サンリオ・サーガ   作:鈴木遥

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sweet カウンターパンチ

・突然現れた空間の歪み、未確認の違法改造宇宙戦艦。

政府も宇宙連盟も対応に追われパニックに陥る中、いち早く行動を開始したのは、ピューロランドに来ていた出席ダンサー達だった。

 

「つまり……一刻も早くキティとユウさんを奪還しなければ、奴ら何をしでかすか分からんということだ」

 

精神的に憔悴していたダニエルに代わり、ポチャッコが会議の指揮をとっていた。

 

「でも奴らの目的って一体……」

 

プリンがぬいぐるみを抱えながら呟くと、ケロッピはポテチを齧りながら答えた。

 

「あの風貌……うちらの星に伝わってる悪魔の伝説そのものだったケロ。つまり相当邪悪な野望……宇宙の支配を企んでるケロ!」

 

「こわいよ〜」

 

キキとララが怯えながら抱き合っていると、クリリンは落ち着いてと言いながら、ホワイトボードにマーカーを走らせる。

ボードには、現在の状況を整理するための情報が書き連ねてあった。

 

「奴らの目的は分からないけど、現状、あいつらはカーニバルを中止させて、知恵の樹の魔力を封じ込め、ユウさんやキティをさらった。ここまでが事実だ」

 

「カーニバルと知恵の樹は、光の魔力を集中させる儀式とアイテム。奴らの邪魔なのは分かるわ、でも……」

 

マロンクリームの続けようとした言葉を、ペックルが代わりに尋ねた。

 

「なんでキティなんだ?あいつは特別な魔法を継承してるとは思えない。サンリオに関わる重大な魔法に近づきたいなら、普通ダニエルをさらうと思わないか?」

 

惑星サンリオの首都、アップルキングダムの王族には、

かつて惑星の輝きをゼロから創造した、究極の魔法が継承されているとされる。

 

明らかな闇の魔法を行使した彼らが、王族を恐れるのは自然な話だが、ならばなぜ、彼らはわき目もふらずにキティを狙ったというのか。

 

「それを言ったらユウさんがさらわれたのだって謎よ。

彼女は、どこからどう見ても普通の地球人。だけど悪魔の頭目は、彼女の存在に驚いてた」

 

「特別な何らかの力があるってことか……」

 

それがいったい何か?というところで、話は再び止まってしまった。

沈黙が何秒か続いたところで、会議室の扉を開けた者がいた。

 

今回の重要戦力の一人として、空を呼びに行ったばつ丸だった。

 

「あいつは……夕は、普通の地球人ではありません」

 

ばつ丸の後ろをついてきた、負傷した空。

彼が放った一言で、室内の注目は一気に彼に集まった。

 

「普通の地球人じゃないって……どういう……」

 

「夕自身、誰かにこの話をすることを嫌いますが、状況が状況。一からお話しします」

 

空の話によると、夕はおそらく地球人ではない。

というのも、元々育ての親に拾われた子ではあったのだが、両親が警察に届け、何年行方を探しても、結局本当の親を見つけることができなかった。

 

それだけではない。

 

彼女には不思議な力があったというのだ。

傷ついた動物や植物に手を当てると、たちどころに傷が回復し、それ以前よりも活性化して見えたという。

 

そんな力を持っていたがゆえに、一部の人たちには気味悪がられていた。

彼女はどういう理由からか、幼い頃よりピューロズに関わる仕事をすることに、何らかの使命を感じていたという。

 

「連中の頭目……ブラックという男は、夕をさらって行く前にこう呟いたんです。

まだ生き残ってたのか、って。もしかしたら、奴は夕の出生について、何か知っていることがあるのかも……」

 

「どちらにしても、彼女はキーパーソンだな。事を急ぐ必要がありそうだ……」

 

空がはいと頷くより早く、ポチャッコはテーブルの上に大きな紙を広げた。

いつ仕上げたのか、綿密に描かれたピューロランド内の図面だった。

 

「広場には闇の楔が打ってある。奴らが撤退する前に残していった置き土産だ。これのせいで俺たちは、十分に魔法が使えない。知恵の樹の恩恵が"ない"からな」

 

「明日の早朝に奴らはもう一度行ってくる……そこでダニエルに"返事"を要求するはずだ」

 

ポチャッコが図面に加筆しながら解説する。

 

「彼らの要求はこうだ。ピューロランドの全面明け渡しと、アップルキングダムの全面降伏。闇の楔の解除と人質を解放する条件だそうだ。国としても飲めん話だし、仮に国が飲んだとしても、宇宙連盟が許さない」

 

「八方塞がり……ってことですか」

 

顔色を曇らせる空。ポチャッコは首を横に振った。

 

「もちろん対抗する術はある。けど簡単じゃない。何せピューロズと地球人との歴史をまるごと"叩き起こす"事になるからな……」

 

ポチャッコの言葉の意味は理解できなかったが、彼の頭の中に思い描かれている作戦が、無謀であることは理解できた。

マロンが補填をしようと、空に話を振る。

 

「空くん、ピューロランドを建てた3人のピューロズについて、どこまで知ってる?」

 

「えっと、森のくまさんと、鏡の魔法使いと……それから……」

 

「水の国のシリウス」

 

呟いたのはダニエルだった。

 

彼ら3人の歴史は古く、地球に飛来した最初のピューロスであったという。

3人は力を合わせ当時の地球の長と接触し、長い時間をかけて彼らの信頼と、交流の礎を獲得した。

 

それこそが現在のサンリオピューロランドであり、長きにわたり宇宙の平和を維持してきた連盟をも唸らせる、地球人とピューロズとの絆の証だった。

 

3人はピューロランドを完成させた後も、そこで働く者たちやそこへやってくる観客達を見守り続け、今現在も特殊な魔法の力により、その魂がピューロランドのどこかに息づいているという。

 

「でもその3人が、今回の件とどういう関係が……?」

 

空が疑問を呈すると、今度はマロンクリームがボードにペンを走らせた。

 

「森のくまさん・グレートベア。鏡の魔法使い、ミラルゴ。そして、偉大なる水の王子、シリウス。この3人が作った最初の魔法こそが、イルミナント。今回のパレードの原点でもあるわ。そして……」

 

マロンはボード人に複数の図を交えて説明をかき、そのたびに表情を厳しくさせていく。

 

「3人の魂が持つ、その力を直接受け継ぐことができれば、闇の中にあっても知恵の樹の、光の力を受けられる……けど」

 

そこで口を噤んだマロンに代わり、ポチャッコは厳しい現実をつけた。

 

「彼らの持つ本来の光の力を受け取るには、彼らが提示する"試練"を受けねばならない」

 

結局のところ、全員の結論は変わらなかった。

教科書で習うレベルの、おおよそ未知なる偉大なる者たちの試練。

果たして地球に来たばかりの自分たちが、乗り越えられるのだろうか。

 

最初に沈黙を破ったのは空だった。

 

「まあでも、やりましょうか」

 

分かっていた答えだった。

悪魔達から地球を、そして惑星サンリオを守るためには、何としても彼らを止めなければならない。

 

その答えに最初にたどり着いたのが、悪魔達から最も深い傷を受けていた空だったこと。

一同は驚きを隠せなかった。

 

だが一度スイッチが入れば、全員がそれに呼応するのは無理もなかった。

 

「どっちにしても、戦うのは必須だケロ。僕は彼の意見を支持するケロ」

 

「じゃあ僕も!試したかった新作があるんだ!!」

 

けろっぴとプリンが席を立つと同時に、バツマルも挙手した。

 

「ダニエルでも、ポチャッコさんでもいい。集合時間のを指示ください。それまでに、あらかたのものは作るんで」

 

「キキ、ララ、いいかしら」

 

「「もちろん!」」

 

三銃士も揃って立ち上がり、地球人が驚くほど速いペースで方針は固まった。

 

「よし、こうなりゃ俺も、気圧されてる場合じゃねえよな……ダニエル、号令」

 

「僕ですか!?」

 

「あたりめーだ。お前だろ?《プリンス》は……」

 

「……そうでした!」

 

ふんどしを締め直したダニエルは、テーブルの上で皆に号令をかける。

さっきまでの、キティ誘拐に焦るしかなかった彼ではない。

アップルキングダムの未来を背負う覚悟。

キティを助け出す決意を胸に秘めた王子としての風格があふれ出ていた。

 

「ただいまより、惑星サンリオと地球の連合による、二人の仲間の救出作戦を開始します!!」

 

「応ーー!!!」

 

一同揃ってのガッツポーズ。

少なくてもこの時点では、戦いへの決意も、勝利への確信も、誰一人として揺らいではいなかった……。

 

最終決戦まで残り40時間となった頃。

朝早く、作戦隊長を臨時で担うこととなったポチャッコから、空へと指令が下された。

 

「あんたの戦いのセンスは、俺たち三銃士を凌ぐ。そこで、一番過酷にして、重要なポイントを任せたい」

 

「なるほど……具体的にはどこを?」

 

それを問われたポチャッコは、必須の質問であるにも関わらず、何故か心苦しそうだった。

その表情の曇りが、自分に課せられる任務の重みを表しているようで、空の脳裏に不安がよぎった。

 

「俺たちの歴史上、最強の戦士。アップルキングダム建国の盟友。水の王子シリウスの試練だ」

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