出したのは殺傷力を秘めた通常の銃弾ではない。人の形をしたオーラ。異世界の仮面戦士を模したエネルギー体である。

 それはユウスケ達の眼前で着弾すると、一瞬で実体を伴った存在へと変貌する。サバンナの草食獣サイを模した鋼鉄の騎士『仮面ライダーガイ』と、白き閃光を纏う赤き炎の担い手『仮面ライダーデルタ』の2人だ。

 これがディエンドの能力の真髄。彼は異世界のライダーを召喚し、傀儡として自由に操ることが可能なのである。

 魂を持たぬディエンドの傀儡と化した2人の仮面ライダーは実体化と同時に一斉に邪魔者であるユウスケに襲い掛かり、彼を圧倒的パワーで弾き飛ばした。

 

「うおおっ!」

 

「ユウスケ兄ちゃん!?くっ!」

 

 地べたを転がるユウスケの危機を前に、慌てて背中のランドセルからゲーマドライバーを取り出したエムはすぐさま腰に装着。ベルトが少年の細い腰に一瞬にして巻かれる。右手には、この世界で最も愛されているというアクションゲームの主人公が描かれたガシャットが握られていた。

 

「大変身!」

 

 ガシャットをゲーマドライバーに装填。すぐさまレバーを引いて、秘められた力を解放する。ゲーマドライバーから放たれたマゼンタカラーのエネルギープレートがエムの体を通過していく。

 

《ガッチャーン!レベルアップ!マイティジャンプ!マイティキック!マイティマイティアクション!X!》

 

 光に包まれながら、エムの体格が士達と同じくらいの成人男性レベルの物へと変化する。その全身はマゼンタカラーのアンダースーツと装甲が覆われていた。

 

「はああああ!!!」

 

《ジャ・キーン!》

 

 仮面ライダーエグゼイド・アクションゲーマーレベル2に変身完了したエムが専用武器ガシャコンブレイカーの刃を振りかざしながら、ガイとデルタへと果敢に攻め込んで行く。

 一方ディエンドの銃弾をライドブッカーで弾きつつ、遠巻きにエムの様子を見ていたディケイドは、相対するディエンドに激しい怒りをぶつける。

 

「何のつもりだ!海東!」

 

 ディケイドの剣幕にも、無機質な印象を与える仮面もあってディエンドは何処吹く風といった様子で涼しげな立ち振る舞いを崩していない。

 

「それはこっちのセリフだよ。幻夢コーポレーションと芸間クロトの野望を阻止するには、あの子のガシャットを回収する必要があるんだけどね!」

 

「何!?どういう意味だ!」

 

「君は彼の主治医で、しかも側にいたってのに気づかなかったのかい?あの親子は……普通じゃない!」

 

 仮面ライダークロニクルのトップランカーであるエムも、異世界の実力者達相手にはさすがの苦戦を強いられていた。

 なんせ仮面ライダーガイの腕力と防御力は生半可ではない。おかげでガシャコンブレイカーによる小手先の剣術は、全てガイが右腕に装着しているメタルゲラスの頭部を模した手甲が衝撃を吸収していた。

 さらにその重厚な外見に似合わぬ軽快なフットワークも相まってエグゼイドの戦闘能力が全く通じず、正面からの斬り合いでは明らかにジリ貧状態が続いている。

 

「このおっ!」

 

 ガシャコンブレイカーに備え付けられているBボタンを連打。膨大なエネルギーを蓄えた状態で渾身の薙ぎ払いを放つ。

 

「ーーーーーッ!!」

 

 手甲でガシャコンブレイカーを受け止めたガイの体勢がにわかに崩れた。

 いける。そう確信したエグゼイドはこのまま押し切ってしまおうと、柄を握締める力をより一層強めた。

 

「ファイア」

 

《BURST MODE!》

 

 エグゼイドと斬り結んでいたガイが突然バックステップ。次の瞬間、エグゼイドの周辺から大量の火花が散った。

 

「い、いってえ〜!」

 

 煙が立ち昇る肩を抑えるエグゼイドが振り向いた先には、ビデオカメラを模した大型拳銃の銃口をこちらに向けたデルタの姿があった。デルタは続けざまに、デルタフォンのトリガーを引いていく。その度に銃口から白いビーム弾が唸りをあげる。黙々と目標を撃つ抜こうとする様は、さながら冷酷無慈悲なガンマンと呼ぶにふさわしい。

 

「ずるいぞ!こっちは銃持ってないのに!」

 

バンッ!バンッ!バンッ!

 

 不満を告げるエグゼイドに、無言のデルタから白いフォトンブラッドのエネルギー弾による返答が撃ち込まれる。

 

「うわああっ!」

 

 隣の壁に風穴が空いたために腰が抜けそうになるのにも耐えて走り出すエグゼイド。幸いにもこの港には大量の障害物が存在する。ならば、遠距離攻撃手段に乏しいエグゼイドのベストな選択は障害物を盾にして銃弾を回避していくことだろう。

 しかし、白兵戦での猛攻に長けたもう1人の敵が許してはくれなかった。仮面ライダーガイは逃走を図るエグゼイドの行く手を阻む。メタルゲラスのツノと同じ鋭い角を突き立てようとしてくる。

 

「またかよ!」

 

 ガイの突進をギリギリで避けたエグゼイドは、一瞬彼が見せた隙を狙って背中を斬りつけようとする。だが、その前にエグゼイドの方が逆に吹き飛ばされてしまった。

 ガイが作った隙を狙って容赦なく攻めるデルタの存在はやはり厄介だ。だが、雨のように降り注ぐ銃弾をなんとか避けようにも、今度はガイが邪魔して逃げ道を塞いでしまう。

 白兵戦に長けたガイと正確無比な銃撃でサポートするデルタの連携は完璧だ。意思を持たない傀儡だからこそ、一切無駄な動きの無い戦闘マシーンとしての立ち回りを可能としているのだろう。

 ゲーム的に表現するならば、容赦を捨てた高難易度NPCが立ちはだかっているに等しい状態と言えた。

 

「さすがにレベル2で2人がかり相手は分が悪過ぎるか!」

 

 ならば、もっと強い力を振るえばいい。そう判断したエグゼイドは、ゲキトツロボッツガシャットを取り出した。

 

《ゲキトツトロボッツ!》

 

「大・大・大変身!」

 

 強化装甲として機能するサポートメカであるロボットゲーマがエグゼイドと合体するために変形を始めた。ロボットアクションゲーマーならば、ガイを上回るパワーと、デルタの銃撃に耐える防御力を得るはずだ。

 しかし、その直前にガイが一枚のカードを取り出し、左肩に向けて放り投げる。

 

《コンファインベント!》

 

 ガイの肩に設置されたカードリーダーから音声が流れると同時に、エグゼイドと融合寸前だったロボットゲーマが霞のように消失した。

 

「へ?レ、レベルアップが無力化された!?そんなのありかよ!」

 

 対抗手段を未知の力で無力化されたエグゼイドは慌てて適当な壁に隠れてデルタの銃撃をやり過ごす。その手には、ゲキトツロボッツとはまた別のガシャットが握られていた。

 

「父さんにはこのガシャットは、お前にはまだ早いって言われてたけど……でも!」

 

《ドラゴナイトハンターZ!》

 

 ガシャットの起動に合わせて、ワイバーンを模した強化システムであるハンターゲーマが飛来する。一瞬躊躇いを見せるが、それでもエグゼイドはすぐにガシャットを強化用スロットに差し込んだ。

 

「大・大・大・大・大変身!」

 

《アガッチャ!ド・ド・ドラゴ!ナナナナーイ!ドラッ!ドラッ!ドラゴナイトハンター!ゼエエエエエットッ!!!!》

 

 ハンターゲーマが変形しながらエグゼイドの全身を包み込む。今までの身軽だった姿とはまるで正反対の重装甲、全身武装の竜騎士仮面ライダーエグゼイド・ハンターアクションゲーマーレベル5が誕生した。

 

「くううううっ!!!!」

 

 合体完了と共にエグゼイドの全身を駆け巡る電流。その苦痛のあまりに苦悶の声を漏らすが、なんとか耐え抜いて目の前の傀儡達と対峙する。

 

「えいやっ!」

 

 まずは右腕の剣で迫り来るガイを斬りつける。レベル5の名は伊達ではなく、ガイはなすすべのなく切り裂かれて地面を転がる。

 続けて左腕のライフルでデルタを捕捉。撃たれる前にエグゼイドに向けてフォトンブラッドの銃弾の嵐を叩き込むデルタだったが、全身を覆う鎧はビクともしない。

 デルタの反撃をもろともせずに構えたライフルから圧縮ビーム弾が放たれる。その一撃は見事デルタを撃ち抜いた。

 

「諦めろ海東!あいつは転んでもただじゃ起きないぞ!」

 

「確かに。天才ゲーマー君もなかなか粘るね。けど、そろそろ終わりにしてあげよう」

 

《アタックライド・クロスアタック!》

 

 ディエンドの指示に合わせて、ガイとデルタがエグゼイドから距離を置き、それぞれの必殺技発動のプロセスを開始した。

 

「チェック」

 

《EXCEED CHARGE!》

 

 デルタが構えた拳銃へと高レベルのフォトンブラッドの白い輝きが注ぎ込まれる。異世界の仮面ライダーに関する知識を持たないエグゼイドは何事かと身構えるが、それが逆に隙を生んでしまう。トリガーが引かれた拳銃から飛び出した三角錐のエネルギー体はまっすぐエグゼイドに突き刺さり、その身を拘束してしまった。

 

「な、なにこれ……うごけない……」

 

 かの世界にてオルフェノクを抹殺するべく、そのアドバンテージとして与えられた高濃度フォトンブラッドを凝縮して構築したポインターによる拘束機能は、異世界のライダーにも存分に効果を発揮していた。

 

「エム……!」

 

《ファイナルベント!》

 

 地べたを這いつくばっているユウスケが腕を伸ばす先では、サイの獣人メタルゲラスが鏡の世界から出現し、主人であるガイを持ち上げて突撃を開始していた。猛スピードではエグゼイドに迫るガイの右腕には、無骨な突起物が煌めく手甲が獲物を狙っている。あれの直撃を受ければ、いくらエグゼイドでも無事では済まないはずだ。

 さらにはガイの追撃でデルタが跳躍。この堕天使の鉄槌の異名を持つ飛び蹴りを受ければもちろんタダでは済むはずがない。いずれも強力無比な必殺の一撃。まさに絶体絶命の危機である。

 

「負けて……たまるかあ!!!!」

 

 だが、エグゼイドは魂からの叫び声をあげて、なんと己の拘束を無理矢理引き剥がした。突き刺さっていた三角錐のポインターが弾き飛ばされていく。思わぬ事態に陥ったデルタは空中で判断を見失っていた。

 

「ーーーーーっ!?」

 

 いくら強力な異世界のライダーと言えど、所詮は自らの意思を持たずに力を振りかざすだけのただの人形。強い人の意思でスペック以上の力を引き出すことが可能な本物の人間ならば、決して勝てない相手ではない。同じデルタの力であっても、かつて恐怖を乗り越えて戦場へと立ち向かったとある青年のそれとは比べ物にならない紛い物でしかない。

 

《キメワザ!ドラゴナイトクリティカルストライク!》

 

「でりゃあああ!!!」

 

 戒めから解き放たれたエグゼイドが、左腕に固定されたライフルの照準を滞空しているデルタへと向ける。そして、銃口から圧縮されたエネルギー弾を放射した。既に勢いを失っていたデルタは容易く撃ち抜かれ、エネルギー体へと気化していく。

 デルタの排除に成功した次は、右腕の剣をこちらへと突撃の最中のガイに向ける。

 

「うおおおおおお!!!」

 

 エグゼイドを狙っていた角状のクローと剣が激しくぶつかり合う。ガイも最初は拮抗していたものの、勝利への執念を込めたエグゼイドの渾身の一撃には叶わず、その身をメタルゲラスと共に斬りつけられる。

 

「ーーーーーーーー!!!!」

 

 エグゼイドによって真っ二つに引き裂かれたガイもデルタ同様に、一片の跡すら残さず完全消滅していくのだった。己の傀儡達が無残に駆逐される光景を目にしたディエンドは、ディケイドとの戦いの手を止め、新たにカードを引き出した。

 

「さすがは天才ゲーマー。どうやら彼の攻略難易度はかなりの物のようだ。でも、僕もなかなかに諦めが悪い質でね。今度は僕のとっておきをお見せするとしよう」

 

 異世界の主人公の相棒として名高い選りすぐりの戦士達、イクサとゼロノスのカードを装填しようとした時だった。巨大な爆炎が3人のライダー達を包み込んだ。

 

「なんだ!?」

 

 今まで余裕しゃくしゃくで強襲を仕掛けていたディエンドが身構えつつ、慌てて周囲を見渡し始めた。彼の手によるものではない。ディケイドとディエンド、そしてエグゼイドも丸ごと攻撃を受けた。すなわち、この3人全員にとって共通の敵となりえる存在の襲来である。

 

「あれは……」

 

 3人の視線が一点に集中する。そこにいたのは漆黒のボディを有した仮面ライダーであった。髪を思わせる頭部パーツに、瞳状のバイザーアイ、そして、胸部装甲に描かれたガシャコンブレイカー。その姿はまるでエグゼイド、いや、色以外はエグゼイドそのものと称しても過言ではない。

 黒いエグゼイドは、色相以外では唯一の違いである、右腕に装着したチェーンソーの刃を向ける。自分そっくりな新たなライダーの出現を目にしたエグゼイドは、ゴクリと喉を鳴らして呟いた。

 

「仮面ライダーゲンム……」




次回『トゥルー・エンディング』

全てを破壊し、全てを繋げ!
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