仮面ライダーディケイド エグゼイド編   作:藤川莉桜

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すいません。今回で終わりのつもりでしたが、あまりにも長くなったのでエピローグだけ分けます。やりたいことを削る技術も時には必要ですねえ。


後編『トゥルー・エンディング』Cパート

「はあ……はあ……」

 

 エムは白一色の空間にいた。苦痛のあまりに尋常でない程の汗を垂れ流し、呼吸を荒くしていた。エムの体と心は既に限界に近づいている。生きたいという願いと死んで苦痛から解放されたいという願い。相反するふたち

 

「もう……だめ……苦しいよ……」

 

 そんな苦痛と格闘を続けるエムの元へと誰かが近づいてくる。すっかり身も心も弱り果てていたエムは身震いした。まさか漫画やゲームに出てくる死神の類ではないか。もしそうだとしても、今のエムに逃げる気力など持ち合わせていない。いよいよ、お終いかと思われた頃、人影はエムのすぐ目の前で止まった。

 朧げながら白衣を着た長身の男だというのはわかる。何者なのか判別しかねる中で、男はエムの側に来ると、そっと額を手でさすった。僅かだが、少しだけ苦痛が和らいだ気がした。

 

「あなたは……誰……?」

 

 とてもではないが、エムの命を奪いに着た悪魔とは到底思えない。そんな謎に満ちた白衣の男は疑問に答えることなく、何かをエムの手にそっと握らせた。途端に胸の苦しみが軽くなっていく。痛みも、熱も全て治っていく。

 

「あれ?ここは……」

 

 苦痛が引いて意識を取り戻したエムの目に最初に飛び込んできたのは、白一色の天井だった。自分が置かれている状況が少しずつ見えてくる。何故か、壁同様にやたらと白いベッドで横になっていた。

 

「エム君!」

 

「目が覚めたか!相当うなされてたぞ!」

 

 意識がクリアになってきたと共に、目の前の男女の顔もはっきりと浮かび上がってくる。

 

「ユウスケ兄ちゃん?夏海姉ちゃん?」

 

 夏海とユウスケはエムの手を握りしめ、目元にうっすら涙を浮かべながら微笑んだ。

 

「いやー、廃病院のベッドがまだ使えるようで助かったよ。外はボロボロだったけど、中は結構まだ綺麗だったんだ」

 

「おかげでエム君を休ませることが出来ましたね」

 

 頭がスッキリしてきた時、エムは直前の状況を思い出した。ディケイドとの熾烈な戦い。そして、冷酷な戦士ゲンムとしての本性を露わにした父の姿。

 

「士先生は?父さんは!?」

 

 ユウスケは真剣な表情になり、窓の外を指差した。

 

「エムの親父さんならあそこだ。士もそこにいる」

 

 外は未だ雨が降り注いでいるせいで視界はハッキリしないが、独特なロゴマークのおかげで何処なのかすぐにわかった。幻夢コーポレーションの本社ビルに間違いない。その周辺では黒い靄が集まって、まるで雷雲が地上に降りてきたかのような形相を醸し出していた。

 

「あの人はこの国のプレイヤー全てから大量のバグスターウイルスを集めてる。そのために仮面ライダークロニクルのマスターガシャットをフル稼働させてバグスターウイルスを活性化させたんだ」

 

 つまり、あの黒い靄はバグスターウイルスの集合体ということだ。この目にもはっきりと視認可能な程集められた夥しいバグスターウイルスに、エムの心はかき乱されていく。

 

「でも、そんなことしたら……」

 

「ああ、士が言ってたけど、世界中のプレイヤー達がゲーム病を発症してしまう!」

 

 ゲーム病に苦しめられた経験を持つエムは胸の痛みをズキズキと感じていた。あの苦しみをプレイヤー達が皆その身で味わうことになるのだ。実の父がその原因だというのなら、息子であるエムが選ぶ道は……

 

「俺が間違ってた……父さんを止めないと!」

 

 本社ビルの周辺では奇妙な光が行ったり来たりしている。おそらく士とクロトが激しい戦闘を繰り広げているのだろう。居ても立っても居られなくなったエムはベッドから立ち上がった。しかし、そんな彼を夏海は抑え込んでまた寝かせようとする。

 

「ダメですよエム君!君だってさっきまでバグスターウイルスに苦しんでて……」

 

「もう大丈夫だよ!これのおかげで!」

 

《マイティブラザーズXX!》

 

 オレンジ色の本体に2体のマイティが描かれた大型のガシャット。エムが取り出したのは父との絆の象徴である、マイティブラザーズXXガシャットだ。

 

「それって士君が出ていく前、エム君に握らせてた……」

 

 目を丸くしている夏海の話を聞いて、エムは確信した。彼の見た白昼夢に出てきた白衣の男は士だったのだ。

 

「きっと、このガシャットは俺の中のバグスターウイルスを抑制する機能があるんだ。父さんがゲーマドライバーと一緒にこのガシャットも渡したのは、きっと俺がゲーム病で苦しまないようにするためだったんだ。士先生もそれに気づいて、俺に握らせたんだと思う」

 

 御守り代わりにとクロトは言っていたが、実際には御守り以上の意味があったということだ。おかげで、危険性の高いライダーガシャットを今日まで使い続けてきたにも関わらず、エムはゲーム病を発症せずに済んでいた。

 

「父さんが俺をバグスターウイルスの実験台に使ったのは事実だ。けど、このガシャットをくれたのも父さん。俺にはどっちが本当の父さんかはわからない」

 

 何故クロトは自分の妻を……エムの母親を蘇らせることにそこまでの執念を抱いているのか。だから、聞かなければならない。

 

「あの人の本当の気持ちを……俺は知りたい!」

 

 エムの覚悟を黙って聞いていたユウスケは、静かに頷いた。

 

「行こう、エム!士と親父さんが待ってる!」

 

「うん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《フォームライド・ブレイド・ジャック!》

 

 創造の力で背中にジェットエンジンを生やしたゲンムと、仮面ライダーブレイド・ジャックフォームに変身したディケイドが共に空で剣を交える。幻夢コーポレーション本社ビルで再度対峙を果たした2人は、何度も何度もぶつかり合い、熾烈な空中戦が繰り広げていた。

 ゲンムは創造した巨大な剣を見た目にそぐわぬスピードで振り回し、ディケイドを覚醒剣ブレイラウザーごと薙ぎ払う。その破壊力は伊達ではない。剣の先が砕け、鷲の翼を模したマントが一枚切り裂かれてしまった。空中制御を担うマントが破損したために、ディケイドは揚力を一時的に失ってしまう。

 

「このっ!」

 

 熾烈な空中戦と説明したが、実際はゲンムの方が圧倒的優位に立っていた。なぜならスピードとパワーは新たな姿に変身したゲンムの方が遥かに上。さらにクリエイターゲーマーのみに許された自在に武器を生み出す能力もこの上ない程に厄介極まりなく、次々と繰り出される斬新な武器の数々にディケイドは翻弄されている。おかげで互いが技を振るう度に、こうやってディケイドは一方的に少なくないダメージを受けてしまっていた。

 グルグル回っていたディケイドは墜落しないよう、なんとか空中でのバランスを取り戻そうと姿勢制御を行う。その甲斐あってブレイドは再び上空へと飛び上がっていく。

 

「世界の破壊者ディケイド!何故私の邪魔をする!異世界の住人である君達には、我々の事情など関係ないはず!」

 

「あるさ!俺はあいつの主治医だ。だから、あいつの選んだ行き先を最後まで見届ける義務がある!」

 

 苛立ちをぶつけるゲンムに向かってディケイドは真正面から啖呵を切った。もし、仮面の向こう側が見えるのなら、今の彼はこれ以上にない程の勝ち誇った笑みを浮かべていたに違いない。それがゲンムには我慢ならなかった。

 

「なにが主治医だ!」

 

 剣の形状をした大量のミサイルを形成し、射出しつつゲンムは吠える。昨日今日息子と知り合ったばかりの異世界人が、さも父親である自分よりもエムに理解があるような顔をしている。父親としてはこれ以上ない屈辱であった。

 

「そんなくだらない理由で!」

 

 だからゲンムは否定する。この世界で最も息子を理解しているのは自分であると。真に彼と寄り添うことが許されているのは父親である自分だけであると。主治医と患者などいう糸より細い繋がりに絆などあってたまるかと。

 しかし、ミサイルを華麗に避けたディケイドはそんなゲンムを一笑に付す。

 

「その下らない理由とやらが、俺に力を与えてくれてるらしいぜ?お前から見れば取るに足らないちっぽけな理由でも、命を賭けて闘い続ける奴らを俺は大勢見てきたからな!」

 

 ギリギリのバランスを保つことでなんとか飛行を可能としていたディケイドが突然急上昇、そして、ゲンムに向かって落下を開始した。落下の速度を利用して一気にゲンムとの距離を詰める。これなら今のディケイドでも、加速を維持しつつゲンムの元に飛び込めるだろう。ディケイドはブレイラウザーの刃を太陽光で煌めかせた。

 

「もらった!このまま地上に引きずりおろしてやる!」

 

 今のゲンムは防御の構えが取れておらず、完全に隙だらけである。予想通り、急接近するディケイドに対抗出来ていないようだ。だったら、このままブレイラウザーを突き立てて、地上に突き落とす。それがディケイドの狙いのはずだった。

 

「余所見をしている暇は無いぞ」

 

「なに!?」

 

 ゲンムを攻めることに夢中だったディケイドは慌てて背後を確認した。なんとさっき射出されていた多数の剣のミサイルが、まさかのUターンしてすぐそこまで迫っていたのだ。どうやら本物など比較にならない程の追尾機能も付与されていたらしい。しかし、避けようにも今更コースも変えられず、もう時すでに遅し。結局、ミサイルは全てディケイドの背中に直撃した。

 

「ぐわあっ!」

 

 ズタズタに翼を破壊されたディケイドは飛行能力を完全に失い、元の姿に戻りながら地面へと爆音を立てて激突。砂煙が落ち着いた時、コンクリートの地面に大穴を空ける程の大ダメージを受けたディケイドは強制的に変身が解除されていた。

 

「ふんっ!さすがにこれで貴様も限界だろう」

 

 いくら仮面ライダーといえど、ビル以上の高高度から地面に叩きつけられて無事なわけがない。ゲンムも勝利を確信した。

 しかし、クレーターの上で転がっていた士は、膝を抱えてもう一度立ち上がる。

 

「まだだ……まだ終わらない……!」

 

「な、何っ!?」

 

 満身創痍にも関わらず、なおも立ち上がろうとする士の姿に、戦況的に優位なはずにゲンムも焦りを抱いていた。

 

「何故だ……何故そこまで抗う!」

 

 普通の人間なら治療が必要な程に受けてしまった傷跡が見ている方が痛々しい。医者の象徴である白衣は砂埃を被った上にズタズタに引き裂かれた。全身の至る所から血が流れ、内出血を起こしたと思わしき顔の傷は赤く腫れてしまっている。やはりダメージは尋常ではないのだろう。立っているのが不思議なくらいだ。

 

「活性化したバグスターウイルスによってプレイヤー達に犠牲は生まれる。だが、いずれは彼らも同じくバグスターとして復活出来る!人が死と老いと病魔に怯える時代は終わる!そんな理想の素晴らしい世界がやって来るんだぞ!」

 

「ただし、お前によって管理された世界だがな!」

 

 誰とて老いは苦しい。病疫は辛い。死は怖い。人なら例外なく不老不死を一度は夢見たことがあるだろう。人なら避けられないはずの呪いから解放された世界。クロトが作ろうとしている生命の理を覆された世界は一見そんな理想郷に思える。しかし、その実態は仮面ライダークロニクルの運営であるクロトに生殺与奪が握られた管理社会に他ならない。

 仮面ライダーは自由のために闘う戦士。ゆえに士はクロトの理想を認めず、否定する。

 

「俺は世界の破壊者だ。お前が創る素晴らしい世界とやら……俺が破壊させてもらう!」

 

 不敵な笑みを浮かべる士。ここでようやくゲンムは悟った。この男は例え命を代償にしてでも己の信念を決して曲げたりはしない人物である、と。

 そして、ゲンムも不退転の意思を翻すつもりはない。ならば、ディケイドにはその信念に殉じてもらうのがせめてもの手向けというものだろう。

 

「そうか……ならば、ここで朽ち果てろ!」

 

 ゲンムはガシャットを振り上げ、剣を象ったミサイルを描いてまたも召喚。今度は空を埋め尽くす程の数を呼び出し、その矛先を士に集中させる。これだけ揃えて一斉に放てば、生身の士では避けることも防ぐこともままならないだろう。

 今度こそ絶体絶命の危機だ。

 

「父さん!」

 

 ガシャットを通じてミサイルに命令を下そうとしたゲンムの手が止まった。声のした方へと振り向く。そこには、ヘルメットを被った少年がいた。

 

「士!大丈夫か!?」

 

「ああ、なんとかな」

 

 少年の背後では別のヘルメットを被った人物がバイクから駆け足で降りて、すぐさまボロボロの士に駆け寄っていた。バイザーを上げるとゲンムにも見覚えのある顔が飛び出す。ディケイドの背後にいつも控えていた青年だ。

 その青年、小野寺ユウスケが身体を支える中で、士は膝をついて肩で呼吸を繰り返す。強がってはいたものの、やはり彼の体は限界に近づいているようだ。

 

「父さん、もうやめてください!」

 

 少年は被っていたヘルメットを脱いでその全容を明らかにする。クロトの息子、エムだ。

 

「エム、何のつもりだ……」

 

 一度は父の野望に加担し、ディケイドに剣を向けていたエムだったが、今はその敵愾心をクロトへと向けている。元々味方を作るつもりなど無かったとはいえ、手のひらを返して反逆されれば流石に面白くはない。自然と声も不機嫌さが滲み出た威圧的なものとなる。

 だが、エムは決して怯むことはなかった。闘志に満ちた眼差しでまっすぐゲンムを見据えている。

 

「父さん、僕は勘違いしてました。父さんの言う通りにしていれば、きっと父さんは喜んでくれるって。母さんが帰ってきてくれれば、きっとまた笑顔を取り戻してくれるって。またみんなで幸せに暮らせるんだって……」

 

 静かな語り口であった。本気でそう信じて、エムは士達に剣を向けたのだ。しかし、今は違う。

 

「けど、間違ってた!こんなやり方じゃ、あなたは笑顔になんてなれない!」

 

「何を言う!私はこれ以上ない程に幸福に包まれている!もうすぐ!もうすぐ私達家族は元どおりになるんだからな!」

 

 不気味な高笑いを仮面の内側から漏らすゲンム。ここまでの道のりは険しかった。仮面ライダークロニクルを完成させ、ゲームプレイヤー達を熱狂させ、バグスターウイルスを増殖させる。そのために数多の困難を乗り越えてきた。

 全てはこの日のためだ。そして、最後の最後で立ちはだかってきた障害ディケイドももはや虫の息。目的就実は目前と言っていいだろう。これが愉快でないなら、どうだと言うのか。

 だが、そんなゲンムとは対照的に、エムは悲痛な表情を浮かべて首を横に振った。

 

「じゃあだったら、なんで……なんでそんな悲しい顔ばかりしてるんですか!」

 

 途端にゲンムは笑いをピタリと止めた。

 

「仮面で隠しててもわかります!今の父さんは……本当は笑顔なんかじゃない!」

 

 空中からエムを見下ろすゲンムは微動だにしない。ただ何も言わず、黙ってエムを見据えたままだった。

 

「誰かを傷つけてまで母さんを取り戻しても、俺もあなたも母さんも……誰も笑顔になんてなれない!俺は父さんのそんな顔を見たくない!」

 

 エムはキャップのツバを後ろに向けて、パーカーのポケットに手を入れた。

 

「もしも……父さんがどうしても引かないというのなら……俺はあなたと戦います!」

 

《マイティアクションX!》

 

 ポケットから取り出したマイティアクションXが軽快な8ビットのメロディを刻みながら高らかに起動を宣言する。ゲームの始まりを告げる音声ガイダンスである。

 

「父さんの笑顔は……俺が取り戻す!!!!!」

 

 エムの瞳からは決して揺るがないであろう強い意志が感じられる。まるで水晶のような澄んだ輝きを放っていた。そんな幼い少年の奮起を目の当たりにした満身創痍の身体をおして士は口元を綻ばせながら、エムの隣に並んだ。

 

「こいつはどうやらお前が思っている以上に、お前のことを見ていたようだぞ。そして、自分の意思で決めた。たとえお前に逆らってでも、父親であるお前の笑顔を取り戻すってな」

 

 士はエムの肩に手を置いて、優しく微笑みかける。エムも士に頷いて返した。

 

「なのにお前はどうだ?ただ自分の満足のためにエムから目を背けている!」

 

「黙れ!ただの自己満足はお前達の方だ!私は常に世界を見ている!目先に囚われている者達とは違う!哀しみを無くした新しい世界を……理想郷を作る!」

 

 拳をわなわなと震わせて反論するゲンムだったが、それすらもこの門矢士と名乗る自称医師は鼻で笑って一蹴した。

 

「新しい世界を作る?それがどうした!お前はエムだけじゃなく、自分自身すら見えていない!今のお前では、誰1人幸せになんて出来やしない!お前自身もな!」

 

 あれだけ痛めつけられて、そのダメージが回復しているわけでもないのに堂々と振る舞う士の姿を前に、ゲンムの内心は徹底的に揺さぶられていた。まるで不死鳥の如き男だ。何度排除しようと何度でも立ち上がり、何度でも立ち向かってくる。何度潰そうとしても、その決意は全く揺るがない。

 ディケイド。その名と恐るべき力は耳にしている。

 世界の破壊者。

 悪魔。

 時空をも超える戦士。

 大ショッカーが作り出した究極の仮面ライダー。

 だが、今ゲンムの前に立っているこの男は、そんな前評判だけで推し量れるような人物ではなかった。言葉では言い尽くせない、底知れぬ何かを秘めているように思えてならなかった。

 

 この男の正体は何なのだ?

 

「貴様はいったい……」

 

 声を震わせて動揺するゲンムに、その瞳に闘志を燃やす士はディケイドが描かれたカードを突きつけた。

 

「通りすがりの仮面ライダーだ」

 

 バックルにカードを装填し、回転させて読み込ませる。

 

「変身!」

 

《カメンライド!》

 

 この一連の動作によってカードの効果が仮面ライダーとして、次元の力と連結されたディケイドライバーによって現実空間へと拡張される。

 

《ディケイド!》

 

 マゼンタカラーの装甲を伴った仮面の怪人。その名は仮面ライダーディケイド。全てを破壊し、全てを繋ぐ、正義の体現者。

 これより神を気取る不届き者が生み出そうとしている世界を破壊し、すれ違い続ける親子を繋ぐ。

 

「変身!」

 

 エムはゲーマドライバーにマイティアクションXのガシャットをセットする。次に瞬間、エムの目の前にエグゼイドを含む6人のライダーの顔が描かれたパネルが現れ、周囲をぐるぐると回り始めた。

 

《ガシャット!レッツゲーム!ムッチャゲーム!メッチャゲーム!ワッチャネーム!?》

 

 その中から、エグゼイドが描かれたパネルをエムは指で弾く。

 

《アイム・ア・カメンライダー!》

 

 瞳を持つ仮面の怪人。その名は仮面ライダーエグゼイド。運命を変える究極の救世主。

 これより仮面の内に哀しみを隠し続ける父を救うため、彼の運命を変える。

 

「大変身!」

 

 寸胴体型のレベル1に変身したエグゼイドは、さらなる力を解放するため、ゲーマドライバーのレバーを引いた。ピンク色のプレートがエグゼイドの全身を包み込む。

 

《ガッチャーン!レベルアップ!》

 

 プレートをくぐり抜けたエグゼイドは驚異的なジャンプ力で空高く舞い上がる。

 

《マイティジャンプ!》

 

 続いて空中に発生したブロックをジャンプの勢いを上乗せした強力なキックで破壊。

 

《マイティキック!》

 

 最後に、エグゼイドの全身を覆っていた白い装甲が剥がれ落ちていった。その一見愛くるしい体躯の中に秘められていた真の姿がベールを脱ぐ。

 

《マイティマイティアクション!X!》

 

 ディケイドと同じ等身大の仮面ライダーに変貌したエグゼイド・アクションゲーマーレベル2が華麗に着地。召喚されたガシャコンブレイカーを構えると共に、隣のディケイドに手のひらを差し出す。

 

「ノーコンティニューで……クリアしてやるぜ!!!」

 

 手を差し出されたディケイドはタッチで返した。同時に2人の仮面ライダーはゲンムに向かって駆け出す。運命を賭けたゲームの開始である。

 

「くっ!1人増えたくらいで良い気になるな!」

 

 我に返ったゲンムはマイティクリエイターVRXガシャットを振り下ろした。空で待機していた無数の剣が、雨のように降り注いでいく。ゲンムの言う通り、これだけの数の剣ならたった2人程度完膚なきまで叩きのめすなど容易い。

 しかし、残るもう1人の戦士クウガの力を持つ小野寺ユウスケは何故か黙ってディケイドとエグゼイドを見守っているだけだ。一見無謀な戦いを前にしているにも関わらず、まるで彼らの勝利を疑っていないかのように眉1つ動かさない。

 

「士先生!」

 

「おう!」

 

 標的にされたディケイドとエグゼイドは突如二手に分かれ、地上に降り立ったゲンムを円で囲むような動きで広場を走り始める。まっすぐ放たれた剣の嵐は、タイルの床を撃ち貫くだけで終わった。

 

「ちっ!」

 

 単純だが、効果的な動きだ。全く逆の方向から攻め込んでいくことで、1人しかいないゲンムは反対側を常に気を配らなければならなくなってしまった。おかげで注意散漫になってミサイルの動きはどんどん鈍くなっている。

 使用者の想像力がダイレクトに性能に発揮される能力の弱点と言えるだろう。ゲンムが剣型ミサイルを操っては外してを繰り返している今この瞬間にも、2人は徐々にゲンムとの距離を縮めていっている。

 しかし、これくらいで追い詰められるほどゲンムは御し易い相手ではなかった。

 

「ふんっ!」

 

 遠距離からの殲滅を断念したゲンムは残っていたミサイルを全て消滅させて、代わりに空中に巨大な剣を描いた。それも2本。両手で剣をそれぞれ握りしめ、挟み撃ちを仕掛けるディケイドとエグゼイドの斬撃をいとも簡単に受け止める。

 

「なに!?」

 

 完璧なタイミングでの同時攻撃。それが不発に終わったためにディケイドは驚愕した。むしろ今のゲンムが備えるパワーは2人を上回っているらしく、鍔迫り合いの末に徐々に押され始めている。力負けを悟った2人は慌てて退き、ゲンムと距離を置いた。

 

「おっと、さすがにラスボス様は甘くねえな!」

 

 なんとかライドブッカーで凌いだディケイドだったが、その威力は想像以上に凄まじかったらしい。腕に走った痛みのあまり、手をブラブラと振っていた。

 

「当たり前だ!私は常に1人で戦ってきた!自分より格上の相手に対しても立ち向かい続け、そしてついに私に敵う者は誰もいなくなった!」

 

 ガシャコンブレイカーを携えたエグゼイドが熱弁を振るっている隙を狙ってゲンムの背後から斬りかかる。しかし、その程度の奇襲はゲンムも既にお見通し。すぐさま背後に振り返り、ガシャコンブレイカーを振り下ろそうとしていたエグゼイドに対し、逆に神速の薙ぎ払いを浴びせる。

 痛烈なカウンターを存分に受ける羽目になったエグゼイドは広場の花壇に突っ込んでいった。

 

「エム!ちぃっ!」

 

「そうだ。どんな困難も私1人で充分立ち向かえるのだ!協力プレイなどというヌルい救済処置なんぞ私には無用の長物!」

 

 再度斬りかかってきたディケイドを薙ぎ払い、怯んだ隙を狙って剣のミサイルを3連発で叩き込む。胸部装甲から盛大な火花を散らしながら、ディケイドは宙を舞う。

 

「うおっ!」

 

「どうだ!1度とはいえディケイドには辛酸を舐めさせられたが、このマイティクリエイターVRXの力さえあれば、もはや敵などいない!!!」

 

 ディケイドとエグゼイドのチームワークを児戯扱いするゲンムの実力は口だけでなく、確かに本物。1度はゲンムを破ったはずのディケイドですら、新たなガシャットの力に加えて鬼の如き気迫を伴って剣を振るう彼の動きに完全には追いつけずにいた。

 

「なるほどな。あんたが天才ゲーマーMのルーツってわけか。だがな、俺達の協力プレイを舐めてもらっちゃ困るぜ。そうだろ、エム!」

 

 立ち上がったディケイドがライドブッカーからノズルを引き出す。エグゼイドはガシャコンブレイカーでゲンムの剣撃を弾きながら頷いた。

 

「ああ!俺と士先生が一緒なら……無敵だぜ!!!!!」

 

 こびりついた砂を軽く払いつつ、エグゼイドが助走をつけて一気に跳躍。充分な加速力を伴った渾身の飛び蹴りがゲンムのすぐ眼前まで迫る。

 

「無駄だ無駄だ無駄だ!」

 

 これも残念なことに、阿修羅の如く暴れまわるゲンムには通用しなかった。あと少しで届くというところで、ゲンムは左手の剣を投げ捨てて新しくバリアを形成する。僅かな拮抗の後に、エグゼイドは上空へと弾き飛ばされてしまう。

 

「無駄だと言っているのがわからないのか!」

 

「ふんっ、そいつはどうかな?」

 

 ガンモードに変形したライドブッカーの銃口からエネルギー弾が飛び出した。エグゼイドの攻撃を防ぐ隙を狙ったフェイントで撃ち込んのだが、それでもゲンムの反応速度を超えるには至らない。右手で握った剣の刃部分を盾代わりにして、連続発射された弾丸すらも全て防ぎきってしまった。

 

「この程度!」

 

 お返しと言わんばかりに、今度はディケイドに剣の矛先を向ける。すると、ただの大剣でしかなかったはずのそれはまるで鞭のように伸び始めた。頑強な剣から変幻自在にしなる鞭に変化したゲンムの武器は、もう一度銃弾を射ち放とうとしていたディケイドを幾度も打ち据えた。

 これこそまさにゲームマスターであるクロトにのみ許された力。世界のルールに囚われない、自由と創造の力。あらゆる状況においても新しく武器や能力を精製して、プレイヤー達の小手先のテクニックを超越してしまう。

 まさにプレイヤーと管理者の違いを見せつけているかのようだった。

 

「トドメだ」

 

 鞭で激しく殴打されたためにライドブッカーを手放してしまった今のディケイドは丸腰も同然。ディケイドの首根っこに鞭を巻きつけて、そのままへし折るべくギリギリと音を立てて締め付けていく。

 

「エム!行け!」

 

「なに!?」

 

 ゲンムの背後で空中を漂うエグゼイドの左手には、ディケイドが手放したライドブッカーが握りしめられていた。方向転換と同時にエグゼイドのブーツに搭載された噴射機能が起動し、その推進力を活かしてゲンムに向かって急加速を始める。

 

「はあああああああああああ!!!!!」

 

 右手にはガシャコンブレイカー、左手にはライドブッカー。二刀流で急接近するエグゼイドに一瞬慄きつつも、ゲンムは空いている片手でバリアを形成する。

 

「いけええええええええええ!!!!!」

 

 振り下ろされたガシャコンブレイカーの刃がバリアと正面衝突する。さっきは防がれてしまったが、今度は落下速度を利用して威力が底上げされている。おかげで僅かながらガシャコンブレイカーの攻撃力が上回り、強固なバリアを見事打ち消した。もう片手はディケイドの封じ込めに使っているため、盾を失った今のゲンムはガラ空きも同然である。

 

「どりゃああっ!」

 

 バリアを破壊したためにゲンムの懐まで潜り込んだエグゼイドがライドブッカーで袈裟斬りを放つ。クリエイターゲーマーに変身してからは今まで傷1つ負っていなかったゲンムの胸部装甲に、一筋の剣筋が駆け抜けた。

 

「ぐっ!この……」

 

「もう一度だあ!!!」

 

 思わぬ攻撃を受けて怯むゲンムにもう一太刀浴びせる。今度はガシャコンブレイカーを使って下から斬りつけた。

 

「ぐおおおおおおおっ!?」

 

 Xの字で形成された傷跡が光り輝くと共に、ゲンムが弾け飛ぶ。

 

「タイミングを合わせろ、エム。出来るな?」

 

「もちろん、楽勝!」

 

 2人は必殺技のプロセスを開始する。力の解放を告げる音声ガイダンスが発せられると、息をぴったり合わせて同時にジャンプした。

 

《ファイナルアタックライド・ディディディディケイド!》

 

《キメワザ!マイティクリティカルストライク!》

 

 ゲンムとディケイドの間に数枚のエネルギーで構築されたカードが浮かびあがる。空中へと飛び上がったディケイドは、そのカードを蹴りの姿勢でぶち抜きながらどんどん加速していく。隣のエグゼイドも溢れんばかりの極彩色の光を脚から放っている。

 

「くっ!」

 

 エグゼイドとディケイドが必殺技を発動したのを目にしたゲンムも、威厳をかなぐり捨ててガシャットをキメワザスロットに装填する。

 

《カミワザ!マイティクリティカルストライク!》

 

 大地を蹴りつけて跳躍。虹色の輝きを伴ったキック技で、こちらへと向かってくる2人の仮面ライダーに対抗しようとしていた。

 

「「たあああああああああああああああっ!!!!!!!!」」

 

「はあああああああああ!!!!!!」

 

 互いに閃光となった3人の仮面ライダーがついに雌雄を決する。仮面ライダーの代名詞であるライダーキックがぶつかり合い、周囲を巻き込むほどの輝きと熱が渦巻いた。

 

「ぐおおおお!!!」

 

 最終的に押し負けたのはゲンムであった。ライダー達の着地と同時にゲンムは胸を押さえて地面に膝をついた。そして、無数のHITの文字がゲンムに叩きつけられる。数えきれない程のエフェクトがようやく消失した時、ゲンムは地面をのたうち回っていた。

 

「そんな……この私が……!」

 

 今の彼の力は間違いなく強大であったが、エグゼイドとディケイドが一丸となって放った技は単純な足し算を超越し、本来は格上のゲンムをも上回るに至ったのだ。

 ゲームの勝者となったディケイドは静かに告げる。

 

「攻略完了だぜ、芸間クロト」

 

 全身から煙を立ち上らせながら、ゲンムはゆっくりと立ち上がる。足腰を震わせつつも狂気的な双眸がディケイドを恨めしそうに捉えた。だが、すぐにまた片膝を付く。

 

「父さん!お願いだから降参してください!これ以上はもう……」

 

 受けたダメージの大きさは見ただけでわかる。息子としては、やはり肉親の傷つく姿はあまり見たくないものだ。しかし、ゲンムはエグゼイドが差し伸べる手を振り払う。

 

「まだだ!私にはまだこれがある!」

 

 万事休すのゲンムが腕を震わせながら取り出したのは、仮面ライダークロニクルのガシャットだった。

 

「ちっ、マスターガシャットか」

 

 ディケイドはそれを目にした途端に思わず舌打ちした。確かに、幾ら戦況で優位に立てたとしても、プレイヤー達を人質にされては元も子もない。

 

「くっくっく……お前達はよくやった。しかし、もう遅い!このまま全てのプロトガシャットを最大出力で稼働し続ければ、やがてプレイヤー達の体は完全にバグスターウイルスに侵食されて……」

 

             BANG!

 

「うっ!」

 

 突然ゲンムが呻きながら煙が立ち昇る手を抑えている。さっきまで握りしめていたはずのマスターガシャットが何処かへと消えてしまっていた。

 

「なに!?ど、何処だ!?」

 

 慌てふためくゲンムの背後の物陰から、拳銃を手にした青年がふらりと姿を現わした。

 

「へえ、これが仮面ライダークロニクルのマスターガシャットか」

 

「か、海東!?」

 

 ディエンドライバーで見事ゲンムの手首だけを狙い撃ちしたのであろう海東が、マスターガシャットを自慢げに見せびらかす。

 

「こいつは全ての量産型ガシャットをコントロールする、謂わばマスターキーのような存在。さらに伝説の戦士『仮面ライダークロノス』に変身して、その恐るべき能力を完全解放する機能付きらしいね。ふふっ!素晴らしいお宝じゃないか。まさに僕が所有するにふさわしい!」

 

 マスターガシャットを手にした海東は、まるで子どものようにキラキラと目を輝かせている。彼の価値基準と執念は時に一般諸氏の感覚から大きく逸脱することが多いが、おそらくこのガシャットも彼にとってはダイヤモンドに匹敵する極上の宝物なのだろう。

 

「それを返せ!」

 

 計画に要を奪われたゲンムは怒り心頭の面持ちで腕を伸ばす。

 

「ふっ……だが断る」

 

 声が裏返りそうな勢いで怒鳴るゲンムに対して、海東は最高に嫌味ったらしいらしい笑みを浮かべながらガシャットのスイッチを切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「も、もう……だめだ……」

 

 プレイヤー達は我が身の命が限界に近づいているのを直感的に察していた。自身はおろか周りの人間達もどんどん存在感が薄れていっている。彼らはもはや苦しみのあまりに呻く気力も湧いてこない状態に陥っていた。

 

「く、くそお……こんなんだったら……もっと母ちゃんに親孝行すりゃ良かった……ごめん母ちゃん……もし生まれ変わったら……今度はゲームばかりやってないでちゃんと仕事を……」

 

 まるで妊娠しているかのような巨大な膨れた腹を持つ男が辞世の句を詠んでいた。常に天才ゲーマーMに先んじられていた万年2位の称号を持つベテランプレイヤーだ。親や社会からの冷たい視線も物ともせず、ひたすらゲームに勤しんでいた彼だが、最期の瞬間に浮かんだのは母の顔であった。

 

「さよなら母ちゃん……」

 

 死を覚悟したその時、男の周囲を渦巻いていたバグスターウイルスが突如消滅した。

 

「あれ?治った……」

 

 彼だけではなかった。街の至るところで、ついさっきまで苦しんでいた者達が打って変わって何事もなかったかのように平然としていた。

 

「よっしゃあ!!!またゲームやりたい放題じゃーー!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさかこのタイミングでお前に助けられるとはな」

 

「勘違いしないでくれたまえ。別に君達を助けたつもりは微塵も無い。今がお宝を頂くチャンスだと踏んだまでさ」

 

 絶望に打ちひしがれて膝を屈しているゲンムを尻目に、お宝を手に入れて上機嫌の海東は手の中でガシャットをクルクル回転させながら士達の側まで近づいていく。

 よほど嬉しかったのか、まるで天国にいるかのような笑みを浮かべている上に、スキップを交えた軽い足取りであった。

 

「しかし、まさか発信機を逆手に取られるとはね。僕としたことがしてやられたよ。うむ、君達に任せて正解だった。そこは感謝しておくね」

 

「ったく、調子の良い奴だな……」

 

 とはいえ、海東のおかげで危機的状況から抜け出せたのには変わりない。海東に悟られないように心の中でこっそり感謝するのだった。

 

「さあ、もう後は無いぞ。年貢の納め時だ。今度こそ覚悟しやがれ」

 

 頼みの綱であるマスターガシャットを奪われてしまった。プレイヤー達のゲーム病も既に抑制されている。これではもう人を生き返らせるのに充分な量のバグスターウイルスを集めるのは不可能だろう。クロトの野望は完全に潰えたと言っても良い。

 

「父さん……」

 

 追い詰められて力無くうなだれた父の姿を目の当たりにしたエグゼイドは、気まずく思いながらもそっと声を掛けようとする。

 

「おのれ貴様ら……」

 

 ゲンムの怒りと戦意はまだ完全に消え去っていなかった。ゲンムの仮面を超えて、クロトの怨念がライダー達の胸に突き刺さる。

 

「ディケイドさえ……」

 

 ゲーマドライバーからマイティクリエイターVRXガシャットを引き抜き、天高く掲げた。そんなゲンムの奇妙な行動に合わせて、これまで集められていたバグスターウイルスがガシャットに、いや、ゲンムの肉体に集まっていく。

 

「ディケイドさえいなければあああああああああああ!!!!!!」

 

 地獄からの轟きのような雄叫びをあげたゲンムをバグスターウイルスが包み込んだ。やがて、彼を起点に膨張を始め、徐々に強固な肉体を形成していく。その光景を目の当たりにしたライダー達は絶句せざるをえなかった。ユウスケに至っては驚きのあまりにわかりやすいほどに口をパクパクさせている。

 

「な、なんだあれは!?」

 

 尋常ではない量のバグスターウイルスとマイティクリエイターVRXの創造の力、そしてゲンムの歪んだ執念が呼び起こした怪物はあまりにも巨大だった。その全長は幻夢コーポレーションの本社ビルを余裕で上回る。

 全身を真っ白に染めた巨体からは神々しさを放ちながら、怪物は突如ビル1つ分に匹敵す豪腕を振り回して周辺の建物を破壊し始めた。所構わず暴れまわって甚大な被害をもたらすその威容はさながら神話に登場する破壊神そのものである。

 

「あれは……」

 

 同じく白い巨大怪獣を見上げているエグゼイドはゴクリと喉を鳴らした。

 

「間違いない!あれはゲムデウス・ヤルダバオートだ!」

 

「ゲムデウス・ヤルダバオート?確かゲムデウスってのは仮面ライダークロニクルのラスボスの名前だったな?」

 

「父さんの企画書をこっそり読んだ時に見たことある。仮面ライダークロニクルのラスボス『ゲムデウス』を一般プレイヤーでもクリア可能なように調整されたのがゲムデウス・ヤルダバオートなんだ。確かに強敵だけど、絶対に倒せないわけじゃない!」

 

「つまり、真のラスボスのお試し版ってか。ったく、とことん往生際が悪いぜ!お前の親父は!」

 

 本来ゲムデウスはプレイヤーではとてもではないが倒せない超高難易度の敵キャラである。救済処置である伝説の隠しキャラ『仮面ライダークロノス』を除いてダメージすらまとも通るか怪しいという過激な難易度調整の産物。

 一般的プレイヤー向けに用意されたゲムデウス・ヤルダバオートはそこまで狂気的ではないものの、やはり充分強力なのは間違いない。本物のゲムデウスに比べれば弱いと言われても、あちこちのビルを容赦なく破壊し続ける姿を前にすればそんな評価は全く慰めにもならないだろう。

 実際、ディケイドの目に映るこの怪物は、以前戦ったドラスに比類する凶悪な破壊力を有しているように見えた。

 

「しっかし、デカいな。さすがにこいつは骨が折れそうだ」

 

 おまけに今のディケイドはコンプリートフォームへの変身能力を失っている。さすがに取り込まれたクロトを救いつつ打破するとなると、攻略難易度は一気に跳ね上がってしまう。

 

「でも、やってくれるんでしょう?」

 

「ああ、俺はお前の主治医だからな。ついでにお前の父ちゃんの病も切除してやる。なんせ俺に切れない物は無い」

 

 ディケイドは当然といった調子で答える。勝ち目が無いから逃げる、などという選択肢は最初から存在しない。元より、この戦いに勝ち目が無いなどとは思ってはいないが。それが門矢士という男である。

 

「「変身!」」

 

 2人が振り向いた先には、仮面ライダーに変身した海東とユウスケの姿があった。古代の超戦士仮面ライダークウガと、大ショッカーが産み出したもう1人の旅人仮面ライダーディエンドだ。

 

「なるほどね。じゃあ、マスターガシャットなんて思わぬ収穫を頂いた礼もあるし、今回は僕も助けてあげるとしよう」

 

「エム!士!俺にも手伝わせくれ!」

 

「ユウスケ兄ちゃん!それに泥棒の兄ちゃんも!」

 

 拳を強く握り締めて闘志を燃やしているクウガを眺めていたディケイドは、突然彼の肩をポンと叩いた。

 

「おい、ユウスケ。久々にあれをやるぞ」

 

「へ?」

 

 クウガは嫌な予感しかしていなかった。戸惑う彼にも構わず、ディケイドは背中側に回って1枚のカードを取り出す。そのカードを目にして焦り出すクウガから是非を問う間も無く、ディケイドライバーにさっさかと装填した。

 

「あれ?ま、まさか……」

 

「ちょこっとくすぐったいぞ」

 

「ちょ……」

 

《ファイナルフォームライド・ククククウガ!》

 

 ディケイドが背中に腕を突き入れた途端に、クウガの肉体に変化が起こる。背中が開かれながら全身の各所から黒い装甲が発生。さらには人体の許容範囲を超えたレベルで著しい可動を始めていた。微妙にグロテスクなプロセスを経て、クウガは巨大クワガタ型のメカへと変貌を遂げた。

 クウガ改めゴウラムは変身のショックからか、しばし空中を当てもなく周辺をグルグルと飛び回る。

 

『うおおおおおお!?』

 

「おい、ユウスケ。お前はもう何度もその姿になってるだろ。いつまでそうやってる。早くお前のバイクと合体しろ」

 

『あ、そうか!なるほど!』

 

 ディケイドの力でゴウラムに変形したクウガは、近くに止めていた愛車であるビートチェイサー2000と合体する。鋼の鎧を纏ったビートチェイサー、その名もビートゴウラムとなったクウガは目の部分のパーツを光らせながら自走し、エグゼイドの前に停止した。

 

『乗れ!エム!』

 

「うん、わかったよ!ユウスケ兄ちゃん!」

 

 クウガの意思を宿したビートゴウラムに跨ったエグゼイドがグリップを握りしめ、エンジンを目一杯吹かす。巨大なマフラーから盛大な排気音を吐き出される。その威容は戦車に負けずとも劣らないだろう。

 エグゼイドの両隣に異世界の戦士ディケイドとディエンドが並んだ。暗雲が立ち込めて夜のような闇が支配するこの世界で、偽りの巨神に4人の戦士が立ち向かう。

 

「超協力プレイで……クリアしてやるぜ!」

 

 合図代わりにエグゼイドがアクセルをフルスロットルまで一気に回した。同時にビートゴウラムの巨体が唸りをあげながら爆発的な超加速を開始する。

 

「くっ!」

 

 重厚な外見に似合わぬ凄まじい機動力だ。既存のバイクとは比較にならない走破性を有するこのビートゴウラムなら、例え巨神ゲムデウス・ヤルダバオートとえど、遅れをとったりはしないに違いない。だが、その分操縦難易度もかなり凶悪。少しでも気を抜けば、エグゼイドのコントロール下から離れてしまうだろう。

 

『大丈夫か、エム!?』

 

「当たり前だろ?俺は天才ゲーマーMだ!レースゲームなら俺に任せろ!」

 

 負担が重くのしかかったエグゼイドはその圧倒的な加速力に振り回されそうになるものの、クウガのサポートとレースゲームで培ったテクニックもあり、すぐさま自在に操る感覚を手にしていく。

 エグゼイド達の接近に気づいたゲムデウス・ヤルダバオートが放つ遠距離攻撃や障害物を上手く避けつつ、ビートゴウラムの鋭い牙を標的に向けた。

 

「よし、このまま一気に……」

 

『エム!左だ!』

 

「へ?うわあああ!」

 

 エグゼイド達のすぐ左には破壊されたビルの巨大な瓦礫が迫っていた。避けようにも、ビートゴウラムは外見通りに小回りが利かないため、とっさの緊急回避は難しい。

 しかし、エグゼイドが腕で身を隠した瞬間、瓦礫はマゼンタ色のエネルギー弾の直撃を受けて粉砕された。

 

「お前は前に集中しろ」

 

「士先生!」

 

 そう言ってビートゴウラムと併走するのはディケイドを乗せた専用バイクのマシンディケイダーだ。加速力でビートゴウラムには劣るが、小回りで優れるこのマシンの上ではディケイドがガンモードにしたライドブッカーを得意げに構えていた。

 

「梅雨払いくらいなら俺が請け負ってやる」

 

 再び新たな瓦礫がエグゼイドに向かって飛び込んでくる。もう一度消し飛ばそうとディケイドが銃口を向けるが、引き金に指をかける前に瓦礫は突如シアン色のエネルギー弾の直撃を受けて弾け飛ぶ。

 

「おっと、僕のことも忘れないでくれないかな」

 

《ファイナルフォームライド・アアアアギト!》

 

 ディエンドは召喚したと思わしきアギトトルネーダーに乗った状態で銃を手元でクルクルと回している。どうやら今の援護射撃はディエンドによるものらしい。

 

「さあ、行きたまえ!」

 

 アクセルグリップをフルスロットルで回し、さらなる加速を始めるビートゴウラム。あまりのスピードに風と化した彼らは壊れた道路を足場に利用して、ゲムデウス・ヤルダバオートに向かって一気に飛び上がった。

 エグゼイド達を薙ぎ払おうと振りかざす巨腕がすぐ目の前まで迫るが、ディケイドとディエンドの同時集中攻撃によって僅かにずれて難を逃れる。もはや巨神の頭部は目と鼻の先だ。

 

「ユウスケ兄ちゃん!」

 

『ああ!行け!エム!』

 

 ビートゴウラムのシートを足場にしてジャンプしたエグゼイドはゲーマドライバーのレバーを戻した。スリムな肉体に白い装甲が集まっていく。やがて、エグゼイドの姿は寸胴のずんぐりむっくり体型に変貌した。レベル2より以前の特殊形態レベル1である。

 

《アイム・ア・カメンライダー!》

 

 ゲムデウス・ヤルダバオートに肉薄したエグゼイドが取った手段とは、なんと弱い形態であるはずのレベル1への退化であった。

 貧弱な印象を与える外見に反した軽やかな動きで巨神の頭部に颯爽と飛び乗り、ガシャコンブレイカーのハンマーを勢いよく叩きつける。

 

「それっ!」

 

 ゲンム・ヤルダバオートは著しく悶絶し、全身からバグスターウイルスが漏れ出す。

 レベル1にはこの形態にのみ搭載された、バグスターウイルスと患者である人間を切り離す機能が存在する。そのずんぐりとした肉体に内蔵された特殊な電磁パルス発生装置によって、バグスターと人間の結合を分解させることが可能なのだ。

 この機能は今の状況で存分に活かされ、巨体を揺らして呻き声を漏らすゲムデウス・ヤルダバオートと取り込まれていたゲンムを見事切り離すことに成功する。

 

「ぐおおおおおおお!!!!???」

 

 ゲムデウス・ヤルダバオートから弾き出されたゲンムが落下していく姿を目にしたエグゼイドは、後方でライドブッカーを撃ち続けていたディケイドに振り向いた。

 

「士先生!父さんの分離に成功したよ!」

 

「よしっ!でかした!」

 

 今のゲムデウス・ヤルダバオートは単なるバグスターウイルスの集合体に過ぎない。これならもはや容赦する必要など無い。ディケイドはこの世界でエグゼイドと築いた絆の証であるカードをディケイドライバーに差し込んだ。

 

《ファイナルアタックライド・エエエエグゼイド!》

 

 ディケイドライバーから電子音声が鳴り響くと共に、レベル2に再びレベルアップしたエグゼイド、元の姿に戻ったクウガ、アギトトルネーダーから跳躍したディエンド、さらにはバイクを乗り捨てたディケイドが一斉に空高く舞い上がる。

 

《ディケイドディエンドクウガマイティクリティカルストライク!》

 

 次の瞬間、空に4つの眩い輝きが現れ、暗闇に包まれた世界を照らしていった。

 

「「「「うおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!!」」」」

 

 魂の雄叫びと共に空を駆ける4つの光が飛来し、弾丸の如く巨神の肉体を貫く。屈強な全身の装甲が容易く砕かれ、傷口から血の代わりに黒々としたバグスターウイルスを間欠泉のように凄まじい勢いで吹き出す。その量は尋常ではなく、これこそ巨体を支える源だったに違いない。しかし、それも吐き出されてしまえば一巻の終わり。

 力の源を失ってしまったゲムデウス・ヤルダバオートは、やがて塵となって崩れ去っていくしかなかった。戦いを制した4人の仮面ライダー達は、静かに勝利を噛みしめる。

 

「へへっ!やりぃ!」

 

 仮の姿とはいえラスボスを打破したエグゼイドは嬉しさのあまりに隣のディケイドに拳を突き出す。仲間に対してもなかなか素っ気ないディケイドだが、今回ばかりは彼も気が高ぶっていたのかもしれない。この世界で絆を育んで共に困難を乗り越えた仮面ライダーと素直に拳を付き合わせるのだった。

 

「ぐっ!馬鹿な……」

 

 崩れ落ちていく巨神を前に、ゲンムは拳を地面に叩きつけていた。破れかぶれに産み出したゲムデウス・ヤルダバオートまで撃破されてしまった。()()()が忠告していた通りに、ディケイドという存在はそれほどまでに強大だったのである。地を這っていたゲンムの変身が解かれて、クロトの姿が露わとなる。彼の目元には大粒の涙がこぼれ落ちていた。

 もうお終いだ。クロトが抱いていた野望はただの夢へと儚く消えた。まさに幻夢の名を体現するかのようだ。

 そんなクロトの心境に呼応するかのように、ゲーマドライバーから外れたマイティクリエイターVRXガシャットが粉々に砕け散った。彼はついに戦う力すら失ってしまった。ボロボロの姿で涙まで流し、顔をグシャグシャにさせたクロトはすがりつくようにマイティクリエイターVRXガシャットの破片を血が出るほど強く握りしめていた。

 

「私は……私は……ただ作りたかった……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何故だ……」

 

 クロトは社長用のデスクに座わって呻いていた。社長室は既に人払いを済ませており、今ここにいるのはクロトだけだ。多忙な彼にとって数少ない、自分1人だけの時間である。

 

「何故だ何故だ何故だ何故だ!!!!!!!!」

 

 誰も見えていない中で、積もり積もった感情を爆発させながら、デスクの上に置かれた物に怒りをぶつける。その姿はとても対外的に作ってきた冷静沈着な敏腕経営者から遠くかけ離れていた。

 

「事故が起きて以来、私は母親を失ったエムを笑顔にするために、ひたすら新しいゲームを作り続けてきた!!!」

 

 癇癪を起こした子どものように書類を全て床にぶちまけるクロト。その中には、彼を神のように讃えるゲーム雑誌の記事も混じっている。

 

「天才ゲームクリエイターの称号などどうでもいい!幻夢コーポレーションなど潰れても構わない!あの子のために私は身を粉にし、全てを捧げてきた!あの子と過ごす時間を削ってまで!!!!」

 

 妻が事故死して以来、彼が短期間で世に放ってきたゲームの数々はどれも社会現象を引き起こすレベルの大ヒットを記録した。おかげで芸間クロトの名はゲーム業界の歴史に永遠に刻まれることだろう。幻夢コーポレーションの経営ももはや安泰に違いない。

 だが、歴史的偉業を重ねようとも、クロトの本当に欲しい物は未だに得られていなかった。

 

「なのに何故あの子は心の底から笑ってくれない!それでは意味が無い!!」

 

 これまで作ってきたゲームは全て、母親を失って心からの笑顔を見せなくなった息子へのプレゼントのつもりで生み出してきた物だった。それなのに、肝心の息子はどんなに凄いゲームを用意しても、以前のように笑ってはくれなかった。確かにいつも喜んでくれてはいるが、あくまでただそれだけだったのだ。

 むしろ、クロトがゲーム製作に夢中になる程、エムの笑顔を見なくなっているように思えた。

 

「なんで……なんであの頃のように笑ってくれないんだあああああああああああ!!!!!!!!!」

 

 一通り八つ当たりを済ませたクロトは、引き出しの棚をゆっくりと開けた。そこには1枚の写真が隠されていた。穏やかな一時をフィルムに収めたものだろう。エムとクロト、そして、芸間夫人の親子3人が笑顔で写し出されていた。

 かつての家族の平穏な日常を思い起こしたクロトはポツリと呟く。

 

「母親……」

 

 確かにかつて最愛の女性であったのは間違いないが、それでもクロト自身は彼女の死を既に割り切っていた。今はただエムが元気でいてくれれば自分は満足だ。

 しかし、息子はまだ幼く、同世代の少年少女達が母親に甘えていることを顧みれば、まだ母親という存在が必要不可欠なのではないか。

 その時、クロトの中であまりにも荒唐無稽な考えが浮かんできた。

 

「そうか……母親さえいれば……」

 

 そこまで口走って、クロトは自嘲しながら頭を抱えた。

 

「ははは!何を馬鹿なことを……疲れているのか私は」

 

 彼女を蘇らせる。そんな非倫理的な行いが脳裏を掠めたクロトは、自身の発想の突飛さに呆れ果ててしまった。映画や漫画の世界ではよくある物語ではあるが、現実でそんなことが可能なはずが無い。

 一時の気の迷いとはいえ、こんなことを夢想するとはさすがに働きすぎたかと休暇について思案していた時だった。

 

「いや、どうも〜♪初めまして、芸間クロトさん」

 

 社長室に突如現れたのは、白いスーツを着た謎の男だ。突然闖入者が現れたことでクロトは完全に正気を取り戻す。

 そして、我に帰って目の前に広がる醜態に頭を抱えた。まるで強盗に襲われたかのような有様である。こんな状態で客を迎えるわけにはいくまい。

 

「どちら様でしょうか、貴方は?あいにくアポイントを取っていない方との面会は……」

 

「まあまあ、すぐ済みますのでちょっとだけお話を聞いていただけませんかねえ。ひっひっひ!」

 

 男は貼りついたような不気味な笑顔をクロトに向ける。愛想笑いを浮かべているはずながら、なにやら見ているだけでこちらの背筋が凍りそうになる。長年の経営の中で磨き上げた勘が告げている。

 この男はとてつもなく危険だ。

 

「実は新しいゲームのアイデアがありまして……間違いなく世界中の人々が夢中になって、もはやこのゲーム無しではいられなくなる。もちろん、運営である貴方自身もねえ」

 

 直感的に拒もうとしているクロトの戸惑いを押しのけて男が渡した資料には、アルファベットが刻まれたUSBメモリと、果物の装飾が目につく錠前の絵が描かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私はただエムに……かつてのあの頃のように笑って欲しかっただけなんだ……」

 

 涙交じりに嗚咽を漏らすクロトの横に、変身を解いたユウスケはしゃがんで並んだ。心を折られてしまってちっぽけになった男の肩へとユウスケは手を伸ばす。

 

「誰かの笑顔を守るためだったら、人はもっと強くなれる。俺の大事だった人がそう言ってた。あんたは間違いなく強かったよ。それはエムの笑顔を守りたかったからじゃないか?」

 

 クロトは静かに顔を上げた。敵対し、怒りをぶつけてまでいた相手にも関わらず、ユウスケはクロトに微笑んでいた。

 

「あんただってさ。本当はただエムに喜んで欲しかっただけなんだろ?やり方は間違ってたけど、これからまたやり直しなよ。大丈夫、まだ間に合うって。だって……あんたはまだ生きてるんだ。この世界に……」

 

 そう言ってユウスケが背後に目配せする。そこには、父にかける言葉が浮かんでこないために戸惑っているエムの姿があった。

 

「父さん……」

 

 今ここにいるのは、天才ゲーマーMでもない。仮面ライダーエグゼイドでもない。ただ父を想う息子がいるだけだ。

 親子が互いを抱きしめ合う。その瞬間、雲間から差した光がスポットライトのように親子を照らし出した。

 2人を黙って見守っていた士は空を見上げる。

 

「どうやら、雨も止んだらしいな」

 

 晴れ間がどんどん広がって、大きな虹が空に橋を架けている。それはまるで、この世界に立ち込めていた暗雲が去ったことを大空が祝福しているかのようだった。




もう少しだけお付き合いください。
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